金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第15回)議事録

日時:平成19年12月19日(水)10時03分~11時35分

場所:中央合同庁舎4号館9階 金融庁特別会議室

○池尾座長

それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから、我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ、第15回会合を開催いたしたいと思います。皆様には本日はご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

本日の議事ですが、公開という形で行わせて頂いております。

本日は山本副大臣、戸井田政務官にお越し頂いております。渡辺大臣もご公務の都合がつきましたら、来られる可能性があるということです。山本副大臣、何かよろしいですか。

それでは、本日の会合は、本年6月に中間論点整理を公表した後、約半年ぶりということですが、この間、当スタディグループのメンバーに異動がございましたので、まずその点を池田市場課長からご紹介して頂きます。

○池田市場課長

市場課長の池田でございます。メンバーの交代をご紹介させて頂きます。

この10月に立岡登與次メンバーが退任をされまして、鴇田和彦メンバーが就任されておられます。よろしくお願いいたします。

また、事務局の方にも異動がございましたけれども、時間の関係上、お手元に配付させて頂いております配席表をもって紹介にかえさせて頂きたいと思います。

○池尾座長

ありがとうございました。

それでは、本日の議事に入らせて頂きたいと思いますが、当スタディグループは春に精力的な審議をして頂きまして、本年6月に中間論点整理を公表して、我が国金融・資本市場の競争力強化のための提言をしたわけですが、本日は、その後の半年間に金融庁において取り組まれてきた各事項について事務局から説明して頂いて、討議をして頂きたいということで、いわばフォローアップのために久しぶりにお集まり頂いたということです。

取組みの内容についてこれからご紹介頂きますが、全部で8項目ぐらいあるそうですので、それを順次ご紹介頂きたいと思います。

それでは、まず、金融審議会金融分科会第一部会及びその下に設置されておりました法制ワーキング・グループにおける審議の結果について、ご説明を頂きたいと思います。それでは、お願いします。

○池田市場課長

それでは、引き続きまして、市場課長の池田からご説明させて頂きます。

お手元に資料1としまして、第一部会における審議結果について、資料を配付させて頂いております。

第一部会では、このスタディグループの中間論点整理で指摘を頂きました事項のうち、特に法制度面での対応が必要となる事項につきまして検討するということで、10月以降、9回にわたり審議を重ねまして、昨日、その報告書を取りまとめ、公表させて頂いたところでございます。報告書自体もお配りさせて頂いておりますが、概要の紙を事務局の責任で作成させて頂いております。このA3の紙に沿いましてポイントをご説明させて頂きたいと思います。

この第一部会報告では、大きく4つのテーマ、これはいずれも論点整理の中でご指摘を頂いていたテーマでございますが、1つは取引所における取扱商品の多様化、2番目にプロに限定した取引の活発化、それから右側でございますが、銀行・証券間のファイアーウォール規制の見直し、それから課徴金制度の見直し、大きくこの4つの問題について審議をしてまいりました。

まず、取引所における取扱商品の多様化でございますが、これにつきましては、大きく2つ、いずれも法制度面での手当てを要する事柄となりますが、提言を頂いているところでございます。

1つはETFの多様化ということでございます。報告書では、ETFは簡便で効果的な分散投資を可能とする投資手段と位置付けられておりまして、これが多様な形で組成できるような制度的な手当てを行うということで、これを通じて、株式・債券、金融デリバティブから商品デリバティブまで幅広い投資を可能にしていこうという考えでございます。

また、こうしたETFに商品、あるいは商品デリバティブを組み込むといった商品設計等を通じて金融商品取引所と商品取引所の協力関係が深まっていくということが期待される中で、さらに金融商品取引所と商品取引所の相互乗入れを可能としていくような制度整備をすべきであるという提言を頂いております。ご案内のとおり、国際的には、取引所の資本提携を通じたグループ化等が進展しておりまして、我が国でもこうした取引所間のグループ化等を可能にすることにより、幅広い品揃えが可能になるという指摘でございます。

具体的には、下のポツにありますように、金融商品及び金融取引は金融商品取引法で規制し、商品デリバティブ取引は商品取引所法で規制するという枠組みの下、取引所の資本提携等を通じた、相互参入を可能にするような法整備、これは金融商品取引法だけではなく、商品取引所法の改正なども必要になる事柄でございますが、こうしたことを可能にしていくということが提言されているところでございます。

プロに限定した取引の活発化につきましては、一つは現行のプロ私募を活用した枠組みとして、現在の適格機関投資家を対象としたプロ私募制度と、PTSの仕組みを組み合わせることによって、プロ向けの取引の活発化の展開があるのではないかといったご提言とあわせまして、(2)でございますが、こうした枠組みに加えて、取引参加者を特定投資家まで拡大し、新たなプロ向け取引所市場制度を創設するということが提言されております。

このプロ向けの取引所市場の下では、直接の参加者はプロに限定されるということになりますので、現在の法律に基づきます開示規制の適用は免除し、法律では、例えば企業内容等に関する年1回以上の情報提供を求めるといった基本的な規定にとどめ、その他の具体的な内容は取引所が自主的に設計できるというような枠組みにしていくということが、あわせて提言されているところでございます。

右側に移りまして、ファイアーウォール規制の見直しについてでございますが、この枠のところでございますが、この規制が本来の目的としております利益相反による弊害、あるいは銀行等による優越的地位の濫用の防止については、その実効性を確保しつつ、顧客利便の向上や金融グループの統合的内部管理の要請に応えていくために、新たな規制の枠組みを提供するという考え方に立ちまして、下に4つのポツがありますが、証券会社、銀行等に利益相反管理態勢の整備を義務付け、また、銀行等の優越的地位を不当に利用した勧誘を禁止する。一方で、現在の役職員の兼職規制については撤廃し、顧客情報の共有の制限についても緩和していくことが提言されております。

具体的には、個人顧客の情報につきましては現在のオプトイン、事前同意の枠組みを維持しつつ、法人顧客の情報については現在の事前同意の形を改め、オプトアウトの形に変えていくことが提言されております。また、内部管理目的での情報共有につきましては、当局の事前承認があれば顧客の同意なしに情報共有が可能とされておりますが、この事前承認は不要とし、仮に内部管理目的で共有されているものが目的外に使われるということがあれば、それは事後チェックという形で捉えていくといったことが提言されているところでございます。

III .の課徴金制度の見直しにつきまして、先ほど池尾部会長からありましたように、第一部会の下に置かれました法制ワーキング・グループの報告に基づいて提言がされてございますので、これにつきましては、増田室長から引き続いてご説明させて頂きます。

○増田市場機能強化法令準備室長

増田でございます。それでは、課徴金の見直しについて、ご説明申し上げます。

課徴金制度の見直しにつきましては、当スタディグループの論点整理の中でも7ページに、「課徴金制度の見直し」として、市場の公正性・透明性の一層の向上を図り、より実効的な抑止効果をもたらす観点から、これまでの実施状況も踏まえ、課徴金制度のあり方について見直す必要がある、ということで、19年内を目途に結論を得るべきとされていたところでございます。これを受けまして、金融審議会の第一部会の下に法制ワーキング・グループを設置し、そこで議論をして頂いて、その報告書の概要が、資料2を1枚めくって頂いた報告書概要でございます。

内容を簡単に紹介いたします。2.の課徴金の対象範囲と金額水準のところから説明いたしますと、まず、不公正取引の(1)インサイダー取引でございますが、インサイダー取引については、これまで2年余りの間に22件の課徴金の発動実績があるわけですが、これらの事案を見ると、課徴金が実際の利得を下回る事例が多く見られた。現行のインサイダー取引に係る課徴金は、重要事実の公表日の翌日の終値の株価を基準に算定するということになっておりまして、重要事実が株価に織り込まれていくには、翌日以降もある程度時間がかかるというようなこともあって、なかなか利得がちゃんとつかまえられていないのではないかと指摘がありました。こうした指摘を踏まえて、違反抑止の実効性確保の観点から課徴金の水準を引き上げるべきだと指摘されております。

