金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」(第8回) 議事録

  • 1.日時:

    平成25年11月20日(水曜日)14時00分~16時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○神田座長

それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。ただいまから新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループの第8回目の会合を開催いたします。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

早速ですが、議事に移らせていただきます。本日は、テーマが3つございます。そのうち、まず、大量保有報告書の提出者の負担軽減を図るための方策と、2つ目のテーマになります流通市場における虚偽開示書類に係る損害賠償責任、これらにつきましては、それぞれ事務局から説明をしていただいて、皆様方にご議論、ご審議をお願いしたいと思います。そして、その後、3つ目のテーマということで、クラウドファンディングの議論に関連いたしまして、第二種金融商品取引業協会から、同協会の取り組み等についてヒアリングをさせていただきたいと思います。

それでは、まず1つ目のテーマであります大量保有報告書の提出者の負担軽減を図るための方策につきまして、事務局からのご説明をお願いいたします。

○油布企業開示課長

企業開示課長の油布でございます。それでは、お手元の資料1の横紙をお開きください。こちらは大量保有報告制度の見直しに関する事務局のペーパーでございます。

1ページをごらんいただきますと、全体的な問題意識が書いてございます。1つ目の丸ですが、大量保有報告制度は、株券等の保有状況が、経営に対する影響力、それから市場における需給、この観点から投資者にとって重要な情報であるということで、当該情報を投資者に提供することを目的として設けられた制度でございます。

2つ目の丸でございますが、一方で、制度導入後、ほかの制度によります開示の充実ですとか個人のプライバシー保護、こういった観点、それからEDINETの整備などの環境変化がございましたけれども、これに必ずしも対応し切れていない部分もあるのではないか。

3つ目の丸になりますが、また、現在の大量保有報告制度では、必ずしも遵守することが困難なものが実はございまして、本来の制度趣旨に照らして過大な事務負担が生じているというご指摘がなされております。

これらを踏まえまして、本日は、細かい項目も含まれておりまして恐縮でございますが、下記の6点について順次ご説明申し上げます。

下の黄色の枠囲みのところは、このワーキングに先立ちます閣議決定でございまして、大量保有報告制度の見直しについて検討し、結論を得るということが書かれてございます。

2ページをごらんいただきますと、問題意識とございます。1点目のポイントでございますが、ここは大量保有報告制度における自己株式の取扱いの見直しというテーマでございます。問題意識とございますが、大量保有報告制度においては、株券等の保有割合が5%超となった場合に、その日から、5営業日以内に大量保有報告書を出します。その後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合には、その変更があった日から、5営業日以内に変更報告書を提出ということになっております。

2つ目の丸ですが、その場合の対象となります対象有価証券には、自己株式、いわゆる自社株も含まれております。

3つ目の丸になりますけれども、この点につきまして、自己株式を取得する上場企業からは、現行制度においては、5%超の自己株式を保有する都度、大量保有報告書ですとか、その後の変更報告書の提出が必要とされているので、自社株の取得や処分を伴う資本政策の円滑な実施に支障があるというご指摘がございます。この点につきまして、大量保有報告制度の趣旨に留意しながら、自己株式を保有する上場企業の負担を軽減することが考えられないかと。

3ページ目は大量保有報告書・変更報告書の提出件数でございます。上の段が大量保有報告書そのものの提出件数で、下の段は変更報告書の提出件数でございます。例えば平成24年の上欄を見ていただきますと、平成24年には大量保有報告書1,308件の提出がございまして、うち9.1%が自己株式の保有に係るものでございます。パーセンテージとして実はわりと大きいということでございます。

4ページをおめくりいただきますと、先ほど申し上げましたとおり、大量保有報告制度は、株券等の保有状況が、経営に対する影響力、市場における需給、この2つの観点から投資者にとって重要な情報であるということで、これを投資者に開示するという趣旨の制度でございます。

2つ目の丸でございます。ここは経営に対する影響力という点について書いてございます。一方で、自己株式については、企業は議決権を有しないということでありますので、経営に対する影響力という観点からの有用性は限定的と考えられます。

3つ目の丸は市場における需給という観点から検討しております。また書きのところですが、上場企業が行う自己株式の取得・保有・処分は、金商法の自己株券買付状況報告書、有価証券届出書や有報、さらに取引所規則で行われておりますタイムリーディスクロージャーなど、他制度による情報開示の対象となっております。市場における需給に影響を与えるような自己株式の取得や処分が行われる場合には、これらの制度により、別途主要な情報が開示されるということになっております。

その状況をご説明したのが5ページの表でございます。5ページの下半分に表がございますが、一番左端に書いておりますのが大量保有報告書でございまして、記載内容というところに保有目的、保有株券等の数ということで、丸がずらっと並んでおります。そこから右に書いておりますのが他の制度でございます。この大量保有報告書に丸がついている項目で、ほかの制度で開示がカバーされているものは右のほうに丸とかバツとかをつけておりまして、結論から申し上げますと、青い色をつけております下の2つ、保有株券等の取得資金、共同保有者に関する事項、これはほかの制度では開示がなされておりませんので、この点につきまして、次の6ページで検討させていただいております。

まず、1点目、(1)保有株券等の取得資金についてでございますけれども、この取得資金を開示させるという趣旨は、保有者の財政状況、保有者の背後で影響力を行使しようとする者を把握するという趣旨でございますが、マル1の財政状況に関しましては有価証券報告書などで把握が可能でございますし、経営に対する影響力を背後で行使するという趣旨に関しては、そもそも自己株式では経営に対する影響力を行使し得ないということでございますので、この観点から開示させる意義は低いと考えられるのではないかということです。

(2)、2つ目が共同保有者に関する事項でございます。共同保有者に関する事項を開示させております趣旨は、提出者と共同で株式を保有する者の存在ですとか、その保有割合などを明らかにして、これらの者による経営に対する影響力の程度を把握するためということです。バーを引いておりますが、前記のとおり、自己株式は経営に対する影響力を行使し得ないということでございますので、この観点からも共同保有者に関する事項を開示させる意義は低いと考えられるのではないかと。

矢印のところでございます。以上を勘案すれば、自己株式については、大量保有報告制度の対象有価証券から除外することが考えられるのではないかとご提案させていただいております。これが1点目のポイントでございます。

7ページをおめくりいただきますと、今度は2点目のポイントでございます。大量保有報告書の提出者などが個人である場合の記載事項の見直しということです。

問題意識のところに書かせていただいておりますが、この大量保有報告制度では、提出者や共同保有者が個人である場合、その氏名と番地までの住所、生年月日などを報告書に記載していただいております。これは公衆縦覧されているわけでございますが、この点について、詳細な個人情報、住所、番地、生年月日の記載までを求め、これを公衆縦覧に供することは、個人のプライバシー保護やセキュリティ上の観点から問題があるとの指摘がなされております。

8ページをごらんいただきたいと思います。検討というところでございますが、大量保有報告書は、数多くの主体からさまざまな銘柄について多数の提出がなされるものであります。ですから、提出者が個人である場合につきましても、ほかの提出者等と混同することなく同一人であると判別できることは不可欠であると考えられます。ただ、その一方で、個人である提出者等を特定できなければならないと。あの鈴木一郎さんだというところまで特定できなければならないかというと、ここは不可欠とまでは言えないと考えられるわけでございます。

こうした点に鑑みれば、ポチのところに書いておりますが、プライバシー保護やセキュリティ上の問題を犠牲にしてまで、詳細な個人情報を公衆縦覧に供する必要性は乏しいのではないかということであります。

矢印で、こうしたらどうかということで結論めいたことを書かせていただいておりますが、個人である場合の記載事項につきましては、まず、住所については、番地の記載は公衆縦覧の対象から除外いたします。つまり、東京都世田谷区、あるいは神奈川県横須賀市と、そこまでにとどめるということでございます。生年月日につきましても、公衆縦覧の対象から除外することが考えられないかと。

注書きに書いておりますのは、仮に公衆縦覧の対象から住所における番地の記載を除外した場合、可能性の問題といたしまして、同一市区町村におけます同姓同名の者がそれぞれ大量保有報告書を出すと。世田谷区の鈴木一郎さんという方がたまたま2人おられて、どちらがどちらかわからないというようなことも想定されますけれども、実は3行目のところに書かせていただいておりますが、この大量保有報告書には提出者それぞれに付番がなされておりまして、報告書の右の肩の部分にEDINETコードの記載がございますので、この番号に照らし合わせれば、別人であるとか同一人であるということが判別できるような仕組みになっております。

8ページの下のほうの丸でございます。一方で、公衆縦覧はしないということをご提案させていただいておりますが、ただ、当局としましては、訂正報告書の提出命令等を出したりする必要がございます。そういう意味で、どこのどなたであるかということを確定し得るだけの情報を把握しておく必要があると考えております。

矢印のところでございますが、このため、番地までの住所と生年月日の記載は、公衆縦覧からは外しますが、当局に対しましては、非公衆縦覧書類ということで提出を求めることが必要と考えられるのではないかということであります。

9ページをおめくりいただきたいと思います。これは3点目のポイントでございまして、短期大量譲渡報告というのがございます。その適用範囲、記載事項の見直しでございます。

問題意識というところにございますように、最初の丸ですが、大量保有報告制度においては、大量保有報告書を提出した後、保有割合が1%以上増減した場合には、5営業日以内に変更報告書を提出しなければならないとされております。

2つ目の丸になりますが、このうち、保有割合が減少したことで変更報告書を提出する者につきましては、短期間に大量の株券等を譲渡したものとして定められた一定の基準、短期大量譲渡と呼んでおりますが、これに該当する場合には、最近60日間の全ての譲渡について、その相手方及び対価に関する事項を変更報告書に記載しなければならないこととされております。これを短期大量譲渡報告と呼んでおります。

米印のところにもうちょっと敷衍して書いてございますが、通常の変更報告書の場合ですと、譲渡の相手方が誰かにかかわらず、日付ごとに譲渡の取引の状況をまとめ書きすればよいということになっておりますが、短期大量譲渡報告を出さなければならないということになりますと、日付ごとの記載ということではなくて、これに代えまして、日付ごとかつ譲渡の相手方ごとに取引の平均単価等を記載することが必要になります。相手方の氏名も必要になります。

3つ目の丸でございますが、この短期大量譲渡報告の趣旨は、制度導入当時の議論でございますけれども、経営陣などによるいわゆる肩代わりが行われているか否かを投資者が判断できるようにするということを目的としたものでございます。

この点につきまして、4つ目の丸でございますが、2つの次元の異なるご指摘がなされております。1つ目のポチは、短期大量譲渡に該当するかどうかの判断基準が、現行基準ですと、保有割合の変動に着目して出す出さないを決めるということになっておりますので、実際には一株も譲渡していないんだけれども、保有割合が減ってしまったような場合も形式的には基準に該当しますので、提出義務が生じます。注書きのところにありますが、例えば第三者割当増資で他者に割当てがなされまして、自分の保有持ち株割合が減ってしまったような場合が考えられます。

