金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(第4回) 議事録

  • 1.日時:

    平成25年9月10日(火曜日)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

○神田座長

おはようございます。皆様方おそろいのようでございますので、10時には20秒ぐらい早いのですけれども、始めさせていただきたいと思います。

ただいまから、新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの第4回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところをお集まりいただきましてまことにありがとうございます。

本日でございますけれども、寺田副大臣にご出席いただいております。まずご挨拶をいただけるということですので、副大臣、よろしくお願いいたします。

○寺田副大臣

ありがとうございます。

昨日の金融審の総会に引き続きまして、今日はリスクマネーの供給のあり方に関するワーキング・グループ会合ということで、委員の皆様方においては大変にありがとうございます。昨日も申し上げましたが、4本目の矢も放たれたということで、また、ちょうど昨日はGDP成長率の改定値、4-6の改定値がプラスの3.8ということでございました。また、株価のほうも344円高ということで、とりあえずオリンピックの招致が決定をしたことで大変プラスの効果が出ており、今日も既に私が部屋を出てくる時点で200円以上上がっておりまして、1万4,400円を超える水準となっております。きのうのご議論でもありましたとおり、オリンピックの関連で申しますとさまざまな基盤整備、とりわけ首都直結線でありますとか、3環状の整備でありますとか、あるいは恒久施設の建設。主として臨海地区、湾岸地区に建設が行われるわけであります。また、東北の被災地においても競技開催をし、復興の一助にしようということでありまして、さまざまなそうしたプラスの投資も主として基盤整備、インフラ面、・・・・これは公的支出による部分も大きいわけでありますが、惹起されるものと期待をされます。

また、今回のPFI法の改正によりまして、いわゆる民間資金活用型の社会資本整備の受け皿の枠と、そしてまたスコープも広がったということで、当然、そうした基盤整備に対しまして民間資金が活用される場面も増えてこようかと思います。また、規制改革会議で取り上げております空港の離発着枠の拡大でありますとか、さまざまな物流の、自由化、また、インバウンド・アウトバウンド、いわゆる内・外の活性化と規制緩和、こうしたものも規制改革会議のほうで集中的に取り上げていくことになっております。

1本目の矢の金融政策のほうにつきましては、昨日もちょっと言及をさせていただきましたが、いわゆるリクイディティトラップ、金利における流動性のわなというこの制約を脱却し、新たな目標設定、2%の物価目標と、そしてマネタリーベースの倍増ということで日本銀行を中心に取り組んでいるわけでありますが、問題はその出口のところであります。出口のところは単に準備預金が積み上がる状態を脱却するために、今回、金融行政のほうといたしましても監督方針、そしてまた検査方針を健全性にも留意をしながら成長分野における間接金融の提供、こうした点についても十分テイクノートした形でもって方針の樹立がなされたところであります。

また、2本目の矢の財政政策につきましては、金融との接点の政府金融、政策金融の分野もあるわけでありますが、先ほど申し上げましたようなプラスの投資に加えまして、今回、我々、参議院選の公約でもあったわけでありますが、国土強靱化計画の立案、策定も行う方向であります。かつて350兆の社会資本整備計画というのがSIIの合意でもなされたわけでありますが、バブル期でありますが、今回は若干スケールダウンいたしますが、10年間200兆という強靱化計画であります。これは強靱化計画でありますから、強靱化に資する分野、防災、減災、ニューディール、こうした分野に主として振り向けられるわけでありますが、オリンピックとオーバーラップする部分ももちろん生じてこようかというふうに思います。

きのう、猪瀬都知事もそのようなことをテレビ報道でも言っておりましたが、あと、3環状の整備についても、主として遅れております外環道を中心にこれから整備が進むと思いますが、さまざまなそうしたプラス要因をさらにピックアップいたしますためにも、当ワーキングで取り上げていただいております、この直接金融のリスクマネー、新規企業、成長企業に対する資金供給の問題というものも同時並行で解決をしなければならない重要問題であろうかと思います。

若干の数字を申し上げますと、日米における開業率、2010年におきましては、アメリカでは9.3%に対しまして、我が国は4%台、4.5%にとどまっており、2倍の差が生じております。また、IPO件数、これは今回の閣議決定でも、また、当ワーキングでもご審議賜ります、新規上場要件の緩和、あるいは上場後の資金調達の緩和、両面あるわけでありますが、IPO件数について見ますと、2012年におきましてアメリカでは129件。これはピンクシートなどは除いておりますが、129件であるのに対しまして、我が国では48件と、2.7倍の乖差が生じているところであります。また、ベンチャーキャピタルの年間投資額、この資料は冒頭、このワーキングの初回のときに提示もさせていただいておりますが、2011年においてアメリカでは2.3兆円であるのに対しまして、我が国では1,240億ということで、かなり桁が違うということでありまして、こうした新規ニーズ、成長ニーズに対しまして、金融面から、なかなか直接金融面においては十分こたえていない状況が続いている。そうした中、これまでの3回の意見聴取、ヒアリングなども経まして、投資型のクラウドファンディング、これについてさらにご議論を深めていただき、さまざまな形でもってこの成長戦略、あるいはまたさまざまな資金ニーズ、とりわけリスクマネーの分野におけるニーズに応える形をとることができればと思っております。

先生方の積極的なご審議のほどお願いいたしまして、ご挨拶といたします。ありがとうございました。

○神田座長

どうも大変ありがとうございました。

なお、本日は、吉野金融審議会会長にもご出席いただいておりますので申し述べさせていただきます。

それでは議事に移らせていただきます。本日でございますけれども、リスクマネーの供給のあり方に係る現状の課題と対応策についてお話をいただくために、参考人といたしまして慶應義塾大学経済学部の川本明様にご出席いただいております。本日はお忙しいところどうもありがとうございます。

そこで、まず川本様からお話を伺いまして、自由討議をさせていただきたいと思います。その後、クラウドファンディングについて事務局から説明をしていただいて、皆様方にご議論をお願いしたいと思います。

それでは、川本さん、よろしくお願いいたします。

○川本参考人

ご紹介いただきました川本でございます。よろしくお願いいたします。本日はこういう機会を与えていただきまして大変光栄でございます。

資料に沿いましてご説明申し上げます。まず2ページをお開けください。簡単に私の紹介をしておりますが、経済産業省に昨年までおりました。現在、慶應で経済を教えております。それから、同時に、ベンチャーとはちょっと異なるのですけれども、投資の事業にかかわっております。

本日、このワーキング・グループにお呼びいただきまして、「新規・成長企業へのリスクマネーの供給」というテーマでお話をさせていただくに当たりまして、私にとりましてこのテーマというのがどういうものであったか、私とどういうふうにかかわっているかということを簡単にご説明したいと思います。もともとずっと経済産業省で、いろいろな政策に携わってまいりました。今、寺田副大臣からお話がございましたが、ベンチャーへの投資ということではこれまで経産省もクラスターの政策ですとか、エンジェル税制ですとか、また金融庁の方でもいろいろな上場に係るルールについて長年、ご努力をされてきているにもかかわらず、なぜこの分野で投資が増えないのか。大きく成長するベンチャーが次々と生まれているので、アメリカでは、産業のリーグテーブル、つまり売り上げの大きい企業の順位というのを見てみますと、10年間で大きく様変わりしています。産業構造がどんどん変わっています。このように今、現に大きく成長している分野に企業がどんどん大きく伸びていくという状況が日本でもつくれないと、全体としての経済の成長というのはなかなか難しいだろうというふうにずっと考えてきた次第でございます。

ずっと、なぜうまくいかないのかということを考える中で、たまたま私は、2006年から2年ほど、経済産業研究所、RIETIという、経済産業省の政策研究をする独立行政法人の研究調整ディレクターをやりました。そこでこの問題、なかなか簡単には答が出そうにないということで、何人かの先生に集まっていただきました。当時は東北大学の経済で教えていらっしゃって、もともとジャフコ等にいらした西澤昭夫さんを中心に、五、六人の先生に集まってもらいましてプロジェクトを始めました。もともと蓄積のある彼らが2年間にわたってRIETIの研究資金で非常に多くの文献をさらに探索し、それから、海外にも2回ほど、実際にアメリカ、イギリスを中心に、北欧とかドイツ等々に行ってもらいました。その研究成果を2012年に、―私の資料の最後にございますが、―「ハイテク産業を創る地域エコシステム」という本としてまとめたわけでございます。

本日は、それを基にして、私もその研究の企画を立ち上げ、議論に参加した人間としてお話ししたく思います。私の立場としては、その研究者の方々には、研究のための研究をやるのではなくて、どうやったら政策に結びつくかという、政策面でのインプリケーションを最大限考えてほしいということを再三お願いいたしました。従って、私は政策の「経験者」、ある意味での専門家という観点で、海外の事例研究にも基づき、お話をさせていただきたいと思っています。

以上、ちょっと長くなりましたが、今日のお話の前提をお話ししました。

3ページをお開けください。ベンチャー企業がどんどんと生まれて、次の世代を担う大企業になっていくという姿になかなかならない日本ですが、それが必要だということは誰も否定できないところだと思います。その場合、やはり新技術をベースとした新規企業が持続的に多数スタートアップすることが大事だと思います。非常にリスクが大きいですから、1つだけということでは当然、成功の確率が非常に低いことになります。こういう企業が幾つも出てくる。その中から非常に大きく成長する企業が花開く、ということが経済成長にとっては必要だと思います。従って、単なる一般的な起業支援、これも意味はあると思いますが、それよりも先端的な研究機関(大学及び公的研究機関)の研究成果を事業化していくことが重要だと申し上げたい。それをどうやって支援するかというのが成長戦略として最も重要、効果的な部分だろうと思います。

過去の海外の成功事例を見ますと、持続的な事業化が生まれるその背景、基盤には、いわゆる生態系、エコシステムと呼べるようなシステム、すなわち、研究、企業、人材と、こういったものが有機的につながりを持った集積があります。そういった「エコシステム」をつくっていかなければ持続的に新規技術をベースとした企業というのはどんどん出てこないということでございます。

したがいまして、特定の大学あるいは公的研究機関のある地域が、1つのそういったエコシステムのベースになるということでございます。つまり一定の地域に依拠したエコシステムというものをつくっていかなければいけません。従来、政策としてはエンジェル税制、大学のTLO、クラスター形成、さらにIPO市場振興、それぞれ一生懸命やったわけですけれども、それが単発、個別の実施に終わってしまっています。複数の政策が地域のエコシステムというものをつくるために動員されていかなければいけない。そういう意味で全体的な政策体系の再整理が必要じゃないかと考えます。

4ページ、次のページをごらんください。経済産業研究所の研究で得られた知見の一つです。過去、エコシステムということで成功している、一番誰でも思いつくのはシリコンバレーですが、実はアメリカでもシリコンバレーに行き着くまでに、その原型となったシステムというのが戦前のボストンにあったのです。このMITを中心としたエコシステムが、おそらく世界で最初のイノベーションエコシステムであったということでございます。

そこに見出される幾つかの重要な要素があるというのが次のポイントでございます。一つ目は、大学のあり方です。MITは従来型の研究大学というタイプ、通常の意味での大学だったわけですが、(現在でもほとんどの大学が依然この研究大学というモデルだと思います)それを「企業家大学」という形にモデルチェンジしたという、革命的とも言えるような変化がありました。