次の(2)相場操縦と(3)風説の流布・偽計についても、1点目として、課徴金の水準の引き上げの指摘がございました。相場操縦につきましては、相場操縦に係る違反行為というのは、現行、相場を変動させるという類型のほかに、例えば相場を一定の水準に固定(くぎ付け)するという、いわゆる安定操作取引と言われているもの、あるいは仮装売買、馴れ合い売買という、取引を活発に見せかけるといった行為が禁止行為とされているわけですが、現行、相場変動のみが課徴金の対象になっており、他の類型についても課徴金の対象とすべきとされております。

ちょっと飛びまして、次、開示規制の関係でございます。開示規制につきましては、現行、発行開示、及び継続開示書類の虚偽記載のみが課徴金の対象となっております。ワーキング・グループの報告書では、1点目、この2つの虚偽記載の類型については、課徴金の水準を引き上げるということが指摘されております。それと同時に、継続開示書類につきましては、現行、対象となる年度が同一の継続開示書類複数について虚偽の記載があった場合には課徴金の額を調整するという規定がございまして、その結果、例えば最初に有価証券報告書に虚偽記載があり、その後出された訂正報告書において再度虚偽記載があったような場合でも、課徴金の額が追加されないという状況になっていまして、これは改善すべきであるという指摘を頂いております。

1枚めくって頂いて、次に、新たに課徴金の対象に加えるべきとされたものですが、発行開示書類及び継続開示書類は、現行の虚偽記載にあわせて、これを不提出、提出しなかった場合についても課徴金の対象とすべきであるとされております。さらに、公開買付届出書あるいは大量保有報告書については、現行、課徴金の対象になっていないわけですが、これらの書類の虚偽記載、不提出についても課徴金の対象とすべきとされております。

課徴金制度に対するその他の論点としていたしましては、(1)課徴金の加算・減算が指摘されております。具体的には、加算としては、一度課徴金納付命令を受けた者が再び違反行為をした場合といった場合には、加算してより多くの課徴金を課す必要があるのではないかと指摘されております。

一方、社内のコンプライアンス体制を確立させる、あるいはそういった行為を促すといった観点から、企業がみずから違反行為を発見して、自己申告したような場合については減算という措置を設けて、そういう取組みのインセンティブを与えるべきであるとされております。

(2)除斥期間についてですが、課徴金納付命令の発出に至るまでには、監視委員会が事件の端緒をつかんで調査をして、証拠固めをして勧告をして、その後審判手続をして、課徴金納付命令を発出するという一連の手続を経ることとなります。違反行為があってから審判手続開始まで、3年を経過した事件については審判開始手続ができないという現行のルールになっておりまして、古い事件については課徴金の納付命令を発出できないこととされております。この期間、3年というのが、事件が発覚するまでの期間及び調査に必要な期間を考えるとかなり短いということで、これを延長すべきとされております。

概要は以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、引き続きまして、次は金融審議会金融分科会第二部会における審議結果につきまして、ご説明お願いします。

○遠藤信用制度参事官

信用制度参事官の遠藤でございます。資料3に基づきまして、金融審議会金融分科会第二部会の審議結果について、簡単に概要をご説明させて頂きたいと思います。資料3、表ページを1枚めくって頂きますと、A3の大きな1枚紙がございます。これが概要をまとめた紙でございますので、これに基づいて説明させて頂きたいと思います。

第二部会においては、主に銀行・保険会社グループの業務範囲の拡大について議論いたしました。その趣旨は、このA3の紙の左上の四角で囲んだところにありますように、金融サービスの多様化・高度化等に伴い、銀行・保険会社本体の経営の健全性の確保に留意しつつ、国際競争力の確保等の観点から、銀行・保険会社グループの業務範囲拡大のための制度的手当てを提言するといったものでございます。

その制度的手当ての一番大きなものでございますけれども、1つ目の矢印にございますように、財務の健全性や的確なリスク管理等、一定の要件を満たす銀行グループの銀行兄弟会社に対して、新たな業務を解禁する枠組みを導入するといったものでございます。これは、現行の銀行法に基づきます業務範囲の規定というものは、銀行本体について、あるいは銀行子会社及び兄弟会社について、限定的な業務範囲の列挙があったわけでございます。特に銀行の子会社と兄弟会社については、法令で同一内容が限定列挙されていたわけでございますけれども、銀行グループとして、そのさまざまな業務に参入していく場合に、子会社と兄弟会社の業務範囲というものを完全に横一列にする必要があるのかと。本体からより遠い兄弟会社について、子会社よりもより拡大した業務範囲を規定しつつ、その新たな業務範囲について、兄弟会社を通じて参入する場合には、その金融機関の経営管理体制であるとか、リスク管理態勢であるとか、財務の健全性というものを個別に認可することによって、新たな業務に機動的に入ってもらうことが国際競争力の確保の観点から必要ではないかといった趣旨に基づいた新たな制度的な手当てでございます。

こういった新たな枠組みを導入しつつ、どのような業務範囲を目指していくのかというのが、この紙の右上の方のマトリックスにございます。幾つかあるわけでございますけれども、まず商品の現物取引について。この商品の現物取引には、今ご説明申し上げました銀行・保険会社の兄弟会社を通じて、個別に許認可の下に一定のリスク管理能力があるものについては、その参入を認めてはどうかといったことでございます。それから、商品のデリバティブ取引に関しては、これは本体も含めて、これまでは差金決済のみ、差金決済を行うことを前提に商品デリバティブを認めていたわけでございますけれども、いろいろなビジネスの実態を勘案しつつ、商品デリバティブについては、現物決済も含めた形で、これを本体、子会社、兄弟会社に解禁しようといったものでございます。

それから、マトリックスの次の欄に「イスラム金融」というのがございます。イスラム金融というのは、実質的には金融取引、与信取引でありますけれども、イスラムの教えにおいては金利(利子)をとってはいけないということで、形式的に見ると、現物取引でありますとか、あるいはリース取引であるといったことで、現在、形式的に着目すると、銀行に認められていない取引になります。

そこで、このイスラム金融というものが銀行に認められるかどうかということが問題になるわけでございますけれども、これについては形式を見るのではなく、実を見ようということでございまして、今回イスラム金融について、本体では解禁はしませんが、子会社あるいは兄弟会社については、イスラム金融を解禁していこうといったことでございます。

それから、排出権取引については、これは既に金融商品取引法のときにかなり規制緩和は進んだわけでございますけれども、銀行・保険会社の本体については、排出権取引の法的性格がまだ不明確であるといったことから、これについては、まだ扱いを認めておりませんでした。しかし、排出権取引に関しては、まさに来年から、この排出権取引、マイナス6%のターゲットイヤーに入りますし、かなり環境整備が急速に進んでいる実態を踏まえまして、これについて、今後の状況を見極めつつ、認める方向で鋭意検討するという形になっております。

リース取引については、現在ファイナンスリースを主たる業務とするリース子会社を認めているわけでございますけれども、このリース子会社の業務の実態を見ますと、リースに伴う不可避的な業務として中古物件の売買・メンテナンスがございます。この中古物件の売買・メンテナンスは、極めて限定された形でこれまで認めていたわけでございますけれども、ここについて要件を緩和し、リース子会社として通常行えるような中古物件の売買・メンテナンスについて、より規制を緩和しようといった方向性をここにまとめます。

それから、マーチャント・バンキング業務。これは一般事業会社の株式というものを、投資目的で保有し、それをキャピタルゲイン狙いで売却するといった業務でございますけれども、このマーチャント・バンキング業務については、マーチャント・バンキング業務にかかる現在の状況というものをもう少し研究しつつ、引き続き検討しようという形になっております。ただし、マーチャント・バンキング業務の中で、現在も一定の政策目的、例えば企業再生でありますとか、地域再生、あるいはベンチャービジネスの育成といったものについて、今の5%の議決権保有制限の例外が現行の規定でもあるわけでございますけれども、この現行の規定を一つの基にして、そういった合理的な政策目的があるものについては、この議決権保有制限の例外措置を拡充していこうといった提言が盛り込まれています。

それから、投資助言・代理業に関しては、これは金融商品取引法において、登録金融機関においては認めているわけでございますけれども、銀行法、保険業法の方の受けの規定がございませんので、この受けの規定を設けることによって、本体において投資助言・代理業務が行えるようにしようといったものでございます。

