金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第12回) 議事録

  • 1.日時:

    令和3年10月15日(金曜)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「市場制度ワーキング・グループ」(第12回)
令和3年10月15日
 
【神田座長】
 それでは皆さん、定刻にほぼなっておりますので、また皆様方もおそろいでございますので始めさせていただきます。ただいまから市場制度ワーキング・グループの第12回の会合を開催いたします。皆様方には本日も大変御多忙のところ御参加いただき、誠にありがとうございます。

 本日の会合でございますが、これまでどおりと申しますか、新型コロナウイルス感染症対策の観点からオンラインでの開催とさせていただきます。一般傍聴はなしとさせていただきます。また、メディア関係の皆様方には金融庁内の別室にて傍聴していただいております。議事録は通常どおり作成の上、金融庁のホームページで公開させていただく予定でございますので、よろしくお願いいたします。

 オンライン参加に皆様方は既に慣れておられるかとは思いますが、2点注意事項がございます。発言されない間はマイクをミュート設定、ビデオも通信状態の安定のためオフにしていただくようお願いいたします。次に、発言を希望される場合は、オンライン会議システムのチャット機能を利用していただいて、全員宛てにお名前、協会名などの組織名を御入力ください。それを確認して私から御指名をさせていただきますので、御自身のお名前を名乗って御発言いただければありがたく思います。

 それでは、本日ですが、議事に入ります前に、今般事務局に異動がございましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。

【島崎市場課長】  
 このたび市場課長に着任いたしました島崎でございます。今後どうぞよろしくお願いいたします。

 事務局である金融庁にてほかにも人事異動がございますので御紹介いたします。これまで企画市場局審議官でございました油布が、新たに証券取引等監視委員会事務局長に着任いたしました。そして新たに田原企画市場局審議官が着任いたしました。以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。

 本日ですけれども、この事務年度の初回になるかと思いますので、資本市場を巡るこれまでの取組と課題を踏まえ、今後検討すべき課題について皆様方に幅広く御議論をしていただきたいと思います。そこで、まず事務局の説明資料に関しまして事務局から御説明いただきます。そしてその後、皆様方に御意見を出していただければと思います。それではまず、事務局からの説明をお願いいたします。

【島崎市場課長】  
 それではお手元の資料に沿って御説明させていただきます。お手元、資料1とございます「事務局説明資料(資本市場を巡るこれまでの取組と課題)」でございます。

 ページを繰っていただきまして目次がございまして、ⅠからⅥまでございます。過去30年間の主な制度改正等ですとか、あるいは少し後でお話しいたしますが、インベストメントチェーンの各主体に応じて資料を御用意させていただきました。こうしたものを素材に本日は御議論いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 まず、過去30年間の主な制度改正等ということで3ページ目でございます。1990年代からの動き、主な制度改正等を挙げさせていただいております。

 大きく言いますと、様々なまとめ方があろうかとは思いますが、利用者のニーズに応じて多様な価値ある商品・サービスが提供されること、そうしたものを仲介者の方々がそうしたサービスの提供を可能とされていくことと、もちろんそこには適切な行動ということもあると思いますが、多様な主体が多様なサービスを提供すること、それから、国際的な各国の取引所等も意識しつつ、投資家保護ですとか公正性の下で日本国内でも様々な自由な取引、市場間競争をしていくこと。こういったことがこれまでの審議会等でも様々な形で表現されてきたと思いますけれども、制度改正等が行われてきております。

 90年初頭からで言いますと、昨事務年度、御議論いただいたファイアーウォール規制などとも関係する、銀行・証券会社等による業態別子会社形式での相互参入の解禁ですとか、それに対応する弊害防止措置の整備が92年に金融制度改革法で行われました。同年、監視委員会も設置され、公募・私募との関係で言いますと概念の見直し等も行われるなど、現在の礎になるようなものがつくられております。

 日本版ビッグバンということで人口に膾炙している金融システム改革法では、様々な価値ある商品それから様々なプレーヤーということで、銀行による投資信託窓販の解禁や、会社型投信・私募投信の導入ですとか、SPC制度の創設がなされました。それから表の右側に参りますが、証券会社の登録制への移行、専業義務の撤廃、株式売買委託手数料の完全自由化などが、保管義務の制定、保護基金の創設という利用者保護とのセットで行われています。市場インフラとしましては取引所集中義務の撤廃ですとか、PTSの認可制導入が行われています。これ以前にも当然様々な議論の積み重ねがあるところでございますが、今日まで連なる枠組みの礎となるようなものの重要な構成要素はこの時期に制度改正がなされたということかと思います。

 その後、ファイアーウォール規制の緩和ですとか、業務範囲に関することの見直し、取引所の株式会社化の解禁なども経まして、利用者保護等の点で言いますと、2001年では金融商品販売法の施行で、顧客への説明義務、それから金融商品に関する事案の立証責任の転換等も行われ、2004年ではプレーヤーの面でも銀行による証券仲介業務の解禁が、市場インフラですと課徴金制度の導入等が行われました。昨事務年度、御議論いただきました最良執行方針等についても、この時期に導入されています。

 2006年、証券取引法から金融証券取引法ということで、規制の横断化・柔軟化が行われました。集団投資スキーム(ファンド)の整備と同時に、こちらも昨年御議論いただきました特定投資家制度の新設や、プロ向けファンド制度の新設等も行われています。

 プロ向け市場の枠組みなども経まして、市場インフラが整備されつつ、2010年代、公正というキーワードと関係する利用者保護ですとか、そういったものと関係する事案なども発生したことなども背景に、インサイダー取引規制の見直しですとか、資産運用規定の見直し、ファンド販売業者に対する規制の見直し、プロ向けファンドを巡る制度の見直しも行われてきたところです。

 2017年には、顧客と仲介業者の方々との関係ということで、「顧客本位の業務運営に関する原則」の策定を行っております。それからデジタル化ということで言いますと、2019年には暗号資産を用いた新たな取引への対応ということを行っております。2020年には、金販法の改正となる金融サービス提供法も行っております。

 そして昨事務年度は様々な御議論を頂きました、海外の投資運用業者等の受入れに係る制度整備、国際金融センター関係ですとか、あとはファイアーウォール規制の見直しといったこと。それから左にもございますが、最良執行方針等の在り方の見直しですとか、あるいは特定投資家などについての見直し等についても行うこととしております。

 続きまして5ページ目でございます。資本市場の進化、活性化ということについて、家計等の資産から企業に資金を提供し、付加価値がつき、適切なリスクとリターンが負担される中で価値が増えていく、家計が資産形成され、企業の価値が向上するといった取組等を各主体、各フェーズについて行ってきております。こちらでは見取図のような形で資金の供給者、金融仲介、資金需要者ということでお示ししており、左側で言いますと家計、それからアセットオーナーたる年金基金、保険会社等。それから販売会社、アセットマネジャーたる運用機関。それから上場会社、非上場会社と連なる、最終的な企業価値の向上を通じて価値の実現が図られていくというようなプロセスの中で、それを支える取引所ですとか市場インフラがございます。

 次のページからは、動向についての資料を提供させていただいております。5ページの図の一番左側の、資金供給者からまずお話しさせていただきます。家計資産の動向については、1999年以降の約20年間の家計資産、こちらの7ページ目は不動産等も含めたもの、8ページ目は金融資産ということでございますが、この伸びは資産総額、1人当たり資産額ともに欧米や中国と比べて相対的に低くなっております。日本の家計金融資産に占める現預金の割合は約5割と、この20年間ほぼ変わっておりません。また、株式や投信の保有額・割合は1999年と比べて増加しているが、その伸びは限定的ということになっております。

 続きまして、そうしたことと関連する現預金の話ですとか投資ということと、資産形成と関係する、少し背景的なものについて幾つか資料を御用意させていただきまして、9ページ目でございます。投資未経験者が資産運用を行わない理由ということで、「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」によれば、リスク性金融商品を購入しない理由として「余裕資金がないから」「資産運用に関する知識がないから」「購入・保有することに不安を感じるから」という回答の割合が比較的高かったと。こちらは「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査結果」から引用させていただいています。

 これとも関係するのですが、10ページ目、資産運用に関する知識がないということとの関係で申し上げると、「リスク性金融商品販売に係る顧客意識調査」におけるリテラシーに関する質問について、未経験者は経験者に比べて正答数は少ない傾向にあると。11ページ目に参りまして、今度はニーズに合った金融商品の提案の有無ということで、金融機関と顧客との関係に少し焦点を当てますと、「金融機関から金融商品の提案自体を受けたことがない」という回答が全体の4割。「金融商品の提案を受けていてもニーズに合った提案をあまりしていないと感じた・全くしていないと感じた」との回答が全体の15%程度を占めています。家計に関する資料は以上でございます。

 続きまして、12ページ目は保険・投資信託、13ページ目は年金でございますが、主要機関投資家の資産構成について載せております。それぞれの性質ですとか状況とかもございますが、日本の保険の資産構成を見ますと、これまでの約20年間で債務証券や対外証券投資の割合が増加していると。また、投資信託については株式等と対外証券投資の割合が増加しているということかと思っております。