二つ目に、それと関連してですけれども、戦争ということで、アメリカの軍需支援研究をどんどん公的な研究資金としてMITに引っ張ってきた点があります。軍のスペックに合った研究を行い、その研究成果の最初の購入者も軍であることが非常に多かったわけです。こうした先端製品への公的な需要の存在が重要な要素としてございます。

それから、3つ目が、世界最初のベンチャーキャピタルと言われますARD。アメリカン・リサーチ・アンド・ディベロップメントコーポレーションです。事業化という際には金融は欠かせません。こうしたVCもボストンでつくられたということでございます。

それから、4つ目に重要な要素として地域の承認、支持があります。これも地域のエコシステムということを発展させるために、ボストンならボストンの地域の全体の経済の中で、ここを振興していくというコンセンサスがあるということでございます。

これらを全体としてシステムに組んでいくときに、非常にビジョナリーでかつ、リーダーシップのあるリーダーがいたというのも重要な要素です。具体的にはコンプトンさんという、MITの学長を務められた方がこういったことを主導しました。例えば、先ほどのベンチャーキャピタルも、このコンプトンさんという方が働きかけてつくられました。

そういうことで、詳しい話をすれば、多分これだけで大学の2単位ぐらいの授業になってしまうわけでございますが、こういう重要な要素を組み込んでエコシステムというものがまずボストンにできました。それがその後シリコンバレーにいろいろな人を介して移っていきました。そして、シリコンバレーで非常に華々しくさまざまな企業が生まれ、成功例として認知をされて、アメリカでもCloning Silicon Valleyという政策になり、各地域のいろいろな試みが出てきたということでございます。その中で、テキサスのオースティンですとか、あるいは海を越えてケンブリッジ、ドイツのミュンヘン、スコットランド、イスラエル、こういったところに新技術ベンチャーの集積が生まれていったということでございます。

ここでの一つの重要なメッセージは、今申し上げたように、エコシステムを構成する様々な要素がございますが、そのうちの一つの要素だけを部分的にまねしていっても、なかなか全体的なシステムはできないということです。同時に、ある地域にそういうシステムをつくらなければならず、それぞれの地域ごとのアダプテーション、適応というのもまた同時に必要になります。

ひるがえって、今の日本の現状を、エコシステムを成り立たせている要素というところから見たのが次のページの簡単なまとめです。各主体がイノベーションに向けて努力をしている中で、全体としてなかなかそれが本格化しないという状況ではないかと思っております。

例えば大学ですが、先にあげた、これまで成功例と言われている地域を見てみますと、やはり大学がかなり財政的にも、例えばMITのようなところでも、相当追い込まれていたという点があります。大学自身が自立化していくためにも、自分が持っている研究成果を事業化していくということを本気で取り組まないといけないという事情があったようです。他方で今の日本の大学の現状を見ると、なかなかそこまではいっていないということだろうと思います。つまり個々の研究者の方の研究を一生懸命やってもらうということで大学というものが成り立っているということでございます。仮にこういった企業家大学というような形で事業化に取り組む仕組みを大学の中に入れようとしますと、当然、研究者の中では対立が起きてまいります。既存の大学のあり方の中ではそういった対立を調整するというのは大変だということになり、従って取り組みは中途半端に終わってしまうということもあろうかと思います。

それから、企業の方は、産学連携ということで、もちろん大学に大変関心はあるところでありますけれども、基本的に日本の企業は自前主義です。自分のビジネスに足りないところを大学のところで補ってくれれば、それは大満足であり、本気で大学の成果を事業化するというところにまで関心はありません。

また投資家を見てみますと、日本全体としては大変大きな金融資産があるということはもう常識化しておりますが、理論的なポートフォリオの投資の考え方からいいますと、大きな資産の一部をハイリスク・ハイリターンの投資対象に振り向けていくというのは、最終的な収益の意味で最も合理的だと言えます。しかしそういった投資の原則というようなものが必ずしも日本では確立しておりません。例えば、アメリカですと、エリサ法に基づくプルデントマン・ルールという形で、企業の年金の投資の原則が公的なルールとして公表されています。どういう投資のやり方が「プルデント」かということの中に、こういった全体として収益を上げることを追及するのが一番合理的だと書かれています。リスクが非常に高い資産に投資をすること自体が問題だということにはならない、むしろ同じ種類の資産に集中せず投資は分散するのが合理的だということが明確に打ち出されております。日本ではそういった考え方自身が公的に確認されず、まだ定着していないと思います。

さらに、投資家からお金を預かって、それをベンチャー企業に投資するファンドマネジャーであるベンチャーキャピタルは、どちらかというとやはり間接金融の考え方が主流です。間接金融では安全が重視されますが、投資本来の考え方、つまりじっとしていて待つばかりでは収益が上がらないという積極的な投資姿勢が非常に弱いと考えられます。

最後に、起業家の担い手を見てみますと、大きな組織というものがやはり非常に影響力が強いのが日本社会の特色です。大組織に個人が依存するというのが一番リスクの少ない生き方であり、逆に起業に打って出るときのリスクが非常に大きい。一定期間以上その組織に勤めないと退職金がもらえないということですので、ある一定の年齢に達するまでは辞めると大きな退職金を失うことになります。また起業資金の個人保証の問題も個人にとってのリスクを大きくしています。それぞれ、なかなか本気でリスクをとれないという事情があるというのが日本の現状であろうと思います。

こうした現状を踏まえて、先ほど来、申し上げております、エコシステムを日本でつくっていくためにどういう課題があるかを、それぞれの重要な要素につきましてまとめてみましたのが6ページ以下でございます。

第一は大学でございます。大学は、いわゆる組織としての企業化への取り組みを本格化する必要があります。研究者に研究だけではなくて、創業活動に参加するインセンティブを与えていかなければいけません。研究者に実業にどんどん参加してもらうということを組織として促していくということが必要になります。この場合、従来の大学のあり方とは全くある意味で正反対の原理を持ち込むということになりますので、その中に適切な利益相反マネジメントというものの仕組みを入れてあげないと、個人が非常に悩むということになってしまいます。今の日本の大学のあり方というのは、研究成果は公開し、共有し、非営利目的であるという原則がございます。それに対して、企業家大学というモデルになりますと、守秘、専有、営利といった原理を持ち込まなければいけません。アメリカの大学でも試行錯誤を続けてルール化されてきていますが、これをどうやって日本でもルール化していくか、体制として構築するかは大きな課題です。

そういう意味で、大学のミッション自体を変えていかなければ、大学がなかなか研究成果の事業化に本格的に取り組むということはできないだろうと思います。ただし、誤解のないように申し上げたいのは、私は日本の大学全てをこういった企業家大学にするということを主張する者ではございません。いわゆる先端的な研究を行っている大学が明確な目的意識のもとにこういった組織を自分の中につくっていくということが必要だということでございます。これと関連して、今、補正予算で大規模なベンチャーファンドが幾つかの大学に予算措置をされているところですが、その具体化に当たりましては、細心の注意を持って設計していく必要があると思います。

課題の第二は新技術製品、事業化していく製品の調達の促進です。よく指摘としてあるのは、アメリカの例では軍需が非常に大きな役割を占めているということですが、なかなか日本ではそういったことが成り立ちません。日本でも公的機関、大企業がこういったベンチャーの製品の調達にもっと積極的になっていくということがエコシステムにとっては非常に大事な要素ということです。

それから、課題の第三は、委員の先生方のご専門のファイナンスの問題でございます。ベンチャーが最初のシーズの研究段階からビジネスとして大きく花開いていくにはいろいろな段階がございます。最初のシーズは公的資金、スタートアップはエンジェル、拡張段階ではベンチャーキャピタル、そして上場して一般投資家の投資対象になっていくという、長い道のりの各段階がございます。それぞれの段階においてこれを整備していく必要があると思いますし、しかも一貫した整備の仕方が必要だろうと思います。その意味で、税制につきましては、現在日本ではエンジェル税制ということでございますが、もっと先の段階での税制優遇も必要になってくるのではないでしょうか。具体的には、イギリスではベンチャーキャピタルの投資信託に対する税制優遇がございまして、一定の成果を上げております。こういったことも将来的に検討していく必要があると思います。

それから、ここはむしろ先生方にぜひお考えいただきたいと思うんですけれども、投資主体の支援だけではなくて、投資の判断や決定や実行をサポートするさまざまな機能、ソーシングですとか探索ですとか、案件の仲介、あるいは投資を判断する際の分析、こういったところを整備していく必要があります。そういったサポート機能を担うのは主にやはり証券会社だと思いますが、サポートをすることで収益を得るというモデルをどうやってつくるかという点が非常に重要だろうと思います。

市場整備ということで言いますと、今やっていただいております市場上場負担の軽減ということに加えて、流動性の確保も重要でしょう。海外ではベンチャーについてはあるようでございますけれども、マーケット・メーカー制度といったようなことが必要になってくるのではと思います。

最終的にベンチャー投資へのお金の流れが太くなるためには、長期的には年金ですとか大学の基金などの機関投資家が投資を増やしていくことが必要です。そういった基金が安心して投資できるような市場の整備を目指す必要があります。

公的資金をどう使うべきでしょうか。先ほどの補正予算のベンチャーファンドの話もありますが、海外にもそういった公的資金でてこ入れしていくという例はございます。1つ、イスラエルの例などは参考になるのかなと思い挙げさせていただきました。ここでは公的ファンドが単独で100%、あるベンチャーファンドに出すというのではなくて、LPとして、ファンド・オブ・ファンズとしてお金を入れつつ、ベンチャー投資で評価の高い経験ある海外の機関投資家と一緒に組んでVCに投資することを義務づけるなど、うまく回る仕組みを設定しているようでございますので、そういったことも参考に制度設計をしていくのがいいのではないかと思います。

課題の第四は人材の流動性です。どうやって起業に人が出ていくのか。研究成果というのはやっぱり人について回るものでございますので、これには一般的な労働市場の制度改革も重要でございます。さらに、個人保証の慣行、あるいは退職金について、長く働かないともらえないような慣行というのは改めるべきでしょう。あるいは破産をしたときの最低限持っていられる財産額というのが、日本が99万円で、アメリカは5万ドルという研究成果もあり、こういった点も改めていく必要があると思います。

それから、第五の課題として、どうやってエコシステムを構築していくかという推進原理の問題があります。キーワードとしては、起業家、大学、金融、この三者の利益共有、profit sharingということだろうと思います。

それから、もう一つは、先ほどのMITの学長さんがボストンでこういったシステムをつくるのにリーダーとして大きな役割を果たしたと申し上げましたが、そうしたシステムのリーダーが重要だと思います。これは単に特定の研究をやるリーダーではなくて、こういう全体のシステムをつくっていくリーダーです。マルチタレントといいますか、研究、金融、それから地域のある意味で行政的な面もカバーできるような方がシステムをつくる上で主導的な役割を果たしてもらわなければいけない。同時に地域のイニシアチブが非常に大事でございます。これまでのような、中央が設定したいろいろな支援基準に地方が合わせていくということでは、多分、なかなかうまくいかないでしょう。これは5年、10年かかる話ですので、自らの地域を発展させることに長期間コミットする方がやらない限り、続かないのではないかと思います。