それから、このマトリックスにはありませんけれども、この一番左下の方の矢印にございます。マネーロンダリングや脱税等の不適正な取引の防止に留意しつつ、外国銀行の業務の代理・媒介制度を導入といったものでございますけれども、これは現行の銀行法は、外国銀行が日本において業務を行うためには、外国銀行の在日支店を置いて免許を得て、業務を行わなければならないということでございまして、銀行法においては、その支店があたかも一つの法的主体のような形でさまざまな銀行法の規定が適用されるというような形になっております。そのために、外国銀行の在日支店でフルラインの商品サービスというものを提供しなければ業務ができないという形になっておりまして、むしろ外国銀行本店の商品というものの代理・媒介というものが行えないような形になってしまっているということです。

これは、やはり実際の外国銀行のいろいろな豊富な金融サービスを日本の市場において提供する上で障害になっているのではないかという問題意識に基づきまして、今回、外国銀行の業務代理・媒介といった概念を銀行法に入れるべく、制度改正を行うべきだというご提言を頂いております。

この紙の右でございますけれども、そういった本体のみならず、子会社あるいは兄弟会社に今まで以上のさまざまな業務を認めるということになりますと、銀証の問題だけでなく、子会社、兄弟会社との間で利益相反の問題が出てまいります。この利益相反の弊害の防止に関しては、先ほど第一部会のご紹介がございましたけれども、第一部会の議論と平仄を合わせた形でこの四角の中にありますような利益相反による弊害、あるいはその優越的地位の濫用の防止の実効性の確保、それから顧客利便の向上や金融グループの統合的内部管理の要請のための規制の枠組みを提供するといったものでございます。

それから、これは保険に特有の話でございますけれども、 III .といたしまして、保険に関する規制緩和についてもご議論頂きました。保険会社の資産別運用比率規制、いわゆる「3:3:2」規制というのがございますが、これについては経営の健全性の確保等に留意しつつ、今後、廃止を含めた見直しを実施というものを提言頂いております。

以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、次は、決済に関する研究会における議論の状況につきまして、ご説明お願いします。

○坂口企画官

企画課調査室の坂口でございます。お手元の資料4に沿いまして、ご説明させて頂きたいと思います。

決済に関する研究会でございますが、本スタディグループの中間論点整理におきましては、11ページの(2)その他の制度インフラ、決済システムというところで、ご提言を頂きました。その3番目のパラグラフでございますけれども、決済システムの強化に向け、関係者が主体的かつ積極的に取り組んでいくことが期待されるとともに、決済システムに関する様々な論点につき、引き続き幅広い観点から専門的な検討を進めていく必要がある、ということでございまして、資料4の1枚目を見て頂きますと、「決済に関する研究会」を設け、検討を進めてきたわけでございます。

「1.開催目的」でございますが、金融・資本市場を支える重要なインフラである決済システムにつきまして、利便性の向上、リスク管理、国際競争力の強化の要請が高まっております。それに加えまして、情報通信技術が進展している中で、新しいサービスが普及・発達してきております。こうした背景を踏まえまして、決済に関し、総合的な幅広い議論を行い論点を整理するために、金融研修センターにおきまして、本研究会を開催したものでございます。

「2.メンバー」でございますが、池尾先生、岩原先生、神田先生を初めとする、ここに記載させて頂いております専門家の先生方にお願いをいたしまして、議論をして頂いたものでございます。

3.の2つ目のマルでございます。平成19年7月以降、12回にわたり研究会を開催いたしまして、昨日でございますが、決済に関する論点の中間的な整理を取りまとめて頂き、公表させて頂いております。報告書本体は黄色い表紙のものでございます。

概要につきまして、次の概要1枚紙でご説明させて頂きたいと思います。左の上にございますのが、決済を巡る環境変化として、先ほど申し上げましたように、ITの進展等による収納代行、ポイント等の普及がございます。それに加えまして、決済に関する新しいサービスへのニーズも高まっております。さらに国際競争力強化に向けた決済インフラの整備の要請がございます。

そうした環境変化を踏まえ、総合的な検討を行うということで、その視点としては3つ挙げております。1つ目が利用者保護、2つ目が決済システムの安全性・効率性・利便性の向上、3つ目がイノベーションの促進でございます。

そうした観点から3つの分野につき議論を頂きまして、具体的には、資金決済(リテール)の分野、もう一つが資金決済(ホールセール)の分野、最後が証券決済の分野でございます。

資金決済(リテール)の分野と申しますのは、先ほど申し上げました新しい決済サービスでございます。こうしたものについて、どのように検討を進めていったらよいのかという枠組みにつきまして、囲ってある中でございますけれども、同様のサービスについては同様の制度整備をする必要があるのではないか、新しいサービスの利用形態・機能に即した検討を進める必要があるのではないかということでございます。

新しい決済サービスの類型といたしましては、資金移動サービス、これは収納代行であるとか、代金引換とか送金サービスのようなものでございます。資金前払サービス、これはプリペイドカードのようなものでございます。この2つに必ずしも類型分けできないその他のものとして、例えばポイントサービスがあるということでございます。こうした新しい決済サービスに関する課題といたしましては、確実な履行を担保する仕組みの問題、預かった資金の保全の問題、多数の事業者が関与するような場合の問題、新しいサービスの提供の促進の問題、電子マネーに関する制度整備、ポイントサービスの位置付けの問題といったような課題があるということでございます。

2つ目の資金決済(ホールセール)でございますが、これは銀行による大口の資金決済です。現状は全銀システムは効率性・安全性という点においては評価される、他方、相互運用性の観点、開発コストの削減、顧客ニーズへの対応等につきましては、改善の余地があるのではないかということでございます。具体的な課題といたしましては、国際化・標準化の問題、顧客ニーズへの対応の問題、資金決済システムの運営等の問題、業務継続体制の問題といったような点を指摘して頂いております。

最後の証券決済でございますが、現状につきましては、平成13年以降、証券決済法制の整備によりまして、有価証券のペーパーレス化が実現しておりますと同時に、DVP、参考のところに書いてございますけれども、証券の引渡しと資金の支払が同時に行われる仕組みですが、すでに実現をしております。

残された課題といたしましては、STP化、これも参考に書いてありますが、注文から決済に至るまでの一連の取引プロセスを人手を介さずにシームレスに行うといったような点が、まだ不十分ではないかということでございます。

2つ目といたしましては、決済期間の短縮化でございまして、現状、株式・国債ともに、Tプラス3でありまして、特に国債につきましては、課題の早期克服に向けた関係者の努力が必要ということでございます。

最後が証券決済システムの運営等ということで、清算・決済機関の業務範囲の問題を検討してはどうかという整理を頂きました。

以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、次は資料5、「金融規制の質的向上(ベター・レギュレーション)」に関する取り組みについてと、資料6、「金融市場戦略チーム」第一次報告書について、この2つに関しましてご説明をお願いします。

○中村監督調査室長

監督調査室長の中村でございます。資料5、「金融規制の質的向上」に関する取り組みについて、まずご説明させて頂きます。スタディグループの中間論点整理におきましても、このベター・レギュレーションを検討課題として掲げて頂きまして、プリンシプル・ベース、ルール・ベースのアプローチですとか、ルールの更なる明確化、対話とか情報発信の重要性、スキルアップの問題、それから海外当局との連携、自主規制機関の役割など、広範なご提言を検討課題として掲げて頂いたと思っております。

私どもも、このベター・レギュレーションという課題、国際競争力を規制環境が左右する状況、それから我が国の金融システムにおいても、金融システムの安定、利用者保護にこれまで取り組んできたところですが、局面が変化しつつあるという認識の下で、非常に重要な課題と考えまして、提言を頂いて以来、さまざまな取り組みを行っておりますし、今後もいろいろな課題に取り組んでいかなければならないと思っております。

資料5の1ページ目をお開き頂きたいと思いますが、金融規制の質的向上として4本の柱というものを掲げさせて頂いております。

まずはルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最適な組み合わせということでございます。ルール・ベースの監督は、詳細なルールを設定しまして、個別事例に適用するというようなアプローチ、プリンシプル・ベースの監督は、主要な原則を示して、それに沿った自主的な取り組みを促すというアプローチと二様に考えられるかと思いますけれども、こうした監督を最適に組み合わせていく。二者択一ではなく、相互補完的であるという認識の下、最適な組み合わせを追求していく必要があると考えておりまして、これまでの取り組みといたしまして、このプリンシプルの共有ということを各金融機関等の間で図っていく必要があるのではないかという考えで、こうした対話を進めるべく意見交換会を開催したということでございます。

