金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第8回) 議事録

  • 1.日時:

    令和3年4月15日(木)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第8回)
令和3年4月15日
 
【神田座長】
 おはようございます。それでは、ほぼ定刻になったと思いますので、始めさせていただきます。ただいまから市場制度ワーキング・グループの第8回目の会合を開催いたします。皆様方にはいつも大変お忙しいところを御参加いただき、ありがとうございます。

 本日の会合でございますが、これまで同様、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とさせていただき、一般傍聴はなしとさせていただきます。また、メディア関係の方々には金融庁内の別室にて傍聴をしていただいております。議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 今回、オンラインで参加いただいておられる方々におかれまして、2点注意事項がございます。いつものとおりではあるのですけど、まず、御発言されない間はマイクをミュート設定、オフにお願いします。それから、今日はというのでしょうか、ビデオカメラもオフにしていただければありがたく存じます。これは通信の安定という観点から、今日はそれでやらせていただきたいと思います。次に2点目ですが、発言を希望される場合はオンライン会議システムのチャット上にて、これまでどおり、全員宛てにお名前あるいは協会名などの組織名の入力をお願いします。それをこちらで確認させていただき、私から御指名をさせていただきます。御自身の名前を名乗った上で御発言いただければと思います。その際、カメラをオンしていただいて、マイクのミュートもオフにしていただいて、御発言をいただければと思います。

 それでは本日のテーマですけれども、金融商品取引業者と銀行との顧客情報の共有等の在り方に関する検討、これを本日のテーマとして御議論をしていただきたいと思います。まず、事務局からの説明をいただきます。その後、皆様方から御質問、御意見をいただければと思います。では、早速ですが、事務局説明資料について事務局からの説明をお願いいたします。太田原市場課長、よろしくお願いいたします。

【太田原市場課長】
 まず、最初に会議の進め方で、事務局の説明が少し言葉足らずだったかもしれませんが、ビデオは基本的にオフにしていただいて、御発言のときにはオンにしていただくということで対応したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、内容に入りたいと思います。前回、銀証ファイアーウォールを扱いました昨年の12月1日の市場制度ワーキング・グループでは、諸外国における顧客情報・利益相反管理に関する制度上の規律などを取り上げ、神作委員からも、海外の状況なども踏まえつつ、広範囲にわたって御説明をいただきました。今回は、昨年までの議論を受けて、海外金融機関における顧客情報・利益相反管理に関する実務と、金融サービスの受け手である国内事業法人における銀証ファイアーウォール規制に関する意見を紹介した上で、御議論いただきたいと考えております。その準備の過程では、国際銀行協会や日本経済団体連合会に多大な御協力をいただきました。冒頭、まず、御礼を申し上げます。

 それでは、資料1について説明いたします。1ページです。銀証ファイアーウォール規制の制度趣旨として、顧客情報の適切な保護、利益相反取引の防止、優越的地位の濫用の防止を掲げるとともに、検討の視点として、顧客に提供する金融サービスの充実、国際競争力の強化を掲げています。

 2ページです。これまでの会合における委員の主なコメントとして、情報授受規制については、手続の簡素化を含め一定の緩和と金融機関の体制整備の強化・当局のエンフォースメントの強化という方向性が考えられる。顧客情報管理及び利益相反管理については、欧米における“Need to Know”原則等、海外との規制水準や競争環境の同等性を考慮する必要がある。金融資本市場の魅力向上等は重要な観点であり、それらに直接関係しない個人に関しては厚めの規制を維持する一方、法人に関してはグローバルスタンダードにすべき、等の御意見をいただいております。そして、4番目の諸外国の実務と5番目の顧客の考えにつきましては、今回、資料として提示しております。また、情報授受規制以外の関連規制については、外務員の二重登録禁止規制やホームベースルールについて、監督上の対応や誤認防止措置等の適切な確保を前提に緩和することも考えられる。主幹事引受制限と引受証券の売却制限について、さらなる緩和には慎重であるべき、等の御意見をいただいております。

 3ページ以降が、海外金融機関における顧客情報・利益相反管理に関する実務についてです。

 4ページです。調査対象として、合計11社に対して、グループ全体の組織、ビジネスライン及び適用を受ける規制等、また、投資銀行部門等における重要未公開情報(MNPI)の管理、利益相反取引の管理等について伺っております。

 5ページに、その結果の概要をまとめています。共通項として言えるものとしては、エンティティベースではなく、ビジネスラインベースでグローバルに組織を編成している。重要未公開情報(MNPI)の管理・利益相反管理について、グローバルで組織的かつ一元的なシステムによる管理体制を確立している。情報の共有・利用に関し、MNPIにとどまらず、幅広い顧客情報について“Need to Know”原則を適用している、といった点が挙げられます。

 6ページです。海外金融機関におけるビジネスラインの例ですが、欧米の金融機関においては、投資銀行部門、商業銀行部門・リテール部門・資産運用部門等のビジネスラインに分かれ、広義の投資銀行部門の中に証券・市場部門があることが多い。広義の投資銀行部門内はプライベート部門とパブリック部門に区別され、その区別に基づき顧客情報を管理している。部門間をまたぐには壁越え(ウォール・クロス)の手続が必要であり、部門内においても、MNPIのみならず、幅広く顧客情報について“Need to Know”原則に基づき管理している。そして、投資銀行部門・商業銀行部門(大企業向け)に関するグループの顧客情報管理・利益相反管理に係る規程は、原則として、銀行規制と証券規制の双方を充足している例が多い、といったことが言えます。

 7ページです。広義の投資銀行部門における重要未公開情報(MNPI)の管理の実務についてですが、MNPIを入手した役職員は、独立したコンプライアンス部門(コントロールルーム)に速やかに報告し、同部門がシステムで厳格に管理し、MNPIはグループで共通のシステムを利用し、各拠点間で連携してグループ全体で一元的に管理している、とされております。

 8ページです。MNPIの情報共有の在り方についてですが、米国では、法令上、MNPIを不正に利用した取引を行うこと等は禁止されており、違反時には金融機関に対して民事制裁金が課され得る。また、MNPI不正利用防止体制の整備義務が課せられており、欧州でも同様の体制整備義務が課せられている。体制整備の具体的な内容としては、監督当局のハンドブックや自主規制団体の規則に定められており、それらを参考に、各金融機関はMNPIを厳格に管理するため必要な体制整備や運用を実施している、とされております。

 9ページです。広義の投資銀行部門の利益相反管理の実務についてですが、米国では、法令上、証券業務を営む金融機関には利益相反を顧客に開示する義務があり、違反した場合は民事制裁金が課され得る。また、利益相反の防止を担保する観点から、利益相反管理体制の整備義務が課せられている。欧州でも同様の体制整備義務が課せられている。利益相反管理の実務の例としては、M&A案件等の情報は、顧客のコミットメントの前に、役職員の申請によりグローバルベースで一元的に利益相反を管理するシステムに登録し、利益相反管理オフィスは、登録情報を基に、全世界の他の案件との利益相反チェックを行う、とされています。なお、資料2にアンケート結果の詳細版をまとめております。時間の都合で紹介することは割愛いたしますが、適宜御参照いただければと存じます。

 10ページ以降が、国内事業法人に対するヒアリング等の結果についてです。アンケートによる回答だけでなく、ヒアリングにおいても、ファイアーウォール規制やその見直しについての効果や課題について、なるべく多面的に把握できるよう、事務局としても掘り下げたやり取りを心がけてまいりました。

 11ページです。一番下にありますように、ヒアリング等の実施手法としましては、37社を対象にして、その内訳としては、上場企業31社、非上場企業6社、製造業14社、非製造業23社に行いました。その概要についてですが、まず、ファイアーウォール規制に関する意見について、現状、金融機関との取引に当たり、約半数の企業が包括同意書を提出し、一方、個別案件ごとに同意を判断する企業も約半数という状況でございました。個別事案ごとに判断したいとする企業における理由としては、本邦金融機関については、銀行・証券会社でそれぞれの専門性があることを踏まえ、必ずしも銀証連携によるメリットを感じない。金融機関からどのようなサービスについて提案を受けるかについては、個別の案件ごとに自社の財務部門で判断したい。企業としては、銀行に伝えたコベナンツや決済に関するセンシティブな情報について、グループ証券会社に共有され、当該証券会社の営業活動に勝手に利用されることを懸念している、といった点が主に挙げられておりました。