そして、2つ目のポチですが、これは、僅少な株券等を譲渡した、そういう相手方につきましても、その相手方及び対価に関する事項に至るまで全ての情報を開示させております。これは負担が過大ではないかとの指摘がなされております

10ページをごらんいただきますと、この短期大量譲渡報告のフォーマットを記載させていただいております。下のほうにマスがございますけれども、短期大量譲渡報告に該当しますと、年月日ごとに、譲渡の相手方ごとに欄を記載する、相手方の氏名も必要になるということでございます。

11ページをおめくりいただきたいと思います。この点について私どものほうで検討させていただきました。前記のとおり、短期大量譲渡報告の趣旨は、いわゆる肩代わりが行われたか否かを投資者が判断できるようにするということでございます。バーを引いておりますが、肩代わりの実行といいますのは、買占め、買集めの完了を意味するということで、株価等に大きな変動が生じる可能性がございます。こうした状況を知り得ない一般の投資者は不利な立場に置かれるということでございますので、肩代わりの有無を開示させる必要があるという趣旨でございます。

注書きにありますが、ただ、上記の制度が導入されましてから、会社資金による肩代わりにつきましては最高裁判決が出ておりまして、会社法上禁止されております株主の権利の行使に関する利益供与に該当するということが明確になっております。このため、現在では、こうした行為、会社資金による肩代わりについては、会社法上、違法であるということが明確になっておりまして、そちらでも抑止効果が働いているということであります。

2つ目の丸でございますが、こうした趣旨に鑑みれば、1点目のポチです。こちらは譲渡をしていないのに、譲渡とかかわりなく保有割合が減少したような場合には、そもそも肩代わりが発生し得ませんので、短期大量譲渡報告書の提出を求めなくてもよいのではないか。

2つ目のポチですが、僅少な株券等の譲渡先に係る相手方及び対価に関する事項につきましては、株価等への影響を判断する上では必ずしも必要な情報とまでは言えないと考えております。

したがいまして、12ページのほうにまたがって恐縮でございますが、12ページをごらんいただきたいと思います。以上を勘案すれば、短期大量譲渡報告におきましては、まず、譲渡により生じた場合に限定するというのが1つ目のポチ。2つ目のポチでございますが、僅少な株券等の譲渡先の開示は、日付ごとかつ譲渡の相手方ごとの記載を改めまして、通常の変更報告書の場合と同様のレベルにするということでございます。日付ごとにまとめ書きすれば足りる、相手方の記載も不要ということが考えられるのではないかということであります。

その下にバーがございますが、何をもって僅少な株券等の譲渡先と判断するかという基準につきましては、規制の実効性の確保と提出者の負担のバランスの問題でありまして、一概に明確な決め手はございませんけれども、ポチに書かせていただいております。大量保有報告制度では、1%未満の水準を1つのメルクマールとして使ってございます。こうした点を踏まえれば、例えば1%未満を基準とすることが考えられるのではないか。1%未満に対する譲渡については、短期大量譲渡報告の対象としないということでございます。

注書きにありますように、仮に規制の潜脱を目的といたしまして、分割していろいろな他社の名義を使って書いたりいたしますと、これは虚偽記載ということで、刑事罰・課徴金の対象になるということでございます。

13ページをおめくりいただきたいと思います。4点目のポイントでございます。変更報告書の同時提出義務の見直しということです。

問題意識の最初の丸のところでございます。大量保有報告制度におきましては、大量保有報告書、変更報告書は、提出の事由が生じた日から5営業日以内に提出が原則でございます。

2つ目の丸ですけれども、ただ、例外といいますか、さらにと書かせていただいておりますが、変更報告書の提出日の24時間前、前日までに新たな提出事由が生じた場合には、その新たな提出事由に係る変更報告書を出さなければいけないところ、その変更報告書は、当初の提出事由に係る大量保有報告書や変更報告書と同時に提出しなければならないとされております。これを同時提出義務といいまして、次のページにおいて図で簡単にご説明いたします。

趣旨のところでございますが、大量保有報告書などの提出事由が生じた日以降、提出日までにいろいろな状況変化、新たに生じた事由がありますけれども、これを早期に開示させるということで、当初の基礎情報と提出時点での実際の状況との齟齬をできるだけ生じさせないようにするという目的でございます。

ただ、3点目の丸になりますが、この同時提出義務がございますので、大量保有者は提出日の前日には、共同保有者の分を含めまして保有状況を確認して同時提出しなければいけないということになっております。

注書きのところにございますが、大量保有報告制度では、自分自身の分だけではなくて、共同保有者の分も合算して、数字を足して提出しなければならないということになっております。

13ページの一番下の矢印ですが、これは今、投資家も機関投資家を中心に子会社、グループ会社、時差が存在する海外の子会社の場合もございます。そういうものを多数抱えている場合がございまして、保有状況の確認には時間を要するということで、実務上、なかなか対応できていない場合があるという現状がございます。

14ページをごらんいただきますと、これが同時提出の説明でございます。下の図を見ていただきますと、例えばある方が6%株式を取得したときをX日といたします。ここで当初の大量保有報告書提出事由が生じまして、Xプラス5日までに大量保有報告書を出さなければいけないわけですが、Xプラス4日までの間にさらに2%株式を買い増ししたような場合には、8%への変更報告書を出さなければなりません。そのときには、Xプラス4日から5日後ではなくて、そこから24時間後のXプラス5日に2通を同時提出ということになっております。

15ページをごらんいただきたいと思います。検討と書かせていただいております。2つ目の丸のところからご説明いたしますが、この同時提出義務につきましては、実際には遵守できない事例も存在するということで、投資者の側から見ますと、出てきた報告書が同時提出義務を踏まえた直近の情報なのか、それとも5日前の古い情報が出てきているのかがはっきりしないということで、かえって誤解を生じさせ得ない状況になっています。

注書きにありますように、この同時提出義務には罰則が科されておりません。罰則をかけてまで遵守を求めることが難しいということの証左ではないかと思われます。

矢印のところにありますように、こうした点に鑑みれば、この同時提出義務を廃止するということが考えられないかと。

注書きにありますように、そうしますと、投資者から見ますと、出てきた報告書は5営業日前の時点の情報であるということで、その後に変更が生じている可能性があるということを前提にした上で情報を判断いただくということになろうかと思います。

16ページをごらんいただきたいと思います。ここから残り2つございますが、これは簡単なお話でございます。16ページは、大量保有報告書の発行体企業への通知方法の見直しということです。問題意識のところにございますが、大量保有報告制度では、この報告書を出したときにはEDINETを通じて提出開示することに加えまして、遅滞なく、その書類の写しを紙ベースで発行体企業に送るということになってございます。

これはEDINETで今、タイムリーにどなたでも情報を入手できるようになっておりますので、下のほうの矢印に飛ばさせていただきますが、発行体企業に対する写しの送付義務は、EDINETへの掲載をもって代替とするということが考えられるのではないか。

注書きにございますように、取引所に対しても写しを送らなければならない、という規定がございますが、こちらは一足先にEDINETへの掲載で代替するとの手当てがなされております。

最後、17ページになります。6つ目の項目が訂正報告書の公衆縦覧期間の見直しということでございます。大量保有報告制度は3つの報告書がございまして、大量保有報告書本体と変更報告書、これは当局に提出されてから5年間、公衆縦覧に供されます。3つ目の類型としまして訂正報告書がございます。例えば提出した方が転居されて住所が変わりましたというような報告書で、それ自体を見ても保有の状況や株式の状況はわからないという訂正報告書でございますが、これも受理の日から5年間、公衆縦覧に供するということになっておりますので、5年たったときに、根っこの大量保有報告書などはもう公衆縦覧から落ちていますが、住所が移りましたという訂正報告書だけが残っているという状況になっております。これ自体は情報の価値が非常に乏しいものでありますので、根っこの大量保有報告書や、変更報告書の公衆縦覧の期限が切れたときに、同時に公衆縦覧からは落とす仕組みにしたいと考えております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

細かい点が多くて恐縮ですけれども、今ご説明いただいた点につきまして、皆様方のほうでご質問、ご意見があれば、お出しいただきたいと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構です。いかがでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

ありがとうございます。いずれも合理的に処理をするということであればいいと思いますし、特に重複規制になっているようなところは整理するということで結構かと思います。そういう観点からの確認ですけれども、5ページに大量保有報告書以外の開示の手段との比較をつくっていただいていて、記載内容についてのご説明はわかったんですけれども、提出のタイミングについて、大量保有報告書は5営業日以内ということなんですが、これをなくすると発表のタイミングが遅くなるということはないという理解でいいんでしょうね。適時開示でカバーされるんじゃないかと思うんですが、その点が1つ。もし何かおくれるようなケースがあるんであれば、それをご指摘いただきたいということと、あと2つございまして、8ページのところの個人の住所を細かいところまで開示させるかどうかということなんですが、これは当局のほうでは把握されるというふうになっていないと困るというのが1点と、それから、会社のほうはもちろんわかるわけですよね。株式の発行会社といいますか、どんな人が持っているかということはほかの手段でわかるんでしょうね。もちろん当該会社に保有状況がわかるかどうかということが大量保有報告書の目的ではないとは思うんですが、勘違いをしているかもわかりませんので伺いました。

3つ目の点が、同時提出義務の見直しのところで、15ページですけれども、ここは私、ほんとうにこれでいいのかなと少し疑問に思っている点もありまして、何かフェイントのようにこの制度を乱用して、実際には増減を完了しているのに、増加なり減少のほうだけが世の中に大きく出るというようなおそれはないでしょうか。内部者の方はその後さらに変動があったことを知っていて、何か詐欺的に使われるんじゃないかと心配をしているんですが、それはどのように防ぐのか。15ページの下の注のところに、そもそもこういう制度になったんだということが周知されるからいいだろうとあるんですが、そのほかは一般的な詐欺条項か何かで捕まえるんでしょうか。どういう乱用が考えられるか、具体的なことを想定しているわけではないんですが、もしご検討されていれば教えていただきたいと思います。

以上3点です。

○油布企業開示課長

大変技術的な点でございますけれども、実は非常に重要なご指摘をいただいたと思っております。5ページでは、おっしゃるように5営業日以内という原則からしますと、例えば自己株券買付状況報告書などは1カ月ごとの提出でございますので、そこについては若干タイムラグが生じるといいますか、現状に比べると遅くなるということでございます。その点を踏まえた上で、大量保有報告書から外すことのバランスとか、最終的には情報は1カ月以内に開示されるということを勘案しまして、外してもいいのではないかという提案をさせていただいております。ただし、おくれるケースはございますけれども、その隣の適時開示のほうに丸がついている部分については、おっしゃるように、タイムリーディスクロージャーのほうでタイムリーに開示がなされるということでございます。

2つ目のご質問、これは会社側はその個人がわかるかということは、株主名簿といった観点からの把握が可能であろうということでございます。

それから、同時提出義務の濫用につきまして、私どもも考えてもみたんですけれども、同時ではないけれども、5日たつと出さなければいけないということで、現状より4日間公表がおくれるということでございまして、これをどういうふうに評価するかなということかと思います。この間の4日間の状況につきまして、濫用というのがあり得るかというと、典型的に困るケースというのもなかなか想定できないということもありまして、同時提出でやっている現状を見直す可能性についてご提案させていただいたということでございます。