 13ページ目に参りますと、確定給付型企業年金の資産構成は、2020年3月末と25年前を比べると、外国債券ですとか外国株式の割合が増加しております。一般勘定の割合は減っていって、外国債券や外国株式の割合は増加しております。下のほうにGPIFの基本ポートフォリオについても載せさせていただいていますが、近年見直しが行われておりまして、2014年10月、20年4月に見直しが行われ、現在の資産構成は左下の形、見直しの状況は右下の形になっております。

 続きまして、資金の最終的な行き先、企業価値のところとも関係する要素でございます。上場会社の状況で言いますと、上場時価総額はアジアの中では中国(香港を除く)に次ぐ規模。2000年から2020年の伸び率で見ますと、米国、中国、香港の伸びが相対的に大きくなっております。右側は株価指標を載せておりますが、TOPIXの伸びは90年から21年にかけて低い状況となっております。他方、右側にございますが、日本は2010年代に入りまして、ここの21年までのところまでは各国と比肩する伸びとなっているのが最近の状況かと思っています。

 上場企業の投資動向を16ページ目で申し上げますと、OECDの調査によりますと、上場企業の株主構成における機関投資家の割合、全体ですとか国内は、米国や英国と比較して低いと推計されております。マザーズの新規株式公開において、こちらは個人投資家への配分割合が、100億円以下の案件の多くは7割から9割といったデータもあると承知しております。

 次に17ページ目でございます。国内スタートアップへの投資額は増加傾向にあるが、VCの投資額対GDP比で見ますと、米国や英国と比べて伸びが緩やかで、2020年における水準は相対的に低いと思われます。また、国内スタートアップへの投資額のうち、VC及び事業法人が占める割合は約7割と推計されております。

 続きまして、資本市場といいますとエクイティー、デット双方あると思いますけれども、社債の発行状況で言いますと、近年は発行額、残高ともに増加傾向ではございます。発行額で見ると左側、アメリカですとか中国が高い伸びを示しているところだと思いますが、発行残高等を含めましても米国のほうがより額も大きく、より高い伸びとなっております。

 19ページ目でございます。日本はA格以上が大宗を占める一方、米国市場では非投資適格が一、二割を占めるということで、こうした低格付債の日本における状況も指摘されるところであろうかと思います。

 続きまして21ページ目でございます。私どもも、販売会社、証券会社を含むものだと思いますけれども、こうしたものに顧客本位ですとか、あるいは資産運用について運用の高度化といったことと関連づけてこれまでも申し上げてきたりしているところですけれども、まず、販売会社でございます。日本の証券会社の参入・退出数は、金融システム改革による証券業への参入・退出規制の緩和により増加しております。2000年代の参入・退出が、その前後の時期と比べると多い状況になっていて、2010年代は比較的低位となっております。米国に目を転じますと、総じて退出が参入を上回っておりまして、集約が進んでいるかと存じます。

 続きまして22ページ目、運用業でございます。運用資産残高、運用会社数の国際比較ということで、投資運用業者ということで申し上げますと、個人金融資産の規模と比較して、相対的に伸び等も含め少なく、登録等を受けている運用会社数の増加率についても相対的に低いと思われます。

 23ページ目、また証券会社に戻りますけれども、日本においては、全体的な傾向で言いますと、売買委託手数料の低下等に伴いまして委託手数料の割合が下がっております。大体18%ということかと思います。他方で投資信託に関する収益、投資一任に関する収益、運用・販売双方あると思いますけれども、そうしたものの割合がこれは信託報酬で9%ですとか、投資一任の運用受託で3%、運用手数料は収益の7%と。単純に総じて合計したりしてみますと、委託手数料の部分と同等ないし上回るような数字なのかと見受けられますし、そう指摘されているかと思います。

 24ページ目で申しますと、それと併せて、また「顧客意識調査」によりますと、他の商品との比較説明を受けたことがないとの回答は過半数を占めています。

 25ページ目。「投資信託等の販売会社に関する定量データ分析結果」という金融庁の資料から取っていますけれども、業態によっても異なりますが、業態によっては投資信託の平均保有期間の短期化傾向も見られるところかと思います。

 26ページ目で言いますと、投資一任契約について、近年、左下の図にありますように、個人向けのファンドラップが非常に増加傾向にございます。こちらは「資産運用業高度化プログレスレポート」から取っていますが、コストなども踏まえ、提供の在り方について再検討すべきとの指摘がございます。

 運用の高度化について、27ページ目でございます。ファンド数が多く純資産総額の大きい運用会社において、インデックスファンドと比較してパフォーマンスが低い公募アクティブファンドが多く見られるとの指摘がございます。それから28ページ目も「プログレスレポート」での指摘を記載させていただいていますが、例えば小規模ファンドの存在ですとか、ファンド数の高止まり、最終的に顧客に不利益を生じさせているのではないかといった、ファンドの組成・管理の在り方や顧客の費用負担等の観点から問題点があるとの指摘や、プロダクトガバナンスの考え方の浸透、顧客利益の最優先等々という指摘がされております

 29ページ目、運用会社のビジネスインフラに関する課題ということで、運用の高度化という文脈で申しますと、そこの業務のコストですとか効率性も影響してくると存じますが、例えばグローバルカストディアンが提供するフロント~バックサービスについて、日本では独自のサービスが求められること等で、資本市場への本格的な参入が見られないとの指摘などもございます。それからシステムのアウトソース経費などが高いといったような指摘もございます。

 それから30ページ目が金融商品取引業者に対する行政処分等の事例で、業務停止命令ですとか、禁止ないし停止命令発出の申立てを行ったという問題事例も生じております。利用者、投資家保護の観点から、今後の検討等の素材として説明させていただきました。

 続きまして市場インフラでございます。32ページ目でございますが、日本の株式売買代金はアジアの中では中国に次ぐ規模となっております。2003年から2020年の伸び率で見ると中国の伸びが相対的に大きくなっております。33ページ目はデリバティブ取引高について、日本は欧米・中国と比べて小さくなっております。

 34ページ目でございますが、PTSのシェアということで言いますと、取引所のシェアは総じて8割超、PTSのシェアは近年増加し1割弱ということでございます。

 それからデジタルと関係する話でございますが、35ページ目でございます。暗号資産についての制度整備などもしてきておりますが、デジタル化の対応として、取引インフラはどういうふうに設計すべきなのかといった課題、例えば振替なども併せて利用する場合があろうと思いますし、どんな市場インフラの上でどんな商品が取引されるのが一番いいのかという論点もあるのかもしれません。

 36ページ目でございますが、2020年にシステム障害が発生いたしまして、その後、東京証券取引所におかれましては総点検等ですとか様々な取組、再発防止策検討協議会などの設置・議論等されまして、このレジリエンスといいますか、リカバリーに関するルール等も整備してきておられるところだと思います。こうしたケース、システム障害といった様々な万一の障害発生というようなことがあったときの取引の場の確保といいますか、日本市場全体のレジリエンスということもこの素材として提供させていただいています。

 以上、Ⅰ番からⅤ番まで、過去の制度改正ですとかあるいは現在の状況、そこからあり得る課題というようなものも含めながら御説明させていただきました。

 本日皆様に御意見賜りたいと考えている討議事項でございますが、これまでの取組も踏まえ、家計の安定的な資産形成を実現していくため、市場機能の発揮等に向けてどのような取組が必要か。家計の安定的な資産形成を実現していくために、家計、アセットオーナー、販売会社、アセットマネジャー、それぞれに関してどのような点について検討を行っていく必要があるか。イノベーションや産業構造の変革のための企業の資金ニーズに適切に対応し、持続的な経済成長を実現するために、どのような点について検討を行っていく必要があるか。デジタル化やサステナビリティーへの関心の高まりといった世界の潮流の中で、日本市場の機能やレジリエンスを向上させていくために、どのような点について検討を行っていく必要があるか、ということでございます。

 よろしくお願いいたします。

【神田座長】  
 どうも御説明いただきましてありがとうございました。

 それでは、本日は今の御説明を踏まえまして、今後このワーキング・グループで検討していくべき事項につきまして御指摘とか御意見等を幅広くお出しいただければ大変ありがたく存じます。今の御説明の最後のページ、資料1の最後の38ページに今日御意見を頂きたい事項が挙がっておりますけれども、それ以外の事項でももちろん結構です。皆様方から見て、このワーキングで今後検討していくべき事柄は何であろうかということで御意見をお出しいただければありがたく存じます。

 それでまず、委員の皆様から御質問、御意見を頂き、それが一通り終わりましたら、オブザーバーの方々から御質問、御意見があればお伺いするという順番で進めさせていただきます。いつものように、多くの委員の皆様方に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間といたしましては5分以内程度を目安にしていただければありがたく存じます。4分を過ぎますと、事務局から発言時間の残りが1分である旨のチャットが発言しておられる委員のみに送付されますので、御参考にしていただければ幸いです。さて、それではどなたからでも御質問、御意見をお出しいただけるとありがたいのですけれども、チャットの欄に全員宛てにチャットを入れていただけますか。いかがでしょうか。

 どうもありがとうございます。上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】  
 ありがとうございます。この機会に30年を振り返るというのは本当に意義があるというか、勉強になりました。何か通知表をもらったような感じもしないことはないのですけれども。

