金融審議会金融分科会「基本問題懇談会」(第2回)議事要旨

1.日時:

平成21年8月31日(月)15時30分~17時40分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

  • 委員等からの報告

    (報告者)池尾 和人委員

    齊藤  誠一橋大学大学院経済学研究科教授

4.議事内容:

  • 田中座長より、基本問題懇談会の当面のスケジュールについて説明があった。

  • 池尾委員から「金融危機と市場型金融の将来」について報告があった。

  • 齊藤教授から「今般の金融危機と市場型金融システムの関係について:新たな金融規制のための論点整理」について報告があった。

  • 続いて討議が行われた。討議の概要は以下の通り。

    • 今次の危機発生の背景には、市場参加者の慢心・貪欲という問題がある一方で、米国において低所得者による住宅の取得を可能とするような政策を進めたことが市場を歪めたという側面もあったのではないか。

    • 証券化商品の安易な組成によりバブルが大きくなったとの問題意識から、証券化商品のオリジネーターにエクスポージャーの一定割合の保有を義務付けるべきとの議論がある。これに対しては、オリジネーターに保有を義務付けても、結局リスクを負担するのは投資家であり、証券化の判断を実際に行うファンドマネージャーの行動を必ずしも縛ることにはならないとの点に留意する必要がある。

    • 今次の金融危機が急速に波及した背景に、各金融機関のリスク管理手法が共通していたことがあるという点について、各金融機関は、その時点で最も優れたリスク管理手法を導入するため、結果的に共通した仕組みになりがちである。

    • 今回の危機に至る過程で、投資家が短期間で高い投資利回りを要求し続けていたという点については、市場に多様な投資家が存在することが重要であり、長い期間で投資を行う投資家が増えることでシステムが安定するのではないか。

    • 流動性リスクへの対処法としては、実際には難しい問題ではあるが、市場参加者が市場全体で抱えているリスク量について情報を共有することが考えられるのではないか。

    • 金融機関が投資家の高い投資利回りの要求に応える動きとして、サブプライムローンの証券化商品などの金融商品の開発に加えて、ヘッジファンドから売買注文を受けて取引の執行等を行うプライムブローカレッジ業務についても研究するべきではないか。

    • 今次金融危機において欧州系の銀行が証券化商品等を多く保有していたことの背景には、受け入れた預金の運用先を必要としていたという側面があった一方、預金を受け入れるのみでなく、レバレッジをかけて投資を行っていた者もあった。投資主体のインセンティブ構造が関係していた側面があったのではないか。

    • 仏サルコジ大統領等が提唱する報酬規制について、我が国でもファンドマネージャーの報酬体系について経済界等で従来から議論がなされてきたが、他人の資金を運用する場合、最終的な損失は投資家が負うことになり、どのようなインセンティブを与えるかはなかなか難しい問題である。

    • 変動相場制の下で自由な国際資本移動が可能である状況下、投資機会を求めた国際的な資金の流れをマクロ経済環境が加速させた面があったとすれば、バブルを考える上では、マクロ経済的観点も重要ではないか。また、米国や我が国では、財政政策や金融政策といったマクロ経済政策に大きな負荷がかかってきたとの歪みが金融・資本市場に影響した面も強いのではないか。

    • 市場型金融が拡大する下では、流動性リスク管理が重要となるため、レポ市場などについて整備を進めるべきであるほか、再証券化商品を始めとした証券化商品の格付けのあり方や、金融機関のリスク管理の方向性についても考えていくべきである。

    • 我が国では、金融機関へのリスクの集中を避けるとの説明の下にこれまで市場型金融への転換を進めてきたが、今回の危機では、欧米において市場型金融の下でも金融機関にリスクが集中していたことが判明している。我が国では市場型金融への移行が必ずしも進んでおらず、状況が違うということかもしれないが、市場型金融を進めていく必要性を今後、どう説明していくかという論点がある。

    • 今次の金融危機の発生・伝播の経験を踏まえた今後の対処法を考える上では、規制のみでなく、格付けの手法などを含めた市場慣行について、市場関係者による改善が図られていくということが重要な視点ではないか。

以上

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総務企画局企画課調査室(内線3524)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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