 12ページに移りまして、他方、包括同意による銀証連携により、メリットを享受できたとの回答もありました。そのような回答においては、“Need to Know”原則に従った情報管理の必要性が併せて指摘されておりました。また、情報共有の管理に関し、企業間契約(守秘義務契約)による対応に一定の理解を示す回答が多数あった一方、情報共有を拒否できるような法令上の仕組みの維持を求める企業が特に大企業に多数ございました。なお、大企業以外の場合、実務負担の増大や守秘義務契約の内容に係る交渉力の観点から懸念があるとの指摘もありました。外資系金融機関に対する関係では、大企業から、外資系金融機関からサービスを受ける際も、必ずしもワンストップで総合的なソリューションの提供を受けているわけではなく、M&Aやファイナンスといった案件ごとの内容・規模・地域等に応じて、金融機関が各々得意とするサービス分野などを踏まえて、サービスごとに金融機関を選定しているとの回答が示されました。そして、ホームベースルールなど情報授受規制以外の緩和については、良いサービスが提供されることになり得るのであれば、特に困ることはない、とする企業もありました。

 13ページです。利益相反や優越的地位に関する意見についてです。まず、利益相反については、ローンと社債発行では金融機関の収益構造が異なり、金融グループ内の事情等によっては、企業にとっての最適解が必ずしも提案されないとの懸念や、仮に企業業績が悪化した直面を想定すると、独立系証券会社からは銀行の債権放棄も含めた提案があり得る一方、銀行系証券会社からはそのような提案は難しいとの懸念が示されました。また、優越的地位の濫用については、大企業は総じて金融機関とは対等な関係にあると認識しており、金融機関の優越的地位を利用した要請を受けたと回答した企業は見られなかった一方、社債発行の引受等の金融取引において、グループ証券会社の利用について銀行から言及があったとする事例や、金融機関の行為が法令上禁止されている優越的地位の濫用に当たるか否かについては、線引きが難しく、課題であるといった意見がありました。

 以上を踏まえて、15ページ、16ページに御議論いただきたい事項を掲げています。銀証ファイアーウォール規制については、2008年の大幅な見直し以降10年以上が経過し、金融を取り巻く環境も大きく変化している。こうした中、我が国資本市場の一層の機能発揮を促す観点、さらには国際金融センターとしての市場の魅力を向上し、より高度の金融サービスを提供する観点から、ファイアーウォール規制について、制度の基本に立ち返った見直しが求められている。

 この見直しに当たっては、これまでファイアーウォール規制により実現を目指していた①顧客情報の適切な保護、②利益相反管理、③優越的地位の濫用の防止を実効的に確保していくことが重要である。この点、欧米の金融機関の投資銀行業務等における情報管理に関する規律を見ると、「情報授受規制」がない中で、行為規制・市場規制・顧客の最善の利益を図るという金融機関の行為規範により、不公正取引の防止及び利益相反管理を徹底している。日本においても、同様の方法で管理を行うことにより、必ずしも入口における情報授受規制を設けておく必要はないのではないかとの考え方もあり得る。他方、日本の金融機関はこれまでファイアーウォール規制を前提にした情報管理・利益相反管理等を行ってきており、仮にファイアーウォール規制がない欧米と同様の情報管理制度を導入する場合、将来的な導入はともかく、現実的に日本の金融機関内・金融機関と事業法人間の実務に馴染むのかといった課題もあり得る。この点、国内の事業法人からは、国内の銀行における構造上の優越的な立場に起因する弊害、金融グループ内での情報共有・利用の在り方への懸念、情報管理について契約実務での規律への移行には事業法人の負担増大や金融機関との交渉力への懸念等が指摘され、情報授受規制の見直しにおいて一定の措置(オプトアウトの維持)を求める強い主張がある。このような中、ファイアーウォール規制の基本的な見直しの方向について、どのように考えるか、としております。

 16ページです。ファイアーウォール規制を大きく見直す場合、弊害防止を実効的に確保するための措置として、どのような方策を講ずる必要があるか。そして、(ⅰ)として、顧客情報の適切な管理のための実効的な方策。注として、欧米では商業銀行業務・投資銀行業務両方を行う者は、銀行法令・証券法令の両方を十分に遵守する必要があることを踏まえると、日本でも同様とすることについてどう考えるか。(ⅱ)として、利益相反の適切な管理のための実効的な方策。※印として、次回ファイアーウォール規制を議論する際の市場制度ワーキング・グループにおいて、国内金融機関(大手銀行、大手証券会社を想定しております)の実務について議論することを予定しております。(ⅲ)として、優越的地位を濫用した取引の防止・これを図るためのモニタリングの強化のための実効的な方策、といったことを掲げております。

 事務局からの説明は以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明を踏まえて、皆様方に御議論をしていただければと思います。今、御説明にありましたように、御議論いただきたい事項としては、事務局としては15ページ、16ページに掲げてあり、今、御説明いただいたとおりでございます。これまでと同様、まず委員の皆様方から御質問や御意見をいただきまして、それが一通り終わった後でオブザーバーの皆様から、もし御意見等があればお伺いするという順序で進めさせていただきたいと思います。今回も多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間といたしましては、5分以内程度を目安にしていただければと存じます。4分を過ぎますと、事務局から発言時間が残り1分である旨のチャットが、御発言していただいている委員のみに送付されますので、御参考にしていただければと思います。それでは、まず、委員の皆様方、どなたからでも御質問、御意見をお出しいただければありがたく存じます。御発言いただける方はチャットにてお知らせいただければと思います。

 なお、本日所用で途中で御退席の予定と伺っていますのが原田委員なのですけれども、もしよろしければ、原田委員、最初に御質問、御意見ございましたら、御発言をお願いします。今、チャットもいただきました。原田委員、よろしくお願いいたします。

【原田委員】
 ありがとうございます。事務局の御説明もありがとうございました。

 意見を申し上げます。顧客目線での検討が重要という認識は以前からありまして、今までも幾つかのヒアリングやアンケートの結果を公表していただいてきました。今回、当局による対話をするという形でのヒアリングの結果を公開していただきました。これは対話で、選択肢の中から答えを選んでもらうという形ではなく、対話をしながらヒアリングしたということで、アンケート結果は、顧客の声を慎重に踏まえることができているというふうに考えました。ただ、サンプル数が多いとは言えないことから、標本から母集団が推測できるか、日本の全体の企業の声が聞けているかというと、そうでもないのかもしれませんけれども、範囲としては、大企業、中小企業ともに聞いていただいているという形であると理解しております。これまでのワーキング・グループでも何度もヒアリングやアンケートを通じて、顧客のニーズや情報共有に関する考え方を調査してほしいという声がありましたので、ここでそろそろ顧客の声を聞くというのも終わりなのだろうなというふうに理解をいたしました。その顧客の声ですけれども、半々ぐらいかなという印象を持ちました。ただ、利益相反、優越的地位の濫用に関しては、どちらかというと否定的な見方のほうも強いのかなというふうに、そういう印象を持ちました。

 その上で、改めてファイアーウォール規制の制度趣旨について、規制緩和の意図について考えてみます。脅威として見なされるのは何かということをヒアリングから考えますと、優越的地位の濫用であろうかと思いまして、これをいかに防止するかという点は考えるべきというふうに思いました。
アンケート・ヒアリング結果を踏まえ、それでも、この時期に見直すということであれば、国際競争力の強化といった視点から、国際的に足並みをそろえるといった面から緩和を考えることになるというふうに考えました。そうしますと、今日の16ページにも書いていただいておりますように、次回、この議論を進めていくには、ここに書いていただいているように、国内金融機関、大手の銀行、大手の証券会社の実務についてというところで、実効的な方策を練るというところになっていくはずです。その際、1つ重要な視点としては、これも以前から複数の委員の方々がおっしゃっているところなんですけれども、金融機関の体制整備の強化ですとか、当局によるエンフォースメントの強化といった方向性も同時に議論をしていただきたいというふうに希望として述べさせていただきます。

