金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第12回)議事録

平成28年12月20日
 
 
【神田座長】  

 おはようございます。定刻になりましたので、始めさせていただきます。市場ワーキング・グループの第12回目の会合を開催いたします。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 早速でございますが、本日の議事に移らせていただきます。本日は、これまでのご議論を取りまとめるということで、お手元に市場ワーキング・グループ報告(案)を用意させていただいております。これについて事務局からご説明をしていただいた後、皆様方にご審議をいただきたいと思います。

 それでは、事務局からの説明をお願いいたします。

【齋藤市場課長】  

 私からご説明をさせていただきます。お手元に金融審議会市場ワーキング・グループ報告(案)をお配りしていると思います。これに関しまして、かいつまんで、また、これまでご議論をいただいた討議資料との主な変更点をご紹介しつつ、ご説明をしたいと思います。

 まず、おめくりいただきまして目次でございますけれども、構成といたしましては、まず国民の安定的な資産形成と顧客本位の業務運営について第1章でございます。資産形成に関連する話としてETFの活用とインデックス運用の位置付けが第2章になってございます。第3章が取引の高速化、第4章が市場間競争と取引所外取引、第5章は取引所の業務範囲となってございます。

 2枚おめくりいただきまして「はじめに」でございます。ここには背景事情を書かせていただいております。1,700兆円を超える家計金融資産が蓄積されておりますが、その過半が現預金であって家計の安定的な資産形成が図られているとは言い難い状況にございます。このため、政府においては家計の安定的な資産形成を支援するために多面的な取組みを進めているところでございます。家計に関してはNISAの着実な普及、さらには積立NISAの創設などの取組みが進められております。機関投資家に関しては、中長期的な視点に立った建設的な対話といったものをしていただき、また、企業のガバナンス改革を形式から実質へ深化させていくということから、機関投資家の行動原則であるスチュワードシップ・コードについて、現在、見直しに向けた検討が進められつつあるところでございます。

 このような多面的な取組みとあわせて、金融機関等がインベストメント・チェーンにおけるそれぞれの役割を認識して、顧客本位の業務運営に努めていくことも安定的な資産形成の実現のためには重要な課題になっているところでございます。また、長期・分散・積立投資に適した金融商品の開発・普及といったものも課題になっているかと思います。加えて、情報技術の進展等に伴い、日本や欧米の市場・取引所、それらを取り巻く環境にも、様々な変化が見られるところでございます。特に近年、取引システムの高度化が進む中、高速取引の影響力が増大していることのほか、取引所集中義務の撤廃後の市場間競争の状況や、FinTechの動きも踏まえた新たな課題への対応も必要になってきているところでございます。こうした状況を踏まえて当ワーキング・グループが設置され、①から⑤に掲げているテーマについてご審議をいただいたところでございます。

 「はじめに」は以上でございます。

 続きまして2ページ目、第1章国民の安定的な資産形成と顧客本位の業務運営でございます。まず、顧客本位の業務運営に関する原則の策定の必要性等でございます。国民の安定的な資産形成を図るためには、全ての金融機関等がそれぞれの役割を認識して顧客本位の業務運営に努めることが重要でございます。こうした観点から、当ワーキング・グループでは販売手数料、商品説明、利益相反の管理等に関してさまざまな事例を取り上げながら議論を行っていただきました。これらの点に関しましては、これまでそれぞれの目的に応じた法令改正等が行われ、投資者保護のための取組みが進められてまいりましたが、一方で、これらが最低基準、ミニマム・スタンダードとなってしまって、金融事業者による形式的・画一的な対応を助長してきた面も指摘できるところでございます。

 本来は、金融事業者が自ら主体的に創意工夫を発揮して、ベスト・プラクティスを目指して顧客本位の良質な金融商品・サービスの提供を競い合い、より良い取組みを行う金融事業者が顧客から選択されていくメカニズムの実現が望ましいところでございます。そのためには、プリンシプルベースのアプローチを用いることが有効であると考えられ、具体的には、当局において、顧客本位の業務運営に関する原則を策定して、金融事業者に受け入れを呼びかけ、金融事業者が、原則を踏まえて何が顧客のためになるかを真剣に考え、横並びに陥ることなく、より良い金融商品・サービスの提供を競い合うよう促していくことが適当とさせていただいております。

 また、なお書きを追加させていただいておりまして、仮にこうしたプリンシプルベースのアプローチが、金融事業者の行動に変革をもたらす上で十分ではないと考えられる場合には、ルールベースの手法による対応を含め、改めて検討がなされるべきとさせていただきました。

 1枚おめくりいただきまして3ページ目から、顧客本位の業務運営に関する原則に盛り込むべき事項でございます。まず、1番目の事項でございますが、顧客本位の業務運営に係る方針の策定・公表等ということで、明確な方針を策定・公表するとともに、取組状況を定期的に公表すべきである。また、当該方針は定期的に見直されるべきである。こちらには注書きを加えさせていただきました。金融事業者は顧客本位の業務運営に関する方針を策定する際には、取引の直接の相手方としての顧客だけでなく、インベストメント・チェーンにおける最終受益者としての顧客をも念頭に置くべきであるとさせていただきました。それから、2番目の事項でございますが、顧客の最善の利益の追求ということで、金融事業者は顧客の最善の利益を図るべきである。こうした業務運営が企業文化として定着するよう努めるべきであるとさせていただいております。

 3番目の事項は、利益相反の適切な管理ということで、取引における顧客との利益相反の可能性について正確に把握し、利益相反の可能性がある場合には、当該利益相反を適切に管理すべきである、そのための具体的な対応方針をあらかじめ策定するべきであるとさせていただいております。それから、4ページ目でございますけれども、4番目の事項として手数料等の明確化でございます。名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用の詳細をどのようなサービスの対価に関するものかを含め、顧客が理解できるよう情報提供すべきである。「理解できるよう」をつけ加えさせていただいております。それから、5番目、重要な情報のわかりやすい提供。顧客との情報の非対称性があることを踏まえ、金融商品・サービスの販売・推奨等に係る重要な情報を顧客が理解できるよう分かりやすく提供すべきであるとさせていただいております。

 注書きに関しては、その注2の最後のところに、注2から注5は4番目の事項の手数料等の情報を提供する場合と同様に、適用されるべきと考えられますので、そのような括弧書きを加えさせていただいているところでございます。

 続きまして5ページ目でございます。6番目の事項でございますが、顧客にふさわしいサービスの提供。顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズを把握し、当該顧客にふさわしい金融商品・サービスの組成、販売・推奨等を行うべきであるとしております。注書きに関しては、特に討議資料からの変更はございません。それから、7番目の事項として、従業員に対する適切な動機づけの枠組み等ということで、顧客の最善の利益を追求するための行動、顧客の公正な取扱い、利益相反の適切な管理等を促進するように設計された報酬・業績評価体系、従業員研修その他の適切な動機づけの枠組みや適切なガバナンス体制を整備すべきであるということで、「適切なガバナンス体制」という文言をつけ加えさせていただいております。

 それから、2.で顧客本位の業務運営を確立・定着させていくための方策でございます。金融事業者がより良い金融商品・サービスの提供を競い合い、より良い取組みを行う金融事業者が顧客から選択され、これを踏まえて金融事業者自らの業務運営を絶えず見直していくという好循環が生まれる必要があろうかと思います。そのためには、先ほど申し上げた内容を盛り込んだ原則を策定するのみならず、以下の方策をあわせて実行することが適当とさせていただいております。

 まず(1)の金融事業者の取組みの見える化ということで、「このため」にありますけれども、原則を採択した金融事業者においては、上記のIにも示されているとおり、顧客本位の業務運営を実現するための明確な方針を策定・公表した上で、当該方針に係る取組状況を定期的に公表するとともに、当該方針を定期的に見直すことがまずもって重要である。「その際」をつけ加えさせていただいておりまして、当該方針には、上記のⅡからⅦに示されている内容((注)を含む)について、受け入れる場合にはその対応方針を、受け入れない場合にはその理由を、分かりやすい表現で盛り込むことが適当であるとさせていただいております。その上記のⅡからⅦに掲げている事項に関して、単にコンプライということではなくて、方針を策定する場合には、コンプライする場合にはその対応方針といったものを方針の中に盛り込んでいただきたいということが書かれているところでございます。

 それから、2つ目の取組みとしては、顧客の主体的な行動といったことが、より良い取組みを行う金融事業者が選択されていくためには重要になってくるところでございます。その際には、顧客に対し、積極的に投資教育や金融商品に関する情報等を提供することで、リテラシーの向上を図っていくことが重要と考えられるところでございます。また、有識者等で構成される第三者的な主体が、例えば民間における自発的な取組みとして形成され、金融事業者の取組方針、取組状況を顧客の立場から評価をして、評価結果を公表するといったメカニズムが存在すれば、顧客が金融事業者を選別する上で参考になると考えられるとさせていただいております。