 事務局説明資料38ページの1つ目のポツに関連すると思いますけれども、家計というのか、個別の国民・市民が金融事業者を信頼できるというところが何といっても基礎だろうと思います。そういう意味では販売・勧誘規制のところをきちんと履行確保していくことが中心です。加えて、独立助言者の方を含めて助言であるとか、生涯の設計であるとか、そういうところについても配慮していくというふうになってきたのではないかと思います。振り返りまして、説明義務、適合性原則からフィデューシャリー・デューティーなり顧客本位原則なり、発展してきた枠組みは大分整備されてきたのではないかと思うのです。

 という意味からいうと、この金融庁でいえば、監督検査部門だけではなくて、企画部門でもこの履行状況を見ながらフォローアップすることが重要ではないかと思いました。

 一番最近では重要情報シートについて制度改革をしたと思いますけれども、まだ例は少ないですが、例えば個別の顧客について適合性にどうして合致するのかという問いがあった場合に、お客様にコンサルティングした結果、その顧客にふさわしいと判断した商品を提案しているという回答例がホームページに載ったりしているのです。けれども、少し無理な感じですよね。個々のお客さんがこういう人生設計あるいはポートフォリオなので、この商品をお勧めするというふうに具体的であるべきはずだと思います。その会社のホームページにも、実際の回答はお客様ごと、商品ごとに大きく異なることがありますと書いてあるのですが、大きく異なるというのがむしろ答えであると思いました。

 事務局説明資料38ページで言いますと、3つ目のポツですけれども、このデジタル化が一般市民のお金の出し入れとかあるいは株式についても進んでいくと思います。ただ、危惧があるのは、多くの情報あるいは全ての情報が国であるとかあるいは一部の企業に握られて悪用されるのではないかというおそれが世界的にあると思います。そういう中で、日本としては権威主義的なデジタル化ではなくて、個人の尊厳、権利を確保しつつ、このシステムの安定化あるいは信頼性を確保する手法を開発するのが与えられた役割ではないかと思います。

 2つ目のポツについては私はあまり知見はありませんけれども、イノベーションのためには公的資金の配分の問題が大きいと思うのですけれども、個々の主体が大きな視野を持った上で自由な発想をできると。そういう環境をつくることが基本だと思います。

 という意味では、行政の方々にも、今までもやってこられたわけですけれども、若い頃からも含めて外国に出てもらって、フェース・トゥー・フェースで各国の将来を担う人たちと個人的関係を二、三十年にわたって築いていただくと。後追い的なというと大変語弊がありますけれども、インターネットの情報だけを見てそれを幾つか追っていくということではなくて、その先をどうつくっていくのかという感覚を各国の当局者と共有できることが、日本にとって、このイノベーションにとっても長期的に大きな資産だと思います。以上にさせてください。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それではチャットを多くの方から頂いておりまして、ありがとうございます。次に佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】  
 ありがとうございます。明治学院大学の佐々木です。御説明ありがとうございました。非常に網羅的にいろいろな問題を捉えていただいて大変勉強になりました。私からは気になった点を幾つかと、1つ質問させていただきたいと思います。

 気になった点というのは、10ページなどに見られるように、金融リテラシーのことがこういった家計の安定的な資産形成の時に常に話題に上がります。確かにこのリテラシーが高いというのは重要なことではあるのですが、リテラシーが高い人ほど投資をしているというようなエビデンスがよく出てくるのですけれども、リテラシーが高いから投資をたくさんするようになったのか、それとも投資をする人がリテラシーを一生懸命高めて投資に臨んだのかという因果関係などがはっきりしている研究は、まだそんなには多くないのです。ですので、リテラシーさえ上げれば投資が増えるというのは、まあ皆さんも思っていることかもしれませんけれども、その効果はあるでしょうけれども、非常に大きいかというとまだ疑問であることが言えると思います。

 すごく簡単に考えてしまえば、今、どうして日本で現預金が半分のままなのかということなのですけれども、投資して下手に失敗してしまうよりも、そんなに利率が高くなくても預けておくのでいいという判断をしているということではあります。ですので、どうしてそうなるのかという意味で、例えばもっと目に見えて投資しやすい、預金よりももっとこんないい投資があるのだというような分かりやすい商品などが出てくることも大事なのかと思います。いろいろな工夫をされているのですけれども、一般の方から見たら読んだらすごく長い説明だったり、自分では説明を聞いても分からないというようなものが多くなってしまっているのではないかと思います。

 あともう一点気になるのが、日本の個人資産の、初めのほうのグラフにもあったのですけれども、生命保険の比率が高いのが一つ特徴になっていると思います。この生命保険の一部が個人投資家にとっては、場合によっては安定的な投資と考えているケースもあると思います。保険としての機能だけではなく、投資としてそこにお金をつぎ込んでいると。ですから、もしかしたら生命保険部分の一部は投資という考えで使われている可能性があります。

 また一方で、保険の比率が非常に高いということで、若い時から例えば生命保険を掛け過ぎてお金に余裕がないからほかの投資ができないという要因になっている可能性もありますし、例えば生命保険には税額控除があるということも関係があるかもしれないと思うのです。ですので、この日本の家計の安定的な資産形成を考えるに当たって、この生命保険の比率が高いことはいずれにしても考えていかなければならない問題だと思います。

 それからデジタル関係に関しましては、これは非常に大きい点ですけれども、現在いろいろなクラウドファンディングとか様々な方法で、決済だけではなく、信用面においてもフィンテックが進んできています。そういった中で、法的に捉え切れていない部分もどんどん出てくると思いますので、そういったことに注意が必要だというのは非常に強く感じております。

 あと最後に質問ですけれども、進め方として、今日は非常に大きい形で問題点を洗い出すということかと思いますけれども。前回までファイアーウォールについて議論してきて、いろいろな積み残しがあると思うのですけれども、それを今後どのような形でいつやるのかがもし決まっていらっしゃるようでしたら、ぜひ教えていただきたいと思います。以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。最後の点の御質問についてお願いします。

【島崎市場課長】  
 ありがとうございます。

 ファイアーウォール関係については、昨年議論いただいた事項に関する府令ですとか監督指針の改正に向けて準備をしているところで、まずそこのファイナライズといいますか、御議論いただいたことをしっかり形にすることをさせていただいておりまして、こちらがいつまでということは明確には申し上げられないのですけれども、今それに取り組ませていただいています。

 今回御議論いただいて、次回、検討事項を整理する中で、先に検討していくこと、中長期的に検討していくことはあろうかとは思いますけれども、報告書の中で今後議論となっているところは、その文脈の中でトピックの中に当然関係してくることでございますので、次回以降で各テーマを議論していく中で、例えば制度の御報告ですとか、あるいは関連するようなことを適宜させていただく形になってくると思います。

【佐々木委員】  
 分かりました。多分積み残したことをすごく気になっている方も多いと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。6月に取りまとめを頂いたところのインプリメンテーションが、まだ今、プロセスの途中ですので、まずはそれを速やかにというか、インプリメントしていただいて、それから今御指摘いただきました積み残しの議論をしていただければと思います。どうもありがとうございました。

【佐々木委員】  
 ありがとうございます。

【神田座長】  
 それでは次に福田委員、どうぞお願いいたします。

【福田委員】  
 ありがとうございます。

 今回のように長期的な振り返りという機会はこういう市場ワーキング・グループでこれまであまり、少なくとも私が参加した市場ワーキング・グループではあまりなされてこなかったので、こういう機会を設けていただいたのはいいことではないかと思います。

 また、いろいろ示された中で様々な制度改革、問題点が指摘されたごとに、一つ一つこれまで金融庁が取り組んでこられた努力はあったと思いますし、それはそれで非常に高く評価できるのではないかとは思います。

 ただその一方で、当初の大きな目的が達成できたかということになると、問題も非常に多いということだと思います。討議事項にもいろいろ指摘されております、1番目の家計の安定的な資産形成の実現ということですけれども、それがでは実現できたのかというと、まあほとんどできてないといいますか、少なくとも家計資産に占める現預金の比率は高いままである現実がいまだ、この様々な制度改革のあとでも残っているということだと思います。

 また、2番目のイノベーションや産業構造の変革のための企業の資金ニーズ等を十分高めて、日本がそういう形で新しい資金を活発に供給できるような仕組みになったかと言われれば、これもまだまだ道のりは遠いという現状ではないかと思います。

 また最後のデジタル化やサステナビリティーの問題も、少なくとも金融のデジタル化の進展やあるいはサステナブルファイナンスの問題も、新しい問題ですけれども、少なくとも先進国に比べて進んでいるのかといわれれば、むしろ後れているということを言わざるを得ない。そういう意味では様々な制度改革の努力にもかかわらず、なかなか結果が伴っていないという実情もあるのかもしれません。

 ただ、これは制度の問題というよりは、日本経済の構造の問題が非常に大きく影響していると考えられ、そういう意味ではどこまでが金融庁の範囲で解決できる問題なのかということは必ずしも明らかではないとは思います。

 例えば家計の安定的な資産形成、現預金が相変わらず多いという一つの根拠は、結果的に過去数十年間、現預金の運用パフォーマンスは必ずしも悪くなかったという結果論があります。株式、TOPIXのパフォーマンスと比べて現預金のパフォーマンスはデフレ、あるいはほとんどインフレが起こらない環境の下で必ずしも悪くなかったということです。これは日本経済の構造的な問題からきている問題だと思います。

