金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第4回)議事録

平成28年8月2日

【神田座長】

それでは、定刻でございますので、始めさせていただきます。市場ワーキング・グループの第4回目の会合を開催させていただきます。皆様方には大変お忙しいところ、また、暑い中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

本日ですけれども、「国民の安定的な資産形成とフィデューシャリー・デューティー」というテーマについての2回目のご議論をお願いいたします。

まず始めに、前回ご欠席で、今回の会合からご参加いただきます委員等の方々を事務局から紹介していただきます。よろしくお願いいたします。

【齋藤市場課長】

総務企画局市場課長の齋藤でございます。私のほうからご紹介を申し上げます。

委員の皆様の右手から3番目にお座りいただく予定でございますが、上柳敏郎先生でいらっしゃいます。間もなくお見えになるかと思われます。

それから、一番左手にお座りいただいております宮本勝弘様でいらっしゃいます。

【宮本委員】

宮本でございます。よろしくお願いします。

【齋藤市場課長】

また、人事異動に伴いましてオブザーバーにも変更がございました。消費者庁の消費者政策課長の河内課長でいらっしゃいます。

【河内オブザーバー】

河内でございます。よろしくお願いします。

【齋藤市場課長】

私からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、議事に移らせていただきます。

まず、事務局から御説明をしていただいて、その後、いつものように質疑応答、意見交換という順で進めさせていただきたいと思います。

それでは、事務局からの説明をお願いいたします。

【齋藤市場課長】

はい。まず、私のほうから資料1と資料3につきまして簡単にご紹介をさせていただきます。ちょっと順番が逆で恐縮でございますが、資料3から説明をさせていただきます。

タイトルに「第3回市場ワーキング・グループに係る追加資料」と書かれてございますが、こちらは、前回の市場ワーキング・グループの会合におきまして委員の先生方からご指摘、ご示唆をいただいた問題意識に関して追加的にご用意させていただいた資料でございます。本日は時間の関係もございまして、内容についての説明は省略をさせていただきますが、どのような問題意識に関してどのような資料を用意させていただいたかということについて、2ページ目の目次に沿ってご説明をさせていただこうと思います。

まず、池尾委員から、平成20年に金融庁が策定・公表した「金融サービス業におけるプリンシプル」についてご指摘をいただいたことを踏まえて、このプリンシプルの全文をご用意させていただきました。

それから次に、これに関連して神田座長から、平成10年に取りまとめられた「新しい金融の流れに関する懇談会『論点整理』」についてのご指摘をいただいたことを踏まえて、この論点整理の概要について付けさせていただきました。本体は非常に大部なものなので、恐縮でございますが、概要のほうで代用させていただいております。

それから次に、鹿毛委員ほか何人かの委員の皆様方から、フィデューシャリー・デューティーの概念あるいはその歴史などに関するご指摘をいただいたことを踏まえまして、日本と英国の信託発生の経緯であるとか、あるいは過去の金融審におけるフィデューシャリー・デューティーの概念整理についての資料を付けさせていただきました。

それから次に、福田委員から、貯蓄や資産形成といった場合に、金融資産のみならず実物資産を含めた全体像を見るべきとのご指摘をいただいたことを踏まえまして、我が国における家計の実物資産・金融資産の残高の推移、それからその国際比較についての資料をご用意いたしました。19ページ以降でございます。

最後に、加藤委員から、保有する金融資産の年代別の比較であるとか、その国際比較も見るべきではないかとのご指摘をいただいたことを踏まえまして、我が国の金融資産に係る世代別の分析あるいは国際比較についての資料をご用意させていただきました。

先ほど申し上げましたが、時間の関係から内容についてのご説明は省略をさせていただきますが、今日あるいは今後の議論の参考にしていただければと思います。

以上が資料3に関するご説明でございます。

続きまして、資料1というA3横長の「インベストメント・チェーンにおける顧客本位の業務運営の観点からの指摘の例」と書かれた資料に関してご説明をさせていただきます。

この資料につきましては、金融事業者の業務あるいは提供する商品やサービスのうち、顧客本位とは言えないと指摘されているものを列挙させていただいたものでございます。

資料の見方でございますが、一番上に家計というのがございまして、一番下に資産運用先とございます。ここを、家計が資産を運用するに当たってどういうインベストメント・チェーンかというものを非常に大ざっぱに、左側が一般的な金融商品における流れ、右側が年金に関する流れというような形で示しており、上から下に資金が流れていく形になっております。

それぞれ最初に助言とか販売をする場面で指摘されている事項として、左上の箱に、リテール販売・助言等に関して指摘されていることを列挙してございます。その下に、この指摘の背景となるようなものに関する指摘について並べております。その下に、そもそも金融商品についてどういう商品開発がなされているかということに関する指摘を挙げております。

それから、右側のほうでございますけれども、これは年金に関して、家計からまずアセットオーナーに行くということで、アセットオーナーに関する指摘の例、それからその下、実際に資産管理・運用されている部分に関して、そこで指摘されている内容について列挙をさせていただいております。また、資産運用先というのはある種、企業でございますけど、企業が資金調達をするという観点からは、金融事業者が資金調達に関していろんな提案をされるかと思いますけれども、そういう場面においても顧客本位ではないというような指摘がなされるようなものもございます。斜めに資金調達と書いてございますけど、その先の法人営業に関する指摘ということで、そのような指摘もあるということでここのように並べさせていただいております。

前回の会議におきましては、金融事業者も顧客本位の業務運営に向けた取組みを進めているというご発言もございまして、また、業務の良し悪しといったものは、サービス提供の前後におけるコンテクストなども十分勘案して評価されるべきものと考えますが、金融事業者の業務を全体として見た場合、依然としてさまざまな懸念や問題点が指摘されているというのがこの表にあらわれているかと思います。

このような懸念・問題点を放置しておくと、国民の安定的な資産形成や経済の持続的成長に資するより良い資金の流れを実現していく上で大きな障壁となるおそれがあるのではないかと考えているところでございます。このような大きな問題意識のもとで、この資料に関しては、必ずしも検査、監督で検証を終えていないヒアリングあるいは記事といったようなところで紹介された事例などを単純に列挙したものでございます。今後、必要に応じ、さらなる検証が求められるものだと考えております。

以上が資料1に関するご説明でございます。

その上で、本日は、検査局の水野のほうから、これまでモニタリング等を通じて検査・監督部局において把握した事例についてご紹介をさせていただければと思います。

では、よろしくお願いいたします。

【水野検査局モニタリング長】

検査局総務課市場業務等モニタリング長の水野です。よろしくお願いします。

私のほうからは、検査局及び監督局におきまして、これまでのモニタリング等を通じて把握した事例を幾つかご紹介させていただきます。

最初に、資料2の大まかな構成について申し上げます。

1ページをおめくりください。目次のほうでございますけれども、本資料では、まず、我が国における投資信託等の特徴をご説明した上で、投資信託等の販売の状況並びに投資信託の運用の状況を説明した後、最後に売れ行きの良い個別商品についての補足説明を記載しております。

それでは、これより具体的な説明に入ります。

2ページ目をご覧ください。まず、売れ筋投資信託の状況でございますが、日本の投資信託の売れ筋を純資産額ベースで見ますと、投資対象を特定の種類の資産に限定した商品が上位に上っております。販売手数料や信託報酬も高水準なものとなっております。他方、米国におきましては、ロングセラーの低コストの商品で、総じて収益の安定性が高いものが上位に並んでおります。

3ページをご覧ください。また売れ筋ではございますけれども、日本の投資信託の売れ筋を今度は月次の純増ベースで見ますと、短期間で多くが入れ替わっております。一方、大半が毎月分配型投資信託でございます。ちなみに、この表の同じ色がついているものは同一商品をあらわします。白色は一度だけ売れ筋に挙がった商品でございます。

4ページをご覧ください。次に、投資信託の資産規模について申し上げます。日本の公募投資信託のファンド数は増加を続け、足元、約6,000本弱となっております。1本当たりの残高は、2009年以降、ほぼ横ばいの160億円前後で推移しております。他方、米国における投資信託のファンド数は、2000年代に入り、8,000本前後で推移しております。この間、2000年末から2015年末でございますが、純資産残高は7兆ドルから16兆ドルに増加しており、1本当たりの残高は約1,000億円から約2,300億円と2.3倍に拡大しております。

5ページをご覧ください。同じく資産規模でございますが、運用期間1年超のファンドにつきまして、純資産額別の分布状況を分析してみました。左下のグラフのとおり、本数ベースでは2,000億円以下の投資信託が全体の99%を占めております。ちなみに、2,000億円と申しますのは、先ほどの米国における投資信託の1本当たりの平均残高に相当いたします。

6ページをご覧ください。投資信託の運用期間などについてでございます。2015年の投資信託の年間資金流入額を見ますと、運用期間が3年以内の投資信託に4割の資金が流入しており、例えば10年超といったロングセラー商品への資金流入は比較的限定的と言えるかと思います。

7ページをご覧ください。同じく投資信託の運用期間についてでございますが、2012年に新規設定された投資信託403本について、その後の残高推移を見ますと、左下のグラフのとおり、ピーク時の残高は7割が100億円未満となっております。また、右下のグラフのとおり、ピーク時の残高が100億円以上の投資信託136本でございますが、その8割は、2016年3月末までの4年ほどの間にピーク時の残高から半減しております。

8ページをご覧ください。投資信託の分配頻度でございますが、投資信託の分配頻度を見ますと、左下のグラフのとおり、2015年度に毎月分配型投資信託の新規設定は、金額ベースで10%以下に減少しております。ただし、右下のグラフのとおり、残高ベースでは60%台を維持している状況でございます。

9ページをご覧ください。次に、投資信託の保有銘柄数でございます。足元、投資信託保有者の約半数は、投資信託を1銘柄のみ保有しております。ちなみに、左下のグラフは2012年、右下のグラフは2015年の調査結果でございますが、ほとんど変わりはございません。

10ページをご覧ください。貯蓄性保険商品の状況でございます。銀行におきまして、投資信託の販売が停滞する中、保険商品の販売が堅調に推移しており、左下グラフのとおり、販売手数料収益全体に占める保険商品の手数料収益比率が上昇しております。また、売れ筋は、運用商品と保険商品を複雑に組み合わせた外貨建ての一時払い保険ですが、右下グラフのとおり、ほかの金融商品と比べ、手数料が高めに設定されております。

これより投資信託等の販売の状況について申し上げます。11ページをご覧ください。まず、投資信託の販売チャネルについてです。左下のグラフのとおり、日本の個人投資家は、投資信託の販売チャネルとして主に銀行や証券会社、特にその店頭窓口を利用しております。一方、米国では、販売チャネルの多様化が進んでおり、右下のグラフのとおり、個人投資家は、一般的な銀行や証券会社のほか、ディスカウントブローカーや独立系の資産運用アドバイザー、確定拠出年金等を利用しております。