 それから、3番目として顧客にアドバイス等を行う担い手の多様化ということで、販売会社等とは独立した立場で顧客に対してアドバイスする者など、顧客による金融商品・サービスの適切な選択を手助けする担い手の多様化が重要であるとさせていただいております。それから、4番目、当局の役割でございますが、顧客本位の業務運営を実現するためには、検査・監督においても、原則の受入れ状況、策定した取組方針、取組状況について、適切にモニタリングを行い、ベスト・プラクティスの実現を目指して対話していくことが重要である。なお書きを加えさせていただいておりまして、原則については、金融事業者の取組状況や、その取り巻く環境の変化を踏まえ、必要に応じ見直しの検討が行われることが望まれるとさせていただいております。

 以上が第1章でございます。

 続きまして第2章、国民の安定的な資産形成におけるETFの活用とインデックス運用の位置付けでございます。1.のETFの活用と課題でございます。国民が安定的な資産形成を行うためには長期の積立・分散投資が有効と考えられるところであります。この観点からETFは少額でも分散投資が可能である、また、透明性が高い、同種の投資信託に比してETFのほうがコストは低いとされていることから、本来、有用な商品であると考えられるところでございますが、しかしながら、現状では十分に活用されているとは言いがたい状況にあるため、以下のような課題について取引所等の関係者における検討が求められるとさせていただいております。

 まず、1つ目の課題はETF市場の流動性の向上でございまして、十分活用されていない要因の1つに流動性の乏しいこと、流動性の向上が重要な課題となっていると思われます。このため、取引所を中心とした関係者において取引の公正に留意しつつ、マーケットメイク制度の導入に向けた検討を行うとともに、マーケットメイカーが注文を提示しやすい環境を整備するため、必要に応じ関係府令等の改正を検討することが適当、また、ETFの設定・交換に係る期間を短縮すべく手続の効率化に向けた検討を行うことが適当とさせていただいております。

 おめくりいただきまして9ページ目、2番目の課題としてETFの認知度の向上でございます。活用されていない要因の1つとして認知度が低い点を指摘する声がございます。認知度を高める観点から取引所を中心とした関係者がETFの商品性や仕組み等をわかりやすく解説した資料を作成し、販売会社の窓口などさまざまなチャネルを通じて広く周知を図っていくことが重要と考えられます。また、銀行等を含めた販売会社において投資信託を販売する際に同種のETFがある場合には、手数料の違いも含めて顧客にそれらの商品を比較することができる情報が提供されるよう、取引所において説明資料を作成することが適当である、また、銀行等の登録金融機関におけるETFの窓口販売では制度上既に認められているところであるとさせていただいております。

 3番目の課題としてETFの活用促進策でございますけれども、近年、ETFについては長期投資に向いている商品、経済の持続的な成長に資する商品が開発されており、今後とも関係者においてそのような良質な商品の開発に努めることが適当である。また、取引所のホームページのETF銘柄一覧において長期投資に向いている銘柄や積立サービスが提供されている銘柄を明らかにするなど情報提供を拡充することが適当である。さらに、積立に適した手数料のあり方等を含め、ETFを活用した少額積立投資を目的とする商品設計に関し、関係者において検討が行われることが適当であるとさせていただいております。

 それから、2つ目のインデックス運用の増加と株価形成でございます。1枚おめくりいただきまして10ページ目でございますが、これに関しての段落でございますが、国際的にも機関投資家の運用資産に占めるインデックス運用の割合が増加することにより、企業の中長期的な価値に基づく株価形成を阻害し、市場に歪みをもたらし得るのではないかといった指摘がございます。特にインデックス運用が市場取引全体に対して過度な割合を占めた場合、個々の銘柄について、その企業の中長期的な価値に基づく株価が形成されず、ひいてはインデックス運用自体の合理性も失われかねないとの指摘がございます。

 この点につきましては、インデックス運用が過大となることにより市場に歪みが生じても市場が合理的であればアクティブ運用の増加により自動的に調整されるのではないかという指摘がある一方、アクティブ運用のための情報生産活動の成果は価格に情報が織り込まれることを通じて市場参加者全体に享受されてしまうことから、コストをかけて情報生産活動を行うインセンティブが低下するため、アクティブ運用の増加による調整機能が働くとは限らないという指摘もあるところでございました。いずれにいたしても、このような今後の取引の動向について注視していくことが適当であるとさせていただいております。

 以上が第2章でございました。

 続いて第3章、取引の高速化でございます。1.アルゴリズムを用いた高速取引を巡る状況は、今の日本の現状、それから、諸外国の現状についてまとめさせていただいております。討議資料から大きく変更はございませんので説明は割愛させていただきます。12ページに行きまして2.アルゴリズム取引に関するこれまでの対応と欧米の動向でございますけれども、こちらも日本のこれまでの対応から欧米の動向について、討議資料から大きく変更はございませんので、こちらも説明は割愛させていただきます。

 3.アルゴリズム取引を行う投資家に対するルール整備、13ページでございます。まず、ルール整備の必要性でございますが、アルゴリズム高速取引については、これが市場に流動性を供給しているという指摘、流動性が厚くなることでスプレッドが縮まって一般投資家にもその恩恵が及んでいるという指摘があることから、一律に日本市場から排除してしまうような対応を行うことは適当でないと考えられます。他方、アルゴリズム高速取引については市場の安定性や効率性、投資家間の公平性、中長期的な企業価値に基づく価格形成、システムの脆弱性等の観点からさまざまな懸念を指摘する声が存在いたします。

 箇条書きのところは飛ばさせていただきまして、こうした懸念が指摘される中、当局や取引所のアルゴリズム高速取引の全体像や取引戦略、あるいはその発注等に係るリスク管理状況等、十分把握できているとは言えない状況となっており、これを放置することは厚みのある市場の実現を図っていく上で支障になると考えられます。このため、欧米の状況も踏まえながらアルゴリズム高速取引を行う投資家に対する登録制を導入し、必要な体制整備・リスク管理義務を課した上で当局が取引実態等を確認することを可能とする枠組みを整備することが適当とさせていただいております。

 そのルールの枠組みが(2)でございます。登録制の下で以下のような措置を講ずることが適当である。まず、体制整備・リスク管理に係る措置として取引システムの適正な管理・運営、適切な業務運営体制及び財産的基礎の確保。それから、通知・情報提供に係る措置としてアルゴリズム取引を行うことの当局への通知、各注文がアルゴリズム取引によるものであることの明示、アルゴリズム取引戦略の届出、取引記録の作成・保存、それから、その他の措置として事業報告書の提出等でございます。

 他方で、海外に拠点を有する投資家に対しても、その実効性を確保することが必要であるということから、投資家から有価証券の売買等を受託する証券会社に対して、無登録でアルゴリズム高速取引を行う投資家や体制整備・リスク管理を適正に講じていることが確認できない投資家からの取引の受託を禁ずることが適当である。また、海外に拠点を有する投資家に対しては、監督の実効性を確保する観点から、国内における代表者または代理人の設置を求めることが適当である。

 それから、我が国の金商業者もアルゴリズム取引を行う可能性がございますが、一方で、既にそのシステム管理体制の整備や取引記録の保存等が求められておりますので、仮にルールを追加する場合であっても、当局への通知等、真に必要なものに限って求めていくことが適当である。また、実効性を確保する観点からは、上記の対応に加えて取引システムの運営主体として市場に最も近いところにいる取引所が当該投資家を調査できるようにすることが適当である。なお、これらの具体的内容については、欧米における今後の動向等を踏まえ、柔軟に対応できるようにしておく必要があると考えられるとさせていただいているところでございます。

 以上が第3章でございます。

 続きまして第4章、市場間競争と取引所外の取引でございます。まず、1.市場間競争でございますけれども、こちらにつきましては平成9年の審議会報告を踏まえまして、市場間競争を促進させる観点から取引所集中義務が撤廃され、取引所外取引が解禁されるとともにPTS制度の導入等の制度整備が行われたところでございます。その後、大口・バスケット取引等さまざまな取引ニーズに応えるために取引所立会外市場(TosTNet)の整備が進められたり、あるいはPTSがティック・サイズを先行して縮小し、取引所が追随したりといったことで市場参加者の利便性向上が図られてきたとの指摘もあるところでございます。このような点を踏まえると、市場間競争の意義は今日においても失われていないと考えられるところでございます。他方で、取引所取引と取引所外取引が全体として市場を構成していることを踏まえれば、取引所とPTSが適切に連携することにより市場全体として公正性や透明性を確保することが重要であるとさせていただいております。