 それからまた、日本の資産が高齢者に非常に偏っている経済構造もあると思います。こういうリスクのある資産は長期・積立て・分散が運用の基本ですけれども、高齢者に長期・積立てと言われてもなかなかということもあるのだろうと思います。そういう意味では、そういう構造的な問題をこの市場制度ワーキング・グループでどこまで取り組めるかという課題はありますけれども、できないわけではないかもしれません。例えば世代間の資産移転をもう少しスムーズにするであるとか、あるいはそもそもデフレにつながるような経済構造を直すような制度設計はどういうものなのかということまで踏み込んで考えるような市場制度ワーキング・グループも、一つのこの試みとしてはあり得ると思いますし、そういう意味では目先の制度変更を少し超えた形でこういう市場制度ワーキング・グループも運用していくこともあってもいいのではないかとは思います。以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして有吉委員、どうぞお願いいたします。

【有吉委員】  
 有吉でございます。非常にまとまった説明をどうもありがとうございました。私からは思うところを何点かコメントさせていただきたいと思いますが、私自身、実際の実務の現場に関わっている者ではございませんので、机上の議論にすぎないようなコメントになる部分もあるかと思います。その点は御容赦いただければと思います。

 まず、家計の資産形成、それから一部デジタル化との関連で何点かコメントさせていただきたいと思います。一般投資家による投資という場面を考えたときに、一口でリスクの高い金融商品といっても、FXとか暗号資産のように投機的なものであることが自明であるような商品と、仕組債や非上場株、あるいは新しいタイプの金融商品のように、複雑であったり、あるいは商品性としてはシンプルであってもリスク評価が非常に難しいといった金融商品と2つのタイプがあると思うのです。この2つのタイプについては規制の在り方を分けて考えることが必要ではないかと思っております。特に後者のような商品が広く一般投資家に販売される可能性があるような状況は、もちろん選択肢を広げるというプラスの面があることは否定できないわけでございますが、一方で、金融商品への投資をこれまで行っていないような一般の人に対して、金融商品一般が危ないものだという印象を与えて一層投資を控えるようなことにつながってしまう懸念があるのではないかという印象を持っております。先ほど佐々木先生から商品性をシンプルにすることが重要だという御指摘があったことの裏返しかとも思うのですが、そのような観点で一般投資家の投資を拡大する方向での制度設計を考えることもあり得るのではないかというのが1点目でございます。

 それから2点目として、金融教育によるリテラシーの向上が重要だということは、そうだろうと思うのですが、それと併せて、先ほどファンドラップの利用が拡大しているというような御説明もありましたけれども、投資助言、投資運用サービスであったり、あるいは金商業には該当しないような投資情報サービスのようなものの利用を促進して投資を行いやすくする環境を整備していくといったことも重要なのではないかと考えております。規制面、場合によっては税制面などで何らか手当てはできないのかという感想を持っております。

 それから3点目、証券会社などの販売業者が投資家に対して情報やアドバイスを提供する、あるいは商品の提案をするといったことについて、実質的に顧客本位であることは非常に重要なわけでございます。一方で、「顧客本位の業務運営に関する原則」が適用されるとか、フィデューシャリー・デューティーの責任を負うとか、こういったことを形式的にうるさく言ってしまうことが、かえって販売業者を萎縮させてしまって一般投資家の投資を行いにくくさせている可能性もあるのではないかと思います。規制の運用についてバランスを取った対応が必要なのではないかと思います。

 それから非常に各論的な話ですが、金商業者に対する規制の一つとして、金融庁の考え方ではクレジットカードによる有価証券の購入は原則禁止だという運用がされているという理解でおります。ただ、クレジットカードについては割賦販売法の規制が適用されるわけですが、それに加えて金融取引だけクレジットカード決済を制限する必要性は非常に乏しいのではないかと以前から思っておりまして、かえって顧客の利便性や金融サービスのイノベーションを大きく阻害している、そういう一要素になっている印象を持っています。そこで、このクレジットカードによる有価証券取引の決済に関する規制については制度の見直し、規制の撤廃か緩和を考えていただくべきではないかと考えております。

 それから資料の討議事項に2点目の企業の資金ニーズとの関係でございますけれども、前事務年度のワーキング・グループでも同じようなことを申し上げたと思いますが、優先順位としては年金等の機関投資家によるスタートアップ企業への資金供給をどうやって拡大していくか、ここを中心に検討を進めていくべきだと強く思っております。その上で、一般投資家から非上場企業への投資という文脈については、クラウドファンディングのうちの応援的な投資は別だとは思いますけれども、それ以外の投資活動は基本的には投資信託やファンドを介した形での、機関投資家に準じる体裁を取った上での非上場企業、スタートアップ企業への投資を促すという方向で制度整備を進めるべきと思っております。

 また、前事務年度の制度整備の延長線ということになるかと思いますが、株主コミュニティ制度などを通じての非上場株のセカンダリー取引について、特にオンラインでの処理を行おうとすると、PTSの規制の適用関係がよく分からない。こういう場面が生じることがあるようでして、なかなか実務的に進んでいないところもあるのではないかと感じております。そのため、立法なのか解釈・運用なのか分かりませんが、PTSの認可なしにオンラインの形で非上場株式の取引を突き合わせるようなことが一定の範囲でできるよう、取組を進めていただくべきではないかと思います。

 最後に全般的なことですけれども、プロだけを相手方にする取引や、あるいは一定の少額の範囲にとどまる取引、こういったものについては登録の要否なども含めてもっと規制を緩やかにする方向で抜本的に制度を見直すという発想を取り入れてもよいのではないかという印象を持っております。以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして原田委員、どうぞお願いいたします。

【原田委員】  
 原田でございます。幅広い内容を説明していただきましてありがとうございました。意見と、あと今後のワーキング・グループで議論していただけることへの要望といいますか、そういったことを少々述べさせていただきます。

 初めに、リテラシー関係になります。今日御説明いただきました資料の中にもリテラシー関連のアンケート調査に基づく図表などで、こういう傾向がありますといったことをお示しいただいております。今後関連する内容をご説明いただく機会がありましたら、最近は金融リテラシー関連のデータを用いて分析している学術論文も大分増えてきておりまして、回帰分析した結果などから示唆されることなども分かります。

 先ほどFXや暗号資産が投機的であるのは自明であると御指摘がありましたけれども、FXや暗号資産を持っている人たちが一律にポンジスキームに乗せられていてリテラシーの低い人であるということではないのだということも実証結果から明らかになっているものがあります。例えば私が最近見た論文ですと、平均的に見ると暗号資産を持っていない人よりも、暗号資産を持っている人のほうが金融知識は高いようだというものでした。暗号資産保有者はキャッシュレス決済もより行っているといった関連があるということなども明らかになっています。

 ただ、暗号資産を持っている人は全て一律にリテラシーが高いかというと、どうもばらつきがあるようだといったことも分かっています。今後機会があれば、紹介していただくとよりよいのかと思いました。それがまず1点目になります。

 2点目としましては、先ほど福田委員が日本の構造的な問題もありますねとおっしゃったところに関係します。日本のマクロ経済構造で、私たちは企業の資金ニーズは常にあるものだと思って議論していますけれども、資金需要者は必ず企業であると考えていますけれども、もちろんミクロで見ると個々の企業は資金を必要としているところは多々あるのですけれども、民間非金融法人企業、つまりは民間の事業会社は、マクロで見ると資金余剰主体になっています。内部留保が大分増えていますので。今、コロナ対応で様々な給付金ですとか協力金などもありまして、資金需要者の需要が果たしてどのくらいなのかといったようなことも、前提条件が変わってきているという視点で考える必要もあるかもしれません。

 あとは2点ほど、今後のワーキング・グループで議論といいますか、御説明いただければと思うことを申し上げます。

 まず一つは成長資金の供給というところで関連するかと思うのですけれども、今月から東証で研究会が始まっているSPACの在り方に関する研究会についてです。SPACは買収だとか投機的な投資というイメージが先に立ちますけれども、スタートアップの育成という視点からは制度設計として成長資金の供給に有効に活用することができるのではないかとも考えられるかと思います。ですので、この研究会の方向性が定まるような段階で、一度市場制度ワーキング・グループでも御説明いただけるとよいのではないかということでお願いをさせてください。

 そしてもう一つ、先ほど佐々木委員がおっしゃったところにも関係いたしますけれども、第二次報告、6月の報告書で今、制度設計をしていただいているファイアーウォール規制に関するところです。最近、書評を書いたのですが、その本の中にファイアーウォール規制に関連する分析がありました。どういうことかいいますと、3メガバンクと2大証券会社という2グループに分けて各種証券の引受けシェアを図で時系列に示しているものなのですけれども。社債も普通株も証券化商品もIPOも近年は3メガバンクのグループシェアのほうが随分拡大していて、逆転しているというものでした。普通株でもメガバンク系のほうがシェアが大きいというのは衝撃的だったのですけれども。規制の緩和でこれからもシェアは増えていくだろうと思われるのですけれども、前に議論した優越的地位の濫用の防止ですとか顧客情報の適切な保護ですとか、そういった点でしっかり制度がつくられていってということはもちろんですけれども、モニタリングの経過報告なども今後どこかでお願いしたいと考えました。このようなところになります。どうぞ御検討ください。お願いいたします。以上になります。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】  
 ありがとうございます。事務局説明資料38ページの討議事項について順番に御意見を申し上げたいと思います。