 あと、すいません、もう1点だけよろしいでしょうか。前回、ファイアーウォール規制に関連し、証券会社の収益の概要をお伺いしておりました。「その他受入れ手数料」の内訳について、分かれば教えていただきたいというふうにお願いしておりまして、事務局には時間を取って調べていただきました、ありがとうございました。傾向としては、「その他の受入れ手数料」は増えているということを確認していただきました。一番大きな比率を占めているM&A関連は、全体で見ると2%であるということも分かりました。一部の社には大きな影響はあると思いますが、全体で見ると2%ということを教えていただきましたので、この点についても感謝いたします。ありがとうございました。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、多くの委員の方々からチャットをいただいておりますので、チャットの順番で、有吉委員、佐々木委員、松本委員の順になるかと思います。有吉委員、どうぞお願いいたします。

【有吉委員】
 有吉でございます。私が進行のことを申し上げるのは恐縮なのですが、もし差し支えなければ、松岡委員が先ほどの事務局説明資料の補足でコメントをされたいという書き込みでございましたので、先に松岡委員のお話を伺うということはできませんでしょうか。

【神田座長】
 ありがとうございます。もちろん可能でございまして、それでは、松岡委員、先に御発言いただけますでしょうか。

【松岡委員】
 どうもありがとうございます。恐れ入ります。松岡でございます。発言をさせていただければと思います。

 事務局からの御説明資料1のⅢ.に経団連に寄せられた意見も盛り込んでいただいておりますけれども、補足として、経団連の意見照会の結果、また、その関連について一言申し上げさせていただきたいと思います。

 私が部会長を務めております経団連の金融・資本市場委員会の資本市場部会のメンバーを対象に、昨年の秋、10月から11月にかけて意見照会を行っております。御回答企業からは、自社の非公開情報を金融機関グループ内で共有することに対しては、個別に共有の是非を自社で判断したいという回答を主にいただいているのが現状でございます。また、制度の検討を行うに当たり、これらの企業から自社の情報は自社で管理できるようにしたいという声がございましたので、これを尊重していただければと思っております。いずれにいたしましても、金融機関におかれましては、情報管理、また、利益相反管理について、実質的に企業側に弊害が生じない対応をぜひ御検討いただきたいところでございます。

 私自身の経験から申しましても、先ほど御説明のあった海外の例においては、大変厳格な体制の下で、長い年月と事例の積み上げによる経験を通して、構造や基準が整備され、判断や行動が確立されていったと思います。いずれにしても、本件につきましては、さきに申しました点も踏まえて、丁寧かつ慎重な検討と取組が重要だと考えておりますので、よろしくお願いしたいところでございます。以上でございます。

【神田座長】
 松岡委員、どうもありがとうございました。それでは、戻りましてといいますか、有吉委員、どうぞお願いします。

【有吉委員】
 私からは総論的なコメントを1つと各論的なコメントを2つ発言させていただきたいと思います。

 これまでの会合でもコメントさせていただいておりますが、顧客の利便性を高めるということにつながるのであれば、実質的に利益相反管理とか誤認防止とか、あるいは“Need to Know”原則というものが確保されるような体制整備を求めたり、それから弊害防止のためのモニタリングの強化を図ったりといったことを条件に、一律形式的なファイアーウォール規制を緩和するという方向性はあり得ると思います。ただ、これは私だけかもしれませんが、これまでの事務局の御説明であるとか、このワーキング・グループでの御報告を聞いていても、ファイアーウォール規制の緩和によって、15ページの冒頭あたりに書かれておりますような、資本市場の一層の機能発揮とか、より高度の金融サービスを提供するとか、こういったことにどのようにつながっていくのか、具体的に顧客にとってどのような利点が生じるのかということが、正直まだよく分からないという感想を持っております。そのために、規制を緩和するということであったとしても、どのような見直しを行えば効果的な方策となるのかということをつかみかねているという状況でございまして、恐縮ながら、事務局説明資料の15ページ、16ページにあるような照会に対して正面からコメントするのが難しいという感想を持っております。

 その上で、若干の各論ということでございますが、まず、今申し上げた15ページの観点というものとは少々外れる問題かもしれませんが、銀行系の証券会社の方のお話などを伺っていると、実務的に形式的なファイアーウォール規制を遵守するために、非常に重い負担が生じている面があると理解しております。形式的な規制遵守のためだけに、例えば書面を用意しなければならないとか、実質的には必ずしも必要がない人手を確保しなければならないとか、こういった問題が生じているという事実があるのではないかと思いますので、こういったことを解消していく方向で規制の見直しを考えるということはあり得ると思います。次の議論の際の対象ということなのかもしれませんが、今申し上げたような観点からも、オプトイン、オプトアウト、それぞれの手続であるとか、ホームベースルールであるとか、こういったものを見直す意義はあるのではないかと思っております。

 それから、各論の2点目でございますが、事務局説明資料の5ページ、6ページの図などを拝見すると、外資系金融機関の体制の中での、リテール部門の位置づけの中には、これは当たり前なのかもしれませんが、中小企業向け貸出しというものが位置づけられているわけですね。それから、事務局説明資料の中の国内事業法人へのヒアリングの項目の中で、幾つかの回答では、大企業とそれ以外の企業とで状況が異なるのではないかといった趣旨の回答が見受けられるように思います。直接、今の2点と論理必然という話ではないとは思いますが、こういった観点も参考に、ファイアーウォール規制を考えるに当たって、顧客を個人と法人の2分類で考えるのではなくて、個人とそれから大企業と、さらには大企業以外の法人と、こういう3分類に整理した上で、大企業関連の情報についてはやや規制緩和して、緩やかに情報共有を認めつつ、大企業以外の法人の情報については、どちらかというと個人の情報に近づけて厳格に取り扱うことを引き続き求めるといった規制の考え方もあり得るのではないかと感想を持ちました。要すれば、顧客属性に応じて、リスクベースで、16ページにあるような規制の各種の課題というものを検討していくべきではないかと、こういう趣旨でございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】
 佐々木です。ありがとうございます。非常に参考になって、私も言いたいこといろいろあるのですが、絞ってお話ししたいと思います。

 まず、企業への事業会社へのヒアリングの結果、これ非常にインパクトが大きいですよね。もちろん懸念点を特に中心に紹介されているとは思うのですけど、規制緩和の方向に話が流れていく中で、これはかなり懸念があるなというふうに思わざるを得ないような感じに私は受け取りました。ただ、あくまでもやっぱりヒアリングということですので、アンケートなどとは異なり、我々もどういった形でヒアリングが行われたかとか、そういったことを細かくは分からない、抜粋された意見というのだけを見ていますので、その点は注意が必要なのかと思って見せていただきました。お進めになっている方向性は非常に正しいと思いますし、納得できるもので、非常に分かりやすく進めていただいていると思います。

 その上でそもそもというところなんですが、1点は、情報授受について書面手続きのことがいろいろ問題になっていますが、すでに電磁化した方法での提出というのは可能ですが、現在いろんなところでペーパーレスが進んでいる中で、この議論とも並行してどんどん、書面手続きの悪いところというのはなくしていかないといけないのかなというのが1つ要望であり、お伺いしたいところでもあります。書面手続きの手間が問題であるということが、さんざんここで言われていますので、少なくとも、情報授受規制をやめるという話と並行して、手間をかけないで済むような、かといって形骸化してはいけないのですけど、よりスムーズに書面手続きができるような方向性を確保していただくことができないかというのが1つの意見です。

