金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第29回)議事録

 

1.日時:

令和2年6月29日(月)15時00分~17時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室





【神田座長】
 それでは、定刻にちょっと早いですが、始めさせていただきます。

 ただいまから、市場ワーキング・グループの第29回目の会合を開催させていただきます。

 皆様方にはいつも御多用のところ、この会議にお集まりいただきと、いつも申し上げるのですが、今日はウェブ会議ということでございまして、お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会合でございますが、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインとさせていただきます。一般傍聴はなしとさせていただきます。メディアの関係者の皆様方には、金融庁内の別室にて傍聴していただいております。議事録はこれまでどおり作成し、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

 今回、オンラインで、委員の皆様方、オブザーバーの皆様方に参加していただいているわけですが、2点、注意事項がございます。まず、御発言されない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にしていただきますようにお願いいたします。御発言されるときには、マイクをオンにして、ミュート解除で御発言していただいて、御発言が終わられたらまたミュートにしていただくということでお願いできればと思います。

 第2点目として、発言を御希望されるときなのですが、オンラインですので、いきなり御発声いただくというのもありかと思うのですが、幸いチャット機能というのがついていまして、そのチャット機能を使って、全員宛てに、「発言希望」というふうにお名前と共に入れていただく、あるいは協会名とかの組織名でも結構かと思いますが、入力してください。それを確認させていただきまして、私どもから指名というか、御発言を促すという形でさせていただきたいと思います。なお、御発言に際しては、念のため御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言いただければと思います。

 それでは、しばらく御無沙汰いたしましたが、本日も前回に引き続き、「顧客本位の業務運営と超高齢社会における金融業務のあり方について」をテーマに御議論をお願いしたいと思います。

 まず、事務局から事務局提出資料について説明をしていただきまして、その後、皆様方から御意見等をいただきたいと思います。

 それでは、事務局からの説明をよろしくお願いいたします。

【太田原市場課長】
 それでは、資料1の1ページ目を御覧ください。

 昨年10月以来、顧客本位の業務運営のさらなる定着に向けて、制度や「原則」の在り方、高齢者等への対応、金融機関による情報提供の在り方等につきまして、御議論を行っていただきました。

 本日はこれらの議論を踏まえて、より具体的な対応としてどのようなものがあり得るかについて議論を深めていくために、主に4つの論点を掲げました。順に紹介したいと思います。

 2ページ以降、論点①、誠実公正義務・適合性原則の具体化についてです。

 3ページです。最低基準を定める法規制とベストプラクティスの実現を目指す「原則」は両輪の関係にあり、両者を適切に組み合わせていくことが適当であると考えられます。

 ハードローである金融商品取引法には、誠実公正義務・適合性原則がありますが、これらのハードローの規定を、より実質的なものとするために、両規制に関する監督上の目線を、監督指針等で例示していくことが適当と考えられるがどうか、としております。

 6ページでも、同様の観点から、提供する金融商品の内容及び顧客を十分に知ること、顧客に適合すると考える合理的根拠を持つことなどを、監督指針等で明確化していくことが適当と考えられるがどうか、としています。

 続きまして10ページ以降、論点②、顧客への情報提供の在り方についてです。前回3月25日の市場ワーキング・グループでは、11ページにあるように、手数料、リスク、利益相反等の重要な内容を容易に比較できる簡略な書面を検討していくことが考えられるがどうか、等の論点を掲げました。

 本日はこれを一歩進め、資料2、3の重要情報シートを用いることが考えられるがどうか、としています。資料2が金融事業者編、資料3が個別商品編です。これらをたたき台として御議論いただきたいと思います。

 なお、13ページにありますように、業界で現在使用されている既存の類似の資料との関係につきましては、重要情報シートに説明内容を統合していくことも考えられるがどうか、としています。また、株式・公債・円建て普通社債等については、商品性が複雑ではないことを踏まえ、重要情報シートの記載事項については、業界団体や各金融事業者の創意工夫に委ねてはどうか、としています。

 併せて14ページでは、顧客・販売会社双方の負担軽減の観点から、重要情報シート等の資料を用いて情報提供をすること、契約締結前交付書面の記載事項のうち重要事項を顧客に説明すること、顧客の求めがあれば法定書類を紙で交付することを顧客に伝えること、を満たす場合には、原則、目論見書等の法定書類の電子提供を可能とすることを検討していくことも考えられるがどうか、としております。

 続きまして18ページ以降、論点③、金融商品販売後のフォローアップについてです。

 20ページの、3月25日事務局資料にありますように、リスク性金融商品の購入後、フォロー、アドバイスを受けていない、またはほとんど受けていないと回答した者は全体の約8割弱ありました。

 そこで、1枚戻りまして19ページにありますように、金融商品・サービス提供後における顧客への適切なフォローアップの実施について、原則に反映していくことも考えられるがどうか、としています。また本日は、どのようなフォローアップが望まれるかについても御議論いただければと思います。

 続きまして22ページ以降、論点④、超高齢社会における金融業務の在り方についてです。

 25ページです。2月13日の市場ワーキング・グループでも御議論いただきましたが、金融機関としては、福祉関係機関等と連携し、高齢顧客財産の適切な管理に資する対応を行っていくことが期待される。こうしたことから、今後、業界団体において、福祉関係機関や行政等と協力しつつ、具体的な連携と支援内容について指針を策定していくことが考えられるがどうか、としています。

 この指針には、顧客のどのような兆候・行動を認識した場合に、連携した支援を行っていくべきかが含まれます。25ページの事例など、金融機関にとって対応が取りやすくなるような事例が積み重ねられていくことを期待しているところです。

 また、26ページにありますように、顧客に認知判断能力の低下があると思われる兆候・行動が見られ、かつその状態を放置すれば顧客財産の管理に重大な支障を来すような場合で、緊急性が高いと思われる場合など例外的ケースにおいては、個人情報保護法上、家族や福祉関係機関等に顧客の必要情報を提供できる場合もあると考えられます。

 業界団体におかれましては、こうした例外的ケースがあることも考慮に入れて、先ほどの指針を策定していくことが考えられるがどうか、としています。

 また29ページでは、金融取引代理のあり方について、同様に、業界団体において指針を策定していくことが期待されると考えられるがどうか、としています。

 そして、その際、その用途・方法・金額に照らして、顧客本人の利益にかなうと判断できるものについては、柔軟な対応を行っていくことが必要と考えられるがどうか、としています。

 30ページでは、その他、業界の好事例の集約・還元、指針策定が期待されるものを記載しております。

 最後に31ページの、金融契約の照会システムについてです。金融資産を有する方が死亡した場合や、金融資産を有する方の認知判断能力が低下した場合、その遺族や家族において、本人がどの金融機関と取引を行っているか分からないおそれもあります。

 こうした中、例えば証券分野では、証券保管振替機構、通称「ほふり」ですが、ほふりが口座開設の有無について照会する仕組みがあります。証券分野以外の他の分野においても、既存の取組やコストも勘案しつつ、こうした仕組みの要否・課題・その解決策等について検討していくことが期待されるとも考えられるがどうか、としています。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうも御説明ありがとうございました。若干のウェブ参加の委員の方々から、声が聞こえにくいとのチャットをいただいておりますが、個々に皆様方の手元の端末で、スピーカーの音量を多少上げるなりしてみていただければと思います。

 もちろん、さらに何かあれば、また事務局まで、チャットその他で御指摘いただければと思います。

 それでは、委員の皆様方から御質問、御意見を承りたいと思います。今回も多くの委員に御発言いただく機会を確保したいと思いますので、これまでリアルの会議をしたときのように、5分を目安とさせていただければということでありまして、恐縮ですが、4分を過ぎますと事務局から、発言時間の残りは1分である旨のチャットが、発言されている委員の方だけに送付されるそうですので、発言時間の参考にしていただければと思います。

 それでは、御発言の御希望を上柳委員、野尻委員、高田委員の順でいただいておりますので、上柳委員、いらっしゃったらお願いします。

【上柳委員】
 上柳です。2点ございます。1つは適合性原則のところでございますが、法規制と監督指針とを組み合わせるという点はもちろん賛成でございますが、具体的に、この資料で言うと6ページのところの下に、2つポツがありまして、商品内容と顧客を十分に知ること、それから合理的根拠を持つこと。これらは、何度か申し上げましたが、欧米の動向等に照らして法規制に上げてよい、上げるべきだと思います。

 そのうえで具体的に、どのように顧客のことを知っていくのかとか、どういう場合に合理的根拠があるのか、あるいは合理的根拠を検討するときの要素は何かについては、監督指針でということが当面の正しい立場ではないかというふうに思います。これが1点目でございます。

 2点目は、資料で言うと14ページ辺りになるのですが、この重要情報シート等が交付された場合に、原則、電子提供を可能にするという記載があります。電子提供の範囲を広げる余地もあるのではないかと思うのですが、この「原則」という書き方が、仮に法規制上、あるいは金商法上、電子提供を可とすることを原則とするという立てつけだと、まずいのではないかと思います。

 今までのように、これこれの場合は例外的に電子提供も可とするという立てつけであるべきだと思いますし、そういう意味で、この「原則」の言葉の問題かも分かりませんが、危惧を覚えるというか、原則とすることについては反対でございます。

