金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第18回)議事録

日時:平成21年1月19日(月曜日)10時02分~12時03分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○池尾座長

それでは、定刻を過ぎましたので、ただいまから我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの第18回会合を開催いたしたいと思います。皆様には、本日はご多用中のところをご参集頂きまして誠にありがとうございます。

いつものことですが、本日の議事も公開の形で行わせて頂いておりますことをご報告申し上げておきます。

まず初めに、オブザーバーの異動がございましたので事務局からご紹介して頂きます。

○池田市場課長

それではご紹介をさせて頂きます。

これまでオブザーバーをお願いしておりました法務省民事局の江原参事官が異動になられまして、新たに萩本民事法制管理官に就任を頂いております。

○萩本民事法制管理官

民事局民事法制管理官の萩本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、早速本日の議事に移らせて頂きたいと思いますが、本日は「上場会社等のコーポレート・ガバナンスのあり方について」の第3回目ということになります。前回は、市場におけるエクイティ・ファイナンスやグループ化等をめぐる論点についてご審議頂きました。本日からは、本日1回では済まない可能性が高いかと思っているんですが、取締役や監査役などの企業のガバナンス機構ですね。ガバナンス機構をめぐる論点についてご審議を頂きたいというふうに思っております。

まず事務局から主な論点等について説明を頂いた上で討議をしたいというふうに考えておりますが、本日はコーポレート・ガバナンスの問題について多面的な研究等を進めてきておられる日本コーポレート・ガバナンス・フォーラムから大楠事務局長、それから日本公認会計士協会から友永副会長にお越し頂いております。お忙しいところをどうもありがとうございます。お二人には後ほどの討議にも加わって頂きたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、まず主な論点等につきまして事務局から説明を頂きたいというふうに思います。よろしくお願いします。

○池田市場課長

それでは、お手元資料1、2として配付させて頂いております資料につきまして、ポイントをご説明させて頂きたいと思います。主に資料の1の方をご覧頂きたいと思います。

まず、1ページ目でございますが、ガバナンス機構をめぐります総括的な論点について整理をさせて頂いております。最初の●にございますように、ガバナンス機構をめぐっては、近年、各般の措置が講じられてきております。他方、企業不祥事の発生等をめぐりまして、ガバナンス機構のさらなる改善を求める指摘があるということでございます。

次に、良質なガバナンス機構と企業業績との間には、有意な相関関係は認められないのではないかという指摘がある。一方、我が国におけるコーポレート・ガバナンスの水準が国際的に見て低水準であるという認識の存在が、日本株全体に対する過小評価につながっているのではないかといった指摘もあろうかと思います。

また、これまでのスタディグループでもありましたように、独自のガバナンスのストラクチャーのもとでもよいパフォーマンスを実現している日本企業は存在するのではないかという指摘。

次のページですが、他方、そのことは良好なパフォーマンスを出せていない企業において、ガバナンスのストラクチャーの変更が必要ないということを正当化するものではないという指摘もあったかと思います。

それから、各国の会社法制等には各国それぞれの形が存在しているといった指摘があろうかと思います。他方、ガバナンス機構の改善を求める指摘は、海外のみならず国内の投資家からも寄せられている。あるいは我が国金融・資本市場が国際化している中で、国際的にも十分な理解を得られるものであることが必要だといった指摘があったかと思います。

次の論点は、ガバナンス機構については企業ごとに区々であって、多様性を重視する必要があり、一律の規律づけにはなじまないといった指摘があろうかと思います。他方、上場会社については、より高度の信頼性が求められる。あるいは、多数の株主・投資者が存在することから、個々の株主によるガバナンスの発揮には限界があり、より充実した一定のガバナンス機構が求められるといった指摘もあろうかと思います。

以上、主たる議論を整理させて頂きましたが、こうしたことを踏まえて上場会社等におけるガバナンス機構のあり方についてどう考えるかといった論点を整理させて頂いております。

3ページですが、ガバナンス機構の問題を考えるに当たっての若干の留意点を整理させて頂いております。

1番目の●ですけれども、我が国では、ガバナンス機構の枠組みとして、監査役設置会社と委員会設置会社がございますが、現実には、ここにありますように東証上場会社の97.7%が監査役設置会社であるということでございます。

この監査役設置会社の場合、取締役会は制度上、監督機関としての側面と執行機関としての側面とを併せ持つものとされておりますけれども、現実には執行機関的な側面が強くなっているという指摘があろうかと思います。こうなりますと、監督機関としての役割は監査役という存在が重要になってくるわけですけれども、この監査役についての監督機能については、原則として適法性の観点からにとどまり、またその実効性についても現状必ずしも十分なものと言えないのではないかといった指摘があろうかと思います。こうしたことをどのように考えていくかという論点でございます。

それから、上場会社におけますガバナンス機構のあり方を考えていくに当たって、監督機関にはどのような基本的な要素が求められるかということで、具体的には、ここに独立性の観点、それから実効性の観点、さらに4ページに専門性といった要素が重要となるのではないかと考えられるけれどもどうかという論点が挙げられております。

それから、4ページの3のところからは、個々のガバナンス機構ごとの論点を整理させて頂いております。

まず、(1)で取締役会についてでありますけれども、最初は若干法的な制度を整理させて頂いております。監査役設置会社の場合は、ここにありますように取締役は3名以上の選任が義務づけられております。また、社外取締役の選任自体は、法制上義務づけられていないということでございます。他方、下の方になりますけれども委員会設置会社の場合は、各委員会を構成する取締役の過半数が社外取締役でなければならないとされておりますことから、社外取締役の選任が義務づけられているということでございます。

