金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第10回)議事録

平成28年11月25日

【神田座長】

それでは、予定の時間になっておりますので、始めさせていただきたいと思います。市場ワーキング・グループの第10回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

本日ですけれども、テーマは、国民の安定的な資産形成とフィデューシャリー・デューティーということでありまして、このテーマについての5回目の議論をお願いしたいと思います。

早速、議事に移らせていただきたいと思いますけれども、このテーマにつきましては、これまで種々ご議論いただいてきまして、金融商品について顧客が支払う手数料等をめぐる問題、わかりやすい商品説明資料等をめぐる問題、それから、利益相反の管理等をめぐる問題、こういった問題などについて、既にご議論をいただいてきているところであります。そういう意味で、個別の論点について議論が一巡したと言いましょうか、一通りの1回目のご議論を終えていただいたということではないかと思います。

そこで、本日は、これまでの議論を踏まえての討議資料(国民の安定的な資産形成とフィデューシャリー・デューティー)、お手元のものですけれども、ご用意していただいております。それと参考資料につきまして、まず、事務局からご説明をいただいて、その後、皆様方にご審議をお願いしたいと思います。

それでは、事務局からの説明をよろしくお願いいたします。

【齋藤市場課長】

市場課長の齋藤でございます。私のほうから説明をさせていただきます。

まず、お手元にある討議資料(国民の安定的な資産形成とフィデューシャリー・デューティー)と表題が書かれている資料について読み上げさせていただきます。

国民の安定的な資産形成を図るためには、全ての金融事業者がインベストメント・チェーンにおけるそれぞれの役割を認識し、顧客本位の業務運営に努めることが重要である。

これまで、金融商品のわかりやすさの向上や利益相反管理体制の整備といった目的で法令改正などが行われ、投資者保護のための取り組みが進められてきたが、一方で、これらが事実上最低基準(ミニマム・スタンダード)となり、金融事業者による形式的・画一的な対応を助長してきた面があるのではないか。

本来、金融事業者自身が主体的に創意工夫を発揮し、顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い合い、よりよい取り組みを行う金融事業者が顧客から選択されていくメカニズムの実現が望ましいのではないか。

そのためには、従来型のルールベースでの対応を重ねるのではなく、プリンシプルベースのアプローチがより求められているのではないか。例えば、顧客本位の業務運営に関する原則(プリンシプル)を、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレイン・ベースでの適用を前提に策定し、金融事業者に受け入れを呼びかけていくことが考えられるが、どう考えるか。

当該原則を策定する場合、そこに盛り込むべき事項としては、例えば、別添の事項が考えられるが、どう考えるか。

なお、注書きに書いてございますが、仮に、この原則を策定する場合に、原則を定着させていくための具体的な方策については、次回、ご議論をお願いしたいと思っております。

1枚おめくりいただきまして、別添でございますが、先ほど申し上げたとおり、原則に盛り込むべき事項の案でございます。

顧客本位の業務運営に係る方針の策定・公表等。

金融事業者は、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表するとともに、当該方針に係る取り組み状況を定期的に公表すべきである。当該方針は、よりよい業務運営を実現するため、定期的に見直されるべきである。

顧客の最善の利益の追求。

金融事業者は、高度の専門性と職業倫理を保持し、顧客に対して誠実・公正に業務を行い、顧客の最善の利益を図るべきである。金融事業者は、こうした業務運営が企業文化として定着するよう努めるべきである。

注1でございますが、金融事業者は、顧客との取引に際し、顧客本位の良質なサービスを提供し、顧客の最善の利益を図ることにより、自らの安定した顧客基盤と収益の確保につなげていくことを目指すべきである。

利益相反の適切な管理。

金融事業者は、取引における利益相反の可能性の有無について正確に把握し、利益相反の可能性があると判断された場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである。金融事業者は、そのための具体的な方針をあらかじめ策定・公表すべきである。

注1、金融事業者は利益相反の可能性の有無を判断するに当たって、例えば、以下の事情が取引または業務に及ぼす影響の有無についても適切に考慮すべきである。

販売会社が、金融商品の顧客ヘの販売・推奨等に伴って、当該金融商品の提供会社から、委託手数料等の支払いを受ける場合。

販売会社が、同一のグループに属する別の会社から提供を受けた商品を販売・推奨等する場合。

同一主体またはグループ内に法人営業部門と運用部門を有しており、当該運用部門が、資産の運用先に法人営業部門が取引関係等を有する企業を選ぶ場合。

1枚おめくりいただきまして、3ページ目でございます。

手数料等の明確化。

金融事業者は、名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用の詳細を、当該手数料等がどのようなサービスの対価に関するものかを含め、顧客に情報提供すべきである。

重要な情報のわかりやすい提供。

金融事業者は、上記、「手数料等の明確化」に示された事項のほか、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客にわかりやすく提供し、顧客との情報の非対称性の解消に努めるべきである。

注1、重要な情報には以下の内容が含まれるべきである。

顧客に対して販売・推奨等を行う金融商品・サービスの基本的な利益、損失その他のリスク、取引条件。

顧客に対して販売・推奨等を行う金融商品・サービスの選定理由(顧客のニーズ及び意向を踏まえたものであると判断する理由を含む)。

顧客に販売・推奨等を行う金融商品・サービスについて、顧客との利益相反の可能性があると判断される場合には、その具体的内容(第三者から受け取る手数料等を含む)及びこれが取引または業務に及ぼす影響。

注2、金融事業者は、複数の金融商品・サービスをパッケージとして販売・推奨等する場合には、個別に購入することが可能であるか否かを顧客に示すとともに、パッケージ化する場合としない場合を顧客が比較することが可能となるよう、それぞれの重要な情報について提供すべきである。

注3、金融事業者は、顧客の取引経験や金融知識を考慮の上、明確、平易であって、誤解を招くことのない誠実な内容の情報提供を行うべきである。

注4、金融事業者は、顧客に対して販売・推奨等を行う金融商品・サービスの複雑さに見合った情報提供をわかりやすく行うべきである。単純でリスクの低い商品の販売・推奨等を行う場合には簡潔な情報提供とする一方、複雑またはリスクの高い商品の販売・推奨等を行う場合には、より丁寧な情報提供がなされるよう工夫すべきである。

4ページ目でございます。

注5、金融事業者は、顧客に対して情報を提供する際には、情報を重要性に応じて区別し、より重要な情報については、特に強調するなどして顧客の注意を促すとともに、顧客において同種の金融商品・サービスの内容と比較することが容易となるよう配慮すべきである。

顧客にふさわしいサービスの提供。

金融事業者は、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズを把握し、当該顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべきである。

注1、金融事業者は、複数の金融商品・サービスがパッケージとして提供された商品を顧客に勧める場合には、当該パッケージ全体が当該顧客にふさわしいかについて留意すべきである。

注2、金融商品の組成に携わる金融事業者は、金融商品の組成に当たり、金融商品の特性を踏まえて、販売対象として想定する顧客属性を特定するとともに、金融商品の販売に携わる金融事業者において、それに沿った販売がなされるよう留意すべきである。

注3、金融事業者は、特に、複雑またはリスクの高い金融商品の販売・推奨等を行う場合や、金融取引被害を受けやすい属性の顧客グループに対して商品の販売・推奨等を行う場合には、商品や顧客の属性に応じ、当該商品の販売・推奨等が適当かより慎重に審査すべきである。

注4、金融事業者は、従業員がその取り扱う金融商品の仕組みなどに係る理解を深めるよう努めるとともに、顧客に対して、その属性に応じ、金融取引に関する基本的な知識を得られるための情報提供を積極的に行うべきである。

従業員等に対する適切な動機づけの枠組み。

金融事業者は、顧客の最善の利益を追求するための行動、顧客の公正な取り扱い、利益相反の回避などを促進するよう設計された報酬・業績評価体系、従業員研修その他の適切な動機づけの枠組みを整備すべきである。

討議資料は以上でございます。

もう一枚、参考資料をご用意しております。先ほどの討議資料で、顧客本位の業務運営に関する原則を策定する場合に盛り込むべき事項として、7つの項目を立てさせていただいております。参考資料は、その7つの項目の概念的な関係を図で整理してございます。

まず、1つ目に書かれている顧客本位の業務運営に係る方針等の策定・公表等をすべきであるという項目があり、顧客本位の業務運営とは何かというものが2から7に書かれていると。その一番大きな目的とか目標といったものが2に書かれている顧客の最善の利益の追求ということでございます。

顧客の最善の利益の追求の中身として、大きく3つ内容的には分類できるであろうと。

1つは、3に書いてある利益相反の適切な管理、4と5というものは、金融商品・サービスに係る重要な情報を提供して、顧客が合理的な選択ができるようにするということ。特に手数料等に関しては、顧客の合理的な選択において重要な役割を果たすという観点から、1つ別の項目を立てさせていただいているということでございます。