 もう一つは大きいところになるんですけれど、ファイアーウォール規制が緩和されればやっぱり銀証の一体化が進んでいくと思います。その中で懸念されている優越的地位の濫用とか情報共有というのは、私は、あからさまに例えば脅しをかけたりとか、あるいは顧客のデータをコピーして転売したり、どこかに持っていってしまうとか、そういったものではないのではないかなと思っています。つまり、例えば企業が傷んできているという情報を持っているときに、それをはっきりは言わないけど、グループ会社の人にちらっと見せてしまうとか、あるいは、脅しをかけるわけじゃないけど、顧客が勝手に忖度したり、恩義や遠慮を感じて契約をするとか、そういった意味での優越的地位の濫用とは言えるのか言えないかぐらいのことということが問題なのかと思っていて、やはり同じグループ内の一体化が進めば、関係ある人物が両方の企業に関わる取引、直接でなくても、関わってしまう可能性というのはやはり増えていくと思いますので、そういった懸念というのはどうしてもあると思います。そういった事例が増えてしまうという懸念ですね。ただ、マクロ的に見て、日本の進むべき方向として、やはり付加価値の高いサービスで競争していくというのは非常に重要なので、金融業が国際的な競争力をつけることは大事だと思っています。そういう意味で、現在の議論ですと、一体化したサービスというのを提供していけないと国際競争ができないということであるならば、やはりこの規制の緩和というのは必須になってくるという印象を今現在では持っております。ただ、16ページにありますような論点ですが、やはり突然ファイアーウォール規制をなくしたときに、今回も御紹介いただきましたけど、海外の銀行などとは中身や在り方が違うわけですから、そこでファイアーウォール規制をなくしてしまうと、どうしていけばいいだろう、ほかに何を設けたらいいのだろうというところが1つの論点になっていくと思うんですね。16ページに書いていることは、本当にそのとおりで、ここが知りたいというところなのですが、例えば一番最後のところ、モニタリングの強化の実効的な方策といっても、私自身でしたら、例えば実際の業務とかを知らないので、具体的なところに踏み込んだ議論がなかなかしにくいというところがありますので、そういった意味で、もう少し、次回のヒアリングとかでそうなるのかと思っておりますが、ポイントを絞った、ここが効くという部分を絞って教えていただけたら、もっと議論がしやすいかと思いました。

 個人的には、原田委員も触れられていましたけれども、当局のエンフォースメントとか個人へのペナルティーとか、そういったことも比較する必要があるかと思っていまして、例えば、民事制裁金というのは先ほど出てきましたが、欧米だと民事訴訟とか罰金といった分かりやすい罰則というのが結構あるかと思います。日本の場合は業務改善命令とか、そのような違う形で効いているとは思うのですが、そういったところの比較というのが結構重要かと思います。例えば、日本の証券会社に関しては、少なくとも日証協は自主規制で外務員の資格剥奪とか罰金とかということを行っていますが、銀行に関してはそういうものはないのかなと思っております。あと、個人的に、例えば、違反した人が、あからさまなものだったらペナルティーがあると思いますけれども、そういうペナルティーがどれくらいあるのか、即辞めさせられるのかどうかとか、結局そういったことが効いてくる可能性があると思いますので、違反が行われたときのペナルティーとかの部分についても、分かりやすい比較みたいなものがあると参考になるかと思いました。これまでももちろん全くなかったわけではなくて、触れていただいているのですが、やはり日本の場合こういう特徴があるので、こういうところが懸念される、みたいなことをより具体的に教えていただけると、議論しやすいかなというふうに感じました。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、松本委員、神作委員、そして森下委員の順になろうかと思います。松本委員、どうぞお願いいたします。

【松本委員】
 御説明ありがとうございます。大変参考になりました。今回のファイアーウォール規制について考えていくときに、特に国内事業法人に対するヒアリング結果が重要になると思うのですが、気になった点を幾つか申し上げたいと思います。

 原田委員や佐々木委員の御意見とも一部重なる部分があるのですが、今回のヒアリング結果は私としては非常に参考になったものの、サンプル数が僅か37社ということもあり、統計的な見地からは日本企業全体の意見を表しているものとは言えないため、このヒアリング結果をもって日本企業全体の意見であるとみなすのは注意が必要と考えました。特にヒアリング先のほとんどが上場企業であって、一方で、日本企業の多くは中小企業のため、日本企業全体に対する規制を考えるという観点では、経団連でのヒアリングなので仕方ないですけれども、偏ったサンプリングになっているのではと感じております。例えば、銀証連携による総合ソリューションなどは、優秀な財務担当を社内に抱えず、優れた財務戦略を立てるのが自社では難しい中小企業ほど本来価値を享受できると思っておりまして、緩和によるメリット・デメリットについては、大企業だけではなく、様々なステークホルダーも含めて、大局的に議論すべきだと思います。あとは、細かい点ですが、今回の国内事業法人に対するヒアリングについては、どのような形式で行われたのかという補足情報があるとよいと感じました。というのは、通常このような調査を行う場合、どのような情報を事前に相手に与え、どのような聞き方をするのかによって、回答が大きく変わるからです。例えば、「現在のルールでは御社の情報は同意がない限り共有されませんが、今後は同意なしに共有できるというルールへの変更についてどう思われますか」とダイレクトに聞くと、ほぼ100%の企業が、不安である、もしくはやめてほしいという回答になると思われます。一方、「共有に同意していただければ、このようなメリットを受けられます。共有に同意していただけますか」と聞けば、恐らく「問題ありません」という回答が増えるかと思います。以上が、今回のヒアリング結果に対する統計的見地からの有用性に関する意見となります。

 次に、ファイアーウォール規制の緩和につきまして、現時点では、やはり先ほどもありましたが、国内金融機関の国際競争力の観点から、とりわけ、法人については、金融機関の体制整備の強化等を前提に、海外の規制水準にまで緩和すべきと現時点では私自身は考えております。その理由は、確かに銀証連携によるメリットをあまり感じないという意見がある一方、情報共有による弊害についてもあまり声が上がっていないと聞いております。それであれば、国内金融機関の国際競争力の強化という観点を重視してもよいのではないかと考えております。また、有吉委員からもありましたが、現在、ファイアーウォール規制があるために、銀行とグループ証券間のコミュニケーションにおいても、かなりの負担がかかっているというふうに私自身も聞いております。例えば、メール1本送るときにも、送信リストの中に同意を取っていない先の企業情報が本当に入っていないかという確認も相当慎重に何度も行っていると聞きますし、それによってかなりの心理的・時間的な負担がかかっているという声も聞きます。こういった点は、業務の効率性という観点からは緩和の方向性で考えてもよいのではないかと思っております。私自身としては、もし現時点で同意を取った先での弊害を感じている企業が少ないのであれば、一旦、海外の規制水準にまで緩和を行って、もし規制により本当に何かしらの弊害が生じるようであれば、改めてその弊害に合わせて規制を議論、強化するなど、柔軟な姿勢で対応するのがよいのではないかと考えております。

 以上となります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】
 どうもありがとうございます。事務局から、海外金融機関における顧客情報と利益相反の管理に関する実務について、大変詳細な調査結果を御教示いただきまして、大変勉強になりました。誠にありがとうございました。

 海外金融機関は、情報の共有や利用に関し、重要未公開情報だけにとどまらず、幅広い顧客情報について“Need to Know”原則を適用しており、法令が要求している範囲を超えて、言わばプリンシプルベースで情報を管理しているという点が印象的でした。また、パブリック部門とプライベート部門の間だけではなく、プライベート部門の中でさらに投資銀行部門と商業銀行部門を分離し、インフォメーションバリアを設けて、重要未公開情報よりも幅広い顧客情報を“Need to Know”原則に基づいて管理しているという点についても、大変興味深くお伺いいたしました。また、利益相反の管理についても、その体制を整備することによって組織的に対応しているということが分かりました。他方で、日本の金商法のような情報授受等の禁止といった未然予防的なタイプの規定は存在していないということも確認できたと思われます。日本法の下でも金融商品取引業者等や銀行につきましては、重要未公開情報の管理が法令上または守秘義務等に基づいて要請されており、また、利益相反管理体制の整備についても、金商法上及び銀行法上要請されていると理解しています。他方、実務において、実際に重要未公開情報についてどのような取扱いがなされているのか。特に、本日の海外金融機関の実務に関する御説明を伺うと、日本における金融機関の実務と比較し、例えばインフォメーションバリアがどこに設けられているのか。“Need to Know”原則が日本の金融機関においてどの程度定着しているのか。そしてまた、インフォメーションバリアによって管理の対象とされている情報の範囲というのはどの程度のものなのか。こういった実態について関心を持ちました。次回、日本の金融機関の実務について調査をいただけるということで、大変ありがたく、また興味深く感じております。