その上の「・」のところですが、この場合の社外取締役の要件につきましては、現在または過去に、その会社または子会社の役職員でない者とされているということでございます。

5ページの頭のところは、以上の制度のもとでの実際の運用に関して指摘されている点について整理をしております。

1番目は、取締役の大部分が執行部門からの出身者であって、代表取締役の監督というのはなかなか難しいという指摘。あるいは社外取締役が少ないということで、具体的には東証上場会社の55%で社外取締役を一人も選任していないといったことがしばしば指摘されるところであります。また、社外取締役の独立性についても指摘がしばしばございまして、親会社や関連会社、大株主企業、主要取引先の出身者等が存在しているケースが少なくないといったことが言われております。また、社長と取締役会議長の兼務が大半であるといったこと、あるいは取締役会における議論そのものが活発でない等の指摘もあろうかと思います。

以上を踏まえまして、具体的な論点をその以下に掲げておりますけれども、監査役設置会社にあっても取締役会の監督機能をより強化すべきであるとの指摘。あるいは、一定割合の社外取締役の選任を義務づけるべきであるとの指摘。さらに、社外取締役には、より厳しい独立性の要件を課すべきであるとの指摘。これは親子上場の問題にも関わりますが、とりわけ親会社等を有する上場会社において、社外取締役が親会社等の出身であることは、独立性や株主平等の確保等との関係で問題を生じることにならないかといった指摘があろうかと思います。

さらに、6ページですが、取締役会議長について社外取締役を起用すること。あるいは、その下にあります大規模な第三者割当増資などの場合に、社外取締役の意見付与を義務づけるなど、社外取締役の役割の強化を図るといった指摘。これらの指摘についてどのように考えるかということでございます。

次に、(2)で監査役についてですが、同様に法的な制度を最初に整理しておりますけれども、「・」のところを見て頂きますと、大会社の場合は監査役会の設置が義務づけられ、この場合監査役は3名以上とされております。論理的には上場会社でも大会社でないということがあるのですけれども、この右の下のところにありますように、上場会社については、取引所の企業行動規範で、大会社でない場合も監査役会の設置が求められているというふうに理解をしております。ということで、上場会社の場合は監査役は3名以上とされているということでございます。

2番目の「・」にありますように、この3名のうち半数以上は社外監査役でなければならないとされております。したがいまして、3名の過半数ですので2名は社外の監査役がいなくてはならないということになろうかと思います。

それから、3番目の「・」で、この社外監査役は、先程の社外取締役の場合と同様に、過去にその会社または子会社の役職員になったことがない者とされております。その下に括弧がつけてありますが、過去にそうした者でなかった者というのは、平成13年12月の商法改正で、従来は過去5年間そうした者でなかったという要件でありましたが、「過去一度も」というふうに厳格化がされているということでございます。

監査役の運用面につきましては、ここに掲げたようなことが言われているかと思います。

1つは、従業員への指揮命令権等がなく、監査の実効性が十分ではないのではないか。あるいは監査役についても、執行部門出身者が多く、十分な監督ができないのではないか。あるいは、社外監査役の独立性の問題。さらに、監査役の中に財務・会計上の知見を有する者がいないといったケースもあるのではないかといったことが指摘されているかと思います。

以上を踏まえまして、具体的な論点としまして、監査役のスタッフの充実、監査役と内部管理部門との連携の強化。あるいは次の●ですが、社外監査役の人数の充実、その独立性の強化。社外取締役と同様に、親子上場等の場合の親会社を有する上場会社について、社外監査役が親会社等の出身であることの問題点。それから、財務・会計的な知見を有した監査役を一定人数選任することを義務づけるべきではないか。あるいは、大規模な第三者割当増資などの場合に、監査役による意見付与を義務づける等、役割の強化の指摘。これらについてどう考えるかといった論点を掲げさせて頂いております。

それから、(3)が会計監査人に関する論点でございます。

2番目の●に整理をしておりますけれども、会計監査人の選任議案の決定や監査報酬の決定をめぐって、議論が従来よりございます。この選任議案の決定や監査報酬の決定は、会社法上、取締役会の権限とされておりまして、これらに関する監査役の関与は同意権ということになっております。委員会設置会社の場合は、選任議案の決定は監査委員会の権限とされていますが、監査報酬の決定については、やはり監査委員会の関与は同意権のみということになっております。

これらの点について、財務情報の適正性の確保及び会計監査人と監査役との連携を強化するという観点から、こうした会計監査人の選任議案・報酬の決定権を監査役の権限とすべきであるという指摘がございます。この問題についてどのように考えるかということでございます。

9ページの頭は若干技術的になりますが、今の論点を議論してまいりますと、会社法のもとでは会社による契約の締結など、業務執行権は原則として取締役会に属するとされていることとの関係がないかといったことが問題になってくるかと思います。

それから、(4)に委員会設置会社についての議論も整理させて頂いております。

2番目の●をご覧頂きますと、委員会設置会社制度は、我が国では平成14年の商法改正で導入されましたが、委員会設置会社への移行数は東証の上場会社で全体の2.3%にとどまっているという現状にございます。

この点については、9ページの下にありますように、執行と監督との分離を図るという観点から、上場会社については委員会設置会社への移行を促進していくというような指摘があろうかと思います。