12ページをご覧ください。ここから販売奨励策について2ページに亘ってご説明いたします。まず、投資信託等の販売でございますが、日本では、販売残高を増やすべく、左下の表のとおり、純資産総額が増加するに従い、投資家が支払う信託報酬を不変としながら、販売会社の報酬配分率が上昇するものが見られます。一方、米国におきましては、右下の表のとおり、純資産総額が増加するに従い、投資家が支払う信託報酬率が下がるものが見受けられます。

13ページをご覧ください。今度は、保険に係る販売奨励策でございます。多くの商品提供元――保険会社になりますが、多くの金融機関代理店に対し、販売奨励策として、販売手数料の上乗せキャンペーンや募集人、すなわち販売員向けのインセンティブ供与を実施しております。例えば、販売手数料の上乗せキャンペーンにつきましては、通常よりも0.5から1.5%程度上乗せした手数料を提示しております。また、販売員向けのインセンティブにつきましては、賞品贈呈等を実施しております。粗品贈呈にとどまるケースが多いものの、中には食事会・研修旅行へ招待する事例も見られるところでございます。

14ページをご覧ください。販売会社の業績評価についてです。販売会社の業績評価におきましては、足元の収益に結びつく「収益・販売額」よりも、中・長期目線での「預かり資産残高」や「顧客基盤の拡大」を重視する動きが増えつつあります。しかしながら、個別に営業店等の販売状況を見てみますと、例えば、残高目標を重視するあまり、投資信託やファンドラップの解約申し出に簡単に応じない事例や、系列運用会社の投資信託の販売に対し、業績評価上の優遇策を設定し、グループ内の収益確保を優先している事例、あるいは、保険販売の業績評価を収益額から販売額に変えたところ、手数料率の低い円建て商品の販売に集中したことにより、再度、収益額による評価に変更し、結果として外貨建て商品の販売が上昇している事例などが見られます。

15ページをご覧ください。同じく業績評価でございますが、複数の販売会社におきまして、四半期決算月に一時払い保険の販売額が増加しているところが見受けられます。

これより先、投資信託の運用の状況についてご説明いたします。特に系列関係についてご説明いたします。16ページをご覧ください。日本における投資運用業者のうち、左下のグラフのとおり、社数ベースで約4割が金融機関・事業法人の系列にあり、右下グラフのとおり、公募投資信託の純資産残高ベースで9割弱を占めております。一方、独立系の投資運用業者は、純資産残高ベースで1%の比率ということになっております。

17ページをご覧ください。これは、陳列している商品についてのご説明です。取扱商品数は販売会社の中でばらつきがございます。こうした中、大手の銀行・証券会社の特徴として、系列投資運用業者の商品取扱比率が50%を超えております。また、競合するグループ系列の投資運用業者の商品は基本的に取り扱っておりません。一方、一部のネット系証券では、2,000本超を取り扱っているところもございます。

18ページをご覧ください。これは、実際に販売された商品についてでございます。系列の販売会社を持つ4割の投資運用業者では、系列の販売会社経由の投資信託販売比率が5割を超えており、7割を超えているところもございました。

19ページをご覧ください。系列の販売会社を持つ日系の投資運用業者におきましては、社長・取締役・監査役の7割が系列の販売会社出身となっております。一方、独立社外取締役を選任している投資運用業者は12社中6社となっております。なお、第三者委員会の設置などを行っている社も出始めているところではございます。

これより先、個別商品についての補足説明に参ります。20ページをご覧ください。まずは貯蓄性保険からです。貯蓄性保険商品の中でも、運用を定額部分と変額部分に分けた外貨建て一時払い年金保険が売れ筋の上位を占めております。

その仕組みについて、21ページをご覧ください。下の図の緑色の定額部分を外国政府が発行する債券等で運用し、オレンジ色の変額部分を元本保証のない投資信託等で運用。それに、保険機能として外貨建ての死亡保障を追加しております。さらに、図の上の薄橙色の吹き出しですが、解約返還金額の円換算額が、契約時に指定した円換算の目標値に到達した場合、自動的にポジションをクローズし、定額の円建て年金保険に移行するか、コストなしで解約ができるという機能をつけております。また、右側の薄水色の吹き出しですが、中途解約した場合、一時払い保険料に経過年数の解約控除率を乗じた金額を解約費用として控除することとなっております。例えば、1年未満に解約すると、基本保険金額の10%ほど控除するといった類いでございます。なお、定額部分の運用で運用期間満了時に、当初払い込んだ一時払い保険料を最低保証し、さらに変額部分の運用成果をプラス。また、顧客が運用期間中に死亡した場合の死亡給付金も、当初払い込んだ保険料相当額を外貨建てで最低保証するといったものでございます。これは一例ではございます。

前のページにお戻りください。20ページでございます。3つ目の段落ですが、当該商品の金融機関代理店の販売手数料は、多くの場合、保険会社より契約時に一括して支払われ、その手数料は高水準なものとなっております。保険会社は、主に顧客の運用資産から販売手数料の原資を差し引いており、顧客から直接徴収しておりません。このため、顧客は、どの程度の販売手数料を保険会社が金融機関代理店に支払っているか見えない状況となっております。

次に、毎月分配型投資信託についてです。22ページをご覧ください。左下のグラフのとおり、運用収益を超えて分配を行っている、例えば元本を取り崩して分配を行っている毎月分配型投資信託が増加傾向にございます。一方、右下のグラフのとおり、分配率は、2012年以降、上昇した後、横ばいで推移しております。

23ページをご覧ください。下段の上のグラフのとおり、毎月分配型投資信託の保有率を年齢別で見ますと、60代、70代以上の高齢者の保有率が高い状況でございます。こうした中、左下のグラフのとおり、分配金の使途につきましては、「特に使わない」という回答が28%を占めております。また、右下のグラフのとおり、毎月分配型投資信託の特性である「分配金として元本の一部が払い戻されることもある」と理解している顧客は37%となっております。

24ページをご覧ください。左下のグラフのとおり、一部の販売会社におきましては、積立投資信託の販売上位に毎月分配型投資信託が並ぶ先が見られます。色つきが毎月分配型投資信託でございます。なお、真ん中のB証券のように、販売上位に毎月分配型投資信託が全く上がってこない販売会社も中にはございます。右下のグラフのとおり、各社の毎月分配型投資信託の販売におきましては、分配金の再投資を選択する顧客比率にばらつきが見られます。ちなみに、分配金を再投資する場合は、毎月の分配金に課税されるため、再投資額が税金分減少し、複利効果を得にくくなることに留意が必要です。なお、黄色の部分は、年一、二回の決算型、分配型があわせて設定されている中、毎月分配型投資信託を分配金再投資の形で運用している顧客の比率となっております。

続きまして、最後にファンドラップでございます。25ページをご覧ください。ラップ口座の残高・契約件数が拡大しており、2016年3月末時点のラップ口座残高5.8兆円は、投資信託残高92兆円の6%を占める水準でございます。特に運用に時間を費やせない人や退職金の運用を始めるシニア層などを顧客として、投資対象を投資信託(ファンド)に絞ったファンドラップが残高・件数を伸ばしております。

26ページをご覧ください。投資家が支払う手数料は、資産残高に応じた投資一任報酬や運用する投資信託の信託報酬などがあり、主なファンドラップ商品の平均で年間2.2%に達しております。これを一般的な投資信託と保有コストを比較してみますと、4年を超えて投資を継続する場合、ファンドラップのほうが一般の投資信託よりも保有コストが高くなるといった計算になります。

最後に、27ページをご覧ください。運用している投資信託の中身を見ますと、系列の投資運用業者が設定する投資信託が平均で5割前後を占めており、中には7割近くに達するものが存在しております。ファンドラップを提供する金融機関は、各社とも、系列会社の利益を優先することがないように、運用対象の投資信託選定に際しましては、別途、外部より助言を受けておりますが、その助言会社の大半が系列会社という状況でございます。

私の説明は以上になります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、皆様方からご質問、ご意見等をお出しいただきたいと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構でございます。いかがでしょうか。上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

上柳です。大変感動的に聞いておりました。おそらく長い経験の委員の方は20年前なりにも似たような議論があったのではないかと思われる方も多いのではないかと思いますけれども、きちんとデータを示していただきまして、その点について大変敬意を表したいと思います。

というふうに申し上げた上でなんですけれども、こういう問題意識なり、大きな言い方をすると顧客本位の運用なり販売なりがなされていたのかという観点で、監督当局もずっとやってきてみえたと思うんですけれども、このようになってしまった要因といいますか、業者の皆様方からはいろいろご説明があるかと思いますけれども、その中で合理的なもの、そうでないもの、仕分けをしなきゃいけないと思うのですが、不合理な理由と合理的な理由とそれぞれあると思うので、そのあたり、当局のほうでどのように分析されているのか、今後の方向性を議論するためにも必要かと思いますので、もしご知見があれば教えていただきたいと思います。

【水野検査局モニタリング長】

上柳委員、ありがとうございます。なぜ顧客本位になっていないかというご質問かと思いますけれども、まず、やはり原因として考えられますのは、11ページにございます投資信託の販売チャネルが一つ大きな要素になっているのかなと思っております。日本におきましては、先ほども申し上げましたが、主に銀行とか証券会社を経由した投資信託の販売が行われております。逆に申し上げれば、銀行とか証券会社の意向が働きやすい環境になっているのではないかと思われます。片や、米国におきましては、かなり販売チャネルそのものの多様化が進んでおりまして、健全な競争が起こっております。やはりお客様のために何をすべきかといった理念がその中で芽生えておりまして、そうした中で、さらに資産運用アドバイザーであるとか、そういったIFAの存在とかがやはりお客様の立場に立っていろいろと考えていると。そうした中で健全な競争、健全なフィデューシャリー・デューティーが芽生えていると思われます。

そうした中で、日本におきましても販売チャネルの多様化といったものが必要かと思いますけれども、一足飛びにIFAを増やしていくとか、そういうのはかなり難しい状況でございますので、やはり私どもといたしましては、銀行とか証券会社における販売員に対して顧客本位の考え方を浸透させていくといったことが重要ではないかと思っているところでございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、永沢委員、それから福田委員の順で。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

はい、ありがとうございます。今、上柳委員から、本当はここのところから考えなくてはいけないのではないかという問題提起がありましたので、まず、その点について私なりの考えを述べさせていただいた後に、今日ご提示いただきました資料につきまして私なりに考えるところを4点ばかり述べさせていただきたいと思います。