 家計の安定的な資産形成を実現していくために、家計のニーズに合った金融商品が開発・提供され、それが実際にそれを必要としている個々の家計に適切に販売されることが重要であると考えます。家計のニーズに合った金融商品の組成については、今年1月に「顧客本位の業務運営の原則」が改訂されて、プロダクトガバナンスの考え方の一部が導入されました。金融商品の組成者から販売・仲介業者に対して、当該金融商品が想定している顧客層などについて情報提供することが求められています。

 さらにスコープを広げて、金融商品の組成者と販売業者・仲介業者との間だけではなく、販売業者・仲介業者と利用者・投資者との間でニーズの酌み取りですとか、組成業者が組成した商品が本当に当該顧客のニーズに合っているのか、顧客グループのニーズに合っているのかといったことについての情報を販売業者・仲介業者が汲み取って、それを金融商品の組成業者にフィードバックするというような形で、利用者・投資者もしくは市場に関する情報が組成業者にうまく還流し、より家計のニーズに合った商品設計がなされるといった好循環が成立することを期待しています。

 また、先ほど上柳委員からも御発言がございましたけれども、販売の仲介および販売に際しては、顧客の最善の利益のために業務を遂行するという観点が非常に重要であると思います。特に適合性の原則と、その適合性の原則が機能する前提である顧客の状況ですとか顧客のニーズについての情報収集、Know Your Customerルールがとりわけ重要になると思いますけれども、ここら辺りはまだまだ改善の余地があると考えています。

 顧客の財産の状況ですとか投資目的等を踏まえた顧客にとって最適になるポートフォリオが実現することが望ましいと思います。まさに顧客本人にとって最善の利益となるようなこういった助言をしたり、販売をしたりすることを可能にするためには、顧客に関する全体的な情報収集が必要となり、もしその妨げになるようなルール等があれば見直す余地があるように思われます。

 次に、企業の資金ニーズに適切に対応するという観点について申し上げます。事務局から御説明いただきましたように、日本の資本市場においてはIPOにおける新規公開株式の引受先が個人に偏っていることですとか、低格付社債の発行が極端に少ないといった様々な日本的な特徴があると思います。

 スタートアップ企業への投資も含めて、機関投資家によるこういった分野における投資が活発化することが期待されるとともに、そのような投資が可能になるように、先ほど述べたような日本の特徴が何によって生じているのか、その原因の分析を進め、改めるべき制度上の問題点や慣行があるのでしたらそれについて見直しを検討する必要があると思います。より一般論としては、情報提供の在り方ですとか企業価値の評価の手法等についてさらなる進化が求められます。これらについても、依然として検討の余地が大きいように思われます。

 最後にデジタル化との関係について一言申し上げさせていただきます。投資の対象になり得るトークンやデジタル資産については、金商法の改正等によって電子記録移転権利や暗号資産デリバティブを金商法の規制の対象にするなど、既に一定の措置が講じられていると思います。

 しかし、少し問題が残っていると思っておりますのは、こういったトークンやデジタル資産が表示している権利の記録や移転、それから権利の行使方法などの設計や運用について、特にそれを管理ないしコントロールしているものが存在しているときに、そのような業務に対する規制に過不足がないかという観点から検討する必要があると思います。デジタル資産やトークンなどの権利の記録の仕方ですとか移転・権利行使の方法は、民事法上の規律の在り方と非常に密接に関連すると思います。場合によっては民事法のルールを明確化すべき場合もあるかと思います。民事法上のルールと業者ルールの間に齟齬が生じないように留意しながら、トークンやデジタル資産の記録、移転、行使といったものに関わる業規制のあり方について検討していく余地があるように思います。以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして松本委員、どうぞお願いいたします。

【松本委員】  
 ありがとうございます。私からは2点についてコメントさせていただきたいと思います。

 まず1点目は、先ほどもありましたけれども、金融リテラシーが日本は極めて低いところを、これから10年といったスパンでいかに改善していくかをかなり計画的にやっていく必要があるのではないかと思っております。個人の金融リテラシーが低いままですと、今回のような規制などを考えるときに、過度に投資家保護に注意しなければいけないというように議論が偏ってしまうおそれがあると思われますし、今後金融リテラシーの向上は個人が資産形成をする上で非常に重要な役割を果たすと私は考えております。

 その中、私が注目しているのは、今後ロビンフッドのようなアプリ等を使ってより手軽に投資が行えるようになっていく流れは世界的に避けられないのではないかと思っておりますので、誰でも気軽に取引ができる、投資ができる環境になると、金融リテラシーが低い人が投資で失敗しやすくなると思われます。それによって投資は悪だというようなイメージが世間でできてしまうと、せっかくの貯蓄から投資へという流れをつくろうとしているところに対して冷や水をかける形になってしまうことだけは避けたいと考えております。その中、今、高校等で金融教育が必須とか、そういう流れができてきているとは思うのですけれども、こういった流れをより広げていただけるとうれしいと思っております。

 このロビンフッド等に関しては、細かい点になってしまうのですけれども、手数料無料化というようなビジネスモデルで、注目されるのは、顧客データや、顧客の取引データをヘッジファンド等に販売することによって収益を得ているといった記事を散見したりするのですが、こういった点が本当にフロントランニングといった問題に関わらないのかということは、今後日本でもこういったアプリ等を使った無料化という流れになってくる中で考慮すべきことなのではないかと思います。

 つまり、これまでは手数料ビジネスに依存していたものが、どんどんそれ以外のビジネスモデルをつくらなければいけないとなると、データが価値を持って、データの売買が行われたときに、本当に個人投資家と機関投資家が持っている情報に非対称性がないような状態をきちんとつくれるのかというところは注視していくべきではないかと思っております。

 2つ目のイノベーションに関連しましては、先ほどもありましたけれども、IPOにおける初値とのギャップ問題については今、日本証券業協会等でも議論されていると存じ上げておりますけれども、証券会社は利害関係者なので、そこで出た結論が直ちに結論とはならないと思いますので、公正に調査をしていただきたいというのが1つ目になります。

 資金供給という観点で言いますと、先ほどもありましたけれども、年金等のお金がスタートアップに流入する流れをどうやってつくっていくかを考えますと、仲介というか、間に入るのがベンチャーキャピタルで、まずはベンチャーキャピタルにLPとして年金のお金が入る仕組みをどのようにして促していくのかが重要なポイントだと考えています。

 イノベーションという観点でさらに申し上げますと、スタートアップに対する大企業による大型M&Aを活性化していくことが、日本のイノベーションを加速させるのではないかと思っております。スタートアップにとってはエグジットの機会が増えることで、例えばIPOが難しいようなディープテックとか要素技術のスタートアップの資金調達がベンチャーキャピタルからしやすくなって、そういったことによって日本のイノベーションが、しかるべきところにお金が配分されることで高まっていくのではないかと思います。また、今、大企業側もイノベーション、DXを推進していかなければいけない中で、新しいそういった技術を自社に取り込むチャンスが増えることは、日本全体としてプラスの部分が多いのではないかと思っております。そういった意味でも、M&Aに対する税制優遇なども検討していただきたいと考えております。私からは以上となります。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして井口委員、どうぞお願いしたします。

【井口委員】  
 ありがとうございます。事務局の御説明ありがとうございました。

 本日は大きな視点で意見するということでお聞きしていますので、機関投資家の運用現場にいる者からの包括的な意見となってしまい、必ずしもこの審議会で全部取り扱うことではないかもしれませんが、意見させていただければと思っております。

 別途送っていただいた過去の審議会の資料の中にもありましたが、今後10年間の日本の資本市場を考えますと、環境問題、これは福田委員も少し触れていらっしゃいましたが、環境問題は特にクローズアップされておりますが、環境を含んだサステナビリティー事項の資本市場に与える影響を無視できないのではないかと思っております。

 ちょうど事務局説明資料の7ページから9ページに家計資産の推移の図を載せていただいておりまして、その中で日本の家計資産の拡大が劣後しているというような図があったと思っております。私の理解では、これは基本的には株式時価総額が米国や中国と比べて拡大していないことが大きな原因で、その大きな理由は、全般的に日本企業の成長力と利益の拡大が他国に比べ劣っているところにあったと思っております。

 その後に、各運用機関の日本株に対する資産比率で低位にとどまっているという資料もありましたが、最近のリスク管理強化からのリスク分散という観点ももちろんあるのですが、日本株の期待収益率の低さといった、さきほど申し上げた日本企業の収益性の低さにかなり起因するところがあると思っております。

 それで、今後、日本企業の収益性の維持・向上にとって重要となるのは、こういったサステナビリティー事項に関わる機会とリスクに対応できるか否かであると思っておりまして、今後10年これに対応できないということになってきますと、日本の株式市場の時価総額の上昇スピードはさらに劣後して、家計資産額も10年後も同じような状況で、ますます各国と格差が開いているようなことになっているのではないかとは思っております。