最後に、6に書いてありますように、顧客にふさわしいサービスの提供ということで、金商法で言えば、適合性の原則に当たりますが、必ずしも適合性の原則という表現にとどまらず、顧客にふさわしいサービスの提供をするべきであるというものでございます。

このような広い意味での顧客の最善の利益を追求といったものは、金融事業者の現場の営業職員まで浸透して実践できるためには、7番にありますように、従業員等に対する適切な動機づけの枠組みといったことが必要であろうということでございます。

このような2から7に掲げているもの、全体が顧客本位の業務運営というものを構成すると思われますので、全体に係る方針に関して策定・公表をし、その取り組み状況について定期的に公表した上で、さらに必要があれば、大もとの方針というのを見直していく、PDCAを回すということが求められるのではないかという構成になっているところでございます。

このような顧客本位の業務運営に関する原則に盛り込むべき事項について整理をさせていただきましたので、ご議論をいただきたいと思います。

私からの説明は以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、討議に移らせていただきたいと思います。どなたからでも、どの点についてでも、ご質問、ご意見等をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

今日、資料を頂戴しまして、私としては、画期的な取り組みではないかと思います。もちろん、いわゆるルールの充実であるとか、あるいはルールベースの監督・検査がおろそかになってはいけないとは思いますけれども、やはり色々と経済情勢が変わり、あるいは新しい金融商品の流れがあちこち国外からもあり、それから、何よりも消費者なり、あるいは国民のニーズがそれぞれ多様化している中で、個別の業者の方々が対象とする顧客に合った仕事をしていただく、それが直接ユーザーに、あるいは消費者に、直接向かい合う方だけではなくて、金融商品をつくるサプライチェーンというのでしょうか。あらゆる段階でそのような原則を踏まえて、それにどのように対応していくのかということを工夫していただく、形としてはその原則を立て、その上で、それを一律に当てはめるのではなくて、コンプライ・オア・エクスプレインという手法なのでしょうか。個社の工夫を開示していただく手法というのは大変大事かなと思います。

各論のほうは少しだけにいたしますけれども、特に、各項目について注をつけていただいておりますけれども、例えば、3ページの「重要な情報のわかりやすい提供」の注2のところ、これは最近の消費者の方々からの法律相談そのほかをやっている中では、大変重要な視点ではないかと思います。パッケージ商品といいますか、組み合わせ商品といいますか、そのようなものについて、単に情報提供とか説明とかいうよりも、やはりどういう要素が入っているのかということを踏まえて、「個別に購入することが可能であるか否かを顧客に示す」というあたり、大事なところだと思いました。

それから、4ページ の「顧客にふさわしいサービスの提供」の注3として、これも従来、適合性原則の遵守ということを叫ばれてきたわけですけれども、より踏み込んで、各社において慎重に審査すべきであるという形で、適合性原則を実質的に実現していくというところが出ているかと思います。

最後の「従業員等に対する適切な動機づけ」というところですけれども、上田委員が前回指摘されたようなことも含めて、会社の中でどのような報酬体系、あるいは昇進体系についてもきちんと原則として立てていくというところは大変重要かと思います。

最後に、繰り返しになりますけれども、ルールベースの施行なり、あるいは履行強制が不要だとか後退するということではなく、プリンシプルベースという手法で包括的、あるいは総合的に、目指すところの国民の安定的な資産形成とにつながっていけばと思いますし、これに沿った監督・検査も含めてなされていく、そのための重要な指針を示すものになると思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。隣の大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

ありがとうございます。私もこういったプリンシプルを定めて、その遵守を求めるという基本的な方向性は大変結構なことではないかと思います。

それで、ちょっと気になる点を二、三申し上げたいのですが、まず1つは、「金融事業者は」と書いていますが、基本的には、金融庁の監督対象であるような、かつ消費者、投資者、特に、個人がイメージされているように思うのですけれども、と直接向き合うような金融事業者は幅広く包含するという形にするべきだと思っております。例えば、具体的に言いますと、第二種金融商品取引業者とか、あるいは投資助言業者とか、どうしても今までのきめ細かい監督という観点から言うと、抜け落ちがちになっていたのではないかと思うようなタイプの業者の人たちにも、ぜひこういうことを実践してもらうようにしないといけないというのが1つです。

それからもう一つは、こういうプリンシプルをつくるというのは、2008年でしたか、金融サービス業のプリンシプルということで、金融庁として前にも定めておられたわけですが、そのときにこのプリンシプルの規範としての使い方というのは、例えば、ルール違反が行われてしまったような場合であっても、プリンシプルをしっかり守っている場合には、それをいわば斟酌して対処するよということが書かれていたと記憶しています。

ただ、こちらについては、それと全く同じという扱いにはなかなかしにくいと思うのですが、つまり問題意識として、1ページに今のルールがミニマム・スタンダードとなっていて、いわばルールさえ守っていればいいとされていても、実は、形式的にはルールに沿ってはいるのだけれども、プリンシプルから言うと問題だと思われるような行動もあるという問題意識のもとに、今度はプリンシプルをつくるということですから、前回のプリンシプルとは、いわば使われ方が逆の方向を向く可能性がある、向いちゃいけないと言っているのではないのですが、という気がいたします。

ただ、一方で、プリンシプルに違反したというので、どんどん行政処分がなされるということになりますと、これはまたこれで非常に予測可能性が低下し、萎縮効果も大きいと思います。だからといって、プリンシプルを無視していいなんて言っているわけでは全くないのですが、ルールに沿っているかのような行為でプリンシプルに違反しているからといって厳しい処分の対象になるというものでは必ずしもないというのは、1つ明確にしていただく必要があるのかなと思います。

それから、最後にもう一点ですが、これはちょっと細かいことで申し訳ないのですが、非常に気になったのでぜひ申し上げますと、4ページの「顧客にふさわしいサービスの提供」のところの注2でありますが、金融商品の組成に携わる金融事業者が、商品の特性を踏まえて販売対象として想定する顧客属性を特定し、かつ特定されたものを販売業者もそれに沿った販売をするようにすべきだという書き方がされています。これは例えば、ある種の投資信託なんかの組成の場面ですと、なるほどと腑に落ちる点もあるのですけれども、他方で、組成者が販売先をいわば限定してしまうようなやり方を販売業者に対して強制するという逆の力関係が働くことも考えられます。この辺は、販売する側とつくる側がよく話し合って適切に処理していくべきものだと思いますので、言ってみれば、これは例示のようなものだと理解したいと思うのですが、できればこの注2はなくてもいいのかなと思う次第です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

投資者と直接の契約関係に立たないような金融業者も含めて、フィデューシャリー・デューティーを果たさせるために、プリンシプルベースの規範を定めて、その受け入れを呼びかけているというのは適切なやり方だと思います。ここに書かれている内容もよくここまで踏み込んで書かれたなと思うのが多いのですけれども、少し気になる点を二、三指摘して、ご質問したいと思います。

全体の第1のところで、「顧客本位の業務運営に係る方針の策定・公表」という大きな方針の策定・公表が書かれていて、それ以下の項目については、具体的な方針を策定・公表すべきであると書いてあるものと、そうではなくて、個別の顧客との間で情報提供すべきであるとか、留意すべきであると書いてあるものがあります。情報提供すべきであるとか、留意すべきであると書いてある点についても、大もとの方針の策定・公表のところで、ある程度のそれぞれの金融事業者の方針が公表されると考えていいのかという点をまずお伺いしたいと思います。

それから、ちょっと具体的な話になるのですけれども、例えば2ページの「利益相反の適切な管理」のところの注の最初のポツのところで、金融商品の提供業者から委託手数料等の支払いを受ける場合には、利益相反の可能性の有無をきちんと判断しなさいということが書いてあるのですが、例えば、委託手数料の多寡に関わらず、顧客本位の販売・推奨を行いますという方針を決めて、それを公表するだけで果たしてこの趣旨が守られるのか。これは原則を定着させていくための具体的な方策についての話なので、次回の問題になるかもしれませんが、こういう書きぶりで、上のところに「具体的な方針」とは書いてあるのですけど、以下の点にも考慮すべきであるというだけでは、少し踏み込みが足りないのかなと感じます。

それから、3ページの「重要な情報のわかりやすい提供」の注2のところですけれども、これも私は画期的なものだと思うのですが、「個別に購入することが可能であるか否か」というのは、その金融事業者から購入することが可能という意味なのか、それとも一般的に別々の金融事業者に行けば買えるというものも含むのか、やや不分明な感じがします。その会社で買えないということだけ言えば、選択肢はこれしかありませんと言えてしまうので、一般的に個別に購入可能である場合には、その旨を示すべきだと思いますので、そのことを明確にしていただければと思いました。