まず、このようになってしまった要因ですが、ご指摘のあった販売チャネルの問題というのは、戦後の投資信託等の販売において日本がずっと抱えてきた問題だと思っておりまして、端的に申せば、受益者名簿と呼ばれる顧客名簿を投信会社が持てないという状況がずっと続いているということが原因の一つとしてあると思っています。また、低金利が急過ぎてということ、そして、証券業界においては、ビッグバンの後に株式手数料は大きく下がりましたが、サービスに比べて下げ方が急だったのかもしれない。その結果、投資信託のように販売手数料の高い投資商品への販売シフトが進んだのではないか、そういった背景もあったのではないかと思っております。今、金融機関は収益を上げることが難しい、大変苦しい状況にあり、結果として、一層、弱い個人投資家のところにそのしわ寄せが行っているのではないかと、私なりには感じております。

さておきまして、私は、今日いただきました資料につきまして幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。

4点ございまして、総論と、投信、生命保険について1点ずつ述べさせていただいて、最後に総論という形でお話しさせていただきたいと思います。

まず、昔からフィデューシャリー・デューティーという話は言われてきたし、目新しいことでもないじゃないかというご指摘が前回ありました。また、今回はその中でもなぜコストの問題がこれほどクローズアップされるのかということについて、私なりにこの数日、整理をしてみましたので、その考え方が正しいかどうかは別にして、皆様に自分の考えをお示しさせていただきたいと思っております。

私は、やはり背景にありますのは、10年前に比べて、国民は老後の生活は自分で備えてくださいという時代に、一層なってきている、老後の備えについても自己責任が問われ始めているということが関係していると思っています。良い商品を提供してくれないと、一生懸命、金融リテラシーをつけて勉強しても、真面目に考えて実行しても、20年後、30年後に、高い手数料の商品が提供されていれば――全てが高いとは言いませんけれども、やはり困る状況になると感じています。投資の期待リターンというのはあまり高くない環境が続いてきたし、おそらく今後もそうだと思っておりますが、それに比べてコストが上がってきていることを考えると、もしかしましたら、長期投資をしたら、グロス・リターンからコストを引いたさやがマイナスで、マイナスに複利運用するということもあるのではないかということが心配されるわけでして、もしかしましたら、金融庁のほうでもそういった問題を考えられたのではないか。金融機関の中にはフィデューシャリー・デューティーなんていうのは民で考えるべきことで、金融庁が口出しすべきではないという意見を耳にしたりもしますが、しかし、このまま放って市場に任せておくと、一生懸命、真面目にコツコツ長期に資産形成に取り組んだ国民が結果的に報われないということが起きてしまうのではないか。このコストの問題というのは、市場に任せていて民のマーケットメカニズムに任せていても解決されないのではないかというご懸念が背景にあったのではないでしょうか。

次に各論なんですけれども、投資信託については、本日、いろんな論点をA3の表に示していただきましたが、私はコストの問題にのみ限って本日は意見を申し上げさせていただきたいと思います。この点はもう既に3年前、もう4年前になりますか、投信法制の見直しワーキング・グループのときからずっと申し上げてきていることではありますが、投資信託には販売手数料と代行手数料というものが販売金融機関の収益項目としてあるわけですが、私は、この違いがここ近年はっきりしなくなっているということを指摘させていただきたいと思っておりまして、どういうサービスに対するものなのか、それが適切な水準なのかということを、業界の皆様には再考いただきたいと思っております。さらに、消費者、個人投資家からしますと、運用に直接関係のない販売手数料のようなコストはできる限り下げていただいて、金融商品を買ったら、その金融商品を通じて投資されるものは極力フルインベストになるような商品をつくっていただくことが投資家にとってはありがたいことでございまして、努力や工夫をいただきたいと思っております。

また、投資信託に関しては、代行報酬が値上がりしている理由として、丁寧な説明にコストがかかるというご説明をよく聞くのですけれども、しかし、説明が必要な人と必要でない人もおりまして、それを一律に取るのはいかがなことかと思っておりまして、説明にかかるコストというものは販売手数料と同様に代行の中に入れるのではなくて、代行から外に出すのが本当はファンドを運用している人たちの正当な評価にとってもいいですし、投資家にとってもいいのではないかと感じている次第です。

それから、余計なことですけれども、よくノーロードと称して売られているファンドなんですが、ロードというのは重荷という英語でして、これはあえて説明する必要もないかもしれませんけれども、アメリカでは、販売手数料が高いとフルインベストできないという理由から分割払いするタイプのものが開発されたという経緯がございます。米国でも代行報酬に該当するフィーが高いものが見受けられますけれども、そういったものは販売手数料の後払いということで、一定期間経過し販売手数料に相当する金額が払い終わったら、通常の低い運用報酬のクラスに強制的に転換するシステムを持たなければいけないという仕組みになっています。日本では、販売手数料はないが代行報酬の高いファンドをノーロードとして市場に導入されましたが、そのときに、米国で行われたような議論が整理できていなかったのではないかと思っております。少なくともアメリカでは、販売手数料を後ろで取るようなものに関してはノーロードとは言ってはいけないというふうな決まりがあったように私は記憶しております。いずれにしても、代行報酬と言われるものの中に販売手数料を紛れ込ませるというのは、ファンドにとっても、長期保有の投資家にとっても良いことではありませんので、ここらで問題の整理が必要なのではないかと考えております。

第3点として生命保険についてですけれども、前回の後、生命保険に関していろいろとご説明をいただきました。既に保険業法の改正で対応できているというご指摘などをいただきましたし、また、5%とか7%という手数料は高く見えるけれども、投信と比べると1回きりしか取らないとか、あるいは、投信は3年程度しか保有しないけど、生命保険はもっと長く、例えば10年満期だから、保有期間按分すると手数料は安いといったご説明もいただきましたが、ちょっとそれは違うのかなと思いながら、こうしたお話を拝聴させていただきました。確かに、特定保険契約の分野では手数料の開示の問題というのは一歩踏み込んでいただいているとは思うんですけれども、この度の市場ワーキング・グループの場で問題になっておりますのは、銀行や証券の窓口で、資産形成を目的として店頭にやってきたお客様に対して、投資信託など他の資産形成商品と並べて保険商品が販売されるときに、消費者の投資判断に必要な情報がわかりやすく提供されていないのではないかという問題が1点、それから2点目としては、入り口でたくさん抜き過ぎると、さきほどアメリカのフルインベストの話をしましたけれども、資産形成に回る部分が少なくなって、長期の資産形成商品としてどうなのかという問題。それから3点目として、銀行などの販売金融機関にたくさん売ってもらうために高い販売手数料が設定されているのではないか。実際、高いものをセールスの方がお売りになる傾向があるということで、結果的に消費者の適合性や消費者の利益が軽んじられているのではないかという、今申し上げましたような3つの問題があるのではないかということを申し上げたいと思います。

この市場ワーキング・グループでは多くのテーマが議論の俎上に上がっていますので、この問題は別の場を設けて、議論を整理をする必要があると思います。保険業界や保険を販売されている金融機関なりに努力されていることは私も認めるのですけれども、投資信託と比べますと、資産形成商品として見たときには情報開示が遅れているということは否めないと思っております。資産形成商品として他の金融商品と並べて販売されるのであれば、同じ基準は難しいとしても、できる限り比較可能な情報提供のあり方というのを業界全体として取り組んでいただきたいと思います。個社に任せるのではなく、また、「一つ一つがカスタムメイドの契約だから、そんなことはできません」と諦めたように言うのではなくて、消費者が自分で考えて選べる、そしてきちっと自己責任がとれるような環境を整備することに力を貸していただきたいと思います。

最後になります。総論に戻りますけれども、事業者の方々に儲けちゃいけないと言っているわけではないのです。しっかり儲けていただきたいと思うんですが、消費者にとっても良く、事業者にとっても良いという関係でなければ、やはりビジネスとして持続可能なものではないと思っておりますので、そのために何を削れるかというところを考えなくてはいけないわけで、例えば、不要な規制が結果的にコスト要因になっているようなことがあるので貼れば、金融庁のほうに一緒になって物申して、見直しをいただけないかというようなことをお願いするようなこともあっていいのではないかと思っています。いずれにしても、消費者に良い商品を提供できるような議論の場を持っていただきたいなと思っております。

長くなりましたが、以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

福田先生、どうぞ。

【福田委員】

ありがとうございます。非常に重要な資料をご説明いただきまして、ありがとうございました。

やはりこういう高い手数料というのは大きな問題を引き起こしていると思います。これは必ずしも顧客の利益を損ねているだけじゃなくて、長い目で見れば業界全体の利益も損ねている。そういう意味では、経済学で言う合成の誤謬のような問題が起こっていて、ミクロ的に見ると、あるいは短期的に見ると、手数料は高いほうが個々の金融機関にとっては利益が上がっているかもしれないけれども、結果的にはそれによって販売量も伸び悩んで、したがって長期的には利益も上がらない。そういう悪循環というのがある意味で起こっているということなんだろうと思いますので、これはやはり個々の問題として対処をするよりは、全体としてどうすればいいかという全体像を捉えて何らかの対応をしていくということは重要だろうなと思います。

そのときに、やはりいろいろな競争条件をどう確保していくかということは重要で、そのときにそれなりに参考になるのは、株式の売買手数料が一気に下がっていったという経験というのはやっぱり大事な問題だろうとは思います。過去には株式の売買手数料に関してもかなり高いものでしたけれども、やはり競争条件が確保されたことによって、特にネット証券の役割は大きかったとは思うんですけど、一気に手数料というのは10年余りの間に下がったということはあります。やはり競争を確保するということは大事だろうということだと思います。

ただ、経済学でもやみくもに競争すればいいということを推奨しているわけではありません。やはり「安かろう、悪かろう」という問題というのは常に注意する必要はあって、いろいろな販売業者がある中で、「うちは安いですよ」という形で来ても、ちゃんとした、安心した商品なのかどうかという問題というのは常に注意する必要はある。そこら辺の管理というか、新規参入者も含めてきちっと顧客の資産を守るということが――手数料は安いにこしたことはないとはいえ、最大の重要な点というのは、もちろん悪徳な業者が現れてそういう資産が失われるというようなことがないということのほうが――プライオリティーは当然高いわけですので、そういう点に関しては注意する必要はあるとは思います。

それから、手数料に関しては高いということで、今日、改めて数字を見せてもらったんですが、実際に購入するときになかなか手数料がわかりづらいということは、ご指摘のようにあると思います。そのときに約款というものだけを見せられても複雑過ぎて、多くのことが書いてあるという問題があって、やはり重要な事項に関しては別途わかりやすく説明する工夫というのを、特に大事なことに関しては、手数料はその中でもプライオリティーが高い形で販売業者に関しては説明責任を果たしてもらうというような工夫というのが大事なのではないかと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、鹿毛委員、神戸委員の順番で、鹿毛委員からどうぞ。