それから、2番目ですが、優先課題の早期認識と効果的対応ということで、リスクをフォーカスし、フォワードルッキングな対応をしていくということが重要であると。深刻な問題が潜んでいる分野、それから大きなリスクが顕在化する可能性のある分野をフォワードルッキングに認識し、行政資源を効果的に投入する必要があるということで、後でご説明させて頂きます金融市場戦略チームのサブプライム問題に関する検討といったものは、ある意味でこうしたフォワードルッキングなアプローチの一環とも考えられるかと思いますし、また、重点的・機動的な監督や検査が重要であると考えております。また、この優先課題の早期認識、効果的な対応を図るための態勢整備などにも取り組んでいきたいと考えております。

それから、3番目、金融機関の自助努力の尊重と金融機関へのインセンティブの重視ということで、金融機関の創意工夫の尊重、インセンティブを内包した仕組み、枠組みの導入などに取り組んでいきたい。プリンシプル・ベースの監督というのも、こうした自助努力尊重、金融機関へのインセンティブ重視、こうした流れの中にある一つの取り組みであると考えております。

それから、4番目として、行政対応の透明性・予測可能性の向上ということでございます。さまざまな金融関係法令の英訳ですとか、Q&A、それからノーアクションレター制度改正を行いましたが、これを円滑に実施していく、あるいは情報発信を強化していくという取り組み。これは不断に進める必要があると考えております。また、金融庁のさまざまな監督や規制のあり方に関する意見を金融機関からアンケートで募集するというような取り組みも行っております。

次の2ページ目ですが、当面の5つの取組みということで進めさせて頂いているものとしまして、まず、1番目として金融機関等との対話の充実。先ほど申し上げましたプリンシプルをめぐる対話ですとか、金融機関に対するアンケートなど、対話の充実に努めております。また、情報発信の強化としまして、ウェブサイトの充実ですとか、英文でのさまざまな公表物の公表などを行っております。それから3番目、海外当局との連携強化ということで、ニューヨーク連銀等、海外規制当局との間での定期的な意見交換会といったものをさらに拡充していきたいと考えておりますし、4番目としまして、調査機能の強化による市場動向の的確な把握ということで、各国当局との連携の促進ですとか、庁内での調査機能の強化のための体制整備といったものに取り組んでおります。また、最後、職員の資質向上でございますが、専門性を意識した任用ですとか育成、それから国際機関への出向の拡充など、さまざまな取り組みを行いまして、我々の監督、企画、検査にわたるいろいろな資質、こういったものを高めていく必要があろうと考えております。

以上が金融規制の質的向上を、資料5のご説明とさせて頂きまして、次に資料6、「金融市場戦略チーム」第一次報告書について、ご説明させて頂きます。

この夏以来、国際金融市場で大きな問題となっておりますサブプライムローン問題につきまして、渡辺金融担当大臣の私的懇談会として、金融市場戦略チームが9月に組織されまして、10回にわたり議論をいたしました。11月末に第一次報告書として取りまとめられたところでございます。もちろんこの問題、まだ現在進行中でございますので、途中段階での整理であり、課題の提示ということになりますが、第一次報告書の概要について、1枚紙に即して、簡単にご説明させて頂きます。

上の箱の真ん中をご覧頂きますと、サブプライムローン問題の構図としまして、証券化等の金融技術の普及によりまして、新しい金融仲介のあり方といたしまして、貸し手は市場を通じて、原債権の信用リスクを投資家に分散させるというビジネスモデル、Originate to distribute――今まではOriginate to holdということで、貸し手が債権をホールドしまして、借り手に対するモニタリングを図っていくというビジネスモデルから、Originate to distribute、投資家へ信用リスクを分散させるというようなビジネスモデルが普及していたと。

こうした状況の中で、今回のサブプライムローン問題によりまして、3つの不確実性が市場において顕在化したと考えております。リスクがどこにあるのかわからなくなっている、リスク所在の不確実性。あるいは格付機関のいろいろな問題等もありまして、価格の所在、価格の形成が不確実になっていた。あるいは流動性の問題、流動性の不確実性が生じていたという形で3つの不確実性が顕在化したと。

これに対して、どういった対応が考えられるかと言いますと、上の箱の一番右側ですが、サブプライムローン関連商品に関係する各当事者、下の真ん中にポンチ絵がございますが、この証券化というプロセスにおいてはさまざまな当事者が登場してきまして、関係していくわけです。それぞれの当事者において、さまざまな問題点があったのではないか、これを把握して対応する必要があるのではないかという問題意識。それから2番目のマルですが、今回の問題、1つの金融機関の経営の問題から金融システムに影響が及ぶという問題ではなく、市場発で危機が一気に顕在化するという新たな危機ではないのかという認識のもと、こういった危機にどういった監督体制がとられるべきかと、こういったものを考えていく必要があるという問題意識が2点目でございます。

真ん中の箱、主な問題点と書かせて頂いたのは、上のマルに相当します各当事者にかかる問題点をまとめたものでございます。原債権のリスクについて、それぞれの当事者が適切な情報伝達を行っていたのかどうかというのが一番上のマル。次に、証券化商品の組成において、すべてのリスクを転売するというような形で投資家へ安易な信用リスクの移転が行われていたのではないかというのが2番目の問題点。3番目としまして、格付会社の問題。利益相反ですとか、モデルの問題、それから格付情報の意義をきっちり投資家に誤解を与えないように説明できていたかという問題。それから4番目として、投資家たる金融機関を含む投資家において、適切なリスク管理やディスクロージャーがなされていたかというような、それぞれの当事者の問題が指摘できるのではないかということで、こうした課題に対する対応として、2つ分けて書かせて頂きました。

一つは、グローバルな視点から国際的にこの問題についてどう取り組んでいったらいいかということで、左側の下の箱の中、国際的な議論の中で考慮されるべき論点として5つほど掲げさせて頂きました。こうした国際的な観点からの議論は、現在、G7、FSF、IOSCO等で議論がなされているところでございまして、我々としては、こういった議論に対して積極的に参加するとともに、しっかりとフォローしていきたいと考えております。

また、我が国としての対応ということで、先ほど申し上げました市場発の危機への対応等の監督態勢の充実の必要という問題意識に対応するものとして、1.市場動向の把握、モニタリングの強化、2.国際的な連携強化などが挙げられると考えられております。

それからOriginate to distributeの問題については、証券化商品の組成者において、何らかの形でリスクの一定部分を保有するような枠組みが考えられないかというような提言がなされております。

また証券化商品の原債権が何なのかということをしっかりトレースできる、追跡可能性を確保するためにどうしたらいいのかというのを、民間の実務者において検討すべきではないかというような提言もなされております。

それから5.主に格付でございますけれども、この格付を行う上で、しっかりした十分なデータを入手してなされていたのかというような問題提起がなされております。また、6.ですけれども、こういった証券化というのは、民間の実務の中で先進的なものが発達してきたという認識から、プリンシプルを共有し、ベストプラクティスを追求していくというアプローチが重要ではないのか。それから7.ですが、格付会社に対して国際的な議論を踏まえながら、適切な対応を検討していく必要があるという提言、それから証券化商品の価格評価、会計処理に関して、国際的な議論へしっかりと参画すべきというような提言がなされております。

以上、金融市場戦略チームの第一次報告書について、ご説明させて頂きました。

○池尾座長

ありがとうございました。

それでは、次は資料7、「金融専門人材に関する研究会」における議論の状況につきまして、お願いします。

○河本証券課課長補佐

監督局証券課の河本と申します。大森が所用のために、代理でご報告させて頂きます。

お手元の資料の17ページでございますが、スタディグループの中間論点整理の中で、プレーヤーの取り組んでいく課題の一つとしまして、我が国金融機関の多くが外資系金融機関の後塵を拝している理由として、高度な専門性を有する人材が不足しているというご指摘を頂きました。そのために金融の専門知識やスキルを持った人材を育成・強化し、その厚みを増していくことが重要であるというご指摘。それから、周辺サービスにつきましても、会計専門家と周辺サービスに従事する人材を育成・強化する必要があると。法令遵守の担い手となる専門家の育成等に向けた体制、資格制度等の整備も今後検討されていく課題であるという提言を頂いております。