最後に9ページをご覧ください。国の行政の分野で見てみます。先ほど来、申し上げております大学、これは文科省。それから金融、これは金融庁。それから地域の産業ということですと経産省ということになります。それから、機関投資家では年金が重要ですから厚労省も深く関連します。これらのさまざまな政策分野をクロスオーバーした問題でございます。各分野の政策が整合的、協調的に実施されなければ効果を上げられません。政策推進体制において縦割り制を克服する仕組みなりメカニズムが不可欠だろうと思います。

同時に、ベンチャー投資というのは非常に息の長い投資ですから、効果が上がるには、数年から10年かかります。繰り返しになりますが地域のイニシアチブが非常に重要であろうと思います。

担い手としては、地域の発展にコミットするリーダーの方、チャレンジ意欲旺盛な起業家の方、忍耐強い長期の投資家、こうした方々が日本にあらわれてくることをどうやったら期待できるか。

最後に、ベンチャー投資の促進ということは、不確実性が高く、常に仮説検証によって日本型の、日本に合った仕組みをつくっていくこと、政策を進化させていくというメカニズムが必要でございます。ある一時点でこれだということで決め打ちをして、すぐにはうまくいかないということで、やっぱりだめだ、やめてしまえ、となるのを非常に恐れる次第です。あえて言えば、日本の財政当局等は非常に厳しい優秀な査定をされますが、本問題につきましては要求する側もなかなか100%自信のあるアイデアがないというのが実態でございまして、そこはある種、両者がオーナーシップを持って育てていくということが必要かなと思っております。

非常にたくさんのことを一遍に説明しまして申しわけございませんでした。私のプレゼンは以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただきたいと思います。今の川本参考人のお話についてのご質問、ご意見、また、そのほかリスクマネーの供給全般にわたることでももちろん結構でございますので、どなたからでもご自由にご発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。

○吉野金融審議会会長

私のほうから2つお聞きしたいんですけれども、1つは、ドイツとかスウェーデンというのはちょっと違った形でやっているような気がいたしまして、何かちょっとドイツのことを調べたときにはKFWという政府系金融機関が民間の資金も併せて新しいようなことをやっていますので、今日のお話はアメリカが中心だったと思うので、もし分かればで結構なんですけれども。

2点目は、大学を中心としますと、やっぱり、どちらかというとサプライサイドでの研究で、もう一つ重要なのは、利用者がこういうイノベーションなりこういうのがあればもっと使いやすいと、そういう需要側からのアプローチというのもあるような気がいたしまして、両方があるほうがいいような気がするんですけれども、その2点、お願いしたいと思います。

○川本参考人

ドイツにつきましては、吉野先生がおっしゃった例は私、存じ上げないんですけれども、この西澤先生等のグループもドイツに行っておりまして、彼らが行ったのはミュンヘンですね。ミュンヘンで有名なマックスプランク研究所の周辺にこういったエコシステムをつくろうという試みをドイツはやりました。ただ、ミュンヘンについてはなかなかうまくいっていなかったというのが一応、その評価のようでございます。

それから、需要者からのイノベーションについては、それも大変重要な点だと思います。ここで申し上げたかったのは、経済を変えていく力というのがどこから来るかというときに、やはり革新的な技術がコアになるというのが私の仮説でございます。ただ、そのときに非常に重要なのが、それをどうやってマーケットにつなげていくかという点で、事業化というのはまさにそういうことだと思うんです。その事業化のところで日本というのはやっぱりうまくいっていないと。

私は、かつて、内閣府で科学技術政策にも携わりました。日本の大学には今でも多くの予算が研究のために配分されておりますが、それをウオッチする担当をしたことがあります。その経験からしても、日本の研究水準というのは高いと思います。ただ、それが残念なことに、ノーベル賞は結構たくさん最近取っていますけれども、事業化のほうにつながっていません。また特許数の獲得でも日本は相当多いんですけれども、それがまた事業につながっていません。大学だけではないんですけれども、事業化、まさに先生がおっしゃる需要、マーケットをどうやってつかむかというところにボトルネックがあるというのが私の全般的な印象です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、永沢委員。

○永沢委員

今日はどうもありがとうございました。海外の様子もよくわかり、とても参考になりましたが、私からは2つ質問と、それから、1つ、少し感想めいたことをお話しさせていただきたいと思います。素人質問なんですが、先生が想定されている資金の出し手というのは、今日のお話ですと、公的なお金だとか、年金などの機関投資家、それから寄附などをベースにした大学の基金などを想定しているように感じたのですけれども、そういう理解で間違いがないのかということが第1点です。それから2点目はそれに関連することなんですが、私どもは前回からクラウドファンディングということについてお話をお聞きしておりますけれども、クラウドファンディングというのは、私の理解に間違いがなければ、一般個人に資金の出し手としての担い手となり支援をするという方法だと私なりに理解しているのですが、クラウドファンディングという、今、新しく出てきている資金調達の方法と先生がお考えになっているエコシステムとの関係といいますか、どのようなことが起きているのかということについて、先生がこれまで調べてこられた中でお感じになっていること等ありましたらお話しいただきたいということが第2点目でございます。

それから、第3点目でございますけれども、これは感想なんですけれども、クラウドファンディングは一般の個人からお金を集めるということを想定しているわけですけれども、第1回目に大学時代に起業された方にお話いただきましたが、確かに、もし個人が投資をするならば、やはり大学などで研究されている方であるならば、まあ、少しは安心感があるかなということがあります。やはり、実際に研究としての後ろ盾があるという点で、大学を基盤にしたもの、そのスタートアップへの投資ということであるならば、まあ、考えられるかなと思いました。私自身は、スタートの時点で一般個人が出資するということには心配を持っており、かなり否定的なんですが、本日のお話を伺い、大学という限定付きならば可能性はあるのかもしれないと思いました。

○神田座長

ありがとうございました。

お願いします。

○川本参考人

ありがとうございます。

資金の出し手としては、大きなところとしてはおっしゃったような年金基金ですとか大学基金がアメリカではかなり大きな役割を持っているということでございます。公的な資金というのは、これは別の国で、特にイスラエルですとかイギリス、そういったところで、アメリカにキャッチアップしていこうという中で出てきた例が多いのではないかと思います。

今、そういう意味で年金ですとか大学からあまりベンチャーのほうにお金が出ていないと思います。それはやはり市場が整備されていないからでしょう。ベンチャーというのは収益が上がってくるときは非常に大きく上がってくるわけですが、収益を上げるまでに非常に長くかかります。年金ですとか大学は、そういう視点の長い投資家です。すなわち、働く労働者の老後のため、将来も続く大学の教育研究活動のために必要だということで投資をされるわけです。投資家のタイプとして、長く待てるという投資家の方に大きな役割が期待される部分じゃないかと思っております。

それから、クラウドファンディングにつきましては、私は、クラウドファンディングとベンチャーへの投資がどういうふうに結びついているかは詳しくは存じ上げませんけれども、ある方から最近聞いたところによりますと、アメリカで今、もう一度、ベンチャーのスタートアップのときから始まって、エンジェル投資、それから拡張段階など、各段階でのファンディングの見直しというのをやっている大学が多いようなのですが、そういう中でクラウドファンディングも役割としてかなり期待をしているとは伺いました。したがいまして、アメリカでもそういった動きはあるようです。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

副大臣、お願いします。

○寺田副大臣

私も5年間、アメリカにおりまして、私の感じだと、むしろ大学の主翼の民間からの資金調達はクラウドファンディングではないかと思うのです。私も、ハーバードケネディスクールという、公共政策をやっておりますジョン・F・ケネディにちなんだ大学院に行かせていただいたわけですけれども、クラウドの手法でもってのいろいろな寄附であるとか、あるいは特定の大学が行いますプロジェクトに対する事業基金の募集など、かなり頻繁に行っていると思います。

先般、あるグループが、京都大学の山中教授にお会いして、例のiPS細胞のお話をしたときに、大変政府には感謝していると。先ほども川本さんが言われたとおりで、政府からのお金はもちろんありがたいと。しかし、それだけでは実用化できないんですと。1兆円要りますと。でき得れば1兆円ファンディングできれば、実用化する自信があると、非常にコンフィデントだということを言われていたわけでありますが、大学についてだとTLOなんかがあるわけですよね。ただ、これがやはりおそらくうまくワークしていない。先ほど冒頭で言われた中立性とか公開性とか非営利との矛盾、コントラディクションをいかに解消するかということもあろうかと思いますが、この点についてのご所見、2点ほどお伺いしたいと思います。

○川本参考人

最初はクラウドファンディングのお話で、私が聞いた話というのは、ベンチャーのほうにもクラウドファンディングを活用するという動きが最近あるということです。その意味でちょっと部分的な話かもしれません。全般的にクラウドファンディングが大学のいろいろな資金のために使われているというのは副大臣のおっしゃるとおりだと思います。

それから、京大の山中先生のお話で、1兆円というのは非常に大きな額だとは思いますけれども、私が申し上げたのは、政府が大学からのベンチャーファンドへの出資にお金を出されるということに関してです。投資の仕方だと思うんですけれども、ここにベンチャーキャピタル協会の安達会長もいらっしゃいますけれども、ベンチャー投資というのは非常にプロフェッショナル的にも難しい投資だろうと思いますので、100%官ということだと、どういう形で民間の投資ノウハウを取り入れていくかという点でちょっと不安があるんじゃないかというのが私の印象としてございます。民間と一緒に投資をするというような形が、民間投資ノウハウを入れていく上で重要かなと思ったということでございます。

それから、大学の原則との関係でございますね。公開、非営利、中立というような、いわゆる研究大学の原則からすると、かなり異質のものを持ち込むということになります。私も実際にどういうルールがあり得るのかということについて詳細には見ておりませんが、モデルとなるものはアメリカ等で今できているということでございます。原則はやはり情報を公開していくといいますか、ある事業化の目的のために大学の成果を使っていくときに、大学の中でいろいろ承認の手続をしていく必要があると思いますけれども、その大学の手続の中で事業化を進める研究者の方からも情報を全面的に出してもらい、その上で承認をしていくというのが考え方の原則であるように思います。

詳細はやはり、これは専門家の方、詳しくこのルールについて研究をされている方がいらっしゃいますので、よくそこは勉強したほうがよろしいかと思います。

○寺田副大臣

もし仮に山中教授の1兆円の民間資金ニーズに応えようとすればクラウドが最適でしょうか。

○川本参考人

私はその点は、クラウドファンディングというのが1兆円集まるだけの源になり得るのであれば、それはよろしいかと思いますけれども。申しわけございません。ちょっとそれについてはあまり知見がございません。