 1枚おめくりいただきまして17ページ、2.PTSにおける信用取引でございます。PTSに関しては現状、信用取引が認められておらず、これを解禁することを求める声がございます。少し飛ばしまして、このためこの問題が解決されるよう、例えば以下のような形で適切なスキームが構築された場合には、PTSにおける信用取引を認めることも考えられる。PTSを提供する業者自身やそのグループ会社等が実質的な資金・株券の提供者とならないなど利益相反防止の観点から適切な措置が講じられていること。自主規制機能については、信用取引について過当投機といった弊害を可能な限り排除する観点から、取引所において①から③のような対応が行われているところ、PTSの信用取引についてもこれと同等の措置が講じられることとしております。また、このような自主規制機能については、基本的にはPTSを提供する業者において対応するべきものではございますが、特に上記の①、②を実効的に行っていくためには、取引所・PTS間で必要な連携を図っていくことが求められます。また、18ページでございますが、取引参加者に対する調査・処分(上記③)については、PTSを提供する業者自身が金商業者である以上、PTS運用業者が直接その調査・処分を行うことが困難であると考えられるところでございます。このため、これらの対応については取引所・日本証券業協会・PTS間で適切な協力を図っていくことが適当であるとしております。他方で、市場全体の公正性・透明性を確保して投資家保護を図る観点からは、例えば投資判断に重大な影響を与えるおそれのある情報が生じ、その内容が不明確である場合等には適切に売買停止措置等が講じられることが求められ、PTSに信用取引が認められれば、その必要性はさらに高まると考えられます。このため、取引所、PTS間の関係者において所要の体制整備を行うとともに、売買停止等に至るまでの判断や連携の手順等について具体的な検討が進められるべきであるとさせていただいております。

 3.はダークプールの位置づけでございます。近年、情報技術の進展に伴い、複数の顧客からの注文を電子的に付け合わせる取引前透明性のない(気配情報を開示しない)取引の場、いわゆるダークプールの利用が進んでいるところでございます。しばらく飛ばさせていただきまして19ページ目に移ります。我が国では電子的なシステムによって証券会社内で顧客の注文を付け合わせた上で、取引所の立会外市場に同時に取り次いで約定させる取引システムの運営は、PTSの認可を受けることなく金商業者が行うことが可能な業務と位置づけられております。

 このため、我が国におけるダークプールは他国と異なる取引形態をとる方となっている一方で、ダークプールの取引施設としての運営上問題が生じた場合に、十分な対応が可能かという議論があり得るところでございます。この点については、ダークプールを取引所の立会外市場に取り次ぐという現行の取り扱いを見直して、PTSと同様に認可制の対象とした上で一定の場合に気配情報の開示を不要とするといった取り扱いも考えられるところでございますが、当ワーキング・グループにおける審議においては、そのような取り扱いを検討することの要請は現状必ずしも強く聞かれなかったところでございます。

 以上の点を踏まえれば、ダークプールに関しては、当局が引き続き金商業者に対する規制を通じて実効的な監督に努めるとともに、将来的に新たな過大や環境変化が生じた場合には、必要に応じ制度的な対応を検討することが適当であるとさせていただきました。

 以上が第4章でございます。

 続きまして第5章、20ページ目でございます。取引所の業務範囲でございます。1.の現行制度については説明を割愛させていただきます。下のほう、2.取引所の業務範囲のあり方の検討でございます。以下のような環境変化を踏まえた対応が必要になっているというところでございます。

 21ページ目、(1)でございますが、取引所外取引への対応ということで、これまで取引所の子会社・兄弟会社には店頭デリバティブの清算業務、これらの取引所外取引に関する業務に係るシステムの開発が認可されてきているところでございます。ただ、関連業務の認可に際しては、さっき説明を割愛させていただきましたが、子会社・兄弟会社の業務を認可する際の考え方の1つとして、②取引所の円滑な業務運営に資するというものがございますが、店頭デリバティブの清算業務等は厳密には、その当該チェック事項であるところの取引所の円滑な業務運営に資するには当てはまらないとも考えられます。これらに対応するため、これまでは市場全体の機能の向上が図られる場合には認可を行うという運用面の対応が行われておりまして、こういうことから、その認可に関しての考え方の②について、「取引所の円滑な業務運営に資する」を「市場全体の円滑な運営に資する」ものとして整理することが適当であるとさせていただきました。

 (2)FinTechの動きへの対応でございます。FinTechを活用した革新的な金融サービス事業が急速に拡大しつつあり、今後の取引所の業務にも大きな影響を与えることが考えられます。取引所においてもそのような技術を有する企業等への出資等も想定しておく必要があると考えられます。このため、その取引所の円滑な業務運営に資するのみならず、取引所の円滑な業務運営に資すると見込まれる場合も関連業務として認可できるように考え方の整理を行うことが適当であるとさせていただきました。

 それから、3番目、国際化への対応でございます。今後、我が国の取引所が外国取引所やその他市場開設に附帯・関連する業務を行う外国企業への出資を積極化することが考えられますが、それらの取引所・企業等の子会社が出資当初、附帯・関連業務以外の業務を行っているようなケースも想定しておく必要がございます。このため、一定期間、取引所グループが業務範囲を超える業務を行う子会社を有する外国の会社の保有を認めるということが適当であるとさせていただきました。

 それから、4番目、取引所グループ内の柔軟な業務運営でございます。現状、取引所グループにおいては、取引所や清算機関、その他グループ内のシステム会社がそれぞれ取引システムの開発を行っておりますが、特にシステム開発など規模の経済が働きやすいものについては、取引所本体を含め、グループ内でノウハウを有するエンティティに集約するなど柔軟な業務運営を想定する必要がございます。このため、取引所本体の兼業業務範囲の見直しを行い、システム開発などグループ内で共通・重複する業務のうち、グループ内における適切な費用配賦などグループ内取引に係る管理が適切に行われているものについては、認可を前提に取引所本体での実施を認めることが適当であるとさせていただきました。

 それから、5番目、取引所を巡る経営統合でございます。東証と大証の経営統合により誕生したJPXグループが我が国の市場では圧倒的なシェアを有していることを鑑みれば、取引所の子会社や兄弟会社が行う関連業務の認可に際しては公平・公正な競争条件を確保することをこれまで以上に緩和する必要があると思われます。具体的には、例えば他に十分な担い手がおらず、市場全体のために取引所グループが行うことが求められているような状況にあるか等を関連業務に係る上記のチェックの際に考慮することが適当であるとさせていただきました。

 それから、3.取引所持株会社の経営管理機能の明確化でございます。取引所の業務範囲、業務内容の拡大等に伴い、取引所にはグループとしての経営管理の実効性確保の要請が高まることが想定されます。このためグループの頂点に位置する持株会社が果たすべき経営管理機能についても明確化ということが適当であり、例えばグループの経営方針の策定、適正な実施の確保、グループ内の会社相互間の利益相反管理、グループの法令遵守体制の整備等を行うことを求めていくことが適当であるとさせていただきました。

 以上が第5章でございます。

 「おわりに」のところは、結びの言葉を書かせていただいたところでございます。報告書の説明は以上でございます。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 なお、本日、ご欠席の永沢委員から意見書の提出がございましたので、お手元に席上配付させていただいております。適宜ご参照いただければと思います。

 それでは、討議に移らせていただきたいと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構ですので、ご質問、ご意見をお出しいただきたく存じます。いかがでしょうか。上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】  

 ありがとうございます。今日の報告の、特に第1章について大事だと思いますし、画期的だと思っております。永沢委員の資料2に、ほぼ私も認識を共通にしております。ただ、3つ目のポツのところに永沢委員なりの表現かもしれませんけれども、コンプライアンスマターとならないことを強く願っておりますとあります。つまり、ルールベースの最小限のところではなくて、国民の安定的な資産形成に資する良いサービス、あるいは良い商品を各社が競争して、横並びではなくてそれぞれ開発される。という意味で、特に営業戦略、他の事業者との差別化にこの原則を活用いただくと永沢委員は表現され、営業上もメリットがあるはずだという気持ちが表れているかと思いますが、私は顧客と事業者の両方にメリットがあるのだろうと思います。

 営業戦略、例えばKnow your customer、Know your productということは適合性原則、ルールを守るための大事な原則ではありますけれども、お客さんのことを知り、自分たちの商品のことを考えて、それで商品を選択していくというのは、顧客保護原則でもあり商売の鉄則でもあろうと思います。

 同じような問題意識でもう1つ、今日の報告の6ページに、いわゆるComply or Explainについて、むしろComply and Explainというふうに読むべき表現がございます。受け入れる場合には、その対応方針をと。単に受け入れるということだけではなくて、当社ではどのようにするのか、当社らしい取組みの方針、単に目標だけではなくて、どのように対応していくのか、Howのところも書き込んで体制整備をしていただくことが期待されている。

 付け加えですけれども、私の仲間の消費者側に立つような弁護士からは、こういうのに諸手を挙げて賛成して大丈夫かという意見がございまして、というのは、やはり色々な新しい被害などありまして、ルールの拡充、あるいは細密化を求める声は大変強いです。法令化まで至らないとしても監督方針であるとか、あるいは検査マニュアルにもっときっちり書き込んでもらうようにしたほうがいいのではないかという声があります。けれども、今回、私も含めて多くのメンバーが賛成するのは、そのような後追いだけではなかなか新しい被害に対応できなくて、色々問題が起こった上で初めてルールが整備されていくということを、これまで繰り返してきたような経過もありますので、ぜひそのようなことのないようにという意味で、今回のプリンシプルベースというのは重要ではないかと思っております。そういう意味で、繰り返しになりますけれども、この原則を立てて対応していくということと、それから、ルールをベースにしてきちんとやっていくということのその両輪がうまくいくということを期待したいという意味で、この第1章の重要性を再度強調したいと思います。