あるいは、委員会設置会社のもとでの社外取締役についても、先程ご覧頂いたものと同様に、人数の充実あるいは独立への強化、あるいは社外取締役の委員長の問題などについても指摘があろうかと思います。親子のことも同様でございます。

最後に、10ページの下でございますけれども、上場会社のガバナンス機構に関するルール整備を行う際の手法の問題について若干触れさせて頂いております。

ルール整備の手法は、各国ごとに区々であるわけですが、大づかみに言いますと、日本では従来会社法により規定が整備をされてきているということでございます。米国については、前回のスタディグループでも若干議論がございましたが、会社法が州法になっているということで、連邦レベルでは上場規則により規定がされてきたところでございます。エンロン事件以降の2002年以降は、公開会社についてさらに企業改革法が設定されているということでございます。イギリスの場合は、従来上場規則によりこうしたもののルール整備が図られてきたということでございます。

11ページでございますが、このコーポレート・ガバナンスに関するルール整備をどういう手法でやっていくかというのは、法制と取引所ルールの役割分担全般に関わる問題で、このスタディグループでも別途機会を設けての議論が必要かというふうに考えておりますが、このガバナンス機構をめぐる問題に関しまして、ルール整備の手法についてどう考えるかということがあろうかと思います。

この関連で、幾つかの論点を挙げておりますが、1つはガバナンス機構という会社法制の根幹に関わる事項に関して、取引所がルールメークをするということが適切かどうかという指摘でございます。それから他方、取引所ルールでルールメークを行うとした場合に、一つは会社一般に適用される会社法制の規定に抵触することはできないのだろうというふうに思います。先程の会計監査人の選任、報酬の決定のようなところで、もしそうしたことをした場合に、会社の契約締結は取締役に属しているということとの齟齬が出てくるのじゃないかというのは、こうした問題に絡んでいると言えるかと思います。

それからもう一つの論点として、取引所ルールでルールメークを行う場合の実効性に関して、例えばこうしたものに違反があった場合の私法上の効果などを考えたときに、取引所ルールのみで実効性が十分かといったことも論点になろうかと思います。

駆け足で恐縮でございますが、以上が本日の主な論点と考えております。どうかよろしくご審議頂きたいと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、残りました時間で、今ご説明頂いた論点メモに沿った議論をしたいと思いますが、初めに、本日お越し頂いております日本コーポレート・ガバナンス・フォーラムの大楠事務局長及び日本公認会計士協会の友永副会長から、総括的なコメントを頂きたいというふうに思います。それでいつも自分で言っていて失礼だと思うんですが、大変短い5分という時間で、それぞれ最初にディスカッションのキックオフのためのコメントをお願いしたいということです。

それでは早速ですが、日本コーポレート・ガバナンス・フォーラムの大楠事務局長からお願いいたします。

○大楠参考人

日本コーポレート・ガバナンス・フォーラムの事務局長をやっています大楠です。我々の運動は1995年から始めまして、そういう意味ではアメリカに遅れること約20年でございます。もともとアメリカでコーポレート・ガバナンスの議論が盛んになったのは、ペン・セントラルというアメリカの鉄道会社の倒産によりましてSECがチェックをした結果、スリーピングボード、要するに取締役会が全く機能していなかったという結論。それに基づいて始まったというふうに私は理解しております。

最初に、今日は3つ論点として挙げたいんですが、まずガバナンスと経営戦略と言ったときに、まずそういうペン・セントラルのような不祥事をどう避けられるのかという議論からスタートをしているというのが押さえておきたいところなんですね。

したがって、巷間に言われるように、コーポレート・ガバナンスを良くすると企業経営そのものが良くなるんじゃないかというアプリオリに言われていることは、そもそもそれはおかしいのであって、要するにグッド・コーポレート・ガバナンスというのは、グッド・ビジネス・ストラテジーのオルタナティブにはなり得ないと。

しかしながら、ペン・セントラルの問題、それからカルパースが1980年から1990年代にかけてアクティビズムによって、コーポレート・ガバナンスの悪い会社を正すことによって成績が良くなったという事実はございます。したがって、ガバナンスを良くすると企業の経営が良くなるという印象を与えてしまったのは間違いないんですが、事実は2番目のポイントでありますけれども、グッド・コーポレート・ガバナンスは投資家にとってのインシュアランス・ポリシーという考え方が強くて、要するに突然企業が倒れてしまうといったことをなくすためには、グッド・コーポレート・ガバナンスを会社として設置しておかないと不安であるというところからスタートしたということでございます。

今日はトヨタの鈴木さんがおられますけれども、トヨタはガバナンスが悪いにも関わらず業績はいいじゃないかと。どういう説明するんだということを、ときどき議論の場で言われるんですが、私はそのときにいつも言っていますのは、この2番目の論点で、独裁的であっても見識のある経営者がやっている限りにおいては企業業績というのはいいんだと。しかしながら、一旦それが外れて見識のない経営者が出てきたときに、その暴走をどう防ぐのかというのがガバナンスのシステムであって、トヨタの場合には奥田さんだとか非常に名経営者がおられて、ガバナンスが悪くてもストラテジーというのは非常に良かったと。したがって、経営は良かったんだと。しかしながら、ガバナンスが悪いときにどういう経営者が出てくるか。それによって企業が衰退していくというのは避けたいと。