○神田座長

副大臣のご質問に委員の皆様方、お答えいただければ。

前川委員、どうぞ。

○前川委員

前川でございます。今、議論の中で出てきたお話、幾つも非常に重要な論点が入っているかと思いますが、川本先生がおっしゃられるエコシステムというワーディングをつくりながら、このエコシステムを有機的に回していくという考え方には非常に賛同をいたします。ただし、米国はこうで、日本はこうで、日本は作動していないと言うと、少し現場の感覚で言うと言い過ぎかなと思っていて、例えばですが、セクターで言いますと、インターネットサービスの業態はほぼエコシステムが回り始めているように思います。本年、おそらく60社程度の上場会社が出てくる。来年はもう少し多くのパイプラインの実感がありますが、かなりの部分がインターネットサービスで、創業時にベンチャーキャピタルさんから非常に多くの資金を調達することができて、CFOが流動化し、ここのセクターには人が回り、IPOまで行き、IPOではハイバリュエーションをつけられると。こういうエコシステムはできています。

一方で、最近起きてきていることが、まさに山中先生のお話になりますが、バイオのベンチャー企業が非常に多くなってきていまして、基礎医学をやっている先生方の座談会に出たことがあるのですが、「どうだったら先生やめます?」って聞いたら、確率だっておっしゃられます。さすが理系の先生方で、確率が30分の1か50分の1だったらやらないとおっしゃられます。これが3割に上がればみんなやるよと。つまり、生態系を有意に回していくという論点は非常に重要で、そのとおりなんだろうと。ですから、お金をどういう形でつけて、その重要な担い手は間違いなくベンチャーキャピタルで、GPになるベンチャーキャピタルにどうお金を入れ、人を動員していくかということが多分、産業的な論点では重要な論点で、今日のお話の全てであります。

それと、もう一つ、1兆円のお話でありますが、これはもうぜひ上場いただいて、エクイティファイナンスで調達していただきたいと業者としては思うところでありますが、実は1990年代、小さな会社さん、例えばですが、個別の会社さんを出すのが適当かどうかわからないのですが、ヤマダ電機さんという会社さんは1990年頃に店頭登録した流通の会社さんで、上場時の時価総額は約60億円です。ただし、その後約10年間で何度もエクイティファイナンスをして、市場から1,000億以上調達して、兆の単位まで時価総額が上がっていくわけであります。

おそらく、次の課題は、実はスタンダードを巡る戦いではなかろうかと考えておりまして、実は現在起きてきているテクノロジーの世界とインターネットサービスもそうですが、基本的にはスタンダードを巡る戦いをやっているんだろうと。これは言いかえるとプラットフォームということになります。BtoCで利益が上がっていくと、日本の会社は1,000億近くまでは行くのですが、実はそこをブレークスルーしていく会社がなかなか出てこない。つまり、スタンダードというのはあらかじめあるのではなくて、情報活動を含めて勝った会社がスタンダードだと宣言するゲームになっています。

そう考えていくと、ソニーさん、ホンダさんまで戻るかどうか。最近はソフトバンクさんやファーストリテイリングさんが戦っておられる。こういったところまで含めた構想力や支援の仕組みというのが多分いて、ベンチャーといって上場までではなく、その後の産業支援、産業構造の転換まで視野に入れた議論が必要なのではないかというふうに大変僣越ながら思います。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、安達委員。

○安達委員

ありがとうございます。

先ほど来、ベンチャーキャピタルの名前が頻繁に出ましたので、私も一言発言しないとなかなかおさまりませんので申し上げます。川本先生のおっしゃるように、課題1から5、全くそのとおりと思います。特に、私はこの中では、お金よりも実は人材のほうに非常に危機感といいますか課題を持っております。4番で扱いましたが、人材の流動性、これは非常に重要な問題でございます。この人材流動化は、ベンチャーを担う人たちもそうですが、実は我々の業界のベンチャーキャピタルの人材に関しても残念ながら非常に心許ない状況がございます。アメリカとの比較で、冒頭に大臣が年間投資額比で1,240億円対2.3兆円とおっしゃいましたので、約20分の1だと思いますが、ベンチャーキャピタリストの数は米国と比較して日本は100分の1ぐらいだと推察します。その様な環境で、1,200億円を何とか有効に生かしてから新しい産業を興すというような展開にまだまだほど遠い状況です。先ほど前川委員がおっしゃったとおり、ITサービス分野に関してはまがりなりにも何とか回っていると思います。問題は、第1回にも申し上げたと思いますが、日本の強みをさらに伸ばしていくべき必要があるバイオを含むコアテクノロジーです。そういう分野をどうやって手当していくかということで、お金の問題と同時に人材の供給は非常に重要だということを、改めて申し上げたいと思います。加えて申し上げますと、ぜひ、官民ファンド,大学も先程出ましたが、官民ファンドに対して民間の多様性を加えてプロジェクトを推進することです。事業化するに当たって、やはり民間の複眼的な多様性をぜひ重視して、さらにガバナンスを効かせるということで成功事例を増やしていくということが非常に必要だと思っています。我々の業界も官民ファンドと協力しながら、ぜひ成功事例をつくっていきたいと思っております。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

大体よろしゅうございますでしょうか。それでは、次に移らせていただきたいと思います。川本さん、貴重なお話を伺わせていただきましてどうもありがとうございました。

それでは、続きましてクラウドファンディングの議論に移らせていただきたいと思います。まず、事務局からのご説明をお願いいたします。

○中澤市場法制管理官

それでは、資料を説明させていただきます。

クラウドファンディングは前段の川本先生のお話に比べて、むしろアーリーステージ、もしくはシーズの段階で有効な策ではないかと考えておりますが、まず、本題に入ります前に、世界のクラウドファンディングの状況について一旦おさらいをさせていただこうと思います。資料は参考資料、資料2-2と書いてあるものからごらんいただければと思います。

1枚めくっていただきまして1ページでございます。世界のクラウドファンディングの現状でございますが、6月26日の第1回で提示した資料をリニューアルしたものでございます。世界のクラウドファンディングを用いた資金調達額は2012年で26.7億ドル、2013年の予測では51億ドルとなっているところでございます。

地域別にいきますと、やはり北米が中心となってございまして、北米が16億ドル、欧州が9億ドル、アジアは0.3億ドルというところになっているところでございます。このクラウドファンディングインダストリーレポートによる市場の規模ですけれども、これは累計別で、次のページにある、寄附型、購入型、投資型、あるいは融資型というのをすべて合算したものの数字でございます。

2ページに行っていただきまして、それぞれの類型別にどんな状況になっているかのおさらいでございます。これも6月26日に出した資料を若干リニューアルしたものでございます。類型的には寄附型、購入型、投資型ということになってございます。シェア別にどうなっているかということでございますが、なかなかいい統計がないので、額ベースに出すのはちょっと難しいのでございますが、このCrowdfunding industry reportが調べました143のサイトのうち、それぞれどの類型に当たるかを数ベースで分類した数字がございます。寄附型が約28%、購入型が約43%、投資型というのは約15%、サイトの数ではそのような構成になっているところでございます。詳しく確認がとれていないのですが、一部、報道ベースによると、この額ベースのところの数字もありまして、額ベースのもので言いますと、寄附型は約37%、購入型は約14%、投資型はずっと少なくて4%前半というような数字が出ているところでございますが、いずれにしましても推計ベースの数字なので、これが正しいかどうかはちょっとよく分かりません。

代表的なポータルですが、寄附型はやはり寄附ということがございますので、Givingという名前がつくものが多いということがわかると思います。購入型につきましては、アメリカではKickstarterあるいはIndiegogoといったサイトがメジャーなところでございます。日本におきましてもREADY FOR?あるいはCAMPFIREといったサイトが存在しているところでございます。

投資型でございますが、イギリスが先行してございます。CrowdcubeあるいはSeedrsといったサイトが存在しております。それから、前回、この会においてプレゼンテーションをお願いしましたミュージックセキュリティーズさんが日本でやっているということでございます。

注の一番下でございますが、米国の状況で若干の違いがございます。米国においては、後ほど説明しますが、一般投資家向けを相手にするクラウドファンディングは規制上なかなか難しい状態にございます。しかしながら、完全なプロである適格投資家向けのポータルサイトというのが存在していまして、例としましてAngelListあるいはMicroventuresというものを載せさせていただきますが、そういうものが存在するところでございます。

それでは、事務局説明資料の本体、資料2-1、1枚おめくりいただきまして、「投資型クラウドファンディングのイメージ」という簡単なポンチ絵を作成させていただいております。投資者、仲介者であるファンディング・ポータルの運営者、それから事業を行っている有価証券発行者の3つの主体が存在するということでございます。検討を行うに当たりましては、それぞれにどのような規制を課すべきか、あるいはそれぞれにどのような役割を果たしてもらうべきかということが重要な観点になるかと存じます。

2ページに移ります。アメリカにおけるJOBS法におけるクラウドファンディング規制の概要について説明させていただきます。クラウドファンディングにつきましては、アメリカにおきましては1933年の証券法というのがございまして、証券を発行しようとする企業は、原則としてSECに登録届出書、これは日本における有価証券届出書に相当するものでございますが、それを提出しなければならないこととされております。したがいまして、かなりきつめの開示規制がかかっているということになってございまして、事実上、一般投資家向けの投資型のクラウドファンディングはできないという状況になってございます。

そこで、今回のアメリカのJOBS法においては、この33年証券法の規定の適用除外を設けまして、事実上困難であった投資型クラウドファンディングによる資金調達を可能とするものになってございます。具体的にはそこの下にAからDまでの4つの要件を書かせていただいておりますが、それらの要件が満たされる場合に発行者はSECへの登録届出書をせずに証券を発行できるということになっているところでございます。

次のページでまた説明しますが、4つの要件について簡単に申し上げますと、小口のものであって一定の情報提供のルートが確保されているものなど、投資家保護上、それほど支障がないものを適用除外にしているということではないかと考えられます。

一番下の注でございますが、アメリカのJOBS法は2012年4月に成立してございますが、詳細を決めますSEC規則が現時点でまだ策定されておりませんので、未実施の状況になっているところでございます。

3ページに移ります。それでは、そのJOBS法における4つの要件の詳細でございます。まず、募集総額要件ということで、1企業当たり年間100万ドルを超えないことが書かれております。

続きまして、各投資者の投資額要件としましては、年収10万ドル未満であれば、2,000ドルまたは年収の5%のいずれか大きいほうを超えないことが条件となっているところでございます。

仲介者の要件としてCでございます。一定の要件を満たす仲介者による取引が行われることとされておりまして、ブローカーまたはファンディング・ポータルとしてSECに登録する義務が課されてございます。2つ目のポツでございますが、自主規制機関への登録義務も課されているところでございます。3番目と4番目のポツでございますが、これはリスクに関する情報等を提供すること、あるいは発行者による詐欺のリスクを軽減するための措置を講じる義務といったものが課されているところでございます。最後のポツでございますが、ファンディング・ポータルの場合だけでございますが、投資アドバイス、あるいは推奨することをしてはいけないという規制が課されているところでございます。

4つ目の要件のD、発行者の要件でございますが、アメリカの立てつけは開示規制の例外という形になってございますので、やはり発行者にある程度の義務を負担してもらうということが規制のコアになっているところでございます。発行者に対して、SEC、投資者、仲介者への情報提供義務が課されてございます。提供する情報としましては事業計画、財務状況、資金使途、目標募集額といったものが掲げられているところでございます。それから、2つ目のポツでございますが、事業報告書及び会計書類をSECに提出するという義務が課されてございます。こうした情報提供に関する記載について、重要な事実の虚偽表示があった場合には発行者に一定の責任がかかるというような規制になっているところでございます。