 以上です。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 池尾先生、どうぞ。

【池尾委員】  

 どうもありがとうございます。よくまとまったというか、ワーキングが始まった時点からすると本当にこういう立派な報告書がまとまってよかったなという感想を率直に持っています。それで、今、上柳委員が取り上げられた点に関連するので発言をしたいと思ったのですけれども、報告書の内容それ自体について、どうこうしてくれという希望、要望は特にないのですけれども、1章の顧客本位の業務運営に関する原則というのは、「当局において策定し」ということになっておりますので、当局において策定する際に配慮していただきたいという意味での要望を少し申し上げたいと思うのですが、原則に盛り込む事項の最後のⅦのところに動機づけの枠組みと適切なガバナンス体制ということになっているのですが、その次の定着ということも含めて考えたときに、一度ワーキングでも申し上げたかと思いますが、金融事業者の事業体の経営者に顧客本位の業務運営を進めることを尊重するような企業文化というのか、組織風土の醸成ということをやっていただきたいと思います。

 先ほどあったコンプライアンスマターとならないという話の言い換えになるかもしれませんけれども、そういうことを尊重する企業文化、組織風土というのか、そういうものが醸成されていくということがプリンシプルベースでのアプローチのある意味意図するところだと思いますので、動機づけの枠組み、適切なガバナンス体制というのは当然なのですが、それらの土壌となるような企業文化、組織風土の醸成という、そういうことを経営者の方に意図して、意図的に努めていただきたいということを策定される際に考慮に入れていただければと思います。

 以上です。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 他に、いかがでしょうか。どうぞ、福田委員。

【福田委員】  

 全般的には非常によく、これまでの議論を踏まえてよく書かれている報告書だと思います。全体を読ませていただいて、最後に「おわりに」が簡単に書かれているのですけれども、「おわりに」が若干物足らないかなという印象を持ちました。端書きは非常によく書かれていて、非常に力が入って書かれているのですけれども、「おわりに」が簡単に終わっていて何か物足らなく感じました。例えば国民の安定的な資産形成が促進されていくことは人口減少や高齢化が進む中で重要な課題であるとありますが、国民の安定的な資産形成はそれだけのために重要だとは、私は思わない――例えばですけれども、それも1つの要因だとは思いますけれども、それだけではないということです。

 それから、他の方の質問とも若干関わることで、最後に、関係者においては、こうした趣旨を踏まえてと書いているが、関係者には色々な方々がいると思います。特に、ここには金融当局もやっぱり含まれると考えるべきなのではないかなと私は思います。プリンシプルベースの規制というのは、ここでも非常に重要な柱になっていますし、私も重要だと思っていますけれども、過去にプリンシプルベースの規制が全てうまくいったというわけではありません。やはりプリンシプルベースの規制で、プリンシプルは定めるけれども、他の人たちがそれに乗っかって勝手にやってしまって、結果的にうまくいかなくなったような事例はないわけではないとは思います。

 プリンシプルベースの規制では、プリンシプルを定めると同時に、それをフォローする当局の役割というのが非常に重要です。当局の役割は部分的には触れられていると思いますし、本文中ではその点は反映されていると思います。ただ、ここで改めて、こういう関係者にはやはり色々な人たちの役割は重要で、そのなかで当局の役割も常に重要だという認識で報告書はまとめられていると理解したいと思います。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 他に、いかがでしょうか。どうぞ、鹿毛委員。

【鹿毛委員】  

 私もこれだけ重要な問題について、幅広く取り上げていただいて、当初はどうなることかと思いましたが、委員会の議論の成果もかなり織り込んでいただいて、非常に画期的な報告ができたと思います。事務局の皆様にも感謝したいと思います。

 もちろん、多くの方からご指摘があるように、ここからどう定着させていくかということが次の課題になりますので、この点について2点申し上げたいと思います。第一に先ほどの池尾先生のご意見にも関連するのですが、これまでの金融機関等の経営の基本は、言ってみれば法規制に違反しない限りにおいて最大限、利益の拡大を図るという、ある意味で、自然の行動原理だと思いますが、最近では環境問題とか社会問題とか、多くの面で、それだけでは済まないということが出てきています。資産運用の世界においても最低限のミニマム・スタンダードを守っているだけでは不十分ということが、この委員会の議論を通じても色々とご指摘がありました。

 ですから、今回の提言はある意味では、現在の金融機関経営の根幹に触れる部分も出てくるかと思います。報告書7ページに当局としても対話を進めるというような記述がありますが、事柄が経営方針、経営理念ということになりますので、金融機関の経営トップとの対話が重要と考えます。これから年が明けて業界団体の新年会などで、業界の方、特にトップの方々と接触される機会があろうかと思いますので、特に経営の上層部の方々との対話を行い、本施策の背景など問題意識について改めてご説明いただくことも定着化の一つのポイントになってくると思います。

 第二に、顧客本位経営の定着ということの、具体的中身の問題です。投資家ニーズに合った経営とは何かというと、最終的には優れた運用力といいましょうか、リターンの問題だと思います。やはりリスクに見合った適切なリターンが上がって初めて投資家ニーズに応えられるわけで、あえて言いますと売り方が非常によくなったとしても、商品の中身がよくなければ国民の資産形成は進まない。これは車の両輪ということだと思います。この点では当初、内外の比較についてご説明がありましたけれども、一口に整理しますと、アメリカでは米国株を中心に投信事業が拡大し、それが国民の資産形成にもつながってきた。

 一方、ロンドンを中心としたヨーロッパの世界では、国内市場が比較的小さい、国内経済力もそれほどでもないということで、株式を中心とした国際分散投資を中心に資産運用事業が拡大して、それがまた個人の国民の資産形成にもつながってきた。国民の資産形成ということからいけば株式が中核のアセットだと思います。日本の場合は、そうした中核資産が不在だったから資産形成も進まなかったわけです。中核に対するという意味では限界的資産と言ってもいいかもしれませんが、伝統的な株式債券以外の資産というのは、全体としては世の中で1割程度のものですが、日本の投信市場は、どちらかというとこの1割程度のものが中心になってきた。それが個人資産1,700兆の1割程度になっている一方、中核資産の部分が日本でまだ発展していないというのが課題ではないか。つまり、この点を打開していくということが、最終的に国民の資産形成につながっていくのではないか、と思います。

 私も長年運用業界におりましたので、反省を込めて申し上げているのでが、これは本来的には業界の努力の問題ではありますが、結果的にこれだけ長期にわたって内外の格差が開き、国民の資産形成も進んでいないという状況には国家的な課題があるのではないかと思います。例えばコーポレートガバナンスの議論をされたときも、最終的には国の稼ぐ力というものを前面に出されたと思いますが、やはり資産運用のフィデューシャリー・デューティーの問題も、最終的には運用機関の運用力の強化であり、それが国民の資産形成につながるという意味で、この問題をどう取り扱っていくかということが、この施策の究極の課題ではないかと思います。この報告書に関しては、内容的には私は全く異存ありません。どうもありがとうございました。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 他に、いかがでしょうか。どうぞ、林田委員。

【林田委員】  

 私も内容については、これでいいのかなと思っております。感想めいたことになってしまいますけれども、せっかくまとめたこの顧客本位の業務運営のプリンシプルを絵に描いた餅にしないということが一番これから大切になるのだろうと思います。そのためにやはり最も大切なことは、金融事業者自らがより良い行いを、顧客本位の行動をとる。その不断の努力を続けるということだろうと思います。それとあわせてやはり、金融事業者の自発的取組みとあわせて、当局の取組みというのも大変重要なのではないかと思います。当局は検査・監督を通じてしっかりとモニタリングをしていただいて、このプリンシプルについては何か忘れられた存在にならないように、今度こそ力を発揮していただきたい、当局にもお願いをしたいと思います。

 以上です。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 それでは、横山委員、どうぞ、お願いします。

【横山委員】  

 まず、最初に多岐にわたるテーマにつきまして、本当にすばらしい内容の報告をまとめていただきましたことを御礼申し上げます。私もこの第1章の原則につきまして感想めいたものを申し上げます。私も30年以上にわたりまして金融業界に席を置いておりますので、その観点から反省を込めて色々申し上げますけれども、この顧客本位の業務運営に関する原則、こういったプリンシプルを策定して金融事業者に定着させていくという、こういう取組みに関しては非常に画期的であって、あるべき姿かなと思っております。そして、このプリンシプルにつきまして私も最初の会議で申し上げましたけれども、この金融事業者、特に運用会社においても顧客というのは個人投資家であるということですね。したがいまして、金融事業者にとって、誰にとっての最善の利益を念頭に取り組むかという点がやはり一番重要である。もうこれに尽きると思っております。