 それに関連して、重要情報シートの中身ですが、これはいろいろこれから研究するということであるとは思いますが、少なくともリスクのところに仕組商品であるとか、特定保険の場合になると思いますが、想定最大損失、平成22年の監督指針で、一部の商品についてこれを示すことを求めておりますが、きちんと書くことは必須ではないかと思います。

 17ページに、欧州のキー・インフォメーション・ドキュメンツの記載内容が書いてありますが、その記載内容の2つ目のところでしょうか。リスク・リターンプロファイルの中に、投資資金の想定最大損失、そのほか入っておりますので、これは必須ではないかというふうに考えています。

 重要情報シートにさらに付け加えるべきことがあるのかも分かりませんが、現時点では以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして野尻委員、いらっしゃいましたらお願いいたします。どうぞ。

【野尻委員】
 野尻です。お疲れさまでございます。私からは3点、意見を述べたいと思います。

 まず1点目ですが、重要情報リストに関してになります。一応、これまで共通フォーマットと呼んできたものがここに変わったと、こういう理解でいいかと思っているのですが、2つのシート、業者と商品と2つというのは、自分の中で想定をしておりませんでした。

 金融業者編を見せていただきますと、商品ラインナップの考え方というのは非常にいいと思ったのですが、それ以外の情報は、何か改めて公表していくものなのかという気がいたしました。できるのであれば、こういうものは1つに統合できるほうがいいと思ったものですから、商品ラインナップの考え方を金融商品編に組み入れるようなことができるのかどうかは、検討に値するのではないかと思います。これが1点目です。

 2点目になりますが、同じく重要情報の使い方だと思うのですが、サンプルを見せていただくと、1つの商品ごとに書面を用意してということになると、商品を説明するたびに、一個一個お見せし、それでまたチェックリストを別に作って、これは読んでもらえたかどうかとか、だんだん、やることの作業のプロセスが多くなっていくように思います。

 もしこれが、ウェブ上で複数のものを比較するというようなことが可能になる前提を持ったものであれば、ぜひ、そういうふうに、法定シートというものではなくて、消費者が商品を比較したり、分析をしたり、選ぶためのプロセスに供するものにすべきではないかと思います。

 それから3点目ですが、25ページ、それから29ページに、高齢者のサービスのところで、顧客財産の適切な管理とか顧客財産保護といった表現があるかと思います。金融取引の代理というのは、基本は代理人がお金を引き出すということですから、その意味では間違いのない議論ではあるのだと思うのですが、昨年の報告書の中では、プルーデントマンルールも置いて、もう少し高齢者にとっての財産のところもカバーをしていたと思うんです。全部に広げてしまう必要は全くないのですが、今回の報告書にこの部分だけが盛り込まれていくと、何となく、高齢者の資産に対する市場ワーキング・グループの意見が、そっちにフォーカスになってしまっているというふうに見られるのは、少し残念な気がいたします。プルーデントマンルールの重要性等、議論されたことを改めてどこかに、資産の現金化の議論だけではなくて、言及していただければいいと思っています。

 以上になります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、岡三証券の高田委員、いらっしゃったらお願いします。どうぞ。

【高田委員】
 どうもありがとうございます。私からは、基本的に意見を中心にお話をさせていただこうかと思っています。

 まず、重要情報シートについてですが、私は基本的に、投資家と金融業者の情報の非対称性を埋めるという観点から賛同するのであります。どうしても、各業態ごとに供給者側の立場というか、それぞれごとの金融商品を供給するという、BtoC的な状況になりやすいという状況がありますので、顧客の立場から、ワンストップ的にCtoB的な対応となるという点からしますと、貯蓄から投資への流れに資するようなものということなのだろうと思います。

 ただ問題は、供給者側の、薬の説明、効能書きみたいに、詳細になり過ぎても実際に読まれなくなってしまう点です。また、供給者側の責任回避的なものになってしまうという部分もありますので、あくまでも、投資家というか消費者側のための、役に立つようなものということなのではないかというふうに思います。

 そうしますと、今回、本文中にも、議論の中にもありましたが、株式、公共債、それから円建ての普通社債のように、コモディティー化されたものについては、金融機関、業者側の創意工夫に委ねるという点は、私は妥当なのではないかと思いますし、それから、法定書類等の交付手続等についても、できるだけ簡素化していくというか、幾つかの条件付に電子媒体化して検討するのも重要ではないかと思います。

 いずれにしても、実質的に実のあるものにするには、形式だけではなくて、あくまでも、実際の投資のプロセスに役に立つという観点が重要かと思います。

 それからもう1つの論点として、超高齢社会における金融業務のあり方ということなのですが、今後も、今現在も高齢化が一段と進んでおりまして、ベビーブーマー世代が後期高齢者になるという中で、この辺の対応は急務でもあると思いますし、それから、高齢化に加えて単身化していくというような状況の中で、この金融サービスというものをいかに捉えていくかというところの利便性が非常に重要なのではないかと思います。

 そういう観点から申し上げますと、最後のところにありましたが、金融契約の照会システムといったところは、利便性としても非常に重要な点ではないかと思いますし、また金融取引代理につきましても、本人の利益にかなうと判断できるものについては、柔軟な対応を行っていくべきというところは、重要ではないかと思います。

 すなわち、高齢者対応の、いろいろな意味での技術的革新などを行いながら、他業態も含めた情報の集積化というか、こうしたものを行っていくということは、この市場ワーキングの中でも重要な論点ではないかと思いますし、また、そういう状況の中で、業界団体も独自の指針を出していくといった点も、重要ではないかと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】
 高田委員、どうもありがとうございました。

 では林田委員、お願いします。どうぞ。

【林田委員】
 それでは、誠実公正義務等に基づく監督対応についてお話ししたいと思います。あまりほかの委員からは異論等はなかったようですが、若干、私は懸念がありますので、そこを中心に申し上げたいと思います。

 私は顧客を食い物にするような悪質な業者に対して、監督当局が厳しく対処するというのは当然のことだと思っています。ただ、個別の案件に近いケースについてまで、金融監督の立場から先回りする形で細かく法規制していくということが適切なのかどうかということについては、しっかり議論すべきではないかと考えています。

 顧客重視の業務運営に関する原則について、当ワーキングで議論した際に、事業者の一挙手一投足にまで法の網をかけるといった従来の手法では、それがミニマムスタンダードとなり、事業者による画一的・形式的な対応を助長しかねないという指摘がなされました。

 このため、事業者は本来守るべきプリンシプルを示すということにより、自主的な対応を促すと。それにより、よい取組を行う業者が顧客から選択されると。裏を返せば、不適切な対応を取る事業者は排除されていく。こうしたメカニズムを実現することが望ましいという結論に達しました。

 今回の、この監督対応を認めるということになりますと、具体的な対応いかんによりますが、金融当局が何かプリンシプル主義から個別規制主義へと先祖返りするというように思われるのではないか、そういう捉え方をしかねないのではないかという危惧を抱いています。

 そうした受け取られ方をされた場合には、一度ルールベースからプリンシプルベースへかじを切った当ワーキングが、再びルールベースの規制強化を認めることになる。何か議論が迷走しているというような印象を与えかねないということを危惧しているわけです。

 無論、顧客本位の原則にも留意事項がありまして、金融事業者の取り組み状況や、原則を取り巻く環境、こうしたものの変化を踏まえて、必要に応じて見直しを検討するということになっています。ただ、これはあくまでプリンシプルベースの枠内で見直すということでありまして、再びルールベースに戻すという趣旨ではないと理解しています。

 仮に、若干、一部でもルールベースに戻したほうがいいのだと。不正が続出しているから、そうしたほうがいいのだというのであれば、深い議論もせずにさらっと流すのではなくて、プリンシプルベースに移行したときのように、踏み込んだ議論をするべきではないかと考えています。

 個人的には、あくまでプリンシプルベースを維持して、護送船団方式のような手法は取るべきではないと考えています。

 無論、かんぽ生命による不当販売、あるいはスルガ銀行の問題など、不正が横行していることは憂慮すべきことでありまして、金融当局として、手をこまねいているわけにはいかないと思います。

 その場合、かつての護送船団方式のように、事前の監督で事細かに窓口規制をかけるというのではなく、不適切な行為をした場合には、事後的に厳しく処断するということが、事前規制型行政から事後チェック型の行政への転換をうたった、金融制度改革の要諦ではなかったのかと思います。

 余談的にはなりますが、かつて私が大蔵省の4階担当、つまり銀行局と証券局の担当記者をしていた1990年代の初頭ですが、これは護送船団方式の末期に当たっていました。

 当時、大蔵官僚の発言で印象に残っているのは、証券会社はけちだと。ゴルフの接待でハイヤーもつかないと。その点、銀行は偉い。ハイヤーがついてくる。保険会社はもっと偉い。帰りのハイヤーのトランクにお土産が入っている、といったような発言が、非常に印象に残っています。

 大蔵不祥事を経て誕生した金融庁の方々には信じられないことかもしれませんが、これは本当のことでありまして、あと、金融庁の方には自覚がないとは思いますが、現状でも、民間金融機関にとっては、金融庁の権力というのは絶大なんです。