 実態を踏まえ、適切なインフォメーションバリアが設置されていること、及び情報活用の視点に留意しつつ、重要な未公開情報を幅広く網をかけた上で、“Need to Know”原則が実効性のある規範として適用されているということが、情報授受規制の緩和・撤廃をどこまで進めていくかを検討する際の1つの重要な考慮要素であると考えます。なお、市場制度ワーキング・グループでも、情報授受規制の根拠として指摘され、本日の国内事業法人に対するヒアリング等においても御指摘がありました金融機関の優越的地位の濫用につきましては、今日の御報告におきましても触れられておらず、海外では、私も多少調べてみたのですけれども、あまり主要な、少なくともメインな問題にはなっていないようでございます。しかし、日本の場合には、優越的地位の濫用についてどのように評価するかというのは、日本に固有の論点として残っている重要な論点だと思います。

 もっとも、一般論としては、次の2点について、私は規制の見直しの余地が大きいと考えております。第1は、情報授受規制の目的である利益相反と優越的地位の濫用の予防については、顧客保護の側面が大きく、最終的にはやはり顧客の意思が重要な問題になることに鑑みますと、最低のラインとしてオプトアウトの機会を保障する一方で、情報の共有を可能にするための手続要件については、見直し、ないし緩和をすることが考えられると思います。このような手続規制の見直しに当たりましては、有吉委員も御指摘なさっておりましたけれども、顧客の属性、個人情報か、法人情報か、さらには法人についても、上場企業か、非上場企業か、大企業か、中小企業か等々、様々な切り口があるかとは思いますけれども、顧客の属性に応じて区別するとともに、他方、金融機関の側につきましても、一般論として言えば、情報管理、利益相反管理体制及び内部統制体制がどの程度充実しているかということによって、グラデーションのある規制を考えるということがあり得ると思われます。いずれにしましても、手続規制のところは見直しの余地が大きいように思われます。

 第2に、本日は特に触れられていなかったと思いますけれども、ホームベース規制のような予防的規制である情報授受規制のさらなる予防的規制のようなものについては、兼職規制の緩和の立法趣旨をかなり減殺しているという面があることもあり、見直しの方向で検討することが適切であると考えております。

 少し長くなりましたけれども、私からは以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、森下委員、よろしくお願いします。

【森下委員】
 ありがとうございます。詳細な御説明をありがとうございました。私からは4点申し上げたいと思います。

 まず1点目ですけれども、この問題は幾つかの論点が絡み合っていますので、整理して考える必要があると思っています。まず1点目は、情報をどの範囲で共有していいかという問題。2点目はその情報をどう管理しなければならないかという問題。3点目は、その情報を使って、どのようにサービスを顧客に提供しなければならないかという問題であります。この点に関して、資料の15ページでは、1点目の問題を情報授受規制の問題、2点目、3点目の管理ですとかサービスの提供の問題を行為規制の問題と分けて、そういったようなものを分けて考えることもできるのではないかと指摘されていると思いますけれども、私はそのとおりであると思います。この観点から見ると、資料の11ページで示された事業会社のご意見の多くは、これは大企業が主体だったためかもしれませんけれども、どちらかというと、提供されるサービスについては自分たちでコントロールしたいといったようなものが主体であったとの印象があります。もしサービスの提供がポイントであれば、サービスの提供の部分についてフォーカスした規制をすること、すなわち、情報は共有していいけれども、サービスの提供の部分において、例えば利益相反ですとか優越的地位ですとか、あるいはさらに踏み込んで、フィデューシャリーとか、そういったルールを整備するですとか体制整備を整備するという形で対応するという考え方があるのではないかと思います。欧米の金融機関にできて日本の金融機関にできないということがあるのかというのはちょっと疑問であります。また、一般論とすれば、より多くの情報に基づいてサービスを考える場合と、限定的な情報に基づいて、顧客にどういったサービスがふさわしいのかを考える場合では、前者のほうが顧客のベストインタレストに合致したサービスを提供しやすいということが言えるのではないかと思います。ただ、他方で、経団連の方からの御意見がそのようなものと思ったのですけれども、自分の情報が利用される範囲は自分でコントロールしたいといったような考え方ももちろんあり得ると思います。顧客がどの範囲で自分の情報についてのコントロール権を持つかというのは、これ自体なかなか難しい問題で、個人と法人で異なる面もあり得るかと思いますし、まだ日本においても検討が不十分なところだと思います。ただ、これは銀行と証券の間のみならず、各エンティティの中、たとえば、銀行の中、証券の中でもあり得ると思いますし、事業法人が獲得する情報との関係でもあり得る問題であります。この観点では海外では、顧客との取引情報などは、顧客情報でもあると同時に、事業法人の情報でもあるといったような見方がありますので、この点は整理が必要かなと思います。

 2点目ですけれども、資料の15ページでは、オプトアウトの維持ということについても触れられております。ただ、私が思いますのは、現状ではオプトアウトと言いながら、実際には顧客の積極的な同意を求めるというようなルールですとかプラクティスになっているような気がいたします。現状がオプトアウトというのはややミスリーディングなのではないかというふうに思っております。

 3点目ですけれども、外資系金融機関のプラクティスについて御紹介いただいたものは、要するにグループが一体となって情報を管理し、サービスを提供するというようなもので、エンティティの単位にこだわらないといったようなものかと思います。今後の日本の金融の在り方を考えた際に、伝統的な銀行・証券といったエンティティにこだわるのか、そうではなくて、グループでの金融サービスの質の向上に軸足を置くのかというのは選択のしどころかと思います。私としては、金融サービス仲介業での議論にあったように、横断的なワンストップでのサービスの提供の重要性が説かれたり、金融と非金融の垣根すら曖昧になってきている状態で、銀行と証券という伝統的な業態にこだわるのがどれだけいいのかというのは違和感を感じているところであります。

 最後、実効的な措置ですけれども、欧米の状況も踏まえて、日本の規制ですとか実務の状況をこの時期に再点検するということは非常に有用であると思います。ただ、オプトアウトという制度が、例えば優越的地位の濫用との関係で非常に有効かというふうなことについては、オプトアウトといっても同意があればいいんだとすると、同意を得るということについても優越的な地位を行使できるのですから、さほど有効ではないのではないかといったような研究も公にされていますので、本当に実現したいものと規制の内容というのをもう一度精査する必要があるように思います。また、事前の規制だけではなく、不適切な勧誘ですとか商品販売がなされたときに、私法上の救済としてどのようなものが与えられるかという点も、本来であれば、個々の顧客にとっては重要なのではないのかなと思います。したがって、可能であれば、私法上の救済についてもこの機会に検討すると、それは顧客にとっての安心感の向上というものにつながるのではないかと思います。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、チャットの順番で、上柳委員、野村委員、松尾委員の順で、上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】
 ありがとうございます。大きく2点申し上げたいと思います。

 1点は、既にそういう予定なのかもしれませんけれども、海外でのプラクティスについて今日御紹介がありましたけれども、それと日本の銀行の中での実務、実際がどのように違うのかということはさらに伺いたいなというふうに思いました。それとの関係もあるんですけれども、いわゆるオプトアウトの実態というんですか、オプトアウトの機会があるんだということをどのように今、知らせなきゃいけない、あるいは知らせておられる実務があるのか。そこが、大変コストのかかるものなのかどうかということも含めて、もう一度伺いたいなというふうに思いました。