ダイエーの中内さんを見て頂ければよくわかるんですけれども、やはり若いときは非常に名経営者であったのが、年を取られても退職されなかった。そのことによって、ダイエーというのはああいう結果を迎えてしまったと。

それで図式的に書いていますけれども、アメリカの経営者というのは指名委員会を通して選ばれるということで、非常にビジョンが明確、なおかつインセンティブもあります。報酬も非常に高いと。したがって、彼にとってこの会社の業績を良くすることが自分の財産をつくることにも役立つ、あるいは自分のビジョンを実現するのに役立つという意味で、非常に独裁的な経営というものが特徴であります。したがって、ガバナンスとして強くないと、エンジンだけがやたら強くてブレーキのない会社が暴走することによって困るというのが、実はアメリカでありました。

ところが、翻って日本を見ると、非常に民主的だとは言いながらも、前任の社長が後任の社長を任命するようなシステムで、必ずしもビジョンがなくても社長になれたと。あるいは社長になることが目的だという企業があって、そういう意味では経営のビジョンがない人が社長なので、そのときにはガバナンスが弱くてもそんなに暴走することはなかったわけです。したがって、よく日本的なガバナンスのあり方ってあるんだとおっしゃるんですけれども、私はそうではなくて、たまたま暴走しない経営者がいたということの結果だったんだろうと。

そして、例えばライブドアみたいに、やたらエンジンだけが強い経営者が出てくると、もうガバナンスが全然きかないと。そういうのが日本の状態じゃないかと思っています。

2、3ページですけれども、コーポレート・ガバナンスと資本市場。

これについては、ソニーの話を私はときどきするんですけれども、なぜ日本の企業において、ソニーがガバナンス、ガバナンスと言っているんだと。経営者の方に聞いたことがあります。ソニーは、1970年代にあるプロジェクトがあってどうしても資金が欲しかった。しかしながら、引き締めがあって銀行から金を借りられないと。そこでアメリカの投資銀行に行って、どうしたら自分たちが資金を調達できるんだろうと。そのときに投資銀行から言われたのが、ガバナンスを良くしてくださいと。ディスクロージャー、それから、ガバナンスシステムを良くして頂ければ、資本市場からはエクイティでもデットでも調達できますよということで、現実に資金をアメリカの市場から集められたと。そういうところから、ソニーは、やっぱりガバナンスというのは究極的には自分たちの資金調達に大きく役立つと。資本コストを下げるという意味でも非常に役立つというのが、ソニーのガバナンス・ストーリーであります。

もともと日本とアメリカでは、市場のガバナンスの推進役が違ってまして、日本ではもともと銀行が主導的であるのに対し、アメリカは機関投資家ということだったんですが、日本においても現実的に取引の過半数が外国の機関投資家でありまして、その結果、日本の市場に与える影響は非常に大きいと。

その意味で図1を見て頂きたいんですが、5ページです。これは2007年のアメリカ、イギリス、日本の株式市場。これは2007年1月4日を100として、どう動いたかというのを表しています。8月17日、このレベルが物すごく下がっているわけですけれども、これはブルドックソースのポイズン・ピルの最高裁判決。これによって、海外の機関投資家は、日本はだめだと。そういう失望のあまり下がったと。これが1年間経っても変わっていなかったということを非常に鮮明に表している図であります。

その次、6ページ。これは2008年1月4日を100として、昨年1年間の株価の動きを見ていますが、9月15日、リーマンショック以来、3つの市場は大きく下げたんですけれども、相対的に日本の株価というのが非常に下がっているという意味で、私は日本のガバナンスについて機関投資家から非常に不信感があるのではないかと。

それから次の7ページを見て頂くとわかるんですが、これは過去20年のPERの推移を示しています。大体、イギリス、日本、アメリカは、10倍から20倍の間で20年間ずっと推移してきました。日本は、バブルのときも含めて40倍、60倍と。これは日本が限りなく高度成長を続けるんだという状態のもとに、これだけPERが高かったわけですけれども、それが2003年以降は、非常に国際的な水準に収斂していると。今、日本のPERは大体15倍、英国では10倍以下、アメリカでは12~13倍と。そういうことで、日本の企業がグローバル化すればするほど、投資家は同じようなグローバルなコンペティターと一緒に見ることによってPERも収斂していくと。したがって、日本はもう20倍を超えて30、40倍という世界はもうないんだろうというふうに思っています。

それから4ページ、OECDのコーポレート・ガバナンス原則と社外取締役ということで書いています。

私、2004年のOECDのコーポレート・ガバナンス原則の改定のときに、パリに一応日本代表でもないんですけれども出席をしまして、その改定のヒアリングに出たんですけれども、これは世界各国がOECDのコーポレート・ガバナンス原則について非常に興味を持っているというか、どうなるかについて非常によく見ておられます。そもそも1997年のアジア危機、これをきっかけとしまして、OECDは機関投資家を市場につなぎとめるためには、コーポレート・ガバナンスというのは不可欠であるという判断をされて、OECDの主導のもとに、発展途上国の間にもガバナンスというものを定着させようという動きが出て、1999年のコーポレート・ガバナンス原則というものになったわけです。

ポイントは、いろいろ議論はあるんですが、私の見方では取締役会の機能強化、これが最大の目的でありまして、企業は誰のものかという議論はありますけれども、そういう議論はもう決着をしていると。結局、取締役会がどう機能するかというのが目的でありまして、この監査・指名・報酬委員会というのが、これはOECDのガバナンスの本があるんですけれども、この注釈を見ますと、もう当然のごとくこういうのがあってしかるべきというもとで議論が進められているんですね。

