金融審議会「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」(第2回)議事録

  • 1.日時:

    平成26年10月20日(月曜日)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【岩原座長】

それでは、予定の時刻になりましたので、決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ第2回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

それでは、まず前回の会合にご欠席された委員と、本日の参考人のご紹介を事務局からお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

信用制度参事官の佐藤でございます。私からご紹介申し上げたいと思います。

それでは、今からお名前をお呼び申し上げます。恐れ入りますが、皆様におわかりいただけますように、お名前を申し上げた際には、その場で一度ご起立いただきまして、その後ご着席いただけましたら大変幸いです。

それでは、まず、翁百合委員でございます。

【翁委員】

よろしくお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

続きまして、加毛明委員でございます。

【加毛委員】

よろしくお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

そのお隣、河野康子委員でございます。

【河野委員】

よろしくお願い申し上げます。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

続きまして、安田洋祐委員でございます。

【安田委員】

初めまして、よろしくお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

委員の方々のご紹介は以上でございます。

本日は、参考人として4名の方にもご出席をいただいております。まず、柏木委員の両隣に、三菱東京UFJ銀行より、まず梅崎富雄様でございます。

【梅崎参考人】

よろしくお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

続きまして、森剛敏様でございます。

【森参考人】

よろしくお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

続きまして、日本総合研究所より、野村敦子様でございます。

【野村参考人】

よろしくお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

そのお隣、富士通より、南雲聡様でございます。

【南雲参考人】

よろしくお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

私からのご紹介は以上でございます。

【岩原座長】

次に、前回皆様からいただきましたご質問について事務局から説明があるそうでございますので、お願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、引き続きまして、私からご説明を申し上げます。お手元に配付している資料の中に、右肩に資料1、表紙に事務局説明資料と書いてある資料がございます。まず表紙を1枚おめくりいただきたいと存じます。決済手段の各国比較というところです。この点につきましては、前回のスタディ・グループにおきまして、今後の議論を行う上での前提知識として、BtoBまたはBtoCについて、決済手段別の各国の決済金額や件数について調査を願いたいというご依頼がございました。

それで、いろいろと調査をしたのですが、信頼に足る資料というのを見つけることが難しいところがございました。特に、このBtoBやBtoCに分けた金額が入手が困難でした。そこで、今回このグラフでご提示いたしておりますのは、2008年時点での各国の金額を推計を行って求めたものです。具体的に調査を行ったのは三菱UFJリサーチ&コンサルティング会社様で、経済産業省からの委託調査でございます。

まずベースとなりますのが個人による支払い等でございます。したがって基本的に法人は外れております。具体的な推計方法としましては、BIS統計等でわかる金額を用いて、わからない金額はヒアリング等より、それぞれの支払手段の構成比を推定し、推計を行っております。特に、銀行と銀行をまたがるような送金というのは統計が存在するところもあるものの、同一行内での送金や自動引き落としの金額については、どうしても推計をせざるを得ないところがございます。また、現金払いについても同様の問題があるということでございます。したがいまして、正確な比較ではございませんが、概要はこれでおわかりいただけるかと思いまして、今回ご紹介を申し上げました。

まず左の欄、日本の構成比を見ますと、棒グラフの一番下の灰色の部分が現金でございます。現金につきましては、各国を比較して見ますと、日本の現金の比率が非常に高いという結果が出ております。

もう一方で、その上の水色の欄がございます。こちらはクレジットカードでございます。1点だけ注釈的に申し上げますと、フランスにつきましてはクレジットカードとデビットカードを分けた統計がないということで、フランスの統計のみはクレジットとデビットカードの両方の数値が含まれております。国別に見ますと、韓国におきましてクレジットカードが、約4割近い決済手段として使われているという推計が出ております。

その上の欄、濃い紺色のところがございます。ここがデビットカードでございます。英国、米国におきましてデビットカードの利用が非常に多いという姿がうかがわれております。

その上に青色の欄がございます。こちらは電子的支払でございます。下の欄に、電子的支払とは、米国以外においては口座の自動引き落とし及び振り込みを指すと、注釈がございます。アメリカにおきましては、口座の自動引き落とし、及びリモート支払い、パソコンや携帯電話からの支払い指図等を含んでいるということでございます。先ほど、個人による支払いと申し上げましたが、ここにつきましては、いわゆる購買を伴うような支払いと、資金移転のための送金、いわゆる仕送り等も含まれております。ただ、アメリカにつきましては純粋にこの購買を伴う支払いのみということでございます。ここを見ますと、各国ともそれなりに電子的支払いの割合は多いことがわかります。ただ、米国につきましては、先ほど申しましたベースの違いもございますが、割合としては若干低い数字になっております。

その上に、薄い灰色のところがございます。ここが小切手でございます。米国、フランス等につきましては小切手の支払いの割合が多いということが伺えます。我が国においては、個人に限った数字ということもございますので、極めて少ない数字となっております。

一番上の欄は電子マネーその他ということで、割合としては依然非常に低い数字でございます。ただ、先ほど申しましたように、2008年時点での推計でございますので、この後の変化ということも十分考えられるところでございます。

もう一枚おめくりいただきたいと存じます。タイの輸出入に占める決済通貨の割合ということでございますが、これは前回のスタディ・グループにおきましてASEAN域内でのクロスボーダー決済における使用通貨の状況等について、わかるところを教えてほしいというご依頼がございました。いろいろと調査をしたのですが、現地の言葉で出ているものも若干あるものの、言葉の問題から、調査がうまくいかないというところもございまして、代表的な国ということで、タイにおける輸出入に占める決済割合をグラフでお示しいたしました。

出所はタイの中央銀行でございます。この決済通貨の割合というところで注を書いておりますが、貿易建値通貨ベース、いわゆるインボイスに使われている通貨でございます。輸出と輸入に分けてグラフを表示しておりますが、米ドルの割合が非常に大きいということになっております。ただ、輸出につきましては、米ドルの割合が若干減少傾向にあるということです。その一方で、タイバーツの割合が若干増えております。ただ、グラフで見ますとこのような傾向はございますが、依然として米ドルにつきましては80%ぐらい、タイバーツ十数%という数字になってございます。

もう一枚おめくりいただきたいと存じます。APN(Asian Payment Network)についてということで、この点は前回APNについて、例えばASEANにおける経済統合を目指した背景があるのかというご質問をいただきまして、山上委員からもご説明をいただいたところでございます。今回、この資料としまして下の丸のところをごらんいただきたいのですが、タイの中央銀行総裁の講演から引用したものでございます。

本年の6月12日の講演ですが、この中でAPNについて触れられております。冒頭のところから関連部分を読み上げます。ASEAN経済共同体のもとで市場統合が進めば、より広範な地域をまたがる、モノの生産・流通網が構築されること、これを通じて大メコン圏に貢献する。その具体的な3つの例を挙げると、1、2を飛ばしまして、第3に、決済システムの接続について、ASEAN各国の中央銀行が目指しているのは、現在よりも利便性は高いが安価に企業と個人が電子決済できるようになることである。その顕著な例がAPNであるといったことが表明されております。

ちなみに申しますと、今中略のところで第1、第2を省略したのですが、第1は関税引き下げ、第2は貿易の円滑化、それで第3で、この決済システムということが掲げられており、決済についての関心度合いが高いことがうかがわれるかと考えております。

以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは、議事に移らせていただきます。本日は、まず柏木委員から、決済に関する銀行業界の取り組み等についてご説明をいただきます。続いて、野村参考人、南雲参考人から決済をめぐるグローバルな潮流等についてお話をいただき、その後に一括して自由討議を行います。本日の議事はこのような流れで進めたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

それでは、柏木委員から、時間の関係もございますので、大変恐縮でございますが15分程度でよろしくお願い申し上げます。

【柏木委員】

三菱東京UFJ銀行の柏木でございます。銀行業界の取り組みについてご説明申し上げます。右肩に資料2と書いてありますA4のホチキス止めの資料でご説明いたします。本日は、全銀協会長行としての参加ではございますけれども、個別行の事例も含めてお話ししたいと思います。必ずしも銀行界全行の話ではない部分もございますし、私どもの私見が入ることもありますことをあらかじめご了承いただければと思います。

また、各論は今後スタディ・グループで個別に掘り下げられるのではないかと思いますので、本日は、許される時間の範囲で極力網羅性を意識してお話ししたいと思います。

それでは、2ページをご覧ください。アジェンダといたしましては、最初に銀行の決済関連の取り組み状況、トレンド、事例、お客様の声を、個人のお客様向け――リテールと呼んでおりますお取引、それから企業のお取引先向け、法人のお取引の順にご説明いたします。

次に、全銀協で検討しております全銀システムの検討状況、続いて、本邦におけます証券決済の取り組み状況をご説明した後、サイバー犯罪、あるいはサイバー攻撃の動向を中心に、決済の安定性・安全性に関して触れて、最後にまとめとして決済業務の高度化について整理したいと思います。

それでは、3ページをご覧ください。初めに、銀行の決済業務を取り巻く大きな環境変化を概観しておきたいと思います。インターネットやスマートフォン、タブレット、クラウド、ビッグデータをはじめとした各種情報通信技術の進展は引き続き目覚ましいものがございます。加えまして、お客様の事業活動においては、ますますグローバル化が進展しているということが言えるかと思います。

一方で、サイバー犯罪ですとか、サイバー攻撃の増加や各種法制度の変革等、決済をめぐる環境は大きく変化しております。このような環境下、銀行としては安心・安全で利便性の高い決済サービスを提供していくということが使命であると認識しております。

それでは、おめくりいただきまして4ページをご覧ください。ここでは、個人のお客様に関する取り組みをご説明したいと思います。この図は個人のお客様の決済手段を左に並べまして、その領域、市場規模、動向、弊行の取り組みを整理したものでございます。また、右の図表1では日米比較を載せております。先ほど事務局からご説明がありましたが、時点の違いはありますが、傾向は似ているのではないかと思います。決済は各国の歴史や個別の事情がございますので一概に比較はできませんが、日本では現金決済、それから振り込み、口座振替の比率が高めであるという特徴がおわかりいただけるかと思います。

こうした中、最近トレンドとして2つの大きな流れがございます。1つは、銀行取引が銀行の支店からインターネットやモバイルチャネルにシフトするという、ダイレクトチャネル化の流れでございます。もう一つは、現金からクレジットカード、デビットカード、電子マネーといった非現金決済手段にシフトしていくというキャッシュレス化の流れでございます。

こうした2つの流れをあらわす事例として、インターネットバンキングとデビットカードを取り上げてご説明したいと思います。5ページをご覧ください。左上の図表1は、弊行のチャネル別の取引件数の割合を推移で示したものでございます。傾向としては、支店の店頭やATMといったリアルチャネルの取引件数が減少して、インターネット、モバイルバンキングといったダイレクトチャネルの取引件数が伸びていることがおわかりいただけるかと思います。

また、図表2のとおり、インターネットは若年層だけでなく、高齢者の皆様にも普及しております。こうした動向を受けて、右側のとおり、銀行では、利便性の高いサービスということで、ユーザビリティーを高めるインターネットバンキングサイトのリニューアルを行ったり、あるいはスマートフォンの普及にあわせて、スマートフォンの画面で使いやすいサービス、あるいはアプリの提供を行っているところでございます。

おめくりいただきまして、6ページをご覧ください。続いては、キャッシュレス化に対する取り組みとしてデビットカードを取り上げます。図表1でございますが、これは世界的な傾向でございますが、クレジットカード以上にデビットカードが普及しております。日本ではJ-Debitに取り組んでまいりましたが、図表2のとおり足元の伸びは頭打ち感があるという状況でございます。このような中で、図表3のとおり、最近ではVISAやJCBと提携したデビットカードを発行する銀行が出てきております。

弊行も昨年の11月に取り扱いを開始いたしましたが、右側の図表4のとおり、発行枚数、取り扱い高とも順調に伸びてきてございます。デビットカードは学生や主婦などの、これまでクレジットを持たなかった層にも浸透する可能性があると考えております。また、現金を持ち歩く必要がなく、使い過ぎの心配もないということで、管理しやすいという点がセールスポイントではございますが、図表5のとおり、商品の認知度はまだ低く、課題と認識している次第でございます。