 もう1点は、今日の資料の11ページに記載いただいたことは、私はもっともだと思いました。例えば、一番下のものですね、銀行に伝えた決済に関するセンシティブな情報についてとあります。私の見方ですと、銀行にわざわざ伝えなくても、銀行を通じて決済がされているわけですから、銀行のほうでは企業の出入金について、必ずしも全部ではないかも分かりませんけれども、それが減っているとか増えているとか、そういう傾向そのほかについて分かるわけです。こういう決済情報について分かっている銀行が、その事業体についてどのように見ているのか、その情報がほかの部門にどのように伝わるのかというところは、やはり事業体としてはコントロールしたいというふうに思うのはもっともだと思います。それを制度的に保護する、あるいは法的にも保護するということは、引き続き考えられるべきではないかというふうに思いました。そういう意味で、いわゆる狭い意味でかもしれませんけれども、融資がある場合の優越的地位ということだけではなくて、その決済の情報について銀行、決済機関は多くのものを握っておられるというところを再度強調したいと思います。

 さらに、具体的な方策についてどう考えるかというのはもう少し考えたいと思います。以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】
 野村でございます。ありがとうございます。簡単なコメントを3点ほど、それから議論の方向性についてということで、最後に一言程度申し述べたいと思います。

 まず、コメントですけれども、本日、御教示いただいた事業法人へのヒアリングについてでございます。以前のこのテーマでの会合で、規制緩和によりオプトアウト方式が導入されているわけですが、その運用や手続といったところに何か不備があるのか、もしそうであるならば、その見直しの議論をまずは出発点として行うべきではないかということを発言したかと思います。要は、手続が煩雑過ぎてちょっと使い物にならないというような課題があるのかということでございます。今回行っていただいたヒアリングですと、同意取得のところの手続、その不備ですとか、煩雑過ぎてかなわんといったような御不満、これはあまりストレートには聞かれなかったのかなという印象を持ったわけですが、まず、それは正しい理解でしょうかということがございます。ただ、いずれにせよ、事務局資料1の11ページ目、12ページ目にあるように、企業におかれては包括同意するところはする、個別案件毎のところもありということで、おのおの判断を下されていると理解いたしました。要は、金融機関の強みに応じて使い分けておられるのかなという理解でございます。

 2点目ですが、海外金融機関の利益相反管理と情報管理という点でございまして、利益相反管理と非公知の重要情報管理の体制、このような感じなんだろうなと思いました。この整備も大変だろうと理解いたします。ただ、その一方で、こういう体制を整備するのは言わば出発点とも思います。これだけの体制があるから大丈夫とはならなくて、実効性を伴う運用がなされているということが重要なのだろうと思います。その点、資料2のほうの20ページ目ですが、行政処分などについては、個別性が高いので回答は省略となっておりまして、それは確かにそうだろうなと、仕方がないかなとは思ったのですが、これまでの委員の先生方の御発言にも重なるところではありますが、仮に欧米に倣った規制緩和というロジックを進めるのであれば、ここがどうなっているのかというのは重要なポイントになるかと思います。以前の神作委員のプレゼンテーションでは、米国などでは違反に対する民事訴訟も起きうるというお話もございましたが、そういったことも含めたエンフォースメントの実効性の確保をきっちりと見ていく、これはセットになるということは強く感じた点でございます。

 3点目の優越的地位の濫用でございますけれども、こちらもこれまでの御発言と重複いたしますが、優越的地位の濫用のようなものが分かりやすく表に出てくるということは、ほぼないという前提で議論をする必要があると思います。つまり、特に聞こえてこないのでそういうものがない、ということではない点に留意する必要があると思います。あからさまなことはしないでしょうし、弱い立場であればあるほど、されたほうから話が出てくることは難しいのではないかと思います。

 最後に、今後の議論の方向性ということでございますが、資料1の15ページの整理なども踏まえまして、オプトアウト方式の維持を前提にしつつ、これも既に御発言等にあった点でございますが、その手続面での効率性ないし効果の面で、よりよくする、見直しをしていくべきところがあるならば、そこをきちんと進めていくのが重要ではないかと思います。次回のこのテーマでの議論において、国内金融機関の実務について御提示いただけるということでございますので、そこの議論、論点などもかぎであろうかと思っております。

 私からは以上です。どうもありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】
 ありがとうございます。松尾です。御説明ありがとうございました。私からは2点申し上げます。

 まず、顧客情報の管理についてですけれども、これは特に不公正取引の防止という観点からは、ファイアーウォール規制を撤廃したら、現在、証券会社に課されているのと同等の規制を課す必要があるんだろうというふうに考えております。御紹介いただいた海外の例を見ましても、向こうはエンティティベースではなくて、基本的にはグループ全体で管理する体制になっていて、商業銀行と投資銀行だからといって何か区別しているところはないということでしたので、同じように規制をしていく必要があろうかと思います。これはしかし、逆に申しますと、海外でもそうですけれども、銀行と証券の間だからといって、何かその情報管理の仕方が質的に異なるというようなことではないのだろう。商業銀行の情報だからといって、特別なことをしているようには海外の例でも見られませんので。そうであるとすると、現在、証券会社単体でやっているような情報管理体制を銀行に広げていくということで十分対応できるのではないかというように思いまして、そうだとすると、銀行と証券のところだけ情報授受を禁止するというファイアーウォール規制が上乗せになっているということは、不公正取引の防止という観点からはなかなか正当化しづらいのではないかなというふうに感じました。

 続いて、利益相反の管理体制ですけれども、こちらも海外の例を御紹介いただきまして、大変参考になったんですけれども、日本でも仮にファイアーウォール規制を撤廃するとすれば、今日御紹介いただいたのと同じような利益相反管理体制の整備を求めていくことになるのだろうと思います。海外の例を見ますと、基本的には各社各様でやっているということのようですけれども、共通するところとしては、あらかじめ定めておいた利益相反に危険のある取引類型というのを抽出して、それをコンプライアンス部門のところに上げていって、利益相反の度合いによって様々なところで対処していくという方法を取っているというふうに理解しました。日本でもこのような方法を取ることになるのかと思いますし、既に取っておられるのかなと、次回明らかになるかと思いますけれども、そのように思います。こういう利益相反管理の体制というのは、例えばM&Aで売手と買手双方を代理するというような明白な利益相反の類型の場合にはかなりうまく機能すると思いますし、それに違反していれば、監督当局によるモニタリングというのも非常にやりやすいと思いますので、実効的に働くかと思います。他方で、事業法人からのヒアリングで出ておりました銀行グループが、そのグループ全体の利益を優先して、必ずしも顧客に最適なサービスを提案しないのではないかというようなタイプの利益相反にはなかなかうまく対応できないのではないかなと。自主的な管理に任せていても、利益を優先してしまいがちだと思いますし、最適なサービスというのが明白でない以上、外部から監督するというのも難しいように思いました。もっとも、こういった利益相反で、顧客の最善の利益を守っていなければ、本来は顧客が見放すということで、顧客による選別が働く、市場による規律が働くはずですので、必ずしも法令ベースの規制で全てやらないといけないということではないのだとも思います。ところが、今回のヒアリングを見ますと、銀行グループの証券会社からの提案が出ると、本来はほかの独立系の証券会社からの提案と比べるということになるはずなんだと思うんですけれども、なぜか銀行グループから出ると、それが唯一の選択肢であるというように受け止めておられるのではないかと思えるような回答が幾つかありました。
最適でないと感じたのであれば、他社と比べればいいはずのものを、どうして銀行グループからの提案を受け入れる前提で回答されているのかなというところが非常に気になったところです。今回のヒアリングから全てのことは分かりませんけれども、そういったところがやはり優越的地位の問題が絡んでいるのだとしますと、市場による規律というのがうまく働かない。だとすると、何か法令上のレギュレーションでこういったところを対応する必要があるのかなと思いましたが、なかなかうまい方法というのが難しいのではないか。そこをクリアしないと、ファイアーウォール規制の全面的な撤廃というのは難しいのかなというふうに感じました。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、続きまして、井口委員、どうぞお願いいたします。

【井口委員】
 よろしくお願いします。まず最初に、事務局の方には、御説明のほか、詳細なヒアリング結果を共有していただきまして、ありがとうございました。大変状況がよく分かりました。

 基本的には、以前も申し上げましたとおり、日本の国際金融市場としての地位向上、あるいは金融業の国際競争力の観点からも、グローバルスタンダードを踏まえて、国内法人顧客への情報授受規制に関しても一段の緩和の方向がよいのではないかと考えております。それで、今回提示していただいた国内事業法人へのヒアリング結果というのは、実情を知るということで大変有益と思いました。これについて2点ほど意見を申し上げたく思います。