最後に、4ページの「顧客にふさわしいサービスの提供」で、今、大崎委員が指摘された注2のところですけれども、私も大崎委員の言われるような問題はあるとは思いますが、この「留意すべきである」というところでは、我が社では留意していました、常に留意しています、留意するようにしますという方針を掲げて、それを公表すれば済む話なのか、具体的にどういう方法によって留意しているのか、例えば、組成にかかわる金融事業者が販売するときに条件を付すのか、申し合わせをするのか、あるいはそれができないときにはどうするのかといった点まで踏み込まないと、これも実効性の確保の問題かもしれませんけれども、このままでは目的を達することはできないんじゃないかと思います。大崎委員の言うような問題があることは確かですけれども、できることとできないことがあると思いますので、だからこそコンプライ・オア・エクスプレインということになっているはずなので、できるものには、内容についても策定・公表させるやり方が望ましいのではないかと思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。質問だったと思いますけれども、いかがでしょうか。

【齋藤市場課長】

今の黒沼委員からのご質問に関して、1つ目の「利益相反の適切な管理」について、「方針を策定・公表すべき」と書いてあれば、ほかのところは必ずしも書いてないけれども、全体としては、「顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表」と書かれているので、残りの部分についても、きちんと方針を策定・公表なされるのかということに関しては、この提案をしている我々とすれば、それは全てのものに関して、明確な方針の策定・公表をしてもらいたいと考えているところでございます。

それから、次に、個別の商品が購入可能であるか否かを示すにあたって個社においてなのか一般的になのかということに関しては、そこは我々とすれば、一般的にそういうものが購入可能なものであるかどうかということのつもりで書いているものではあります。

ただ、いずれにしてもプリンシプルというものに関して、ベストプラクティスを求めるためのものだと考えておりますので、あまり細かく書くと、非常にルールベースのものにどんどん近づいていってしまうということが我々としても考えるところでございますので、今、ご指摘いただいたような点に関しては、やはりこれを受けとめた金融事業者の側において、適切に判断をした上で、顧客本位の業務運営を進めるためには、じゃあ、どういうふうにこれについて示すべきなのか、顧客が比較できるように情報提供するというのはどういうふうにしたらよいのかということについて判断をした上で、創意工夫を発揮していただき、また、顧客のほうからよりよい工夫をしたものが選ばれるといったメカニズムが実現するということが望ましいのではないかと思っております。

そういう意味では、その後に指摘をいただいた「顧客にふさわしいサービス提供」の注2のところに関しても同様のことかと考えているところでございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、永沢委員、林田委員の順で。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。今日お示しいただきました案といいますのは、世の中で今、スチュワードシップコードとか、ガバナンスコードという言葉をよく聞きますけれども、おそらくそれの。個人を対象にした金融サービスに関するバージョンなのだろうと私なりに理解しながら読ませていただきました。大変画期的なものだと思っておりますが、まず、2つばかり質問がございます。

1つは、私はコードと勝手に呼ばせていただきますが、このコードは金融庁が発表するのではなくて、金融審の報告書の中で出されるもの、すなわち、本ワーキング・グループの委員で議論した結果がこのような形で出されるという理解でよろしいでしょうか。というのが、まず1点目の質問でございます。

【齋藤市場課長】

まず、ここで最初のページに書いてございますように、原則を策定する場合に盛り込むべき事項として、別添のような事項が考えられるかどうかと、本日、討議資料をつくらせていただいております。

それから、次に、金融審議会というものの法令上の立てつけが何かを決めるということに必ずしもなっていない、むしろ行政府に対して意見を提言するという形になっているということを考え合わせますと、仮に原則をつくるということであれば、原則に盛り込むべき事項について審議会のほうから報告書等々の形でご提言をいただいて、それを受けとめた行政府である金融庁のほうで原則を策定するということが一般的には筋かと考えられるところでございます。

【永沢委員】

ありがとうございます。そのような流れでこの原則が世の中に出ていくのであろうということを確認させていただいた方が、事業者の方々にはより受け入れやすいだろうと思いまして、説明をいただいた次第です。

2番目の質問としては、これは大崎委員からもご指摘があったところですけれども、金融事業者という言葉は広く捉えるべきであろうと思う一方、どのあたりまでを指すのかというところが、今までの議論の中では不明確でした。例えば、独立系、IFAとかいう言葉も出てきたり、今まだない業態も出てきたりしております。先ほど大崎委員からもあった第二種とか、助言という事業者の問題もありますので、どのあたりまでというところが説明としてあった方が望ましいと思います。後でご説明いただけたらと思っています。

それから、あとは意見になります。

まず、4ページのところです。先ほど上柳委員と大崎委員から異なるご意見が出たところですが、私は、上柳委員同様、このところはぜひ残していただきたいと思っております。上柳委員からもお話がありましたように、実際のトラブルの現場では、どうしてこういう商品がつくられたのかと驚くような複雑なものが多く売られております。また、(前の投信法制の見直しワーキング・グループの時に、投信業界の代表の方が、)自分たちは部品をつくる業者に過ぎない、販売金融機関が適合性を判断して部品を組み合わせて販売されるのだから、そこは販売側の担当者が考えればよいというような話をされました。しかし、以下は私の持論でもございますが、商品を組成する段階から、スータブル・インベスター、すなわち、どういう人が買うべきかかということを想定しながら商品をつくらなければ、商品の管理というものもできないと思いますし、投信会社は受益者に対して受託者責任を全うすることは難しいのではないのではないでしょうか。ぜひこの一文は残していただきたいと思います。

次に、黒沼委員のご指摘についてですが、確かに目的しか書いてなくて、遂行していく上でどのようにあるべきかいうところが、もう少しあっていいのかもしれませんが、業界なり個社で自主的に考えていただいていただいた方が私は良いように思います。

それから、いろんな問題が今回の市場ワーキング・グループで出てきているわけですが、これも、製販分離が金融商品・サービスの分野で一段と進み始めていることに起因しているのではないでしょうか。そうした流れの中で、金融商品を組成し提供する事業者、販売・仲介する事業者、その他にもいろんな事業者がインベストメント・チェーンに関わるようになっているわけで、それぞれの事業者が、提供する商品やサービスの改善に努めていただくと同時に、商品・サービスの対価は(予想されるリスクとリターンからみて)幾らが適正なのかという点についても検証をお願いしたいと思います。手数料というのはそういったところで決まるべきであるとのようにも思います。決して安ければいいと言っているわけではなく、いくらが適正なのかということを、事業者の方で常に追いかけていただくことをお願いしたいと思います。

また、この度、利益相反の項目が出てきておりますけれども、これはいっそう製販分離を促すことになり、競争をこの分野に導入することになって、競争の結果、よい商品が提供できるようになってくれればよいと思いますが、競争がうまく働くのかどうかというと、必ずしもそうでもないケースもありますので、そういった場合に、やはり行政のほうからチェックを入れていただくこと、また、市場の参加者である我々も賢い投資家・消費者になり、選択をしていかなくてはいけないのだろうと思っています。

最後になりますけれども、良質な金融商品・サービスという言葉が随所に出てきているわけですけれども、これの定義というのは、個社がご自分で考えられるべきであろうと思っています。消費者は多様であり、コストが安いものがいいと思う消費者もいれば、コストが多少かかっても親身なサービスがいいという消費者もいるでしょう。ここは、それぞれの個社の経営戦略の問題として努力されるべきだと思っておりまして、右に倣えとなりますと、結局のところ、消費者にとってマイナスな結果になるのではないかと思っております。金融事業者の皆様には、自分のところの良質な金融商品・サービスとはどういうものかというのをお考えいただき努力をお願いしたいということを最後に申し上げて終わりとさせていただきたいと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。ご質問として、金融事業者の範囲という点があったかと思います。いかがでしょうか。

【齋藤市場課長】

この討議資料において、金融事業者という言葉を使わせていただいておりまして、また、その定義というものを書いてございません。それは、逆に金融事業者というものに関して、定義をあらかじめ定めないほうが望ましいのではないかと考えているところでございます。もちろん、例えば日本の顧客を全く相手にしてないような、そういう人はどうなのかということもあろうかと思いますし、資産形成と何の関係もないサービスであるということに関して、じゃあ、どうなのかということもあろうかとは思いますが、いずれにしても、我々としては、ここに関してあえて定義を置かずに、むしろ原則に示された考え方について受け入れて、その原則を踏まえた上での業務運営をしたいという事業者の方には、幅広くこれを受け入れて行動していただきたいと考えているところでございます。

そういう意味では、必ずしも金融庁が所管していない方であったとしても、これを受け入れて業務運営をしていただくということもあり得るのではないかと思っているところでございます。

【永沢委員】

ありがとうございます。

【神田座長】

それでは、林田委員、神戸委員、島田委員、神作委員の順で、林田委員、どうぞ。

【林田委員】

ありがとうございます。今回のこの文書は、冒頭の論点部分も、また別添の文書も、いずれも表現が平易であって、要領よくまとまっているなと、政府の文書にしては珍しいぐらい読みやすかったと、まず言っておきたいと思います。