 かつての大蔵省銀行局、証券局の権力は絶大なものがありました。絶大を通り越して絶対的だったと言ってもいいと思います。夕方になりますと、銀行局や証券局の幹部が、執務室から事業者のMOF担を引き連れて、夜の街に飲みに行くという光景を日常的に目撃しました。絶対的な権力は絶対的に腐敗するというのが真実であるということが、私の拙い記者経験で得た真理、教訓であります。

 今回の監督方針の見直しをもって、そこまで一足飛びに先祖返りするなどとは、私も思っていません。ただ、後になって、後年振り返ったときに、あれが何か転換点になっていたのではないか、そのとき、当時の市場ワーキングではあっさり通してしまったね、というふうには、私としては言われたくないと思っております。

 以上が、私がこの点について踏み込んだ議論が必要だと考えている主な理由です。

 まだ申し上げたいことは幾つかあるのですが、これで時間を大分取ってしまって、5分を切ってしまったようなので、終わりにしたいと思います。また発言の機会があったらお願いします。

 以上です。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 それでは、永沢委員、よろしくお願いいたします。

【永沢委員】
 永沢でございます。私からは、まず初めに、林田委員のおっしゃったことに関しまして、意見を申し上げさせていただきたいと思います。

 林田委員のご懸念は私もよく理解できるのですが、2017年に、この顧客本位の業務運営の原則を採択した時点で、その後改善されない状況があるようであるならば、見直しをするという約束であったと思います。

 そして、特に適合性の原則に関しては、確かにルールとなっておりますが、先ほど上柳先生からもお話がありましたように、抽象的なものにとどまっていて、販売の現場では形骸化しており、消費者の救済という点でもあまり力を持たないルールでございました。今回、事務局からご提案いただいたような、顧客に適合すると考える合理的な根拠を示すというような具体的な要件を加えることに私は賛成です。

 なお、ルールにするのか、監督指針でいくのかというところは、議論が必要かもしれませんが、何れにしても、顧客の立場に立って、真に考えていただく習慣を身につけていただくためには、この適合性の原則の実質化は大変重要な一歩です。

 論点2に移らせていただきますが、重要情報シートの様式につきましては、このたび具体的なものを示していただきました。大きな進展と評価したいと思います。

 上柳先生もご指摘のように、リスクに関する記載が弱いという印象は持っており、その辺の工夫が必要です。評価できる点は、質問例を示していただいたことで、金融取引の経験の浅いお客様であっても、金融取引において何が問題となっているかを理解することができ、顧客が金融機関をチェックする役割を果たすことに繋がると期待します。

 それから、個社情報について、要らないのではないかというご意見もあったのですが、私は、これは苦情相談の申立てをどこにすべきなのかを知る上で大変重要であり、顧客としてはこの1枚を保存しておきたいと思うと思います。ホームページなどの情報も記載し、会社概要などにもアクセスできるようにしたら、なおよしとと思いました。

 このシートについては業界団体の創意工夫に委ねるということですが、いつ頃から、どのように導入される見通しなのでしょうか。また、販売勧誘プロセスのどの段階で、この書面が交付されるかも図示していただきました。法定書面の前に交付されるということはわかりましたが、交付が義務づけられるのかどうも関心があるところです。

 法定書面の交付につきまして、印刷や送付のコストの削減は、顧客の手元に残る利益が今、大変少ない状況ですので、このところについてメスを入れていかなくてはいけないということ、そして、環境への配慮が必要になっておりますことから、原則を電子的交付とすることに転換することに私は賛成したいと思います。

 ただし、スマホしか持たない顧客も増えておりますので、今ある目論見書を単にPDFで提供するようなサービスでは、決して顧客本意ではないということは、この場を借りて申し上げておきたいと思います。

 第3の論点については、かつては、販売会社は株式や債券といった金融商品を紹介することで手数料を顧客から頂けていました。しかし、現在、営業の主力となっている金融商品は投資信託や特定保険であり、これらの商品は、販売後のアフターサービスの提供を前提とした手数料体系になっており、販売後のフォローアップがその手数料水準に本当に見合っているかどうかの評価を顧客から受けることになるとも思っております。ところで、地銀に多いように思いますが、フォローアップというと、顧客の自宅を訪問して面談することと考えておられるようですが、それで価値が付加されるのかどうかはよくお考えいただきたいと思います。顧客から頂く手数料の範囲内で何をすることが顧客にとってベストなのかとか、付加価値の提供になるのかを考えていただくことが大事ではないかと思います。

 最後の論点の金融取引の代理については、私は基本的に賛成です。この機会に申し上げておきたいのですが、独り暮らしの高齢者が、豊田商事から続くオーナーレンタル商法という詐欺的な商法の食い物になっているという現状が今も続いておりまして、2000年以降の被害額は少なく見積もっても1兆円を超えると言われております。消費者庁で被害を止めるべく検討を続けているのですが、なかなか難しいという現状がございまして、独り暮らしの高齢者を悪質な業者から守るという意味でも、地域の金融機関の役割は大変重要になっております。認知的判断力が低下して、家族がいない高齢者がこれからますます増えていくわけですが、地域金融機関としては、こうした高齢者にどう関わり、その人が最期のときを迎えるまで安全安心に暮らすためにどんなサービスが必要とされているかを考え提供いただくことが、顧客から支持され、生き残れる大きなポイントになると思います。

 最後に感想めいたことを申し上げましたが、私からは以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、チャットに入れていただいている順で申しますと、島田委員、福田委員、駒村委員の順かと思います。

 島田委員、いらっしゃいましたらどうぞ。

【島田委員】 
 私からは、まず第1の論点では、適合性の原則を理解して実行していれば起きるはずのないことが、いまだに散見される状況もありまして、これは恐らく現場の販売員が(顧客本位に)やりたいと思っていても、それがなかなかストレートにできないような環境がある、まだ環境が整っていないという部分もあると思います。

 ですから、監督指針で例を示して様々な状況を明確にしていただくこと、それが注意喚起にもなり、あるいは後続の悪い例が出ないということにもなると思うので、有効だと思っています。

 また一方で、顧客本位を実施する金融機関の努力を評価するということも非常に重要だと思っておりまして、金融庁のモニタリングの後でまとめられるレポート等についてですが、ベストプラクティスや注意点について、誰でも見られるような形で、もうちょっと広範囲に公開することを検討していただけないかと思っております。

 金融庁が褒めるということも非常に重要ではあると思いますが、一般の消費者にも広く知られるような良い取組というもの、それを通じて金融機関が評価され、信頼を醸成していくということも重要ではないかと思っております。

 情報提供のあり方、2番目の論点についてですが、野尻委員から、1枚で簡単にしたほうがよいのではないかという御提案がありましたが、私は個人的には、3つの段階で情報は重要だと思っておりまして、1番目が金融機関、そして目の前にいる担当者、2番目が商品そのものの属性、3番目が個別の商品の特徴ということで、3番目については現在、法定書類と広告資料等によって個別に案内されていると思いますが、1番目、2番目を別々に出すことは非常に重要ではないかと思います。

 以下、資料2と資料3を参考にしてお話をさせていただきたいと思いますが、参考に挙げていただきました米国・欧州の説明書面について、重要だと思う点を挙げておくと、米国では3番目と4番目の、あなたの利益相反は私にどう影響するのか、どう対応するのかということに対する説明、そして販売員の報酬構造の開示。欧州の場合は5番目の、どれぐらいの期間、その商品を保有すべきか、また早期に換金できるかに対する説明。これが現在、日本ではまだあまり一般的になされていない部分だと思いますが、非常に重要なポイントだと思っております。

 ですから、資料1では当社の重要事項となっておりますが、米国の例のように、その後に担当者についての重要事項も加えていただけたらいいと思います。目の前のアドバイザーが、どのような評価・報酬体系で仕事をしているか。これは投資家にとって、お客様にとって非常に重要な情報だと考えているからです。

 それから、3の商品ラインナップの考え方、これも非常に重要だとは思うのですが、定型の文言に落ち着きそうな気がしております。ですから、むしろ各社のお客様との約束といった形で書いていただくと、具体的かつ個性が出るのではないかと想像してみました。

 資料3では、特にデリバティブや仕組債を使う金融商品、または特定保険など想定外のリスクが起こる可能性について、理解できるよう工夫していただければと思います。

 また、欧州の例にあった、資金の流動性と投資ホライズンも、消費者にとっては非常に重要な項目なので、この点も明示していただければと思います。

 株式・公債など複雑でない商品について、重要情報シートを簡略化、あるいは各業態の中で検討することに任せることには賛成です。また、法定書類の交付の簡略化についても、大筋では金融機関の経営の合理化の観点から賛成します。電子交付を広く可能にするのは、時代に合った考え方だとも思います。

 ただ、重要情報シートに記載されている事項について、読むだけで理解できる投資家ばかりではないと思いますので、例えば初めて金融商品を購入する人に向けてなどは、ビデオなどを利用して、より分かりやすく説明を行うなどの工夫がなされるのがよいのではないかと思います。また、理解を深めた後に、本当に理解したかどうかを必要に応じて確認のQ&Aをチェックシートなどを活用して行ってもよいのではないかと思います。