続きまして、今度は英国のクラウドファンディングを巡る状況について説明をさせていただきます。英国におきましては、現行規制のもとで投資型クラウドファンディングによる資金調達が可能となってございます。まず下の点から説明させていただきます。発行者に対する規制でございますが、目論見書を作成しまして、英国当局の承認を得る必要がございます。ここで言う目論見書は、日米における目論見書とはちょっと違いまして、イメージ的には日本で言うところの有価証券届出書に相当するものでございます。発行者の2つ目のポツですが、募集総額が12カ月間に500万ユーロ以下の場合には目論見書の作成が免除されるということになってございますので、アメリカに比べて相当広い範囲の開示規制の例外の領域があるというところでございます。ここの領域を使いまして、業者が投資型クラウドファンディングを行っているという状況にございます。

英国においては、仲介者にどのような規制を課しているかでございますが、株式の投資勧誘は金融サービス市場法に定める金融販売促進に該当しますので、原則として英国当局からの認可が必要になっているところでございます。

一番下の注でございますが、この仲介者の規制についても例外がございまして、年収10万ポンド以上あるいは純資産25万ポンド以上の富裕層個人、あるいは過去2年間に非上場企業に投資したことがあるなどの洗練した投資家を対象にする一定の投資勧誘につきましては、金融販売促進規制も適用除外となってございますので、認可を受けずに仲介を行うことが可能となってございます。英国におきましては、現実にはこの無認可の業者がまず事業を始めたというところで特色があると考えているところであります。

5ページに移ります。2012年8月に、英国当局、旧FSAでございますが、「クラウドファンディング:あなたの投資は守られていますか」という注意喚起文書を公表しております。注意喚起文書の内容は、そこに書かれているとおりでございますが、この注意喚起文書を受けまして、それまで無認可でやっていた業者が急遽認可をとるという動きを見せているところでございます。

この認可をとる動きと前後しまして自主規制機関が設立されております。2013年3月にファンディング・ポータル運営者、これは認可業者・無認可業者双方でございますが、それによりまして英国クラウドファンディング協会が設立されまして、実務指針が公表されているところでございます。実務指針では分別管理あるいは法令遵守の内容等について規定がされているところでございます。

6ページでございます。これまでご説明しました米国の状況、英国の状況を比較した表でございます。詳細については割愛させていただきますが、まとめますと、米国については開示規制の例外としてJOBS法が制定されたということが大きな点だと考えられます。他方、英国につきましては、現行規制上では可能ですが、きちんとした業者規制を仲介者に課して、適正な仲介者を確保するということが行われているというふうに考えられるところでございます。

以上を前提にしまして、日本において投資型クラウドファンディングを導入するに当たっての主な論点についてご説明させていただきます。まず7ページでございます。対象範囲あるいは性格というものをどのように考えるかということでございます。投資型クラウドファンディングの対象の範囲としましては、これまでの世界的な取り組みなどを勘案しますと、やはりインターネットを通じて起業者や事業計画と多数の投資者とを結びつける小口の投資といったものを念頭において制度の設計をすることが適当ではないかと考えられるところでございます。

現在行われている匿名組合型のほかに、投下資金の回収までに長期間を要するような事業の資金調達の局面においては株式型の活用ニーズもあるのではないかと考えられます。

2つ目のポツでございます。起業者や事業計画に対する個人の共感をベースとした小口の投資ということが特徴かと思われます。それから、インターネット、IT技術を活用して広範囲から投資を募るということでございますので、これまでの金商業者とは若干性格が異なるのではないかと思われます。小口ではありますがリスクマネーの供給を促進するという観点からすれば、できるだけ仲介者にとって参入が容易であり、そして発行者にとっても負担が少ない制度を考えるべきではないかと考えられます。

その一方で、このインターネットというのがもろ刃の剣でございまして、これを用いて手軽に多数の者から資金を調達できる仕組みでありますので、これが詐欺的な行為等に用いられることのないよう、仲介者、発行者、投資者、それぞれの局面において制度的な工夫が必要ではないかと考えられるところでございます。

続いて8ページでございます。仲介者の規制のあり方でございます。現行の金商法では株式の取扱いを行おうとする者は、第1種金商業の登録が必要となっているところでございます。また、ファンド持分の募集の取扱いを行おうとする者は、第2種金商業の登録が必要になります。

株式型のクラウドファンディングについて、現行の金商法の規制、要は第1種金商業の登録を必要とすることを適用しますと、厳しい財産規制あるいは兼業規制などが課されることになりますので、リスクマネーの供給促進という観点からは大きな障害になりかねないのではないかと思われるところでございます。

インターネットを通じて小口の投資を集めるといった性格を持つ仲介者につきましては、その業務の特性や実態に見合った規制を課すということが考えられるのではないかと思われます。この場合、こうした仲介者を新たな業として括ることも一つのアイデアではないかと思われます。

小口の投資を集めて株式で運用する行為ですが、これは現行の金商法のもとでは投資運用業の類型になります。したがいまして、これも厳しい財産規制が課されるところでございますが、こうしたものもこの小口の投資を集める仲介者と同じ類型に入れるということも一つのアイデアではないかと思われるところでございます。

続きまして、3の投資者保護を図るなどの観点から、募集総額や一人当たり投資額等について制限を設けることが適当ではないかという論点でございます。

まず、最初のポツでございますが、募集総額につきましては、やはり上限を設けることとしてはどうかと考えられます。アメリカJOBS法における募集総額上限は100万ドルとなっているところでございます。我が国におきましては、有価証券届出書の提出が必要となるバーは1億円というところになっているところでございます。こうした状況を踏まえ、あと、必要となる調達金額も数千万円といったところが通常ではないかと言われていることなどを勘案しますと、募集総額につきましては、例えば1億円を上限とすることが考えられます。

2つ目の、一人当たり投資額でございます。アメリカJOBS法においては収入・純資産において設定されているところでございます。ただし、この収入・純資産において投資額が変わっていくというシステムは運用上、なかなか難しいということも考えますと、簡素な形を目指して収入等にかかわらず定額、50万円とすることが一つのアイデアではないかと考えられるところでございます。現行の金商法上の投資者類型、例えば適格投資家というものがございますが、これを利用して投資額上限に差異を設けることも選択肢としてはあろうかと考えられます。

募集総額、一人当たり投資額と並びまして、これは投資型だけではなくて購入型、寄附型においても一般的に取り入れられているところでございますが、詐欺的募集を防止するという観点から目標募集額制度、目標募集額に達しない場合には資金の提供をしないという制度でございますが、こういうものも導入することとしてはどうかと思われるところでございます。

論点の4つ目でございます。投資型クラウドファンディングが適正に運用されて、詐欺的な取引が行われないようにするためには、やはり信頼できる仲介者を確保することが有効であると考えられますが、その場合にどのような方策が考えられるかという点でございます。

先ほどの英国の例を参考にして考えますと、仲介者の登録だけではなく、さらにその仲介者の選別機能が高い認可という制度があろうかと思われます。ただし、現行の金商法のもとでは金商業の参入については原則として登録制に一本化されているということ、第1種業者がPTS、施設取引システムの運営を行おうとするときには認可を受ける必要がありますが、これは極めて例外的な措置になっていることを踏まえて考える必要があるかと思います。

ただし、登録だけだとしても、この投資型クラウドファンディングはやはりインターネット上で多数の一般投資家を相手方とする取引であるということと、一種のミニ発行市場としての色彩もございます。そうすると、詐欺的な行為が行われる恐れも多分にあるかと思われますので、登録の要件を加重するということも一つのアイデアではないかと考えられます。参考まででございますが、信用格付業者につきましては登録制でございますが、登録の要件として「業を公正かつ的確に遂行するための体制整備」が要件となっているところでございます。

信頼できる仲介者の確保の論点でございますが、アメリカ、イギリスも自主規制機関による規律を活用しているところでございます。こうした点に鑑みますと、我が国でも適切な自主規制機関による規制を活用し、信頼できる仲介者を確保することが適当ではないかと考えられるところでございます。

本日の最後の論点の投資者への情報提供でございます。12ページの参考の資料と照らし合わせながらごらんになっていただければと思います。現行の金商法では、募集総額が1億円に満たない場合には、発行者による公衆縦覧型の情報開示、有価証券届出書の提出、あるいはその後の有価証券報告書の情報開示は必要とされないところでございます。したがいまして、投資者の情報提供は、専ら仲介者から投資者に対して交付する契約締結前交付書面によって行われることになっているところでございます。契約締結前交付書面の情報提供につきましては、12ページの下段に書かせていただいております。株式の募集の場合については、この前書面におきましては取引契約の概要、あるいは損失発生の可能性等について説明をすることとされているところでございます。他方、ファンドの場合は、これらに加えまして出資対象事業の内容、運営方針、経理についても説明することとなっているところでございます。

お戻りいただきまして11ページですが、真ん中のポツでございます。仲介者の事務負担への配慮、それと投資者保護という2つの要請を踏まえて、この前書面でどこまでの情報提供のための記載を求めることとすべきかというのが1つの論点かと存じます。

最後ですが、アメリカJOBS法におきましても、繰り返しになりますが、開示規制の例外という色彩が強うございますので、発行者に対して一定の情報開示の負担を課しているところでございます。一番下のバーに書かせていただきましたが、JOBS法では、発行者は、事業計画、財務状況、資金使途、目標募集額等の情報を、SEC、投資者、仲介者に提供する義務が存在しておりますが、インターネット上での取引という特性としまして、このJOBS法による規制のようなものを我が国においても導入する、すなわち仲介者に、発行者に関する一定の情報をウェブサイトで開示させるということも考えられるのではないかというところでございます。

駆け足になって恐縮ですが、事務局からは以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

本日からというか、この時点から、皆様方に制度設計についてのご議論をお願いするということになります。今、事務局からアメリカとイギリスの制度を参考に、日本で今後、制度設計をしていくために主な論点として考えられるものを資料2-1で申しますと、7ページから11ページにわたって整理をしていただいております。これらにつきまして、皆様方から、どの論点についてでも結構でございますので、ご質問、ご意見をお出しいただければありがたく思います。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。

今、ご提示いただいた論点について、もしかしたら長くなるかもしれませんが、それぞれ意見を申し上げたいと思います。

まず、総論的な点でございますが、前回、経団連の阿部さんなんかがおっしゃっていたことと問題意識が共通するのですが、現状、例えばミュージックセキュリティーズさんなんかが二種業者としてやっておられるようなことが、現状よりもやりにくくなるような、そういった制度設計にはしないということが望ましいであろうと。もちろん、現状、不明確である点を明確にするとか、そういうことは別段問題ないと思うんですが、今、全く合法的にできていることができなくなるようなことはぜひとも避けたいと。これがまず総論的な意見でございます。