【鹿毛委員】

今のコストの問題ですが。通常のコストに比べてかなり高いものが最近出てきたということ自体は、これはかなり異常だと思います。別の見方をすると、それだけ出さないと売れない商品だと。日本でマイナス金利のもとで、投資先をみんなで探さなければならない、膨大な潜在需要のある中でこれだけの高い手数料を払わないと売れないほどの商品なのかという見方もできると思います。ですから、ある段階で多少ドライブをかけて無理をして販売するということがあるとしても、これはそう長く続くものではないという気もします。だから、このこと自体は、投資家保護の観点で、適正開示等の対応が必要と思いますが、実は国民の資産形成全体の問題からすると、テーマのひとつという気がします。

今回のこの事務局説明資料を拝見して、私も市場には長くおりましたけど、長年いろいろな形でささやかれたり、ほとんどの人が知っていても問題に出来なかったことを、政府としてこれだけの形で包括的に問題提起をされるのは初めてと思います。そこに、私は問題の重大性を感じますし、また金融庁とされての意気込みも感じます。今、日本にとっても、特に業界の今後の発展のためにも、これはやっぱり超えていかなければならない一つのポイントなのではないかなと思います。

ここで二、三点、感じたことを申し上げます。この資料、売れ筋、買い筋商品というところから始まって、日米の投資信託市場の大きな違いを指摘されています。そのとおりだと思いますが、私の見るところでは、例えばアメリカの投資信託市場は基本的には米国株の市場で、フィデリティの、昔で言えばマゼランファンドとか、キャピタルのアメリカンファンドとか、バンガードのインデックスファンドとか、とにかく幾つかの大フラッグシップファンドがいわばシンボリックなものとして国民全体から何十年にわたって投資されてきたわけです。しかも、アメリカの株式市場は、短期的な例外を除きますと、5年ないし10年でとっていけば必ず5%とか10%の平均リターンが出てくる。つまり、米国株に継続的に投資している限りはしかるべきリターンが得られると。そういう成功体験があって国民は安心してどんどん投資してくる。それは401(k)もそうですし、そういういい循環があるマーケットであったと思います。

翻って日本を考えた場合に、アベノミクスの直前までは20年間で日本株の平均リターンがマイナス2.9%とか、要するに日本株にどんなに投資してもリターンが出てこない時代が二十何年続いたとすれば、日本株の投資信託に投資してもプラスにならないわけですから、一般論としては、長期投資としてほとんど意味がないという時代が続いていたわけですね。結果的には資産形成の柱である自国株以外の、周辺的、部分的な投資対象を一生懸命探しながら、業界としても努力をしながらつくってきたと思います。それはどちらかというと伝統的な資産でないために、さまざまな工夫・努力をしてということですけれども、それは長期的に経済成長と同じだけリターンが得られるというようなものではないだけに、やっぱり長続きはしないものです。

ここで強調したいのは、投資家にも資産形成にもいろいろある、ということです。若い人が長期的に積み立てて資産を形成し、リタイアするまでにある程度の資産を持つということが国民的にも非常に大事なテーマだと思うんですが、そういう意味での資産形成と、もうちょっとお金を持っている人が株式などで何とか儲けたい、これも決して悪いことではなくて、そういう意味での資産形成と、2通りあると思います。これまで人気のあった、例えばREITとか、ブラジルとか中国関連の投信は、どちらかといえばある程度お金のある方が機会を捉えて資産を形成していこうというニーズに合ったものと言えます。だからこそ、個人貯蓄1,700兆円の5%から10%ぐらいかもしれない、そこに本質的な点が示されていると思います。他方、1,700兆円の30%とか40%部分を占める預貯金部分がゼロないしマイナス金利となり、将来的にはインフレも問題となる場合、国民の資産形成をどうしていくかという課題があるわけです。その課題に対して、今の日本の金融業界、私も長くおりましたので、反省を込めて申し上げたいんですけれども、なかなか対応ができてなかった。なぜかといいますと、日本の金融機関は日本株と日本債券中心の運用しかなかなかできにくいから、ということだと思います。

ですから、フィデューシャリー・デューティーを議論する際に、個人投資家のベストインタレストへの対応というときに、今の2つのニーズの違いを意識する必要がある。そして、プロであれ、機関投資家であれ、個人であれ、結局、日本株・日本債投資も大事だけれども、国際分散が大事だということですが、そのニーズに対する対応がポイントになると思います。本WGの課題として、コンプライアンス上の問題などさまざまな問題がありますが、結局、メーンストリームのニーズに応えることをやれなくて、それ以外の分野でやるとすれば、結果的にはこういう状況になってしまうんだろうと思います。基本的に無理のある分野でのビジネスではなかったんだろうかという感じはいたします。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、神戸委員、どうぞ。

【神戸委員】

ありがとうございます。事務局様からのご説明を伺いまして、幾つか感じたことがあるんですが、まず投資信託の売れ筋商品が変動してきている、また本数ばかりが多くて純資産額が少ない、さらに残高がピーク時から減少するものが多いとか、1銘柄のみを保有されているとのご指摘がございました。これらの現象はいずれもおそらく根は一緒で、相場観重視の商品選択あるいは販売スタイルになっているということが根本的な理由ではないかと思いました。投資といいますと、当てに行くことだと考えてしまい、結局、タイミング、相場観が命で、何で長期投資なのか、何で分散投資なのかといった投資観がないまま買う側は選びがちですし、販売する側も相場観に基づいた説明こそがアドバイスだというふうに考えているケースが多いのではないかと思います。結局、今なら何が儲かるかと考えれば、いつの間にか、できれば手っ取り早く上がりそうなものはどれかと、自然に短期スタンスでの商品選択になってしまいがちなんですね。その結果、乗り換えにつながりやすくなりますし、先ほど並べさせていただいた現象の大元の理由にもなっていると思います。ここでは、生活者向けの金融教育として、相場観ではなく投資観の育成を図る必要性が高いと考えます。なぜ長期なのか、なぜ分散なのか、あるいはなぜ積み立て形式なのかというような内容が重要ですし、同時に、販売する側もそれらをきちんと説明するというスタイルにしていかないといけないでしょう。

次に、株の手数料は急激に下がったというお話がありました。私自身が銀行と証券会社の勤務を経験しておりますので、実体験に基いてお話ししますが、投信や保険商品というのは販売努力型の商品なんですね。株式、あるいはインデックス連動型やレバレッジ型のETFなどは、ぶら下げておくと勝手に売れていく商品といえます。マーケットがよければ。販売する側にあまり努力が求められない商品、勝手に客が買っていってくれる可能性が高い商品と言えると思います。一方、投資信託や保険商品というのは、まず販売する側が球を投げない限りは売れにくい商品なんですね。相場がよいからといって、一般的な投資信託がどんどん売れていくかというと、必ずしもそうではない。売るためのアプローチがまずあった上で売れていくということになりますから、結局、メーカーにしてみると販社の意向を重視せざるをえません。販社がもうかるもの、売りたくなるものでないと売ってもらえないということになります。最初の球を投げてもらえないと困るわけですから、いろいろインセンティブも付けるという格好になってきているのだと思います。

ご報告の中に、販社の系列メーカーが多いというお話がありましたが、本来はメーカーと販社さんの間にはそこそこの緊張感があったほうがいいはずです。生活者にはなかなか良い商品と悪い商品の見極めが難しい、数が多いし、どう違うのかもよくわからないといった中では、販売するサイドが本来は商品のチェック機能を持つべきで、良くないものはもともと仕入れないというような関係が成り立っていることがおそらく好ましいでしょう。現状のようにメーカー自体が売っている、あるいは同一グループの販売会社が売っているという状況では、その辺りの緊張感はどうしても失われがちになりますので、チェック機能が充分に機能していないということが手数料が高いということにつながったり、あるいはいかがなものかと思われるような金融商品が出てきてしまうということの背景になっているのではないかと思います。

ビジネスには継続性が必要ですので、単純に手数料が安ければ安いほどいいというものではないと思うんですが、問題は、その手数料・コストに関して、前回もお話ししたように、販売会社では誰から何の対価として得ているのかということについての教育・研修が、あまり行われていないという印象があります。保険商品のように、顧客が支払っている保険料の中から一部が販売会社側に払われる形だと、販売会社の担当者にしてみるとメーカーから手数料をもらっているという意識を持つ可能性もあるわけですね。保険会社とか運用会社から手数料を得ていると思ってしまうと、担当者はどうしてもそちらの方を向いてしまいがちです。本来は顧客から得ているわけですから、顧客サイドに立つべきなのでしょうが、その辺の意識を持ちにくいということにつながってしまうと思います。

それから、先ほど永沢委員もおっしゃいましたが、実際得ている手数料が何の対価なのかという点を明らかにするべきでしょう。本来はアドバイスに対する対価であるべきなのでしょうが、そうなると今度は投資顧問業法に抵触してしまいかねません。現状では、有料でアドバイスを行うとすれば、投資顧問業の登録をしないといけませんので、その辺の整理が別途必要になるかもしれませんが、もともとアドバイスに対する対価として顧客から得ているのだという認識の徹底が必要になると思います。実際に、顧客側にアドバイスに対する対価であれば支払おうという意識が生まれてきているのは間違いないと思います。弊社は独立系FPとして生活者向けの運用アドバイスを行っておりますが、アドバイス・フィーとして幾らといつ形で提示して、それを支払っていただいており、アドバイスに対する対価というのは顧客にとって、むしろ納得しやすいコストといえるだろうと考えております。先ほどご説明いただいた資料の中で、ラップと通常の投信のコストを比較してラップのほうが顧客にとっては高コストというご指摘がありましたが、一概にはそうとは言えないかもしれません。ラップのコストの中のどの部分がアドバイスに対する対価なのかということを明示すれば、今後も十分ニーズのある商品と思っています。

最後に保険商品についてですが、前回の保険のワーキング・グループに私もメンバーとして参加させていただいた中で出てきた話として、複数の会社の商品を取扱う乗り合い代理店は、なぜその会社のその商品を勧めたのかという記録を残さなければいけないという方向での議論がありました。もしも投資信託と同じレベルで貯蓄型の保険のフィーを明らかにするべきといった方向で話が進むのであれば――私も、本来はそうあるべきだとは思いますが――投資信託に関しても保険商品と同じように、なぜその商品なのかというところを顧客向けにしっかり伝えなくてはいけないのではないかということも議論されるべきだろうと思います。実際には、ものすごく大変な作業になるとは思うのですが、そういう可能性もあるということを感じました。

とりあえず以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、札を立てていただいている順番で、上田委員、竹川委員、大崎委員の順で、まず上田委員、どうぞ。

