金融審議会「インサイダー取引規制に関するワーキング・グループ」(第3回)議事要旨

1.日時:

平成24年10月16日(火曜日)17時00分~18時31分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

  • 1.開会

  • 2.事務局説明

  • 3.討議

  • 4.閉会

4.議事内容:

  • 事務局からの説明後、討議が行われた。

  • 討議における主な意見は以下のとおり。

  • I.情報伝達行為への対応

    • 1.情報伝達・推奨行為への対応

      • 取引推奨行為について、重要事実の内容を仄めかしたり、あるいは重要事実を知り得る立場にあることを示したり、といった条件を入れたほうがいいのではないか。全く情報伝達行為がなくても取引を推奨しただけで違反になってしまうと、通常の取引推奨行為を阻害する要因になるのではないか。

      • 情報伝達行為を規制対象とすることについては、その方向でよいのではないか。そこでは、企業活動に必要な情報伝達を阻害しないことが非常に大事。取引を行わせる目的といった主観的意図を必要とするという方向性も選択肢の一つだと思うが、監督当局や検察等が立証できるのかという点がやや気になる。

        エンフォースメントについては、当然、刑事罰及び課徴金の対象にしていくことになるかと思うが、刑事罰の程度については、取引を行った者よりも情報提供者のほうが重いということはあり得ず、同等、あるいはそれより軽くあるべきではないか。

        一方、課徴金について、情報伝達者は何らかの利得を間接的に得ていると思うが、それを金銭的にどう評価するかは難しい。

      • 取引推奨行為について、取引推奨を受けた者は、取引推奨者との関係があって、特別な地位にあるために、そのような取引推奨を受けた者の行う有価証券の売買等が、一般投資家との関係で不公正と見られると考えられる。したがって、この場合には、仄めかしたり、あるいは重要事実を知り得る立場にあることを示したりということを要件にする必要はないと考えられる。

        日本は、EUに比べてインサイダー取引の執行をしっかりやっており、それだけ公正な市場が成立している。しかし、法律レベルで見ると、EUと比較して穴が大きい。情報伝達行為や、第二次情報受領者以降の取引が規制の対象になっていないなど、世界の投資家に向けて非常に印象が悪い。法律として、世界に胸を張って出せるようなものにしてほしい。

      • 情報伝達・推奨行為について、諸外国の動向を踏まえ、現実に我が国で起こった問題に対処するためにも、何らかの規制を導入することが必要であり適切。また、どのような情報伝達行為が正当なものとして許容されるか、適切な適用除外ルールを設けることが必要。

        情報伝達行為を規制する趣旨は、内部者取引の予防のためであるので、内部者取引規制の範囲によってその規制範囲が画されることになる。処罰対象を第一次情報受領者に限るという前提であれば、取引が行われたことを条件にすることもあり得る。

        取引推奨行為の規制については、その趣旨をはっきりさせる必要がある。推奨行為自体で一般投資家の信頼を失うと理解すれば、取引がなされたかどうかは問わないという考え方も可能と思われるが、潜脱行為を規制するものと限定的に理解すれば、取引が行われたことを要件にすることも考えられる。

      • 情報伝達行為について、第1回WGでインサイダー取引の教唆・幇助に当たるような行為に限って処罰するのが妥当と述べたが、その点で、取引が行われたことを要件とすることは妥当。教唆・幇助類型に限定するためには、現に取引が行われることを認識していたことが必要だが、それを担保するために主観的要件を要求することは妥当。また、例えば、家族や知人に、最近合併の仕事で忙しいという情報を漏らして、たまたまその情報に基づいてインサイダー取引が行われてしまったような事例では、客観的処罰条件だけであれば処罰されてしまう可能性があるが、刑罰の行使としてこれは少し行き過ぎで、そこに主観的要件を要求する意味があるのではないか。

        また、取引推奨行為について、潜脱行為を防ぐことが主たる禁止の理由だと思うので、推奨行為についても伝達行為と同様に要件を絞るべき。

      • 情報伝達・推奨行為について、我が国におけるインサイダー取引の調査・審査の端緒は、基本的には実際の市場で行われた売買であり、規制の実効性を高める観点から、今のようにあくまでも取引のほうからアプローチしていくというのが実態ではないか。

      • 情報伝達・推奨行為については、その行為自体が、一般投資家の市場に対する信頼を害するので、取引が行われたか否かにかかわらず、処罰の対象にすることができると思う。正当な目的をもって行われる情報伝達行為は処罰対象から外すべきだと思うが、インサイダー取引を行わせる目的という主観的要件を立証するのは困難であり、そういう方面からのアプローチにはしないほうがよいと思う。

      • 取引を行わせる目的という主観的要件を加重することについて、何らかの要件を設けて絞っていくという方向性は賛成。また、取引が行われることを要件とするという客観的な処罰要件を加えることについても賛成。会社関係者の中での情報伝達行為は重要で、当該行為を規制することでネガティブな影響が出ることのないように、一定の縛りをかけていくことが必要。

      • 取引を行わせる目的等をもって、という主観的要件を付けることは必要。立証が難しくなるのではないかという意見もあるが、主観的要件を設計していくときに、実務を担当する立場から見て、誤解の生じないよう明確化していくことが必要。