こうした提言に加えまして、渡辺大臣の著書にも「金融サービス士」といった提言がございますので、これらを踏まえまして、今般研究会を立ち上げたところでございます。

お手元の資料7の1ページ目が研究会の設立趣旨とメンバーでございますけれども、設立の趣旨といたしましては、我が国金融・資本市場の競争力強化を実現するために、市場の発展を担う人材の育成が急務であるということ。それから市場参加者におきましても、当局におきましても、共通のコンプライアンス感覚を有する人材が確保されるということは、より良い規制環境の実現に資すると考えております。

例えば、アメリカでは、弁護士ですとか会計士ですとか、それからMBAの取得者などが、ウォール街とワシントンDCを行き来するのが一般的でございまして、そうしたことで専門の知識ですとか規範意識というものが共有されていくと。それによって、不正が見過ごされるとか、逆に構成要件にさえ該当していれば、必要以上にペナルティを課されるといった事態も回避しやすいと。いわばプリンシプル・ベースの監督というのは、規制の背景にある原則的な考え方というものが共有されることで有効に機能するというふうに考えまして、そういった意味でもより良い規制環境の実現、ベター・レギュレーションというものに資するものではないかと考えて立ち上げたものでございます。

メンバーは以下のとおりでございますけれども、國部メンバーにもご参加頂いておりまして、金融庁の金融研究研修センター長の吉野直行先生に議事進行をお願いしているところでございます。これまでの開催は2回ございまして、11月19日に第1回の会合がございました。専門人材の育成に関する基本的考え方につきまして、渡辺大臣からお話を頂きまして、後ほどご説明いたします今後の検討課題の整理を事務局からさせて頂きました。

その後、基本コンセプトについてフリーディスカッションをいたしまして、そして、第2回は12月14日に開催いたしました。ここでは、ゲストスピーカーとしまして、ゴールドマン・サックスのM&A統括責任者の矢野様に来て頂きまして、金融専門人材に必要な能力・資質についてお話を頂き、その後また基本コンセプトについて、フリーディスカッションをして頂きました。

次のページが今後の検討課題として、我々の方で論点を整理したものでございますけれども、まず、本年中は、この基本コンセプトについてのフリーディスカッションを中心に進めてまいりました。まず期待される役割とは何なのかということ。例えば金融機関等の経営に関与するような役員のクラスであるとか、コンプライアンス、財務会計、リスク管理の担当者ですとか、上場企業の経営、財務会計、財務分析等の能力ですとか、あるいは金融庁や自主規制機関におきまして、検査・監督、企画立案に従事するものなのかという、求められる役割とは何なのか。

それから求められる資質というのは何かということ、これは金融関連法制のコンプライアンスから、財務会計、財務分析、経営、マネージメント、金融論、経済理論、ファイナンス、コンプライアンス、職業倫理、そして外国語と。その求められる資質とそれから役割ということについて議論いたしましたけれども、2回の会合で出されたとした意見といたしましては、外部の専門家よりは、やはり金融機関なり上場企業の内部にいて、経営者に助言するような役割が求められるのではないかという意見、それから、現場と法律をつなぐ役割、例えば金融商品取引法の施行に伴ういろいろな現場の混乱というのは、そもそも現場と法律をうまくつなぐ役割がなかったからではないかというご提言がございました。

それから、金融機関におきまして、何かもうけるための仕掛けというのはなかなか難しいのではないかと。むしろコンプライアンスということに着眼した方が、資格としてはなじむのではないかというご意見もございました。

それから求められる資質に関しましては、これはさまざまな幅広い分野がありますけれども、すべてにおいて必要な資質というのはなかなか難しいのではないかと。いわば基本的な資質と、専門的な資質で分けて議論するべきではないかということ。

あとは、単に学問だけでなくて、現場感覚をいかに織り込むかということが大事であるということ。会社をやめてまで取れる資格ではなくて、もう少し会社に行きながら、知識レベルを上げていけるようなものにできないかというご提言でございました。

下の論点でございます。これは具体的な論点で、今後年明け以降、この研究会で議論していこうと思っているところでございます。まず、資格制度にするとしたら、資格の位置付けをどうするのかと。国家資格、公的資格、民間資格、その他諸々ございます。資格に関する規制というのも、業務独占とか、設置義務、名称独占、その他何らかの優遇措置を設けるかどうかということがございます。

次のページでございますけれども、資格に求められるレベルと資格者数。求められるレベルとしては、金融実務経験を有する専門家レベルなのか、資格試験の合格者レベルなのか。これは、資格者数との兼ね合いでレベルというのを議論していこうということです。

それから選考主体と選考方法、継続的教育の実施。ここに関する意見も、既にこの第2回の会合で出されておりまして、むしろ試験よりも学ぶプロセスが大事ではないかというご意見とか、あるいは官民で共通のネットワークを作るという意味では、共に集まって学ぶというプロセスが何らかの形で織り込めないかということがございました。

他の資格等の関係でございますけれども、弁護士資格、会計士資格という既に存在する資格がございますので、これら資格との兼ね合いをどういうふうに位置付けていくのかということがございます。

5番目ですけれども、官民の共通認識の促進や官民交流、何らかの資格をつくるとしたら、これは共通のコンプライアンス意識を目指すということであれば、この資格が官民人事交流の事実上のパスポートとして機能することが大事ではないかというご意見がございました。

最後ですけれども、資格のグローバル化という論点がございます。例えば、中国なんかでも、同様に証券会社の役員の資格試験というのがあるわけでございますけれども、4から6ページぐらいの論述がございまして、すべて中国語だということで、事実上の参入規制になっているのではないかという指摘がございました。事実上の参入規制を新たに設けるのではなく、グローバル化の観点から、海外資格等の相互承認ですとか、一定の優遇措置ですとか、何らかの形で参入規制とならないような工夫が必要ではないかという意見がございました。

こういった論点につきまして、今後議論を重ねていきたいと思っておりますが、次回は1月23日で、今後金融工学の専門家、実務家の方から意見を伺いながら、今後も議論を進めていきまして、来年を目途に論点の取りまとめを行って、必要に応じて具体的な制度設計に進めていきたいと考えております。

以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございます。

それでは、最後に金融庁関連の平成20年度税制改正に関しまして、ご説明を頂きたいと思います。

○古澤政策調整官

税の窓口をしております古澤でございます。

メンバーの先生方には税の関係の取りまとめの段階で非常にご支援、ご協力を賜りまして、誠にありがとうございました。おかげさまで、先週木曜日でございますが、与党の税制改正大綱が固まり、また、細部については今後財務省と協議をして詰めて、来年法律が出ていくということでございます。

3点だけ申し上げたいと思います。

まず1点目が証券税制でございます。資料で申しますと1枚目と2枚目。ポイントだけ申し上げますが、ご案内のとおり、去年与党は、期限切れと同時に軽減税率については20%に戻すんだという、1年で軽減税率が廃止という、強いメッセージを出したということでございます。これに対しまして、今年の夏のスタディグループのご報告、それから金融庁といたしましては、ご案内のとおり一般の国民の方々が「貯蓄から投資へ」という考え方のもとでリスク性の金融商品に投資をして頂ける環境を引き続き維持したいということで、働きかけて参ったわけでございます。

1ページにございますように、改正の概要でございます。与党の大綱のとおりでございますが、1つ目のマルにございますように、配当金、譲渡益にかかる税率について、一体化に向け20年末をもって軽減税率10%を廃止し、21年から20%とすると。その際、円滑に新制度へ移行するための特例措置として、21年、22年の2年間、500万円以下の譲渡益、100万以下の配当について、軽減税率10%を適用とすると。

それから2ページにございますとおり、改正の概要でございますけれども、これは21年からでございますが、21年から上場株式等の譲渡損失と配当との間の損益通算の仕組みを導入すると。それから、2つ目のマルでございますけれども、特定口座を活用して、損益通算を行う方法については、システム開発等の準備が整った段階から適用可能とするという決着を見たわけでございます。

1点だけ補足させて頂きますと、損益通算の問題につきましては、ここにとどまるわけではございませんで、与党の大綱の中でも、さらにここに資料の外の部分でございますけれども、税の中立性を勘案しつつ、その他の金融資産性所得も対象とした一体化について、引き続き検討を行うという考え方が示されているところでございます。