次に、各論点についてちょっと申し上げたいと思うのですが、まず、小口の投資であるということについてなのでありますが、私は今回のご提案は、要するに、今、匿名組合なんかでやっていることを有価証券形態でやってはいけない、いわゆる一項有価証券ですね、株式等でやってはいけないのかと、そういう問題提起だと思っておりまして、現状、一項有価証券であっても自己募集については1億円未満であれば特段の開示規制等がないわけですよね。有価証券通知書っていうのは一定の場合にあるわけでありますが。ですので、そこに仲介者が入るからといって、それで特段、ものすごく危険性が投資者にとって増すというふうに考える必要はないのではないかと思います。ただ、仲介者が入ることで、より広範な投資者が勧誘されるという可能性が当然出るわけでありますので、したがって、そこで金額の上限、例えば1億とかいうものをつくり、かつ一人当たりに50万円とかいうのをつくるというのは私は賛成でありまして、そういった制約を課しておけば自己募集ではあり得ないような大きな問題が起きるということにはならないのだろうと思います。

それから、投資家の属性によって若干差をつけてもいいんじゃないかというので、適格投資家概念があまり今ポピュラーじゃないと思うんですが、金商法にかなりマニアックに詳しい人以外は知らないんじゃないかと思うんですが、せっかく新しくできた概念でありますので、これはぜひとも活用して、適格投資家は上限50万は特に意識しなくていいということでよろしいのではないかと思います。

それから、これは1点、確認でありますが、これは新たに一項有価証券についてこういう制度を入れる場合にはこういう制限を課そうという議論だと理解しておりまして、現在匿名組合型でやっておられるようなものについても、一人当たり50万円を上限とかいうような新たな制限が入るということはちょっと避けるべきではないかというふうに考えます。

それから、目標募集額制度ですね。これは現状、いわゆる匿名組合型でもやっておられるということでもあるので、それを法的な制度として入れるというのは、私は結構なことではないかと思います。

それから、次に業規制についてでございますが、私は、事務局でお考えになっていると思われる小口投資を集める仲介者を新たな業に編成するというのは、ちょっと難し過ぎるんじゃないかなという気がしておりまして、私が思いましたのは、最低限の要件として二種業の登録を求めた上で、さらに小口の一項有価証券の募集の取扱い業務を二種業者に対する認可業務として、プラスの要件を課すというような設計ではどうかなというふうに思いました。

逆に言えば、一種業者について、既に一種業者で登録を受けている方については、これは現行法上も、証券業協会の勧誘ルールとの関係を別にすれば募集の取扱いができるはずでありますので、ここは新たな業をつくるというところまで構えなくてもいいのではないかなと。そういうふうにすれば、また自主規制についても、この認可を受けた二種業者の方は、例えば一種業者でつくっている協会に入っていただき、協会の自主規制のもとに入っていただくというようなやり方ができるのかなと思っております。

ちなみに、小口の投資運用業というお話があったのですが、これは私は疑問を感じまして、もともとのお金の集め方が1口50万円だったからといって、それが集まって数億円になっている資産を、例えば投資運用業者が自己の責任で運用するということになってくると、これが普通の株式市場で運用するのに比べて安全であるとか、あるいは厳しい規制を受けなくてもいいというふうに言う根拠は一体何なんだろうかというのが甚だ疑問でございますし、ファンドの上限を1億円に抑えるというのであれば、何となく筋が通るのかなという気もしますが、投資運用業の話はこの際、私は別に考えたほうがいいのではないかというふうに思います。やっぱり他人の資産を預かって運用する者に対する規制っていうのは、より厳しくあるべきではないかなと。個人的な意見でございます。

それから、契約締結前交付書面のお話がございましたが、これも現在の原則をあまり大きく変えないほうがいいんじゃないかと思っておりまして、現状、株式の募集の取扱いを行う場合については、金融商品取引契約の概要や損失発生の可能性等についてこれで説明するとなっておるわけで、その延長線上でよいのではないかという気がいたします。ただ、そういうふうにしますと、当然、個々のお金を集める発行者についての情報が不備になるということはわかりますので、その点についてはアメリカの制度などを参考に、発行者に関する一定の情報をウエブサイト上で開示させるという、こういう手当をするべきではないかなと思います。

ここは言ってみれば自己募集を各発行者が行う場合に比べると、若干開示が厳しくなるということでありますが、これは仲介者を使う以上、発行者も協力してそのぐらいの情報を出すことはそんな過重な負担にならないのではないかなと思います。

それから、ちょっと長くなりましたが、最後に、詐欺に使われるんじゃないかというご懸念でございます。これは確かに私もわかります。ただ、詐欺師というのはとにかく時流に乗るのが大変上手でございまして、シェールガス革命が起きると、早速シェールガス詐欺が起きるとか、私は正直な話、これからオリンピック詐欺っていうのも出てくるんじゃないかと思っております。このクラウドファンディングが法制化されれば、当然、クラウドファンディング詐欺をやろうという人も出てくると思います。ただ、これは、それがあるから制度をつくらないというのではなくて、これはもう粛々と取り締まっていただく、監視委員会に頑張っていただく、差し止め命令もどんどん使っていただくということに尽きるのではないかなと思っておりまして、詐欺の危険を意識するあまり、合法的にきちんとやろうと思われている方々が、こんなに面倒くさいんならやめておこうと思うようなことにならない制度設計をぜひやっていきたいなと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、平田委員、それから山下委員の順でお願いします。

○平田委員

今、大崎委員がおっしゃったことは私も全面的に賛成でございます。特に業登録の部分に関しましては、新たな業をつくると非常に複雑になるという懸念がございまして、いろいろな議論があるのは存じ上げておりますし、いろいろ議論していただければと思いますが、第二種業登録を必須とし、なおかつ、第一項有価証券の募集の取扱いを認可制とするのは非常にすっきりしていると思います。また、既存の第一種業者は既に受けている登録をもって、そのまま参入できるという仕組みのほうがすっきりしていると思います。

それから、今回論点に入っていないので、ぜひとも論点として追加をしていただきたい事項がございます。クラウドファンディングを取り扱う仲介者に関しましては、あくまでも募集の取扱いのみを可能とし、アメリカのように、例えば募集をした株式に関しましては長期保有を大原則とするという規制を考える必要があるのではないでしょうか。当然、取得をした投資家が換金をしたいというニーズも出てくると思いますが、換金ニーズが出てきた際に、その取扱いを行うことができるのは従来の第一種業者のみとしていただく必要があると思います。例えば、未上場株式になりますから証券保管振替機構では取り扱われませんので、券面としての株券が不発行となるか又は株券が発行されるかのいずれかになりますが、株券が発行される場合には、誰がそれを保管するのかという問題が出てきます。これに関しましては基本的にどういう取扱いをしていくのか、それから、その株式が流通すること、あるいは換金ニーズが出てきたときに、これを取り扱うようにするためにはどうしたらいいのかについても、少し論点として考えていく必要があるのではないかと思います。

したがって、長期保有を原則として譲渡制限を付すなど、基本的にはクラウドファンディングで募集された株式については、原則は流通しないことが必要なのではないかと思います。当然、流通した場合には、それを担うのが第一種業者であるとする必要があると思います。そうでない場合、例えば、新規に参入する業者に対し、分別管理の問題など非常に重い規制を課さなければいけないという問題が出てくるのではないのかと考えております。したがって、セカンダリーについては、別物の枠組みで取り扱うという仕組みにしていただければと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

山下委員、どうぞ。

○山下委員

山下でございます。

総論的な話を少しさせていただくと、2つポイントがあるかなというふうに思っております。一つは、仲介者のクオリティーということでございます。仲介者は、やはり基本的にはきちんと発行体のデューデリができるという能力が必要だと思います。そして、当然、発行体を育てていく、あるいは目利きであるとういう能力が必要になってくると思います。 従って、仲介者の参入規制というのは、どういう形でやるにせよ、ある程度きちんとした形のものをつくるべきだと思っております。参入規制を経た仲介者であれば、発行他のディスクロージャー等についてもきちんとした対応ができるものと考えていいと思います。

それから、もう2つ目は先ほどからお話も出ていますけれども、自主規制機関ですね、これは第二種業協会か、新たにつくってもいいんですけれども、そこら辺のところはテクニカルな面で検討していただければいいと思うんですが、基本的には非常に重要な役割を担っていくべきだと思います。当然、法令等で基本的な募集金額とか、あるいは投資金額の上限ですとか、そういったものを決めるということがあると思うんですけれども、現実的に運用していく中できちんとした形の協会で現状に合った方策というのをつくっていくというのが重要だと思いますので、それは例えばポータルの内容ですが、どういった形で何を載せなきゃいけないかとか、発行体についてどういうものを開示しなきゃいけないかということ等を協会ルールで明確にしていくということが必要だと思います。これによって投資家の保護を図っていくことも必要だと思います。また、先ほどの契約締結前交付書面の話が出ておりますが、こういったものは私どもも証券会社としてやっておりますけれども、非常に手間ひまかかるものでございます。そうしたものをほんとうに仲介者に課していくのかどうかも検討されるべきだと思います。例えばポータルの中できちんとディスクローズして、それが自動的に投資家にわかるということも検討されるべきと思います。

さらに、協会の役割として一つ重要な点は、やはり反社会勢力の排除というのをきちんとした形でルール化して、投資家、発行体のクリアランスをするルールつくりも協会の役割だと思います。

自主規制機関、それから仲介者の参入の問題ですね、この2つの点が大きな焦点だろうと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、前川委員。

○前川委員

私も皆様方の意見とほぼ同様ですが、論点として1点だけ加えておいていただきたいというのが、今、山下さんが最後にお話しなされました反社の問題であります。これは結構重要だと思っていまして、実は、ベンチャーが株でお金を調達すると1回では終わらなく、次々と何回もやるということが一般的でありますが、そうすると小口で1単位、つまり50万円だけでも反社が入りやすくなる。自己募集と違って、広くあまねく募集するので、50万円ずつたくさんばらまくっていうビヘイビアがこのような状況に繋がってしまう。そうなると、ラウンドで募集をしていくときに、実は、この株主さんがおられるがゆえに、もうほかが入らない。あるいは当然上場ができないということが実務の論点では非常に重要になっていて、これで進まなくなるということがあります。

ですから、実は、私は株式型の活用というのは実は一方で慎重に考えておいたほうがいいかもしれないと思っていて、匿名組合型でまず進めてみて、次は株式型という二段階のようなものの考え方をしておいたほうが当初は安全かなと考えるふしもありまして、特に株式で個別の名前で入ってくるときに、非常に論点として重要な問題があって、かつ、入った場合に譲渡がなかなかできないようにしておかないと、実は転々と株が回る仕組みになっていると、実はこのベンチャーさんにとって悲劇が起こるということが往々にしてあるので、そこは少しテイクノートしておいていただけたらと思います。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

永沢委員、どうぞ。それから原田委員の順でお願いします。

○永沢委員

皆様、専門的な立場からご発言されていますのに、私はほんとうに素人の立場から、それと出し手であると想定されている一般投資家の立場から、まず総論というよりも素朴な不安というか疑問をお話しさせていただいて、その後で、かなり細かくなりますが資料に従い各論の質問をさせていただきたいと思います。