○神田座長

それでは、お隣の大崎委員、お願いします。

○大崎委員

ありがとうございます。私はここでご提案いただいた内容、いずれも制度の合理化を図るという意味で基本的に適切な内容ではないかと思っております。先ほど上柳先生のご心配だった同時提出の件については、そういう乱用の可能性というのは皆無、絶無ではないとは思うんですが、他方で、外国で日付が違うからということで、実務上きちっとできないという重大な問題を解消するという観点のほうが重要かなと私は思っております。

ただ、2点申し上げたいんですが、もうちょっと踏み込んだらどうかという提案なんですが、1つは短期大量譲渡報告なんですが、このような制度って諸外国にありましたっけという気がしまして、導入当時の日本国内においては、いわゆる買い占め屋みたいなのがいて、それが会社に肩がわりを迫るというようなことが現実に結構あって、こういうことも大事だというようなことだったと理解しておるんですが、事務局の資料にもありますように、肩がわり行為自体が会社法上も違法だということも明確になっているということですし、昨今、そういう古典的な買い占め屋みたいな人もあまりいらっしゃらないんじゃないかという気もしまして、また、買い占め屋が出てきたとしても、買い占め行為が終わったかどうかというのは、変更報告書を買い占め屋のほうも出さなきゃいかんはずでありますので、それによってわかるはずでありまして、私は短期大量譲渡報告制度そのものを廃止してしまってもいいのではないかと思います。

それからもう一点ですが、これはここにご提案はいただいていないのでありますけれども、この大量保有報告制度の合理化ということを考えるんであれば、例えば2006年の改正で非常に強化されました特例報告制度に関して、もう少し合理的なというか効率的なものに変えるのも、ついでにとか言っちゃいけないんですが、思い切ってやってはどうかと。例えば当時は特例の利用できる範囲についてもいろいろと疑義があったもんですから、特例といえども相当厳しいものにしようということで、基準日が月2回というような非常に頻繁に出さなきゃいけない形になったわけでありますけれども、それから随分時間がたちまして、特例に依拠できるかできないかを分ける概念である重要提案行為等を行おうとしている者についても、実務的にかなりこなれてきていると思うんですね。その意味で、本来特例を使うべきでないような人が潜脱して使うというようなことも、当時ほど懸念しなくてよくなっているんじゃないかと思っておりまして、そういう意味では、純粋に特例に値するような純粋な投資をやっている人たちに対しては、もう少し緩やかな開示でもいいんじゃないのかなと。もとの3カ月に1回基準日に戻していただくか、最低月1回ぐらいでどうかというようなことを思っておりまして、そういうことも検討していただけるとありがたいなと私は思います。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございます。

事務局からございますか。

○油布企業開示課長

そういうご意見は、私どものほうにも届いておりますので、将来的な課題としてテークノートはしておるつもりでございます。

短期大量譲渡報告の海外の事例でございますが、これはファクトがわかっておりますところで申し上げますと、諸外国のうちイギリスにはございませんで、ただ、アメリカには最近60日間の譲渡については記載させる制度があるということでございます。

○神田座長

よろしいでしょうか。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、出雲委員。

○出雲委員

今回、6点、事務局の方からご説明をいただきましたこの負担軽減の方策については、私は6点とも、実務上の観点からも非常に意味のある、そして、無理のない内容をここに記載していただいているなということで、ぜひこのような形で負担軽減を図っていただければ大変ありがたいなと思っております。

その中で、2点だけコメントさせていただきますと、12ページの短期大量譲渡報告の適用範囲については、ここに記載のとおりが一番リーズナブルであろうと考えております。といいますのも、譲渡により生じた場合に限定するということがまず一番肝要でありまして、その上で、僅少な株券の譲渡先については、変更報告書の提出を必要とされている1%基準と平仄を合わせて運用するのが最も適切なやり方であろうと感じております。

2点目ですけれども、16ページ目の大量保有報告書の発行体企業への通知方法の見直しについてですが、現在の発行体企業は、この大量保有報告制度におきまして、大量保有報告書と変更報告書は遅滞なく写しが来ると承知をしておりますので、このような制度変更を実施する場合には、これをしっかりと周知するということを1点、ご配慮いただければよろしいかなと思います。特に変更報告書は、企業はよくEDINETでキーワードを登録して、会社にその情報が来るように認識をしておりますけれども、新規の投資家の方の大量保有報告書は、そういったキーワードを設定せずに、通知が発行体企業に来た時点でそういった株主の方を認識するというのが今の実務上の運用となっていると思いますので、この点、新規の大量保有報告書の通知が発行体企業に対してなされなくなるということの周知だけ、1点ご配慮いただければと思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、武井委員。

○武井委員

大崎さんがついでのことをおっしゃった流れで、私も1点だけついでのことをお話ししたいのですが、大量保有に関する今日のご提案内容は今日の内容で良いと思いますが、2ページに書いてあります自己株の処分・取得の円滑化の関連で、大量保有報告と同じ開示規制の中でずっとペンディングになっています、自己株式処分に対して強制公開買付規制が適用されるという論点についても、もし可能でしたら適用除外の明確化をお願いします。具体的には、自己株式処分によって3分の1を超えてしまうときには公開買付けによることが必要だというのは、おかしいと思います。公開買付手続が想定している既存株主から株を買ってくるという話と、自己株式処分のような対象会社に資金を入れる話とは経済効果的にも全く違います。また今回の臨時国会で提出されるよう議論されております会社法の改正法案で、自己株式処分を含む第三者割当によって生じる支配株主の異動については、株主総会決議をとるという形での株主の権利保護を施すことにしています。公開買付けという形での株主保護で無く株主総会決議という形での株主保護を行うことになったわけです。現行の金商法下では新株発行と自己株処分とが泣き別れになっていますが、この論点を明確化するのにTOBワーキングを何か立ち上げるほどの話でもないと思いますし政省令対応でも可能だと思いますので、このタイミングで一度追加に頭を整理していただくとありがたいと思います。ついでの話でしたので、あとはお任せします。

○油布企業開示課長

おっしゃるとおり、その論点は平成17年の公開買付制度等ワーキング・グループ、当時の金融審議会の第一部会のワーキング・グループですが、そこでの議論もあったということで、先々いろいろと検討して、どちらの方向にそろえるかは別にしまして、検討しなければいけない課題であるとは認識しております。

○神田座長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。いろいろプラスアルファでの宿題や課題もいただきましたけれども、少なくとも事務局の資料において提案されている6点については、留意すべき点はありますけれども、おおむねご賛同いただけているのではないかと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。本日は、あと2つがまた大きな課題ですので、もしよろしければ先へ進ませていただいて、もし追加でご議論があるようでしたら、また事務局のほうにお寄せいただければと思います。

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、2つ目のテーマであります流通市場における虚偽開示書類に係る損害賠償責任の議論に移りたいと思います。

まずは事務局からの説明をお願いいたします。

○油布企業開示課長

それでは、資料2の横長の紙の1ページ目をごらんいただきたいと思います。

流通市場における虚偽開示書類の提出会社の損害賠償責任ということでございます。問題意識を書かせていただいております。金商法上、虚偽開示書類の提出会社は、募集または売出しによらずに有価証券を取得した者、これはつまり、流通市場で取得した者でございます。こうした者に対しまして、過失の有無に関係なく損害賠償責任を負う無過失責任という規定に現在なっております。

虚偽開示書類とは何かというのを注に書かせていただいております。

2つ目の丸ですが、近年、課徴金制度の発達ですとか、内部統制報告制度の導入といった状況の変化がございますので、こういった点を勘案いたしまして、金商法上、この損害賠償責任規定が無過失責任とされていることについてどのように考えるかということでございます。

参考が閣議決定でございまして、無過失責任となっていることが適切か検討を行い、結論を得るということになっております。

この先の論点のイメージでございますが、まず、下に図で書かせていただいております無過失責任を維持すべきか、あるいは見直すべきか、見直した場合には2つ論点を立てておりまして、1つは、これは会社の過失ということでございますが、誰を基準に過失の有無を判断するか。2つ目が過失の立証責任を原告側、被告側、どちら側に負わせるかということでございます。

2ページをごらんいただきますと、民法の一般的な原則でございます一般的な不法行為責任との対比を書かせていただいております。1つ目の丸でございますが、通常、こちらのほうは加害者の故意または過失が要件となっております。これは過失責任の原則ということになります。また書きのところにありますように、また、民法上の一般不法行為責任では、加害者の過失、損害などの要件は訴える側が立証するというのが原則でございます。

次の2つ目の丸ですが、ただ、一方、被害者保護といった観点から、過失責任の原則や立証責任の所在が転換されている特別な例外が定められる場合がございます。具体的には、無過失責任の事例と、つまり被告側の過失の有無を問わずに損害賠償責任を負わせる例と、それから、過失の立証責任を被告側に転換している例ということでございます。

3ページをごらんいただきたいと思います。これは金商法上のこの規定の立法経緯でございます。現在のこの規定は平成16年当時の証券取引法の改正で導入されております。

2つ目の丸のところに書いてございますのは、上のカラーの表でご説明できるかと思っておりますが、平成16年改正前には、左側の表を見ていただきますと、提出会社、提出会社の役員等、発行市場、流通市場、4つのマトリックスがある中で、右上の部分だけ証取法に当時損害賠償責任追及規定がなかったということで、ここが追加されたと。その際に、被告であります提出会社の無過失責任という形で導入がされたということでございます。

3ページの一番下に矢印をつけておりますが、民事訴訟による責任追及を強化しようということで、違反行為の抑止、市場の公正性を高めるという趣旨があったということでございます。

4ページは現在の規定の説明でございます。まず、この先、最初にご議論いただきたいのは、最初の丸の無過失責任というところでございますが、2つ目の丸の損害額の推定というのも後のほうで論点になってまいりますので、ここでご説明させていただきます。これは、流通市場で株式を取得された方が粉飾決算によって損失が生じた場合に、その損害額を幾らと考えるべきかということでございますが、金商法の規定には損害額を推定するという規定が置かれております。公表日前1カ月間の市場価格の平均値と、粉飾決算が明るみに出た後1カ月間の価格の平均値を比較して、その差額を損害の額とすることができるという推定規定を置いております。こういう推定がなされますと、訴える側はこれ以上証明する必要がない反面、一番下に注を書いてございます、被告側の提出会社のほうは、因果関係の不存在を立証するということで、推定額の全部または一部を免れることが可能という構造になります。推定に対して反証、反論するということで免れるという構造になってございます。

5ページ目はこれに類似の規定でございます。さっきの4つのマトリックスのうちの別の部分でございますが、流通市場の虚偽開示については、提出会社そのものではなくて、提出会社の役員等というものに対する損害賠償責任の規定もございます。こちらのほうは、ただ、無過失責任ではございません。過失責任と規定されておりまして、ただ、立証責任が被告側に転換されております。訴える側の投資者に有利な規定になっているということです。それから、先ほどご説明いたしました損害額の推定規定は、こちらのほうには置かれておりません。