 もちろん企業の収益力向上というのは、一つの施策だけではなくて、金融庁でやられておりますようなガバナンスコードとかスチュワードシップコードといった施策の徹底とか、あるいは企業開示の充実ということも非常に重要だと思っておりますが、この審議会で扱っていらっしゃるような市場制度においても、その必要性を点検して、必要性に応じてこれに備える必要があるのでないかと思っております。

 また、国策として今、脱炭素化などサステナビリティー社会への移行を強く打ち出されておりますが、移行する企業や、あるいは投資家保護に留意しながらも新興企業を支えるサステナブルファイナンスの仕組みの整備も必要になってくるのではないかと思っております。

 この観点で言いますと、例えば一つとして10ページに金融リテラシーの分析がありますが、従来から、金融商品はリスク・リターンを軸として考えられていたということで、今後ともこの考え方は非常に重要だと思っております。ただ、ここに今後サステナビリティーという新しい軸も必要になってくるのではないかと思っております。私の理解では、海外含めてアセットオーナーなどのような機関投資家は、この意識は顕著になっていると思っています。一方、個人投資家の中でも御存じのようにかなり盛り上がってきておりますが、まだ十分でないと思っておりますし、また個人投資家に金融商品を提供するということになってくると、その金融商品の信頼性も重要になるのではないかと思っております。

 必ずしも当審議会で議論することばかりではないと思いますが、今後10年の資本市場という観点で発言させていただきました。どうもありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは次に野村委員、どうぞお願いいたします。

【野村委員】  
 野村でございます。本日は詳細な御説明を頂きましてどうもありがとうございます。挙げていただいた項目に沿いまして幾つか申し述べたいと思います。

 まず全体にわたる話でございますけれども、今事務年度のテーマということだけにとどまらず、何人もの方がおっしゃっておりますが、5年後、10年後を見据えたような議論をしていくのが重要ではないかと思います。本格的な制度改正はどうしても時間がかかりますので、ここで議論の口火を切ることも含めて大事なのではないかと思います。

 家計の安定的な資産形成、この支援は引き続き非常に重要だと考えております。これまでも様々な施策を講じてきたわけですけれども、正直なところ、金額もさることながら、家計・個人において資本市場を利用しているという利用者が純増してきたのかというと、厳しい状況なのではないかという認識でおります。

 また、日本の人口動態の特徴として団塊世代とそれから団塊ジュニア世代という人口の塊がいるということで、今後特に資産形成層という観点から注目すべきは団塊ジュニア世代かと思います。この方たちが支援するべき対象になると思うのですが、もう50代に入ろうとしているということで、少しずつ資産形成の重点的な年齢層から移っていってしまう状況であり、いろいろなことを急がなければいけないと思うことの一つの理由です。

 例えばNISAについてはもっと利用者が増えていく方策は何かないかと思いますし、制度という観点からは恒久化の話と、ここは両輪なのではないかとも思います。

 何人もの委員が御指摘ですけれども、私も金融リテラシーはとても大事だと思います。ただその中で、知識を装備するのももちろん大事ですが、経験に勝るものなしというところもあろうかと思いますので、それも併せてどのような仕掛け・仕組みがあり得るのかを考えるとよいのではないかと思います。

 その観点から、金融機関は家計・個人のサポート役と言えるかと思うのですが、「顧客本位の業務運営原則」に基づきますと、コンサルティング型、コンサルテーション型、あるいはアドバイス型という形でのサポートが今度どんどん重要になっていく、個人の側のニーズも高いということが認識されるわけですけれども、果たして今の金融商品取引法を中心とした制度が、この新しく高まっていくニーズに真に応えやすい体系になっているのかどうかは、そもそものところも含めて見直すよい機会なのかもしれないとも思います。何しろ時代の変化、デジタル化も含めてですが、どんどん進んでいきますので、言うなれば屋台骨であるところの法制がそこにマッチできているのかという問題意識かと思います。

 例えばNISAは先ほど申しましたが、それ以外にも法律は違うわけですが、iDeCoのような、個人から見ると資産形成の制度という点では同じといえば同じものが存在します。こういった複数の資産形成支援制度を総合するようなアドバイスのニーズがあるのではないかと思いまして、そういうものをきちんと提供するのにベストな体制になっているのかという意識でございます。

 資金調達・資金需要者、そちらは今日御提供いただいた資料にもありますとおり、IPOが少額に留まり、そうすると機関投資家は投資しづらい部分があるため、個人投資家のほうが中心的になるといった循環もある。そういう事情もあるのかと理解しているところです。

 それなので、これまで議論してきたとおり、IPOの前の段階での資金調達の選択肢を拡充する等々の施策をここで議論してきているわけですけれども、引き続き総合的な観点から見ていく必要があるだろうという認識です。

 最後に市場インフラに関連するところですが、資料で挙げていただいた幾つかの点を見ておりますと、複数の取引プラットフォームをいかにバランスよく設置するか、そしてそれらの間での適度な、適切な競争関係のようなものをいかに促進していくのか、そういう課題認識、表現になるのかと思っております。

 例えば米国の場合、市場インフラは活発な競争を経て発展してきたということが言われているわけですけれども、その過程でリテール投資家向けに手数料ゼロの取引サービスが出てくるといったことも起きているわけです。これが結果的に一般個人による市場の利用をさらに促進するような側面もあると思われます。もちろん利点・難点もろもろあるのは理解しているつもりですので、申したいのは総合的な観点からの議論がここでも重要なのではないかという点です。私からは以上でございます。どうもありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは次に森下委員、どうぞお願いいたします。

【森下委員】  
 ありがとうございます。本当に丁寧におまとめを頂きましてありがとうございました。3点ほど申し上げたいと思います。

 まず1点目ですけれども、これはもう何人もの方がお話しになられた教育の点でございます。本当にこれは極めて大事かと思っております。その教育といったときに、金融について詳しく知っていただくことを必ずしも意味する必要はないのかと思っております。金融に限らず、リスクですとかリターンということについての基本的な感覚をしっかりと教育することが十分にできていないところが、いろいろな形で響いてきているのではないかと思います。

 金融庁の努力で、例えば金融ですとか経済に関する教育が学習指導要領に入ってきているといったようなことがあるようですけれども、もっともっと拡充する必要があるのではないかと思います。実際、金融分野に限らず、こんなおいしい話というか、こんなに怪しい話を信じるのだろうかというようなケースが少なからず発生しています。リスクとリターンに対する基本的なセンス、感覚が十分若いうちから醸成されていないとそういった話を聞いた時に、ひょっとするとこういうことはあるのではないかと思ってしまいがちなのかと思います。だからもっと教育を拡充すべきではないかと思います。

 もう一方で、こういうリスクがありますよという話だけではなく、お金を働かせて、お金に資産を増やしてもらう、お金で稼ぐということについて、日本に嫌悪感があるということまでではないと思いますけれども、投資をして資産を膨らませることに関する感覚は、私の少ない経験で、ほかの国々の方、特に国際金融センターの国々の方の話を伺っているところからすると、まだ違う部分があるのではないかと思います。

 例えばずっと預金を置いておくと、利子があるかないか分からないようなレベルの預金を置いておくということだって、人生設計という観点からはリスクがあるわけです。そういう意味ではしっかりとリスクですとかリターンとかを選択できるような基礎となる知識を提供することが大切だと思います。細かいことは変わってきますし、どんどん新しい商品も出てきますので、一々記憶する必要などはないと思いますけれども、ここは専門家に相談したほうがいいかというようなレベルの感覚をなるべく多くの人に持っていただくことが、家計をより幸せにする意味でも大事かと思いますし、国内における投資を広げていく上でも大事かと思います。したがって、何を誰にどう伝えるべきかということは本当に真剣に議論してもいいテーマであるように思います。

 次に仲介業者ですけれども、法制度としてはある程度のものをつくってきたのかとは思うのですけれども、どうもお話をお伺いしていると、問題はプラクティスですとか、ディテールですとか、カルチャーといったような部分ではないかと思います。例えば今日頂いた資料の中で、比較して金融商品を勧めたことがないという方が非常に多いと、勧められたことがないという方が多いという結果があったと思うのですけれども、本当にお客さんのニーズに合ったものをお客さんの意見を聞きながら提供しようと思ったら、「こういうものとこういうものとありますけれども、どうですか」みたいな話を進めるのが普通だと思うのですけれども、それが全然なされていないというのはやや驚きでした。

 それは法制度というよりも、ディテールですとかカルチャーということだと思うので、こういった場でそういった問題に切り込むのはなかなか難しいかもしれませんけれども、単に制度的な、ルール的なことだけを追っていたとしてもなかなか抜本的な変化には繋がらないのかと思います。

 またあと、銀行・証券・保険といったような業態が日本では非常にかっちりしていると思いますけれども、そういったものに過度にこだわり過ぎている点はないかというようなこともあります。これは制度をつくるほうもそうですし、各業態もそうだと思うのですけれども、いろいろな議論をしていく際に、そういった既存の業態というようなものにこだわった議論が行われていないかということが気になっております。

 例えば金融サービス仲介業では業態をまたがった幅広いサービスの提供を期待したわけですが、自分の既存の業界の商品のこれがこのフレームワークでは売りにくいといったようなことが御意見としてあるようです。しかし、もう少し目を広げて、顧客の幅広いニーズに複数のラインからの商品を提供しながら、最も顧客のベストインタレストに合ったものを提供するといったようなマインドが醸成されてこないといけないのではないかと思っております。