それでは、7ページをご覧ください。お客様から寄せられる声を見ますと、図表1のとおり、外部環境で揺るがない経営基盤ということで、銀行の健全性に対する期待が最も高いわけでございますが、決済の利便性ですとか、その次のネット取引チャネルの提供がそれに次いで重視されているわけでございます。

図表2は、デビットカードで何に利便性を感じているかを示しておりますが、現金を引き出す手間ですとか、現金を持ち歩かなくて済むというキャッシュレス化に対する声が大きいことがおわかりいただけるかと思います。

また、図表3のとおり、インターネットバンキングでは24時間、いつでも、どこでも利用できるというインターネットチャネル自体の魅力に加えて、残高照会・明細確認が簡単であるとか、振り込みが便利といった操作の利便性に対する声も多くいただいております。各行とも、こうした声に対応すべくダイレクトチャネルの拡充やデビットカードの発行に取り組んでいるわけでございますが、一方で、インターネットバンキングのセキュリティーに対するお声や、ホームページの使いやすさに対するご要望もいただいており、安全性・安定性と利便性の両面が求められているということになるかと思います。

それでは、おめくりいただきまして8ページをご覧ください。ここからは法人取引についてご説明いたします。この図は、左側に法人のお客様のさまざまな決済関連のニーズを並べて、中央にそれに対応する主な銀行サービスを挙げております。支払い、さまざまな回収、給与計算、公共料金支払い等、企業の基本的な決済ニーズに対して各行とも順次商品ラインナップを整備しているということでございます。

最近の法人取引での傾向としては、1つはデジタル化、ペーパーレス化の一層の進展ということと、もう一つは、グローバル展開に伴う資金管理ニーズの高度化というのが挙げられます。企業規模に合わせて多様なニーズが顕在化してきていると思います。

それぞれトレンドを示す事例として「でんさい」とグローバルな資金財務効率化サービスを取り上げたいと思います。それでは、9ページをご覧ください。ペーパーレス化に加えて、中小企業の資金調達の活用も増加しているのがでんさいでございます。電子記録債権は手形・小切手・振り込みにかわる新たな決済インフラとして創設されました。でんさいを導入することで、支払い企業にとっては支払い事務の効率化やコスト削減が、納入企業にとってはファイナンス機会の拡大や資金繰り効率化が可能になります。

図表3のとおり、平成25年2月、昨年2月にサービスを開始以来、件数を伸ばしており、26年度は90万件に達する計画でございます。ただし、図表1のとおり振り込みや手形に比べると、まだ大きな普及の余地があるということでございます。

でんさいの利用開始のタイミングについてのアンケートでは、図表2のとおり普及度合いを見て導入したい、あるいは取引先の要請を受けて導入したいという企業が多いですが、利用意向はあるということでございますので、今後一気に広まる可能性もあると思っております。例えば年間12兆円ある公共工事分野での活用が進めば、請負時のファイナンス機会も広がり、普及に大きな弾みがつくのではないかと思います。

それでは、おめくりいただきまして、10ページをご覧ください。グローバルな資金管理ニーズの流れに対応するものの一つとして、クロスボーダープーリングをご説明いたします。プーリングというのは、銀行に設置されましたプーリング口座を通じて、余剰資金のある子会社の資金を資金が不足する子会社へ回すなど、グループ企業内で資金を融通し合うことでございます。グループ全体での資産を効率的に運用することができます。

これを同一国内、同一地域を超えて融通し合おうというのがクロスボーダープーリングになります。こうした高度な資金管理サービスへのニーズが日系企業の海外展開ですとか、グローバルベースでの企業買収の進展に伴い増加しております。銀行としては、こうしたサービスを提供することで、日系企業の海外進出をサポートしております。

それでは、11ページをご覧ください。こちらは法人のお客様の声になります。でんさいに関しましては、普及が課題と申し上げましたが、すでにご利用いただいているお客様からは高い満足度のご評価をいただいております。

また、図表2のとおり、外国為替取引に対する期待を見ますと、送金・入金業務効率化への期待が高く、また大企業からは財務・資金リスクへの対応や、社内の資金管理業務の効率化へのご要望をいただいています。

今後の要望として、グローバルなキャッシュマネジメントサービスに関しては、欧米系の大手銀行に比べて一層のレベルアップを望む声もあり、各行が取り組んでいるところでございます。

それでは、おめくりいただきまして12ページをご覧ください。ここからは平成26年6月に公表された成長戦略を踏まえて全銀協で検討しております、全銀システムの稼働時間拡大と金融EDIの活用についてご説明いたします。全銀システムの稼働時間延長に関しましては、年内にその方向性を決定すべく検討中でございます。国内のニーズ調査を実施したところでは、現状に特段の不便はないという声や、深夜から早朝の時間帯はニーズが低く、金融犯罪の被害に遭う可能性が増える等の安全面を懸念する声がありましたが、個人、法人とも、平日の夕方から夜の時間帯、あるいは土日、祝日は相応のニーズがあるということを確認いたしました。

13ページに各国の決済システムの一覧を載せておりますが、こうした海外の事例も踏まえて平日の夕方以降、及び土日、祝日を含め、全銀システムの稼働時間を拡大すべく、現在、案を検討しているところでございます。このコンセプトに従って、年内に最終報告をまとめる予定となっております。

次に、右側、金融EDIに関しましては、振り込みにおけるEDI情報の添付拡張に関して検討しております。産業界全体のニーズ調査を、関係省庁や業界団体と連携して実施中でございまして、また商流情報と決済情報の連携、すなわちEDI情報の添付拡張が実現した場合の流通業界における決済業務、例えば売掛金消し込み業務等の効率化を検証するため、流通業界と11月に共同システム実験を行う予定になっております。これらを勘案しつつ、スキームや実施時期を検討してまいります。

本件は、先週木曜日の全銀協会長会見で中間報告させていただいたところでございます。

それでは、おめくりいただきまして、14ページをお開きください。証券決済の分野では、国債の利便性向上を通じた円・国債のグローバル化を推進する動きが加速しております。新日銀ネットは、2016年2月に稼働時間を現在の16時30分から21時に延長する予定でございます。この延長により、国債や円資金が欧州時間の午前中の時間帯まで決済可能となります。

国債の決済期間のT+2からT+1への短縮化に関しても取り組んでおり、実現すれば国債市場、短期金融市場の流動性、安全性、効率性の向上につながり、国際競争力強化に資するものと考えられております。実施時期は2017年以降となる見込みでございます。

また、アジア開発銀行主導のプロジェクトで、ASEAN10カ国と日本、中国、韓国の中銀システム、証券決済システムを相互に接続することを目指していくプロジェクトがございます。イメージは、図表の2をご覧ください。決済の効率化、安全性向上につながると期待されております。決済インフラの構築に際し、コスト効率、安全性、柔軟性、アクセス利便性、段階的統合等の8原則を採択し、検討中というステータスでございます。

それでは、おめくりいただきまして、16ページをご覧ください。ここからは決済の安定性・安全性に関してサイバー犯罪攻撃を中心にご説明申し上げます。先ほどご紹介しましたお客様の声にもありますように、決済の安全性・安定性は大事なテーマだと認識しております。まず、お客様が攻撃の対象になります、いわゆるサイバー犯罪でございますが、近年急速に増加しております。新たなフィッシング手法やマルウェアにより、インターネットバンキングのID、パスワード、乱数表情報などを窃取する手法で、インターネットバンキングによる不正送金等の被害が発生しているという状況にございます。

また、企業が攻撃対象となるサイバー攻撃は偽装メールを使用したメール型攻撃、あるいは標的型攻撃、それからサーバの脆弱性をついてサーバに侵入するサーバ型攻撃、サービス停止を狙った大量通信型攻撃等、お客様の情報漏えいやサービスダウンによる決済機能停止等を狙ったさまざまな手法が発生しております。

17ページをご覧ください。こうした高度化する犯罪等の手法に対しましては、17ページにお示しのとおり、個人、法人とも異常取引検知、マルウェア検知、お客様のパソコン保護、本人認証の強化、トランザクション署名導入等、さまざまなシステム対応を行っているところでございます。加えて、(3)にございますように、スマートフォン対策等、現在は被害が少ないですが、次に迫る脅威にも継続的に対応していく必要がございます。また、右側にお示ししているように、サイバー攻撃については、攻撃防止から被害回復にかけて多層的な対応を準備しております。また、サイバー犯罪、サイバー攻撃はグローバル規模で展開されるため、国内外や官民での連携強化が重要と考えております。その1つとして、左側(2)のとおり、サイバー攻撃などの情報を金融機関同士で共有するため、金融ISACが今年の8月に立ち上げられ、米国の同様な機関でありますFS-ISAC及び会員の海外金融機関と連携しているところでございます。

それでは、おめくりいただきまして18ページをご覧ください。以上、決済に関する取り組みをご説明してまいりました。銀行各行による商品・サービスの拡充に加えて、銀行業界等ではそれらを支える金融インフラ・ネットワーク基盤の整備にも取り組んでおります。

それから、19ページにもその主なものを掲げております。全銀ネットの処理件数増強、稼働時間の延長、金融EDI活用や、新日銀ネット、外為円決済の時間延長に加えて、先ほどご説明のありましたようなAPNですとか、グローバルなATM接続に関しても検討しております。

加えて、法制度の変革に関しては、チャネルの多様化等により利便性を追求する一方で、犯罪収益移転防止法等マネーロンダリング対応の強化等にもしっかりと取り組んでいく必要があると考えてございます。決済は銀行が長年にわたり築いてきた信頼・信用を基軸としていくことが大切だと考えております。ITの進展、お客様の利便性向上、安全性・安定性の追求、法制度の変革等をバランスよく踏まえて決済サービスを高度化していきたいと考えております。

以上でございます。ご清聴ありがとうございました。

【岩原座長】

どうもありがとうございます。後ほどまとめてご質問、ご審議いただく時間を予定しておりますが、ただいまのご説明の内容につき、取り急ぎご質問されたいということがございましたら、どうぞ。よろしいですか。

それでは、続きまして、野村参考人、同じく15分程度でよろしくお願い申し上げます。

【野村参考人】

日本総合研究所の野村と申します。本日は、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。私のほうからは、決済の高度化を軸にした欧米の金融機関のイノベーションの動向についてご報告させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

本日のご報告のポイントを簡単に5つほどまとめてみました。日本でもそうだとは思うのですけれども、欧米の金融機関は特に経営の変革について新しい技術を取り入れようと取り組んでいるところです。例えば、顧客とのあらゆる接点を確保するためにスマートデバイスの取り込みに注力しています。あるいは、例えばネット事業者、金融ITベンチャーが技術力や顧客基盤をベースに新しい業務として金融サービスに参入しようとしております。そういった事業者に対して積極的に提携をしていこうということで、既存の金融機関と新しい事業者の間の垣根というものが少しずつ低くなってきているのではないのかと考えております。

こういった動向を見てみますと、決済の高度化というのは手段として非常に重要だと思うのですけれども、この手段を軸にして新しいビジネスモデル、あるいはエコシステムの構築といったところに視野を広げていく必要があるのではないのかと考えております。本日は、大きく次の3点についてご報告させていただきたいと思っております。

1つ目に欧米金融機関のイノベーションへの取り組み動向について、2つ目に決済の高度化について、3つ目にそういった動きを背景に新しいビジネスモデルを模索している動向についてご紹介してまいりたいと思っております。

まず最初にイノベーションをめぐる動向でございます。こちらのほうは改めてご説明するまでもないと思うのですけれども、簡単に申し上げますと、欧米金融機関のイノベーションへの取り組みの背景には、大きく3つのことが挙げられるのではないのかと考えております。

1つは、金融危機において経営者に対して情報がきちんと行き渡っていなかったのではないのか。そういった反省をもとに、経営者の意思判断や、情報を迅速に経営者に上げる、そういった点をITインフラの面から支援していこうという取り組みです。そうした中で、例えばリスク管理の高度化、顧客管理の高度化、あるいは収益モデルの再構築が進められているところです。