      • 取引を行わせる目的を要件とすることは賛成。ただ、健全な伝達行為を妨げないという現実論として妥当ではあるが、本質論として、そもそもインサイダー取引、あるいは投資家の信頼性を損なうような取引に関しては、基本的には問題があるというメッセージをしっかり出していくことも必要。

    • 2.市場仲介業務を担う者に対する規制

      • 取引が行われたか否かにかかわらず責任を問われることについては、若干違和感がある。これは、金商法の中でも業者に対する監督、指導の話であって、インサイダー取引規制として設けることについてはやや無理があるのではないか。証券会社に対する罰則・ペナルティーを重くすべきという意見はわかるがさらに議論すべき。

      • 証券会社に対しては、法人関係情報を管理する義務や、同情報を提供して勧誘してはいけないという業規制が別途存在しており、役職員についても会社関係者に適用を考えている規制をかけていくことが可能である。証券会社のみ取引が行われたか否かにかかわらず罰則をかけるのは厳しすぎるのではないか。

      • 取引が行われたか否かにかかわらず処罰をするという事務局案に賛成。個人的には、業者に限らず、一般的に取引が行われたか否かに関わらず処罰の対象にするほうがよいと考えているが、それが難しいのであれば、業者についてのみ対象とすることに賛成。金融商品取引業者等は、インサイダー取引が行われないような公正な市場を確保することに責務を負っているため、一般の投資家に比べて重い処罰の対象になることはやむを得ないと思う。

      • 本来であれば、業法や自主規制等で対処すべき問題のように思われるが、それらが十分にワークしていないというのであれば、法規制をするということもあり得る。金商業者等の情報提供により、一般投資家の信頼が大きく損なわれるのであれば、取引が行われたことが必ずしも要件ではないという考え方もあり得る。

      • 情報伝達行為と同様にインサイダー取引との関係で処罰するということであれば、伝達だけで処罰するというのは妥当ではない。ただ、市場仲介業者には特に重い義務が課せられていて、役職員が業務の推進等を図るために不当に情報伝達・取引推奨を行った場合には、その義務違反として規制対象とすることは考えられる。

      • 市場仲介業者が証券取引の仲介者として重要な社会的使命を負っているという点で、一般人よりも責任は重いという説明は説得的だと思うが、現在でも、法人関係情報を提供して勧誘する行為は禁止されており、さらに厳しい規制を追加する必要性があるのかというのが気になる。証券会社は、自主規制機関から過怠金などの金銭的な制裁を受ける立場にあり、負担がさらに重たくなることが少し懸念される。

      • 現行法でも法人関係情報を提供して勧誘する行為は禁止されており、それ以上に厳しく規制することについて、説得力を感じない部分がある。

        金商業者は情報伝達・取引推奨を行うことによって、幅広い利得を得るとされているが、引受手数料はチャイニーズウォールの内側で生じ、売買手数料は外側で生じるものであって、これを一緒くたに幅広い利得とはいえない。不当行為が行われたときに受けるリスクを考えると、売買手数料などでは補えないような莫大な損害が生じるので、そうした事実があまり反映されていないのではないか。

      • 特に市場にかかわる者としてきちんとした行動をしなければならないという点を重要と評価すると、何らかの形で重く罰するということは検討の余地があると思う。

      • 市場仲介業務を担う者が重い義務を負っていることは確かだが、この部分だけを取り上げて、類型的に単独の情報提供だけで処罰をするという建て付けが正しいのかどうかという点については、ちゅうちょがある。

      • 金融商品取引業者等の社員に対する規制は、日証協の不都合行為者に対する規制もあるので、自主規制機能の中での対応ということも判断の中に入れていただきたい。

      • 例えば証券会社の営業社員が、取引先から情報を要求されたとしても、もし処罰されるのであれば、私にはできないと断りやすい。これは業者にとってもマイナスではないと感じる。

    • 3.重要事実を要求する行為への対応

      • 実際にインサイダー取引が行われた段階で規制対象になるというのは分かるが、「何かお薦めはないですか?」と言って聞いてしまったら直ちにペナルティーの対象とするのは厳しすぎるのではないか。

      • 証券会社との力関係を見ると取引相手である機関投資家の力は相当強いのが実態であり、損失補填に関しては損失補填を求めた者に対しても罰則があることとの整合性を考え、要求した者にも罰則がかかるような議論をしてもらえるとありがたい。

      • 今般の増資インサイダー事件を見ると、明らかに適格機関投資家のほうの圧力が強いので、その圧力を少し下げないといけないと感じており、規制を設ける必要性があるのではないか。

  • II.インサイダー取引の罰則について

    • 罰金刑に関しては、米国に比べると2桁低いという状況であり、また、実際に上限に張り付いている裁判事例もあるため、引き上げる余地はあるのではないか。

    • 確かに罰金刑単独で見ると引き上げる余地があるようにも見えるが、経済的ペナルティーとして、課徴金や過怠金、追徴金もあるので、そういうものを合わせた総額を考えて罰金の額が妥当か議論する必要。また、一番抑止力があるのは実刑としての懲役刑であり、罰金の額だけを議論するというのではバランスを欠く。

  • III.公開買付対象者に係る位置付けの見直し

  • 被買付企業及びその役職員について、基本的な現行法規制の考え方で公開買付者等の内部にある当該事実を知る特別の立場にあるか否かという観点からすると、まさに当事者であるので、公開買付者等に含めるというのは、基本的に正しい方向ではないか。

以上

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課市場機能強化室(内線2644、3943)

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