 論点③のフォローアップについては、具体的に2つのお願いをさせていただきます。この2つが、フォローするという役割のあり方の基本に関わると思うからです。

 1つ目は、大きな暴落時の情報提供ですが、今回3月の暴落のときに、証券会社からかかってきた電話では、もっと早くに引き出しの御案内をするべきだったのですが、今回これこれに下落してしまい、といった気まずそうな、かつ通り一遍の電話でありました。

 ですが、大幅下落したときのアドバイザーの役目は何かと考えてみますと、マラソンの伴走者として、走者の横で励ますことだと思います。何%下落したから臨時レポートを出すといったルールも重要ですが、そのレポートや、レポートを使ってお客様とお話をする際に本当に大切なのは、下落時において、下落に慌てて投資をやめないための情報提供であるのではないでしょうか。そして、そのメッセージをきちんと投資家に伝えていただければいいなとお願いしたいと思います。

 2つ目は保険についてです。保険には満期があります。保険会社として、満期が次の保険契約の営業機会であることは十分理解できますが、乗換えの説明に終始して、満期金を支払うという観点からの説明がおろそかにはなっていないでしょうか。

 私の周りの卑近な例で恐縮ですが、60代前後になってきまして、周りにも満期を迎える者が非常に多いのですが、そういった例から見ますと、実は乗換えの説明に終始していると。話を聞いたけれど、お金はどうやったらもらえるのかよく分からなかったというようなケースが散見されており、その点は、フォローアップの本来の意味から、しっかりと説明の方針を徹底していただければと思います。

 高齢社会における金融業務のあり方について、論点④ですが、これはあまり見識がないので一般論になってしまいますが、老人を抱えるものとして、金融機関ごとの創意工夫や業態によってそれぞれの強みを生かし、また地元の強みを生かした今までにない連携を深めていただくことのほか、やがては個々のサービスとその対価について、金融機関を横断的に比較できる仕組みがあるといいと思います。

 また、こうした取組は新たなビジネス機会であると同時に、それぞれの金融機関の新たな社会的な役割として定着していくものであって、高齢化に対応した、よいサービスを提供することが、金融機関それぞれの社会的な評価につながっていくべきであるとも考えております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして福田先生、いらっしゃいましたらお願いします。

【福田委員】
 発言させていただきたいと思います。主として顧客、論点の②に関してです。私が個人的に思うのは、顧客というのはいろいろな種類のお客さんがいるということです。この問題にどう対応するかは、難しい問題だと思います。お客さんの種類が1種類しかなければ、提供できる情報も1種類でいいわけですが、実はお客さんと一言で言っても、様々なお客さんがいる。金融取引に非常に精通している、あるいは過去にもそういう取引を何度もしているお客さんもいれば、そうじゃないお客さんもたくさんいるということだと思います。

 現実問題としては、その中でもかなり画一的な書類、法定書類というものがあります。何度も何度も取引している人にとっては、ある意味では、言葉は悪いかもしれませんが、うっとうしいような形で、書類が登場するような問題も発生しているわけであります。

 一方で、そうじゃないお客さんもいるわけです。そういう人にはある程度丁寧に御説明をすることは必要です。こういうトレードオフの問題を、どううまく回避していくかという問題はあると思います。本当に必要最小限の事項、全ての人に共通の重要事項というのはあるとは思いますが、それプラスアルファする部分は、お客さんのタイプによって、重要事項というのは違うということはあるのかとは思っております。

 現実問題としては、書類、特に電子書類のものに関して言うと、それをクリックしないともちろん先に進めないようにはなっているのですが、実態としては、過去に何度も取引している人にとっては、ほとんど読まないでクリックして先に進んでいるというような問題も実態としてはあるわけで、そのタイプの電子書類は、必ずしもうまく機能していないと思います。

 ただ、そうは言ってもだんだん高齢化してきて、もともとはかなり積極的にやっていた人も、高齢化して認知能力が落ちていくような時代でもあります。これは後半のお話にもかかってくると思いますが、そういった人たちへのケア、丁寧な説明というのもそれなりには必要だということは、そうなのだろうとは思います。

 電子的な提供に関しては、私も基本的には不可避だと思います。今後は、金融機関もかなりコスト削減しなければいけないし、支店の数も減らさなければいけない。説明を丁寧にするという点だけからは、従来型の対面はもちろん理想かもしれないけれど、現実問題としてはなかなか難しい。そういう中で、バランスの取れた電子提供をすることが望まれます。先ほど言ったように、いろいろな形で工夫をするということによって、問題を小さくできるのではないかとは思います。

 それから最後の、金融契約の照会システムということで、これは私の個人的な経験もあるのですが、電子化は便利であると同時に、どのような金融資産があるかが分からなくなってしまうという問題というのはあります。私の両親に関しても、大口の金融資産は大体覚えていて、電子化であろうと何であろうと大体分かったのですが、小口のものは、本人も覚えていなかったりして、なかなか分からないという問題がありました。そのような金融資産は、電子化だけだったら本当に分からなかったのですが、私の経験からすると、それが、何日かしたら郵送で残高が送られてきて、ようやく、こういうお金もあったんだね、みたいなことというのが確認できた経験もあります。電子化が基本というのは時代の流れだとは思いますが、全てを電子化してしまうことでのトラブルも、特に高齢化社会の中ではあるという点は考慮していただく必要があるのかもしれません。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして駒村先生、いらっしゃいましたらお願いします。

【駒村委員】
 ありがとうございます。慶應義塾の駒村です。本日の事務局で御用意いただいた資料について、4点ほど、意見あるいは議論の深掘りが必要ではないかというコメントをさせていただきたいと思います。

 主に今日は高齢化の部分、論点④に関わる部分が中心になりますが、まず資料の19ページについてであります。加齢により心身の衰えが生じて、リスク許容度が変化すると。この読み方は多様な読み方ができてしまいますので、これが何を意味しているのかというのを少し解説したほうがいいと思います。

 私の理解としては、本人・家族の健康状態の変化により、医療費や介護費が発生するので、流動性の確保を考慮し、資産の組合せを変えておかなければいけないのではないかという意味でリスク許容度が変化するということと、もう1つは、加齢に伴い判断力、認知機能、情報処理能力が低下して、自信過剰問題なども起きやすくなり、リスク選好度そのものが変化することもあるだろうと。健康のように客観的な見えやすい状態と、心理的な部分でなかなか外からはうかがい知れない状況によって、この加齢に伴うインパクトはあるのだろうと思います。

 いずれにしても、変わりやすい高齢者、時間軸で動態的に変化するのだということを踏まえて、アフターフォローや適合性の原則を考えていくべきではないかというふうに、ここは踏み込んだ説明が必要ではないかと思います。

 そのためには金融関係者は、高齢者との安定した関係性や関心を持った上で、こういうことを理解するということが必要ではないかと思いました。

 それから、資料の23ページの(1)の3ポツ目の認知症、「金融関係者は認知症に関して」というふうに書いてありましたが、これは狭いと思いまして、認知症のみならず、金融機関の認知症に対する理解の向上というところですが、認知症では若干狭いと思います。心身の変化や、広い意味での認知機能の変化を理解する。その理解の向上といったことが必要ではないかと思いました。

 3つ目のコメントをしたいと思います。25ページになります。

 25ページについては、「どのような兆候・行動を認識」というふうに書いてあります。ここに書いてあるのは非常に分かりやすい例示ということになりますが、これは生活状況、環境によっても変わってくるということになります。

 金融ジェロントロジー協会では兆候や行動を認識する研修をやっているのですが、そこは極めて実践的な知識がなければいけない。客観的にこの3つ程度ではなくて、認知機能の変化というのは連続的かつ急速に進んでいく。その結果、お金の管理がだんだんできなくなるという兆候は、もう少し多様に出てきますので、ここに出ている事例に至ってはかなり深刻な状態ですから、その前段階から高齢者の行動を理解しておく部分も必要だろうと思います。

 この辺は事例であり、もっともっと実践的な知識を関係者の中で共有したり、学んでいく必要があるのではないかという、こういうコメントをつけておきたいと思います。

 4つ目、26ページについてコメントをしたいと思います。

 26ページは、福祉関連機関との連携ということが書かれています。社協、地域包括、中核、見守りネットワーク等々との連携が必要である。これはもう間違いないわけでありまして、これは金融機関から福祉関係者にアプローチすることになると思います。福祉関係者も、この金融に関わる問題についてはまだまだ理解が不十分であるということなので、双方、なかなか連結ができにくい部分であります。

 また、社協等も地域包括も、その力量、対応能力は様々でありますし、関心も様々、知識も様々ということでありますので、これはぜひとも、厚生省、金融庁が旗を振りながら、福祉関係者と金融機関の間で、きちんとした実践的な対応に関する情報共有や知見をつくっていくということが、とても重要ではないか。そこを政府として十分フォローしていただきたいと思っております。

 4点、以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、チャットでいただいています順番ですと、野村委員、鹿毛委員、中野委員の順になると思います。

 野村委員、いらっしゃったらどうぞ。

【野村委員】
 野村でございます。私からは、ごく簡単に3点ほどコメントさせていただければと思います。

 まず1つ目は、全体感みたいなところになりますが、土曜日だったと思うのですが、新聞に、手数料表示共通ルールという記事が載っていました。本日の御議論を聞いていると、あまり心配する必要はないのかとも思いましたが、手数料やコストの部分はもちろん重要であるものの、分かりやすさゆえにだと思うのですが、クローズアップされがちなのかと思いました。