もう一つが、今まで、金融サービス業というのがあまりにも収益の確保に走り過ぎていたのではないのかという反省をもとに、リテール金融に回帰した取り組みが認められます。あわせて、失った顧客の信用をどうやって取り戻すかという観点からもIT技術が使われているようです。さらに、これが一番大きな背景だとは思うのですけれども、インターネット、携帯電話、スマートフォンなどの普及が拡大しております。それから、こういった情報機器の普及に伴って、消費者自身の行動も変化しています。

それに伴って、先ほど申し上げましたようにネット事業者、あるいはベンチャーが新しいサービスを武器に金融サービス業に入ってきており、この環境変化にどうやって対応していくか、そういったところも見据えながらイノベーションの推進に取り組んでいるというふうにまとめることができるかと思っております。

例えば、JPモルガン・チェースのダイモンCEOが今年5月のユーロマネーの会合で、「私たちのライバルは同じ銀行業界ではなくて、これからはGoogleやフェースブックといった企業と競合することになるだろう」ということを発言しています。

例えば、Googleはユーザー数5.4億人、AppleのiTunesのアカウント数は8億人、facebookに至っては10億人以上のユーザーがいるということで、これだけの顧客基盤、それから技術力を武器に金融サービス業に入ってきたときに、一体金融業界はこれにどうやって対峙していったらいいのだろうか、そういった危機感が背景にあってこのような発言につながっているのだと思います。

一方、金融機関側もこういった状況に手をこまねいているわけではありません。例えばウェルズ・ファーゴ銀行、アメリカでも最も収益力のある銀行という点のみならず、先進的な取り組みを進めているという点でも非常に知られております。ウェルズ・ファーゴは、2000年代半ばから、顧客との接点を確保するために積極的にソーシャルメディアの活用を進めております。銀行に対してアプローチしてくる情報だけではなくて、銀行外にあふれているソーシャルメディアの中でやりとりされているいろいろな情報をモニタリングしていこうということで、今年ソーシャルメディアコマンドセンターというものを設置しました。これは30人のスタッフがソーシャルメディアの動向を、自行に関する噂や情報などをモニタリングしながら分析しているという部署でございます。また、ウェルズ・ファーゴ・ラボというウェブサイトを設置していまして、こちらは今流行りのオープンイノベーションの1つというふうに捉えればよろしいのではないかと思っております。銀行の中だけでは顧客のニーズをきちんと捕捉していくことは難しいので、顧客の意見を積極的に自分たちのビジネスに取り入れていこうということで、顧客が参加できる最新のアイデアや技術の使用を検討したり、評価する場というものを設置しております。

最近話題になったのは、具体的な成果は上がってはいないということなのですけれども、例えばGoogle Glassを金融サービスに使ったらどんなことができるのだろう、そんな意見を募集するといったことも取り組んでいるようです。

それから、もう一つ焦点になっているのがビッグデータだと思います。ビッグデータに関しましても、今米銀の現状としては、あまりビッグデータを積極的に活用できる環境ではないということは聞いておりますが、そういった状況であっても、これからビックデータを活用できるとなったときに、その時点から取り組んでいては遅いということで、データ解析の責任者、チーフデータオフィサーと呼ばれる役職を設置して取り組みを進めているようです。

それから、話題になったビットコイン、これに関しましても静観しているだけではなくて、自分たちで積極的に、例えばビジネスに取り入れたらどうなるか、ルールをどういうふうに設定したらいいのか、そういったことを考えるための研究会を主催するなどしています。

それから、ちょうど10月1日に設置するというプレスリリースがありましたが、今まで金融機関がベンチャーに対して投資するというのは、あくまでも投資家として収益機会を求めるために投資しておりましたが、それが変わりまして、自分たちのイノベーションにもベンチャーが必要であるということで、金融機関自身がこのベンチャーを育てるハンズオンプログラム、彼らは「スタートアップ・アクセラレータ」と呼んでいるんですけれども、そのような試みも開始しております。

ウェルズ・ファーゴが金融ベンチャーに注目している理由としては、最近のアメリカでの新しい金融サービスというものは、金融ベンチャーが開発し、サービスを提供しようとしている、そういった動きを背景にしたものであると考えられます。アメリカは起業大国と言われていますけれども、金融業界も例外ではありません。実際、アメリカではこの金融ITベンチャーが自分たちの持っているアイデアですとか、サービス、ビジネスモデル、技術、こういったものを発表する、いわば金融ITベンチャーの見本市とでも呼べるような催し物も盛んに行われております。

その代表的なものがFinovateというイベントで、毎年4回開催されておりまして、1,000名以上の金融ITベンチャーのみならず、金融機関大手、ベンダー、ベンチャーキャピタル等々が参加しております。本当は内容をご紹介させていただきたかったのですが、時間の関係で割愛させていただきます。なお、こちらのURLをクリックしていただくと、実際のプレゼンがどのようになされているのかをごらんいただくことができますので、試してみていただければと思っております。

私は2013年の春、サンフランシスコで行われたFinovateを見に行ってまいりました。もちろん玉石混淆なのですけれども、非常に印象的だったのが、例えばウェルズ・ファーゴは30人ぐらいの人たちをこのイベントに送り込んでいる一方、日本からの参加者はどれだけいたかというと、10名にも満たないくらいということで、情報感度の違いというものを感じました。その際の参加者名簿を見てみましたところ、シカゴ連銀の方も、1名だけではありましたが参加しているというような状況にございます。

こういったイノベーションへの取り組みは、米銀自身のイノベーション投資の動向にもあらわれていると見ることができるかと思います。こちらのグラフは、米銀のIT予算の優先投資分野についてアンケート調査をしたものでございます。金融危機直後はレガシーシステムの維持管理などを中心とした、「維持への投資」が中心でしたが、ここに来て、新しい技術、あるいはデータなどをどうやってサービスの高度化、顧客体験の向上に生かそうかということで、「変化への投資」が増加しております。彼らは“Change the Bank”と呼んでいるんですけれども、こちらのほうの投資の割合が増えてきています。

そうした中で、今欧米の金融機関が注目しているイノベーションというのは、大きく4つ挙げられるかと思います。欧米の金融機関の大手幾つかにヒアリングをしたり、あるいは彼らの決算報告書、プレゼンテーションなどを見ますと、この4つに焦点を当てているように感じられます。1つが電子決済、もう一つがスマートデバイスを核にしたチャネル改革、それからデータを活用するビッグデータ、そして顧客との接点としてのソーシャルメディア、この4つに焦点が当てられているように思われます。

では、続きまして、決済の高度化をめぐる動向についてご紹介したいと思います。こちらも、既に前回、特にデジタル決済ですとか、モバイル決済のご紹介があったかと思うので、かいつまんでポイントを述べてまいりたいと思っております。決済をめぐる最近の動きについてはご承知のことかと思いますが、特に電子決済市場、それからモバイルペイメントの決済金額が非常に大きく拡大してきているというのがおわかりいただけるかと思います。

それから、もう一つ、我が国の事情ということを考えますと、2020年の東京オリンピックに向けて海外から来る人、あるいは日本全国から集まる人がストレスなくサービスを受け、資金決済ができる環境をつくり上げる、それが1つ、焦点になってくるのではないのかと思っております。そうしますと、マルチデバイス、マルチペイメント、マルチカレンシー、これにビッグデータを付加して、どのような付加価値サービスが提供できるか、そこら辺が2020年までの決済高度化をめぐるわが国での焦点になってくるのではないのかと思っております。

では、背景をご紹介していきます。ご承知のとおり、今や携帯電話よりもスマートフォンの出荷台数のほうが大きくなっている、あるいはパソコンよりもタブレット端末の出荷のほうが大きくなってきているというのがあるかと思います。それから、もう一つ重要な点が、スマートフォンの搭載機能というものがいろいろなサービスに活用されているといことです。金融サービスも例外ではなく、スマートフォンで搭載されている機能というものが、例えばアメリカなどでは小切手をデジタルカメラで撮影して、それを銀行に送ると、それで資金化ができるといったようなサービスなどが実現いたしております。

次のページをおめくりください。このスマートデバイスに普及に伴って非常に期待されているのがモバイルコマースの拡大です。24時間、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる環境がスマートフォンによって実現されるということになると、モバイルでサービスだとか、商品を買う機会が増えてまいります。そうなってくると、必ずついてくるのがモバイルペイメントになります。そうしますと、まずモバイルのネット環境での決済というものが消費者にとってなじみやすいものになってまいります。それとともに、モバイルを使ってリアルの店舗等でも決済する、そういったところまでモバイル決済が広がってくるのではないのかと考えております。例えば、後ほどまたご紹介しますけれども、位置情報やソーシャルメディアとの連携のSoLoMo、あるいはネットとリアルの相互送客と言われるO2O、こういったところのビジネスモデルが注目されるようになっております。こちらのスライドは、前回ご紹介があったと思うので割愛させていただきます。

もう一つ、先ほどご紹介しましたFinovateというイベントで焦点が当てられていたのがスマホを活用したセキュリティー手法でございます。スマートフォンのデジタルカメラやスキャンなどを利用して、生体認証を取り入れることができないかということで、Finovateの場でもいろいろなご紹介がありましたし、実際こういったものが実用化できないかということで取り組みも進められております。

生体認証の種類にも、本当にいろいろなものがございまして、虹彩、眼球の血管、指紋、あるいは静脈、音声、顔などがあるのですけれども、ただ、その普及にはハードルがあるということも言われております。例えば、採取しました生体認証が果たして正しく認識できるかどうか、そういう技術的な問題というものも1つあるようです。もう一つが、身体情報を外部のデータベースに登録するということに関して、消費者の抵抗があるのではないのかということです。最近発表されましたAppleのiPhoneを使ったApple Payで指紋認証が取り入れられておりますので、このApple Payの今後の動向というものも、生体認証の行方に影響を与えるのではないかと見ております。

ご承知のとおり、スマホの普及を背景に、モバイルペイメント関連の活動が非常に大きく膨らんでおります。

次のところを見ていただきますと、モバイルペイメントにさまざまな事業者が入ってきているというのもあるのですけれども、もう一つ、さらに注目したいと考えておりますのが、電子商取引を行っている、例えばアマゾンだとかアリババ、あるいは日本でいえば楽天といったところが、決済からさらに進んで総合的な金融サービスを提供しようとしているところ、これが1つ、注目するべきことなのではないかと考えております。

それから、当然非常に大きい顧客基盤を持っているSNSからの金融参入というものも常に取り沙汰されていますし、実際にLINEはLINE Payというサービスを始めるという発表もありました。

ここまではBtoCの決済のお話だったんですが、もう一つ、決済に絡んで注目すべきだと考えているのは決済インフラのグローバルな規模での標準化、あるいは共通化の動向になります。インターネットの世界では、情報を広くグローバルに流通させるために全世界的に通信手順ですとか、メッセージ言語の標準化といった取り組みが行われてきました。

まさにこれと同じようなことが決済の世界でも進められていると捉えたらいいのではないのかと思っております。こちらに挙げたのはEUですとか、アメリカ、東南アジアの動きなのですけれども、またこの後、詳しいご説明があるようですので、内容については割愛させていただきます。

次のページには、これに絡みまして、リテール決済のインフラの利便性向上に関する関心が高まってきているなか、当局と関連業界が協働でこれに取り組むといった動きも見られるということで、ご参考までに見ていただけたらと思っております。例えばFRBでは、エンドユーザーの利便性向上のために資金決済システムの将来像はどうあるべきかということで意見募集を行っております。基本的なスタンスとしては、既存の決済手段の安全性、アクセス性、これらは確保しつつ、どうやって技術革新の成果に取り組んでいくかといったところを重視して環境整備に取り組むという考えが示されております。

最後に、こういった決済の高度化などを軸として金融のビジネスの構造変化がまさに起きていると言えるかと思うのですけれども、このイノベーションの進展が金融機関に新しいビジネスモデルを考えさせる契機になっているというところをご紹介してまいります。1つが、先ほどデジタルチャネルと申し上げましたけれども、チャネル改革への取り組みということが進められております。

1つには、スマートデバイスの普及で消費者も変化しているし、接点も変化しているということもあります。もう一つが、やはり金融危機を背景にコスト削減の必要性が高まってきているということで、この点からもチャネル改革への取り組みというものを進めていかなければならない。そのような考えがあるということです。こちらの図はチャネルごとのコストは、デジタルチャネルのほうが非常に低コストで済むというものです。そこで、どうやって店舗を改革していくかということをJPモルガンなどが考えています。