 1つは、11ページにあったと思いますが、金融サービスの利用者サイドで、先ほど国際金融競争力とは申し上げたのですが、銀証連携によるサービスの質を評価しているというふうには解釈できなかったということです。ここ、先ほど委員の方からも御指摘ありましたが、先端的な大企業を中心とする意見ということで、利用者全体を示していないかもしれませんが、実際、資本市場に対して、多くの金融グループが経営方針としてグループ総合力を投資家等に強調されておりますので、私のような機関投資家の立場からいたしますと、ややショッキングな結果と捉えております。あと、グローバルではうまくいっている、それと異なって、うまくいっていないといたしますと、この事象の要因が、そもそもの金融グループとしての力なのか、あるいは制度的な要因で競争力のあるサービス提供が難しいのかということも冒頭申し上げました国際金融市場としての地位向上とか、あるいは国際競争力の維持という観点からも、検討の対象になり得るのではないかというふうに思います。

 もう1点ですが、これはちょっと別の観点になりますが、これもほかの委員の方も既に御指摘されていますが、多くの箇所で金融グループ内での情報共有と活用に関し、顧客である企業サイドから懸念が示されているということです。このような状況を踏まえますと、入り口規制を緩和する方向で考える場合には、これとセットで事務局から御説明のあった欧米の顧客情報、利益相反管理体制の導入とか、あるいは強化というのが非常に重要になってくるのではないかというふうに思っています。あと、ここのアンケート調査というのは、主に大企業中心ではありましたが、実際多くの顧客が、これも他の委員の方おっしゃっていましたように、中堅・中小企業とか非上場企業ということになると思います。そうすると、一段とこのような懸念の声というのも大きくなってくるというふうに考えますので、企業規模別での利益相反管理体制や、あるいは非上場、上場会社を分けての利益相反管理体制の強化とエンフォースメントの強化などの導入が可能であれば、一段と顧客利益の保護の観点で望ましいのではないかと思っております。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、福田委員、どうぞお願いいたします。

【福田委員】
 ありがとうございます。事務局からは詳細な御説明、及び多くの方から非常に有益なコメントをいただきまして、私も大変参考になりました。

 私個人としては、事務局資料の1ページにありますように、銀証ファイアーウォール規制の制度趣旨として、顧客情報の適切な保護、利益相反取引の防止、優越的地位の濫用の防止という3つの規制の趣旨、それから顧客に提供する金融サービスの充実、国際競争力の強化、この3つの視点が極めて重要で、そのバランスを考えてどういうふうに問題を整理するかという視点は非常に大事なのだろうとは思います。ただ、今回、改めてこういう規制を見直そうというのは、第3の視点がかなり重要視されている面はあって、確かにグローバルにいろんなビジネスを展開する中で、日本だけ規制が厳しいということではなかなか立ち行かないという性質もあるんだろうと思います。このため、原則として緩和の方向を考えるということには賛成したいというふうに考えております。

 加えて、そうした中で1番目の規制の趣旨ということを踏まえながら、ハードローといいますか、形式的な厳しい規制ではなくて、規制の趣旨を踏まえたある程度のソフトロー的な観点で規制へと移行していくということも大事なんだろうと思います。その際、なぜ日本だけこういうファイアーウォール規制が厳しかったのかという問題を規制の趣旨という観点から整理してみますと、顧客情報の適切な保護とか利益相反取引の防止というのは、恐らくほかの国においても同様に存在している問題だとは思います。けれども、やはり優越的地位の濫用の防止というのは、ある意味では伝統的には少なくとも日本の固有の要因だったのではないかとは思います。やはり日本の場合には、少なくともかつては銀行が金融ビジネスの中では非常に中心的な立場を担ってきたという時代が長かったので、そういった観点で、やはり日本ではほかの国にないような視点というのが存在していたという点はあるのだろうとは思います。ただ、時代が大きく変わって、優越的な地位というものも、かなり変わってきているという時代の流れというのはやっぱりあると思います。少なくとも大企業のレベルに関していえば、銀行がかなり優越的な地位にあるという時代は、恐らくなくなってきているんだろうなという気はいたします。そういう意味では、日本の特殊性というものもかなりなくなってきているという点というのはあるのだろうとは思います。ただ、多くの方が御指摘されましたけど、例えば中小企業のレベルにまで下りると必ずしもなくなっているのかという点というのはあるかもしれません。そういう意味では多くの方が御発言されましたように、大企業と中小企業に関しては、少し分けて考えるという視点が大事なんだろうと思います。また、規制緩和の理由というのは国際競争力の強化にあるという観点で、金融機関の都合で緩和するということよりは、2番目の視点として、顧客のメリットのために緩和するという観点というのは非常に大事で、そういう意味では単純に法令遵守というコンプライアンス上の問題だけじゃなくて、フィデューシャリーデューティーという観点から、いかに有益な規制緩和になるかという視点は大事ですし、そういった観点から、ぜひ前向きに緩和を検討していただければと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。以上で、本日御参加いただいている委員の皆様方からは一通り御発言をいただいたということになります。それではオブザーバーの方々で御発言の希望があれば、承りたいと思います。全銀協の林さん、どうぞお願いいたします。

【林オブザーバー】
 全国銀行協会の林です。本日のワーキング・グループから、国内顧客に関する情報共有の在り方等、議論の再開を頂戴しましたこと、大変ありがとうございます。

 今回の内容ですが、大企業に関する御議論が中心と承ってございます。一方で、かねてから申し上げていますとおり、ポストコロナの時代の事業承継や資産形成に関連した銀証一体となった金融サービスの高度化は、中小企業、個人の領域においてもニーズは大変大きいと理解をしております。よって、成長戦略に記載されたようなファイアーウォール規制の必要性、在り方を骨太に検討いただく中で、今後ぜひワーキング・グループにおいても取り上げて頂きたいということでございます。

 本日の金融庁の皆様からの御説明ですが、海外金融機関における顧客情報・利益相反管理に関する実務、それから国内事業法人に対するヒアリング等の結果の御紹介でした。このうち、前者の海外金融機関のプラクティスについて、私どもの現状、あるいは大手の証券会社の皆様と本邦金融機関のプラクティスも今後御提示があるものと思っております。本日の御説明を受けて、グローバルグループベースのシステムを用いて、コンプライアンス部門の利益相反あるいはコンフリクト解消のためのチェック等を行うといった点ですとか、いわゆるプライベート・パブリック間での情報遮断を行って、法令に基づく厳格なインサイダー情報管理と“ Need to Know”原則、こちらはプリンシプルと理解しておりますが、顧客情報の管理を行っている点等についても、海外金融機関と私どもの現状に大きな隔たりがないという印象を持っております。一方で、仮にそこに差分があったとしても、海外のベストプラクティスと国内でギャップがあるとした場合、そこを埋めていくことが必ずしも適切な議論であるかどうかということに関しては、我が国の金融市場の歴史的背景、構造等を踏まえたしっかりした議論が必要と思っており、ほかとの比較ではなく、我が国として何がベストなのかということを模索するアプローチが望まれると考えております。

 後者のヒアリングですが、国内の事業法人のお客様、事例を37社お示しいただきました。昨年10月のワーキング・グループでも申し上げておりますが、私どもも同数程度の事業法人の皆様とコミュニケーションさせていただく中で、ファイアーウォール規制の撤廃には賛成とされる方、反対とされる方が同程度いらっしゃったと思っております。今回の御説明では、反対であるという事業法人の皆様の声が中心でした。私どものヒアリングの中では、国際的に見て非常に特別な規制が存在していることが、我が国の国際競争力の障害になっているといった大局的な問題意識をお示しになるお客様もおられましたし、金融機関との取引は、外資系金融機関のように本来シングルポイント・オブ・コンタクトでよいといった御指摘をなさるお客様もおられました。あるいは、銀証で情報共有されたほうが利便性が高いといったことを指摘されるお客様もおられたということは、改めて御紹介させていただきたいと思っております。私どもの認識としては、お客様の声は全面賛成でも全面反対でもないと思っておりまして、御不安を感じられるお客様のそういった御懸念にしっかりと手当てをしながら、判断の軸は、我が国の資本市場の発展、成熟、経済社会課題解決のために金融業界が産業としていかに高度化できるかということについて、本質的かつ骨太な議論が必要と認識をしております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、日証協の荻野さん、どうぞお願いいたします。