 したがいまして、金融事業者が真にお客様の立場に立って、どのようなサービスを提供することがふさわしいのか。そして、対価として手数料をいただくに値するのかということを原点に立ち返って考える時期が来ているということを、背中を押されたということではないかなと思います。そうでなければ、この投信マーケットというものがいつまでたっても100兆円に満たないちっぽけなマーケットで終わる。そして、国民にとって大事な資産形成が進まないということではなかろうかと思っております。そして、こういったものを確実なものとしていくためにも、これも申し上げたことではありますけれども、金融リテラシーの向上に資する投資教育等の機会の提供だとか、あるいは第三者的な機関による評価、こういうものの必要性、そして情報の非対称性という観点からもわかりやすい言葉でリスク等々について説明していくということが我々業者にとっては必要である。

 こういったもののプリンシプルでありますけれども、このプリンシプル、ベスト・プラクティスというものを創生していくわけですけれども、ここが金融事業者にとっての特色ある経営ということであって、この特色ある経営をお客様が見て、そしてお客様がこの金融事業者を選んでいただくということですから、大変なものを世の中に示していく必要があると思っております。今回のプリンシプルというのが定期的な見直しも求めていくということでございましょうから、この当ワーキング・グループの議論がこういう観点でも優れてフィージブルというふうに認識しております。

 今、私は日本郵便の社長ということで全国2万4,000の郵便局を持っているわけでございますけれども、これは日本で最大規模の金融商品販売代理店というわけでございます。ただ、投資商品を扱ってまだまだ10年ちょっとでございまして、投資信託につきましても取扱いをしている郵便局というのは1,300程度でございまして、この貯蓄から投資へという動き、資産形成を定着させる動きというものをやっていくためにまだまだ私どもが力不足な面は否めないということでございますので、こうした点からもこの原理原則というものをしっかりしたものにして、私どもならではのお客様目線での長期の資産形成を前提とした商品の提案、そしてアフターフォロー、私どもの郵便局は地域、地域で、顧客視点というのはDNAとして染みついているのではないかと思いますが、やはり投資商品についてはまだまだ不慣れな部分もありますから、そういった点を徹底していくというのが我々に課された課題だと思っておりますので、今回の報告に基づいて新たに私どもとしてもさらなる見直しを進めてまいりたいと考えております。

 以上です。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 それでは、竹川委員、どうぞ。

【竹川委員】

 ありがとうございました。私から主に2点申し上げたいと思います。まず、1点目なのですけれども、3ページ目の顧客本位の業務運営に係る方針の策定・公表等のところの注です。前回の意見を取り入れていただきまして、注のところに「インベストメント・チェーンにおける最終受益者としての顧客をも念頭に置くべきである」と加えていただいているのですけれども、「取引の直接の相手方としての顧客だけではなく」の後につけ足し的に入っているような感じも致します。どちらかというとメインは最終受益者である顧客のほうだと思われますので、もう少し「専ら」とまではいいませんが、メインとして最終受益者としての顧客を念頭に置いていただきたいので、そちらをメインに置いた書き方に少し変えていただけるとありがたいです。

 2点目は6ページ目です。顧客の主体的な行動の部分なのですけれども、その2段落目、以前、永沢委員のほうからもありましたが、顧客に対し積極的に投資教育や金融商品に関する情報を提供することということが記載されています。気になるのが、積極的に金融事業者が投資教育を行うという点についてです。例えば現状の顧客、あるいは将来の顧客に対して投資教育が行われています。例えばある高校では株式投資教育にも取り入れられていて、親御さんにお聞きしますと、(株式売買シミュレーションの成果が)成績に反映されるということで非常に値動きの大きい会社の株を頻繁に売買することで利益を上げという、本来の長期投資とは逆の行動を行っているそうです。本来は企業価値に対して長期でお金を投じるという意味での投資を覚えさせたいのでしょうが、実際には株価の短期的な値動きを追う売買ゲームになってしまっています。そうした事例もあるので、積極的に投資教育を行うということを単に入れるのではなく、例えば「長期分散投資を念頭に置いた」とか、「長期的な資産形成に役立つような」といった前提を置いていただけるとありがたいです。

 最後に、顧客本位の業務運営に関する原則を受け入れます、ということを単に述べるのではなくて、金融機関は当局ではなく、顧客の立場に立った行動指針、具体的な情報開示をしていただけることを望んでおります。私は企業のマネープランセミナー等の講師で呼ばれることもありますが、若年層は公的年金不安等もあって資産形成をしていかないといけないという意識自体は非常に高くなっていると思っています。

 ただ、そこから投資に向かわないのは、現状、どういった運用商品を選んだらいいのかわからない。もっと言うと、どこの金融機関を信用していいのかわからないこともあります。ブランド力や運用力、その会社の特徴や強みがわからないことも背景にあると思います。そういったところも含めて情報開示をしっかりしていただくことで、顧客も金融機関であるとか商品を選びやすくなると思っております。ぜひとも顧客本位の業務運営に関する行動指針、具体的なものを出していただければと思います。

 以上です。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 それでは、大崎委員、上田委員の順で、大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】  

 ありがとうございます。第1章以外のところにあまりどなたもコメントされないので、記述に異論があるとかいうことでは全くないのですが、第2章以降、とりわけ第3章以降の部分で日本の市場規制のあり方についての新たな考え方を打ち出すということは大変、大げさに言えば歴史的な意義があることだと思っておりますので、このことは大変重要だということを再確認したいと思います。今、何といいましても技術が日進月歩でございますし、いわゆるFinTechで色々なことが出てきたりしまして、取引所や市場のあり方も本当に来年どうなるかわからないという状況でございます。

 アメリカでも今、SECのもとで市場規制の再検討をずっとやってきたわけですが、政権も変わり、委員長も退任されるというようなことで、その検討自体がどういうふうになるかも非常に見えにくくなっております。別にアメリカや欧州がどういうふうになるかということが日本のあり方を規定するわけではないとは当然思うのですけれども、今回、取りまとめた内容も来年以降の海外での状況の変化を見つつ、機動的にいわば新たな対応を講じていくというような姿勢をとっておくことは非常に重要ではないかと思っておりますので、この市場規制の検討というのは、そんなに頻繁にはやらないのですけれども、今年やったので5年はやらないとか、そのようにせずに機動的に検討していただければと思います。

 それから、第1章のところ、色々な方がコメントされておりますが、私はこの今まとまっている内容で非常にいいのではないかと思うのですけれども、2点だけ感想を申し上げますと、1つは、まず顧客の最善の利益ということについてなのですが、実は色々な人とこの議論をもとの案に基づいてしたときに、顧客の最善の利益って何だろうという話が出まして、私など思いますのは、顧客のニーズ、あるいは投資に対して何を求めているかということを端的に言えば、恐らく元本が保全されることは当然として、まあ、5%くらいのリターンが安定的に得られて、うまくいけば倍ぐらいになるという、これに尽きるのではないかなと思います。それ以外にニーズというのはないと思うのです。いつでも現金化して引き出すことができてという、そういうことが今現在、経済合理的に可能かというとはっきり申しまして、不可能です。

 ただ、顧客のニーズは、そういう不可能を求めているということをやはり、いや、これはニーズに応えなくていいということではないのですが、金融事業者の皆さんは、経済合理的に考えて、できるはずがないことに少しでも近似させるために努力をしているというのが現状だと思っておりまして、その点を踏まえてこの顧客本位の業務運営に係る原則への対応を進めるとともに、当局としてもこの原則を逸脱していると考えるかどうかの判断をされるときに、そもそも顧客が求めていることは経済的に成り立たないことなのだということをちゃんと理解して対応していただきたいなということを強く思うわけでございます。つまり、顧客の期待を裏切ったということが、すなわち金融機関が顧客の最善の利益をないがしろにしているという意味ではない。もちろん、そういう場合もあると思いますけれども、直ちにそうではないということです。

 それからもう1つございまして、今、稼ぐ力を高めるガバナンス改革というのを、国を挙げてやっておりまして、上場企業に対しては株主の期待に応えるようにという強いプレッシャーがかかっております。今、金融事業者の皆さんの中には株式会社で上場しておられるという会社も多数あるわけです。私は顧客と株主が必ずゼロサムゲームのような関係に立っているとまでは思わないのでありますが、とりわけ株主の短期的な利益と顧客の利益というのは、ややもすると利益相反的な位置づけになりやすいのかなという気がしております。

 つまり、顧客の手数料を下げてあげれば株主の利益は減るわけでありまして、ということを考えますと、この顧客本位の業務運営を追求し、顧客の最善の利益を追求するということがもしかすると、とりわけ短期的には株主の利益を高めないことにつながるかもしれないということがございまして、この点は金融機関の経営者の皆様にそうですよということを率直に株主にも説明していただきたいと思いますし、株主もそれを理解して長期的に企業価値が高まっていくのであれば、当面は顧客のほうに少し取り分が増えるのもやむを得ないというような判断をしてもらうことが大事なのではないか。これはもう全くの感想でございますが、そのように思う次第です。

 以上です。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 それでは、上田委員、どうぞ。

【上田委員】  

 ありがとうございます。まずはかなりの短期間に会議を運営していただいて、これほどのものが前回から2週間で出てくるとは思いませんで、事務局のご尽力に感謝いたします。その上で、前2回、私、欠席いたしましたので、その辺もしご議論していたら恐縮なのですが、第1章について今後の、実際にこれを実務に落として定着させていくという中でのコメントというか、感想めいたことを幾つかコメントさせていただければと思います。