 重要なので強調されるのはよいと思うのですが、これはややもしますと、極端なことを言ってしまえば、何もしないのが一番低コストといいますか、もう何もしません、だからお金もかかりません、手数料もかかりません、そういうことにつながりはしないかと思いました。

 何となれば、認知機能の低下、身体機能の低下が今後進んでいくという、4つ目の論点に関わる話でございますが、これまでの市場ワーキング・グループでの議論においても、事前の備えというものが非常に重要である、ポイントであるということが言われてきたと思います。

 すなわち、備えることができる方には備えていただきたいと、お金で解決できることに限界はあるものの、お金で解決できることもあるわけですので、要は、リソースとして備えるものをお持ちの方には、金融サービスをなるべく利用して、早め早めに事前に備えていっていただきたいということがあるのだと思います。

 4つ目の論点で、地域包括支援センター等々の福祉の関係者の方々への言及もございますが、本当に頭が下がるような、大変なお仕事をされているという認識でございまして、何がしかの形で、そういう方たちへの負担、負荷が抑制できるようなことにも、事前の備えが充実している方が増えれば増えるほど、つながるのであろうと思いますので、金融サービスをより積極的に利用していきたいと考えるわけです。

 分かりやすいことは極めて重要ですが、金融サービスが個人にとって利用してみたいものとなるようなイメージに、きちんとつながる形での情報提供が、こういうシートのようなものも含めて、視点としては常に大事なのではないかと思います。

 2点目は、先ほど来、何度も御指摘があった点でございますが、電子的な方法やデジタル化の活用というのは、私はぜひ進めていくべきではないかと思います。

 これも時代の趨勢ということかと思いますが、紙だから優れるといったことはだんだんなくなってきていると思いますし、副次的なことかもしれませんが、紙の削減で環境負荷を抑制するというのも、重要なポイントではないかと思います。

 最後、3点目でございますが、若干重複する話ではございますが、高齢社会における金融サービスという観点からは、これは様々な角度からの支援、連携強化ということは、引き続き推進していく努力は必要だろうと思います。

 駒村先生から言及がありました日本金融ジェロントロジー協会においても、ある意味、競争というよりは共有すべき、そういう知のプラットフォームみたいなところも含めて目指しておられると思いますし、今日の資料の中にも出てきている様々な取組、特に30ページにある業界の好事例の集約・還元というようなことも言及していただいておりますが、こういったところでの共有、そういったところの取組というのは、引き続き重要ではないかと思います。

 以前に出てきた重要なキーワードをあえてもう一度繰り返させていただきますと、資産寿命をいかに伸ばしていくかというのは、高齢社会でいかに多くの方、より多くの方が楽しく引退後を生活するかということにおいて、非常に重要であろうと思いますので、引き続きそれを金融サービスとしてきちんと支援していく、また、それを後押しするような制度としていくのが大事ではないかと思っております。

 以上でございます。どうもありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして鹿毛委員、いらっしゃいましたらどうぞ。

【鹿毛委員】
 ありがとうございます。私は、今日の論点①から④についての、事務局案の基本的な考え方については、特に違和感はありません。賛成です。

 その上で部分的ですが、3点コメントします。

 第一は、論点②の重要情報シートの件です。先ほどの野尻委員の御意見に私は賛成です。これは、最低限の情報を比較のために提供するという趣旨であれば、分かりやすさが非常に大事で、これだけで購入が決まるというものではないとは思いますので、どちらかといえば、1枚に全てを盛り込んで、分かりやすくということが大事ではないかと思います。

 ただ、この中には、法規制等による、必要不可欠なものと、金融機関の営業に属する、裁量による部分も入っていますので、後者は「望ましい」ものになってくると思います。この前者と後者は、何らかの形で区別してはどうでしょうか。

 特に、金融機関の営業に関する情報提供は、あくまで例示であって、答えは一つでないと思います。ワーキング・グループとしても、あるいは行政としても、最終的に責任が持てるようなものでもないだろうと思いますので、書き方には少し差があっていいのではないかと思います。

 第二に、フォローアップも含めた情報提供の考え方の問題です。これまでも何人かの方からいろいろな御意見がありましたが、私は、特にこのコロナの環境を通じて、情報伝達については、デジタル化が劇的に進んでしまったと思います。

 特に高齢者の立場から見ると、なかなかついていきにくいとか、問題が山積ですが、社会そのものが、むしろそちらに向かっている。金融業界全体を見ても、紙媒体とか訪問、電話とかというような、非電子型のコミュニケーションの相対的コストがどんどん上がっているわけです。コストを無視した形で情報提供は多ければ多いほどという時代はもう終わったのではないか。逆に言いますと、これからは電磁的方法、インターネットやスマホによる情報提供が原則であって、それに加えて、もし紙が欲しい、電話が欲しい、あるいは訪問してくれということであれば、それはプラスアルファのコストが必要になるのではないかということです。

 今すぐこのような考え方が主流になるとは思いませんが、例えば銀行の通帳もなくなって、インターネットの報告になるといった変化は、もう現実には少しずつ始まっているわけで、特にこれからの5年10年、今現役の方が高齢になっていくというようなスパンで考えたときには、紙・電話・訪問等についてはプラスアルファのコストがかかるという方向に社会通念も変わっていくと思います。ある意味では、最もベーシックな運用報告といった法定のものは別として、むしろ当初から、こういう情報提供があり得て、そのコストは幾らですというような形でディスクローズされていることが望ましいのではないかと思います。。

 第三に、論点④の高齢化の問題です。大前提として、当然のことですが、現在の金融制度は、法令や金融機関側のコンプライアンスルールとか、厳しい仕組みの上に成立していて、それでも、お金に関する取引に関しては、確率的には、ミスが出たり事故が出たりというようなことがなくならないという現実は直視すべきだと思うんです。

 その結果、何らかの損害が出た場合は、現状では例えば金融機関は落ち度があれば損害賠償責任を持っているということで、逆にその信頼も維持されているという面も大前提として忘れてならないと思います。

 その上で、認知機能が衰える人が増えてくるという高齢化社会のニーズに、これだけでは答えられないので、どうすればということが今回の課題だと思います。当然のことながら、各金融機関ベース、業界ベースでは、今回いろいろ具体例に示されたような可能なことから、どんどん進めていくということは、私は短期的な取組としては非常に大事なことだと思います。

 ただ一方で、やや長期的に考えた場合に、福祉サイド、あるいは金融機関の善意による行動というものが、結果的に本人や家族の意図に沿わなかったということが結果的に分かった場合とか、確率的にミスや事故が起きた場合、その損害が出た場合に、一体誰が責任を取るかという問題に、目はつぶれないと思います。

 それを、特に高齢顧客の認知機能低下が広がる状況で、高齢化対策を社会全体で機能させていくためには、福祉サイドや金融機関に悪意でない手落ちがあったからということで、そういう当事者に全責任を負わせるということ自体に、無理があるのではないかと思います。

 ですから、一方では、中長期的には福祉団体も、お金を取り扱う組織としての、例えば規制・監査・コンプライアンスルールとか、最悪の場合に、損害賠償責任を一体どうすか、という課題から目を背けられないのではないか。これは、本ワーキング・グループのテーマから外れるかもしれませんが、金融機関との連携強化のテーマの一つだと思います。あるいは先ほど駒村先生の御指摘になった課題と関連しますが、ここに目をつぶると、結局何かあったときに、福祉の現場の方々に責任が生じるとか、あるいは金融機関に責任が生じるということになりかねないのです。むしろ福祉の現場の方を守るためにも、例えて言えば保険制度であったり、あるいは将来的にはこのサービスも一部有料化していくとか、そういった仕組みを成り立たせるための課題の検討、これは中長期の課題だとは思いますが、と短期的対応とを車の両輪で取り組んでいかないと、なかなか実効は出てこないし、また、ユーザーから見た場合に、あまり信用性が高くならないのではないかという気がしました。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして中野委員、いらっしゃいましたらどうぞ。

【中野委員】
 ありがとうございます。今日の会合におきましては、4つ論点がありますが、恐らく②の部分の、シートへの評価が議論の中心かという観点で結論から言うと、こういったシートを作成して共有していくのは、私は大賛成でありますが、あくまでもこれをルールで共用化するのではなく、プリンシプル主義を重要視して、金融事業者の意向に任せるということが大事だと思っています。

 その観点からコストという部分に非常にフォーカスをされておりますが、フィデューシャリー・デューティの主軸は、顧客の最善利益の追求であり、その根幹の1つはまず利益相反構造の徹底排除です。そして次に出てくるのが、金融事業者の合理的報酬の明確化であろうと思います。

 このとき、コストは安ければ安いほどいいというのは、顧客サイドからすればそうなのですが、決してそんな単純なものではなくて、適切な金融サービスの提供に立脚した、適正な役務対価の徴求というものは、健全なる顧客本位業務の持続的な提供に必要不可欠なことであろうと考えます。