【上田委員】

ありがとうございます。大変豊富な資料でご説明いただいて、手数料の問題等よくわかりました。私、個人投資家向けの金融商品ってあまりそれほど詳しい専門家でもございません。もし少し違った観点になりましたらお許しいただきたいんですが、資料について拝見していてちょっとどうかなと思ったところで、12ページでコスト比較とあったんですけれども、これ、売れ筋商品で日本と米国の投資信託で比較して、日本って高いですよねというようなお話かと思うんですが、一方で、2ページ目を見ると、米国の場合、米国株式インデックスが主要な売れ筋であって、日本の場合にはアクティブであるとかバランス型なんでしょうか。というようなことを見ると、これはそもそも高くて当たり前じゃないのかなというところで、ここ、サンプリングがちょっとミスリードぎみなんじゃないのかなと思います。もしこれを本当に反論の余地なくつぶすためには、商品名、売れ筋という定義のところを含めてもう一度見せていただくほうが納得力があるのかなと。これはすごく大切な問題で、今のままでも十分説得力があるんですけど、ちょっとひっかかってしまったというところです。

一方で、インデックスの投資というのは米国でそれが主であるというところで、貯蓄から投資へという流れがあるんじゃないかと思うのです。インデックス投資をすることで、おそらく米国の場合には、リーマンショックなどはあっても、長期には右肩上がりでリターンが得られている。こういう経験が刷り込まれているので、米国では投資というものが主たる資産形成の柱になっている面もあるのではないかと思います。日本はどうかというと、ダウのように成長企業を入れ替えて長期的に成長というような前提のインデックスが存在しますでしょうか。TOPIXは、東証1部銘柄を全部買っています。日経225は大きな入れ替えありません。そのため、成長を織り込んで、投資家のリターンにもつながるという前提での商品設計がそもそもできる金融市場になっているのでしょうか。そこがすごく疑問に思います。もちろん、さまざまな販売の問題であるとか商品設計の問題はあると思うんですが、そもそも日本の市場環境って投資向きなのでしょうかといったところを思ったわけです。

また、ちょっとこれは違う論点ですが、19ページの系列のアセマネの経営が販売会社と一体化している点。これは前回も、また別の会議でも同じようなことを私申し上げていますが、いろいろ拝見していますと、大体二、三年交代で社長が代わっているようです。日本の金融機関の方は皆さん優秀なので、二、三年たつと、元銀行員、元証券会社の方でも、大体資産運用業の専門家というか、詳しくなられるわけですね。で、詳しくなったころに交替して次の人が来る。といったことで、この点は、継続性の面でも、あるいは専門性の面でも問題が出てくるわけですね。そして、販売会社である親会社からの派遣者が多くなると、どうしても販売会社に引きずられてしまう形になる傾向があるということです。

さらにもっと言うならば、CIOも内部昇格ではなくて親会社から派遣されているようなケースすらあると聞きます。さらに、親会社に籍を置いたまま子運用会社の取締役なり業務執行に携わっているようなケースもある。こういった事象は、おそらくヒアリング等で、あるいはそもそも事実関係を調べればすぐわかることだと思うんですけれども、そういった運用会社の内部の管理体制も含めて見ないと、販売のあり方とかそういったところだけではなかなか難しいのかなと思います。インセンティブについては前回申し上げたとおりなので、今日はコメントは控えさせていただきたいと思っています。

最後に一点だけ。顧客本位という資料1が一番大切な資料だと思うんですが、ここで顧客本位の業務運営から離れている例として、販売とか商品開発を主な課題とされていると読みました。すみません、当局の金融庁さんの前で申し上げるのは何なんですが、最近、事務手続の煩雑さというものも全く顧客本位から離れているということがあるのではないかと思っています。もちろん、コンプライアンスは、すごく重要です。あるいは適合性の原則などは、今回仕組債の資料もありましたけれども、あんなものをそもそも個人投資家に売っていいのでしょうか。私が聞いても、今日のご説明でも最後の金融商品、特に保険の商品はちんぷんかんぷんでした。これを買われる個人投資家の方はすごいな、なんて思いながら、ご報告を伺っていました。ただ、こういう複雑な商品も出ている中で、窓口におけるいろいろな書類の確認等があると思うのです。その煩雑さというのが、窓口に行ったら二、三時間拘束されてしまうことになり、これも少し貯蓄から投資へと促すうえで障害になることはないのでしょうか。その最たるものというのは、例えば信託商品なんかで教育資金信託とか、ものすごく営業されているようで、「これだけ資金集まりました」って信託さんおっしゃるんですけれど、それにしても、信託組むときにものすごい手間暇かかり、今度はその信託を出すときにも何度も書類のやりとりがある。窓口の方に聞くと、どうもバックオフィスも含めて事務がものすごく大変になっている。こういうものは果たして金融として必要な商品なんでしょうかと。税制とのセットでやられている商品だと思うんですけれども、それが誰のための、個人のために必要なのか、あるいは金融機関の手数料を含めて長い目で見て必要な商品なのか。といったところも含めて見直さないと、何となく、そもそも一顧客として販売商品開発の問題以外に窓口に行く手間というのを意識してしまう個人投資家もいるのではないでしょうか。こういう面では、顧客本位というよりも、何となく事務管理本位の運営があるんじゃないかなと思ったところでございます。

すみません、いろいろと申し上げましたが、以上でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、竹川委員、お願いします。

【竹川委員】

資料を読みまして、12年に投信法の改正のワーキング・グループがありましたが、そのときに投資信託の課題として出されたポイントが非常によくまとまっていました。逆に言えば、まだ改善されていない点もたくさんあるのだと感じました。

先ほどの神戸委員の意見とも少々重なりますけれども、今回の資料を読んで一番感じたのは、短期間で商品が入れ替わるとか、売れ筋が入れ替わってしまうとか、新規の設定された投信の資産残高が短期で半減してしまうというようなことは、投資は相場を当てて短期で乗り換える、当てにいくという従来のイメージから販売会社も、従来の投資家層もなかなか脱することができていないのだと思います。ただ、これから従来の投資家そうだけでなく、国際分散投資をして長期で資産形成をしていこうという、特に若年層、現役層に投資の裾野を広げていこうと考えるのであれば、そういったところから変えていく必要があると感じています。

こういった問題が起きてしまう背景には、長期で育てていこうという視点が育ってきていないことがあるのだと考えています。長期で育てるというのは、ひとつは顧客の資産を長期で育てるという視点ですし、もう一つは、きちんとした投資信託を長期で育てていこうという視点です。投資信託と顧客の資産を長期で育てるという視点の欠如といいますか、乏しいところがあったのだと感じています。そのため、どうしても短期で乗り換えるとか、次は何がくるのかという視点で売れ筋が変わっていってしまうというのだと思います。

もう一つは、顧客自体も短期で、例えばリーマンショックのときもそうですし、この間のイギリスのEU離脱問題のときもそうですし、下がったときに短期で手放してしまうことももう一つ問題としてあると思います。その理由としては、販売員の方もそうですし、投資家自体も商品をよく理解しないで買っているということも大きいのではないでしょうか。投資信託を運用する会社の方とお話をすると、投信の運用担当者の方を含め、(以前に比べて)個人投資家に商品を理解してもらおうと努力をされているように思います。例えば月次レポートでファンドマネジャーの方がきちんとコメントをする会社も増えてきましたし、ホームページにファンドマネジャーの動画を載せて商品の解説をしたり、運用報告をしたりしている会社もあります。受益者や投資を検討している人に対して「この商品はこういうものですよ」ということを訴求するような努力は増えてはきていると思います。

ただ、投資信託の性格上、大部分の商品は販売会社を通して売るという形になっています。販売会社を通したときに、商品の特徴が本当に投資家さんに伝わっているのかどうかというと、難しいなと思うところもあります。例えば、投資信託を購入しようということで窓口に行って、同じ日本株に投資をする商品があったときに、その商品がどういう投資哲学で、どういうプロセスで銘柄を選定しているのか、あるいは幅広く分散投資するものなのか、ある程度銘柄を絞って投資するものなのか、等配分投資をしているのか、一部にある程度集中的に投資をしているのか、投資した会社をずっと保有していくようなものなのか、頻繁に入れ替えるのかとか、そういう特徴は個人投資家さんになかなか伝わっていないという問題があると思います。そのため、何かあったときに、「この商品を本当に持っていていいのか」と投資家さんも不安になって、下がったときに売ってしまうという側面もあります。ここを変えるには、販売会社の販売員の方も、同じアセットクラスのものであれば、それぞれどういう違いがあるのかを理解した上できちんと紹介していただきたいと思いますし、投資家サイドもそれを理解した上で、購入する、しないの判断をしていくことが大切なのではないかと強く感じます。

もう一つ、コストに関してですが、二極化が進んでいると思います。ここ数年来、例えばさまざまな資産クラスに投資をするようなインデックスファンドについては低コストなものもかなり出てきました。その一方で、非常に複雑で理解しにくく、高コストのものも増えてきています。かなり二極化傾向が進んでいるのではないかなと感じています。

コストに関しては、先ほど永沢委員からもご指摘がありましたけれども、運用にかかるコストと販売にかかるものに関してはきっちりと分ける形にしていったほうがいいのではないかと考えています。特に、購入するときにかかる購入時手数料についてははっきりわかりますが、保有中にかかる運用管理費用の中にある代行手数料に関しては、長期的には外出しをする方向に持っていったほうがいいのではないかなと考えています。先ほどから何回か出てきていますが、結局、販社さんに支払う手数料が何に対する手数料なのかというのが、今、わからないということが非常に大きいと思うのです。ですから、運用に関するコストと販売にかかるコストをはっきり分けてもらうというのが一番いいのではないかと思います。

購入時手数料、それから代行手数料についてもそうですが、一括で買うのか、店頭で買うのか、ネットで買うのかによって、本来は(コストが)違うのではないでしょうか。また、これから現役世代のほぼ全員で入れるようになる個人型確定拠出年金についても、投資信託が主流の商品になっています。(例えば、自動的に積み立てていく個人型拠出年金で)本当に代行手数料が要るのか、要らないのかということも含めて議論していっていただければと思います。

最後に、保険商品についてですが、貯蓄性の保険というネーミング自体が誤解を与えるのではないかと思います。貯蓄と謳っているにもかかわらず外貨建てだったり、値動きするものが入っていたりするので、ネーミング自体を変えたほうがいいのではないかなと。一般の消費者の方が誤解をされているケースが多いので、ネーミングの変更も含めてご検討いただければと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、大崎委員、宮本委員の順で。大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