 まず、2ページ目なのですが、これが本当にこのプリンシプルベースのアプローチの根幹のところをご説明いただいているのだと思います。このプリンシプルベースのアプローチという点では、金融機関は、これまでは、1つの決まった答えがあることを細目主義で何をどうすればいいかという箸の上げ下ろし的なことまでご指導を受けながら運営をしていました。このように、従来は金融規制、ルールベースでやってきたことをプリンシプルベースというものに変えなさいということで、大きな変化が必要になってくるのかと思います。特にこの趣旨というところ、要は大きな政策目標のために個々の金融事業者が置かれた状況を勘案して、それぞれの立場で考えなさいと。今までのように当局がこうしろと指導したからするのではなくて、それぞれが違った答えでいいから出しなさいということかと思います。

 ちょうど先々週欠席した理由なのですが、ロンドンで当局者と話をしていて、この辺のいい答えがあったのでご紹介させてください。このプリンシプルベースでの答えとは何でしょうかということで、それは、完璧ではないけれども、プリンシプルの趣旨に照らしてベスト・プラクティスだと思えるような取組みである。つまり、この答えには、完璧はないです。だけれども、それを見た人たちが、これがベスト・プラクティスであると納得できるような、そういう取組みをしなさいと、こういうようなことをおっしゃっていて、ああ、なるほどと思いました。他方、本日の永沢委員の意見書にもございますけれども、日本はどうかというと、ガバナンス・コードですら、とりあえずコンプライなのです。メンタリティとして不遵守で説明するというのはなかなかしづらい。とりあえず、我々、遵守していますと言ってしまいがちである。特に、本プリンシプルについては、従来ルールベースであったということ、そして、金融事業会社と、そして金融庁という当局が存在するという関係性があるということで、多分、コンプライしないという選択肢というのは相当厳しいのかなと理解をしております。

 先ほど上柳委員からもありましたけれども、Comply and Explainが大事であるというようなことにもつながるのかと思いますが、重要なのはコンプライのときに日本人がやりがちで、過去、スチュワードシップ・コード、ガバナンス・コードでも議論になりましたが、ボイラープレート、とりあえず、ひな形を作って、それに照らして書いてしまう。立派な作文をしてしまうということではなくて、作文は苦労の結果でもいいと思うのですが、実質が大事ですということです。例えばひな形というものはできるだけ作らないほうがいいとか、そういったことを定着の段階においてはぜひ注意喚起をしていただいて、各事業主体の独自の取組み、これが差別化であり、競争力の源泉ですよといったところをぜひ明らかにしていただければなと思っております。

 特に怖いなと思ったのが2ページ目の最後のところ、プリンシプルベースがうまくいかなかった場合にはルールベースに行きますよという点。これはつまり、プリンシプルベースをしっかりやらないと法律を改正しますよというふうに私は解釈したのですけれども、これは相当怖い規定でして、プリンシプルベースという、ある意味そのスコープに向かって自由な、今、状況を与えられているということであれば、金融機関の本部のコンプライアンス部門が頑張って立派な作文をして、それを社内で押し付けるということではなくて、金融事業者において現場と本部が有機的にご議論されて、いい形にしていただければと思いました。

 続いて、資料で1点だけ細かいところを申し上げさせていただきますと、ページに沿って申し上げます。5ページ目の中ほど、原則Ⅶで従業員に対する適切な動機づけの枠組み等とございますが、ここは従業員というように限定されているようなのですが、これは役職員でいいのではないかなと思いまして、必ずしも販売担当者の人のボーナスがどれだけ売ったかによるというだけでもなかろうということで、役職員という言葉で少し幅広くしてもよろしいのかなと思いました。あと、従業員研修その他適切な動機づけの枠組みと書いていますが、従業員研修とは動機づけの枠組みなのかなという、これは単純に引っかかってしまいました。専門性とか技能向上ということで、ここは句読点を工夫するとか、この言葉を少し外に出すとかあるのかなと思いました。適切なガバナンス体制、これは本当に全社的なことですばらしいことだと思います。

 続いて、すみません、もし前回議論があったら恐縮なのですけれども、6ページ目、ここが実際にこのプリンシプルベースを、いかに実効性を持たせるかといったところで大変重要なのかなと思いましたが、まず(1)のところでつけ加えられたというComply or Explainで受け入れない場合には、その理由を説明しなさいとありますが、できればもう一歩踏み込んで、その理由と代替策を説明しなさいと。恐らく「我々、やりません、以上終わり」ということは、本プリンシプル、求めていないと思うのです。それに代わる何らかの取組みがあれば、それを示してほしいということであれば理由と代替策というふうにしていただいたほうが、恐らく金融事業者のほうもやりませんという理由だけよりも、代替策をとりますということをご説明されたい向きもあるのかなと思いました。

 続いて(2)のところで、実はこの第三者的な主体というところなのですが、これは大変重要なものだと思いました。つまり、このプリンシプルに則って金融事業者がどういう取組みをされておられるかといったところを誰がモニターするか。従来のルールベースであれば当局でいいと思うのですが、このプリンシプル、対象は顧客、主には個人投資家であるというところが、顧客がモニターするだけの能力があるかというと、顧客にも色々属性がありますし、そもそも不特定多数ですのでなかなかモニタリング機能がないということで、こういう第三者的主体というのは1つの実験としていいことかなと思います。

 ただ、前回も議論があったかと思うのですが、これは一種の自主規制組織として機能するためには、単にグループを作って、クレームをそこで吸い上げて当局に伝えてくださいというだけでは足りなくて、ある程度踏み込んだ情報を取得できる調査権限とは言いませんが、金融事業者との間でのディスカッションできるような信頼性、あるいはそういった主体であるということの認識であるとか、あるいは必要に応じて金融庁とも踏み込んだ議論をするとか、そういった枠組み作りというのが必要なのかなと思います。主体は民間でいいと思うのですが、そのあたりの工夫は是非していただきたいと思います。例えばこれはイギリスのテイクオーバー・パネルとか、そういったものの運営に近いのかなと私は勝手に想像したのですが、そのパネルのようなものについても工夫をお願いしたいということです。

 同じく6ページの一番下、(3)の様々な担い手の多様化ということで投資家の利便性と利益を守るという観点からは、色々なサービスプロバイダのサービスが提供されて、それを利用するということは大変望ましいことだと思います。ただ、何となくこれだけを読むと、従来の販売会社はあまり信用できないので、独立の投資アドバイザーを使ったほうがいいのではないですかとも読めると思います。だとすれば、そういうサービスプロバイダの方たちについても同じく質の確保であるとか、例えば彼らもフィデューシャリー・デューティーというか、顧客本位の業務運営を行っていることの徹底が必要であるということ、こういった人たちにもそういったものが求められますよというようなことを実際のプリンシプルのところでご検討いただければと思いました。

 最後に7ページの当局の役割のところなのですが、恐らく従来のルールベースでの検査・監督というものとは全く違うアプローチになるのかと思います。ちょうど先週の出張のときにイギリスの2010年ごろの金融危機以前のプリンシプルベースでの監督ってどうだったのかという話を聞いてきたのですけれども、大きなスコープ、枠組みがある中で各主体、金融機関に自由な取組みをさせている。インタビュー、ヒアリングとレビューによって、つまり、その取組みをどうしているかというところの実効性を図っているという話を伺ってまいりました。

 それが2010年以降、ルールベースにグッと寄ってしまった結果、どうなったか。チェックボックス式で項目を1つずつチェックしていくという形になっている。日本がこれを今、逆に動かそうという話であるとすれば、これはご当局においてはご努力されるという前提だと思うのですが、一方で金融事業者側も従来のルールベースの検査・監督とは違うということで、お互い対応とか意識に変化が必要なのかなということで、そのイギリスの昔のプリンシプルベースの金融機関規制というものが案外日本でも対応策として参考になるのかなと思いました。

 すみません、少々長くなりました。感想めいたことで恐縮ですが、以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 それでは、濱口委員、どうぞ。

【濱口委員】  

 私はこのフィデューシャリー・デューティーの部分は出席していなかったので、その部分の報告書を読んだ感想を申し上げたいと思います。プリンシプルベースは結構なのですけれども、実効を持たせるためにはその原則にそぐわないことが行われていた場合のエンフォースメントをどうするのかというのが欧米の状況を見ても非常に大事だと思います。それから、この目的は貯蓄から健全な投資へということですから、これは従来の延長線で過剰な情報とか書類とか、リスクの説明に終わらないように注意していただきたいと思います。

 その今申し上げた、いずれのためにも、多分、今後のフォローアップとかモニタリングが大変重要だと思いまして、そのためには従来の枠にとらわれずに幾つか新しいご提案がありますけれども、手間暇をかけて実施していく必要があると思いますので、人材とか費用面でのリソースの投入には配慮される必要があると思います。例えば金融機関の本社での調査だけではなくて、覆面調査のように実際に現場の店頭に行かれて、一体どういう書類が交わされているのか、どういう会話が交わされているのかといったことまでぜひ見ていただきたいと思います。