肯定的な意見は皆さんおっしゃっているので、私も一緒なのですけれども、やはりルールベースの規制とプリンシプルが車の両輪のようになって、顧客本位の業務運営が定着・深化していくということを期待したいと思っています。

ここからは質問めいてしまうのですが、原則の部分について、太字で書いた部分と注の部分に分かれておりまして、太字の部分を読みますと、至極もっともだと思います。いずれにしても当然の内容であって、業者にしてみれば、改めて言われるまでもないよというぐらいのものなのかなと。だからこそ、具体的にどうやっていいのかなと考えると、なかなかこれは難しいということになるかと思います。

それでは困るのでということで、多分、注というのがついているのかと思いますけれども、原則というのは、太字の部分のことを言っているのか、注も含めて言っているのか、原則と注の部分との関係ですね。これはほんとに注なのかというのが若干ありまして、実はこれは細目であって、これを守れば十分であるともとられかねないというおそれがあるのではないかと危惧しております。

上に政策あれば下に対策ありですとか、みんなで渡れば怖くない式の横並びとか、そうなってしまっては、せっかくの今回の取り組みも大分価値が落ちてしまうと思いますので、その辺の考え方を念のため確認しておきたいと思います。

【齋藤市場課長】

まず、この原則、プリンシプルというものに関しては、顧客本位の業務運営をする上で、ベストプラクティスを目指してほしいというつもりで書いているものでございます。その前提に立った上で、太字の部分と注書きの部分ということでございますが、注書きの部分というものが原則に入るのか入らないのかというのは、考え方というか、分類学の問題かもしれませんが、ベストプラクティスを求めていく上で、少なくともこういうことには留意をしてほしいというつもりで書いているものでございます。そういう意味では、ここの注書きに書かれているものが守られていれば、原則は達成できているという類いのものではないと考えているところでございます。

【林田委員】

わかりました。

【神田座長】

ありがとうございました。それでは、神戸委員、島田委員、神作委員、鹿毛委員、竹川委員で、神戸委員、どうぞ。

【神戸委員】

ありがとうございます。顧客本位の業務運営に係る方針策定の全体像として、大変よい形でまとめていただいていると思います。わかりやすい構成になっておりますし、充分な内容といえるのではないでしょうか。おそらく重要なのは、先ほど、黒沼委員からもご指摘があった通り、実効性の確保であろうと。プリンシプルの内容、精神が各事業者の本部で受け止められるだけではなくて、実際に営業の現場にどうやったら浸透していくのかというところを、各社に真剣に考えて頂くことが一番重要になるのではないかと思っています。

金融庁さんが出されている金融レポートや金融行政方針も非常に平易な言葉で書かれていて、わかりやすい内容になっていると思いますが、最近ある銀行の支店長研修の講師をやらせていただいた時に受講された支店長さんたちに伺ったところ、すでにレポートは3回出されているというにも関わらず、一度も読んだことがない方が大多数という状況でした。これは非常に残念なことだと思いますし、真剣に読んでいただければ、今回議論している問題点やその背景についてもほとんど書かれていますから、実際にある程度は問題意識を持っていただけているのではないかと思うのですが、将来の役員候補である支店長さんクラスでも読んでいないという状況なわけです。地銀さんとなると現職の役員さんですら読んでいないところもあるようです。そういう現実を考えると、いかに実効性を持たせるかというところが、そして営業現場にいかに浸透させていくかということが非常に重要になると思われますので、次回はその方法論について議論できれば、と思っています。

それから、個別の部分についてですが、今回おまとめいただいた項目の2番目の「顧客の最善の利益の追求」に関して伺いたいと思います。顧客の最善の利益というのはどういうことか、何が最善なのかということについてのご見解です。投資の世界というのは、最後は自己責任になりますので、選択の自由があっての自己責任でないとまずいのではないかと考えられます。これが顧客にとって経済的な最善策だとある事業者が判断して、それだけを顧客にアピールすると、逆に選択肢がなくなってしまう可能性もあるのではないかと思いまして、この表現が経済的に見て最善、利益の側面だけを指しているのかどうかということが気になりました。顧客によっては多数の選択肢があるほうが良いと考える方もおられると思いますので、6番目の項目である「顧客にふさわしいサービスの提供」との関係で、どういうふうに捉えればいいのかというのが一つ目のご質問です。

次に、4番目の項目である「手数料等の明確化」に関してのご質問です。以前ご指摘させていただいたように、生活者が投資型商品を購入する時には、やはりアドバイスが欲しいと思っている場合が多いと考えられます。この場合、販売手数料がアドバイスに対する対価ということになりますと、有料でのアドバイスということになってしまいますので、投資顧問業法との関係がどのようになるのかというところは、議論が必要ではないのかと思うのですが、このあたりについてのお考えを教えていただけるとありがたいと思います。

【齋藤市場課長】

まず1点目の「顧客の最善の利益」のところでございますが、まさしく神戸委員がおっしゃられたように、ここでの最善の利益というのは、単なる経済的な利益が一番得られるものということではないと考えております。まさしく顧客がどういうことを求めているのか、先生がおっしゃられるように、複数の商品を比較して教えてくれれば、それが自分にとって一番してほしいことなのだというお客さんもいらっしゃると思いますし、そういう方には無理に何か1つのものをお勧めするのではなくて、複数のものをお勧めするというのは、そのお客さんにとって最も望ましいこと、やってほしいことだと思いますし、あるいはリスクは高くても一定の要件を満たしている限りハイリターンのものが得られるような商品を求めている方にとってみれば、それが最善のものなのかもしれません。お客様個人で最善の利益というのは変わってくると思いますので、まさしく1つの正解はないのだろうと思っています。そういうものをどうやって顧客の立場に立って、顧客目線でサービスを提供していく、あるいは商品を提案していくということを図ってもらいたいというのが、顧客の最善の利益を図るという意味だと私は考えております。

それから、手数料のところは、投資顧問業ではない方がアドバイスをする場合にどうなるのかということをおっしゃっておられるのでしょうか。

【神戸委員】

そうですね。

【齋藤市場課長】

それは法律に、つまり法律をオーバーライドするようなものではないので、法律上できるもの、できないもの、手数料を取ってはいけない方は、多分いずれにせよ取ってはいけないと思いますし、手数料というものを法令上も取って差し支えない方が、その手数料をどういうサービスの対価として提供しているのかということであって、仮に無料でサービスを提供するということであれば、手数料がかかっていないので、そこに関して情報提供する必要はないのではないかと思います。それでお答えになっているでしょうか。

【神戸委員】

例えば、金融機関は投資信託の販売手数料を得ているわけですけれども、この販売手数料の中にアドバイスに対するものが含まれているのかどうなのかということです。現状、金融機関は、アドバイスは無料で行っているという形になっているわけですが、その結果、販売手数料はパンフレットなどで商品の内容を説明して、代わりに事務手続きを行うための手数料ということで顧客が認識したのでは、すごく高い手数料と感じてしまう顧客も多いでしょう。アドバイスを加えてもらって買いたいと思っている顧客の割合は高く、アドバイスに対してであればある程度の手数料を払ってもいいかなと思う顧客の「この販売手数料は何に対する対価?」という疑問に対して、「これは販売に対する対価です」という答えを返し続けていたのでは、提供されているサービスの内容に対しては高いと感じてしまうのではないかと思うわけです。そのかわりに、「アドバイスに対する対価です」と言えば、顧客も納得してくれる可能性が高いでしょうが、それでは有料でのアドバイスになってしまうのではないかと思われますので、そのあたりをどう考えればいいのかということなのですが。

【齋藤市場課長】

わかりました。その点に関しては、今までの法令解釈を変えるようなものとして、このプリンシプルをつくっているわけではないので、個別具体の事例に沿って、どういうたてつけにすると問題になるかというようなことに関しては、今後整理をする必要があろうかと思います。

【神戸委員】

わかりました。

【神田座長】

それでは順番で、次は島田委員、どうぞ。

【島田委員】

顧客本位の業務運営というのは、一般のサービス業では自明のことだと思うのですけれども、こと金融商品に関しては、繰り返し、長年こういうことが課題になってくるというところで、金融業の特殊性があらわれているのではないかと思います。今回その特殊性を、ポイントを上げて整理をしていただいて、これを解決していただくアプローチということで、私の頭も少しすっきりしてまいりました。大変ありがたく思います。これについて具体的に落とし込んで実行していくと、金融業界自体がかなりわかりやすく、よりみんなのためになる業界になるのではないかと思って、非常に期待をしております。

細かいことはあまり言いたくないのですが、1つ、まずは4番目のポイントの手数料のところには注釈が全然ないのですけれども、ここでちょっと気になったことを。開示をするとか説明をするということに関しては、公募投信ではかなり一般的な説明について記載されるようになっておりまして、これは一歩前進かなと思っております。ただ、ほかの金融商品については、手数料や内包されているコストに関して明示されていないものがかなりありまして、その点は最低限、公募投信並みの開示をしていただきたいという希望がございます。