ありがとうございます。この資料のご説明をいただいて、当局としてどういう問題意識を持っておられるかというのが非常によくわかりました。

その上で、ある意味、別にけちをつけようということじゃないんですが、あまりこの議論が一方向に極端になってしまっても何だなと思うので、ちょっと資料で気になった点、細かいことを幾つかまず申し上げたいと思うんですけど、1つ、最初の売れ筋の日米比較の話なんですけれども、ぱっとこれだけ見ると、日本では非常に不思議なものが、かつ、儲からないものが売られていて、何か変な感じがするというふうに見えてしまうんですが、先ほどから出ていますように投信の保有期間自体が日本は非常に短いということも考えますと、過去10年の収益率がどうだったということで比較するのはあまり適切じゃないのかなと。つまり、売れ筋の投信というのは常に損をするものを売っているのかというのはちょっと疑問がありまして、私は別に販売会社に勤めているわけじゃないんですけれども、販売会社に勤めている人たちなんかともよく交流する関係で、若干その人たちの気持ちを代弁すると、やっぱりその時々の売れ筋の投信って、実際、結構パフォーマンスがいいのが多いんですよね。それは、10年で見たときに本当にそれが良かったかというのは大いに疑問もあるんだと思うんですが、そもそも日本とアメリカ、何人かの方がおっしゃっていましたように、投資環境そのものが著しく違う。日本は日本円で投資をするとものすごいマイナスリターンかゼロに近いものになってしまって、アメリカのほうは自分の通貨である米ドル建てで投資をしていれば一定のリターンが得られるという状態が、何だかんだで浮き沈みあっても30年、40年続いてきたという、相当違う中で、為替というものすごく変動するものに翻弄されながら四苦八苦してきたという現実も販売会社の現場にはあったんじゃないかなという気がしていまして、ただ単に投資家からどんどん金を吸い上げるということだけを、もし本当にしてきたんだったら、今、日本に銀行や証券会社というのは経済的に成り立ってないんじゃないかなという気もするので、そこはちょっとあまり極端な議論になってはいけないなという気がします。

似たような話で、12ページで非常におもしろいご指摘をいただいて、日本の投資信託の信託報酬率、純資産額が増加するに従って、販売会社の報酬配分率が上昇するものがあると。確かに、たくさん売ったら率が上がる。金額はともかくですね。何か妙な感じがするわけなんですが、これは、前にご指摘いただいている投資信託の残高が小さいものが多いということと表裏の関係だという気がいたしまして、運用会社からすればやっぱり残高をできるだけ大きく育てたいという思いがあって、そうすると、大きく育ててくれる販売会社に大きく報いたいというのもそれなりの合理性はあるのかなと。ですから、1個1個の現象はアメリカと違うというのは確かにそのとおりなんですが、アメリカに一挙に全部をそろえようとしてもなかなかうまくいかないところはあるのかなと。理由について考えるという冷静な議論は要るんだろうと思います。

それから、あと2つなんですが、もう一つは、手数料のお話が随分出ていまして、特に何の対価かということをはっきりさせたほうがいいというようなお話もあったんですが、私は、今まで、例えば販売会社が販売手数料3%って何なんだということを多分正当化するために工夫をしたつもりなんでしょうけど、「説明の費用だ」とかいうように言ったこと自体が、ある意味、戦術的失敗だったんじゃないかという気がしていまして、そもそもそういう手数料というのは、何かの細かい具体的なことの積み上げで決まるものなのかというのは、世の中全体で見れば大いに疑問なんじゃないかなという気がしておりまして、先ほどから、コンプライアンスの話なんかも出ておりましたが、要は、会社全体で見て諸経費込みで何とか利益が出る水準ということで手数料を設定するというのが普通だろうと思うんですね。これがやっぱり競争によってできるだけ下がっていくという方向に向かってもらうのがベストだという気がしておりまして、現実にどうなんでしょうね、趨勢的に上がっているのかどうかというのはまたいろいろな議論があるところですけれども、あまりこれも、「内訳を明らかにせよ」みたいな話はかえって生産的ではないのかなという気がします。

最後に、系列の話なのでございますが、例えば自動車の販売なんかも基本的に系列の販売店で行っているわけでございますけど、資本関係はどうかとか、社長を派遣しているかとかいうのは違いがあるかもしれませんけれども、だからけしからんという話はあまり聞いたことがないんですね。おそらく金融商品に関して系列であることにいろいろ問題があるというふうなご指摘があるのは、多分、自動車の販売にはない何らかの消費者の利益を害していると思われるような問題が感じられるからだということだと思います。それが果たして系列であるからそうなのか、それとも系列ということとは切り離してそういう問題があるのかというところをきちっと見極めて、必要な規制を手当てしていかないと、何でも切り離せばいいんだという話になったときに、もしかすると資産運用業界全体が下手をすると立ち行かなくなるというようなこともあり得なくはないのかなということを若干懸念する次第です。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、宮本委員、黒沼委員の順で。宮本委員、どうぞ。

【宮本委員】

私は鉄鋼会社の者であり、金融の専門家ではございませんが意見を述べさせていただきます。ご説明いただいたように、足元、貯蓄から投資への流れは十分ではなく、その一つの要因がアメリカとの比較で明らかなように個人が保有している投資信託のポートフォリオの問題であり、それから、先ほどから議論いただいている投資信託の手数料の問題、分配型投資信託の問題、外債や為替を組み合わせた複雑な商品とその情報の開示不足の問題、貯蓄性保険の手数料やそのわかりにくさの問題などもあり、さまざまな分野でさらなる改善を求められていると認識しております。

保険については、この審議会で議論されて、保険業法の改正が行われてこの5月から施行されておりますので、保険業界としては、この改正を受けてさまざまな整備・改善をされていると聞いております。それにより保険販売における透明性向上やフィデューシャリー・デューティーが向上することを期待しています。

このような中、先ほどからのご意見にもありますように、投資信託とか貯蓄性保険の主な販売チャネルとなっている金融機関の窓口とか金融商品そのものに対して、フィデューシャリー・デューティーに起因する問題が発生しているのであれば今回施行された保険業法の改正の評価とあわせてさらなる改善を早急に進めていくことが重要と思っております。

また、これには、販売員のフィデューシャリー・デューティーに加え、金融機関の会社としてのフィデューシャリー・デューティーというのも一つのポイントであり、金融機関として先ほどの手数料の問題、それから商品の取りそろえの問題に加えて、やはり販売員のインセンティブ制度、それから資産特性と顧客のニーズを踏まえて顧客にベストな提案をすれば評価されるような評価制度、このような制度をつくることも重要と思っております。そうすることで、書いていただいているように、インベストメント・チェーンにおける顧客本位の業務運営が金融商品への信頼性向上につながって、個人が安心して中・長期的にリスク・リターンを踏まえた適切な資産形成を行って、結果、経済の成長に資する望ましい資金の流れができると考えておりまして、今回の議論は非常に重要だと思っております。このワーキング・グループでこの問題が議論されて、適切な対応につながることを期待しております

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

今日の事務局のご説明や皆様のご意見を伺っていて、私は2つの問題点を分ける必要があるように感じました。

1つは、例えば毎月分配型の投資信託で十分な説明が行われていないとか、デリバティブを組み込んだ仕組債で顧客の理解が得られてないのではないかと、こういった問題は、商品内容の説明の問題です。法的に言うとこれは説明義務の話だと思います。

それに対して、販売手数料については、これは商品内容には形式的には含まれていないと思うのです。しかし、顧客にとっては、その商品を買うための判断材料の一つであることには違いがない。これをどういうふうに扱うか、問題があるとしたらどういうふうに対処するかというのは、やり方としては2通りあるのと思います。それは、先ほどの説明義務の問題とは一応別個に切り離して考える必要があると思います。

1つは、開示を行うということです。しかし、開示を行うと、売れなくなるとか販売ができなくなるとか、そういう問題が現場から出てくるのは当然の話なんですけれども、ただ、開示をしない場合に、ほかの規制のやり方としては、まさにフィデューシャリー・デューティーをかけて、そのときに、どういった商品を勧めるか、何を勧めるかということについて広くフィデューシャリー・デューティーをかけていくということになると、これは販売を行っているような、代行しているような金融機関に無理なことを要求することになるのではないのかという気がしています。というのは、上場銘柄を売る証券会社とは違うわけで、何でも仕入れることができるわけではないわけです。仕入れることができる商品は限られていて、その中で勧めるわけです。系列の運用業者が設定する投信を販売しがちであるとか、手数料の高い商品を販売しがちであるということは、確かに問題だとは思うのですけれども、じゃあ、そのときに顧客にとってベストな商品を必ず選んで、それを勧誘しなければならないというような義務を特定の商品の販売を委託されている業者に一般的にかけることは本当にできるのか。法的な義務の話をしていますけど、それをプリンシプルと言いかえてもやることは同じですので、そういうことをしていいのかという問題が残るように思います。今申し上げたことは大崎さんが言われたことと似ていると思うのですけれども、どの範囲でどの程度の規律を設けていくかというのをきちんと見極めた上で規制をしていくべきではないかと思いました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。それでは、島田委員、どうぞ。

【島田委員】

私自身も、いろいろ最近の状況を見ていると、皆さん非常に努力をしていらして、随分良くなってきたと。20年前に「流れ懇」で議論されていたことが今も変わっていないというお話もありますけれども、隔世の感があるようにも思いますし、平場で議論ができるようになったということについては大きな進歩ではないかと思っております。

一方で、今日さまざまに出てきた問題の中で、例えば手数料の根拠や水準、あるいは利益相反がどこにあるかといった問題については、情報開示や説明によって解決できる部分がかなりあるのではないかと思います。ただ、情報開示や説明について、個社の努力でより良くやってくださいというプリンシプルの部分だけに任せておいてどのくらい進むのかといった状況もあると思うので、ここについてもう少し細かく分けて考えながら、ルールが必要なもの、あるいはガイドラインが必要なものというものもあるかどうか、議論をしていく必要があるのではないかと思います。

全ての問題の背後に、大きな構造的な問題として系列の問題、大崎委員が先ほどおっしゃられたように、必ずしも系列ということではなくて、むしろ販社と運用会社の力関係の問題というのがあるように思われます。そこについても、これは運用会社のガバナンスの問題とも絡んでくると思うんですけれども、個社努力に任せるということで最終的にいいのか、どのような方向で努力をすることが必要なのかということについては、全体的な議論を、もう少し関係の方々で深めていただく必要があるのかなと考えます。「個別の会社だけで勝手にやってください」と言っても、なかなか解決しない部分があるのかなと思います。