私は日本で委員会設置会社が設定される前に、日本にどうしてこのコンセプトを入れるのかなと思って注目をしていましたら、選択制という極めて頭のいいやり方ですけれども、全くそれまで日本になじみのなかった指名・報酬・監査委員会という新しいコンセプトを日本に導入するときに、選択制という形で商法改正として行われたと。

そういう意味では、皆さん何か突然この委員会設置会社というのが出てきて驚かれたと思うんですけれども、これはやっぱりOECDの原則から来ているんだろうと思ってまして、昨年そのOECD原則の第6項の中で、やはり取締役会機能と、さらにそれを説明するためにOECDのボードルームガイドというのがOECDから出されました。一応添付資料としてつけています。いずれ日本のガバナンスシステムもOECDの原則のもとに収斂していくんだろうなと思っています。したがって日本はかくあるべしという議論はさておき、OECDの原則というものが一つの収斂するポイントとして重要な指標になるであろうと私は思っていまして、そこをぜひ強調したいと思っています。

社外取締役については、取締役会の活性化には不可欠であると。そのことをヒッグス・レポートという、デレッグ・ヒッグスという人がロンドンの政府に頼まれて、1年間かけて社外取締役の機能というものを勉強してその結果を発表した100ページ近くのレポートがあります。それを見て頂くと、社外取締役というのはいかに大変かと。戦略的なビジョンも持ちながら、業界にも明るく、なおかつ精神的にも独立した精神を持っていないといけないという理想論が書いてあります。日本の議論を見ていると、非常にそこからはまだかけ離れているわけですけれども、結局、そういうふうに収斂していくのかなと見ております。

以上、私の話です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、引き続き日本公認会計士協会の友永副会長からお願いいたします。

○友永参考人

日本公認会計士協会の友永でございます。資料4に基づいてお話をさせて頂きます。

インセンティブのねじれの問題、これは公認会計士法改正時の衆参両院での附帯決議、「監査人の選任決議案の決定権や監査報酬の決定権限を監査役に付与する措置についても、引き続き真剣な検討を行い、早急に結論を得るように努めること」とされてから、既に1年半以上経過をしているという状況で、このスタディグループでご審議頂くということで、ぜひ真剣な審議をお願いしたいと思っているところでございます。

まず、選任議案決定権についてでございますけれども、経営者と監査人は監査という局面において、経営者の行う開示に対して会計監査人が不適正であるとか、限定つき適正であるとかいう意見を付与するということから、利益相反の関係が存在いたします。そういったことから、会計監査人の独立性に重要な影響を与える可能性があり、財務情報の信頼性を毀損するということになりかねないということで、監査人の外観的独立性を担保する仕組みがぜひ必要であるというふうに考えております。経営者を監視する立場の半数以上が社外監査役で組織された監査役会が、選任議案決定権限を持つということが必要だろうと思っております。

IOSCOの専門委員会ステートメント、これは資料にもございますけれども、「実際上かつ外観上監査対象企業の経営陣から独立し、投資家の利益のために活動する企業統治機関が、外部監査人の選定・指名プロセス及び監査の遂行を監督すべきである。」といったことが国際的標準、常識になっていると考えております。

2ページ目にまいりまして、監査報酬決定権でございますけれども、監査報酬、これには会社法上の監査報酬と金商法上の監査報酬も含められるということでございますけれども、現状、経営者、実際には経理部門と会計監査人との間の交渉により決定をしておりますが、両当事者は先程述べましたように利益が相反する関係にあり、監査報酬決定のプロセスに両当事者に加えて株主の立場に立った監視機関であり、会計監査人の監査の方法と結果の相当性を判断する責務のある監査役が、最終判断者として関与するということが望ましいというふうに考えております。つまり、執行する側ではなく、監視する側である監査役が監査報酬を決定する仕組みとすべきであるということでございます。

現状、監査報酬は監査時間の見積もりに基づくタイムチャージ方式により積み上げた監査報酬額をもとに、経営者、実際には経理部門との交渉で決定をしているという状態でございますけれども、経営者は適切な監査時間の確保という観点よりも、同業他社や予算、会社業績への配慮を優先する傾向にあるということで、監査報酬は本来、資本市場に対してのコストであるということを特に強調したいと思います。

現在、監査の品質管理に関して高い水準を求められ、複数の会計基準が毎年のように新規に採用されるという状況下、また、昨今特に業績の悪化等により財務情報の虚偽記載のリスクが高まるということになりますと、それに対応するための適切な監査時間が増加せざるを得ないということがございます。監査役が決定権を持つ必要があるというふうに考えるところでございます。

現状の同意権でなぜいけないかということでございますけれども、協会の行った同意権に関する会員に対する調査がございますが、契約締結前に監査役から相談を受けた件数というのは3分の1程度。報酬額に関し意見の相違があった場合に、監査役と意見交換を行った率は半数弱といった結果となっておりまして、同意権を与えただけでは同意しないという結論に至る、その根拠となる情報というものを監査役が入手するのは極めて困難な現状だと考えます。

そういったところで、監査人の報酬決定プロセスにおいて、経営者から独立した立場の監査役が自ら監査人の報酬決定を行うということになれば、会計監査人からも、あるいは経営者からもその情報を的確に入手をすることができるということでございますので、監査人の独立性の確保に対する市場からの疑義を払拭できるとともに、監査役と会計監査人の連携という意味において強力な手段が確保できるというふうに考えております。