1つご紹介したいのがウェルズ・ファーゴのチャネル改革の取り組みです。スマートデバイスがこれだけ普及してきているということで、スマートデバイスを核にしてチャネル改革に取り組まなければいけないということがあるのですけれども、ウェルズ・ファーゴの調査によると、実はデジタルチャネルだけ使う世帯よりも、2つ以上のチャネルを使う世帯のほうが多いという調査結果が出てきているようです。

それから、もう一つが、複数のチャネルを使う顧客のほうが、それだけ金融機関との接点が多いということで、収益機会も大きいということがあります。そこで、新しい今の時代に合った店舗、あるいはATM、それにモバイル決済を組み合わせて、どのようにさらに顧客とのつながりを強めていくか、そういった視点からチャネル改革が進められております。

その考え方というのがオムニチャネルと呼ばれるものです。オムニチャネル、これは小売業界から出てきた考え方のようなのですけれども、これを金融機関も取り入れていこうということです。要は、いろいろなチャネルがあるなか、チャネルごとに個別に顧客と取引を行うのではなく、1人の顧客の情報を全てのチャネルで統一的、一体的に取り扱って、ユーザーのそのときに置かれている環境ですとか、ニーズに合ったチャネルで適したサービスを提供していく、これがオムニチャネルの考え方です。さらにはビッグデータも活用して、よりお客様の属性、状況、取引履歴に応じた柔軟なサービス提供、顧客対応を行っていこうと考えられております。全てのチャネルを1つのブランドとして顧客に意識させることで顧客の囲い込みまでつなげていこうという考えもあるようです。

この中でビッグデータと先ほど来、申し上げておりますけれども、やはりこの決済の高度化の文脈の中でビッグデータの活用というものが不可欠になっていくということもあるのではないのかと思っております。こちらはその活用例ですので、ご覧いただければと思っております。

次のスライドをご覧ください。先ほど来、決済の高度化についてご紹介してまいりましたけれども、リテール金融の分野では単なる決済の高度化からさらに発展して、デジタルのさまざまな技術を融合したビジネスモデルが模索されているというふうに言うことができるのではないのかと思います。昨今話題になっているOnline to Offline、それもその1つだと言えますし、このO2Oにさらにソーシャルの要素を重視して加えたもの、これがSoLoMoと呼ばれるものです。

ソーシャルメディアの口コミが消費者の購買行動に与える影響が非常に大きいということで、単に位置情報だけではなく、ソーシャルメディアも活用しながら、どうやって顧客を実店舗に引き込んでいくかといったところをクレジットカード会社などが実際にサービスとして開発、提供を模索しているということを聞いております。

こういったことから考えましても、決済の高度化というのは1つのツールであると言えます。一方で、顧客のニーズがどこにあるのかというのを考えながら、さまざまな技術を融合して、新しいビジネスモデルをつくり上げていこう、これが1つの焦点になっているということが言えるのではないでしょうか。

最後にまとめなのですけれども、特に米銀の動向に焦点を当てさせていただいたのですけれども、米国の状況を考えますと、1つには、ベンチャーを支えるプラットフォームというものが存在しているということが大きいと思います。それから、もう一つには、ベンチャーを取り込もうとする大手金融機関の動きというものも融合して、新しいビジネスモデルの開発へとつながってきているのではないのかと思います。

既存のお客様を維持しなければいけない金融機関にとっては、冒険的な新しいサービスを開発するというのは非常に難しいと言えます。そういった中で、ベンチャーを支えるプラットフォームで続々と新しいFin Techと呼ばれるベンチャーが登場してくるというのであるならば、これを自分たちのビジネスにうまく取り込んでいこうと。そのような形でイノベーションが進んでいる、その1つが決済の高度化だと捉えることができるのではないのかと思っております。

一方、日本の現状を見てみますと、1つには、ベンチャーが必ずしも多くないということがございますし、金融機関のイノベーションに対する取り組みというものが、先ほどのFinovateのような催し物もなかなかないですし、そういったものに参加する金融機関もまだそれほど多くないということで、そういった意味では初期段階にあるのかなというところです。

もう一つ重要なのが、やはり金融機関がベンチャーを取り込もうと考えたときに、もしかしたら、例えば今の業務範囲の規制などがネックになる可能性もあるのではないのか。そういったところも、今の時代に合わせて見直しを進める必要もあるのではないのか、そのような指摘ができるのではないかと思います。そういった環境を整えないと、いくら決済の高度化ですとか、エコシステムをつくりましょうと言っても、なかなか金融機関自身がそういったビジネスに飛び込めないというところもあるのではないのかと考えております。

最後に、これはご参考までですが、私が以前総務省で2020年の東京五輪に向けて、誰でも、ストレスフリーで決済できるようなシステムの構築が必要なのではないでしょうかということで発表させていただいた資料です。これを見ましても、やはり金融機関に限らず、いろいろな事業者の協力が必要ですし、あるいは省庁横断的な取り組みが必要な部分もあろうかと思います。

そういった広い視野でもう一度決済というところ、あるいは決済を核としたビジネスモデルのあり方、そういったものを見ていく必要があるのではないのかということです。

長くなりましたけれども、私のほうからのご報告は以上になります。

【岩原座長】

ありがとうございました。後ほどまとめてご質問、ご審議をいただく予定でございますが、ただいまのご説明につき、今ご質問しておきたいということがございましたら、どうかお願いします。よろしいですか。

それでは、後ほどご議論いただくことにいたしまして、続きまして南雲参考人に、同じく15分程度でご報告をお願いいたします。

【南雲参考人】

富士通の南雲でございます。本日は貴重な場にお招きいただきまして、ありがとうございます。私のほうからは、少しテーマを絞りまして、欧州の動向というところでありますが、決済をめぐりまして企業財務の視点のほうから少しご説明させていただければと思います。

ページをめくりまして、先ほどスライドのほうでご紹介がありました欧州の単一ユーロ決済圏、SEPAでございます。こちらは、シングル・ユーロ・ペイメント・エリアの略です。欧州、EUの中でしたら、皆様、誰でも、いつでも、国内取引と同じぐらいの利便性の高さ、あるいは手数料の低さで取引ができる、決済処理ができるようにという構想で立ち上がっております。

本日の内容は、こちらに書きました5点をご紹介させていただきたいと思います。まず概要をご説明申し上げまして、導入の背景、これは政府プロジェクトということで、難しい単語等々も出てきますが、SEPA以前の決済環境がかなり不便であったという反省から、それをどのように変えていったかというあたりを、まずご紹介いたします。その次に「道具立て」と書きましたが、決済システム自身の特徴ということで若干補足させていただければと思います。続きまして、企業財務としまして、主にBtoBの観点からの利活用という目線です。富士通にはドイツに関連会社がございまして、そちらが一番大きな海外拠点ということもありまして、ユーロの中心部の現場からの話も幾つか拾ってまいりましたので、ご披露できればと考えてございます。最後に、まとめとして、これはぜひとも今後参考にしていただきたいという、ちょっとショッキングな資料がありましたので、後ほどご説明できればと思っております。

それでは、まずSEPAの概要というところから始めたいと思います。中表紙のほうに若干キーワードを散らさせていただきました。“Beyond Theory Into Practice”というところなのですが、これはSEPAの進捗報告書の副題でございまして、もう理論を闘わせる段階は過ぎた、さっさと始めようじゃないかという委員会からのテーゼという形で、とにかく始めなければならない状況に置かれているということを何とか伝えたかったと聞いております。

1ページめくっていただきまして、スライド3のところですが、概略という形で一覧表にまとめております。ここではさらっと申しまして、後ほど詳しくご説明したいと思います。まず左上のところに法制度と書いております。法制度としての枠組みということでは、EU全域を包含しております。各国政府とのいろいろなやりとり、ネゴシエーション、対立等々を超えてきまして、何とか現在立ち上がってきているというところがございます。ECの規制、指令、ダイレクティブという物々しい単語が飛び交っておりますが、そのぐらい政府としての肝いりのプロジェクトということでご理解いただければと思います。

その下、ロードマップを記載させていただいておりますが、1999年のユーロ誕生から皮切りしてございます。その先、最終対応ということでは2016年が予定されておりますが、その間幾つか紆余曲折がございまして、現在EUの加盟国ということで34カ国がSEPAに対応しているという状況になってございます。

右上の特徴のところで、キーワードを先行して記載させていただきました。まず適用通貨は、ユーロだけのネットワークという意味で捉えていただければと思います。その下に耳なれない4文字、3文字が並んでございますが、こちらは金融決済の中で、標準として使われるようになってきているナンバリングです。番号体系ということでIBAN(アイバン)、あるいはBIC(ビック)というふうに呼びならわされております。後ほど詳しく説明いたしますが、以前の環境ですと、口座番号とか、銀行の支店コードとか、そういった数字が各国のいろいろなフォーマットで飛び交っていたものを統一したという意味でございます。

その次のXML形式、これはシステム的な用語で恐縮ではございますが、人間と機械の接点が、できるだけ人間にも優しく、機械にも優しくと、良いところ取りを何とかしようという形でのマークアップランゲージということで体系化されており、いろいろなメッセージの記述方法を定めているものでございます。Xがextensibleの略でございまして、いろいろ拡張ができるということで、単なるテキストメッセージではなくて、いろいろな構造体といいましょうか、例えば銀行取引を行う店や銀行などのコードをまとめたりとか、あるいはコード自体をまとめたり、そういったようなデータを幾つか構造化できるような仕掛けでございます。こちらを全面的に採用した金融メッセージの標準がございまして、ISO20022という標準で取りまとめられております。このあたりも後ほどご説明できればと思います。

その下の箱に少しご注目いただきたいのですが、EU政府主導のプロジェクトと冒頭申し上げましたが、なぜそこまでしてこれを立ち上げたのかというところでございます。「欧州をより一層ダイナミック、かつ競争力のあるものにしていく」、「経済成長及び雇用創出」、こういったような単語が並んでおります。後ほどご説明申し上げますが、この構想を立てたときに、ヨーロッパ経済は低迷してございました。GDPにしましても、雇用率、失業率に関しましても米国とかなり水をあけられた状態でして、何とか浮揚させていかなければならないという固い決意のもとに立ち上がったプロジェクトということで、これらのキーワードを示しております。その下は利用率のグラフですが、途中からカーブが急に立ち上がった後、ほぼ100%という形で現在に至ると、こういったような概観でございます。

それでは、その次のトピックスと題しましたスライドで、若干詳しく見ていこうと思います。単一ユーロ決済圏と訳してみましたが、ほかの、例えばEU在日代表部では、単一ユーロ支払い地域と言ったりして、訳語は固まっていないようなのですが、今日は決済圏という意味で、ペイメンツ・エリアを捉えてみたいと思います。

ベースとなるEC規制ということでは、2009年の№924という規制がございまして、その前に2001年までさかのぼるのですが、そちらの修正条項という形で発効されました。時の経過の中で幾つか紆余曲折があるというあたりをこの辺で感じ取っていただければと思います。

その下は先ほど申し上げました定義でございますが、1つのリテール決済圏という意味合い、これを地域という大きなくくりで考えるということで、まずはEU全域と定義しております。その中にいれば、誰であろうと、あるいは支払先や受取先がどこであろうと、国内と同じような支払い環境が享受できるといった意味でございます。政府プロジェクトということで、先ほど申しました文章がなかなかの迫力を持って語られております。

それから、もう一つ、IBANとBICの下になりますが、商品的には口座振込と口座引落、それからカードの処理ということで、3つが挙げられてございまして、このあたりをかなり大胆に刷新してございます。今日はBtoBのお話ですので、カードのほうは割愛させていただきますが、振込と引落のところでいろいろな標準化が進んでいるというあたりをご紹介しようかと思います。

