金融審議会金融分科会「基本問題懇談会」(第7回)議事要旨

1.日時:

平成21年11月4日(水)10時00分~12時05分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

  • 論点の整理

4.議事内容:

  • 事務局からの説明の後、討議が行われた。

  • 討議の概要は以下の通り。

    • 経済成長率が低いのであれば、市場型金融の関連商品の利回りが低いのは仕方がない面があり、市場型金融への取組みを評価する上では、持続的な経済成長に資する金融システムであるかどうかが重要である。この点で、例えば、起業資金の提供を一層促していく観点からも、市場型金融は必要であると思われる。

      国際的な交渉へのスタンスに関しては、我が国における課題を国際会議の議題として取り上げ、その議論を踏まえた形で国内での対応を行っていくということも必要ではないか。

    • 金融危機の再発防止に向けた対応を規制で行おうとすると、国際的に一律の対応になりがちであるが、金融機関のビジネスモデルごとに必要な対応が異なる点を踏まえると、監督できめ細かく対応することの方が適しているものがあるのではないか。

    • 市場型金融を目指した取組みは、自己責任の下での取引の自由化ばかりに取り組んできた訳ではなく、開示の強化、利用者保護も含めて、必要な様々な対応を順次進めてきたものである。現在の我が国の金融システムは、銀行部門にリスクが集中しているという課題が残っていることに加えて、今次のグローバルな金融危機において顕在化した市場型金融に伴うリスクへの対応も必要となっており、取り組むべき課題は大きくなっている。また、銀行が行っている貸出や株式保有がそのリスクに見合ったものになっていないほか、個人も本来取れるほどはリスクを取っておらず、これらの主体がリスクに応じた行動を取るようになることも、我が国金融システムの課題の一つではないか。

    • 我が国金融業のあり方を考える上では、金融業がいかに収益を上げていくかという視点が重要である。その際、我が国金融業の強みと弱みについて整理することが有益である。また、信用保証制度に関して、100%保証にすると、モラルハザードが生じることによって貸出現場の目利き機能が十分に発揮されない面がある点に留意が必要である。

    • 市場型金融の発展は、あくまで手段であり、その目的は持続的な経済成長に資することである。国内産業が停滞している状況の改善に資するような金融システムにしていかなければならないが、現状はそうはなっていない。我が国金融システムが、企業の価値創造に資する形で発展するのであれば、経済全体も同時に発展するはずであり、金融業が収益を上げていくことと金融システムが持続的な経済成長に資することは両立できるものである。

    • 銀行部門の株式保有の問題が指摘されているが、それに加えて、銀行部門の国債保有額も多額に上っており、仮に財政不安が生じれば、銀行部門にも大きな影響が及ぶ状況になっていることは、我が国金融システムのあり方を考える上で重要な問題である。

    • システム上重要な金融機関に関しては、いかに客観的な形で指定基準を示すことができるかが重要なポイントである。システム上重要な金融機関とは、取引ネットワークの結節点の役割を果たしている金融機関であると考えられる。これを踏まえて指定基準を考えると、金融機関そのものの規模が大きいこともその代理変数となりうるが、取引規模や取引相手数等を基準とすることが一つの方向性ではないか。

    • システム上重要な金融機関については、経営困難に陥ることを予防するための枠組みが必要であり、これを規制によって行う場合には事前に対象先を指定する必要がある。また、システム上重要な金融機関に対する規制の内容は、モラルハザードの問題を招かないよう、指定されたことのメリットを打ち消すような負担を含むべきであるほか、各金融機関のビジネスの特徴によって内容が異なるものであるべきである。指定基準については、規模や相互連関性、企業や家計への資金供給の程度などを踏まえるべきではないか。加えて、経営困難に陥った場合の対応についても検討しておくべきであり、柔軟で機動的に対処できる特別な処理の枠組みを予め確立する必要があるのではないか。

    • システム上重要な金融機関の指定基準を考える際には、地域で重要な役割を担っているかという視点もありうるのではないか。

    • どの金融機関がシステム上重要な金融機関に該当するかは、危機の状況によって変わりうるため、事前に対象先を指定することは難しいのではないか。また、決済を担う銀行部門は金融システムに与える影響が相対的に大きいため、銀行部門と非銀行部門を分けて考えるべきではないか。更に、ミクロの検査においても、マクロ健全性の視点を踏まえつつ行うことがシステミックリスクを防ぐ上では重要である。

    • システム上重要な金融機関については、事前の予防策と事後の破綻処理策の両方が必要である。事前の予防策は、システム上重要な金融機関が破綻時の外部不経済を織り込んだ行動を普段から取るような強めの規制を課すことが必要である。事後の処理策については、システム上重要な金融機関の処理が、デリバティブ取引等の期限の利益を自動的に失うトリガーに抵触しない形で行われることが大事である。

    • 現在の米英の金融規制に関する議論は、振り子が極端に振れすぎている感がある。リーマン破綻の教訓は、大手金融機関の突然死は混乱が大きすぎるという点であったはずであるが、今は米英の国民の反発もあって公的資金を使わないことから議論が出発しており、リーマン破綻時の教訓を踏まえられていないように思える。このような雰囲気の中で性急に対応の枠組みを決めるのではなく、各対応策が全体として与えるインパクトについて時間をかけて調査・評価した上で決定することが大事である。

    • 国際的な時流に沿って金融規制を国内に適用することが自己目的化していないか、市場型金融の構築を指向したこれまでの取組みをどのように評価するか、我が国金融業の強みと弱みは何か、それに関連して、金融立国とは、企業セクターが収益を上げて経済を牽引するという意味であったのか、それとも金融機関が企業を下支えするという意味であったのか、国債や株式の保有が多いことも含め、我が国金融業の構造的特徴は何か、膨大な財政赤字と限界的な金融政策など、政策フロンティアともいうべき状況の下でどのように議論を行っていくか、我が国の金融システムを考える上での留意点を踏まえ、どのような主張を国際交渉の場で行っていくか、という視点を踏まえて議論を行っていく必要がある。

以上

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総務企画局企画課調査室(内線3524)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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