と申しますのは、先ほど例に出ました自動車の場合は、自動車をつくる会社と販売会社の関係の中でつくる会社のほうが力があるんですけれども、投資信託の場合には、例えば販売会社が「今は赤い車が売れるから赤い車をつくってくれ。エンジンは何でもいいよ」と言われたら、赤い車をとりあえずつくらなきゃならないというような伝統的な状況がある中で、小さいファンドがたくさん増えてしまい、本数がものすごく残ってしまっている。あるいは比較的高い手数料になりがちで、そのコストについて規模の利益が販社に還元されるだけの仕組みになっているというようなところも、全てこういう力関係の中で伝統的に培われてきた習慣であることが非常に大きいと思います。個社の努力だけではなかなか解決しづらいのかなと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】

先ほどちょっと言い残したことがありましたので、付け加えさせてください。個人投資家にとってどういう投信が一番いいか、それをどうやって供給できるかという議論をする際の一つのご参考なんです。実はリーマンショックの直後にアメリカでも個人の、特に401(k)の投資家が大量に底値で投げたという事実があって、それを見ていた運用の大御所の2人ですが、チャールズ・エリスとバートン・マルキールの2人で個人投資家向けの本を出しました。『投資の大原則』という本です。そこで、特に長期にわたって若いときから資産形成していくような一般投資家にとっては、グローバルに分散された、しかも株と債券とも分かれたインデックスファンドが一番いいのではないかと言っています。なぜならば、リスクの分散という面ではそれが最大限に分散され、同時にコストが一番低いからと、そういう定義なんですね。これはもちろん一つの試案と私も思いますが最もリスク分散がされているということは最もリスクが低いということにもなってきますので、そういう性質のものであれば、現在ある預金から移りやすいのではないでしょうか。現在、市場にある投信はいろいろな意味でリスクも高いものなので、なかなか預金から移りにくいのだと思います。現状がそのことを示していると思いますので、今後そういう議論が必要だと思います。そうでないと、投信をめぐる議論がマーケットのごく一部の議論でしか進まなくて、全体の議論になかなかなりにくいのかなというのが一つの意見です。

それからもう一つは、今日のご指摘の中で残高の少ない投信の問題です。これは実は業界の皆様、特に経営陣の方々に伺っても、それからファンドマネジャーの人にとっても、現在あるような、ものにもよると思いますが、たとえば100億円以下とか残高が少なくなれば運用もできない、コストだけかかって投資家のためにもならない、誰のためにもなってないと言うことのようです。じゃあどうしてなくならないんですかということをいろいろな方に伺うと、いろいろな理由があるようですが、「個社としてはお客さんもあり、なかなか難しいんだよ」という感じです。しかし、個人投資家の立場から見るとかなりの問題と思います。こういうものは、例えば業界全体、場合によってはお役所の後押しがあって、全体としてやめていこうじゃないかということにならないとなかなか進まないと思います。逆に言いますと、先ほどちょっと申し上げましたような特定少数の大型ファンドで、成績もある程度良く残高が増加してくれば当然コストも下がってまいりますし、人気も出るということになると思います。結局そういうスタープレーヤーというか、旗艦ファンドが出てこないことには、ドングリの背比べの市場ではなかなか市場としては発展しないのかなという感じがします。例えば韓国では一定の残高を切った場合には強制償還といったルールがあるやに聞きます。ちょっと極端かもしれないとは思いますが、何らかの形で、今ほとんどワークしてないような小型になったファンドの統合ないし償還の問題も、今回のWGの課題のひとつかと言う気がします。

それからもう一つ、株主、販社というような言い方もしていますけど、銀行、証券とその子会社である運用機関との利益相反の問題です。確かに今日ご指摘の通りの問題はあると思います。ただ、海外でも、J.P.モルガンや、UBS、BNY、ステート・ストリート等、大金融グループの中に運用部門があって、グループの一員として隆々としてやっている運用機関は実結構あります。ですから、グループの中にいること自体が、大崎さんもおっしゃったように必ずしも問題ではなくて、ただ、親会社のポリシーが若干違うんじゃないかと思います。つまり、今申し上げたような海外の幾つかの大金融機関の方針は、傘下の運用機関を、超一流の運用力を持つ独立した会社として育成することで、成長させることで、グループ全体の利益を増やしていくというポリシーだと思います。それは日本でもやろうと思えばできることではあるんですけれど、今日の事務局のお話ので言われているようなことは、むしろそういう長期戦略ではなくて、金融機関の今期の販売手数料を増加させることのほうがプライオリティーが高いのではないでしょうか?つまり、短期戦略と長期戦略の違いの問題なのではないだろうかと思います。ただ、結果的には、そういうことで日本の資産運用業界が、これも私も中におりまして人ごとのようには言えないのですが、海外の運用機関と比べて日本国内においてもなかなか競争力が持てない理由は、運用機関側の独立性であるとか、特に運用力を高めていくというようなポリシーが必ずしも機能せず、短期的なポリシーのほうが優先してしまうということにあるのではないでしょうか?

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、池尾先生、どうぞ。

【池尾委員】

はい、どうも。今日、事務局から説明していただいたような問題が存在するということはよくわかるんですよね。ただ、そうした問題の根がどこに本当にあるのかというのが、ずっとほかの方々の議論とかを聞いていても私としては何かますます混迷してきたという感じで、問題の根がどこにあるのかというのがよくわからなくなったなという感じが率直に言ってするところがあります。というのは、例えば既存の業者のビジネスモデルが顧客本位ではないということであったら、もっと顧客本位のビジネスモデルを持ち込むような業者がどうして登場してこないのか。そういう業者が登場することによって、顧客本位でないことをやっている業者を駆逐していくというようなメカニズムがどうして働かないのか、何が妨げているのか。より顧客本位のビジネスモデルを持ち込む業者というのは新規参入業者でももちろん構わないんですが、既存の業者も、多数存在しているわけですから、その中のどこかの業者がビジネスモデルをより顧客本位に切りかえていったときに、競争上、優越しないのかと。優越しないとすると、それは何ゆえなのかという、そのあたりの原因を特定化する必要があると思うんですよね。それはいろいろ考えられると思うんです。

要するに、顧客から見て、顧客本位か、顧客本位でないかというのがなかなか識別できないという、いわゆる情報の非対称性のような問題もあるし、それから、ひょっとすると、現実の顧客が望んでいることというのは、ここで理念的に想定している個人投資家の利益に沿うようなものとは実は違うという可能性もある。例えば毎月分配型の投信というのは、配当してもらったものは再投資するという人が多いとかいう話を考えると、明らかにこれは合理的でないという話になるんですが、ビヘイビオラル(行動経済学的)なバイアスを考えると、毎月払ってもらったほうがいいと思うというのが生身の投資家だったりするわけです。そうすると、行動経済学的なバイアスを持っているのが現実の人間だとすると、その生身の顧客の利益に応えているという意味では顧客本位じゃないかという話になってしまうわけです。しかしながら、それは行動バイアスなんだから、望ましくない姿なのであって、是正する必要があるとすると、それは業者にそういう意味での顧客本位の行動をとるなというような形の話になったりしかねない。だから、なぜこの場で想定しているような顧客本位のビジネスモデルがドミナントしないのかと。そちらのほうが優位性を本来持つはずなのに現実には持たないとすると、そこには一体どういう、経済学の言葉で言うと市場の失敗の原因があるのかというのをもう少しアイデンティファイしないと、ちょっとわからないなという気がしました。

それからもう一つの例としては、大銀行だとか大証券会社の系列の運用会社というのはいろいろ問題があると。社長にしてもグループ全体の人事異動の一環として決まってきて、専門家でなかったりすると。そういうようなところに対して、じゃあ、どうして独立系でもっと運用成績のいい会社が出てこないのかと。そういう話になります。じゃあ、独立系の運用会社が参入する際に参入障壁としてどういうことがあるのかというのも、これまた特定化する必要があると思うんですよね。それで、ひょっとすると、やっぱり系列の運用会社のほうが実は優秀なのかもしれない。それは日本の場合、大手ファイナンシャルグループなんかのほうが人材のリクルートとかの面で非常に優位を持っているので、日本で独立系で始めても、そもそも優秀な人材を集めることが非常に難しかったりする。それで、実は、ローテーション人事で回ってきているというけれども、全体としての運用能力はやはり系列系のほうが高いんだということだってあるかもしれない。そのあたりを含めて、ちょっと申し訳ないんですが、もう少し問題の根を特定化するような議論を深めていかないと、いろいろ現象として問題のあることは私も認めるんですが、ちょっと何か私としては混迷感が強まったということは正直言ってあります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ちょっと私も関連して、一言だけ感想めいたことで、今後、ご議論いただければと思うことを申し上げます。今後、ではどうしたらいいかということを議論していくときに、テーマは国民の安定的な資産形成を進めたいということで、そのことにはあまりご異論はないと思うのですね。そういう目標から見たときに現状はどうか。もし改めていくものがあるとしたら、具体的にどう改めていったらいいかということが、抽象的に言えば問いだと思うのですけれども、私には2つ問題があるように思います。重複はするのですけれども。1つは売り方の問題であり、もう一つは、今、池尾先生がおっしゃったこととちょっと関係するので、競争ということです。競争というものも、福田先生もおっしゃったのですけど、どういうふうにこれを進めていくかということだと思います。先ほど自動車の例が挙がっていましたけれども、ひょっとすると、「日本の常識、世界の非常識」ということでいうと、車でもスマホでも薬でも同じような面があるのかもしれません。金融商品に限って見ますと、この売り方の問題というのは一言で言えば短期主義、短期で中途解約を繰り返して次々売っていくというやり方が売り方として行われているということだと思うのですね。競争の仕方のほうは、日本だって競争は非常に厳しい社会で、過当競争などと言われ、商品の分野によってはよく薄利多売とか言われるのですけど、諸外国と一番違うのは、諸外国は違うものを売って競争するのですが、日本は同じものをやたら売って競争すると。量で競争するというところがあって、そういうことを、今後、国民の安定的な資産形成という観点から変えていったほうがいいのか、変えていくとして具体的にどうしていくのかというのが課題だと思うわけです。

それで、池尾先生ご指摘のとおり、では、短期主義で売っている人の中で長期主義で売る人がなぜ出てこないのかと。より顧客本位の販売会社がなぜ出てこないのか、あるいは異なる商品を開発して売るということがなぜ出てこないのかというのは、確かに謎なのですけれども、ここは私もよくわかりません。なかなか出てこないところに銀行があるというか、いろんな事情でそうなっているのだと思い、そこはもうちょっと分析を要するというのは全くおっしゃるとおりだと思うのですけれども、私からも皆様方に、ぜひ今後、そういう点について、このワーキング・グループの目標とするところから見て具体的にどういう仕組みを変えていく、あるいは何かを変えていくといったことについて、お知恵をお出しいただけると大変ありがたく思います。