例えばどのような標準化があるのかというのがその次の行ですが、例えば送金したらいつ相手に届くのだろうか、あるいは引落を請求した場合にいつ自分の口座に入金するのだろうか。そういったような期日管理といったことも含めて取引を定める、その期日プラス・マイナス何日以内にこういう仕事をしてください、そこまで標準化を詰めてございます。現在語られている最終的な移行期日、全ての国、全ての団体がこのSEPAに切り換わり、旧来の決済システムを廃止してSEPAのほうに切り換わるという、そういった年限を切りました。年限を切ったおかげで新しいシステムの利用がかなり進んでいるという裏腹の関係にございます。それが今年の2月1日、あるいは2年後の10月31日といったあたり、この辺の違いはユーロ通貨を使っているか、使っていないかといったところで変えてございます。いずれにしましても、従来のシステムはもう捨てましょうという意味合いで、先ほどのInto Practiceというところにつながる話になってございます。

ページをめくっていただきまして、決済システムという観点でどういう変更点があったかというところをまとめました。上半分は先ほど申しましたことなので割愛させていただきますが、四角印の3つ目、新しい取引コードというふうに書きました。これは、送った金額が何の金額かを示すコードでございます。例えば従業員の給与の金額、ボーナスの金額、あるいは年金の支払いの金額、そういったような資金の中身を表わすコード類ということです。また、この取引は振り込みか、引き落としか。あるいは、送金の取り消しなのかということも表わすことができます。そういったような取引コード、各国さまざまなコード体系、コードの中身ということで作られていたのですが、今回SEPAの枠組みの中で全て統一し、どの国もこのコードで送り、明細を書き、受け取り処理してくださいと、そういう意味合いでございます。

それと同時に、例外処理、例えば送金して承認もされてしまったのですけれども、やっぱり取り戻したい、そういったような例外処理に関しましても、何日前にこれをアナウンスしてください、あるいは何日前にこれを処理してください、そういった細かい事務処理のタイムラインまで定めていると。そのぐらいの標準化が進んだ決済システムネットワーク、それがSEPAという形で動いている次第でございます。

6ページは対象地域を地図であらわしたところでございます。色の薄いところが対象外、濃いところが対象地域であります。全EU諸国およびEUに加盟していない幾つかの国々も含めて、対象地域を定めております。数値的な表現としましては、市民の数、この辺は各国人口の合計数ですが、5億人超ということでございます。あるいは、決済サービス事業者、この決済サービス事業者に関しまして少しかたい定義がございます。後ほどご説明しますが、そちらのサービス事業者で振り込みがサポートできます、あるいは口座引き落としがサポートできますといったサービスレベルの違いで少し濃淡がございますので、数字が変わっているという意味合いがございます。いずれにしましても、このSEPAの中で飛び交う決済メッセージは全てユーロ建てとなります。

めくりまして、取引量の推移が拡大したというグラフを載せました。上のほうがSEPAの口座振り込み、SEPAクレジット・トランスファーの略でSCTと呼びならわしてございます。そちらのほう、2008年ぐらいから進んでいるのですが、なかなか利用が伸びません。後ほどご説明しますが、EC委員会のほうで旧来のシステムの延命策のところをなかなか捨て切れませんでした。期日を定めるまでに紆余曲折していましたというところが、このグラフのなだらかな線のところであらわされております。

意を決しまして、もう昔のものは捨てようといったあたりが2012年の後半、その辺からグラフが立ち上がってきているかと思います。直近のところでまだ100%に若干届いておりませんが、このあたりは例外的な決済機関が残っているというだけのことで、完全な移行は時間の問題であるという観測が出てございます。

その下は振り込みの逆で、引き落としのことでございます。SEPAダイレクト・デビット、SDDと呼んでございますが、こちらのほうは2009年の半ばから少し遅れてスタートしてございます。いずれにしましても、2014年の今はかなりのパーセンテージということで、あと一息で100%という状況でございます。このぐらい普及をしましたのも、政府の肝いりということで頑張ってこられたところかと観測される面でございます。

その辺で1つ、ニュースを抜いてきました。スライド8のところなのですが、そういったような強権を発動するときに嫌がる金融機関が出たり、あるいはちょっと待ってくださいとロビー活動が盛んになったりするという傾向がありますが、そのあたりを全て吹っ切りましたというニュースでございます。その理由付けということで、このSEPAを使うことでこれだけの経済効果が見込めるという部分、これをEC委員会のほうが算定いたしまして、総額1,230億ユーロと、相当の金額の経済効果があるということで最終的に押し切ったと聞いてございます。

こういったような経緯、政府肝いりで今日に至るというところでございます。次のページ以降、若干過去を振り返りまして、なぜそこまでやったのかというところを少し触れてみたいと思います。10ページはEUの概略でございますが、GDPでEUとアメリカ合衆国が肩を並べ、その後に中国、日本と続いているというぐらいの大雑把な感覚でお捉えください。このEUとアメリカのベンチマーク争いということで幾つかヒントが生まれてくるかと思います。

その下はEUの歴史でございますが、これを話しますと時間が足りなくなるので割愛させていただきますが、右のほうに濃いブルーで欧州連合となっております。このあたりでさまざまな活動が活発化してきたというふうにご記憶いただければと思います。

その次のページが夜明け前と、多少感傷的な題名をつけてみましたが、本当にどうにかしなければいけない状況まで追い込まれたと、個人的に見ているところでございます。経済的低迷と混沌というふうに少しかたい言葉を使いましたが、GDPの伸び率、雇用、失業率等々、いずれを取りましても対米でかなり見劣りがしている。せっかく共同体をつくったのにどういうことかというプレッシャーがかかっておりました。

その結果、金融制度、あるいはEUの全体の枠組みがどうも経済の失速を招いているのではないかと言われておりました。その裏は、企業活動の足を引っ張っているのではないかという推測、推論が基になっておりまして、このあたりをどうにかしようということで、成長と雇用、この辺のキーワードでかなり経済的な議論も盛んかと聞きましたが、そのあたりを政府肝いりでどうにかしなければいけないというあたりを示したわけでございます。

その時の資金決済環境、決済がどういう状況だったか。先ほど金融制度が企業活動の足を引っ張っているのではないかという懸念に対して、金融制度はどうなっているのかということで幾つかピックアップしてございます。まず決済システムそのものが各国で分かれておりました。どれ一つとして同じものがない、つまり、国が変わると仕事のやり方も変わってしまうといったような状況がありました。従って、労働人口が移動できず、ドイツで勤めていた人がフランスで勤めるときに、また一から勉強しなければならないという状況が発生していたということで、失業率にもつながり、経済的な生産性のダウンということにもつながりという意味合いでございます。加えまして、銀行業界の慣習と手数料、これがなかなかばかにならない金額になってきていたという意味合いでございます。

そのあとは、もう少し細かい話になりますが、データのフォーマットについて、金融機関同士、あるいは企業と金融機関が交換するためのフォーマットがそれぞれ違うという問題でございます。

それから、各国に存在する清算システム。最終的に企業と銀行の間では、企業が支払ったところで企業は免責ということになりますが、銀行同士の方々のバックエンドの処理が残っておりまして、それが最終的に清算されるまで資金は中途半端なままになっております。それの最後、帳尻を合わせるという部分がございまして、その辺も各国ばらばらで、5営業日後だったり、3営業日後だったりといった違いが出ておりました。

そのほか、決済商品の利用パターン、あるいは税、法的要件といったところもいろいろ異なってございまして、これらがEU全体として活動するときの足を引っ張っているのではなかろうか、ここを統一しないと先に進めなさそうだというあたりで、改革の必要性が叫ばれました。そのあたりが20世紀最後の年の前後ということで、スライド12はその辺の少し細かい話を書いてございます。

Lisbonで開催された欧州理事会で採択されたLisbon Agendaでは、成長、雇用、競争促進のためのエンジンという言い方でさまざまな課題が出されました。これを受けまして、特別欧州理事会のほうで雇用拡大、経済社会改革推進のための報告書が出されまして、金融サービスの行動計画、アクションプランがつくられ、今回のSEPAにつながっていったと、そういう流れでございます。

13ページはその中で、EUの決済サービス指令でございます。これは、アクションプランの中から生まれまして、特別欧州理事会で認められたものですが、かなり義務的な内容が詰まっております。ダイレクティブという言い方からも推測できますが、金融機関にいろいろ義務的な内容、決済サービスに参加するさまざまなプロバイダーにも義務を負わせる、そのぐらいの強い指令が幾つか並んでございます。一つ一つ説明するのも時間の超過になりますので割愛させていただきますが、6項目ほどの特徴がございます。無権限取引の損失分担とか、そういった細かいところまで定められているものがございます。

中でも決済にかかわるサービス事業者に自己資本の規制を課したというところ、これもなかなか厳しいものがございます。日本ですと、預かった資金の半分を供託しなさいと、こちらも厳しいのですが、自己資本規制のほうもなかなかの厳しさがございます。例えば下のほう、決済サービス機関の欄。初期投資ということで、送金のみ、あるいは代行サービス等々、業務内容によって金額は違いますが、最低2万ユーロないと事業ができない。あるいはフルスペックで商売いたしますと、12万5,000ユーロを資本として積んでいなければいけない。なかなかの金額なので、生半可な企業体では参加できないという形になってございます。

そのほか、恒常的にこのぐらいの額を維持しなさいというところで、なかなか覚え切れない条件がたくさん付いておりまして、これぐらいの金額を常時維持しないと免許取り消しといった厳しい規制がございます。

もう一つが15ページ、今度はバックヤードの話になります。日ごろあまり意識しないところでございますが、例えばATMでの取引、あるいは送金ネットワーク等々の複数の銀行間の連絡にちゃんと仕掛けがございまして、Automated Clearing Houseと呼んでございますが、清算処理を行う機構がございます。ACH同士を接続した電子的なネットワークでSEPAは創られましたが、こちらでは普通の決済ネットワークの仲介だけではなくて、決済資金を短期的に一時預かったり、立て替えたりというところまで視野に入ってございます。ゆえに自己資本が多く必要であるということです。そういった許認可事業としての建て付けにもなっています。機能面を高度化していくために認可業務を増やす、そのかわりに自己資本をちゃんと積むというバーターの枠組みになっていることが重要でございます。

こちらのACHの接続には2つモデルがございます。1つの決済事業者のもとにさまざまな金融機関、あるいは別の決済ネットワークが階層的につながっていくピラミッド型のような形になるモデル。もう一つは、ある事業者のもとに他の事業者が接続してきて、メッシュ型といいましょうか、スパゲッティーのように複雑に絡み合うところを束ねる形。その中央の処理をする事業体に対していろいろな参加者がつなぎに来る形態でございます。中央の処理をする事業体は、空港のハブと同じ意味でハブという言い方をします。これら2つの形態で、現在SEPAの中ではClearing House同士の生存競争が始まっているという見方をしていただければと思います。こちらのほうでさまざまな決済サービス事業者が自己資本規制のもと、サービスを展開しているといったような状況でございます。

多少時間がなくなってきましたので、飛ばさせていただきます。決済手段としての特徴のところは裏方の話でございます。番号のフォーマットを少しご紹介したページが17ページ、送金依頼書にどういうふうに書くのかということで、ビフォー&アフターのものを上下にお示しいたしました。18ページ、上のほうが従来の送金依頼書で、口座番号と各国別のクリアリングコードという形で、記入しなければいけないところが各国各様で違っておりましたので、覚えるのも大変という状況でございましたが、その下のほうで、ある程度標準化がなされまして、SEPAで送るのであればIBANあるいはBIC、これらを使わなければならないということになりました。近々このBICも不要になり、IBANだけでよろしいというようになってきてございます。そういったような変化、目に見える変化というのもこういったところからうかがい知れるかと思います。

その次のページの幾つかは、SEPAで使われる送金サービスの中身を少し解説させていただきました。口座振り込みが19ページ、口座引き落としが20ページで、その次の21ページでは、口座引き落としに2つパターンがございまして、取り戻しをしていい、あるいは、してはいけないというパターンに分けてございます。払い戻し権がないのはBtoBに限られる、そういったような違いで商品のバリエーションが出てございます。

いずれにしましても、そこの21ページに書いてございますように、取引日当日、Dと書きましたが、このDを目指しまして、「-14」日、暦日のほうです。このときには何をしなければいけない、あるいは「-5」営業日には何を提出しなければいけない、こういったところがかっちり決められてございます。これに違反すると処理ができません。断られてしまいますという形で、幾つかの義務が発生してございます。