 例えば投信の場合であれば、具体的には、この先、販売手数料というものは収益の主役ではなくなるであろうと考えておりますが、そうだとすれば、収益のベースは信託報酬の分け前、運用会社の分と、それから販売金融機関が取る――これは代行報酬と言いますが、この2つの報酬が主軸になると思います。

 一方で、アメリカは御存じのように低コスト化がどんどんどんどん進んでいる中で、アメリカの水準並みの極度に低コストな商品というものも、日本においてたくさん出てまいりました。インデックスファンドを中心に普及してまいりましたが、よくよく考えれば、日本は投資信託のマーケット規模がアメリカの20分の1未満であると。それから日本のビジネスモデル自体に、低コストを許容する蓋然性がないといったことを考えますと、極度な低コストは合理的な報酬を超えた過剰なサービスと捉えられるのではないかと思います。
これが行き過ぎれば、事業者あるいは業界全体の健全性を損なう方向に行ってしまうわけで、それを取り返すためにはクロスセルが目的となって、別の収益を希求するといった結果的にはよろしくない方向に向かいかねないので、まずは商品ごとに、適正で合理的な報酬とは一体どういうものか、そしてその水準なるものを業界全体で定義すべきときに来ているのではないかと私は考えています。

 それから併せて申し上げますと、これもFDの観点からの話ですが、例えば販売手数料について、例えば2%徴収をしますという金融機関があったとします。一方で、他社を使えば――具体的にはネット証券経由なら、これはノーロードですよといったことを、きちんとお客様に告知することが、FDの観点からは絶対的に必要なことです。

 しかし実際は、こういうことがなかなかなされていないわけで、金融商品というのは耐久消費財とは違うわけですから、基本的には、一物一価であるべきで、この点については商品供給サイドの運用会社に矜持を求めるべきであろうと思います。

 こういった事柄一つ一つが厳格に業界慣習として定着していけば、おのずと金融アドバイスに対する役務対価というものは、商品販売からではなくてアドバイスフィーに移行していくものと期待できるのではないかと思います。

 それからもう1つ、3番の重要情報シートは非常に肝になるところで、金融事業者は商品ラインナップに対してどのような理念、哲学を持ち、その観点から該当商品をメニューに入れているという合理的理由をしっかりと明示化すべきであり、その観点から、とりわけ系列会社のプロダクト選定においては、利益相反の観点から、ほかの同類商品に対する優位性などより具体的合理性が示されるのが必須であろうと考えます。

 全般的に申し上げられることは、当該情報シートが定着することによって、顧客が負担するコストというものは、内在するものも含めて丸裸になるわけでゆえに、低コスト競争に歯止めをかけて、適正な合理的報酬を堂々と徴求する、それに顧客も気持ちよく対価を負担するといった行動文化を構築する努力が、業界にも行政サイドにも必要で、それはFD実践の要諦であろうと私は考えております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、チャットをいただいております順番で、続きまして上田委員、竹川委員の順になると思いますので、上田委員、いらっしゃいましたらどうぞ。

【上田委員】
 私は、今回の点で、今回、今、議論されていることとして2点、それとは別に、今後の課題も含めて2点、申し上げさせてください。

 まず適合性原則のところでございますが、いろいろな御意見が今、委員の皆様から出ておりましたが、基本的には、これまで顧客本位の業務運営という、プリンシプルベースのソフトローでいろいろな取組を進めていたところ、まだまだ課題というか、これでは解決できない実態があるということでございます。こういう場合に、ハードローとの組合せで、その目的とか実効性を高めるというアプローチについては、これは正しい規制といいますか、その方向だと思いますので、特に今回の方向性について異論はありません。

 特に、フィデューシャリー・デューティといった場合に、この取組を経営企画で対応している金融機関もあるようでございまして、本来的には、この取組というのはコンプライアンスで対応するべき問題が中心になってきているのかと思います。となりますと、ソフトローとハードローを適切に組み合わせて対処するということが望ましいと思います。

 他方、そこにおける、当局からの監督といったところについては、これはほかの委員もおっしゃっていましたが、かつてのルールベースアプローチに基づく箸の上げ下ろしといった規制の規律づけではなくて、プリンシプルベースアプローチを考慮した、精神とか趣旨に照らしてといったことを意識した対応がされれば、より充実した方向になるのではないかと思います。

 続きまして、重要情報シートについてです。個別商品の部分についてなのですが、私が心配しておりましたのが、これがまた屋上屋を重ねるようなものになるのかというところです。ところがが、大変分かりやすい内容で、そして、例えば締結前書面のようなものについても、必要とする投資家には配付される仕組みを確保しつつ、そうではない場合にはQRコード等で対応するといったことも適切かと思います。

 このような電子化の動きというのは、特に昨今のコロナの影響もありまして、世界中でどうやって進めていくかといったところでございますので、この動きについては、きちんと必要な情報が必要な人に届くといった手当てがされているのであれば、よろしいのかと思います。

 その内容なのですが、特にこのようなシートで重要情報が提供されることで、販売会社において、その投信販売姿勢がより洗練されることにもなるとすれば、商品の集中と選択というものが進み、結果として、業界全体として商品の淘汰もされて、より効率的になるのではないかといったことも期待されております。

 今後の課題的なところで申し上げますと、最後のほうにございましたが、金融機関と福祉関係機関等の連携強化のところでございます。この問題は大変重要な問題かと思っております。

 他方で、金融機関においては、個人情報保護法に対する研修等が徹底して行われているといったことも含めて、窓口においては顧客情報の管理について大変慎重な取扱いが行われているという実態がございます。

 結果的に、窓口でお客様の認知判断能力の低下を疑うというような場合であったとしても、こういった情報とか懸念を適切に福祉関係機関等の間で連携するといったことに障壁が生じているのではないかというふうにも思っております。

 したがって、こういった高齢顧客の利益を保護するといった観点からは、窓口担当者の柔軟な判断をより生かせるように、そして金融機関がここでしっかりと役割を果たせるように、少し個人情報保護法の運用のところで、金融機関を後押しできればよろしいのではないかと思います。

 最後に、保険販売に関する規律づくりについて、少し気になりましたのでコメントをさせてください。これまで、市場ワーキング・グループにおける議論を踏まえますと、投信とか金融商品の中でも、銀行とか証券会社を通じた販売については相当、顧客本位の業務運営の原則の実効性を高めるような、取組というものが進んできているかと思います。

 他方では、保険販売については、保険代理店も含めて、なかなか議論の中で、規律づくりが少し遅れているというか、まだ手がついていない部分が多いのではないかと感じています。

 保険商品については、欧州においても、その取扱いはファンドと同様のもので、大変重要なものになっておりますので、今後は保険商品についても、投信そのほかの金融商品と同様に、高い水準の顧客本位の業務運営の原則が実施されるように、さらなる取組をしていただければと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして竹川委員、いらっしゃいましたらお願いします。

【竹川委員】
 竹川です。ありがとうございました。論点に沿ってお話をしていきたいと思います。

 まず1点目の論点、「適合性の原則」についてです。過去の市場ワーキング・グループの会合でも、あまりよろしくない事例が散見されましたので、様々な事例を監督指針として示すことには賛成です。

 論点の2つ目、「顧客への情報提供」についてです。こちらについては、資料2と資料3が出ていますが、まず資料2、金融事業者編からお話をさせてください。

 まず金融事業者編ですが、例えば、独立したFA(ファイナンシャルアドバイザー)のほか、ロボアド+FAのハイブリッド型、これから始まる新仲介業など、様々な業態が広がっていく中で、適用範囲はどこまでなのか、また、どこまで統一して利用するのかは考える必要があると思います。

 それから、利益相反リスクが資料3の「個別商品編」に入っていますが、利益相反リスクは「金融事業者編」に入れたほうがいいのではないでしょうか。金融事業者がどのように取扱商品を選定しているのか、そこに利益相反はないのかというのは、セットで考えたほうがよいと思うからです。

 また、取扱商品について、例えば仕組債や、レバレッジを効かせた商品などリスクが高い商品については、より目立つような記載が必要だと考えます。

 3番の商品ラインナップの考え方については、会社としてどのように(取扱商品を)選定したのかは大事ですが、同時にあなたにどうしてこの商品を提案したのかも大事です。それも含めた記載があるといいのではないかと思います。

 続いて個別商品編、資料3ですが、商品ごとにシートが出ることで提供資料が増えてしまわないでしょうか。(1商品ごとの説明というより)ポイントを絞って、横断的に比較ができることが一番大事だと思います。投資信託と保険商品のように、異なる商品が比較しやすくなることが重要だと思います。

 あと、細かいことですが、個別商品編のシート内に「リスク」という単語が何度も出てきます。それぞれのリスクが示す意味が異なるため、個人が混同してしまわないか心配です。値動きのことを示しているのか、損失のことを示しているのかなど、整理していただければと思います。

 それから論点の3番目、販売後のフォローアップについてです。

 顧客のことを考えて、どのようにフォローアップしていくかを考えるのは本来金融機関の役割であり、それこそ顧客本位の業務運営ではないでしょうか。金融機関に委ねるべきもので、あまり詳しく決める必要はないように思います。

 ただし、顧客のライフステージが変わった場合、例えば現役世代だった人が退職をした、認知機能が衰えたなど、顧客のライフステージや状況が変わった場合には、提供している商品・サービスも変わってくると思います。ライフステージごとの確認、それに伴う商品・サービスの変更についてはフォローする必要があると考えます。