IOSCOの専門委員会ステートメントも同様のことで、国際的な対応としては諸外国と同様の規制を行う必要がある。現状、日本の場合は監査役設置会社がほぼすべてという状況にございますので、早急な対応の必要性からいって、監査役が会計監査人の選任、業務監視に中心的役割を発揮すべきであるというふうに考えます。

それに加えまして、会計監査人の監査の方法と結果の相当性の判断及び選任議案、及び監査報酬の決定を行うには、少なくとも1名の財務・会計の知見を有する者が選任される必要があるということでございます。

特に、経営者との間で、会計方針等に関する見解の相違が発生した場合や、法令違反等事実発見時における監査人の当局への申し出制度、これは金商法の改正により新たに設けられたものでございますけれども、そういった非常にシリアスな場面で経営者から独立した第三者としての監査役の判断を公認会計士は期待をしております。そこに真の連携があるというふうに考えております。

そういった意味でも、会計監査に関する財務・会計の知見が求められるというふうに考えております。

以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのお2人からのコメントも踏まえまして自由討議をいたしたいと思いますが、ちょっと論点が多岐にわたりますので、論点メモに沿う形でなるだけ議論をして頂きたいというふうに希望しております。

それで、論点メモを3つぐらいに分けて順次議論させて頂ければと思います。

まず最初の、1の基本的な考え方、それから3ページからの2の留意点ですね。3からは個々の個別論点になりますので、まず最初に1と2、1ページから4ページの頭ぐらいまでのところのやや総論的な部分に関しまして、関連する形で議論を頂ければというふうに思います。論点はいろいろ相互に関連すると思いますので厳密な意味ではありませんが、まずは、1と2の総論的部分に関連した形で、ご意見とかご質問がございましたらぜひお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○根本メンバー

1ページ目の2ポツ目の「良質なガバナンス機構と企業業績との間に有意な相関関係は認められないとの指摘がある。」という、このこと自体は指摘があるということは間違っていないと思うんですが、この後の「他方」として、評価が低くて株価が上がらないという指摘になっていまして、最初の指摘への反論はありませんが、一方有意な関係があるという見方もあるんじゃないのかと思います。この相関関係が認められないということは、本当に確認されているのか。どういうファクターをとられて、どのように証明されているのかというのがちょっと明確ではないと思われる一方で、これだけが書いてあるとそれを通説として承認したというような感じにとられないのかなという気がいたしました。

個人的に思いますのは、例えば委員会設置会社の企業とそうでない会社の業績にそんなに相違がないという、そういう研究を見たことがあるんですけれど、委員会設置会社であっても非常にあり方が多様であるとか、サンプルとして非常に少ないとか、あと委員会設置会社が日本でつくられて時間があまり経っていないので、必ずしもそれを見て業績がさほど良くなっていないという結論は導きにくいのではないかと思いました。

あと、3番目の点に関しては、先程の大楠さんのご発表の中にもあったんですけれど、確かにガバナンスのシステムがさほど工夫されていなくても業績がいい企業はあるとは思うんですが、それはやはりさっきのご指摘もあったように、経営者の方が自ら多面的な意見を取り入れて良い戦略をとっていたというようなことであって、個人の資質に頼ったシステムというのは非常に変動しやすいというか、その安定性が保障されていないということは投資家から見ると指摘できるかと思います。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。誠にごもっともな指摘で。

はい、どうぞ。

○木南メンバー

今、根本メンバーが触れられたポツがついているところなんですが、読んでちょっと質問したくなったんですが、「良質なガバナンス機構」という言葉が使われているんですが、良質というのは既に評価が入っているんですけれども、何のことなのかがわからない。多分、相関関係を話しているときには、ガバナンス機構のいろんな特徴があるもののうちどれが良好な企業業績と結びつくかどうかについて意見が分かれているという程度のことで、何が「良質なガバナンス機構」かということについても大いに意見が分かれているんじゃないかと思います。良質というときにどんなものを良質というのかについては、まだここでは基本的な考えの中で示されていないように思いますので、「良質なガバナンス機構」とは何かについてどう考えるかという問題を出すか出さないか、ご検討願えればと思います。

○池尾座長

これも全くおっしゃるとおりの、ご指摘のとおりだと思います。

○大楠参考人

それについては、私の資料の9ページを見て頂ければわかるんですけれども、そこにコーポレート・ガバナンス原則として、簡単な6項目が書いてありまして、通常グッド・コーポレート・ガバナンスとは、こういう基本的な項目において、優れていることを言うのが認識なんです。

まず最初に、1.透明性があり、効率的な資本市場を育くむ。2.株主の権利を守り、その円滑な行使を担保する。3.すべての株主を公平に扱う。4.様々なステーク・ホルダーの権利を認識し、彼らと協力して富の創出、雇用維持、企業の永続性の確保に努める。5.重要な事項について適時ならびに正確な公表を行う。6.取締役会は企業戦略のガイダンス及び経営陣の効率的なモニタリングを行う。