以上が証券税制でございます。

それからやや専門的で恐縮でございますが、2点目は、恒久的施設に関する税制上の所要の措置というものでございます。左側に図がついてございますが、ここで問題にしてございますのは、海外のファンドが日本のファンドマネージャーと投資一任契約を結んで、日本のマーケットに対する参加をしているという場合の問題でございます。

ご案内の方も多いかと思いますが、もともと非居住者の課税の問題でございますけれども、ご案内のとおり、利子や配当の受け取り、あとは不動産関係の収益などは源泉徴収でグロスでかかるということでございますので、これは非居住者であっても一般に課税されるということでございますけれども、問題は事業所得について、どういう場合に課税されるかという事でございます。国際課税は一般に、原則はPEなければ課税なしというのが、事業所得についての基本的な国際的な原則。PEとございますのは、そこの見出しにございますPermanent Establishmentというものでございます。典型的には、支店がこの代表的なPEでございますけれども、ここで問題になってございますのは、代理人、契約の締結権限を有する代理人がいるときに、この人、ファンド本人が申告しなきゃいけないかどうかというところがここの問題でございます。

改正の概要でございますが、海外ファンドが国内ファンドマネージャーと投資一任契約を締結し、国内で投資活動を行うという場合において、当該ファンドマネージャーが海外ファンドから「独立」だと、ファンドマネージャーの関係がまさに一任ということで独立であるという場合には、海外ファンドの代理人PEと認定されない。国内のファンドマネージャーは海外ファンドの代理人PEと認定されないということでございます。従って、当然ながら、もともと日本にいるファンドマネージャーはそこで帰属する収益については、当然日本の課税に服するわけでございますけれども、ここで問題になってございます海外のファンド自身は、日本に代理人PEをもって、これが理由で日本の国税庁に申告しなきゃいけなくなるという、いわゆるPEリスクでございますが、これについては、独立である場合にはなくなるということでございます。

問題は独立の意味でございまして、これをどうやってクラリファイしていくかということが、これからの課題でございます。ここにつきましては、既に業界の方々とも我々議論を始めさせて頂きまして、今後、国税庁、それから主税局、そして金融庁で、この独立の意味を明らかにし、そうすることによって、今回の税制改正のスコープを明らかにしていきたいという考えでございます。

最後3点目でございます。今回、様々な政策が今回の金融庁の金融・資本市場の国際化の中で出てきているわけでございます。そういうものを税制当局の方も非常に丁寧に聞いてもらいまして、幾つか代表的なものだけでございますが、そこに掲げてございます。最初の2つは、従来からございますけれども、外国金融機関との関係とのレポ取引、それからオフショア勘定の利子の非課税措置、これは2年間ごとに従来ロールオーバーしていたものでございますけれども、恒久措置とするという改正を取りまとめて頂いております。

それから民間国外債の利子の非課税制度の延長。若干手直しがございますが、これも延長してございますし、それから、一番最後でございますが、適格機関投資家要件が金融商品取引法の方で変わったことに伴って、税の方をどういうふうに対応するかということについても一定の結論を頂いている。それから最後の※印でございますけれども、ETFについても、個別列挙を排除して、包括指定とすることで使い勝手のいいような施策にしたいというものでございます。

以上、簡単ですが、ご報告させて頂きます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

金融庁では、ただいまご説明のあったさまざまな検討結果を踏まえまして、近く金融・資本市場競争力強化プランを取りまとめて、公表される予定と伺っております。

それで、時間がちょっと押していますが、ただいまご説明のあった各事項に関するご質問とかご意見とか、あるいは一般的なコメントでも結構ですので、ご自由にご発言頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。

柴田メンバー。

○柴田メンバー

非常に短期間にこれだけの幅広い内容のプログラムを検討なされているということに敬意を表したいと思います。

また、証券税制につきましては、非常に頑張って頂きました。これについてもお礼を申し上げたいと存じます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

ほかにご意見いかがでしょうか。

では、淵田メンバー。

○淵田メンバー

細かい確認で恐縮なんですけれども、第二部会のA3の紙、右上の業務範囲拡大の表がありますが、ここの商品の現物取引の、商品の定義というのは何なのか。下の方には中古物件というのがありますので、多分、商品といっても何らかの限定があるのかなというふうに想像しておりますが、アセットなのか、グッズなのか、コモディティなのか。細かいようですが、いわゆるバンキング・アンド・コマースということについては、海外では神経質になっている国もありますので、ちょっと確認したいということです。

○池尾座長

遠藤さん。

○遠藤信用制度参事官

一番上のところは商品の現物取引ということで、中古物件云々というのは、これはリースの中で出てくる話でございますけれども、まず商品の現物取引というのは、まさに商品市場を念頭に置いています。例えば、原油でありますとか、あるいは貴金属、金でありますとか、それから場合によっては穀物でありますとか、ああいう流動性が確保されたような商品について、商品デリバティブという形では金融商品の一部という形で既に差金決済を前提に解禁されているわけでございますけれども、デリバティブから、さらに進んで商品の現物取引を認めたらどうかと。それについては一定の要件のもとに兄弟会社について、一部の認定された金融機関において認めるという議論でございます。

中古物件の話は、これはリースの絡みでございまして、現在、金融機関、銀行あるいは保険会社にファイナンスリースを主たる業務とする子会社に、リース子会社を認めているわけでございますけれども、そのリース、企業が使う設備でございますとか、コンピューターでありますとか、ああいったそのリースに伴うリース期間が終了したことに伴って、物件が返ってくるわけでございますけれども、そういった物件の売買について、その中古物件の販売というものを今まではリース契約の終了に伴うそのものの売買のみを認めていたわけでございますけれども、そこをそのリース子会社で扱うリース物件と同種のものについて、中古物件の売買及びメンテナンスを解禁しようといった議論でございます。

○池尾座長

よろしいでしょうか。

若松メンバー。

○若松メンバー

ここに盛り込まれた考え方とか方向性とか、私もこの趣旨には賛成します。しかし、一般国民の「貯蓄から投資へ」ということを進めるには、やはり市場の信頼性、ルールを破った者は厳しく罰せられるとかいうことがないと、一般国民から見て、どうしても株式市場というのは、一部の情報を持った人だけが得するんじゃないかとか不信感を持つわけで、日本の市場への信頼性、どうも私はまだ問題があるような気がいたします。

課徴金制度という問題について、昨日の第一部会でも、一部の委員からもかなり指摘されたんですけれども、ルールを破った者に対し、厳しいペナルティが課せられる、課徴金という問題は私は重要だと思います。しかし昨日の論議でもあったように、日本の場合には懲罰的な課徴金制度というものに対しては、必ずしもコンセンサスがなかなか得にくいということが昨日の部会でも議論があったと思うんですけれども、その辺を含めて、もう一度金融庁さんの方から課徴金の一連の論議において、懲罰的な考え方というのがなかなか日本ではなじまないという背景などについて説明頂けたらと思うんですが。

○増田市場機能強化法令準備室長

課徴金制度についてですけれども、確かに課徴金についていろいろな議論があり、特にまさに課徴金の額を引き上げて抑止力を高めていくべきというご意見、昨日の審議会でも多々出たわけですが、一方、我が国の法制度全体を見ますと、例えば不公正取引に対しては罰則がついていて、悪質なものについては当然刑事告発がされて、刑事上のペナルティがかかるということになっております。刑事罰については、憲法上、刑事訴訟手続によること、あるいは自白が強要されないですとか、一定の手続保障なり、権利保護の仕組みの中で所要の手続をして、そういう手続を経た上で罰則をかけるということになっております。

その中で、現行の課徴金の仕組みは、さはさりながら、そういう刑事罰というのが、必ずしも違反行為に対して広く適用されない状況があるのではないか。刑事罰の謙抑性などと言われていますけれども、このため、それだけでは違反行為の抑止として不十分ではないかとの認識の下、行政上の措置として刑事訴訟手続などがかからない仕組みとして、何らかの違反行為に対するペナルティを課せないかということを、追求したのがこの仕組みでございます。