先ほども私は不安を持っているんだということをお話ししましたが、やはり未公開株詐欺が非常に横行しているということが大前提にありまして、また、詐欺が増えてくるのではないかという不安が根底にあります。その不安に対しては、大崎委員がおっしゃったとおりだとは思うんですが、今回、クラウドファンディングはインターネットという場であるということが大きな不安の要因でございます。不正防止のためには当局で頑張って監視していただくという方法もありますが、市場の多くの目が監視するということもあると思うのですが、インターネットという場はそういうみんなが監視をするというようなことができるのかどうかというところに漠然とですが不安を持っております。何が行われているのかわからないという状況ですので、何か広範囲にトラブルが起こらなければ不正が行われていることに当局もわからないというようなことが起きてくるのではないかということに大きな不安を感じています。

それをどのように不安を払拭できるような仕組みをつくっていくのかということがここでの課題とされているのだとは思うのですけれども、こうした不安、懸念を抱かざるをえないということをまず申し上げたいと思います。

それから、小口にしてしまえば、寄附と同じように、仮に出資金を全部失ったとしても、それはそれほど痛みはないのではないかという発想、割り切り方もあるかと思います。ただ、一方でクラウドファンディングとして今考えられていることは、小口の資金だけを集めて、小口の投資家だけでつくられるようなイメージを持っているのですけれども、そういう人たちだけが資金の出し手として集まって、事業活動を監視する力があるのでしょうか。やはりそこには目利きやプロが入ってくれていないと、結局、長い長い投資活動、事業活動の中で、ガバナンスとか監視というものができるのだろうかというのが2つ目の不安としてございます。なので、資金の出し手として小口以外の方々も入った仕組みというものを用意していただきたいというのが、資金の出し手として期待されている一般個人投資家という立場からの希望でございます。

それから、先ほど匿名組合のほうが望ましいという話が出ました。そうかもしれませんが、運営者やお金を集める側にとっての都合のよさと、出し手にとっての安心感というのはまたちょっと対立するところがございまして、出し手のほうの立場というのもやはり考えていただきたいと思っております。

長期の資金を入れるということで、株式のほうがよいという考え方は、私は納得できますし、また、匿名組合について私が非常に不安に思っておりますのは、このクラウドファンディングに限ったことではないのですけれども、現実に果実でないものも分配されています。やはり果実でないものが分配されるということは、一般の個人投資家にとってやはり非常にミスリーディングだと思っており、そういう意味では株式はそういうことが起きないと私の素人の考えでは理解しておりますので、株式のほうが望ましいと思うのです。長期の資金であり、分配についての問題に加えて、情報の開示の規制についても、株式のほうが投資家保護的には安心なのではないかとは思います。一方で事業者側からすると、株式となるといろいろと負担が大きいのでしょう。

以上が、総論として感じたことでございまして、この後、少し各論の質問をさせていただきたいと思っております。8ページ目のところなんですけれども、募集枠を1億円を超えているかどうかというのは、どうやってわかるのでしょうか。これはプラットフォームを通じて超えているかどうかということが監視されるということになるのかどうかということが第1点目の質問でございます。

プラットフォームの運営会社というのは、今は二種業者になると思いますけれども、これを、無登録でやるところも出てくると思うんですけれども、これはどうやって見つけるのでしょうか。やはり当局が頑張っていただくしかないのでしょうか。無登録業者は今でも出てきておりますけれども、インターネット上だと当局が見つけることがさらに困難になるのではないかというのが2番目の質問です。素人の質問で申しわけありません。

それから、3番目の質問として、先ほど登録か認可かという話が出てきましたが、このクラウドファンディングのプラットフォームの運営において、具体的な違いとしてどのようなことが出てくるのかということをご説明いただけたらと思います。

それから、これは確認的な質問ですが、プラットフォームごとにミニ発行市場のようなものが幾つも登場すると理解しましたが、その理解で間違いないのかということもお尋ねしたいと思います。

最後の質問は、やはり投資である以上、投資家としては途中で出ていきたいこともあるし、大きく成長させて最後は換金することを希望しているわけですけれども、投資の出口はどのように想定されているのかということも、お聞かせいただけたらと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

事務局への質問であったと思いますので、お願いします。

○中澤市場法制管理官

幾つかご質問いただきましたが、まず、1億円のバーがどうわかるかということですけれども、このクラウドファンディングの場合、目標募集額で幾ら集めたっていうのが出てきますので、それをつぶさに見て判定するしかないかなと思っています。

それから、登録があるかないかということをどう判定するかというのは、これはほとんど当局が調べて、あるいは個別の情報をもってシラミ潰しに見るしかないかなという感じを受けております。

3番目の登録と認可の話がちょっといまひとつ理解ができなかったのですが。

○永沢委員

何か具体的な違いが出てくるのかどうか。今、登録ですよね。認可にすると、何か違いが出てくるのかどうか。

○中澤市場法制管理官

登録だと、登録拒否要件に該当しなければすべて登録することになりますが、認可になりますと若干の裁量権が出ますので、業者が適正かどうかの選別はしやすくなるということになるかと思います。

それから、プラットフォームごとなのかということですが、おそらくですけれども、今のミュージックセキュリティーズさんでやっているものは、各企業ごとのファンドが設定されて、それが1つのミュージックセキュリティーズさんのサイト内にばーっと並んでいると思いますけれども、そんな感じのイメージで考えられるのではないかと思います。

出口戦略なんですけれども、先ほど複数の委員から、これも論点にと言われた論点と連結しますので、これはまた次回別途説明させていただきます。

○神田座長

それでは、原田委員、それから神作委員の順でお願いします。

○原田委員

1点だけ申し上げます。株式を取得しない形での事業への投資というのは、先ほどから大崎委員、前川委員がおっしゃっておられますように、現状、匿名組合方式でできているということがございます。ですので、新たな制度を、というときに、今できていることがやりにくくなるような形にはならないということが必要だろうと思います。

資料2-2の2ページのところに、縦割りで世界のクラウドファンディングの概況ということで表をお示しいただいております。ここで投資型の中にミュージックセキュリティーズさん(日本)とありまして、投資型と縦割りの中には入ってはいるのですけれども、ミュージックセキュリティーズさんですと、ウエブサイト上で寄附もやっておられますし、ニュースレターも送付していらっしゃるし、購入型のような案件もあります。なので、きれいに縦割りというふうにいかないのが今、この業界の現状であるかなと思います。

投資型の中には入っていますが、株式を購入するような形での運営方法ではないということもあります。ですので、株式を購入することを新たな制度としてつくるというのが最適かどうかというのは、もう少し需要を、仲介者側からそういうニーズがあるのかということを何らかの材料で判断なさったほうがいいのではないかなと思っております。

例えば、ニッチな話になるんですけれども、関係者の方から聞いた話ですが、例えば銀行さんが融資をしにくいものというのが幾つかあるようでして、例えばお酒ですと、お酒は熟成を経ればいいものになるというのが一般に認識されていますけれども、熟成段階にある、まだ売り物にならないお酒というのは不良在庫としてカウントされてしまうので、それを担保に融資といったことはできないと。そういうときに、事業への投資ということで、クラウドファンディングが役割を果たすという面もあると聞いておりますので、制度をつくるときには既存の、今機能しているものが阻害されないような形を考えていただきたいと思います。

以上になります。

○神田座長

どうもありがとうございました。

神作委員、お願いします。

○神作委員

ありがとうございます。

クラウドファンディングがインターネットを利用して、少額の資金を多数の投資家に提供してもらうところにその特徴があるといたしますと、やはり投資家保護の観点からも、あるいは、市場における効率的な資金配分という観点からも、適切な情報提供がクラウドファンディングに係る規律の最も基本になるべきであると思います。

他方で、公衆縦覧型の開示システム以外の方法で情報提供を行うということになりますので、情報提供の方法、それから、どのような情報を提供するかという点について、検討を行う必要があり、この点が重要な論点の一つになると思います。

他方、クラウドファンディングのもう一つの特徴と思われますのは、情報提供が一体どういう形でなされて、どのように担保されるのかということが重要で、その意味では私は、仲介者と申しますか、企業と投資家の間に入って仲介機能を果たす者の役割が非常に重要になるのではないかと思います。

その点に関しまして1点ご質問をさせていただきたいと思うのですが、資料を拝見いたしますと、アメリカのJOBS法においてはクラウドファンディングの定義に当たる以上は仲介者を介在させなければいけない、マストであるように思うのですけれども、これはやはり今、私が申し上げたような、仲介者が情報提供の面で非常に重要な意義を持っていて、仲介者抜きでクラウドファンディングを行わせるのは適切でないというような判断があるのかどうかというのが一つ目のご質問です。それから、イギリスの場合なのですけれども、イギリスでは、クラウドファンディングに際して仲介者を必ず介在させなければならないという規制になっているのか。これは、自主規制等で行うには実効的に規制するのは難しいようにも思うのですけれども、イギリスの場合にはどのような取り扱いになっているのかについてご教示いただければと思います。

先ほどは、情報提供の観点から仲介者の重要性を申し上げましたけれども、おそらくポータルサイトの運営、あるいは開業規制、兼業規制等々との観点で、他の金融商品取引業者にはない特有の行為規範というのがもし出てくるとすれば、それについても検討する必要があるのではないかと思います。

いずれにしても、仲介者についてのさまざまな業法上の規制について、まず各論としてどのような規制が適切なのかというのを検討した上で、最終的にどのような形で規制の枠組みを考えるのか、たとえば第二種業者にするのか、それとも新たな業務として規定するのかを最後に整理することが可能であり適切であるように思ったところでございます。

○神田座長

ありがとうございました。

質問があったと思いますが。

○中澤市場法制管理官

まず、アメリカの規制ですが、もともと議員立法というのもあって、詳細がよくわからないところがございますが、当初、ファンディング・ポータルにつきましては、登録が必要ないという原案があったと伺っております。それが議会修正で入ったということになっているようでございますので、その意味では仲介者、やはりSECに登録させるというのが一つの肝ではあったのではないかと思われるところではあります。ちょっと詳細がよくわからないのでそのぐらいしかお答えできません。

それから、イギリスでございますが、イギリスにつきましては、先ほど説明しましたとおり、要は無認可でやっていた業者がたくさんいましたので、これを仲介者の規制の中に枠に入れるということになってございますので、その意味では仲介者の規制が中心になっている規制という理解ができると思います。

○神田座長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

私の理解では、仲介者というものが介在すると、当然、このJOBS法のルールに服するわけですけれども、インターネットを通じた自己募集については別途ルールが確立しておりまして、実務上は例えばレギュレーションDに基づいて、簡易な目論見書を出して、取引ができる州を限定するというようなことで、州法上の問題を回避して、インターネット上で自己募集をやっているというのが現実にありますので、要するに今回は仲介者が入るというところが差であって、インターネット上でお金を集めちゃいけないということにはなっていないというふうに理解しております。

○神田座長

武井委員。

○武井委員

今の神作委員や大崎委員のご質問に関連して、私も同じ質問があります。何点か申し上げたいのですが、今日の案のご説明では開示規制と業者規制の両方について説明がありましたが、1億円未満で一人当たり50万という新たな枠組みが今回出てきています。しかしこの1億円未満でかつ50万円という規律の意味がよくわかりません。