このあたりを経由しましてシステムを支えるというあたりを官民、金融機関、事業体それぞれがルールを守り、安くて早いネットワークを維持していく、それがSEPAという形で結実しているわけでございます。

その次は、企業財務としての利活用ということで、ドイツにある子会社の話を少しいたしまして、こんな見方があるかなというあたりを若干ご説明して終了させていただこうと思います。

23ページが企業財務の高度化に向けたロードマップということで、財務業務自体が単純な資金の授受の話から、かなり高度な工場のようなイメージになりますが、支払いをまとめたり、あるいは売掛債権の取り立てをまとめたりといったようなところを、財務業務としてどんどんエクセレントなものにしていこうという、そういう展望を持って幾つかステップを刻んでございます。

SEPAの活用に伴って、右から2つ目、集中決済のところまで何とか来ております。この後、もう少しSEPAの更改、あるいはエンハンスを期待していきまして、最終的に売掛金の取り立てのところまで集中管理、あるいは一括処理でコストダウンするといったところまでを財務としては目指していきたいというところでございます。

ということで、24ページがこのSEPAへの最初の公表時の期待ということで、これらのサービスがどれだけ利益を生むかというあたりで、例えば手数料が引き下げられる、あるいは債権管理が楽になる、そういったような企業のバックヤードの生産性向上、あるいは費用低減に直接結びつくというところが期待されておりました。こういう議論があった後ということで、使い始めてどうでしょうかということで実感を聞いたのが25ページでございます。

当初の想定どおりのところは想定どおりの貢献がありまして、なかなかいい利益が授かってございます。しかしながら、進めていく時に幾つか紆余曲折があったということを先ほど申しましたが、これに企業側もかなり振り回されましたという、多少愚痴のようなところもございました。そもそも前のページのエクセレントな姿を目指していく活動が一旦休止せざるを得ずということで、SEPAに移行することを優先し頑張って作業してきたわけですが、若干この辺の紆余曲折のところに引っ張り回されまして、少し保留期間が生じてしまったというところがございます。

各国の相違点を捨て去るというのがSEPAの基本線でございますが、今はまだ道半ばといいますが、大枠はOKということですが、細かいところで、まだ各国ルールが残っております。これの最終的な解決が残っていますねというあたりをアンケートの回答のような形式で入手したところでございます。

その後、続いているページは少しインナーな話ではございますが、プロジェクトのタスクということで、今年のお正月に完了を目指しまして幾つか作業をしてきたと。その次のページが、その作業のスケジュール表ということで、何かのお役に立てればということで添えさせていただいてございます。企業の活動ということでは1年ぐらいかかってしまうというあたりの目安でお考えいただければと思います。

最後になりましたが、参考資料ということで、手数料の国際比較のいささかショッキングな表がございましたので、ご説明します。その後、別の選択肢ということで、アジアにはそのほかの競争相手も参入してきていますというお話を差し上げようかと思います。

29ページは、手数料の比較ということで、やや衝撃的な資料ではございますが、手数料のそのままの数字でございます。小数点のところがユーロ、右2桁がユーロセントという形で、ドイツ国内向けの送金とSEPAの送金のところが1件当たり0.04ユーロ――日本円にしますと5~6円というところでしょうか、そのぐらいの安い金額が実現できて、なおかつ受取人の銀行に着金するのが翌営業日という素早さでございます。

ただし、至急に送ってほしい、あるいは、これと違う枠組みでもっと大量の金額を送ってほしいということになると、また別の手数料体系になります。圏外送金はたまたま通常扱いと至急扱いが同じ手数料で示されてございますが、それでも5ユーロですので、なかなか魅力的な金額ではないかと考えているところでございます。

その次のページがもう少しショッキングな数字でございます。G20諸国の中からその自国通貨をベースに海外に送金しようとしたならば、そのとき手数料はどのぐらいかかるのかを比較した資料がございました。世界銀行のほうで2008年ぐらいから定点観測されているのですが、こちらの手数料の減少具合がかなり日本は差をつけられてしまいましたというところでございます。

一番右端、2014年のサード・クオーターの調査では、あろうことか日本は下から2番目で、一番下はサウジアラビアでございました。大体の国が1桁パーセントのレベルですが、日本、サウジアラビア、それからフランスだけが2桁パーセントといったような少しショッキングな数字がございまして、こういった安価な決済手数料の国々と競争してアジアに攻め込むといったときに、この辺のインフラの構造的な高コスト性というのは問題になっていくのではなかろうかという考えを持っているわけでございます。

その次のページは別のアプローチということで、先ほどスライドの1つに出ましたIPFA、International Payments Framework Associationという組織がございます。こちら、SWIFTのネットワークとか、さまざまインターネット上のネットワークとかをいろいろ使うのですが、ISO20022のフォーマットを全面活用し、ACH同士の二者間合意ということで、標準的なフレームワークをつくっていこうという取り組みでございます。

先ほどご紹介しましたClearing Houseの機関同士が接続し、安い送り方を実現しているというところでございます。仮にバルク送金と名づけましたが、例えばこの例でいきますと米国側からユーロ側にまとめて送金をするということで、この真ん中の白いところが国境になりますが、ここを一本の外国為替送金で送ります。この際、外為手数料はこの1本にしか掛かりません。その先、ACHの連携によりまして、中身、例えて言うならば封筒にいろいろ請求書をまとめるような形で送るのですが、その封筒をほどいて、それぞれの別の国の口座に振り込むということですから、米国からドイツに振り込む、フランスに振り込む、イタリアに振り込む、そういったようなところを1本の為替送金で送り、送った先の国の中で、それをほどいて内国為替として個別に支払うということが可能です。この場合、手数料の減少ということで、なかなかの魅力的な数字が出てきます。

このあたりの進み具合ということで、四角印の5行目に対応通貨別に書いております。米ドル、ユーロが真っ先に実験をしまして、もう既に動いております。その後、イギリスのポンド、スイス・フラン、ブラジル・レアル、メキシコ・ペソ、カナダ・ドル、南ア・ランドと続きます。開発途上国と見ていた国々までもがこぞってこの方式を使ってアジアに攻め込もうということでございます。例えばブラジルからベトナムに送るときに、日本は全然知らない中でブラジルからベトナム直行ラインで安い送金が行われていると、そういった意味合いでございます。そのほか、追加中ということで、インド、中国、ニュージーランド、シンガポールというふうに継続されてございますので、その実、例えばインドに日本の高いインフラを持っていっても、既に相手にならないかもしれないという状況が生まれてしまいました。

よくよく準備をしていかないと実際の商売には結びつかなくなってきており、なかなか難しい局面になっていますというあたりをご紹介申し上げたところでございます。

ショッキングなところでございますが、32ページは、この辺のClearing Houseが相互接続しますと宣言しているところ、していないところを地図で塗り分けてみました。濃いところが宣言をしているところでございます。薄いところ、日本も含みますが、宣言をしていないところでございます。このあたり、アジアでの競争というものをどのように構築するかで多少解釈は変わってくるかと思いますが、普通に考えますと、なかなか厳しい状況にあるのではないかという感触を抱いたわけでございます。

私からの説明、ちょっと長くなりまして申しわけございません。以上でございます。ありがとうございました。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは、自由討議に移りたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いいたします。

戸村委員、どうぞ。

【戸村委員】

参考人の皆さんにおかれましては、詳細な説明をいただきどうもありがとうございました。資料2の柏木委員のほうに質問させていただきたいのですけれども、資料2、10ページ目のクロスボーダープーリングについて質問したいんですけれども、クロスボーダープーリングの私のイメージは、複数通貨の口座を統括的に運用するような仕組みだと思っているのですが、実際の送金時の資金決済については、例えば三菱東京UFJ銀行のケースですと、各国の提携銀行とのコルレス関係で実際の資金決済は行うのでしょうか。

付随する質問として、仮にそうだとしたときに、このクロスボーダープーリングですとアジアも含まれておりまして、通貨危機のリスクもある銀行も含まれていると思うんですけれども、このような仕組みで現地銀行のクレジットリスク管理というものが大きな障害になっているかどうか、お答えいただければありがたいと思います。

【岩原座長】

では、柏木委員。

【柏木委員】

クロスボーダープーリングでございますが、これは同行内の口座でプーリングをするというのが基本でございます。ですので、例えば私ども三菱東京UFJ銀行の例で申し上げますと、我々の拠点の中で口座をお持ちいただいて、その中でプーリングをするということが基本でございますので、コルレス契約先と結んでまでは対応していないといいますか、対応するという形にはなっていないと認識しております。

それから、ご指摘のとおり国や地域によっては法制度の関係もございまして、特にアジアはそうなのですが、対応可能な国と、対応できない国がございます。これは認識した上で、お客様にアドバイスをしながらやっていくということでございますので、全ての国と地域でこういう仕組みが使えるかというと、それはできないということでございます。資料に米印で各国の規制、法制度により資金移動等に制限ありと書いてありますが、対応可能な国と対応できない国があるということでございます。基本的には、同行内の中でお客様に口座をお持ちいただいてご利用いただくという仕組みでございます。

【岩原座長】

ほかに。堀委員、どうぞ。

【堀委員】

今の点に関連いたしまして、プーリング業務についてのご質問といいますか、ご見解をお伺いしたいところでございますが、もし御行が支店を持たない地域において、このようなビジネスのニーズがあり、海外金融機関と提携をしたいと考えた場合、これは日本の業規制の観点からも問題が出てくるのでしょうか。

例えば外国金融機関と提携をするということになりますと、日本で代理業務を行っていることにならないかですとか、そういう場合にはグローバル統括会社をどこに設置するのかとか、そういったことが問題になるような気がいたしておりますが、この点、検討されている状況はございますでしょうか。

【岩原座長】

柏木委員。

【柏木委員】

今の時点で海外の金融機関と提携をして、クロスボーダープーリングを実現する検討をしているということは、私のほうでは認識してございません。

【岩原座長】

ほかに。森下委員、どうぞ。

【森下委員】

今プーリングが話題になっておりましたので、それに関連してなんですけれども、こういったプーリング、もう少し大きく捉えればCMSというものについては、外国の金融機関がかなり強いという話を聞いたことがあります。そういった海外の金融機関と日本の金融機関との間の一番大きな差となっているようなものがどのようなもので、実際どれぐらいの差で、どのような形でキャッチアップをされていこうかということに関して、もしお考え、あるいは情報があれば教えていただければと思います。

【岩原座長】

柏木委員。

【柏木委員】

先ほどご説明いたしました資料の11ページ、これは法人のお客様の声でございまして、右下のところに今後の要望としてグローバルCMSに関して、時差を超えた拠点間での資金集中・配分を行えるサービス等の一層の向上を求める声があるということで、典型的には、時差を超えた効率的な資金管理が欧米金融機関の場合評価されているというのはあるかと思います。

ただ、最近の傾向としては、私どもも含めて邦銀も徐々に対応してきておりますし、特にアジアや欧州のように日本と時差が米国より小さい地域に関しては、逆に我々も評価いただけるようになってきているということでございます。

あと、やはり先ほど申し上げましたように、国と地域によってはいろいろ法制度の違い等がありますし、それから日系の企業のお客様に関してはきめ細かなサービスを求められるということもあります。日本語の対応ですとか、あるいは中小、中堅企業を含む幅広い関連会社が対象になってくるということでございますので、そのあたりはむしろ我々日本の銀行の強みでもあると思いますので、こうした点で国際競争力をつけるべく努力しているところでございます。

【岩原座長】

よろしいですか。それでは、ほかに。浜委員、どうぞ。

【浜委員】

すみません、10ページの件でもう一点教えていただきたいのですけれども、私の認識では、日本においては外貨でのプーリングができないというふうに認識しているんですけれども、それは何か規制があってできないのかということでしょうか。

それから、この中には通貨については記載されておりませんが、そのような日本において規制があるとした場合、グローバルでの統括会社、この赤で記されている部分というのは、一般的な話なのですけれども、どの国に設けるべきなのかという点を教えていただければと思います。