 それから、もう少し大きな観点から、他の物品とかサービスでは、ある意味で当たり前のことを金融市場ではあえてこのように取り入れる必要があるのかということを考えますに、やはりそこでは競争をしているようで健全な競争環境が整っていないことが一因ではないかと私は思っています。したがって、このようないわばミクロの行為規制だけではなくて、マクロの視点から市場の構造改革に取り組んでいただくことが必要、構造改革にも取り組んでいただく必要があると思います。

 例えば非常に卑近な例ですけれども、私の知っている限りでは、なぜいまだにほとんどの銀行の店頭は朝9時にしか開かなくて、3時に閉まるのか。なぜ投資とか運用のことをゆっくり考える時間がある土曜日、日曜日に開いていないのかといったことでして、今では市役所でも9時前に開いていますし、夜は8時ごろまでやっている中で、なぜもっと抜け駆けをしてそういうサービスに取り組むという銀行がもっと出てこないのかというような疑問がありますので、そういう問題について強制的な指導というよりは、市場を構成している金融機関の行動原理とか属性、そういった面に踏み込んで構造面から分析をして取り組んでいただく必要があるのかなと思います。

 以上です。

【神田座長】  

 ありがとうございました。

 それでは、有田委員、どうぞ。

【有田委員】  

 ありがとうございます。本市場ワーキング・グループでは、恐らく最後の会合だと思われますので、多くの委員の方と重複することもあろうかと思いますが、一言だけ感想を申し上げます。

 経済発展のいわゆる雁行形態論というのがいまだに有効だといたしますと、私は、日本のように世界の中で成熟しつつある経済においては、かつてのように銀行借入という負債の確保に奔走いたしまして、それを元手に重厚長大な産業を興すというモデルの競争力がここへ来てますます低下していると思っております。一方、今までそういった産業のおかげで蓄積されました国内の金融資産を国内外に効率的に運用する高度な資産運用業によって、国民経済全体に寄与するというモデルが、より一層大切になってきていると感じております。まさに1ページの「はじめに」の最初に1,700兆円を超える家計金融資産というふうに謳われておりますが、この1,700兆円が、大崎委員がおっしゃったように5%で倍になるというような夢物語は無理にしても、運用効率が1%違うことによって1年間に17兆円にも及ぶ国富の継承の問題になってくる。そういうテーマであると考えているわけです。

 翻って、常に資金の出し手でございます国民の立場から見ますと、あるいは我々は国民として認識していないかもしれませんけれども、長生きリスクに備えることがつまり将来の資産形成に資することにもなるわけでございまして、よって資金の出し手のほうからも、資産運用業は非常に重要な産業である。にもかかわらず、家計の安定的な資産形成に関する問題意識というのは、こちらにも述べられておりますとおり諸外国に比べて全体として低く、そのことによって体制がまだ整備されていないという危機感を私自身は常に強く持っておりましたので、今回の市場ワーキング・グループのそれぞれのテーマで活発な議論が行われまして、このような報告書が取りまとめられたということについては非常に喜ばしいことだと考えております。

 多くの委員の方々からご指摘がございましたように、今後はこちらに記載されております内容を関係各位が一言一句理解して、その実現に向けて具体的な行動をとっていくことを強く希望いたしますし、私もその業界に身を置く一員として努力をしていきたいと思っております。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 林田委員、どうぞ。

【林田委員】  

 先ほど顧客の最善の利益ということについて大崎委員から、言ってみればリターンであるという本音ベースなのかもしれませんけれども、かなり思い切った定義づけがされたと思うのですけれども、私としては、顧客を勧誘して説明をし、実際に運用して成績が出る。その後のアフターフォローも含めて、もう少し何か包括的な意味合いで捉えておりました。そのあたり、他の委員の方々はどう思われているのか。あるいはこの原則を作られる当局としては、どういう考えでいらっしゃるのか。大崎委員だけご意見を言われたので、その辺ご意見がどなたかないかなと思いまして。

【神田座長】  

 ありがとうございます。鹿毛委員も言及されたと思います。横山委員、どうぞ。

【横山委員】  

 私も大崎委員の最後のところについてご意見を申し上げますけれども、そのベスト・インタレストについて顧客か株主か、株主イコール当該金融事業者なのかということで、短期か中長期かというお話だったと思うのですけれども、5%とか倍とか、それが理想なのかもしれないけれども、そういったことをまじめに考えている人というのは、そこまでいないと思います。やはり資産を健全に成長させたいというお客様の層に対して我々金融事業者はどう応えていくかということだと認識しております。そういう意味では、林田委員のおっしゃったアフターフォローも含めた色々なやり方ということが必要だと思っております。

 過去のこの会議において、ほかの委員から金融事業者は品格のある稼ぎ方をしろというご意見がありまして、まさにそのとおりだと思っております。顧客視点のない、品格のない商売をやっていると、お客様との関係というのが短期で途切れてしまう。どんなビジネスでもそうでしょうけれども、お客様との関係というのは中長期の関係というものを構築していく必要があるということでありまして、顧客とともに発展する、成長するという関係というやり方というのは、私はあると思います。ですから、そういうやり方を金融事業者というものは追求していかなければいけないと考えております。

 それからもう1点ですけれども、濱口委員から金融機関がなぜ休みの日はやらないのだというようなお話が……。

【濱口委員】  

 例です。

【横山委員】  

 ええ。ございまして、金融機関、オブザーバーの方がおられるのでおっしゃっていただきたいのですけれども、今は土日に多分、資産運用相談会とかいうものを各金融機関も活発にやっておられると認識しておりますし、私どもの郵便局でも土日に開けてやっているところはございます。全銀協の田村さん、いかがですか。

【神田座長】  

 どうぞ。

【田村オブザーバー】  

 今、横山委員がおっしゃられたとおりであり、また、以前のこのワーキング・グループの場で池尾先生から、それだけのことを説明するなら1時間以上かかるのではないかといったご指摘、現役世代の方は平日には銀行の店頭には行けないというようなご指摘をいただきました。まさにご指摘のとおりでございまして、実際、最初に店頭に来られた方に説明して投資商品を買っていただくには、まず1回で終わることはないですし、1回で終わるとしても1時間、1時間半ぐらいの時間はかかってしまう。現役世代の方が平日には来られないので、土日に相談用の窓口を開設したり、あるいは平日の夜8時、9時ぐらいまで店を開けて対応したりするような努力はいたしております。

 今回のワーキング・グループに参加させていただいたことに大変感謝をしております。銀行として、これまでルールを超えることは一切いたしませんということではなくて、お客様本位の観点から、それ以上のことにも努力して取り組んできたつもりではございます。ただ、このワーキング・グループで皆さんからの様々なご指摘をいただいて、まだまだ課題が残っているということを改めて認識をしております。今回、第1章でご提案いただいているのは、これまでのルールベースのアプローチからの大きな転換でありまして、民間としては、以前も申し上げましたけれども、このプリンシプルに防御的に対応するのではなくて、お客様へのサービスの競争だと前向きに捉えて独自性を発揮して取り組んでいきたいと考えております。

 加えてその際に見える化というのをしっかりと行っていくことが重要で、例えば先ほどの土日の話にしても、テレビコマーシャルなどもやってはいたのですが、もっときちんと説明するということが必要かなと思っております。このルールベースのアプローチからの転換ということで、今後のご当局の検査・監督の場での対話のあり方なども重要になってくると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 顧客の最善の利益とは何かで論争になっていますけれども、鹿毛委員と大崎委員に一応、ご発言の機会を与えさせていただき、それから、島田委員にまだご発言いただいておりませんので、その後、島田委員ということにさせていただきます。鹿毛委員、どうぞ。できるだけ手短にお願いします。

【鹿毛委員】  

 私もリターンということを強調しましたけれども、顧客ニーズといいましょうか、最大の目的というのは今回の議論では多様であるということが1つの結論であって、それぞれの顧客ニーズに合わせて対応すべきであり、人によってそれは違うだろうというのは多分1つで、これは大崎さんもよくよくご存じの上で議論としてああいうふうにおっしゃったのだと私は理解しております。ただ、将来的に国民の資産形成を高めていくという施策を考えた場合には、やはりそのリターンというものも重要なファクターとして入れていかないと、なかなか欧米の水準には追いつかない、国民の資産形成も進まないだろうと、そういう趣旨で申し上げました。

 以上です。

【神田座長】  

 ありがとうございました。

 大崎さん、どうぞ。

【大崎委員】  

 資産を運用する目的は、資産を増やすこと以外には絶対にありません。それ以外の目的、例えば節税とかいうことであっても、それはトータルで資産を増やすということを目的にしているので、当然のことと思っております。ただ、私は、そういうことを達成、100%達成しないと顧客の最善の利益を損なっているかのように取られてしまうと非常に困るということを申し上げたわけで、金融機関はそういうことをしなければいけないとかいうことを言っているわけではありませんし、また、全ての顧客が今の経済情勢において、例えば安定的に5%のリターンを得るということは難しいということを認識していないというようなことを言っているわけではありません。