6ページをごらんいただきたいと思います。この無過失責任をそもそもどう考えるべきかということについて検討いたしております。一番上に書いてございますが、一般原則といたしまして、損害賠償責任は過失責任が本来は原則であります。

2つ目の丸で、こうした中、平成16年当時、無過失責任という特例的な規定が置かれたことの理由は以下の点が考慮されたとされております。1点目は、平成16年当時、流通市場の虚偽開示書類の提出は課徴金制度がございませんでした。そういう意味で、投資者の立証負担を緩和して、民事訴訟による責任追及を強化しようという趣旨があったということです。2つ目のポチですが、当時、提出会社に故意や過失がないということは想定しにくいのではないかと考えられた点。そして、3つ目、これは従前からこういう規定になっておりまして、今回もこの点は見直すご提案はしておりませんけれども、発行市場におきます提出会社の粉飾、これに係る損害賠償責任は無過失責任とされております。それとのバランスがあったということでございます。

7ページをおめくりいただきたいと思います。以上3つの論拠、当時指摘された点をご紹介いたしましたけれども、これらの点については、現状では以下のように考えた場合には、損害賠償責任の原則に戻しまして、過失責任にすることが適切ではないかと考えております。

1つ目のポチですけれども、平成16年にこの規定が入りましてから翌年、平成17年以降、流通市場における虚偽開示書類の提出が課徴金の対象行為とされておりまして、その水準も強化されるということで、課徴金制度側からのエンフォースメントも現在は相当きいてきているということでございます。

2つ目のポチですけれども、平成20年に内部統制報告書制度が入ってございます。この結果、上場企業は財務諸表等の適正性を確保するための体制を整備するということになっておりまして、こうした体制が適切に整備されて、実際にも有効に機能していたような場合にまで、そこまでやっていても防ぎ切れなかった虚偽開示について、無過失責任になっているからということで提出会社の責任を問うことは適切とは言えない場合もあるだろうということでございます。

3つ目のポチで、発行市場の規定とのバランスの確保については、視点を変えてみますと、そもそも発行市場と流通市場と相当事情が異なる点もございます。例えば発行市場につきましては、基本的には投資者から発行体企業に対して現実に株式の対価の現金の払込みがございます。そういうわけでありますので、たとえ提出会社に過失がなかった場合でも、不当に高い価格で払込みがなされておりますので、過大に払い込まれた利得部分が会社のほうに残っているということです。これを一種損害賠償という形で返還させると。そのことによって実質的な原状回復を図るのが公平だと、発行市場のほうの粉飾についてはそういうふうに考えることができるわけでございますが、流通市場の粉飾に伴う損害賠償につきましては、基本的にこうした構造がございませんので、提出会社には利得というものがそもそも生じていないということであります。

4つ目の点は、米国、英国との規定ぶりとの比較を規定させていただいております。

8ページをごらんいただきますと、これが日本と米国とEUの規定でございます。上のほうが流通市場の発行企業の責任、下が発行市場の粉飾に対します責任でございまして、日本の場合は、上下見ていただきますと、現在、無過失責任、無過失責任ということになっております。米国やEUを見ていただきますと、米国では欺罔の意図が必要、米国の発行市場のほうは無過失責任というふうに、責任の程度に差が設けられているということでございます。

9ページをごらんいただきます。これは無過失の判断ということで記載させていただいております。丸を付しておりますが、仮に流通市場における提出会社の損害賠償責任を過失責任とする場合に、その提出会社の過失の有無については、提出会社の役員を基点に判断することも考えられますが、以下の点に鑑みれば、役員、従業員を含めた提出会社の構成員全体を基点として判断することとしてはどうかという提案をさせていただいております。この点につきましては、他の提案と同様、できる限り法律を含みます法令でそのように規定ぶりを規定したいと考えておるわけでございますが、ただ、この論点につきましては、法人の過失というものにつきまして、これを人間の段階まで落として、役員とか従業員とか、そこで過失を判断するというふうな規定ぶりの先例がなかなか見つからなかったりすることも考えられますので、立法例に照らしたときに、必ずしもここは法令でそのように規定できるという確信を持っているものではございません。そうした前提のもとでご議論をいただきたいと思いますが、1点目のポチのところでございます。役員を基点としまして過失の有無を判断しますと、従業員には故意・過失がある場合であっても役員には過失がないということで、提出会社が責任を負わないケースが出てくるわけでございます。一方、この点につきましては、こうしたケースで、発行体の提出会社は、別途、民法上の使用者責任に基づく損害賠償責任を負う可能性があると考えられますが、それにもかかわらず、投資者保護のための特別法である金商法では損害賠償責任を問わないというのは適切と言えるかどうかという点でございます。

注書きに民法上の使用者責任の規定を書いておりますが、被用者、従業員の不法行為については、使用者に賠償責任を負わせる規定でございまして、判例上、使用者が監督責任に過失がなかったということで免責されるケースはほとんどない、あるいは全くないと言われているぐらいでございます。

2つ目の矢羽根ですけれども、これは一種の報償原則と言われる考え方でございます。提出会社は従業員を働かせるということで企業活動をして、その利得を得ておりますので、その従業員が故意・過失で他人に損害を与えた場合には、利益が帰属する提出会社が損害賠償責任を負うことが公平ではないか。この2点を考えたときに、従業員も含めましたところで判断するのが適切ではないかと考えております。

2つ目のポチにありますように、こういう構成にいたしますと、役員による内部統制の構築という点にとどまらず、社員も含めたところで提出会社全体のコンプライアンス向上というインセンティブが期待できるという点も考えられるかと思っております。

10ページでございます。もう一つの論点で、過失の立証責任の転換であります。立証責任については、今回仮に流通市場におけます提出会社の責任を過失責任とする場合でございましても、過失の有無の立証責任については、以下の点に鑑みまして、被告側の提出会社に転換してはどうかと考えております。1つには、一般的に投資者が提出会社の故意・過失を立証するというのは相当困難と考えられます。また、2つ目のポチのところにありますように、こうした事情を踏まえまして、金商法上の損害賠償責任規定というのは、ほかのものも含めまして、投資者側には立証責任を負わせることのないような枠組みになっているのが標準でございます。

注書きには、アメリカや英国では立証責任を投資者側に負わせておりますが、これはディスカバリー制度が発達しているという点で、我が国とは単純に比較できないのではないかということを書いてございます。

以上が当初申し上げました大きな論点でございますが、もう一つ、今回、別の論点をご議論いただきたいと思っております。11ページ以下に記載しております。それは、流通市場における虚偽開示書類に係る損害賠償責任の請求権者を現行制度より広げるという提案でございます。

問題意識に書かせていただいておりますが、現行の金商法では、流通市場におけます損害賠償責任は、いずれも請求権者を有価証券を買い付けた者、取得者に限定しております。

2つ目の丸にありますように、一方で、粉飾の決算書類等々が公衆縦覧に付されている間に有価証券を売却してしまった者、以下、処分者と申しますが、処分者が損失を被るような事態も想定されるわけですけれども、そうした場合、この処分者は金商法に基づく損害賠償を請求することはできないということになっております。

米印に書いておりますように、どういう例かと申し上げますと、逆粉飾の例が典型例かと考えております。例えば提出会社の財務状況を低く、悪く見せかけるような虚偽開示書類の提出が行われて、それによって株価が下がってしまった場合、処分者は下がった価格で持っていた株を売ってしまうという事態があります。本来であれば、もうちょっと高い価格で売れたということでございます。ここで損失があるのではないかということです。

注書きは、どうして処分者が入っていないのかという点でございます。これははっきりいたしませんが、昔の国会答弁を見ますと、こういう場合、処分者の利益は逸失利益で実現損ではないというようなことが言われております。この点につきましてご議論いただきたいと思っております。

12ページですが、以下の点を勘案すれば、請求権者を取得者に限定せずに、処分者も含めるということが考えられるのではないかという点で3点上げております。

1つ目のポチでございますが、逆粉飾が行われた場合、処分者は、粉飾決算が行われて損失を被った取得者の方と同様に損害を被り得るということ。そして、2つ目ですが、特に近時、いわゆるマネジメント・バイアウト、経営陣が自分の企業を買収するというMBOが増加してきております。MBOの場合ですと、MBOをやろうと思っている経営者側には、逆粉飾によって株式の買取価格を不当に引き下げたいというインセンティブとして働き得るということでございます。3つ目が、アメリカ、英国では処分者も請求権者に含まれているという点でございます。

13ページはMBOの件数が増えてきているというグラフであります。

14ページをごらんいただきたいと思います。以上のような観点から、事務方としましては、処分者も請求権者に追加してはどうかと考えております。問題意識のところに書いておりますが、仮にそうする場合に、冒頭ご説明いたしました損害額の推定規定も設ける必要があるかどうかということでございます。

検討というところに書かせていただいておりますが、損害の推定規定というのは、ある一定額を損害額として推定することによりまして、損害額の立証責任を被告に転換するということで、被告側に、推定された損害額のうち損害ではないという部分を立証、反証させるという規定でございます。

次の丸でございますが、この損害の推定規定を置きますと、投資者保護には資するわけでありますが、一方で、一般原則の例外ということになります。損害額に関する立証責任が転換されるという非常に重い効果が発生するわけでございます。

次の丸になります。このため、推定規定を置くには、推定規定により計算される損害額が実際の損害額と似ているという蓋然性が高いということが必要と考えられます。

最後の丸のところですが、順粉飾といいますか、通常の粉飾の場合、この粉飾決算が行われますと、その事実が明るみに出れば、提出会社の株価は通常、当然下落するということが想定されるわけでございます。それで推定規定を置いて、その損害の額を推定するという構造になっておるわけでございますが、最後の15ページをおめくりいただきまして、逆粉飾や処分者の場合はどうだろうかということでございます。

15ページの一番上の丸ですが、一方で、処分者が損害を被ることになります逆粉飾のケースでは、これが明るみに出ますと、その発行会社のレピュテーションが大きく棄損されると。それから、課徴金を課せられたり、脱税ということでございますと、重加算税がかかったりいたします。したがって、この実態公表といいますか、真実が明るみに出たことによって株価が上昇するとは必ずしも言えないのではないかと。むしろレピュテーションの棄損などで下がる場合も十分考えられるということでございます。

2つ目の丸で、こうした点に鑑みると、逆粉飾が明らかになって仮に株価が上昇したとしても、その上昇分は逆粉飾が明らかになったせいだとはなかなか言いがたい、すなわち、当該上昇分が実際の損害額と似ている蓋然性が高いとは言えないのではないかということでございます。

また、言い方を変えますと、これは立法上、推定規定を置くわけでございまして、推定するからには、株価が通常上がるだろうからこういうふうに推定規定を置くという相関関係といいますか、一定の対応関係がないといけないわけでございますが、逆粉飾が明るみになって株価が上がるか下がるかどうだかわからないという状況のもとで推定する規定を置くというのは、立法技術上なかなか難しいという点もございます。