【岩原座長】

では、柏木委員。

【柏木委員】

基本的には、日本の場合は円貨プーリングが多いのですが、外貨プーリングに関する規制については、別途詳細をお調べしてお答えさせていただきたいと思います。

【岩原座長】

ほかに。では、安田委員、どうぞ。

【安田委員】

資料3の野村参考人の報告に関して質問があります。イノベーションはおそらく今後の日本経済の成長にも直結する非常に重要なテーマだと思うのですけれども、せっかくこれは金融庁の会議なので、具体的に、中でもちょっと強調されていたと思うんですけれども、日本と例えばアメリカで、規制当局の規制の仕方が違うことによって、例えばアメリカではこの分野でイノベーションが起こりやすくなっていて、日本では起こりにくいと。その何か政策の違いがこういったイノベーションに与える影響とかが幾つか端的に対比できるものがあれば、教えていただきたいです。

【岩原座長】

野村参考人。

【野村参考人】

例えば、1つ、先ほどの発表の中で申し上げたのが、大手金融機関によるベンチャーの買収というものが非常に盛んになっているということを申し上げたのですけれども、金融持株会社が保有できる子会社の範囲ということで、これが連邦規則集で一応要件が定義されています。金融持株会社に対して自己資本の5%を限度として金融データストレージですとか、金融に関する電子情報、非金融分野を含む電子的な商品サービス、売買、デリバリー事業の投資等を補完的業務として行うことができるということが定められています。

一方、日本の金融機関の場合ですと、子会社等の業務範囲というところで、こういったところが明示されていないので、例えばIT関連のベンチャー企業を買収しようとしたときに、子会社等の業務範囲でなかった場合に、例えば出資規制のほうでひっかかってしまって買収できないといったようなことがあるのではないのかと思います。そうなってくると、将来のITを絡めた新しいビジネスモデルを構築しようと考える場合に、そういったものが障害になるのではないのかということが、1つ、例として挙げられるかと思います。

【安田委員】

プライベートな見解で全く構わないのですけれども、実態として金融庁がちょっと時代に取り残されているような規制をやっているせいで、そういった新しいイノベーションが日本で起きないので何とか変えなさいという感触なのか、それとも日本で実体の企業がまだそこまでネットビジネス等が起きてきていないので、今後伸びる見込みが立てば、日本政府としても柔軟に規制を変えていけばいいのでしょうか。要は、規制が足を引っ張っているのか、それとも現状に即して今やっているのか、その辺何かお考えがあれば、教えていただきたいです。

【野村参考人】

個人的な見解なのですけれども、聞くところによると、いよいよ日本の金融機関もベンチャーを買収したいと考えるときに、それができるのかどうかがよくわからなくて、動くことができないという話を実際に聞いたことはございます。

【安田委員】

それは、金融庁としては、どのように考えているのでしょうか。

【岩原座長】

では、佐藤参事官。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

まず今お話に出ました銀行法の中で業務範囲規制というのが定められております。大所としましては、銀行本体の業務範囲規制がございます。そのほか、銀行が子会社として持てる会社の業務範囲規制、及び銀行の持株会社が持てる子会社――銀行から見ますと兄弟会社のようなところになりますが、そこについても規制がございます。

この規制の考え方は、一言で言いますと、銀行は預金を受け入れているということもあり、銀行の健全性をいかにして確保するかということが基本的な考え方でございます。過去におきまして、当然世の中のビジネスに、新しいビジネスが出てきたりといった変化はありますので、具体的なニーズや銀行本体の健全性に及ぼす影響等を勘案した上で、その見直しも行ってきたところはございます。

したがいまして、総論的な話になってしまいますが、実態としてどういうビジネスがあるのか、なおかつ銀行本体の健全性をいかにして確保していくのか。それらを考え合わせた上で、本当にニーズなり必要性があるのであれば、検討していく必要があるんだろうと考えております。

【安田委員】

お答えにくい質問に返答していただいて、どうもありがとうございました。

【岩原座長】

銀行法第十六条の二の第一項第十二号で、ベンチャー企業を子会社として銀行が持つことができることは規定されております。具体的にどういうベンチャー企業がそれに該当するかということについては銀行法施行規則十七条の二の第六項で定めていますので、制度上は枠組みはできているということです。

ほかに。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

参考人の皆様、今日はありがとうございました。私は一般の消費者の立場で参加させていただいておりますので、資料3をご説明いただきました野村様に質問がございます。いただいた資料の中で参考として提示していただいた中の質問で恐縮なのですけれども、19ページのところです。

決済システムにかかるイノベーションが目覚ましく進展する中で、ギャップとチャンスが顕在化しているという指摘がされているということをお話しいただきました。このチャンスのほうは皆様のお話からよく伝わってきたのですけれども、ギャップについて、具体的に1つ例を挙げていただいて、どのようなことを指摘されているのかということをお話しいただきたいというのが質問でございます。

それから、意見といいますか、希望なのですけれども、私のような者はこういうイノベーションの流れからおそらく取り残されていく消費者の1人、代表だとも思いながらお話を聞いていたのですけれども、決済の高度化というものは、特にアメリカのお話を伺っておりますと、自分の購買情報を誰かに把握されていくということを感じたわけです。知られたくない情報を他人に知られたり、もしかしたら支配されるのではないかというような懸念を持ちながらお話を聞いていたのですので、欧米ではこのような問題に対して――日本でもそういう指摘や議論というのはあると思うのですが、野村様の個人的なご研究の中でのお話で結構ですが、この機会にお話しいただけたらと思います。以上でございます。

【岩原座長】

野村参考人、お願いします。

【野村参考人】

はい。まずギャップの部分ですけれども、これはアメリカの資金決済システムの中でのお話ですが、アメリカの資金決済システムがリアルタイム決済ができない、迅速性が欠けていると。片や、先ほど富士通の南雲様からお話がありましたように、例えばイギリスなどでは既にリアルタイム決済が進んできていると。そういう意味で、世界の潮流から取り残されているという懸念が1つ、ギャップの認識としてあるようです。

それから、もう一つ、今の2つ目のご質問とも関連があるかと思うんですが、例えばモバイルペイメントなどが出てきましたときに、いろいろな事業者がいろいろな規格を発表するとなると、レガシーと呼ばれる現在の決済システムと違って、誰もがアクセスできるわけではない。そこのところをどうやって解消していくかという問題が生じます。誰でも、いつでもアクセスできるということをニア・ユビキティーと表現しているようですけれども、そういった決済システムの実現というものを、エンドユーザーの意見、あるいは決済ベンダーの意見を聞きながら将来像につなげていこうということで意見募集を行っているようです。

それから、2つ目のご質問、なかなか難しいお話だと思っております。もちろん、日本のみならず、欧米でも個人情報をどうやって保護しながら利用に結びつけていくかというところでは、非常に議論が分かれるところだと思っております。1つ重要なのが、消費者自身が自分の情報を使われることに対して同意するのか否かというところをきちんと明示して、消費者自身もそれを選んでいくと、そういう環境づくりが求められるのではないかと思っております。

そういった取り組みについては、今政府のほうでも横断的に検討はされているところだと思うのですけれども、どうしても利便性と個人の情報保護との間のバランスをとっていくのが、なかなか簡単に答えが出てこないというのが実情なのだろうとは思っております。あまりお答えになっていなくて申しわけないのですが、以上です。

【岩原座長】

よろしいですか、永沢委員。

【永沢委員】

はい。

【岩原座長】

それでは、牧野委員、どうぞ。

【牧野委員】

済みません、メーカーというか、企業側からのコメントで富士通の南雲参考人にお伺いしたいんですけれども。最後のページのほうの31ページ、32ページについて、グローバルベースで送金手数料等を下げるというのは、我々にとってみたら使命みたいな形でやっているのですけれども、こういうバルク送金だとか、ACHというようなことを日本だけが取り残されたと、先ほど言われていました。日本だけではないのですけれども、そこら辺の背景だとか、そういうのをもしご存じでしたら教えていただけたらと思います。

【岩原座長】

南雲参考人。

【南雲参考人】

最後の32ページに、取り残されているというちょっときつい言葉を使ったところはあるのですが、1つは、その前のページのACH連携に関しましては、どちらかというと、こういう国際会議の場でいろいろ討論される以前に、開発途上国等々が横連携してきたという動きの中で日本がどこまで検知していたかどうかという問題も少しあるかと思います。

例えばブラジルから日本経由で韓国とか、そういったようなワンクッションあるような取引がたくさんあれば、それなりの検知というのも働くのですが、日本をバイパスしていきなり韓国に入る取引もございます。あるいは、このあたり、金融だけではなくて物流との兼ね合いも出てはくるのですが、ハブ空港、あるいはハブポート、港のほう、そういったようなところの競争の中で、失われた20年の中で少し劣後してきたという見方もできるでしょうか。そういった中で、こういった開発途上国と思っていた国同士が手を結んでいるということがなかなか分かりづらくなっている現状も1つ、あるかと思います。

この特にIPFAの活動に関しましては、ISOの委員会の中で幾つかピックアップされて出てきて気付いたところがございます。その当初は、この欧州とアメリカで実験をしているという解釈で出てきました。そういった文脈でしたので、欧米の先進国のほうから広まっていくのかと思っていましたら、このISO、国際標準の使い方に立ち返らなければいけないのですが、こういう標準ができたときに後発者ほどメリットがあるという構図があります。

つまりは、開発途上国が、ただ乗りと言うと言葉は悪いのですが、既にでき上がったスキームに乗っかると、それまでのさまざまな研究開発の期間、お金、その辺が全て節約できて、ベストプラクティスにかなり近道ができます。そういったような活動が活発になってきたというのも、2つ目としてあるかと思います。

そういった中で、日本一人が悪いというわけでもないのですが、世界の動きのスピード感というものが若干違ってきたのではなかろうかと。そういった反省も込めて、今回はこの絵を出させていただいたところでございます。

【牧野委員】

ありがとうございました。

【岩原座長】

ほかに。加毛委員。

【加毛委員】

私も南雲参考人に1つお伺いします。SEPAを実現するための1つの有力な手段が決済サービス指令であるわけですが、そのご説明の中で、決済サービス指令はかなり厳しい制約を設けているというご発言があったかと思います。南雲参考人の立場からすると決済サービス指令はやや規制し過ぎである、あるいは自己資本規制などもかなり厳しいというご認識をお持ちでしょうか。

【岩原座長】

南雲参考人、どうぞ。

【南雲参考人】

個人的な意見ですが、厳し目だというのは、これまでのEUのいろいろなレポートや規制等と比較して、これはかなり踏み込んだ内容かなと感じたところがあります。例えば決済サービス機構という概念で取りまとめて、民間事業者、国家機関、あるいは業界団体といったようなバリエーションがあるのですが、従来ですと、それぞれにコンプライアンスをちゃんと守りなさいぐらいの規制だったものを、自己資本を幾らに積みなさい、あるいはプロセスでこの期日を守りなさい、そういう追加条項が出てきたことがこの決済サービス指令のポイントであると思います。

そこまでしてなぜやらなければいけなかったのかというのが、これはEUの成り立ちにもなるとは思うのですけれども、できるだけEUという枠組みの中で同じような活動をしていきましょうといった流れがそこにあるのではないかと感じております。

先ほど労働者の話をしましたが、例えばドイツの銀行に勤めていたかなりのベテランの方が、フランスに行ったときにそのまま仕事ができるかというと、以前ですと、何となく仕事は回しているのですけれども、致命的なミスをするかもしれない。

例えば決済の処理をするために、ドイツでは5日間余裕があったけれども、フランスでは4日間だったとします。そうすると、5日と思っていたのが4日でやらなければいけなくなったと。これはかなり日常的に慌ててしまうケースだとは思うのですが、そういうことにいろいろ出くわすと、個人の力量としては半減していくような、そういったようなところあたりをいろいろ研究されまして、雇用の問題に突き当たったということです。

なので、経済発展と雇用が裏表であるというセオリーができてきまして、そのためには標準化を徹底的に進めなければいけないというところに突き当たりまして、どこまで行くかと感じました。最初見たときは、そこまでやるかという感覚の規制ではあったのですが、ただ、今、周りのワークしている状況を見ますと、やっぱりここまでしておかないと、日程的に翌営業日で処理が完了するというスムーズな流れが実現できないというあたりで、そういった目標と、そこに至るまでの緻密な作業の積み重ねという意味合いがこのダイレクティブレベルにまで入ってきたといった感覚でございます。そういう意味で、厳しいダイレクティブになってきたと感じた次第でございます。