 最後3点目ですけれども、デジタルということです。デジタルが進んでいく、そしてデジタルを通じて簡易にいろいろな金融商品にアクセスできるようになるのは全くそのとおりだと思うのです。同時に、デジタルの技術をうまく使うことで顧客とのユーザーインターフェースを工夫することができるということがあると思います。顧客によりよく情報を伝える、顧客の選択をよりよくしてもらえるようにする、簡易にアクセスしてもらえるようにする、そのほかいろいろな顧客とのユーザーインターフェースをより実質的なものにするためにデジタルの技術を使うことができないかということは、ぜひ衆知を結集して考えるべきものなのかと思っております。

 諸外国では行政当局も主導して、顧客とのユーザーインターフェースのつくり方、どうやったら実質的な同意を得ることができるか、どういった情報を常にどういう形で顧客に提供できるようなユーザーインターフェースをつくってもらわないといけないかとか、そういうようなところにこだわった、細かい点かもしれませんけれども、そういったような議論がなされていると思います。

 私たちも、そういった実際に顧客に影響するような部分をどう変えていくか、どうよりよいものにしていくかというような議論を、実際に業務に携わられている方のお知恵とか、そういった情報とか衆知などを結集して進めていかないと、なかなかいい方向になっていかないのかと思いますし、今いいチャンスですので、ぜひそのような議論をすることができればと感じております。以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは次に松尾委員、どうぞお願いいたします。

【松尾委員】  
 では討議事項のところに沿って申し上げます。

 まず1つ目の家計の安定的な資産形成との関係では、今日お示しいただいた資料によりますと、なお十分な説明を受けていないですとか、商品の比較をした説明を受けていないといったものが出ておったりですとか、投資信託の保有期間も思ったほど伸びていないということで、顧客本位の業務運営ということで各証券会社が特に努力されていると聞いているのですけれども、なお顧客のほうにはそれが十分に浸透していないということかと思います。そういう意味では、既に出ておりますけれども、顧客本位の業務運営、それに伴う勧誘ルールをより一層充実させていくことは必要かと思います。

 もう一つ、他方で、これは明るい話かと思うのですけれども、30代、40代の方がかなり株式の投資にお金を出しているというニュースを耳にします。その際、ロボアドバイザーを通じて投資を始めた人がたくさんいるというようなこともニュースで見たりしております。そうしますと、ロボアドバイザーを使う方は業者からの積極的な勧誘はむしろ避けてといいますか、それをあまり好ましく思っていない方がそういうものを利用されるのかと考えております。従来の金商法の勧誘ルールはどちらかというと販売会社・販売業者からの積極的な勧誘があることを前提として、その際の勧誘の適切性、説明の適切さを求めるルールであったかと思います。

 そうしますと、今後はそういう販売会社からの積極的な勧誘がないことを前提とした、具体的に言いますとオンラインで、アプリか何かで投資取引をする際のルール、投資助言ですとか説明に関する適合性の確保等のルールももう一度考えてみる必要があるのではないかと。現行規制が十分なのか、適切になっているのかということをチェックする必要があるのではないかと考えました。

 続きまして成長資金の供給のところです。これはスタートアップ企業への資金の供給ということで、既にこれも出ておりますけれども、ベンチャーキャピタルに機関投資家からの資金がより入りやすくするにはどうしたらいいのか。これは前期の議論でも問題になっておりましたけれども、それが十分でないのはどういったところに原因があるのかということをぜひ知りたいと考えております。

 それからもう一つ、プライベートエクイティー投資の拡充との関係では、ぜひ私募規制の見直しというのか、再検討を行っていただきたいと思います。特にインターネットを通じて募集した場合に、今の解釈では基本的にはそれは私募には当たらなくなってしまうという整理になると理解しておりますけれども、それでよいのかどうか。アメリカなどを見ますと随分私募の要件を緩和といいますか、実態に合わせて変えてきて、それのためにプライベートエクイティーへの資金供給が進んでいるところもあるかと思いますので、ぜひ私募規制の見直しをやっていただきたいと思います。

 最後、デジタル化との関係では、これはもう既に出ましたけれども、暗号資産等もありますけれども、セカンダリーマーケットを整備する上でこのデジタルの技術は非常に有用なのだろうと思いますので、そこにぜひそれを使っていただきたいということなのですが、その際には、これも既に出ておりますけれども、権利の帰属ですとか権利の移転に関する現行法のルールが新しいデジタル技術を前提とした取引に適合しているのか、その妨げになっているのではないか、あるいは逆に不十分になってしまっているところがあるのではないかということは懸念しておりますので、そういったところのチェックもしていただきたいと思います。以上です。よろしくお願いいたします。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして松岡委員、どうぞお願いいたします。

【松岡委員】  
 どうもありがとうございます。私からは企業の立場で少し発言をさせていただければと思います。

 コーポレートガバナンスコードも議論させていただきましたが、企業のガバナンスや透明性の加速が期待されているところでございます。企業の成長や魅力が増し、資本市場の参加者が様々な資本ないしは債務性のある商品において、その目的に合った形でよい経験をしてもらうことが必要かと思っておりますし、企業としてはその期待に応えることも重要だと思っております。そのためには、企業活動を支える安定的で多様かつ柔軟な調達及び運用の場が確保されていることも肝要だと思っております。

 グローバルに企業を展開しております弊社グループからいたしますと、本日のテーマとの関連では、米国を中心とした海外の企業や経営者、及びその市場関係者のプレーヤーの多様性、そして目利き経験者の層の厚さ、成長や価値向上を達成するための様々な選択肢の存在、非常にディープポケットであること、圧倒的なスピードや柔軟性など、そのダイナミズムを感じることも多い状況でございます。インダストリーと資本市場の関係者間も非常に近く、また往来も多いと感じております。

 これらのことは、コロナ禍からの早期脱却、またはその期待によって大きくターンアラウンドしている多くの海外企業の存在によっても示されていると思います。こういったところに今後の日本企業や市場の発展のポテンシャルがあるとも思えますし、ヒントがあるのかもしれません。

 また、先程のよい経験という点については、日本証券業協会の委員会でも発言させていただいておりますが、金融教育をいかに充実させていくか。これは学校教育のみならず、労働者を含む社会人の認知や理解の促進、特に、時間軸やリスクを含む、それぞれのライフプランや目的に合わせた適切かつ必要な視点の形成をいかに促すかということが重要だと思っております。

 最後に、昨今多くの日本企業におきまして、コロナをはじめ様々なグローバル事象や変化に対して柔軟かつスピーディーな動きを活発化させていると感じておりますけれども、そのことも踏まえて、多くの参加者が実地の経験値を積み上げ、広げていくのが重要だと思います。それらを促し、先ほどのポテンシャルを生かしていくにはどうしたらいいかという辺りを、これから皆様で御議論させていただければと思っております。以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは次に武田委員、どうぞお願いいたします。

【武田委員】  
 ありがとうございます。まず、大変包括的な御説明を頂きましてありがとうございました。討議事項の2点目につきまして、イノベーションや産業構造の変革を促す観点が私は大変重要だと考えますので、その点から意見を3点申し上げたいと思います。

 第一は、新陳代謝を促しつつ成長資金供給を高めるための取組の重要性でございます。世界ではポストコロナの新課題への対応が加速しており、世界では業界をまたいだ企業再編が起きております。例えば世界のM&A動向を当社で分析してみますと、業界をまたぐM&A案件はコロナ前では、統計上は18年1月から19年8月までのデータに基づきますが、全体の40%が業界をまたぐ案件だったのに対し、コロナ後の20年1月から21年8月までのデータを見ますと、その割合が55%へ上昇しております。先ほど松本委員からも大企業とベンチャー企業とのM&Aに関して言及がございましたけれども、私もそうした視点が重要と考えます。

 また、世界では起業も加速しており、コロナ禍を受けて特にDXやライフサイエンス、カーボンニュートラル等の分野で動きが出てきているわけですが、このままですと海外のスピードに日本が後れを取り、国際競争力の低下につながりかねない懸念がございます。

 日本においても、一部のベンチャー企業はコロナで生じた新たな課題に取り組み、新規ビジネスを立ち上げる動きは出てきているのですが、そうした動きを一段と支援し広げていくことはイノベーション、産業構造の変革に資するのではないかと思います。

 第二に、改訂コーポレートガバナンスコードで掲げられた内容は非常に重要と思っております。コーポレートガバナンスで掲げられた重要なポイントを社会へ実装させていくとともに、その実装のスピードを上げていくことも大切ではないかと思います。例えば、イノベーションの促進の源泉になるであろう多様性との関係で申し上げますと、取締役会の機能強化として、取締役会が備えるスキル、各取締役のスキルとの対応関係の公表や企業の中核人材における多様性の確保への記載がございます。また、サステナビリティーを巡る課題への取組としては、基本的な方針策定、自主的な仕組みの開示がございます。これらの実効性とスピードを上げていくために、金融機関あるいは金融市場サイドからの取組もしっかり進めていくことが重要と思いますので、その点も一つの論点と考えられると思います。