こういう点に鑑みまして、結論ですが、処分者に関しては、損害の推定規定は置かないことでどうかということを考えております。

私からのご説明は以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

このテーマにつきましては、黒沼委員から書面によりご意見の提出をいただいておりますので、皆様方の席上に配付させていただいております。

それでは、このテーマにつきまして、皆様方からご質問、ご意見等、ご自由にお出しいただければと思います。どなたからでも、どの点についてでもよろしくお願いいたします。

それでは、まず、上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

ありがとうございます。細かいことは後にさせてもらって、大きなことなんですが、特にこの無過失責任をそうでないふうに変更するというか、もとに戻すというか、このことは相当慎重に考えなきゃいけないんじゃないかと私は思います。無過失責任にしたのがせいぜい8年前のことで、それ以降も虚偽記載の事案というのは世の中にあるわけですので、それについて発行会社がどこまで責任を負うのか、あるいは役員が負わなきゃいけないのかというのが論点で、私はそういう意味での立法事実は変わっていないのじゃないかと認識しているんです。確かに課徴金制度であるとか、あるいは内部統制制度の充実がありますので、総合的に考えて、あるいはさらに言えば、今日の後のほうの論点の処分者も含めるであるとか、あるいは黒沼委員のペーパーの2枚目の問題も含めて総合的に調整するということはあるのかもわかりませんが、私はなかなか納得できないんです。論点としては、今日のご説明資料だと7ページの一番下の参考のところにある2行、つまり流通市場における問題点について、発行会社の方々、あるいは発行会社に無過失責任を負わせるということが果たして新規上場の抑制につながっているのかどうか、リスクマネーの供給との関係がどこにあるのか、これが多分、規制改革実施計画のほうからも我々に問われたところだと思うんですが、そこの議論というのは十分なんでしょうか。大変疑問に思っています。理屈的にも大変大きな問題だろうと思います。無過失責任を変更する必要はないのじゃないかと意見を持っていることを発言させていただきます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。それでは武井委員、どうぞ。

○武井委員

ありがとうございます。今日は途中で退席してしまいますので先に発言させていただきます。まず、無過失責任を過失責任に直すことには賛成です。まず出発点の話として、この金商法の特例は、あくまで民法上の不法行為責任で株主が損害賠償を請求できることに対する上乗せ特例になっています。この特例があっても無くても、民法の不法行為責任での追及は、民法の要件を満たす限りではできます。その上で、こういう金商法の規定の形で上場会社が有報等の流通市場の虚偽記載についてお金を払い戻すとなると、原告適格が生じる株主と、原告適格が生じない株主とに分かれる点が金商法の特例によって際立ってきます。そして、この制度は上場会社が原告適格のある株主にお金を払う制度ですので、回り回って原告適格のない株主から原告適格のある株主に対してお金が支払われているという、財産移転の構造が生じてきます。株主間での財産移転が生じている手段であるという根本的な問題を抱えています。現行法で言いますと、1項では虚偽記載の期間中に株式を取得した者ですし、さらに損害と因果関係の推定規定の2項では虚偽記載の公表前1年以内に株式を取得した者と原告適格がなっていますので、逆に株式をずっと保有していて動かしていない長期保有株主は、金商法の特例による原告適格が認められず、常にお金を払う側に回りかねない構造になっているという根本的問題があるわけです。

さらに、論者の方の中には、原告適格のない株主が払っていることを超えて、この制度では株主がどんどん債権者化していく現象を起こしますので、上場会社の債権者のほうも支払う方に回っていて、債権者の保護にも欠けないのかという問題指摘をする方もいます。

そこで、この会社が流通市場株主に対してお金を払い戻すという行為の射程に関しては、もちろんさっき上柳先生のおっしゃったような粉飾決算の防止という観点の手段としての役割はありつつも、どこまでこの制度によって粉飾決算の防止を図るか、手段としての相当性に関して多角的に慎重に考えなければならない、構造的な問題があるわけです。この構造的問題点についてまず申し上げたいと思います。

この構造的問題点もあって、今日の資料の8ページに海外の制度の紹介がちょうどございますが、アメリカでもEUでも、粉飾決算などの不実開示について会社が流通市場株主に払い戻すというときには、会社側の要件は過失責任ですらなく、過失を超えた詐欺責任、いわば会社全体が会社ぐるみで流通市場株主に詐欺的行為を行った場合に限って、この手段を発動するという制度となっているわけです。今の点は最近のNBL等の論考でも学者の方から改めて紹介されています。欧米は本制度の射程を詐欺責任にしていると。過失責任ですらないと。過失よりもさらに何か厳しいものがあって初めて、本制度をトリガーさせていると。それは私の理解では、今申し上げたような構造的な問題が根本的にある手段であるということへの配慮だと思っています。こうした欧米の詐欺責任であることに比べて、日本の現行法制は、過失責任はおろか、無過失責任であるという極端な状況になっています。ですので、せめて過失責任ぐらいには戻すべきだと思います。

粉飾決算については、平成16年の改正以降、課徴金が導入され、行政的なエンフォースメントで粉飾決算はかなり厳しく処罰されています。また、先ほどディスカバリーの制度がないからという話がありましたが、日本では今、粉飾決算事案があったら、日弁連型第三者委員会も立ち上げられ、第三者委員会の報告書はそのまま開示されています。以上の点からして、日本版ディスカバリーに近いものは、粉飾決算における民事訴訟の世界で日本ではすでにあると私は理解しております。

あと平成16年改正以降の動向として、先ほどの課徴金制度以外に、財務報告内部統制制度が導入されました。財務報告内部統制をしっかり一生懸命つくって、法人の過失がきちんと認定ができる仕組みという性格を持っていますので、平成16年改正当時から立法事実からかなり変わったと思っております。

あと、一点細かい論点ですが、この点は黒沼先生からのご説明を受けてからコメントした方が良いかなと迷ったのですが、時間も無いので先に述べますと、処分者を含めるという点ですが、私は慎重に考えるべきではないかと思っています。この処分者を含めるという点に関しましては、理由として述べられておりますのが逆粉飾の場合の救済ですけれども、今回、制度をつくるとしたら、逆粉飾になる場合か粉飾の場合かということは区別ができないので、全ての処分者が原告適格に加わるということになるのだと思います。また、現行の金商法ですと、2項で、少なくとも粉飾決算の公表時点で株を持っている人しか金商法の推定規定の特例は使えないとなっておりますので、1株につき1人と限定される状態になっています。それが処分者まで特例の対象者に含めた瞬間、推定規定が使える者が一株当たり一人であるという制約がはずれてしまい、原告適格者があまりに膨れあがってしまう、特例による損害額が青天井になってしまうという懸念が出てくるかと思います。さきほどのご説明の中で、損害の認定が難しい、推定するだけの根拠がないのじゃないかというご説明がありましたが、それ以上に金商法訴訟による損害額が下手をしたら時価総額を超えかねないと。諸外国のように本制度の射程を詐欺責任で考えていて処分者を含めている世界があるからといって、日本の法制が今回の改正を経てもなお過失責任にとどまっている、詐欺責任を超えた軽過失まで拾っている世界である以上、処分者は含める話にはならないと思います。訴えてきても会社は負けなければよいじゃないかと思うかも知れませんが、会社側は訴えられただけで各種ものすごい負担が生じます。訴訟引当金も計上しないといけないわけで、その訴訟引当金が幾らになるか読めなくなると、逆に日本の上場会社への投資価値・信用を過剰に落としてしまう混乱を生みかねないことを懸念します。

なお1項を含めた特例の対象として処分者を含める理由として書かれていますMBOの場合ですが、安い業績予想を立てて安い値段で株を買い取るという逆粉飾の事例だと思いますが、会社法のほうで、価格申立てによる救済があります。ですので、処分者に関しましては、一般の不法行為の世界で救済するという世界があるわけで、金商法の特例までは要らないのではないかと私は思います。裁判所の判例でもよく議論となっていますが、投資の自己判断について、金商法がどこまで保護射程とすべきなのかという論点ともいえます。

もう一点、最後の個別の役員さんの責任の箇所に関しまして、私は改正すべき点がもう一点あると思っています。役員に関する責任は、あくまでその方の個人の責任を問う以上、その方の作為義務がはじめに何かあって、その作為義務を果たさなかったが結果、どういった因果関係によって損害が出たのかという認定していくのが不法行為責任の基本だと思っています。それが現行の流通市場の役員の責任に関しては、相当な注意の認定は個別の者ごとで見ながらも、因果関係のところは虚偽記載と因果関係があった損害で一気に揃ってしまっている、いきなりそこだけ一斉に統一されています。その者がどう努力したら虚偽記載を防げたのか、それに伴って本来異なるはずの損害額を一律に揃えてしまっています。個人の損害賠償責任を問う以上は、各自の個別の作為義務との因果関係という形で丁寧に認定していく世界にすべきではないかと思います。平成16年改正のときに発行市場の責任のところとそろえていますが、個別の個人の責任に関しては、各自の作為義務を踏まえて、そことの因果関係がある損害ということに直すべきではないかと提案します。

あと長くなっておりますが最後に1点だけ。法人過失の認定に絡む従業員の部分ですけれども、こちらは大変難しい問題で、さきほどのご説明にもありましたとおり、民法の世界でものすごくいろいろな議論が進んでいるところでございます。平成16年当時よりもさらに法人の過失をどう認定するか、判例がいろいろ出ていますので、9ページのようにここまで頑張って法文等で書かなくても、裁判所のほうで法人の過失の不法行為法の論理できちんと認定してくれると思います。ここで書ききろうとしない方が良いのではないかと思います。以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

私が意見を提出したのは、無過失責任の見直し以外のところでしたので、後で発言しようと思っていたのですけれども、武井委員が先に退室されるというので、今の武井委員のご発言に対して何点か反論させていただきたいと思います。

まず、無過失責任の見直しの点ですけれども、第1に、株主間の利益移転が生じるので金商法では手当てをしないほうがいいと言われました。確かにそういった理論的な問題はあるのですけれども、そういった問題は金商法だけの話ではないと思います。株主間の利益移転が好ましくないというのであれば、不法行為責任だって修正しなければならないので、ここだけ直しても意味がないと思います。

第2に、株主間の利益移転と関連して、短期の株主のみが保護されるようなことをおっしゃいましたが、21条の2は無過失責任の部分と推定規定の部分が分かれていまして、虚偽記載等の公表前1年以内に取得したものは推定規定を利用できるというだけです。それ以外の者も無過失責任の部分は利用することができますので、短期の株主、特に1年以内に買った者だけが優遇されるというのは、無過失責任の文脈では関係のないことだと思います。

それから、処分者の保護についてなんですが、武井委員は、逆粉飾の場合に処分者を含めると過去の処分者全てが原告適格を有するかのようにおっしゃいましたけれども、この場合であっても原告適格を有するのは、逆粉飾が行われてからそれが公表されるまでの間に当該有価証券を処分した者だけですので、これは普通の粉飾の場合に、虚偽記載が行われてからそれが公表されるまでの間に有価証券を取得した者に原告適格を与えるのと変わりありません。ですから、処分者を含めると原告が増え過ぎて損害賠償額が青天井になるというのは、何かの誤解ではないかと思います。