米国ではJOBS法はまだ施行されていないわけで、しかし先ほどご紹介があったとおりこれだけクラウドファンディングはすでに現に行われているわけです。その根拠として私が聞いているのはルール504のほうを使ってやっていると。アメリカの制度との比較をするのなら、JOBS法の箇所ばかりと比較しないで、ルール504の世界も含めた全体の世界の中で規律を比較する必要があると思います。ルール504のほうは仲介者が要らないとなっているはずです。ルール504は連邦の証券規制と州の証券規制との管轄に絡んで置かれているので、州内に限るなどの限定があると理解しています。

もしも、1億未満しか集めないのに仲介者が必須だという話なのだとしたら、多くの場合、コスト倒れでなかなか仲介者を頼めないのではないかと思います。一種でも二種でも、二種でどのくらいコストが重たいのかは人によって評価が違うのかも知れませんが、今回定義されるクラウドファンディングの世界で、一億しか集められないとか、一億しか集めないのに二種以上の仲介業者を頼まないといけないという規律をつくるのは、リスクマネーの提供という観点からは適切でないように思います。

その意味で、事務局さんの原案にありますとおり、仲介者に関しては二種業以外のものをつくったほうがよいのではないかと思います。

次に、一億という数字ですが、さきほどの山中先生の一兆円のお話もありましたとおり、一億をなかなか超えられないという世界では、やはり成長資金、リスクマネーの供給という観点から問題だと思います。一億を超えたらどういう規律の世界になるのかについてきちんと議論・整理して、規律緩和すべき点は緩和すべきではないかと思います。特に今回、50万円以内という新たな規律が入っています。これが規律緩和にどう具体的に効いているのかがよくわかりません。50万円という数字でいいのかどうかはどういう効果を持たせるのかによって議論していくべき点だと思いますが、一人当たり50万円以内という新しい規律を入れるのであれば、逆に一億に伴う諸規律とか他の規律をどこかもう少し緩くできないのかと思います。詐欺に使われないという点は確かに重要ですけれども、50万しか出せないという新たな世界では、いろいろと新しい規律の世界を設計できないのかと思います。開示規制の世界で緩和するのか業者規制の世界で緩和するのかという議論もあるのかもしれません。

ちなみにこの一億も、これはアメリカとかを見てみますと、年間一億になっていますが、今回の案が総額一億というのであれば、それでは規模が小さすぎると思います。全体で一億までしかできないのでは、リスクマネーの供給として不十分だと思います。

今回の問題は、テクニカルには開示規制と業者規制とをどう役割分担させるのかの話だと理解しています。そして、業者規制について見たときに、仲介業者が置かれる一つの理由として、ぱらぱら小口のお金が集まったときに、利益相反の処理というか、小口の投資家がいっぱい生じるので、投資家側のコレクティブアクションなり無関心から投資家側に生じる弊害をいかに事前規律で防いでおくのかという点があるのだと思います。誰かが発行者をきちんと見ていなければいけないということで仲介業者の役割を期待するのであれば、発行体がすでにある程度社会的信頼性がある媒体であれば、そこが仲介業者を頼む際の仲介業者に求められる要件も緩くて良いのではないかという議論もあるのだと思います。

例えば先ほど大学がリスクマネーを集める話がありましたが、大学とか、もしくはちゃんとした株式会社とかであれば、発行体側で自分なりにきちんと情報開示もして利益相反する仕組みを持っている媒体があります。そういった社会的に信頼が置ける発行者、利益相反処理に対する処理体制を既に発行者側が持っている場合にまで、その発行体がきちんと契約を結んで仲介業者を依頼する際に、フルフレッジの要件を満たした仲介業者でないといけないという規制にする必要はないと思います。屋上屋を重ねた規制になるのではないかと思います。

ですので、業者規制については、発行者が誰なのか、発行者側にガバナンス体制がある程度あって、利益相反の体制があるのであれば規律を緩めるという発想があっても良いのではないかと思います。金商法的には「誰から集めるのか」、すなわち個人から集めるのか、プロから集めるのかで規律に差はあって良いと思いますし、プロから集める場合には規律が緩まるという世界はつくるべきだと思います。これは既存の金商法の伝統的な世界のままですが、それだけでなく、発行者にどのぐらい社会的信頼に足りる利益相反処理体制があるのかという「誰が集めるのか」という観点からも、細かく制度設計のメニューがあるように思います。

つらつら申し上げましたが、申し上げたかったことは、リスクマネーの提供といった際には、いろいろな選択肢、いろいろな規律の世界の選択肢を多数提示したほうが、リスクマネーの循環に資するのでは無いかと思うということです。リスクマネーというのは出す動機もかなり多種多様ですので、規律の世界のほうも、一つの限られた狭い世界でなく、いろいろな選択肢を準備しておいたほうが良いのではないかと思います。それもありましていろいろな視点を申し上げた次第です。

以上です。

○神田座長

同時に手が挙がったので、では、大崎委員、黒沼委員の順で。大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ちょっと議論が混乱しちゃっていると思うんですけれども、武井先生の問題意識はよくわかるんですけれども、自己募集をインターネットを通じてやってはいけないっていうルールはないですよね。

○武井委員

そうですね、私もそう思っています。ただ議論が自己募集の規律の所にまで撥ねていないのか、気になった次第です。

○大崎委員

いや、それは……。

○神田座長

では、黒沼委員、お願いします。

○黒沼委員

もうあまり時間がないのですけれども、たくさん論点が出てきたので、少し自分の考えを述べさせていただきたいと思います。

まず、これは質問なんですけれども、1億円というのは1回の募集についての上限なのではないでしょうか。その点は事務局からお答えいただければと思います。

この1億円を上限とすることですけれども、投資家保護を図る観点からと書いているのですが、別にこれは投資家保護の観点からの問題ではなくて、1億円を超えたら従来の体系では有価証券届出書の少額免除を受けられないことになるだけです。もし、1億円を超えたクラウドファンディングをつくるときに有価証券届出書の提出を要求しないというのであれば、それは制度を大きく変える必要があり、その議論をするのは構いませんけれども、なぜクラウドファンディングだけ届出書の提出が要らないのかというところから議論しなければならないという話だと思います。

それから、仲介業者は必須かという話が出てきたのですけれども、私は、これは必須ではなくて、考え方としては、おそらく大崎委員と同じですが、仲介業者がいるから販売圧力が加わって、投資者保護が必要になるという世界なので、自己募集を1億円未満の範囲でやれば金商法の規制はかからない、会社法の世界だけでできるというのは従来と変わらないはずで、そこはいじるべきではないと考えています。

それから、情報開示の面なんですけれども、契約締結前交付書面でするか、ウエブサイトで開示させるか、これはいずれでもいいと思いますが、それに伴う民事責任の規定をきちんと入れていただきたいと思います。例えば、現在、外国証券売出しについては、一定の場合には金融商品取引業者に情報提供義務があって、それに伴う責任規定が整備されていますけれども、それに似たような制度をつくっておく必要があると思います。現在の契約締結前交付書面だと、そういう制度はありませんので、それを補う必要があると思います。

それから、開示内容については、株式でありますけれども、出資対象事業の内容とか、運営経理についての情報も当然必要になると思います。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

予定の時間が来ているのですけれども、もし追加でご発言があればどうぞ。

○福田委員

いろいろな形でご議論があって、私も勉強させていただいております。大きくは成長戦略にあるわけですので、念頭に置くのが生まれたばかりのベンチャーキャピタルの資金調達をどうするかという議論が中心になるのはよくわかります。ただ、現状、ミュージックセキュリティーズさんを通じて資金調達している企業っていうのはどういう企業かっていうことを考えたときに、例えば先ほど出た酒屋さんとか、これ、既存の酒造メーカーなわけですよね。あるいは、タオル業界の業種でも、やっぱり老舗のタオル屋さんです。いずれもメーンバンクもちゃんとあるんだけれども、他方で新しいブランドのお酒やタオルをつくるのに資金調達したいっていう形でクラウド・ファンディングは利用されているわけですよね。

ですので、クラウド・ファンディングの規制体系を考えるときにも、設立された年月が経っている企業と、生まれたばかりの企業ではやっぱりルールが違うんじゃないかなと思います。私は法律学者ではありませんし、クラウドファンディングの対象範囲をどうするのかということにもかかわってきますけれども、できたばかりの新しい企業がどう資金調達できるかというルールづくりと同時に、現状、銀行借入の代替手段としてクラウドファンディングを利用している人たちもいることは事実です。そういう人たちに対するルールづくりっていうのも別途必要なのではないかなとは思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

制度づくりについてちょっと細かい話が出ましたので、ちょっと一、二分時間が過ぎていて恐縮ですけれども。アメリカの制度というのは開示規制を中心に組み立てられていますので、一定の条件がある場合に、公衆縦覧型の開示を外す道というか世界が従来あるわけですね。それとは別に今回、クラウドファンディングについて外す世界をつくる。そのときに仲介者を置くことを要求する。こういうことになるので、従来既にある世界を使って資金調達をすることはインターネットを使おうが、別の方法を使おうができる。こういう体系になっているのに対して、ヨーロッパ、イギリスなどは、規制というか制度そのものが業規制そのものですので、入り口から業者としての認可を受けますか、無認可でやりますかという、そこから出発していますので、なしで始めると、もうなしでずっと行くという構造になっているところに気をつけなければいけないと思います。

ですから、日本でも、新しい世界をつくるのかということと、既に存在している公衆縦覧型でなく資金調達ができる世界があるということの間には、利用する場合には、制度としては連続性があることになるので、全体を見て制度設計をする必要があるということだと思います。また、クラウドファンディングというのは、このワーキングの課題であるリスクマネー供給ということで言うと一部ですので、また次回以降、ほかの部分についてご審議いただくことになります。クラウドファンディングというのは一分野です。重要な分野だとは思いますけれども、全体を見据えて制度の議論を今後続けていただきたいと思います。

すみません、余計な発言をしまして、時間を過ぎましたけれども、本日は皆様方から大変活発なご議論、多数ご指摘をいただきまして、大変ありがとうございました。大変貴重なご指摘をいただきましたので、本日、事務局から説明をさせていただきました資料2-1における主な論点、これにご指摘をいただいた新しい論点をつけ加え、本日、皆様方からいただきましたご意見等を踏まえて今後、先に進ませていただきたいと思います。

ぜひ追加でのご意見、お気づきの点、ご要望等を、私でも結構ですけれども、事務局宛てにメール、お電話でも結構ですし、ファックス、その他、どのような方法でも結構ですので、積極的にお寄せいただけましたら大変幸いでございます。

次回ですけれども、個別の検討課題ごとの議論ということで、本日ご議論をいただきましたクラウドファンディングに関する論点のうちで残った論点というのでしょうか、それから、新しくグリーンシート制度のあり方等についてご議論をお願いしたいと考えております。

最後に事務局から何かありましたらお願いします。

○齋藤市場課長

それでは、事務局のほうから次回の日程についてご連絡をさせていただきたいと存じます。後日改めて事務局から正式なご案内をさせていただきますけれども、次回につきましては、9月27日の金曜日、10時から開催をさせていただきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

事務局からは以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。それでは、本日はこれで散会いたします。ありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課・企業開示課(内線2638、3665)

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