一般的な単純な商品はいいのですが、複雑な構造の商品になってくると、部分ごとのコストに対して明示していただいていても、全体でどの程度のコストを払っているのかといったことがわかりにくくなってくることがあるので、こういう点に関して、次回の議論になるのかもしれませんが、投資家に全体像がわかるような開示をしていただければと思います。

もう一つ、そもそもの金融商品や金融サービスに対するコストの水準というものについて、何をもって妥当な水準とみなすのかということも議論が必要なのかなと思います。現状でコスト、例えば私がよく知っているところで言うと、投資信託などについても、隣がこのコスト水準だからうちもいいよねという感じで高止まりしたり、現在のように非常に熾烈なディスカウント競争が起きたりというようなことになってきている部分もあるので、アセットの規模とコストの関係もあると思いますし、お客様が得られるリターン、いわゆる期待リターンとコスト水準の関係もあるでしょうし、ビジネスに実際にかかってくるコストをどこまで反映するかという問題もあると思います。そういったことについて議論をしていったほうがよいのかなと感じました。

3ページ目の5番目のポイントですけれども、「重要な情報の分かりやすい提供」という部分では、金融ビジネスがどんどん発達していく中で、事業者と一般顧客との知識の格差、非対称というのは非常に大きくなっていて、わかりやすく開示をしていただくこと、具体的に開示をしていただくことは非常に重要ですけれども、それだけで十分なのかという問題があると思います。その中で、その非対称を埋めるための中立的な情報分析者、あるいは情報の提供者、アドバイザーという存在が、顧客に対して通訳としての役割を果たすことを期待できると思います。そういう方たちを顧客に準じる、顧客のための通訳の役割を果たす人たちに対しても、公開で販売している金融商品については、さまざまな情報を積極的に開示していただく必要があるのではないかと思います。

これは例えばなんですけれども、私も全くの素人で、保険商品などは現時点では見ても全然比べることができない、わからないというふうにも思います。あるいは投信の業界で言いますと、ラップ口座等になりますと、一任勘定なのでお客様には説明します。お客様にサービスしています、情報開示もしますということであっても、外から見ると、それぞれの金融機関がそれぞれのお客様に対してどのようなコスト水準で、どのようなクオリティーの、あるいは内容のサービスを行っているかということがわからない状態になってしまうということですと、この通訳の担当は何もできない状況になってしまって、ひいてはお客様も、例えば、じゃ、自分はどこの金融機関で口座を開くのがいいのかな、どことどこに話を聞きに行って決めればいいのかなということができない。ここはぜひご検討いただければと思います。

それから、3ページ目の注2ですけれども、複数の金融商品・サービスをパッケージとして販売・推奨する場合、このご指摘は非常に重要なポイントであると思っておりまして、あれもついている、こっちも便利ですといった商品は、そもそも何のためにその金融商品が必要なのかという、お客様自身のニーズの自覚を非常に曖昧にしてしまって、いっぱい(機能が)ついていて得だよねとなってしまうことが多々あります。さらに、パッケージにすることによって内容がわかりにくくなって、コストがより高くなってしまうという商品の傾向もあるので、お客様に対して、よりシンプルな、個別の商品の組み合わせを選択できるような情報提供というのは、ご指摘のとおり、ほんとうに不可欠だと思います。

それから、4ページ目の6つ目のポイントの注2ですけれども、「顧客にふさわしいサービスの提供」についてというところで、長い間、私の心のどこかに引っかかっていた点をご指摘いただきました。それが注2の部分で、製造者は製造が本務であって、それを誰にどのように売るかは販売者の問題であるというような認識が、業界の中では一般的であると感じることがままあります。ですから、これについて、自分のつくったものが誰にどのように売られるか、製造者なりにある程度の想定をしていくことも、特に複雑な商品においては必要になってくるのではないかということを常々感じておりましたので、ご指摘いただいて非常にありがたいと思いますし、ここはほんとうに重要なポイントだと思います。(仕組の)難しい商品についてですが、知らしむべからず従わしめよ、のような形でお客様を飲み込んでいくのではなくて、やはりお客様にもわかっていただく、それから適したお客様に売っていくということが非常に重要な点になってくるので、ここをしっかり意識していただけると、適合性の原則の遵守というのがさらに一層進むのではないかと思います。

どうもありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、神作委員、鹿毛委員、竹川委員、加藤委員の順で。

神作委員、どうぞ。

【神作委員】

ありがとうございます。本日このような形で、プリンシプルベース・アプローチによりながら、顧客本意の業務運営という大きな最終的な目的を実現するための7つのプリンシプルを明らかにしていただき、かつ、コンプライ・オア・エクスプレインというエンフォースメントのメカニズムも内在した形でご提案いただいたことは、非常に意義の深いことであると思います。

既に金融事業者に対しては膨大な法的ルールが課されておりますけれども、このようなプリンシプルのもとで、これを受け入れた金融事業者が、プリンシプルを個別化して、みずからの業務の中に内部的に規範化していくことによって、次の2つの大きなメリットがあると思います。

第一は、既に存在するルール自体についての趣旨をもう一度確認し、みずからの業務に関する、いわゆる非法的な規範も含めた規範の体系の中に有機的に位置づけることによって、既に存在しているルールをよりよく履行される可能性があると思います。さらに第二に、このようなプリンシプルを各業者が個別化し、いわば法の要求を超えた次元で発展させることによって、業務自体が高度化し、専門性が深化する可能性があると考えられます。私はそのような理由から、本日いただいた方針を基本的に推進すべきであると思います。

このことに関連して一言申し上げます。先ほど、金融庁がこのプリンシプルをつくられるということで、私もそのことに賛成でございますけれども、このようなプリンシプルの問題点としてよく言われる、正統性がどれだけあるのか、あるいは民主的な手続を経ているのかといういわゆるソフトローに共通する批判に対して備えておく必要があろうかと思います。金融庁がこのようなルールを金融事業者の行動規範として策定した場合には、1番のプリンシプルのところで、金融事業者自身には定期的な見直しを要求しておられますけれども、プリンシプル自体も定期的な見直しをして、実質的な正統性と申しますか、プリンシプルの中身自体が適切妥当であるということを、少なくとも手続的に確保することが重要であると思います。以上がまず第1点でございます。

第2点に、先ほど神戸委員からベストインタレストとは何かという問いかけがございました。その点にも関連いたしますけれども、私の理解では、顧客のベストインタレストというのは、基本的には顧客自身が合理的に判断して決めるべき問題であると思います。しかし、顧客に提供されているさまざまなサービスや金融商品が、顧客の利益のためにと考えて提供されているわけではない、すなわち、顧客の利益以外の様々なインセンティブに基づいて提供されているというおそれや疑いについて、できるだけそれを払拭し、コントロールすることが重要であると考えております。

本日のプリンシプルの中では、例えば「利益相反の適切な管理」ですとか、「手数料等の明確化」、それから「顧客にふさわしいサービスの提供」、また「従業員等に対する適切な動機づけ」、これらの項目のかなりの部分は、顧客の利益のために、あるいは顧客本位で当該金融商品や金融サービスが提供されているということを、できるだけ客観的に、あるいは組織的に説得力を持って位置づけていくための工夫の一環であって、プリンシプルの中で非常に重要な地位を占めているものだと思います。それとともに、顧客が合理的な決定をするためには、重要な情報がわかりやすく提供され、当該顧客にふさわしいサービスが選択肢として提示されることが必要です。すなわち、資料の3ページおよび4ページの5番目と6番目に記載されているようなことと相まって、顧客が合理的な決定をすることができるということであると私は理解しております。

それから、今の点にも関連して、細かなことなのですけれども、情報の非対称性の解消という文言が出ております。資料の3ページ、「重要な情報の分かりやすい提供」のところで、重要な情報を顧客にわかりやすく提供し、顧客との情報の非対称性の解消に努めるべきであると記載されています。情報の非対称性の解消は確かに非常に重要な問題なのですけれども、しかし情報の非対称性がほんとうに解消されてしまうと、フィデューシャリーの関係ではなくなるのではないかと思います。そのような意味では情報の非対称性の解消はある程度は目指すべきだとは思いますけれども、究極的に目指すべきものかというと、やや書き過ぎではないかという気がいたします。むしろ、重要な情報を顧客にわかりやすく提供して、顧客の合理的な判断ないしは自己決定を可能にするというような趣旨なのではないかと思いますので、この点について、もしコメントがございましたら、ご教示をいただければと思います。