【荻野オブザーバー】
 日本証券業協会の荻野でございます。本日は発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。また、事務局の方にはすばらしい大変な資料を作っていただきまして、御礼を申し上げたいと思います。

 資料に沿って幾つかコメントを述べさせていただきたいと思います。まず、資料の15ページに記載いただいたとおり、ファイアーウォール規制の本質は、顧客情報の適切な保護、それから利益相反管理、優越的地位の濫用の防止であり、これらの実効性をいかに向上させていくのかというのが重要だと認識しております。証券界におきましては、ファイアーウォール規制の見直しにつきまして、その立場によって考えは大きく異なります。ただし、顧客目線でよりよい制度となるように見直しをするのであれば、日本の実情に照らし合わせた対応が必要ではないかというふうに考えています。

 ご紹介いただきました米国における重要未公開情報の不正利用や利益相反の開示義務違反が発覚した際の制裁金等のエンフォースメントの制度については、今後制度設計を検討いただく上でもぜひ参考としていただければと思っております。皆様に御認識もいただいておりますとおり、欧米同様の情報管理制度をそのまま導入しても、日本に馴染むのかといった懸念は残ると思いますので、実効性を確保するためにも、バランスの取れた検討をお願いしたいと思います。

 それから、優越的地位を濫用した取引の防止を図るためのモニタリング強化といった観点におきましては、監督当局や公正取引委員会等の外部機関との連携を強化することで、より実効性を高められるのではないかと思っております。ただ、先ほど何人かの委員の方からもコメントがございましたが、優越的地位の濫用はあからさまに出てくるというものではなく、やはり日本の忖度の文化というものを反映して行われるといった面もあるかと思いますので、実効性については引き続きご検討をいただければと思っております。

 最後になりますが、本日、資料の11ページ、12ページにお示しいただきましたアンケート結果からも分かりますように、事業会社の多くは情報共有に関して個別に判断したい、情報共有を拒否する仕組みを維持してほしいといった意見となっております。今後、日本の成長戦略に資する健全な金融資本市場の発展を目指すためにも、顧客目線に沿った制度の検討をお願いしたいと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、国際銀行協会の平山さん、どうぞお願いします。

【平山オブザーバー】
 ありがとうございます。国際銀行協会、平山と申します。本日はこのような詳細な資料をおまとめいただきまして、また、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。4点申し上げさせていただきたいと思います。

 まず1点目、資料1の2ページについてです。このページではこれまでの委員の主なコメントが掲載されておりますが、網羅性という意味で違和感を感じております。例えば、第2回の会合における委員の御発言に、「“ Need to Know”原則という考え方が徹定されて、ビジネス目的の利用がなされない体制が確保されているということであれば、例えばマネーローンダリング対応とか、そういった部分でのフロント部分の情報共有ということも許容しているのではないか」という貴重な御意見がございました。この点、資料では触れられておりません。今後、これまでの議論における主要な論点の漏れがないよう、ぜひ御検討いただければと思います。

 2点目です。資料1の随所に出ております“ Need to Know”原則についてのコメントとなります。今後、国内顧客の情報管理、利益相反管理体制、優越的地位の濫用防止体制の高度化が議論されると思っておりますが、その際、ぜひプリンシプルベースでの観点で御検討いただければと思います。そのような検討を重ねることで、日本がほかの主要国とその姿勢において平仄が合うこととなると思います。また、そのプリンシプルベースの監督の実現のためには、例えば、監督指針で定めることが可能かとも思っております。個人顧客に関しましては特別な配慮が必要という認識ではございますが、法人顧客の情報の取扱いにつきましては、レベルプレイングフィールドの平仄を主要国と合わせていただきますよう、ぜひお願いしたいと思います。

 3点目です。ほかの委員の方からもコメントがございましたが、資料1の11ページの脚注についてです。金融庁が実施されたアンケートの対象者数は37社ということでございましたが、サンプル数としてはやや不足感があるとの印象を持っております。木を見て森を見ずという結果とならないように、今後の骨太の議論をお願い申し上げたいと思います。

 最後に1点ございまして、本日も有吉委員、福田委員からコメントがあったと思いますが、大企業、中小企業といったセグメント分けのお話でございます。今後、法人顧客に関しての情報の授受規制が撤廃される際、大企業、中小企業、法人、個人で分ける、そういった管理をした場合、外資系金融機関の立場では、手前どもではさらなる日本規制対応のシステムが必要になってくるという認識です。グローバルで一気通貫したシステムを構築することは、外資系金融機関のみならず、例えば、日系金融機関が海外で事業展開する際にも貢献するかと思います。また、外資系金融機関におきましては、一気通貫のシステムを持つことで、日本にリージョナルヘッドオフィスを設置することも可能になるかと思います。この点、現在政府が進められておられる国際金融都市構想の発展にも貢献するかと思います。

 繰り返しとなりますが、木を見て森を見ずとならないように、今後の骨太の議論をお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、事務局から何かございますでしょうか。

【太田原市場課長】
 皆様、本日も貴重な御意見を多数いただきまして、どうもありがとうございました。その中で、特に多かった御指摘について、本日申し上げられることを申し上げていきたいと思います。

 1点目は、特にオプトアウトの手続面について御指摘が多かったというふうに受け止めております。その中では、佐々木委員からもペーパーレスのお話もございました。全体をどうするかという議論とともに、併せて、そのような個々の手続面についても目配せしながら我々も議論をしていきたいと考えております。

 2点目ですが、私どもの資料で、国内事業法人についてヒアリングしたことについて、内容面あるいは対象者数、そういったことについて御指摘いただきました。状況について少し解説いたしますと、松本委員からもどういう聞き方をするかで回答が変わるというような御指摘がありまして、それは私どもも十分に注意しないといけないというふうに考えていたところでございます。したがって、通り一遍の質問をしますと、バイアスがかかってしまうところでありますので、メリット、あるいは規制を変えるとどういうことがあり得るのかということも、多面的に我々としては解説を加えながら、事業法人についてどれだけメリットが生じ得るのか、それは期待し得ないものなのか、あるいは、どんな弊害が生じ得るのか、そこをかなり突っ込んで議論させていただいたというふうに考えております。そのことと関連いたしますが、そういうふうにかなり一つ一つに時間をかけてやったということもあって、数には限りがあったということは御容赦いただきたいというふうに考えております。

 その上でとなりますけれども、最後、木を見て森を見ずにならないようにという御指摘もいただきまして、十分考慮しないといけないと考えております。私どももこれが日本の全部の縮図であるというつもりは全くなくて、1つの参考として考慮に入れていただき、ただ、こういう声があったということは事実でございますので、私どもも気をつけなければいけませんけれども、今後、皆様方におかれましても、そのことに十分留意しつつ、検討を進めていただけたらというふうに考えております。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、委員の皆様方で何か追加で御発言があれば承りたいと思いますけれども、ございますでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。それでは、予定している時間より多少早いかもしれませんけれども、本日はこのあたりとさせていただきたいと思います。

 難問というのでしょうか、ニュアンスまで含めると、委員の皆様方の御意見も少し分かれているようなところで、今後、できれば取りまとめに向けた御議論を進めていただければ大変ありがたく存じます。本日も多数の貴重な御指摘をいただきまして、どうもありがとうございました。本日いただきました御指摘、そして御説明等を踏まえ、今後さらに詰めた検討をしていただければと思います。

 次回ワーキング・グループの日程とテーマ等に関しましては、いつものように後日事務局から御案内をさせていただきます。それでは、以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
 
―― 了 ――
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金融庁 03-3506-6000(代表)

企画市場局市場課(内線:2352、3970)

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