そういった意味で、課徴金は刑事罰と違うということを明確にしていくことが、刑事における手続保障のあるなしの差等を説明する上で非常に重要だと思います。また、悪質なものは刑事罰があるという前提の下で、課徴金の制度が組まれているものでありますので、そこにさらに懲罰的なものを求めるのはどうかとの論点もあります。懲罰的なものを求めていくのであれば、刑事手続によるべきではないかという議論もあろうかと思います。

ただ、課徴金であっても、抑止力を高めて、市場の公正性・信頼性を高めていきたいというのが、金融庁の考えであります。そういった意味で、現行のいろいろな法令の枠組みの中でどこまでできるのかということについて、当方においてもできる限り知恵を絞って、より実効的なものにしたいというふうに考えております。

以上です。

○池尾座長

どうぞ。

○三國谷総務企画局長

ご指摘のとおり、課徴金というのは、日本の資本市場の健全性、あるいは信頼性を高めていく上で大変重要なツールであるという思いは全く一緒でございまして、従って、この課徴金の抑止力というのをどう確保していくか、どう高めていくか、どう実効性を高めていくかということで、大変いろいろなご指摘も頂きながら、私どもとしてもここは一生懸命取り組んできているところでございます。

いろいろな方法論がございますけれども、いろいろな状況の中で、私どもとしては、可能な限りこの抑止力を高めるということでございまして、ここにいろいろ書いてございますが、実際にいろいろな知恵を絞っておりまして、これまでの一つの物事の捉え方というのをいろいろな枠組みの中でも捉え方、視点を変えることによりまして、それをさらにレギュレートすることによりまして、相当実効性を確保できるというようなところも私どもは念頭に置きながら、この問題に取り組んでいきたいと思っております。

それから、この中には単に金額のみならず、対象あるいは要件について、もっと実効的なものにすると。例えば相場操縦なんかで目的という制約があったところを、そういったものを取るとか、いろいろな工夫をしながらやっていきたいと思います。また、この問題、私ども今後ともいろいろな方面の理解を得ながら進めていかなくてはいけないところでございますが、これからもいろいろな意味でご支援を頂きたいと思っております。全く思いは一緒でございますので、よろしくお願いしたいと思います。

○池尾座長

どうぞ。

○藤巻メンバー

資料6に関してなんですけれども、サブプライムローン問題が今年の後半、大変な問題であったんですが、株価を見てみますと、欧米の株価というのは、少なくとも昨年末に比べてかなり高いところにあります。アジアもすごく高いところにあります。唯一、日本の株価だけが10%も昨年末に比べて下がっているのです。

サブプライムローン問題に関していうと、日本というのは一番縁遠いところにあるというのが私の認識なんです。例えば、日本の金融機関というのは、アメリカの金融機関に比べると、サブプライムローンの保有額も桁違いに少ないと思いますし、損失も少ない。それにもかかわらず、なぜ日本の株価だけが、昨年末より落っこちて、ほかの国の株価が高かったか、なぜそうなっちゃったかという分析が必要かと思うんです。これこそが、日本のマーケットの弱さ。なぜ日本のマーケットが国際化しないかということの、原因の一つなんじゃないかと私は思うんです。日本のマーケットが多様化していないこと、みんなの見方が「右向け右」になってしまうこと、それから情報が傾いてしまうということ。そのような弊害があらわれた結果として日本の株式市場が一番下落したと私は思うんです。

なぜ、日本のマーケットが多様化していないかというと、参加者がみんな同じ目的というか、意図を持っているから。その理由の一つは、デリバティブの商品の不足、取引商品の不足だと思うんです。デリバティブ取引を行う人は伝統的取引をやっている人とかなりモチベーションとか目的が違っています。デリバティブが発展するとほかの見方も出てきて、マーケットの厚みが出てくる。一つの見方とか取引に流されないということもあるんじゃないかと思うんです。これは私の一つの推測にしかすぎないんですけれども。

要は、このサブプライムローン問題でなぜ日本の株式市場だけがこんなに大きく下がったかということを分析することは、日本のマーケットをより国際化していくために必要だと思うのです。できればここの部会でも、サブプライムローン問題で日本の株式市場がなぜこうなっちゃったのかということをディスカッションして頂ければありがたいかなと思います。

○池尾座長

はい、ありがとうございました。

○江原メンバー

今日の皆さんからの報告を聞いておりまして、相当な膨大な作業で、大変なご苦労があったんではないかと思うんですが、また、このスタディグループでいろいろ出された意見もそれなり反映しているかなと感じられました。

一方で、スタディグループで話されたことで、今回全然反映されていなかった点は、やはりマクロ的な観点での取り組みというんですか、このスタディグループの名前そのものの金融・資本市場の国際化というふうなものに対する横断的な取り組みということに関する働きかけというものが欠如しているんだと思います。その点は、このスタディグループで相当意見が出てきたと思うんです。これは、金融庁だけで完結するようなことではないということは、私も重々承知しているつもりなんですが、だれかが音頭をとらなければいけないんだろうと。そういう意味では、私はやはり金融庁の方にそれを期待したいと思います。

また、今の藤巻さんのコメントには私も少し賛同するところがあるんですが、なぜこの8月以降、日本のマーケットがこれだけ下げているかということに関しましては、やはり海外の投資家から日本の市場の舵取りをしている人間の顔が見えないというイシューが非常に大きいんだと思うんです。そういう中で、いろいろな投資家がアセットアロケーションする中で、確かにこういうふうに、今日説明を受けたような細かいところを詰めていく、また完備していく、これは絶対に必要です。でも、もう一方で、根本的な戦略というものが日本から見えてこないというところに対する失望感というものが、結局は海外の投資家からこういうふうなアセットアロケーションという結果に導かれ、サブプライム問題を直接つくったわけでもない国民が結果として多大な被害をこうむると、こういう結果になっているような気がするんですが、また、何か1年、何もせずに終わってしまったのかなというのが正直な私の感想です。

○池尾座長

はい。

○藤原メンバー

この委員会が始まったときに、私は2つのことを疑問に思いました。一つは、なぜ、今さらかと。ここ20年間、国際金融にかかわってきた人たちは日本の金融市場をもっと国際化しなければならないと発言をしてきたと思います。しかし、この問題に真剣に取り組もうとする政治家はほとんどいなかったと思います。山本大臣が、こういう委員会を作られると聞いた時は驚きました。こういう委員会自体すごく大事ですし、もっとマスコミにも評価されていいと思っております。

2つ目の疑問点は、この委員会の開かれる頻度数が他省の委員会に比べ多かった点です。私は委員会に出席して発言をしてきましたが、最終的に何かまとまった提言ができるかどうか、正直言って不安でした。でも、今日の資料を全部読んで、私の意見は皆さんとは違い、柴田委員が言ったように、すごくよくやったと思いますし、すごく評価したいです。

株価低迷の件ですが、私は政府の要人、政治家を含めて皆さんばか正直すぎると思っております。もっと日本のことや企業についてよく言ってもいいと思います。私見ですが、私は、日本の市場関係者はマスコミの使い方がいま一つ下手だと思ってます。なぜなら、海外のマスコミが日本について悪く書いたときに反論をしないからです。政治家は日本の政治を批判されても、「言われっぱなし」でいます。また企業の経営陣は戦略や業績について批判されても、公の場で反論をしようとしません。また業績がよい時も「控えめ」にしています。こういうことも株価低迷の原因の1つだと思っております。短期間でこれだけ、例えば決済に関する研究会とか、いろいろ立ち上げて、お忙しい皆さんが時間を割いて、日本版AIM市場の設立に関してなど意見をまとめて報告書を作ったことはすごい評価に値すると思います、こういう委員会が引き続き開かれることで提案も多様化され、1日、1日の影響力が小さくても、1年後、2年後というスパンでは大きなインパクトとなって、日本の金融市場が国際化していくのに貢献すると思っております。

最後に一つだけ付け加えたいのですが。それは人材に関する研究会についてです。これは何かちょっと違うような気がします。私は金融の世界にいて、資格を持ってなくとも、金融の専門家として世界的に通用する人材をたくさん見てきました。金融の専門家の育成は、例えば医師免許を取って医者になるとか、弁護士の資格試験の勉強をして弁護士になることとはちょっと違うと思います。世界に通用する金融人材は「金融の知識がある人」だけでは十分ではありません。金融人材育成の委員会は、そのメンバーといいトピックスといい、もう少し工夫する余地があるような気が致します。もちろん、金融の人材に関する研究会を立ち上げたこと自体は、非常に前向きな意思決定でしたし、私はすごく評価しております。