それから先ほど、今回のプリンシプルは、コンプライ・オア・エクスプレインの考え方とセットであるというご説明がございました。これは従来のプリンシプルですとか、こういった基本原則などと大きく違う点で、特にエクスプレインを求めることによって、市場ないしは顧客による選別のメカニズムが機能し得る、そしてそのことがプリンシプルのエンフォースメントの基本的な原動力になるのではないかと思います。そのような意味において、コンプライ・オア・エクスプレインの考え方というのが非常に重要だと思うのですが、ここでご質問がございます。コンプライ・オア・エクスプレイン自体については、このプリンシプルの中には書かれていないように思うのですけれども、コンプライ・オア・エクスプレインについてはどのような形でそれを規範化するのか、それから、場合によってはコンプライしていることについてもさらにその具体的な内容についてエクスプレインを求めるという事項も当然あり得るかと思います。エクスプレインする場合というのがどのような場合か、むしろ今後の課題、次回以降の本ワーキング・グループにおいて、プリンシプルを実現するための適切かつ具体的な方策の中で議論されることになるのか、コンプライ・オア・エクスプレインの位置づけについてご教示いただければと思います。

まとまりのない発言でございましたけれども、以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。質問の部分があったと思います。

【齋藤市場課長】

最後のコンプライ・オア・エクスプレインのところでございますが、今回、主として、別添の盛り込むべき事項についてご提案をした上でご議論いただこうと思っておりまして、今ご指摘のあったコンプライ・オア・エクスプレインの部分に関して、どのように位置づけていくのかということは、今いただいた意見も踏まえて、また考えてみます。

それからもう1点、「情報の非対称性の解消に努めるべきである」のところでございますが、解消という用語の問題かなという気もいたします。要するに、できるだけ情報の非対称性を解消する方向に努めるべきであるというつもりで書いてはおりますが、究極的な目的というには書き過ぎではないかという点に関しては、ちょっとまた考えてみたいと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

では、鹿毛委員、どうぞ。

【鹿毛委員】

これまで多くの委員の方がおっしゃいましたように、私も今回のイニシアティブと言うのでしょうか、政策の方向性は極めて意味のあるものだと思います。そして重要な現実的課題としては、その実効性をどうやって担保していくかということだと思います。

これにつきまして、各論で2点と、総論2点をコメントします。各論の第一は、今回の作業の柱の1つ、国民の資産形成のための方策についてです。例えば4ページの「顧客にふさわしいサービスの提供」に関連してくると思いますが、顧客特性に合わせたサービスの中に、特に子育て世代、あるいは若年層の長期的な資産形成のための商品の供給体制が、現在のマーケットでは必ずしも十分ではないのではないかということが指摘されています。今回の柱というところから考えますと、この点について、もう少し強調してもいいのではないかと思いました。

もう1点は、特に投信の投資家保護の仕組みの問題です。言うまでもなく、海外の場合、色々な法的な違いもあって、例えば投信のボードが投資家保護のための仕組みとしてありますが、日本の場合には、それが必ずしも十分でないと思われます。やはり何らかの形で、第三者による投資家のための、投資家の利益を保護するような仕組みを確保していくことも必要ではないかという点です。最後の段階になって、今まであまり議論されていないことを申し上げていささか恐縮ですが、例えば今後の課題の中の例示のような書き方ができないかどうか、ご検討いただければと思いました。

それから総論ですが、これも皆様ご指摘のように、現状すでに投信業務に関してはかなりのボリュームの規制もあり、それに対応して業界サイドもかなりの対応ができている状況の下で、今回のこの議論の過程でも、特に現場の本音の議論としては、これだけやっているのに、あと一体何が必要なのだろうかという、素朴なと言うと大変失礼ですけれども、感想めいた話も出てきているわけですね。それで、今回の政策については、一方ではこれだけの手当てがあるにもかかわらず、一方ではなかなか日本で、国民の資産形成が進まないとか、投信事業が必ずしも十分発展していないとか、国際競争力において問題があるとか、問題があることも事実だと思います。従って冒頭にありましたようなミニマム・スタンダード以上のものを求めることが現実に必要になってきていると思いますので、この政策を実施していく上で、導入の趣旨とか、諸外国の先進事例といった点についての解説のようなものが、実効性を担保する上で必要ではないかと思います。

総論の第二に、全体の構成として、先ほど神作委員からご指摘のあった、正当性の問題に関連した点です。ついてやはり投信に関しては現実に色々問題がある以上、今回の施策は必要だ、というのが、このワーキング・グループの皆様のまとまったご意見ではないかと思います。その中で、ディスクロージャーとか、手数料、適合性の問題など、いわば公正取引から見ていささか問題があるのではないかというテーマに関しては、行政の主要課題であり、報告書としても「XXすべきである」と言ってよいと思います。一方で、例えば顧客ニーズを十分つかんで、それに十分対応していく部分は、金融業に限らず、どこの事業体でもある意味では当然やっている部分もあるわけです。ただ、主観的に考えているものと客観的に考えているものの間に差があるということだと思います。究極的には、顧客ニーズをどう捉えて、どう対応するかという問題は個別企業の戦略ということになります。つまり、報告書の7項目の中には、特に公正取引という観点から、「すべき」ものと、どちらかというと「民間の主体的な努力でやっていくことが望ましい」というものとが混在していると思います。後者に関しては、「すべき」ということになると民間サイドから見ると、若干の違和感もあるのではないかというのが、素朴な感想です。報告書は、国際競争力とか、将来の国民資産形成のための必要な施策が列挙されていると思われますので、その辺の表現のところで若干の工夫をしていただけますと、先ほどの神作委員の正当性の観点も含めて、疑念の余地がなくなるのではないかと思いました。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、竹川委員、お願いします。

【竹川委員】

これまでの混沌とした議論をすっきりとまとめていただきましてありがとうございました。最初の回から申し上げているように、フィデューシャリー・デューティーは、個別の金融事業者が、それぞれ国民の安定的な資産形成を行うために、どういう形でやっていくのがいいかというのを個々に考えて記載をし、それに対して実行していくのが望ましいと思います。今回出していただきました各項目について自ら考え、実行していくのが一番望ましいと思います。

まず、対象ですが、先ほど永沢委員のご質問にもあったように、金融事業者の定義は特に定めていないということですが、銀行や証券会社といった直接顧客とかかわるところに加えて、投資助言業やIFAといったところも含めて金融事業者という形で、このルールにのっとっていくべきと考えます。また来年の1月から、個人型の確定拠出年金なども現役世代ほぼ全員が入れるようになります。例えば確定拠出年金にかかわる商品の提供会社であったり、運営管理機関であったり、そういったところも含め、国民の資産形成に関係する機関の全てが考えていただくべきだと思います。

個別に見ていきたいのですけれども、まず2ページの「利益相反の適切な管理」に関してです。注1のポツ1に関しては例えば販売会社について、ポツ2に関しては同一グループに属する別の会社から提供を受けた商品を販売・推奨等する場合について記載されています。ただ、適切に考慮すべきであると、言っただけで本当に実行につながるのかどうかはやや疑問も残ります。例えば、運用会社の経営陣の経歴や社員の当該投信保有状況の開示、販売ベース及び残高ベースの自社グループ投信比率の開示などを進める必要があると思います。次回以降、こうした議論も必要だと思います。

次に、3ページ目の手数料についてですが、こちらは先ほどご意見にも出ましたけれども、ここだけ全く注がついていません。投資信託だけではなく、保険等も含めて、どこまでどういう形で開示をしていくのかは、もう少し具体的に記載があってもよいのではないでしょうか。

また、先ほどから何回かご意見が出ていますが、今後、製販分離は進めていったほうがいいと思っています。特に運用にかかる費用と、それ以外の販売やアドバイスにかかる費用は分けて考えたほうがいいと思っております。長期的には、例えば投資信託でしたら運用管理費用のうち代行手数料については外出しすることも検討していただきたいと思います。イギリスのRDRのような形で、販売に関する費用について外出しにすることも含めてご検討いただければと思います。

それから、重要な情報のわかりやすい提供についてです。例えば、注1の金融商品・サービスの選定理由、注2のパッケージ化したほうがいいのか、パッケージ化する場合としない場合を顧客が比較できるようにする、注5の顧客において同種の金融商品・サービスの内容と比較することが容易となるよう配慮すべきである――こうしたことは、今後、金融機関からこういったものはどうですかという形で商品を提示される場合に、こうした項目にある視点は非常に大事だと考えます。

特に、同じアセットクラスで色々な商品を扱う中で、どうしてこの商品を勧めるのか。具体的には明確な選定理由や、同種の金融商品・サービス内容と比較した上で、その商品を勧める理由が、現状では明確に提示されていない部分もあります。そこをはっきり明示していただければ、顧客にとってもわかりやすくなります。

また、こちらに書かれてはいませんが、例えば投資信託などに関しては、公募の投資信託と、確定拠出年金で扱うDC専用ファンドについて、最近はボーダーレスになってきています。つまり、公募で扱う投資信託を確定拠出年金で取り扱ったり、逆に確定拠出年金専用の投資信託を公募で取り扱うようになってきたりしていますが、情報の開示基準がバラバラです。