それから、MBOの場合には買取請求権があるからそれで保護されるとおっしゃいましたけれども、買取請求権を主張することができるのは、株主総会の決議に反対して、現在も株を持っている者でありまして、ここでは処分者の保護が問題となっていますので、買取請求権では救済されないと思います。

最後に、これは少し難しい点ですけれども、武井委員は、取締役については個人の作為義務と因果関係のある損害の賠償のみを認めるように改正すべきだとおっしゃいました。確かに金商法では個人の作為義務ではなくて、虚偽記載と因果関係のある損害を一定の関係者に賠償させるという仕組みをとっています。それには理由がないわけではありませんで、多くの法定開示書類の作成の関与者に民事責任を負わせることによって注意を払わせて、虚偽記載が行われないようにするという、まさに投資者保護のための特則になっているわけです。そこを不法行為と同じように戻すというのであっては、金商法に民事責任規定を置く意味がなくなってしまうと考えます。

後でもう一度発言させていただいてよろしいですか。

○神田座長

はい。ありがとうございました。

それでは、大崎委員、お願いします。

○大崎委員

ありがとうございます。私は、この21条の2の見直しということに関しては、黒沼委員が提出されました紙に書いてあること、それから今、黒沼委員がご発言になったことと、特に法的な問題点については基本的に同じ意見でございます。

1点、政策的、あるいは政治的と言うと言い過ぎですが、観点から気になっている点を申しますと、確かに規制改革実施計画で検討を行い結論を得ると決められたものでありますけれども、あくまで検討を行うということでありまして、無過失責任となっていることが不適切だという前提で何か検討をお願いしたということではないと理解しておりまして、私はむしろ、この時期にどこまで無過失責任が過失責任になることによって、企業の仮に何らかのチリングエフェクトが生じているとして、それがどれぐらい緩和されるのかというのが極めて疑問だと個人的には思っておりまして、つまり、得られる益の小ささなわりに、これを見直すことによって投資者保護が非常に後退したというような誤解を与えることをむしろ懸念いたします。

現実問題としては、今まで無過失責任のもとで、明らかに企業がそんなことでも賠償金を払わされるのかというような事案があったかといいますと、実態はまったく逆で、およそとんでもない、明らかに故意があって悪質な粉飾が行われていたというケースで訴訟が起きているというのが私の理解する実態でありますし、確かにアメリカと責任のレベルが違うというのはあるんですけれども、向こうはクラスアクションがあるじゃないのという話もあるわけでして、私はここは慎重に考えたほうがよろしいんではないかと。

それから、黒沼委員のご提案の中の発行者以外の者の民事責任規定にも損害額の推定規定を置くというのは大事な点だと思っておりまして、もともと無過失か過失かということ以上に、従前の規定のもとでなかなか損害回復が難しいと言われていた理由は、損害額が確定しない、因果関係が立証できない、そこにあったと私は思っておりますので、今、会社に対して請求がたくさん行っていて、それが株主間の利益の移転になっているんじゃないかという武井先生のご指摘はある意味正しいと思うんですけれども、発行者以外の者にも損害額の推定規定が置かれれば、役員に明らかに責任があるような場合にはそちらが被告になるとなっていくんじゃないかと私は思います。

○神田座長

ありがとうございました。

武井先生、退席前にさらに何かご発言があれば……。

○武井委員

すみません。何点かあるのですが、第一に、財産移転の構造問題は結構深刻な話で、この賠償責任という手段でどのくらい粉飾決算防止を手当てするのかという根本問題だと思います。海外の詐欺責任が限定しているということとの平仄がとれていない部分に関して、むしろそっちの構造問題の観点から考えるべきだと思います。次に、今大崎さんのおっしゃった、過失責任に変えても大したことないという点ですが、現場の感覚では違ってきますし、しかも役員さんの責任としても、今一番重たい責任です。平気で何十億、何百億と平気でなってしまう話なのです。もちろん粉飾決算は防ぐべきなのですが、会社が下手したら倒産に至るぐらいのレベルの額、下手したら何百億も流通市場の株主にお金を支払うことになるので、その是非の政策判断です。こうした事情もあって海外は詐欺の場合に限定しているというのと、日本の制度は平仄があまりに合っていないわけです。日本の制度がこのままでほんとうにいいのだろうかという、かなりな深刻な問題だと認識しています。しかも、最近、長期保有の株主さんをどう優遇するかという議論も出てきていますところ、長期保有の株主さんは専ら支払う側に回る制度ですので、この制度のもとで極めて不利に置かれています。あとさきほど黒沼先生から御指摘のあった1年以内に買った者だけが優遇される話は無過失のところは違うんじゃないかという点ですが、それはおっしゃるとおりで、私の言い方が悪かったのですが、金商法の特例は無過失責任、損害賠償の推定、因果関係の推定の3点セットで、その3点セットがフルに使える人が現実には原告になっています。原告側に回る株主と支払う側に回る株主との不具合がどうしても生じるという構造問題のある手段でどの程度粉飾決算の防止をやるのかという政策判断の話で、今現在、日本の場合は、海外が詐欺責任に限定する手段を真逆の無過失責任にまで行ってしまっていると。平成16年改正当時の世情もあったのかもしれませんが、平成16年改正の後、J―SOX制度もでき、課徴金もエンフォースメントされ効果的に機能していますし、しかも法人の過失に関してもきちんと法理論が進んでいます。こういう環境変化の中では、過失責任に戻すまではせめてやらないとおかしいのではないかと思います。ありがとうございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

1点目のテーマとは違って、委員の皆様方の間で意見が分かれているように思いますけれども、引き続きご意見をいただきたいと思います。

永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

ありがとうございます。私も2点、お話をさせていただきたいと思います。

第1点目は、無過失責任か過失責任かという点ですが、上柳先生がおっしゃったように、8年前に入れた規定でもありますし、この8年の間に見直すほどの変化があったか疑問に思わざるを得ないので、見直しには慎重であるべきと思います。

確かに課徴金制度は導入されたことは大きな進展だと思いますが、過失責任にしてしまって反証できるようにされてしまうと、内部統制報告書の制度がどんどん形式化していってしまうのではないかという懸念を抱いてしまいます。うちはちゃんとやっているからという説明をされてしまって、投資家にとって不利益なことが出てくるのではないかと感じざるを得ません。

それから、7ページの最後の参考のところに、新規・成長企業について触れた件があります。確かにこのワーキング・グループは新規・成長企業のリスクマネーの供給ということを話し合っております。無過失責任というのが大きなネックになっているという指摘もあるのかもしれませんが、これは抽象的な指摘で、先ほど大崎委員が指摘されたように、どの程度原因になっているのかということも検証しないままに、無過失責任を過失責任にするということはどうかなと感じております。

それから、マネジメント・バイアウトのときの請求権者の損害の推定がもう一つ議論になっていたと思いますが、個人投資家の立場から申しますと、立法上の難しい問題があるということはさておき、そもそも個人投資家がマネジメント・バイアウトのような場面に遭遇するときには、大変弱い立場にあり、安く一方的に買い上げられるというようなことが起こりうると私は思っております。損害の推定規定のような武器を弱者にあたえていただきたいと思っております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

無過失責任の見直し以外の部分でございますけれども、ペーパーを提出させていただきました。処分者にも損害賠償請求権を与えていただくようお願いしたいという点は事務局のご提案のとおりです。理由は、取得者より処分者のほうが保護されなくてよい理由はないということと、諸外国の法制とのバランスということであります。

第2点としてお願いしたいことは、発行者以外の者の民事責任規定にも損害額の推定規定を置くということです。平成16年の改正に向けた金融審議会の第一部会の報告書は、発行者の責任に限定して損害額の推定規定を設けるよう提案していたのではありません。一般的に損害額の推定規定を設けるよう提案していました。それが現在設けられていないということから、理論的にも虚偽記載と因果関係のある損害の額が問題となっているのに、被告が誰であるかによって賠償額が違ってきてしまうというおかしな事態になっていますし、実務上も、裁判所もこの場合には推定規定を使えないので違った額を認定せざるを得ないという状況になっているようであります。こういった不都合を解消するために推定規定を置いていただきたいと考えております。

それとの関係で、処分者にも請求権を与えるけれども、損害の推定規定を設けないという事務局の提案について、私からコメントさせていただきたいと思います。まず、現在の推定規定では、公表前1年以内に有価証券を取得した者に推定規定の利用権限があります。これが処分者については技術的にできないかというと、同じように考えると、公表前1年以内に処分をした者に損害額の推定規定の援用を認め、さらに言えば、公表日において有価証券を保有していないことを要件にすれば足りるのではないかと思います。

それから、逆粉飾の場合には、株価が仮に上昇したとしても、それは逆粉飾が明らかになったことによるものと言いがたいのではないかということが理由にあげられています。確かに虚偽記載を行ったということが明らかになりますので、信用毀損とか課徴金の賦課等によってその分だけ株価は下落すると考えられます。しかし、仮に株価が上昇した場合に、その上昇分に逆粉飾が明らかになったことによる部分が含まれているということは言えるのではないか。そうすると、その部分についてはせめて推定を与えてあげて、それを超える損害を被ったと主張するような者については、原則どおり立証責任を負わせるという形で調整を図ればよいのではないかと考えます。

通常の粉飾の際に株式を取得した者と比べて、実際の損害額と近似している蓋然性に違いがあるのかどうかということを考えてみますと、これは実際の損害額をどう捉えるかということとも関連する問題なのですが、粉飾のケースでも、それが明らかになると信用が毀損されたり、課徴金を課されたりして、株価が過剰にという表現が適切かどうかわかりませんけれども、より大きく下落する現象が見られるわけですね。それが逆方向に働いているというだけでありますので、通常の粉飾の場合であっても、本来の損害額よりも多くの下落が生じていると見ることもできるわけでありまして、粉飾と逆粉飾の間で実際の損害額との近似性に違いがあるかという点については、私は疑問に思っております。

○神田座長

どうもありがとうございました。

武井委員、どうぞ。

○武井委員

ありがとうございます、何度も申し訳ありません、最後に一言だけ。永沢委員のご発言にございましたこの8年間で何が変わったのかという点ですが、そもそも無過失責任というのは、ミスがなくてもお金を払わなきゃいけないという世界であって、不法行為責任の世界の中ではきわめて稀有な例外なのです。不法行為法の世界ではあくまで過失責任が基本であって、何か会社が過失をあったら依然として投資家は十分に救済されるわけです。しかも立証責任の転換まで今回の提案では手当てするわけですので、今回の改正を行っても、投資家側からすると何ら過失を立証しなくても良いという点で変わりありません。今回の法改正をしたからと言って投資家保護に欠ける話ではありません。むしろこの手段が抱えている構造的欠陥を考えると、欧米がこの制度の射程を詐欺責任に限定している中で日本の無過失責任が正しい、維持すべきだというのは私はおかしいと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