 一方で、(コロナショックのように)株式市場が大きく変動したときに、例えば投資信託は前日の基準価額に対して5%下がると臨時レポートが発行されます。変動が激しいと毎日毎日出ます。運用会社によっては何の説明もなく商品の一覧だけを載せているとこともあります。それでは全く意味がないと思いますし、むしろ、それが毎日送られてくることで不安になって手放してしまう方もいます。

 形式的に何%以上下落したら送るというような、形式的なルールをつくるのではなくて、相場が不安定なときにどうしたら顧客が投資を続けられるかをきちんと考えていただきたいです。

 ただ、最終的に解約していくステージも当然あるわけで、そこにおいては、例えば、投資信託を自動的に解約していくサービスをつくるなど、人がやるべきこととITで対応できることを区別して考える必要があります。また、先ほど島田委員からもありましたが、保険に関しては満期になっても次の保険をすすめられて、解約をなかなかさせてくれないケースもあります。最終的にお金を顧客に届けるところを含めてのサービスですので、しっかり行ってほしいです。

 最後に、デジタル化の問題と関連してですが、照会システムが最後のページに載っていたかと思います。痴呆の問題も含め、どの口座に何があるのかを家族が把握することが難しいので、照会方法については今後ルールが必要だと思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、黒沼委員と神戸委員からも御発言をいただければと思います。

 黒沼委員、いらっしゃったらどうぞ。

【黒沼委員】
 2点ほど発言させていただきたいと思います。

 まず、誠実公正義務・適合性原則に基づく監督対応を可能にするために、監督指針に幾つかの原則を書き込むということですが、これには賛成です。

 ここで提案されているのは、金融商品の内容及び顧客を十分に知ることとか、勧誘対象商品が顧客に適合すると考える合理的根拠を持つことといった、アメリカでは信任義務の内容として認識されている事柄ですので、この程度のことを監督指針で明確化していくことは、ルールベースに逆戻りするということには全くならないと思います。

 次に重要情報シートですが、まず、この重要情報シートの位置づけが少し明確でないと思うのです。一方で、重要情報シートを提供すべき旨とか、その内容等について原則に反映させていくとうたわれていて、他方で、これを交付した場合には法定提供書類の電子的提供を認めるというふうに、法律的な効果に結びつけられているのです。

 そこで、もし原則に反映させていくだけでしたら、その内容について、業界に考えてもらうというのでもいいと思うのですが、契約締結前交付書面の電子提供を可能にするというような法的な効果を考えるのであれば、どういった内容をこのシートに記載するべきかという、少なくとも概要は法律で定めるべきではないかと考えます。

 次に、その情報ですが、特に今日の資料の、商品に関する情報のうち、解約手数料等、それから利益相反の中の業績評価インセンティブの情報提供が挙がっている点は高く評価したいと思います。もっとも、解約手数料等については、解約手数料がかかることがありますとか、手数料がかかりますといっただけでは意味がないので、解約手数料の額が分かっていればその額、分かっていなければ算定方法の概要を、きちんと投資者に知らせるようにしていただきたいと思います。

 それから、利益相反のうち業績評価インセンティブというのは、前回も発言しましたが、恐らく現行法では義務づけられていないような利益相反のことで、これを開示することには意味があるのですが、これこそ、この重要情報シートを原則のみに関連づけるものなのか、それとも法律上の効果を持たせると言っている、規制免除の効果を持たせるかによって、ここまで開示させるべきかどうかということをきちんと検討していかなければならないように思います。

 もう1点、重要情報シートについて、少し気づいたことなのですが、法定書類の交付手続の簡素化を認める要件として、契約締結前交付書面の記載事項のうち、重要事項を顧客に説明することというのが挙がっています。

 私はこれは大切だと思うのですが、この、説明することというのが書面の交付とか電子的提供でもいいということになると、顧客はそれに気づかない可能性があります。

 今回、重要情報シートを特に提示することが重要だと考えられているような、ファンドラップとかデリバティブを含む仕組商品については、特に後者については対面で勧誘が行われると思われますので、対面で勧誘が行われる場合には、書面とか電子的提供ではなくて、きちんと顧客に口頭で説明することを、交付手続の簡素化の要件とすべきではないかと考えます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは神戸委員、どうぞ。

【神戸委員】
 ありがとうございます。項目ごとにお話しさせていただきます。
まず1点目の誠実公正義務・適合性原則の具体化についてに関しましては、事務局さんがまとめられたスタンス、方向性に賛成いたします。販売業者向けに監督指針等で明確化を行うことも適当と考えられますので、この方向でやっていただけたらと思います。

 それから2点目の、顧客への情報提供のあり方については、今回ご提示のあった重要情報シートが、顧客へのよい情報提供ツールになると思います。このシートに基づいて説明を行うことが、ある意味、対面販売の付加価値と言えるかもしれません。販売手数料を金融事業者が得る理由の一つにもなり得ると思いますので、ここはしっかり詰めていく必要があると思います。

 先ほど、シートの記述内容について竹川さんから、利益相反についての記載は金融事業者編にあるほうがいいのではないかというお話があったのですが、利益相反についての記載は一番重要な項目であり、私は両方にあっていいのではないのかと思います。金融事業者ごとのビジネスモデルによって利益相反は起こり得ますし、また、個々の金融商品によって利益相反が起こるケースもありますので、ここは両方に、一番重要な事項とも考えられますので、記載があっていいのではないかと思います。

 13ページに書かれている質問例も、大変具体的でいいと思います。顧客が商品やサービスの内容をイメージしやすくする例を挙げていくべきでしょう。実際に、ここで示されている例の中で、1つ目の推奨される商品が自分にふさわしいという根拠は何か、3つ目の複数の商品を組み合わせたものである場合、個々の商品購入と比較してどのようなメリット、デメリットがあるかといったものは、説明というよりも、アドバイスを求める内容に思えます。何に対する対価なのか、それをどの程度自社が受け取っているのかというのを、顧客にとって分かりやすく提示する工夫が、一番重要になってくる気がいたします。

 次に、3点目の金融商品販売後のフォローアップについてですが、フォローアップには大きく2種類のものがありえると思っています。1つは定期的なフォローアップ、もう1つは随時のフォローアップです。定期的なフォローアップは、ライフプランに基づく運用を行っている一般的な生活者にとって最も重要といえ、マーケットの状況の説明以上に、顧客自身のライフプラン、あるいはリスク許容度、先ほど他の委員からもありましたリスク選好度等の変化を確認し、それに合わせた運用や商品選択になっているかをチェックするためのフォローアップです。

 もう1つの随時のほうは、今回の相場急落のような局面は、一般的な生活者はもちろんのこと、積極的に投資を行っている顧客にとっても、コーチング等の要素も含めて、まさにアドバイザーの価値が問われる場面と考えられますので、顧客の投資スタイル別にどういうフォローアップをしていくべきかということを、それぞれ捉えておく必要があるかと思います。

 これらのフォローアップをきちんと行えば、投資信託の信託報酬のうちの代行手数料を販売事業者が受領する理由にもなりえると思いますので、金融事業者の方々にも認識していただく必要があるのではないかと思います。定期的なフォローは、少なくとも年に1回程度は行うべきではないかと、実際にそういうビジネスを行って来た私としては考えております。

 最後に、論点④の超高齢社会における金融事業のあり方についてに関しましては、前回、競争ではなく協調による対応が求められる項目もあるだろうというお話をさせていただいたのですが、23ページの3つ目の丸などで、業界全体による協調の必要性をご提示いただいており、感謝申し上げます。

 協調が重要という流れの中で、金融機関さんと福祉関係機関さんの連携も非常に重要だと思います。25ページにも書かれていますが、金融機関が認知症の可能性があるお客さんの発見に寄与することも可能だと思いますので、この辺りの対応方法は、明示するべきと考えます。

 それから、30ページの(ア)に、その他使い勝手のよい金融商品やサービスの検討・開発・導入という記述があります。実際に認知判断能力が低下された方の金融資産が死蔵・退蔵されるのを防ぐためにも、現行法下でそういった資金の運用をGPIFが直接行いうるのかどうかは存じませんが、少なくともGPIF的な運用を行う主体が生まれる、あるいはそういう運用を行うファンドを事業者が提供するようなことも必要ではないかと考えております。

 前回、つみたてNISA対象商品の選定に関して、我々も加わって基準作りを行いましたが、同様の方法などで基準作りに金融庁さんが関わっていくことで、お年寄りにとっても、国にとっても、金融資産の有効活用を図れるような仕組みや商品が出てくる可能性があると思いました。

 私の意見は以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、これで本日参加されている皆様方、委員の皆様方からは全て御意見をいただきました。オブザーバーの方々で御発言は……。

【林田委員】
 林田です。先ほど発言をお願いしたのですが、できそうでしょうか。

【神田座長】
 オブザーバーを先に聞いてもよろしいですか。

【林田委員】
 はい、分かりました。

【神田座長】
 オブザーバーの方々で御発言はございませんか。

 証券業協会の荻野さん、いかがでしょうか。お願いします。

【荻野オブザーバー】
 日本証券業協会を代表しまして、大和証券の荻野でございます。

 まず初めに、今回提案をされている内容につきましては、全体として、顧客本位の業務運営をより高度化するための施策として、前向きに受け止めております。多様な業種・業態のプレーヤーが金融業に携わる現状においては、幅広い事業者において「原則」が採択されることを期待しています。