具体的には、確定拠出年金で購入する場合には、交付目論見書を読まずに購入できる形になっていますが、情報開示の基準については統一していただけるといいのではないかと思います。

非課税の口座を含めて複数の口座で、金融商品を買えるようになってきています。資産形成を応援する制度ができてきたことはよいことですが、個人から見ると、(金融商品を)買う場所・口座によって情報開示の基準がばらばらではかわかりづらいところもあります。ぜひ用語の統一も含めて開示基準については最終的に統一していっていただきたいと思います。

最後に、従業員等に対する適切な動機づけの枠組みについてですが、報酬・業績評価体系、従業員研修その他の適切な動機づけの枠組みを整備すべきであると記載されています。先ほど神戸委員のご意見にもありましたが、地方の金融機関等に行きますと、役員の方はフィデューシャリー・デューティーに取り組まなくてはいけないと考えていらっしゃる方も多いのですが、現場レベルにおりてきたときに、そうした考えが浸透していないという部分もあります。 特に、地方銀行については二極化といいますか、そうした考え方が現場までおりてきているところと、そうではないところの差が大きいように感じます。現場レベルでどう浸透させていくかについては、次回の議論の中で取り上げていただければと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】

私も、既にほかの委員のご発言と重なる部分もありますが、3点ほどコメントをさせていただきます。あと、永沢委員に倣って私もコードと呼ばせていただきますけれども、最初に、コードの位置づけについてです。

どういうことかと申し上げますと、討議資料の最初のページの3番目の項目が言うとおり、本来、金融事業者自身が主体的に顧客本位の観点から創意工夫を行うことが望ましいと思いますが、このような創意工夫を促すためには、コードを遵守しているか否かについて誰に対して説明をすべきなのかということを明らかにしておく必要があると思います。

これまでの発言の中では、金融庁に対して説明をするというふうに考えられているようなニュアンスのご意見もあった気がします。しかし、このようなコードをつくる意義は、金融事業者に、顧客に対して説明させることなのだと思います。このことを、もう少し明確にしたほうがいいのではないかなという気がいたします。誰に対して説明をすべきかとう視点は、どのような内容及び形で説明をすることが望ましいかという点とも関係があると思います。

次に、これまで金融事業者の定義と範囲について様々なご意見が出されたわけですけれども、顧客の範囲についても、補足の説明が必要であるような気がしております。既にほかの委員からご意見がありましたけれども、このコードの内容自体は、ある金融事業者が直接相対している顧客以外の、いわばインベスメント・チェーンの最後にいる最終受益者を念頭に置いて顧客と表現していると思います。

そういったニュアンスが、おそらくコードに付されるだろう前文において宣言されるのかもしれませんが、コードだけを見ると、顧客というのは自分が相対している顧客だけだというふうに解釈できてしまう部分があるように思います。ですから、コードの本文においても、顧客というのはいわば自分が相対している顧客に限らない資産形成を考えている人たち一般なのだということを明記しておく必要があるのではないかと思いました。

それと関連して、2ページの利益相反の適切な管理というところで、おそらくここでいう利益相反というのは、顧客との利益相反のような気がしますので、本文というか、括弧書きの中に、取引における顧客との利益相反みたいな、「顧客との」という説明を書くことを検討してはどうかという気がいたしました。

3番目は、次回以降の議論と関係するかもしれませんけれども、金融事業者の中には、いわば複数の金融事業者から構成されているグループが存在します。そういった場合に、コードに対するコンプライ・オア・エクスプレインをどの単位で求めるかも、議論すべきように思いました。

つまり、製造と販売という言葉がありましたけれども、要は製造と販売を両方とも抱えているグループがある場合に、いわばグループとしてコードに対するコンプライ・オア・エクスプレインを考えれば足りるのか、それとも、グループを構成する個々の会社ごとにグループの他の構成員から独立した立場で個別的にコンプライ・オア・エクスプレインをすることを求める仕組みにするのか、ということです。どの単位でコンプライ・オア・エクスプレインを求めるかによって、コードの効果が違ってくるような気がしましたので、この点も検討する必要があるのではないかと思いました。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、黒沼委員、永沢委員の順で。黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

2回目の発言で恐縮です。顧客にふさわしいサービスの提供ということについて、例えば裁判になった事例などを見ますと、当初はヘッジ目的で複雑な金融商品を購入する意向を持っているような投資家に対して、勧誘の過程でいつの間にかそれが投機目的、投資目的に変わってしまって、その結果、意に沿わないような投資が行われるというような事例が散見されます。裁判所は投資目的があったのだから適合性原則に反しないと判断することも多いのですけれども、それが顧客本位のサービスの提供だとは思えません。

顧客にふさわしいサービスの提供には4つ注がついておりますが、例えば顧客の取引目的、ニーズの把握に当たっては、顧客の当初の意向を尊重し、販売、推奨等の過程で顧客の意向をゆがめることのないよう留意すべきであるといった事項を、個人的には加えていただきたいと思っています。検討いただければと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

私も2度目の発言で申しわけありません。私は鹿毛先生のご提案といいますか、ご指摘が大変重要だと思いましたので、ぜひご検討いただきたいと思いまして、発言させていただきたいと思います。

投資信託をはじめとする集団投資スキームの投資者保護の仕組みといいますか、ガバナンスのあり方というのは欧米と比べると弱い、十分ではないというふうにも感じておりまして、なかなかこれを整備していくことにはエネルギーが要るとは思いますけれども、下の段階ではなく、やはりガバナンスとか、そういった言葉をぜひ入れていただきたいと思っております。

今回、想定されているのが国民という情報の非対称性や交渉能力の面での弱い立場にあるというところ、一生懸命情報をいただいても、結局、知ることはできないというような立場にあるものになるわけですので、やはり何か専門的な第三者によるガバナンスというような仕組みというのは努力していただきたいと思っております。そういったことを少し上に上げてほしいなと思いまして、鹿毛委員のご提案に遅過ぎることはないと思いますので、入れていただけたらと思いました。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。大分色々とご指摘をいただいて、中には追加でのご提案もいただきました。事務局のほうで検討していただければと思いますけれども、ほかにいかがでしょうか。

ちょっと次元の低いコメントで申しわけないのですけれども、確かに見た目もあるかなというのはあるかもしれません。ある項目に注が5つ、6つあって他の項目にはないとか。それから、先ほど注と本文の関係は、注を守っていれば本文を守っていることには当然にはならないというご説明があり、それはそのとおりなのでしょうけれども、注もコンプライ・オア・エクスプレインの対象になるわけですよね、「べきである」と書いてある以上は。

【齋藤市場課長】

基本的にはそういうつもりで書いています。

【神田座長】

そうですよね。注という表現がいいかどうかという、見た目のことばかり言って大変恐縮ですけれども、その辺も含めて、それから、追加でのご提案等もありましたので、さらに事務局で検討をしていただけるものと思います。

まだ若干時間はございますので、さらにご発言等ございましたらお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

【新井オブザーバー】

野村證券の新井でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。

今回の討議資料を拝見させていただいて、優れていると感じた点を2点お伝えさせていただきたい。1点目は、プリンシプルとして個々の金融業者で対応すべきという点で、金融業者も、例えば銀行と証券会社等で、お客様の層もリテラシーも異なりますので、方針を定めにいく場合は、業者それぞれが真剣に考えて策定しないといけないという点です。

2点目は、定期的に見直されるべきという点で、これまでも金融業者の一業態として、証券会社として取り組んで来ましたが、まだまだ足りないこともあり、今後もそのレベルを上げていかないといけないと考えております。また、世の中も変わっていくという流れの中で、レベルを上げていくという意味で見直しを図っていくという点は優れていると感じております。

次に、私どもが考えている大事なことで申し上げますと、1枚物の資料の7番目の従業員等に対する適切な動機づけの枠組みだと考えております。以前も申し上げましたが、やはり従業員の教育や意識づけを確り対応することで、お客様本位の業務運営ができるようになると考えております。1番目から6番目というのも非常に大事なことであり、取り組んでいきますが、特に7番目のところは業者としてしっかり取り組まないといけないと思っております。

最後に質問なのですが、ここに記載してある金融商品というのは、例えば投資信託や保険等のような商品と思っていたのですが、改めて金融商品の範囲を確認させていただければと思います。

ぶしつけな質問でしたら恐縮ですが、例えば、これは6番目について、お客様の資産の状況やお客様にふさわしい金融商品やとかサービスという観点では、例えば、預金等についてもお客様に対して本当にふさわしいのか、預金はリスクも少ないし単純だから金融商品の範囲に入らないとすれば、外貨預金はどうなのか、という素朴な疑問が湧く次第です。もしご教示いただければありがたいと思います。