○池尾座長

順番にどうぞ。

○木南メンバー

私もご報告を伺いながら、非常にインプレシッブなリストが上がってきて、これが大きな成果につながるだろうと非常に期待しているんです。

そういうことを言いながら、細かなことを申し上げて申し訳ないんですが、決済に関する研究会の中で、証券決済のことをおっしゃったので、それに関連して2点。一つは、先ほどの税制との関係なんですが、このペーパーレス化したことによって、インターミディアリーと呼ばれているものに口座を持たないと証券を持てない。これはあらゆる金融商品について、そういう方向に向かった。ところが、口座管理手数料というのは、どこから経費として引いてもらえるのか。これは金融資産課税の中で必ず経費になるように、現在でも、口座管理手数料を払ったら、どこからも経費にならないんです。そういうのも細かなことですけれども、今まではそんなものをしなくても株式を保有できたんですけれども、そういう形のことも、もっと細かなディテールにも注意して頂ければありがたいです。

もう一つ、Tプラス3とかいう話が出てきましたけれども、それをTプラスゼロにしたら、日本で現金化するのが一番便利な国になってしまうので、日本の市場のボラティリティーが高まるかもしれないので、Tプラスどのあたりが、本当に日本の市場を安定させるためにいいのかということも、国際化の中で考えていく必要がある。それが長ければ、日本で売りにこないわけです、もちろん買いにもこないんですけれども。買うのも盛んになり、得るのもほどほどに盛んになるようなTプラスnという、nの数値というのを国際的に見出すというのが非常に重要じゃないかと思いました。

○ポール・クオメンバー

この度の報告書に関しては、スタディグループで議論した数多くの要望が採用されており、満足の行く内容であると感じております。

ただ、今回の制度改正は、東京市場の国際競争力を強化するための意味ある一歩ではありますが、始まりに過ぎないという点を強調させて頂こうと思います。今後更なる前進を、ぜひとも期待したいというふうに思います。

特に、取引所の業務範囲の拡大、開示規制の簡素化、プロ同士の流通市場の活性化の方向は歓迎ですが、では、一体その枠組みの中で現実にリスクをとっていって、市場を膨らませて頂くプロの投資家というのは誰なのか、誰であるべきなのかという点に関しては、今回の審議では十分に議論されていないのかなと感じております。実際、新興市場における主要な投資家は個人であるのが実状で、国内機関投資家はリスクテイクに極めて保守的であります。その原因が、さまざまな行為規制や健全性基準の問題なのか、自らのリスク管理能力の問題なのか、歴史的・社会的問題なのか、その本質を見極めた上で国家的視点から対策を講じなければ、プロ市場の活性化は実現しないと思います。また、これに関して、海外の投資家、海外の発行体を日本に呼び込むための方策についても、更なる検討が必要だと感じております。

最後に、やや各論になりますが、東京市場に絶対的に欠けているのは、ハイ・イールド債の市場であります。国内の機関投資家が為替リスクを心配せずにクレジットリスクに投資したり、海外の投資家が国際分散投資の観点から円建てでのクレジットリスクに投資したりできることは、東京市場の国際競争力を高めていく上で極めて重要であります。今回の審議では株式市場の改革が中心に議論されてきましたが、今後、社債等のハイ・イールド市場の改革も検討しなければならないと思います。

○池尾座長

ありがとうございました。

淵田メンバー。

○淵田メンバー

そうですね、このスタディグループ以外の各種の場も含めて、さまざまな提言がなされてきたわけですけれども、その各種の提言を相当程度取り入れた取り組みというものが本日聞いていて、なされつつあると感じました。

その点は非常に良いと思うのですが、同時に、いろいろ提言はされてきたのだけれども、今回は実行に向けての議論に盛り込まれていないとか、今後の検討課題になりうる部分、あるいは全く触れられていない部分もあると思うんです。そのような取り組みが当面される見込みがないものは、なぜ現時点では無理なのか、どういう状況が整えばそういうことを実行できるのかというようなことについても、本当はまとめておくことが大事なような気がします。そうじゃないと、恐らく同じような提言が今後もどんどん繰り返し出され、そのたびに消えていくといったことが繰り返されたりしかねないですし、あるいは、ここを変えればいいのだなとか、環境がこう変わったらここは進めるべきだなということがわかってくると思います。そういうことが記録されておかないと、制度論議というのはなかなか進歩していかないのかなと思います。

従って、競争力強化プランの中に盛り込まなくても別に結構なのですけれども、先ほどの課徴金の議論もそうですけれども、これこれこういうことは、皆さん、普段よく提言されるけれども、こういう理由で今は無理ですよとか、そういったことが何らかの形で論者の中で共有されていく工夫があれば、前に進みやすいのかなという気がします。

それから、今、クオさんがおっしゃったように、始まりに過ぎないというのは、そのとおりかもしれないなと思います。東京市場の国際化論議は、10年前もあったし、今回もまたやったわけですが、これは10年ごとにやってもしようがないわけで、やはり継続的に日本の市場の競争力というのはどうなのかというのをモニタリングしていき、そして日常の行政の施策においても競争力という観点を常に意識しつつやっていかれるということが大事なのかと思います。1回限りのイベントにしないということが大事かと思いました。

○池尾座長

翁メンバー。

○翁メンバー

私も今回のさまざまな提言、非常に大きな一歩だと思っております。

一つ、感想なんですが、今まで業態ごとにいろいろなことが議論されてきていますけれども、どんどん業務範囲が広がっていく方向で今後の立法化が進んでいけば、業態というよりグループとして競争力ということを考えていかなければならないと思いますし、また、統合的にリスク管理をして、グループ全体としての健全性を保つという視点が非常に重要になってくるので、そういう観点からの監督のあり方が重要になってくると思います。

サブプライムローンを巡る動きでも指摘されていますが、銀行のビジネスモデルがOriginate to distributeになっていて、今回も、リスクが銀行部門とマーケットでキャッチボールのようにどんどん動いていくというような状況になってきているので、プルーデンスの観点も、やはり銀行だけを特別にするということだけでなく、少しマクロ的な視野で考えていく必要があるというような感想を持っております。

○池尾座長

どうぞ、柴田メンバー。

○柴田メンバー

今後の方向性を考える上で、幾つか注目すべき点があるかと思います。

先ほど、江原さんのおっしゃった「顔が見えない」というポイントですが、これは「東京の、対極にはシンガポールのMASがある」と言うことをおっしゃっているのだと思います。レギュレーターでありながらプロモーターの役割も果たし、市場インフラを整えつつ対外発信のコミュニケーションが非常にうまいということです。シンガポールのMASがやっていることは、日本当局による研究の対象になってもいいのではないかと思います。

2つ目は、先ほどの藤巻委員による問題提起にも繋がる点ですが、「構造的な課題」の幾つかが露呈したのだと思います。第一は日本国内の機関投資家層の薄さというものが露呈した。第二は、海外の機関投資家から「果たして日本は本当に資本主義国なのか」という疑問が提起されるほどに、ガバナンスの課題があることが露呈した。少数株主の利益を守るための仕組みがガバナンスの根本原則であり、少数株主の利益を守る仕組みが取引所のルールの基本原則であると思います。しかし、最近の判例で示された判決理由の部分に、いろいろと誤解を呼ぶような不思議な表現があり、海外からネガティブな反響を呼んでいます。この国が本当に資本主義の原理原則を守る国であるかどうかについて疑問が出されるような事態では、やはり海外の機関投資家による日本株に対するアロケーションは減るということです。

○池尾座長

それでは、それぞれ時間を超過してきたのですが、言うまでもないことですが、金融・資本市場の競争力強化に関して何か特効薬があったりとか、近道が存在するわけでではないので、幅広い取り組みを持続的にやっていく以外に道はないということですので、今回意義のある一歩は踏み出せたと。ただ、一歩だというのが、どちらを強調されるかというのは、ご意見で違いがあったと思いますが、両方正しいと思いますので、今後も必要に応じて検討を行うということになっておりますので、ここで解散ではありませんので、よろしくお願いしたいというふうに思います。

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させて頂きたいと思います。誠にありがとうございました。

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