 その上で、各論点については、ポストコロナにおけます生活様式に対応したものであること、それから、各社のビジネスモデルに応じた対応が可能であること、それからシステム対応等の一定の期間を設けていただくということが必要かと考えています。

 まず、誠実公正義務・適合性原則の具体化のところでございますが、適合性の原則等の具体化につきましては、監督上の目線合わせを行うことによりまして、金商業者の底上げにつながることを期待しています。

 また、ライフプランを踏まえた金融商品の提供には現在も積極的に取り組んでおりますが、これに対するお客様の希望や、お客様から提供される情報のレベルは様々であるということから、金商業者に一律の対応を求めるものではないものと位置づけていただきたいと思います。お客様の金融商品販売後のフォローアップにつきましても同様に、顧客ニーズやビジネスモデルに応じて対応することを前提にしていただければと思っております。

 それから、顧客への情報提供に関してでございますが、先ほどから皆さん、意見が出ておりますが、この簡略な説明書面につきましても、前向きに取り組みたいと考えております。が、既存の書面と重複した内容の書面がまた新たにできてしまうと、お客様の負担が増加しまして、必ずしも理解の促進につながらないおそれもありますので、既存の書面も含めまして、規制内容や渡し方については、業界と十分な調整を行っていただきたいと思っております。

 この説明書面は、原則の附属資料として位置づけられるということでございますので、プリンシプルとルールの関係を整理していただいた上で、利便性と顧客保護の最適解を見いだせればと思っております。

 あと併せて、原則として法定書類の電子交付を可能にすることにつきましては、これはお客様に複雑な手続等の負担のない形で、ぜひ実現していただきたいと思っています。

 あと、商品の比較につきましても、お客様の理解の促進に資するものと考えておりますが、比較の対象や手法は、各社においてまちまちのところもありますので、こちらは自社の取扱商品を念頭に、合理的な対応をしていただくのがいいかと考えています。

 以上、いろいろ申し上げましたが、証券界としましては、今までも顧客本位の業務運営に積極的に取り組んでまいりましたが、この御議論を踏まえまして、さらなる向上を図ってまいりたいと考えています。今後もいろいろ調整が行われるということでございますので、そちらで御意見等をいろいろ言わせていただければと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、続きまして生命保険協会の朝日さん、いらっしゃいましたらどうぞ。

【朝日オブザーバー】 
 ありがとうございます。生命保険協会の朝日でございます。それでは、本日事務局から御提案いただいております論点②の、「重要情報シート」についてコメントをさせていただきます。

 生命保険協会におきましては、事務局説明資料13ページにも御記載いただいておりますように、先行的な取組として、既に昨年4月より、保険課の皆様の御指導を仰ぎながら、EUのPRIIPsの規制を参考にしまして、投信との商品比較を念頭に置いた、「募集補助資料」の導入が各社で行われております。これは、現在御提示いただいております「重要情報シート」と、内容・位置づけともに酷似をしておりますので、現状の「募集補助資料」の体裁を、新設します「重要情報シート」に寄せて一本化する方向で、今後、市場課の皆様とも御相談させていただきながら、お客様にとってより分かりやすい情報提供を目指して、検討を進めてまいりたいと考えております。

 なお、「重要情報シート」への移行の時期につきましては、「募集補助資料」導入からまだ間もないこと、また新型コロナウイルスの影響等にも鑑みまして、十分な移行期間を確保いただくとともに、準備の整った商品から順次移行といった柔軟な対応等も許容いただきますよう、御配慮をいただければと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。オブザーバーの方々で、ほかに御発言はございませんか。よろしいでしょうか。

 それでは林田委員、お待たせして申し訳ありません。できれば簡潔にお願いできればと思います。

【林田委員】
 先ほど、永沢委員から、プリンシプルの見直し規定ついてお話がありましたが、私もその点は理解した上で発言しておりまして、何も、最初に決めたプリンシプルを一切変えずに墨守しろということを言っているのではなくて、今回のことがルールベースに戻ってしまうアリの一穴のようにならないように対応していただきたいというお願いをしたつもりであります。

 それから、次の論点の、顧客の情報提供についてですが、重要情報を簡略な共通フォーマットに載せて提供するという対応については賛成いたします。それに伴って、法定書類の負担軽減を図るということも、適切な対応と考えます。

 ただ、例示されている質問例なのですが、これは、どれも適切な営業行為をする際に当然行うべき説明でありまして、例示をすることによって、顧客に気づきを与えるのは非常にいいアイデアだとは思います。

 ただ、これ、例示した質問がミニマムスタンダードになって、これさえ書いておけばいいということになれば、ベストプラクティスを目指すプリンシプルベースに照らすと、本末転倒になってしまうのではないかと危惧しておりますので、各事業者には工夫をしていただきたいとお願いしたいと思います。

 島田委員、中野委員も御指摘されていたと思うのですが、重要情報シートをボイラープレート化させないことを図っていただきたいと、重ねてお願いしたいと思います。

 そのために、いい質問例、例示ですね、いい情報提供内容をブラッシュアップするために、当局が業者側によるいい事例を収集して周知していくことが効果的ではないかと思います。

 それから次の論点、金融商品販売後のフォローアップですが、先日のワーキングでも少し発言しましたが、株価が急速に下落した局面であっても、私のような少額の積立NISAのユーザーに対しては、全くフォローがありませんでした。

 下落局面を耐えることこそが、長期分散積立方式の面目躍如といったところでありますので、事業者には、こうした局面こそ、じっくりと長期投資に取り組む層を広げるいい機会なのだと自覚されて、積極的に動いていただきたいと思います。

 最後に、超高齢社会の金融業務に関してですが、資料にいろいろ例示されているポンチ絵のような仕組みがワークすれば言うことはないのですが、肝腎の成年後見制度というのがなかなか普及していない状況です。これを打破しないと、取組はいろいろ金融事業者でもやっているようですが、全体として取組は前に進まないのかと思います。

 この方面にあまり詳しくないので妙案はないのですが、後見制度の普及を阻んでいる事情みたいなものをしっかり分析して、対策を立てていくことが必要だろうと感じています。この分野の知見をお持ちの先生方に、忌憚のない御意見をこれからいろいろ伺えたらと思っております。

 以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ちょうど終わりの時間が近づいているという感じかと思います。事務局から何かございますか。

【太田原市場課長】
 委員の皆様方、本日は有用な御意見をいただきましてありがとうございます。いただいた御意見については、また精査した上で、今後の取扱いについて考えていきたいと思いますが、本日の時点で非常に重要な指摘と思われる点について、現時点での考え方を多少回答していきたいと思います。

 黒沼委員から御指摘がありましたが、重要情報シートを原則に反映するということと、電子交付という法律的な効果の御質問があったかと思います。

 これはまた、本日の御意見を踏まえて考えを深化させるかもしれませんが、会議の前の時点で想定していた内容としましては、書式は、これは不断にブラッシュアップしていくべきものですから、何か原則そのもの、あるいは一部ということですと、使い勝手が悪いのではないかと思いまして、ただ、一方で、電子交付というまさに法令上の効果を与えるという点を考えると、今のところは、原則の注か何かに、内容面、項目面について、分かりやすく比較可能な形で説明をすることを記載し、そしてその場合には、法令上、電子交付する道が開けるというような形でつないでいくことがあり得るのではないかと考えていたところです。

 あと、重要情報シートの質問例も、林田委員から御意見がありましたが、これがミニマムスタンダードになるかどうかは、実際これが普及するかどうかにもよりますが、少なくとも、こういうものを盛り込んだ、提案しました我々の意図を申し上げますと、これが最低限説明するというよりは、まさに顧客の側が、金融機関の方に主体的に何かを話すことによって、説明を受けている受動的な立場だけではない、能動的に質問することによって、理解が深まるのではないかと考えているところでございます。

 あと、重要情報シートの中で、利益相反について、事業者のシートに書くべきか、個別商品に書くべきか、はたまた両方書くべきかというのは、それぞれごもっともな御意見であったと思いますが、どういう位置づけがすっきりした整理になるのかということも、また改めて考えた上で、皆様方に御判断いただきたいと思います。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、時間が参りましたので、本日はこの辺りとさせていただきたいと思います。

 本日は、この市場ワーキングとしては初めてのオンライン開催であるにもかかわらず、皆様方からはいつもどおりの、大変熱心で、また貴重な御意見をたくさんいただきまして、本当にありがとうございました。

 オンライン会議で若干不備がございまして、大変申し訳ございませんでした。

 次回以降は、本日を含め、これまでいただきました御議論、御意見を踏まえ、できれば取りまとめに向けた御議論をお願いしたいと考えております。引き続き、皆様方にはどうぞよろしくお願いいたします。

 日程に関しましては、後日、事務局から御案内申し上げます。

 それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループを終了とさせていただきます。どうも、オンラインで長時間熱心に御参加いただきまして、ありがとうございました。

―― 了 ――
 

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