黒沼委員のご発言の点に関連して、事務局からお願いします。

○油布企業開示課長

黒沼委員からご提出のありましたご意見書の2枚目の2ポツの部分について、私どもの考え方を申し上げさせていただきたいと思います。

平成16年の証取法改正の際の経緯につきましては黒沼委員おっしゃるとおりでございまして、当時、金融庁といたしましては、一般的に損害額の推定規定を置くという方向で、報告書の提言を踏まえまして、そういう方向で具体的な法制化作業を始めたということでございます。ただ、政府部内におきまして、内閣提出法案ということで、条文を個々に検討審議するという段階になりましたときに、次のような指摘を受けたわけでございます。つまり、提出会社に関しては、自社の経営状況とか業界の状況ですとか、証券価格の変動予想となり得る事情などを確かによく把握していると考えられる。このため、損害額の推定規定を置いて、因果関係や金額の立証責任を転換するということには合理性があるにせよ、提出会社以外の者はこうした事情を必ずしも把握しているとは限らないのに、提出会社以外の者にまで立証責任を転換する、推定規定を置くことによってそういう効果をもたらすということは適切ではないのではないかという旨の指摘があったということであります。この指摘を受けまして、再度金融庁で検討した結果、損害額の推定規定が例外的な規定であるということも背後にございまして、当時、役員などのほうについては損害額の推定規定の導入を見送ったということでございます。

この点について、現時点で私どもは、この役員にどこまで立証責任を負わせるかということはいろいろご意見がございまして、現時点で結論の方向性に関する意見を持ち合わせてはおりません。ただ、平成16年に改正をしようと思ったときに、その法制化の作業の過程で指摘された点は現在でも基本的に当てはまる状況にあると考えられまして、当時受けた指摘を覆すような特段の事情が見当たらないという中で、本ワーキング・グループはリスクマネーの供給等を議論するというワーキングでもございますが、その中で、この論点を議論いただく必然性はあまり見出せなかったということで、事務方としては今回の論点からは外させていただいたということでございます。

ただ、黒沼委員ご指摘のこの点につきましては、我々事務方として、中長期的な検討課題としてよく勉強してまいりたいと思っております。

○神田座長

では、大崎委員、上柳委員の順で。

○大崎委員

今の点についてなんですけれども、私はどうも、発行者である会社自身と役員や公認会計士、監査法人で推定に対しての反論ができるかどうかということに大きな違いがあるかどうかというのはちょっと疑問だと思っておりまして、明らかに虚偽記載と因果関係がないものを証明すればいいということなんだろうと思いますので、ということであれば、普通考えられるのは、急激な市場の大幅な変動とか、そんなことじゃないかと思うんですよね。要するに、あの日はブラックマンデーの日じゃないかというような、これを証明するのに会社の内部の情報にものすごく精通していないといかんかというのはやや疑問でありますし、特に役員に関しては、特に現任の役員であれば会社の中でいろいろ情報も収集できると思うので、あまりそこを区別する必要はないのかなと思います。

それから、リスクマネーの話と結びつくかどうかというので項目を細かく区別するのは、私はあまりよくないんじゃないかなと。直すべきことはこの機に、別にそれがリスクマネーとどこまで関係があるかということをあまり言わず、ぜひ変えたほうがいいんじゃないかなと思います。

○神田座長

ありがとうございます。

上柳委員、どうぞ。

○上柳委員

提出会社の役員さんたちの実情については、今、大崎さんが言われたとおりではないかと思うんですが、平成15年なり16年の立法のときは、もちろんいろいろな理屈はあったとは思うんですけれども、無過失責任のところであるとか推定規定というのは、少しずつ増やしていこうよというようなことだったような気がして、一歩ずつやりましょうということで皆さん了解されたのではないかと記憶をしています。ですので、今改めてきちんと考えるということでよいのではないかということと、これも前提の問題ですけれども、提出会社は無過失責任ですけれども、役員さんたちは立証責任が転換されておりますけれども過失責任ですので、そこで区別がされていると思います。

さらにくどいですが、黒沼委員のペーパーの1つ目の処分者のほうも、やはり今、取引というのは売りも買いもセットで見ると。単なる売却者だけではなくて、取引をした人についての平仄が合うようにすべきだと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

吉野会長、どうぞ。

○吉野金融審議会会長

推定規定の損害と逆粉飾の場合、非対称性に見えますけれども、経済学からいけば、株価の変動要因はいろいろありまして、例えばその中の1つに経常収益などの変数があるわけですが、粉飾の場合にはそこの変数が多分大分違って出ていると。そこに係数を掛けると、株価がどれくらい上昇したかというのは一応推計できますから、そうすると、逆粉飾の場合だって、将来の課徴金まで入れると将来の収益が減るわけで、それの現在価値を考えれば、理論的にいけば株価の下落率がどれくらいかというのは出すことができるような気がしまして、別にどちらからといって非対称ということはないような気がします。

それから、我々経済学から見れば、ある日突然下落したときも、例えばちょうどその時期が円安に動いていた、あるいは円高に動いていた、その要因だってあるわけで、そうすると、その幅でほんとうにいいかというと、本来はそれを全部計量分析して、どれくらいの割合かというのを見る必要があるような気がしました。

○神田座長

どうも大変ありがとうございました。

実は本日は、もう一つテーマがありまして、まだ皆様方、ご議論が尽きないところかとは思うのですけれども、恐縮ですが、もしよろしければ次のテーマに進ませていただきたいと思います。

本日の2つ目のテーマにつきましては、立法政策としてもご意見が分かれ得る問題であり、また、法律論としても意見が分かれ得る、その意味では難問であると思います。そして、本日、皆様方の中でも現にご意見は分かれて、ここで集約することはできないと思います。

ただ、それぞれのご意見を述べられ方の論拠はしっかりしておられたと思いますので、今後、事務局と私とで改めて検討させていただいて、いずれこのワーキング・グループの報告書を取りまとめさせていただかなければいけませんので、その案を検討させていただく段階で、必要に応じてまた追加のご議論をお願いするということにさせていただきたいと思います。

なお、時間の関係で、本日十分にご発言いただけなかった方もいらっしゃると思いますので、大変恐縮ですけれども、事後で結構ですので、ぜひ皆様方のご意見を事務局のほうにお寄せいただければと思います。どうもありがとうございます。

それでは、大変恐縮ですけれども、もう一つのテーマに進ませていただきます。

第二種金融商品取引業協会からのヒアリングということでございます。事務局長の島村さんからお話をいただけるということで、20分以内程度ということで、若干延長になるかもしれませんが、できれば簡潔にお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

○島村事務局長

二種業協会の島村でございます。よろしくお願いいたします。

お手元資料3で、ポイントについて説明をさせていただきます。若干飛ばし飛ばしのご説明になりますが、ご容赦いただきたいと思います。

まず、1枚おめくりをいただきますと、本協会の概要ということでございまして、名称はこのとおりでございますとともに、所在地は中央区日本橋茅場町にございます。目的、業務は、金商法上の趣旨を踏まえて、二種業の公正かつ円滑な発展と投資者保護、こういったことを念頭に置いて規定させていただいております。会員は正会員33社で、この正会員が自主規制に服する会員という形になっております。賛助会員1社は自主規制に服さない、賛助していただくというお立場での会員というステータスでございます。

1枚おめくりをいただきますと、協会の設立の経緯でございます。中ほどに平成19年9月金融商品取引法の施行というのがございますが、このときには、まだ、私ども協会がございませんでした。その19年から3年弱たったときに日証協において二種業についての自主規制が必要ではないかということで、自主規制機関の設立をしてはどうかという提言が取りまとめられております。次に4ページ目でございますが、協会の設立自体は平成22年11月です。このときは正会員24社でスタートさせていただいております。それと前後する形で、上のほうでございますが、同年10月に証券取引等監視委員会様からファンド販売業者に対する検査結果が出されておりまして、35入った先のうちの7割で法令違反等の事実があったということで、協会ができるということで、そこに期待をしているというような報告も出されております。

そして、23年6月に金商法上の認定協会としての認定をいただいたという状況でございます。

続きまして、5ページでございます。これは現在の金商業者の業登録の状況でございまして、金融庁のホームページから抜粋したものでございます。第一種業、第二種業、投資助言・代理、そして投資運用業ということで、全部で業登録は2,079社でございまして、このうち第二種業は中ほどですが、1,269社でございます。内訳でございますが、実はホームページのないような業者様もあるものですので、なかなか把握し切れていないのが実態でございますが、私どものほうで計算している内容では、証券会社様が約110社ほど、投信委託会社様が50社ほど、これは直販をやったりするという関係かと思います。あと、ベンチャーキャピタル系が10社、リース系が10社、競走馬ファンドが42社となっております。そして、不動産会社、こちらが一番数が多くて600社ほど、もっとあるのかもしれませんが、これぐらいの感じになっております。残りは約400社様ぐらいですが、二種専業か兼業をやっていらっしゃるような会社様、こういった内訳ではないかと考えております。

1枚おめくりをいただきますと、私どもの正会員の実態でございますけれども、設立当初は24社からスタートいたしまして、現在33社でございます。1,269社で単純計算をいたしますと、2.6%の加入率という状況でございます。主に二種をやっていらっしゃる会社様が7社でございまして、この中では例えば一番上、ミュージックセキュリティーズ様のような復興支援ファンドや地域活性化ファンドを扱っているような会社様ですとか、ジャフコや大和企業投資様のようなベンチャーキャピタル系の会社様、こういったところもございます。そのほかは商品先物会社様、一番数が多いのが証券会社様でして17社でございまして、登録金融機関も3行入っていただいております。こういう状況でございます。

続きまして、7ページでございます。加入率が大変低いということで、以前もご指摘をいただいていまして、協会としての加入の増加の取り組みをまとめたのがこちらでございます。過去3回、7月から8月にかけまして、全ての二種業者に対して事業報告書やアンケートなどをお送りさせていただいて、周知や入会勧奨を実施したりですとか、過去、昨年度を中心といたしまして、東京、大阪、名古屋、福岡などで、それぞれ行政当局とも連携をさせていただきながら講演会をいたしまして、入会勧奨、入会してくださいという直接的な言葉で働きかけもさせていただいております。また、随時、個別訪問をして入会のお話をしたり、個別の業界、信託協会様でございますとか、JRAのようなところにも回って説明もさせていただいております。また、今年度は、ファンドの扱いの多い会社様を中心にさらに個別の訪問をしておりますけれども、残念ながら今年度は、まだ入会はゼロ社という状況でございます。

8ページでございます。今年8月には入会パンフレットも作成して、全ての二種業者様にお送りさせていただいたり、また、各財務局様にもご協力をいただきまして、新規で二種業登録をした会社にもそういったものを提供していただくというご協力もいただいております。今日は資料参照はお持ちしておりませんので、ここは削除ということでお願いいたします。

また、会員を増やす取り組みの1つといたしまして、研修の充実というのが大きな点だと考えておりまして、私ども、これまでも内部管理統括責任者研修や営業責任者研修、内部管理責任者研修などを行うとともに、反社排除の研修などもやっております。こういった研修に加えまして、今年は利益相反の研修ですとか、法定帳簿・社内諸規程整備の研修、また、FATCA対応の研修などもやっていこうと考えております。また、次の投資型クラウドファンディングの推進ということでございますが、協会の中に検討会合を設置いたしまして、こちらで、金融審議会ワーキングでの議論をフォローするとともに、必要な対応を検討中でございます。また、匿名組合契約書や前書面等の準備もしておりまして、適切な対応に努めていきたいと考えております。また、反社排除に向けた取り組みの支援もさらに拡充していきたいと考えております。