すみません、神戸委員、どうぞ。

【神戸委員】

池尾先生の混迷を少しでも晴らせればと思うのですが、販売する商品が金融商品と実物商品とでは販社の果たす役割がかなり違うと思うんですね。金融商品の最大の特徴は、おそらく目に見えない、触れないというところだと思います。実物商品であれば、実際それを買う側も自分の趣味とか好みに合う、合わないとか良し悪しというのはそれなりに判断できる場合も多いと思われますが、目に見えない金融商品は違いが非常にわかりにくいわけです。そうなると、実際は何を頼りにして買っている方が多いかといいますと、一番多いのはたぶんブランド買いなんですね。エルメス、グッチならと言って買う方の心理と近いかもしれません。ブランドを信じる人は、鞄の縫い目が破けないかとか試して買っているわけではないでしょう。このブランドなら大丈夫だろうという選び方なわけです。金融商品を日本人が買う場合、メーカーのブランド以上に販売店の包装紙のブランド、このデパートならオーケーみたいな判断で買っている方がかなり多いというイメージを持っています。新規参入がなかなか起こりにくいといった状況の背景の一つに販売会社のブランドを頼りに買われている方が大変多いということもあると考えられます。だからこそ、フィデューシャリー・デューティーについても販売会社の責任というのが非常に大きいというのが金融商品の特徴なのではないでしょうか。

冗談みたいに聞こえるかもしれませんが、例えば家電量販店で、テレビを買いに来た人にはいくら売りたくても冷蔵庫はなかなか売れないですよね。ところが、金融商品となりますと、個人向け国債を買いに来た人がなぜか保険を買って帰ってしまう可能性が少なからずあります。購入の意思決定において販売担当者の影響力が非常に大きく働くというのが金融商品の特徴だと思いますし、新規参入が起こりにくいというのもその辺が一つの原因になっているのだろうと考えられます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、加藤委員。

【加藤委員】

ありがとうございます。まず、11ページで紹介されている投資信託販売チャネルに関して、アメリカでは日本と比べて多様であるということが挙げられていましたが、多様である原因が何かということがおそらく重要なのだと思います。日本でも投資信託の販売は第一種金融商品取引業に該当すると思うのですけれども、規制の厳しさという点ではアメリカと日本で大きな差はないのではないかという気がするのです。そうすると、投資信託の販売チャンネルが限られているという状況は、先ほどの池尾先生のご指摘でもあったとおり、規制が何らかの障壁になっているというわけではなくて、先ほど永沢委員がおっしゃったように、純粋に歴史上の経緯によって生じていると理解してよいのでしょうか。例えば、日本でも投資信託の委託会社が直販する形態はありますが、直販形態で投資信託を販売することに関して何か法律上または事実上の障壁のようなものが本当に無いのかということを、販売会社の競争を促進するという観点から調査する必要があるように感じました。

次に、24ページで紹介されていた毎月分配型投資信託についてですが、24ページの右下の図で、同じ投資先の投資信託について年一、二回決算型が設定されているにもかかわらず、毎月分配型投信を分配金再投資で買い付けている顧客の比率が記載されていますが、私も実は悩んだことがあります。つまり、毎月分配型と年一、二回決算型は、確かに投資先は同じなのですが、そのことを理解することが必ずしも容易ではなく、全く別の商品であるかのように見えるということです。たとえば、多くの場合、年一、二回決算型の方が基準価格は高いが、資産総額は低いと思います。これだけでも、投資家にとって、年一、二回決算型と毎月分配型は、投資先は同じでも全く違う商品であるかのような印象を受けるのです。しかし、専門家の方に聞いてみると、年一、二回決算型と毎月分配型でマザーファンドは同じなんですよね。もちろん、目論見書には、このことが明示されています。確かに分配方針が異なる以上、基準価格などが異なるのは当然なのですけれども、分配方針以上に、年一、二回決算型と毎月分配型が全く異なる商品であるかのように見えてしまうということが、24ページの右下の図で紹介されているある意味非合理的な行動を促している原因なのかもしれません。このような問題は、より丁寧なディスクロージャーによって解決できるのかもしれません。

最後に、24ページの「毎月分配型投信を分配再投資で買付している」という表現は、いわゆる累積投資型の投資信託の買付を指していると思うのですけれども、確かに、長期的な資産形成を目指して再投資するにも関わらず分配金に課税されてしまうので、年一、二回決算型と比べると複利効果が得にくくなるという点で合理性に疑問があります。さらに一歩進んで、累積投資型・毎月分配型投資信託に、投資商品としての合理性があるのかということを問い直してもよいように思います。もちろん、合理的な判断を行うことができる投資家であれば、累積投資型・毎月分配型投資信託の構造を理解することができると思います。敢えて、年一、二回決算型ではなくて、累積投資型・毎月分配型投資信託を選択する投資家もいるかもしれません。しかし、多くの一般投資家にこのような判断を行うことを期待できるのか、また、期待してよいのか疑問があります。特に、ある販売会社が累積投資型・毎月分配型投資信託と年一、二回決算型の双方を提供している場合、投資家が非合理的な判断を行う可能性が高まるのではないでしょうか。投資家が非合理な判断をしやすいような仕組みを可能な限り取り除く必要があるように思います。あと、蛇足ですが、累積投資型・毎月分配型投資信託の分配金の課税を繰り延べると、投資家が非合理的な判断をする危険が取り除かれるような気がしております。

【神田座長】

ありがとうございました。

福田先生、どうぞ。

【福田委員】

まず、若干、皆さんのお話を聞いて、何のために投資信託を個人資産で持たなければいけないのかという、そもそも論もやっぱり整理しておくべき重要な事項だと思うんです。個別の金融商品じゃなくて、なぜ投資信託を持たなければいけないのかという。通常の教科書的な説明は、これは平均的なリターンを上げるためではなくて、リスクを減らすためだというのが通常の説明です。これは個別の金融商品には分散可能なリスクがたくさんあって、それをポートフォリオを組むことによって減らすことができるんだというのが最大の通常の説明なんです。けれども、何となく今日の話はリターンをどう上げるかという話が集中しているというのは、通常の投資信託をなぜ持たなければいけないのかということと何かずれているような感じが全般的にはします。実際、売れ筋の商品を見ると、やはり個人が幅広く持っている資産を分散しているというよりかは、リターンを上げるにはどうすればいいかということに重きがあるようです。実際、なかなか個人では個別の商品として買えない商品が、投資信託を買えば間接的には買えるような形の商品が比較的あって、そういう意味では、もし個別に買えればそれなりにリターンを上げられそうなんだけど、個人ではなかなか買えないような商品は、投資信託を通じれば買えるので、高いリターンが上げられるみたいな感じの商品が日本では売られているような感じもあるんです。もちろん、いろいろな投資家はいるとは思うんです。けれども、非常に幅広い国民の資産形成ということを考えた場合に、なぜ投資信託というのが大事なのかという、そもそも論はやっぱり整理するということももう一つ大事なんじゃないかなとは思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

池尾先生、どうぞ。

【池尾委員】

1つ補足ですけれども、金融商品の内容というのは一般投資家から見てよくわからないという、情報の非対称性に本当に問題の根があるんだとしたら、その場合には、投資商品を評価する極めて権威のある中立的機関を育てるというのが解決策になるはずなんですね。今でもモーニングスターとかそういう会社がありますけれども、そういう会社にもっとてこ入れしてもっと権威のある機関にして、そこから高いレーティングをもらうと売れるというような構造にすれば問題は解決していくはずであって、本当に情報の非対称性が問題の根だとすると、そういう機関の育成というような政策的対応になるはずなので、それ以外の規制とか監督措置は別にほとんど必要ないはずなので、そういう意味でどこに問題の根が本当にあるのかの特定化が極めて重要だということを申し上げたんです。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

上柳委員、竹川委員の順で。上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

今日の資料と直接関係ないんですが、これからの議論との関係もありまして、一言、できれば今後取り上げていただきたいなと思いましたのが、金融商品取引法の36条に誠実・公正義務というのがあるんですが、これは「顧客に対して誠実かつ公正に」と書いてあるんですが、顧客に誰を含むのかということについて、多分、契約当事者だけなのかもしれませんが、今議論されているようなフィデューシャリー・デューティーの直接契約がない場合でも、今日議論されていたような意味での、顧客本位というような言い方をしていましたけれども、含む余地は法律的にはなかなか難しいような気もしますけれども、考えられるのかというようなことをふと思いましたので、過去の議論がもしあったら、どこかで教えていただきたいと思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。その点はまた次回以降、もともとIOSCOの原則から来ているということもあると思うのですけれども、事務局で調べていただきたいと思います。

竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】

1点だけ申し上げたいと思います。先ほど話にもありましたが、投信は残高が小さいものがたくさん残ってしまっています。毎年たくさんの新規設定のファンドが出ている中で、なぜ併合ができないのかというのは投資家としても疑問に思うところです。親会社が合併をし、それに伴って投信会社も合併され、その結果、例えばインデックスファンドにしても、同じタイプのものがずらっと並んでいますが、結局、ここ数年で一本も併合されずに来ています。運用会社に話を聞くと、販売会社さんから、手間やコストがかかると言われる、といったお話も聞きます。現実的にできるのか、できないのか。できないのであれば、どういう理由でできないのかを、教えていただければと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、その点もわかる範囲で次回またお答えさせていただきたいと思います。

そろそろ時間でございますが、池田局長、何かありましたら、どうぞ。

【池田総務企画局長】

どうもありがとうございました。冒頭から、また最後、要するに何が要因なんだという、混迷を極めたというコメントもいただきました。私自身、確定的な答えを現時点で持ち合わせているものではありませんけど、おそらくさまざまな要素があるんだろうと。それは、業者サイドの問題にとどまらず、顧客サイドのリテラシーのような問題もあるでしょうし、また、今日ご指摘のありましたように、当局の従来の手法が必ずしも有効でなかったという面も否定できないだろうと思います。その辺を深めた議論をしていけるように、事務局としてうまく運営していければと考えております。

ただ、今日冒頭、市場課長から簡単に説明をしましたが、こうしたことを考えていく出発点として、これまでの努力の中で改善している面はあるのだろうと思いますけれども、やはり多くの問題が残されているんだという状況認識から始めるべきではないかというのが、事務局として今日提起させていただいた問題提起であります。次は夏以降だと思いますので、皆さんからのお知恵をまたいただければと思っております。よろしくお願いいたします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

本日も多数の貴重なご指摘をいただきまして、ありがとうございました。本日いただきましたご意見等を踏まえ、今後さらに議論を深めたいと思います。

最後に、事務局から連絡事項等、よろしくお願いいたします。

【齋藤市場課長】

次回のワーキング・グループの日程及びテーマ等に関しましては、皆様のご都合などを踏まえた上で、後日、事務局からご案内させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

以上でございます。

【神田座長】

それでは、以上で本日は散会いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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