【岩原座長】

いいですか。それでは、小野委員。

【小野委員】

済みません、2点、南雲参考人にご質問させていただきます。1つ目は、今の点に関連してなんですけれども、資料の30ページの表で、なかなかショッキングな国際比較の数字をお示しいただいたのですが、拝見していて、ヨーロッパの国がこの表の期間中に手数料が下がっている印象を持ったのですけれども、それに対して、SEPAがある程度影響があったのかどうなのかということ。

それから、仮に影響があったとして、ご報告資料の6ページで欧州には4,500超の決済サービス事業者がSEPAに参加しているというお話がありました。これに銀行が入っているのかどうかわからないのですけれども、日本における銀行以外の決済サービス業者の数を考えると、たとえ34カ国といえども非常に多いと思いますし、その背景には厳しい競争環境があるのかとも思います。他方で、先ほど自己資本規制が非常に厳しいことを規制の1つの例として挙げられましたけれども、その中でこれだけの参入があるというのも、それはそれで驚きです。それは何故でしょうか、結構参入が活発なのでしょうか。以上です。

【岩原座長】

南雲参考人。

【南雲参考人】

まず30ページのところで、欧州が健闘している状況に対してSEPAの影響かどうかというところですが、年代的に影響はあるかと思います。その裏側としまして、旧来のシステムをもう廃止するぞと言い始めたのはこれよりもっと前ではあるのですが、例えば2012年の2月1日で廃止するという決まりがあった後で、いろいろ紆余曲折がありまして、今2014年まで延びたとか、ビハインドするような事情もありましたが、そうは言っても捨てると。EUレベルで、もう古いのを捨てなさいと言いましたというあたりのメッセージがかなり効いたかと思います。なので、古い、なおかつ手数料が高い仕組みを皆が使わなくなってきた結果として、数字が良くなっていっているという理屈ではないかと思います。

その次が、3,400という数字に銀行が入っているかということですが、入っておりません。決済サービス事業者という枠組みで、銀行以外で民間参入してきた事業者を定義しております。ということなので、銀行とは別の数字と理解しております。

それから、参入規制の問題でありますが、この辺はどこに原因を求めようかというところもありますが、事実、これだけ多い業者がサービスをしております。例えばドイツですと、連邦国家というスタイルになっておりますので、例えば商業登記機関――日本ですと法務局1つなのですけれども、ドイツのほうは州にあったり、あるいはもう少し小さい郡の単位であったりということで、総数がちょっと把握できないのですが、4~5百ある感覚があります。そのぐらい自治が分断されていて中小企業が多いという意味合いです。

その中で、決済サービス事業者になろうという場合の母数が多いというふうにご理解いただければなと思います。日本以上に中小企業の数が多いです。そういった環境から、参入活発どうのこうの言う以前に母集団がかなり多いという意味がありまして、逆に言うと、それだけ多い集団を何とか取りまとめないと決済の品質が保たれないので、かなり厳しい定義づけをしたというふうな流れで理解しております。

【岩原座長】

小野委員、どうぞ。

【小野委員】

済みません、ちょっとクラリファイング・クエスチョンが2つなんですけれども。この数字は、そうすると、決済サービス事業者のみの数字かというのが1つと、それから、今日お話頂いたヨーロッパ諸国の場合、国をまたいだものであれば一応クロスボーダーとしてカウントした数字になっているかということです。

【岩原座長】

南雲参考人。

【南雲参考人】

おっしゃるとおりで結構かと思います。

【岩原座長】

よろしいですか、小野委員。

ほかに何か。戸村委員。

【戸村委員】

2回目で申しわけないのですけれども、南雲参考人に簡単に質問させていただきたいのですが。資料4の最後のページ、ACHの相互乗り入れの図が載っております。この場合、複数通貨なので、ACHが各日の終わりにそれぞれのネットの送金のポジションが出ると思うんですが、その決済についてはどのようなプラットフォームでACH間の決済がなされるのでしょうか。

【岩原座長】

南雲参考人。

【南雲参考人】

済みません、背景が見えなかったのですが、ACHと金融機関の関係というふうに解いてよろしいですか。

【戸村委員】

いや、違います。ACHで取りまとめて、それぞれネットポジションが出て、例えばタイのACHから、ある日においてはバングラデシュのACHにネットの送金があると思うのですけれども、その送金するときに決済で何らかの決済通貨が移転されると思うのです。その決済通貨というのはドルが使われるんでしょうか。

【南雲参考人】

そこは、お互いにどの通貨の決済を対象にしましょうかというところから、フレームワークの一部になります。なので、ドル・ベースで決済する、スイス・フランで決済するかといった点が出発点になって、そのフレームワークの中で自分たちはこの通貨で決済すると決めて、その通貨ごとのフレームワーク構築を行います。送金メッセージの交換自体はACHのほうを通りますが、それぞれに顧問のような形で銀行がつきます。その銀行が決済尻を処理していくといった構図で動いているということです。

【岩原座長】

よろしいですか。もう予定した時刻を過ぎているのですが、もし特にということがなければ、先ほど手を挙げていただいた古閑委員と松井委員、河野委員、お三方のご質問で審議をできれば終了させていただきたいと思います。

では、まず古閑委員から。

【古閑委員】

ありがとうございます。野村参考人にお聞きしたいと思います。資料3の23ページですけれども、上の枠の中に既存の金融機関の課題として、顧客囲い込みにつながるオムニチャネルの確立と挙げていらっしゃいます。この23ページの右下の部分に、各チャネルが1つのブランドとして認識強まる、顧客囲い込みへとあると思うのですけれども、これの意味するところをもうちょっと詳しく教えていただきたいです。

チャネルはいろいろなものがあって、当然先ほどのご説明のとおり、子会社として持てないもの等もいろいろあると思うので、業務提携みたいな形でやっていくことになるのかなと思うのですけれども、それが金融機関と各チャネルごとの派閥みたいなものができていくというか、この1つのブランドで顧客囲い込みへというのは、どういうイメージのものなのか、もう少し教えていただけますでしょうか。

【野村参考人】

実はそこまで、ベンチャーも含めるという、そういうところまでは捉えておりません。これはあくまで1つの金融機関の中に複数のチャネルがあると。ただ、今の状態だと、例えばお客さんはATMがその場にある、一番便利なATM網を使えばいい。あるいは、今出かけているから、ではスマホのモバイルバンキングで便利なものがいいという形で、必ずしも各チャネルが全部単一の銀行のブランドで統一されたものとして利用されているというよりも、その時点で自分の合っているチャネルを使い分けているというのが実情ではないのかと考えているわけです。

そうではなくて、どのチャネルを使っても、例えばA銀行は私の情報を知っていてくれるということが重要になります。私が、例えばビデオテラーマシンで相談をしたと。次に、店舗に行ったときには、その相談した情報がきちんと店舗で受け継がれていて、ゼロから説明しなくても、ちゃんとその続きから話ができる、あるいは、またさらにインターネットバンキングで投資信託を買おうと思ったときには、既にこれまでの情報が整理されていて、自分に適した商品が提供されるというような形で、さまざまなチャネルが1つの銀行の中でつながっていて、顧客が銀行、つまりブランドとのつながりを強めていくと、そういうようなイメージのオムニチャネルというものを目指すという内容です。

もちろん米銀自身もここまでは行き着いてはいないのですけれども、小売店が今まさにこのオムニチャネルを構築しようとしております。それを参考にしながら、金融機関自身も同じようにお客様に対してサービスを提供していかなくてはいけないという意識がインタビューの中でも強く見られたということです。

【岩原座長】

よろしいですか。

それでは、松井委員。

【松井委員】

どうもありがとうございます。柏木委員にお伺いしたいのですけれども、資料の12ページで、金融EDIの活用のところで商流情報と決済情報の連携という話がございました。この関係で、決済情報を見ることによって、どこまでの商流情報をたどれるのか、あるいはリンクさせようとしているのかというところをお伺いしたいと思います。

と申しますのは、今まで送金取引というのは原因関係とは切り離されていて、簡単に言えばたどれないという前提で制度も動いてきましたし、それは相応の利便性もあったかと思います。しかしここでの話は逆で、そこをタグづけしていこうという話かしらと思いました。仮に決済情報とあわせて、例えば具体的な売買の内容などが容易にたどれるという話になると、今までと大分前提が変わってくるかとも思いましたので、ここでどのような情報の連携を考えておられるのか、もし、可能な範囲でお答えになれるようなことがございましたら、教えていただけますと幸いです。

【岩原座長】

柏木委員。

【柏木委員】

お答えいたします。前提として、今はまだ検討中でございまして、具体的内容はまだ決まっている状況ではないということでございます。今現在も全銀システムの中で振り込みをやるときに20桁のEDI情報を添付することができます。ここにEDI情報の添付拡張と書いてございますのは、産業界の中の声として、全体なのか、一部なのかもしれませんが、それでは足りないということでございます。

特にここに書いてございますが、売掛金消し込み業務というのは、企業の中でも非常に負荷がかかっているというご意見も一部いただいてございまして、それを解決するためには、もうちょっと桁数を増やしてほしいというような産業界のニーズが聞こえてきているということでございます。そのことによって、ここに書いてありますように、企業の生産性向上になるだろうということで検討しているものでございます。

ただ、そうは言いましても、実際に何桁にしたらいいのかとか、その中身はどういうデータを載せるのかというのは、産業界によって、あるいは業界によってニーズが違うと思っておりますので、その辺の調査を実施しているというところでございます。それを踏まえて検討していきたいと考えております。

【岩原座長】

よろしいですか。それでは、河野委員。

【河野委員】

ありがとうございます。簡単にお聞きしたいと思います。資料2の柏木委員にお尋ねします。先ほど資料3、資料4で、欧米の新たな動き、それから欧州での取り組み等を拝聴させていただきまして、日本は今後どうなっていくのかなと、大分水をあけられているのかなというふうに、消費者の本当に単純な感想ですけれども、思った次第です。

それで、今日いただきました資料のいわゆるリテール取引のところ、私たちも普段銀行取引のところでいろいろ利用させていただいておりますけれども、ここに書いてあることは、当然今後やって、今期待もあれば、それが課題でもありということでここに書かれていると思いますけれども、今後に対する見通しというのがはっきりとした形で示されていないと思います。課題は書いてありますが、どういう状況を銀行業界としては目指して、どういう内部改革と、あと規制も含めて見通しを持っていらっしゃるのか、教えていただければと思います。

【岩原座長】

柏木委員。

【柏木委員】

プレゼンの中でも申し上げたと思うのですが、明確ではなかったかもしれません。最初にも申し上げたように、技術革新によって野村参考人、南雲参考人がおっしゃったようないろいろな動きが出てきていることは確かだと思っております。それによって、お客様が便利になるようなサービスを提供していかないといけないというのは、銀行の使命だと思います。

ただ、プレゼンの中で申し上げましたけれども、決済というのは信頼・信用が一番大事だということを考えておりますので、私どもとしては安全性や、安定性、あるいは法規制の改革等もバランスよく考えながら、利便性の高い商品を提供していくということが銀行にとって大切ではないかと考えて努力している次第でございます。

【岩原座長】

よろしいですか、河野委員。

ほかに、どうしても今日参考人にお聞きしたいという方、特にございませんでしょうか。よろしいですか。本当はもっとご発言されたいという方もいらしたかと思いますが、時間も大分オーバーしましたので、本日はこれぐらいにて審議を終えさせていただきたいと思います。

引き続き、今後、本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえまして、検討を進めてまいりたいと思います。

なお、次回は決済システムの高度化等に向けた課題等について、関係者からヒアリングを行いたいと考えています。

最後に、事務局から連絡事項がございましたら、お願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、事務局より、日程についてご連絡を申し上げます。

次回、第3回の会合は、既にご案内いたしておりますが、今月29日、水曜日の13時から、今回と同様、2時間程度を予定しております。それ以降の日程でございますが、第4回につきましては、来月11月6日、木曜日の16時から、同様に2時間程度。第5回につきましては、11月18日、火曜日の16時から2時間程度。第6回につきましては、11月27日、木曜日の10時から2時間程度を予定いたしております。

【岩原座長】

それでは、以上をもちまして本日のスタディ・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3558、3560)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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