この6項目において、標準以上のものがなされているとグッド・コーポレート・ガバナンスと言っていいんじゃないかと私は思っています。

○新原経済産業省産業組織課長

オブザーバーで恐縮ですけれども、ちょっとご説明させて頂こうと思います。経済産業省産業組織課長の新原でございます。

恐らく、ここで事務局が言っている点というのは、池尾先生の前で恐縮ですが、過去の実証分析の結果だと思います。

それで、その場合どういう指標をとっているかというと、説明変数に、独立取締役の比率の高さ、あるいは50%以上の社外取締役を導入しているか否かというのをとりまして、説明される側の変数の方、ここでいう企業業績といっているものに、いわゆるトービンのqと言われているもの、あるいは総資産分の経常利益とか総資産分の売上額とか、そういうものをとっている。純粋にそういう財務的なものをとったときに、その間に強い相関関係がないということが、欧米の研究で確認をされているということであります。

ただ、その解釈については、単純に統計分析ですのでいろんな解釈があり得ます。例えば、業績の悪い企業ほどガバナンス改革に対するインセンティブが強く働くので、独立取締役への導入の圧力がかかりやすい。例えば、最近委員会設置会社に移行している会社というのは、比較的コンプライアンス上の問題を起こして移行するケースが多かったりします。あるいは企業のパフォーマンスでありますので、説明変数にどんな指標をとっても、うまく被説明変数のパフォーマンスに有意な影響を与えるものというのは、実は統計的にはあんまり検証できないんですね。当たり前ですけれども、企業経営でありますので、そんなうまい変数があればみんなそれをやるに決まっているわけでありますから。

というような背景事情があってのことでありますけれども、恐らくこれは経済学の過去のサーベイを言っているということだと思っております。

○池尾座長

藤巻さん。

○藤巻メンバー

大楠さんにご質問なんですけれども、今の点ですけれども、私の感覚的意見からすると、日本においてガバナンスという話をすると、いつも何か非常にディフェンシブな、法令違反をしないとか、レピュテーション・リスクにかかるようなことをしないとか、そういうことをするのがガバナンスという認識じゃないかと思うんです。一方、欧米の企業において取締役会は、そういうディフェンシブなだけじゃなく、より富を創造しようという積極的な面をもコントロールするというか、見ているんじゃないかと思うので、その辺の差が今のポイントに出てきているんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○大楠参考人

企業年金連合会の鹿毛さんもメンバーなんですけれども、私もICGN(International Corporate Governance Network)のメンバーでありまして、毎年その国際会議に参加しているんです。これは世界の主要な機関投資家が集まって世界の主要な市場でコーポレート・ガバナンスを推進していこうという団体なんです。彼らがなぜそういうガバナンスを強くするような組織をつくったかというと、やはりガバナンスがいいということは、結果において成績が良くなると。それについて、先程の指名ですね、社長を誰がどういう形で任命していくのかということについて極めて大きな業績との関係があります。

一方で、そういう先程言った社長というのはアンビシャスで、ものすごくエネルギッシュですから、ガバナンスを強くしながら、でも、彼らには報酬とインセンティブを与えて会社の業績をどうやって良くするかということが、彼らにとって非常に大きな問題であります。

翻って日本では、残念ながら、先程おっしゃったようにディフェンシブで、問題が起こらなければということかもしれませんけれども、じゃ、どうやって業績を伸ばすんだと。この社長は、一体何をやりたいために社長になったんだと。その辺についての検証あるいはプレッシャーというのが投資家サイドからは残念ながら弱いなという印象を持っています。

○池尾座長

いかがでしょうか。

○鹿毛メンバー

事務局報告をお伺いして、包括的に問題が良く整理されていると思いました。まさしくここに書かれていますように、コーポレート・ガバナンスについてはいろいろ相反する、異なる多様な意見があるというところが実態に近いと思います。イギリスはともかく、特によく日本で話題になるアメリカにおいては、こういった議論は格別結論が出ているわけでもない。法律面でも、実務の世界でもこういった議論について確定的な通説という決定的な結論には今のところいっていないんだろうと思います。

ただ、そうはいっても、例えば特にアメリカなんかもそうかもしれませんけれども、市場関係者の間では、どうやらこういうことらしいという見解というか流れが出てきた面もあるとは思います。しかし、ここに来て、この世界的な大金融危機というか大混乱の中で、そうした見解に関しても、疑問も随分生まれてきている。この点も多分、メンバーの皆様にもご同意頂ける点だと思います。私も投資家の立場で、各種国際会議とか、いろいろなところでガバナンスの問題は議論してきているんですが、本当に意見は多種多様であることを痛感しています。

何を申し上げたいかというと、つまり哲学的、科学的にというか、思想信条、信念としてあるべきガバナンスとは何かということになれば、恐らく非常に多様な意見があって結論はないだろうということです。そしてこのスタディグループで政府の立場で政策の方向性を出す上では、そういった個々の個人的な見解、あるいは学説というようなものと離れて議論することが、必要ではないかと思います。つまり、ここに書いてある幾つかの意見を比べて、どっちが正しいかということを徹底的に議論しても私はほとんど意味がないと思います。

それでは、何をここで議論すべきかという、それをむしろここで決める必要があると思います。

その中で、1つはこの委員会の議論の一番最初にもあったと思うんですが、やはり海外の投資家から日本のガバナンスについて、いろいろと問題提起、あるいは批判等があって、そのことが日本の株式市場低迷の要因の1つではないかという点です。そこは、個人個人の思想信条や学説と離れて、事実関係がそうなら、むしろ政策としては、何か手を打った方がいいということなると思います。