【齋藤市場課長】

先ほど金融事業者に関して特段の定義を設けておりませんというお話をさせていただきましたが、金融商品についても特段の定義を設けていないところでございます。それはまさしく、今、新井様のご指摘あったとおり、金融商品にも多様な商品があって、いわゆる投資商品というふうに仮に言った場合にイメージされないような金融商品というものもあり得ようと思っております。

ただ、元々が国民の安定的な資産形成ということにはなっておりますが、そういうような全体的な趣旨も踏まえた上で、どこまでの金融商品について、このプリンシプルといったものを捉えて、顧客本位の業務運営をしていくのかということを、個々の事業者において考え判断していただいて、その範囲というものを含めてどういうふうに業務運営をしていくのかという、取り組み方針的なものをつくっていただければよろしいのではないかと、そこに競争が働いて、よりよい取り組みを行う事業者の方が選択されていくというようなメカニズムが発揮されていくということを期待したいと思っています。

【新井オブザーバー】

ありがとうございました。

【神田座長】

どうぞ。

【荒谷オブザーバー】

明治安田生命の荒谷でございます。この市場ワーキング・グループにおいて、顧客本位の業務運営について、皆様からご意見をたくさん頂戴いたしました。参考にさせていただきたいことがたくさんあり、まずもって感謝を申し上げます。

このプリンシプル案についてというよりは、顧客本位の業務運営について、総論的なところで保険業界がどういうふうに考えているのかということを、少しお時間をいただきお話ししたいと思っています。

保険業界は、もちろん顧客本位の業務運営を、非常に大事にしているところでありますし、協会の行動規範の中でも、お客様本位の行動、さらに協会長の所信の中でも、今事務年度の重要な取り組みとして、消費者志向経営の支援というものを掲げております。弊社といたしましても、経営理念でお客様を大切にする会社ということを掲げて、本気で取り組んできていると思っております。

保険契約は、契約時から保険金の支払いまで非常に長いということもございますので、そういうところも踏まえて、例えばアフターフォローの充実、高齢者対応の高度化、約款の平明化、募集文書の簡素化など、業界、各社ともに取り組んできたところであります。

また、ルールベースということにはなりますけれども、平成25年の金融審議会の保険ワーキング・グループの議論を踏まえて保険業法が改正されたということはご承知のことかと思います。この5月から施行されておりまして、その中で今までの議論にありましたような意向把握義務であるとか、比較推奨販売ルール、募集代理店の体制整備義務というようなものが導入されておりまして、これを踏まえて各社も対応しているというところではございますけれども、これはルールベースということでもございますし、今回ご提案されたプリンシプルという中で、ご意見を踏まえてPDCAを回しながら、真の顧客本位の業務運営というものをもう一度考え直して、ベストプラクティスを各社で求めていきたいと思っています。

プリンシプルの実現方法につきましては、事業特性であるとか、商品特性、チャネル特性によっても当然違いが出てくると思いますので、保険会社にとって、創意工夫が求められていくことかと思います。これまでの取り組みについては、保険会社は、保険という視点に力点が置かれておりましたけれども、この市場ワーキング・グループにおいては、皆様からのご意見も踏まえて、投資性商品という視点も重ねて、さらにベストプラクティスを求めていきたい、追求していきたいと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【田村オブザーバー】

三井住友銀行の田村でございます。色々ご意見を拝聴し、本当に良い機会となっております。ありがとうございます。

今日の討議資料の3つ目の丸のところに書いてあります、各金融事業者が顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い合い、より良い取り組みを行う金融事業者が顧客から選択されていくメカニズムの実現が望ましいのではないかというのは、本当にそのとおりだと思っております。

これは個人的な考え方になるのですが、金融は規制産業であり、当局がルールをつくって、それに対して、ルールは守らなきゃいけないということで、防御的に対応してきた面が少なからずあるのではないかと思っております。プリンシプルが定められて、同じようにこのプリンシプルに防御的に対応するのではなく、3つ目の丸に書いてあるように前向きに、お客様サービスの競争だということで捉えていってこそ、このプリンシプルに魂が入っていくと思っておりますので、銀行、金融事業者としてもしっかりやっていきたいと思っております。

一方で、先ほどから色々ご意見が出ている中で、少しそういう観点から気になったのは、あまり注を多く付け加えていくと結局ルールになってしまうということです。だから防御的にしかやりませんよと言うつもりは毛頭ないのですけれども、そのあたりのバランスを各事業者の自主的な努力に、ある程度委ねられるような形にしてこそ、プリンシプルに魂が入っていくのではないかと思っております。

ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。どうぞ、林田委員。

【林田委員】

今ご指摘があったように、多分、このプリンシプルが出ると、この点はどうでしょうか、あの点はどうでしょうかと事業者のほうから金融庁などに問い合わせがあって、何かこのプリンシプルも見直すような話があるやなしやで、注がどんどん、どんどん増えていきますと、それをもとに虎の巻がつくられていくということにもなりかねないかなと、ふと思いました。そのあたり金融庁のスタンスとしては、どのような対応をされていかれるのでしょうか。

【池田総務企画局長】

それでは、お答えをさせていただきます。

本日、色々な方からご指摘があったように、今回このような試みをしようということの背景には、これまでとかく当局を意識した行動というのが非常に支配的になっていて、それが本日の論点の紙でいうと、ミニマム・スタンダードは目指すが、それ以上、世の中にいいことは絶対やらないといったことになりがちであること、また、当局がそれでルールをつくると、また新しいことが起きて、また新しいルールをつくってと、同じことを繰り返すように行ってきたことがあるのではないかと。

そのとき、ポイントとして大事なのは、当局を意識するのではなく顧客を意識していただくということなのだろう。また、横並びの意識ではなく、いいサービスを競い合っていくという、その2つが非常に大事になるのではないか。そうすると、その2つを実現していくためには、あまり詳細に書くのではなく、プリンシプルを押さえた上で、それぞれの金融事業者の方に考えていただいて、どう実現していくかをそれぞれで工夫していただくということが大事であるのではないかと思っています。

そういう中でこの原則をつくっていきますと、実は、私が最初の原案を見たときはもっと山のように注がついていたのですけれども、そういうものは不要だということで整理してきた結果が今の姿となります。神田座長からバランスが欠けているという厳しいご指摘もいただきましたし、注がついてないところにかなりご批判のコメントをいただいたようにも思うのですが、私としては、注がついていないところは原則が最も美しく書けていると考えております。

逆に、注がたくさん書いてあるところは、これでも相当整理してこの姿にはなっておりますが、集約し切れなかったという部分であると思っております。本日のご指摘をいただいて、やはり大事な原則であるというものは検討させていただきたいと思いますが、今あったように、正直あまり、数を増やしたいと思っているわけではありません。色々とご指摘を受けたということは、多分、原則の書き方がうまくなかったのだろうと思っています。

それから、途中にもありましたけれども、原則1から7あるうちの1はともかくとして、2から7というのは、ミニマム・スタンダードというのは何がしか法令にあると思います。そういう意味で、こういう形でプリンシプルを整理しているのは、やはりそういうミニマム・スタンダードを超えたベストプラクティスを目指したものなのだということであると思っています。

したがって、常識的に考えれば、そのベストプラクティスに合わなかったからといって、大崎委員が言われたように直ちに処分だとかそういうようなものではないのだろう。では、黒沼委員おっしゃったように留意していると方針に書けばいいのかという点については、それで顧客がいいと思うと思いますかということをお返しするということかなと。

あと、金融事業者とか金融商品の定義がないというのは、これは金融庁がつくっているスチュワードシップコードも、責任ある機関投資家の原則となっているのですけれども、あのコードも機関投資家の定義は一切出てこないつくりにわざとされておりまして、その結果、大変幅広い形で採択をしていただいているという結果も生まれていると思っています。市場課長からご説明したように、そうしたものはあえて定義を置かない、そこはご理解賜ればと考えています。

【神田座長】

どうもありがとうございました。それでは、そろそろ時間ですので、本日はこのあたりとさせていただければと思います。

本日も大変活発なご意見を多数お出しいただき、また、貴重なご指摘をいただきましてありがとうございました。本日のご議論を踏まえまして、次回、顧客本位の業務運営に関する原則というものを定着させるための具体的な方策のあり方などにつきまして、国民の安定的な資産形成とフィデューシャリー・デューティーに関する残された課題ということで、さらにご議論をいただきたいと思います。皆様方には、さらにお気づきの点がありましたら、会合の外ででもぜひご連絡をいただければと思います。

最後に事務局からの連絡事項等ございましたらお願いいたします。

【齋藤市場課長】

次回のワーキング・グループの日程、テーマ等に関しては、今、神田座長からいただいたご指示を踏まえ、また、皆様のご都合を勘案し、後日事務局よりご案内をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【神田座長】

それでは、以上をもちまして散会いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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