 第三に、本日も意見がありましたけれども、家計の貯蓄の問題です。現在コロナ禍で家計の過剰貯蓄、これはいろいろな試算があるわけですが、当社の試算では38兆円という数字になっております。これが今後どこに向かうのか、関心を持って見ておりまして、当社で7月に消費者へアンケート調査をいたしましたところ、3割が消費に回るという回答が得られています。今後の経済を考えますともう少し消費に回ることを期待したいわけでございますが、残りは現預金でとどまるのか、それとも安定的な資産形成に回るのかという点も、一つの注目点ではないかと考えます。

 今申し上げたような論点は必ずしも市場制度の問題にとどまる話ではなく、福田委員もおっしゃいました構造問題もございますし、横断的に議論することで解決することもあろうかと思います。最初から市場制度の観点だけで議論してしまいますと重要なミッシングピースを見逃してしまいかねないため、俯瞰的に議論し、当ワーキング・グループから議論を喚起していくことも大切ではないかと考えております。以上です。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。これで委員の皆様方全員から御発言を頂きました。大変貴重な御指摘、御発言を頂きましてありがとうございました。

 それではオブザーバーの方々から御意見なり御発言があれば承りたいと思いますけれども、チャットを頂いておりますので、その順番でお願いしたいと思います。まず、日本ベンチャーキャピタル協会の赤浦オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【赤浦オブザーバー】  
 日本ベンチャーキャピタル協会の赤浦でございます。発言の機会を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。私からは2つございます。1つ目が、年金資金のVCアセットクラスへのアロケーション拡大に向け、VC業界は積極的に取り組んでおりまして、そちらの件について御報告させていただきます。

 まず、必要とされることが公正価値評価。同じ評価基準で複数ファンドを比較できる状況をつくることが必要となっておりまして、我々はずっと6年、7年前から準備をしてきておりまして、2020年を第1回として既に3回パフォーマンスベンチマーク調査を実行しております。直近の例は今年の8月になりますが、42社120ファンドが参加する形で数値を出しております。結果としては、米欧を大きく上回るパフォーマンスとなっている結果が出ておりまして、こういった状況からコミュニケーションを積極的に行って、年金資金のVCアセットクラスへのアロケーションの拡大を促進してまいりたいと思っております。ちなみに米欧カナダ、単純平均でオルタナへの組入れ比率は10.4%でございます。日本は非常に少ない。比較にならないぐらい低い状況ではございます。こちらは頑張ってまいります。

 2つ目は、次世代を代表する会社を日本からつくっていきたいということですけれども、未上場株式の発行と流通の緩和が必要なのではないかと。要は次世代のGAFAを日本から生み出していこうとなりますと、より大きな資金調達を未上場段階から行っていく必要が出てまいります。その結果、上場までの期間も長期化してくることになるわけですけれども、そこで必要となってくるところとして、第一に特定投資家私募のレギュレーションが緩和できた後の展開として、二次流通市場の開設が第一種金商業免許でなく、新たなレギュレーション上でできるような制度の設計が必要と考えます。PTSだけではなくてATS、オルタナティブ・トレーディング・システム、アメリカでは1つでなく複数ございますけれども、こういった制度の検討が必要なのではないかと考えております。

 以上2点でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは日本証券業協会からのオブザーバーとしての飯山オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【飯山オブザーバー】  
 飯山でございますが、発言の機会を頂きましてありがとうございます。テーマが非常に広いので、38ページのお題に1対1にストレートに対応するお話はできないですし、全てお話しすることがふさわしいのか自信がないのですけれども、多くのことに関係している根底の課題として、皆さんが御指摘されています家計資産の動向について触れながら、幾つかお話をさせていただければと思います。

 家計資産の偏在が言われて久しいわけですけれども、2つあると思っていまして、現預金への偏在と金融資産を持っている人の偏在があります。2人以上世帯の約4分の1は金融資産をそもそも持っていないという金融広報中央委員会の調査もございます。金融資産を持っていないというのは金融リテラシー以前の原因もあると思いますし、必ずしも同じ理由ではないのかもしれないですが、そういった家計資産をもう少し流動化することで、逆にポジティブに見ればいろいろな可能性を秘めた話だと思っていまして、これも御指摘のあった成長資金、リスクマネーの供給といった話にもつながってきますし、機関投資家を増やす、育成するということにもつながります。

【島崎市場課長】  
 音声が聞きづらい状況になっていますので、画面をオフにしていただくのをトライしてみていただけますか。

【飯山オブザーバー】  
 家計資産の偏在が直ることで、国際金融ハブとしての競争力の向上ですとか、機関投資家の成長を促す、もしくは成長資金、リスクマネーの供給ということにつながっていくような可能性を秘めた話なのかと思っています。

 金融リテラシーの向上というのはもう間違いなく非常に大事ですけれども、長年多くの方が努力してきてなかなか結果に結びついていない実態がございます。要は行動にどう結びつけるか。ここが一つ大きな谷というか川があるというか、問題なのではないかと思っていまして、どうそこに結びつけるかの仕組みは、行動経済学的なナッジといいますか、そういったことをどう考えるかが非常に重要なのではないかと思っています。

 幾つかこんなことなのかと思っていることがあるので共有させていただければと思うのですけれども、まず一つは私的年金の仕組みです。例えばデフォルトでまず入ってもらって、金融リテラシーを基に出たい人は出てもらうと。こういうことがもしできれば、かなりそこを通して市場に入ってくる、流れてくる金融資産が増えるのかと。これはアメリカの401kもそうですし、イギリスの私的年金の制度も、そういった制度を導入したことでかなり根雪のように市場にお金が入ってきて、株価が下がりにくくなって、さらにまた循環してポジティブな影響が出ている。そういったこともあったかと思います。

 次のアイデアといいますか話は、これはこの場で議論する話ではないと思うのですが、日銀保有のETFも既に55兆円という規模に上がっています。これをどうエグジットするのかはいずれ大きな問題になると思いますので、家計資産の動向、偏在を直すために何かしら考えるきっかけになるのではないかと考えています。これだけ大きくなりますと、コーポレートガバナンスへの影響ですとか市場全体への影響も既に出てきていますので、避けて通れない問題なのかと思います。

 3つ目としてはデジタルに関連してですけれども、せっかく証券口座はマイナンバーとほとんど紐づいた状況になっています。デジタル技術が進んでくる中で、資金移動コストが大幅に下がる等、いろいろなことが起きてきますので、それをどういう形で家計の金融資産の動向を変えるのに役立たせるかということも一つのポイントなのではないかと思っています。CBDCについても日銀の実証実験が進んできていますし、欧州でも2年後には実証実験が終わるところまで来ていますので、デザインをつくっている今のこの段階からどう考えるかということが大事なのではないかと思っています。

 どれも制度設計に関わる話ですので、ストレートに市場制度ワーキング・グループでお話ししていただくポイントではないのかもしれないですが、大きな重要な話題ではないかと思いましたので共有させていただきました。以上です。ありがとうございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。一部音声が途切れたのですけれども、また議事録において御確認いただければありがたく思います。それでは全国銀行協会からのオブザーバーとして三井住友銀行の伊藤オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【伊藤オブザーバー】  
 ありがとうございます。全国銀行協会の伊藤でございます。発言の機会を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。

 本日様々な論点について御提示、御議論いただきましたが、厚みのある資本市場の存在は、家計の安定的な資産形成、企業の財務レジリエンスや金融システムのレジリエンスを高める上で大変重要と考えております。その中でも何人かの委員からも御指摘いただきましたとおり、私ども金融機関が制度や業態の壁を越えてお客様の立場に立ち、資金の仲介者として果たす役割は非常に大きいと考えております。

 したがいまして、このワーキング・グループで皆様から御意見を頂きながら、私ども自身がビジネスモデルを不断に改革することはもちろんですが、ファイアーウォール規制の見直し等、第二次報告における積み残し課題をはじめとする必要な制度環境の整備につきましても、あくまで我が国が目指す、あるべき金融システムの在り方を見据えて、引き続き骨太な議論をお願いできればと考えております。私からは以上です。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは何か追加での発言等、委員の皆様方からありましたらお伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。特によろしゅうございますか。そろそろ時間でもございますので、それでは本日はこの辺りとさせていただければと思います。

 本日も大変貴重な御意見を、非常に広い視野から多数お出しいただきまして、どうもありがとうございました。本日頂きました御説明や御意見等を踏まえ、事務局において、今後検討すべき課題について整理をしていただいて、今後審議を進めさせていただきたいと思います。なお、追加でお気づきの点等ございましたら、事務局までぜひメールや電話などでお知らせいただけましたらありがたく存じます。

 それでは、最後に事務局から御連絡等ございましたらお願いいたします。

【島崎市場課長】  
 本日はどうもありがとうございました。次回のワーキング・グループの日程及びテーマなどに関しましては、事務局より別途御案内させていただければと思います。本日はどうもありがとうございました。事務局からは以上でございます。

【神田座長】  
 どうもありがとうございました。それでは以上をもちまして本日の会議を終了とさせていただきます。本日も長時間にわたり熱心に御参加いただきまして、誠にありがとうございました。以上で終了といたします。どうもありがとうございました。 
 
―― 了 ――
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企画市場局市場課(内線:2352、3970)

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