 ただ、無い物ねだりというのは当然あるわけでございまして、私も自分の資産が毎年5%ずつ増えていったら非常に嬉しいです。ただ、それは非常に難しいし、そのためには一定のリスクをとらなければいけないということを私は理解しておりますので、今年などは結構損しましたけれども、それはしょうがないと思っているということなのですが、その中で金融機関は最善の努力をしていただきたいという趣旨なので、もし誤解があったら、何で誤解されてしまったのかなと少々残念に思います。

【神田座長】  

 それでは、時間の関係もございますので、島田委員、どうぞ。

【島田委員】  

 今の大崎委員のお話のように、お客様には色々な期待があると思います。その中で若干今までの金融機関というのは、お客様の幻想に近い期待に夢を与えるような対応の中でご商売をしてきた部分があったのではないでしょうか。だからこそ、できないことはできないというふうにきちんと説明しましょうよということも今回のお話には含まれているのではないかと理解しております。また、お客様は様々な知識のレベルや、期待リターンの水準、リスクに対する耐性もあると思いますので、例えば説明がわかりやすいとか、必要とされるサービスは何なのだろうといったときに一律に考えるのではなく、柔軟に、付加的な説明の書類や、あるいはお客様に対する説明においても幾つかのレイヤーに分けて考えていく必要があるのではないかと考えます。

 今回、顧客という言葉の中には既に金融商品を保有していらっしゃるお客様というニュアンスを感じるのですが、国民の安定的な資産形成ということを考えた場合には、一番広い間口の中での顧客というものの中には、預金者である潜在顧客があります。その方たちに対して市場に投資をしていっていただきたいという考えが根本にあると思います。そうであるなら、一番易しい顧客への説明については、その顧客というのは既に投資をしているお客様だけではなくて、これから投資をしていく預金者に向けての情報提供ということを意識していただきたいということを1つお願いとして、また確認させていただければと思います。

 それからもう一つ、5ページの7番、従業員に対する適切な動機づけの枠組み等について。今回の全体の筋の中では、親会社と子会社の関係にもこれが反映されるべきと考えております。当然、全てのインベストメント・チェーンについて、今回のフィデューシャリー・デューティーを考えるということの前提の中には、自社の従業員に対する適切な動機づけの枠組みということと同時にグループ企業に対する適切な動機づけの枠組みということもお考えいただけることを期待しております。

 以上です。

【神田座長】  

 どうもありがとうございました。

 たくさんご指摘をいただきましたが、これから取りまとめをお願いしなければいけませんので、報告書の一部修正というか改善を含むご発言と私が理解したところを今から順次、私から申し上げます。そして、事務局から適宜お答えいただいて、どうするかということでご相談をさせていただきたいと思います。時間順で私も全部きちんとメモを取っていなかったかもしれませんので申し訳ないのですが、まず、福田委員から「おわりに」が物足りないというご指摘があったかと思います。それから、竹川委員から具体的なご指摘として、まず3ページの最初の注の書き方です。直接の相手方の顧客、最終受益者、この書き方だと後ろのほうがつけ足し的に読める。それから、6ページへ行きまして(2)の投資教育というところで、長期的な投資や分散投資ということを書いての投資教育としたほうがいいのではないかということ。

 それから、上田委員から幾つかご指摘いただきました。それがまず5ページ目の、今、島田委員からもご指摘がありましたⅦの従業員というところ、上田委員からは役職員でいいのではないか。島田委員からはグループを意識して親会社、子会社を含めてのグループ内の従業員という趣旨で、これは修文のご提案でないかもしれませんが、ご趣旨としてはそういう意味ではないかということかと思います。上田委員から6ページの(1)のところで、コンプライしない場合には、その理由だけでは物足りないのでプラス代替策という表現でというご指摘だったと思います。あと、上田委員から6ページの(2)の第三者的な主体というところで、パネルのようなものとか、あるいは(3)の担い手の多様化、その多様化された担い手について当然質の確保やフィデューシャリー・デューティーが求められるというご指摘は、修文というよりは確認というか、そういうふうにこの報告書を理解するということかと思います。そしてまた7ページの(4)の当局の役割で、イギリスのかつてのというか、プリンシプルベースは参考になるでしょうと、これもご感想ということで理解いたしました。

 そんなところなのですけれども、事務局のほうから適宜お願いできませんでしょうか。

【齋藤市場課長】  

 ご意見を踏まえてどうするかということに関しては、また座長とご相談をさせていただきたいと思いますが、まず、3ページ目のIの注書きのところに関してのご意見については、常に何か取引の直接の相手方の顧客はあまり重要ではなくて、インベストメント・チェーンにおける最終受益者が専ら重要であるかどうか、場面によって色々あろうかというところで、我々としてはつけ足しではなくてほぼ同等の位置づけで書いたつもりではありましたということをまずご説明したいと思います。

 それから、5ページ目のⅦのところでございますけれども、1つには、我々の思いとしては、役員は経営陣なので基本的にはⅡに相当する顧客の最善の利益を図ることを主体的に考えて行動するのは当然ではないか、むしろ、役員が職員に対して役員の考えていることをきちんとわかって、理解した上で行動してもらう枠組みが重要ではないかというつもりで、ここは役職員ではなくて従業員という言葉を使っておりました。また、従業員研修も専門技能の習得というような従業員研修もございますが、ここでは最善の利益を追求するための行動とか、顧客の公正な取り扱いとか利益相反の適切な管理を促進するというための従業員教育というつもりで書いていたので、それは動機づけの枠組みの1つかなと考えていたところでございます。

 それから、6ページ目の「その際」のところでございますけれども、受け入れない場合にはその理由をというのは、ここでどうして書いていたかというと、もちろん受け入れないことは事業者にとっての経営判断としてあり得るということに加えて、事業者も様々なので、そもそも今の事業、やろうとしている事業内容とは関係がない注書きとかも入っているのかなと思っておりまして、そういう意味で入っていない場合には、その理由といったことで対応できるのかなと思っていたというところでございます。それから、6ページ目の(2)の顧客に対する投資教育についてのところでございますけれども、長期・分散・積立がとにかく何を差し置いても重要だとまで書けるかどうかというところはあろうかとは思います。書くとすれば、安定的な資産形成に資するようとかかと思いますが、そこも座長とご相談をさせていただきたいと思います。

 あと、「おわりに」のところは、最後の関係者に当局が入っているのは当然だと理解をしておりますし、もう1回、気を引き締めて考えてみたいと思います。

 以上でございます。

【神田座長】  

 ご趣旨を表現にするときの日本語の問題もあるとは思うのですけれども、例えば時間の関係で一例だけ申し上げますと、委員からご指摘の3ページの注などで言えば、現在の文章は何というか、not only but alsoなので、but alsoのほうを強調しているつもりの文章になってはいるはずです。もう少し強調する日本語のほうがいいというご趣旨かもしれません。いずれにしましても、この場で「てにをは」を確定するという作業をすることは時間的にもちょっと無理があると思います。それで、他方、もう一度年内にお集まりいただくというのも不可能ではないのですけれども、皆様方もお忙しい上に、そこまでの必要もないように感じます。ご趣旨にはご賛同いただいており、それをうまく表現する、「てにをは」といいますか、もう少しそれを超えている部分もあると思うのですけれども、そういうあたりでのご示唆だと思いますので、もしできましたら次のようにさせていただいてはと感じます。

 本日いただきましたご指摘で、今、事務局からも文章を書いた立場からのご説明をいただきましたので、事務局と私のほうでご相談をさせていただいて、それで必要な修文というか、修正があればさせていただきまして、可能であれば皆様方にそれをご覧いただいてというふうには思いますけれども、その他にも、「てにをは」とかもあるので、全体的な「てにをは」その他の表現ぶりの精査というものは、大変恐縮ですけれども、私のほうにご一任いただければと思います。そういったものを全部整えた上で皆様方にご確認をいただきたいと思っておりますけれども、それは集まるということではなくて、適宜ご確認をいただいた上で取りまとめということにさせていただいてはと思います。いかがでしょうか。そのように進めさせていただいてよろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】  

 どうもありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきたいと思います。取りまとめたものの公表等の取り扱いにつきましても、恐縮ですけれども、今後の状況等に応じて私のほうにご一任をしていただきたく存じます。このワーキング・グループでございますけれども、本年5月13日から12回、本日を含めて、会合を重ねてまいりました。メンバーの皆様方、また、オブザーバーの皆様方には大変お忙しいところを幅広いテーマにつき、毎回大変精力的なご議論をしていただき、大変ありがとうございました。おかげさまでお手元のような報告を取りまとめることがほぼできたところに達しており、近々取りまとめをすることができるに至りました。私からもこの場を借りまして厚く御礼申し上げます。

 それでは、以上をもちましてこのワーキング・グループを終了とさせていただきます。皆様方、どうか良いお年をお迎えください。

 
――了――
 
 

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