続きまして、9ページでございますが、私どもの自主規制の範囲と法令上の業種との区分を簡単に書いたものが色つきの絵の表でございます。一番左上から第一種業、第二種業、投資運用、助言業と4つのカテゴリーに分かれておりますが、中ほどの青い濃い3つのところが私どもの自主規制の守備範囲とさせていただいておりまして、金商法施行時にはここが抜けていたという状況でございまして、ここで全ての穴が埋まっているという絵でございます。

10ページの説明は飛ばさせていただきますが、法律上の自主規制の規定の部分を書いたのがこちらでございます。

そして、11ページは私どもの協会組織を書いておりまして、これも後ほどご高覧をいただければと考えております。

12ページ目は正会員、賛助会員、後援会員のステータスでございます。正会員がいわゆる自主規制の規制に服するということで私どもは規則を定めておりまして、入会金100万円、年会費50万円、こういった基準で会費をいただいております。賛助会員、後援会員のところは説明を割愛させていただきます。

13ページでございますが、私どもの自主規制規則でございます。13ページをご覧いただきますと、自主規制規則が8本ございます。広告の表示、景品類の提供の規則ですとか、投資勧誘、顧客管理、また、内部管理統括責任者等の規則、また、処分規則や監査、苦情処理、反社排除、個人情報保護、こういった規則でございますが、これらの規則は既存の自主規制機関の規則を参考にしながら、総則的な項目を中心につくらせていただいて、現在運営している状況でございます。

14ページと15ページはその規則の主な内容を書かせていただいておりまして、こちらは後ほどご覧をいただければと考えております。

16ページ、17ページでございますが、これが現在の協会の取り組みということでございます。先ほどと重複するところもございますけれども、1番目のポツでございますが、法令遵守や教育研修の実施が大変大事だと認識しております。真ん中の矢印のところでございますが、今年度もさらに研修をしていきたいと思っておりまして、7月にも利益相反管理の研修を実施させていただきました。また、研修用のテキストも作成して正会員に配付をさせていただいたりしております。また、今年度、私ども、まだ監査に出向くというのが、職員の人数の関係上、なかなか難しいものがございますので、監査にかわる前段階の措置といたしまして、自己点検報告書制度というものを始めておりまして、今年が2年目になっております。これによって、法令、監督指針、検査マニュアル、自主規制規則、こういったものの遵守状況を報告していただくという制度を始めておりまして、今年2年目で大体一巡したという状況でございます。これは来週にも実施をしようと考えておるところでございます。

また、17ページをご覧いただきますと、正会員へのご支援ということでございまして、1つ目の矢印でございますが、反社勢力の疑いがある者の照会の受付を実施して確認をするという業務もしております。これは東京都にあります暴力団追放運動推進都民センター、通称、暴追都民センターというところの賛助会員になっておりまして、そこから情報をいただき、必要な正会員に対して照会に応じているというサービスを行っております。また、反社排除のマニュアルのようなものもつくりまして、これも正会員にご通知をしたりですとか、コンプライアンス相談室というものを開設いたしまして、外部の弁護士事務所のご協力のもと、コンプライアンス相談を受けております。また、税務相談につきましても、専門の税理士の先生にお願いしてやらせていただいております。

また、日本再興戦略のクラウドファンディング対応ということで、先ほども申し上げましたが、協会で検討しておりまして、今後、自主規制などの検討もしていきたいと考えております。

また、正会員や関係団体との意思疎通の促進や要望等への取り組みということで、規制緩和対応ですとか、法令改正時のパブコメ対応、また、さまざまな法令改正等が出たときには、それを通知するということで、18ページをご覧いただきますと、こちらはその一部でございますけれども、正会員向けにいろいろな情報の発出をしています。知らないうちに法令違反がないようにという趣旨で、タイムリーにご通知させていただいているという状況でございまして、現在このような取り組みをさせていただいているところでございます。

私からの説明は以上でございます。

○神田座長

どうも時間が限られている中で、大変要領のよいご説明をいただきまして、ありがとうございました。

それでは、委員の皆様方から、今のご説明につきまして、ご質問、ご意見等があればお出しいただきたいと思います。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございました。二種協会として非常に頑張っておられるということはよくわかるんですけれども、他方で、二種業者のうち3%未満しか入っていないというのは非常に嘆かわしい事態で、しかも専業は7社しか入っていないということで、これは独禁法との兼ね合いとかいろいろ議論があることは百も承知で申し上げるんですが、何かの形で加入の強制に近い制度をつくって誘導していかなきゃいけないんじゃないかと強く思います。

もともと自主規制というのは、私は、ほんとうの意味の自由につくられた団体でルールをつくるということではなくて、むしろ税金の投入をして行政が直接やるというところまではしないけれども、しっかりと規制をしてもらうという趣旨で国として設けてやっていくんだということだと思っておりまして、何かこれだと、正直言って、入った人は何やかんやいろいろ言われた上に、年に50万円も取られて損だということになりかねないんで、このような状態は一刻も早く是正しないと。既に幾つか事案も摘発されておりますけれども、どちらかというと登録の受けやすいような業務の種別で登録をして、実質、一種とか二種じゃないとやっちゃいかんことをやっているような悪質な人もおられるわけですよね。そういうのを蔓延させてはいかんので、何とかしなきゃいかんと強く思いました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、永沢委員、それから上柳委員。

○永沢委員

本日はご説明ありがとうございました。私はこの点は大崎委員のご意見に同じでございまして、一生懸命取り組んでいただいていることもよくわかりましたし、14ページ以降のところで自主規制規則づくりなどにもきちっと取り組んでおられることも分かりました。二種業者の方々にもっと加入いただいて、広告などについてもきちんと自主規制を作ってそれを遵守していただければ、多くの問題はかなり解決できるのではないかという感想を持ちました。

今の財政状況は、33社が50万円ずつ毎年払っているということから、大体推測はできるわけですが、今回のワーキング・グループで予定されているような自主規制機関としての役割を果たすとなると、大体どれぐらいの規模のものが必要とされるのでしょうか。

第一種は日本証券業協会が自主規制機関としての実績を積んでおられるので、ご意見も少しいただけたらと思います

○島村事務局長

正直わからないというところが実はございまして、今は予算規模で申し上げますと、五、六千万ぐらいの年間予算でやらせていただいております。ただ、日証協の支援のもとでやっているという前提がございます。会員が増えていけば、当然、会費収入も増えるんですが、そうすると、それに応じて業務も増えていって、職員も増やさなければいけないという流れになると思いますので、会員を増やすことがそもそものスタートラインだと思っております。その会員規模と収入に見合って、どういった業務をやっていくのかというところをはかっていかなければいけないと認識しておりまして、なかなか数字で幾らというのは、正直まだ申し上げられる状況ではございません。

○永沢委員

平田委員には大変恐縮なんですが、例えば第一種で自主規制機関として業務をなさっていますが、お金のことはちょっとおいて、大体最低限、どれぐらいの人数の人が必要というふうに、もちろん検査しなくてはいけないところが必要と思いますが、人数は別として、どれぐらいの方が自主規制機関のお仕事をされているのかということを、会員数とお知らせいただけると、と思いますが。

○平田委員

現在、日本証券業協会におきましては、証券会社と登録金融機関業務を行っている金融機関とをあわせて概ね500社程度、協会員として加入している状況で、それに対して、職員数が約350名という状況でございます。これで足りているかというと、決して足りているという状況ではなく、特に協会員の監査を行う人員については、証券取引等監視委員会が相当数スタッフをそろえているのに対して、日証協は50名程度しかいない状況でございます。当然ながら、取引所の取引参加者である会員に関しては、取引所と合同検査を行っていますけれども、正直言うと、現在の日証協の規模でもスタッフは足りている状況ではないと思っております。

○神田座長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

どのぐらいの規模が必要かもともかくとして、今の島村さんのご説明にもあったように、一種業者が二種業のための協会を支えているという非常に不正常な状態になっているというのは大問題だと思うんですね。一種業者の人たちからすれば、ある意味、二種業者が悪いレピュテーションを広げていくのを防止するために一種業者が何か負担するのは当然だと言われたら、そんなのだったら二種業なんか禁止してしまえぐらいのことなんじゃないかと正直思いまして、国が出しているというんだったらわかるんですけれども、一種業が負担しているというのは全く理解できない状態だと私は思います。

○神田座長

議論は尽きないところなのですが、あと、上柳委員と原田委員からお手が挙がっておりますので、上柳委員からでいいですかね、すみません。

○上柳委員

質問2つで、今、実際、職員の方が何名いらっしゃるのかということと、苦情解決あっせんの関係で、二種業者の方でFINMACに加盟している数がわかれば教えてください。

○島村事務局長

今、職員5名、これは前の資料にもございました。

FINMACの利用は、私も正確な数字はわからないんですが、1,000社ぐらいだと思いまして、私どもの協会に入っていれば、協会経由でFINMACの利用ができるという流れになっています。FINMACとの間で二種業者様が直接契約を結ぶ個別利用登録という世界もございますので、そちらが1,000社様ぐらいだと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

原田委員、どうぞ。

○原田委員

すみません。今、上柳委員がご質問なさったことと全く同じでして、ですので、もうお答えいただく必要はないかと思います。予算規模や業務内容をお聞きしましたし、クラウドファンディングの研究会も立ち上げていらっしゃることを聞いていますので、何人ぐらいの職員数でやっていらっしゃるのかというのが聞きたかった点になります。結構です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

予定の時間は過ぎているのですけれども、もしさらにご発言があれば承りますけれども、いかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。

3つ目のテーマも非常に難しいテーマですけれども、いろいろ貴重なご指摘をいただきまして大変ありがとうございました。

繰り返しになりますが、追加でのご意見、ご要望等がございましたら、ぜひ事務局までメール等でお寄せいただきますよう、よろしくお願いいたします。

それでは、本日はこれまでとさせていただきます。

次回ですけれども、新たなグリーンシート銘柄制度に関する日本証券業協会における検討状況、それから、10月23日でしたかにようやく公表されましたアメリカのSECの規則案等がございまして、大量のものなのですけれども、それらを踏まえて、クラウドファンディングにおける体制整備に関する検討、つまりこれまでのご審議においてさらにご検討をお願いしたいとされていた事項につき、ご議論をお願いしたいと思います。

そして、その後は、報告書も取りまとめの時期に入っていきますので、そういうことも委員の皆様方には意識しながら、引き続き積極的なご審議をお願いできればと思います。

それでは、最後に、事務局からご連絡等ございましたらお願いいたします。

○油布企業開示課長

次回のワーキング・グループの日程でございます。後日事務局からもご案内いたしますが、11月29日金曜日の10時からとさせていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○神田座長

それでは、また来週お会いするということになりますけれども、本日は以上をもちまして散会いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課・企業開示課(内線2638、3665)

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