私もそうした海外投資家の批判については、冒頭の第1回の議論で申し上げましたように、賛成できない点はいくつかあるけれども、一部耳を傾けるべき点があるというような、そういうニュアンスの意見を申し上げたと思います。そういうような観点で、この事務局報告の1ページから4ページの課題を整理する意味はあると考えます。

つまり、世界の多数の国の市場関係者の間ではある程度常識になっているようなことで、日本だけが不十分だというようなことがあるとすれば、それはある程度整理をしていく必要があるんじゃないか。そこはもう少し真剣に考えた方がいいんじゃないか。早い話が、例えば取締役会の機能整備とか、社外取締役導入の問題であったりというような議論が出てきているわけですね。そのことが、本当にガバナンス向上に意味があり、それからそれが業績に意味があるのかというところを始めると、多分、相当意見が分かれると思いますが。それはさておいて、現状で株式を買う投資家の立場だったら、今はそういう意見が多いというふうに考えるとすれば、もし日本の企業が投資家に株を買ってもらいたい、あるいは日本の株式市場を活性化しないと、ということなら、個人個人の意見とは別に何が必要かという議論が出てくるというふうに思います。

ただ、それを強制的にやるということになってくると、またこれは議論が分かれてくる。冒頭、第1回の議論にもありましたように、例えばトヨタとGMと、どちらのやり方が正しいかというような議論になってしまう。形だけ整えればいいのかというような議論になってくると思います。従って、ある程度の弾力性を持った形で、むしろ今は世界に対してメッセージを発信することが大事なのではないかということを1つの意見として申し上げたいと思います。

○池尾座長

岩原さん、さっき手を挙げられていたので。

○岩原メンバー

まず最初に、根本委員からご指摘があり、その後若干議論がございました「良質なガバナンス機構と企業業績との間に有意な相関関係は認められないとの指摘がある。」という、この部分でございますけれども、さっき新原さんからもご指摘がございましたように、過去の実証分析について、欧米についてもいろいろ研究があり、かつ日本についても若干研究が出ております。その研究も新原さんがご指摘になったように、どういう指標をとって、どういう方法で実証研究するかということが非常に大事で、どういう文脈でいかに解釈されるべきかということが非常に微妙であります。結果から言うと、有意な差があるという研究と、それほど有意な差は認められないという研究と両方出ております。そういう意味でまさに両方の議論があって、どちらかに固まる状況にはないという状況かと思います。

その上で、したがいまして、ガバナンスのあり方と企業業績の関係について、今、鹿毛メンバーからご指摘がありましたように、世界的に通説ができるという状況にないことは確かであります。しかし一方で、さっきご指摘がありましたように、経営が暴走しないような制度化がきちんとできているか。マクロ的な実証分析の結果としてはっきり数字として表れなくても、制度としてそういう暴走等が起きないような仕組みにきちんとなっているかという問題は当然あるわけです。そういう点で、現在の日本のコーポレート・ガバナンスの制度の仕組みに見直すべき余地はあるのではないか、海外の投資家等から見て日本の制度が信頼してもらえるような状況になっているのかという点は、反省する、あるいは検討する余地は十分あるのではないかというふうに考えています。

以上です。

○池尾座長

それでは、越村メンバー、柴田メンバーの順でお願いします。

○越村メンバー

今、いろいろと踏み込んだ議論がされているところですが、論点メモの中で触れられていた国内の機関投資家の1つである信託銀行に所属する者として、ちょっと実務的な面で発言をさせて頂きたいと思います。

1つは良質なガバナンス機構の構築というのを機関投資家としてどのように見ているのかという点と、もう1つは、特に信託財産等で保有している株式の議決権行使に当たってどのような対応をしているかということについてお話をしたいというふうに思っています。

良質なガバナンス機構の構築というと、いろいろと定義の問題等あるわけですが、我々も企業業績とは必ずしも明確な相関関係があるというふうには言えないと思っております。しかし、機関投資家の立場からは、これも何らかの基準に基づいて、例えば同一業種あるいは同程度のパフォーマンスを上げている会社というものを比較すれば、やはりガバナンス機構をきちんと構築している会社に投資をするという傾向があるというふうに思っております。現状、東証上場企業の97.7%が監査役設置会社ということからすれば、その取締役会に監督機関としての側面が確保されているかどうかということを1つの判断基準としているということです。

では、取締役会に監督機関としての機能を併せ持たせているかどうかということを判断するには、やはり執行から独立した機能があるかどうかということであり、それはやはり社外取締役が選任されているかどうかで判断しているというのが実態です。

ただ、ここでその論点メモにもありますとおり、社外取締役の設置を単に義務化、強制、規定するだけでは、形骸化してしまうおそれがありますし、社外取締役の要件というものを厳格にすれば、現実的にはなり手の確保ということも避けては通れない問題となると思っております。また社外取締役の権限の強化ということも検討していかなければいけない、加えて、ちょっと今内容については省略させて頂きますが、当然監査役の機能の強化ということも併せて検討していかなければならないと思っております。この論点メモで指摘されている各論点というのは、非常に重要な問題と思っておりまして、これらの点は十分に整理していく必要があるのではないかと思っています。

もう一つの、機関投資家としての議決権行使をどのようにやっているかということですが、今、お話ししたようにいろいろな議論はあるんですが、我々といたしましては株主総会の議案のうち、社外取締役選任の議案ということにつきましては、一応その独立性を前提とした上でですが、これはほとんどの議案について肯定的に判断をしているというのが今の実務的な立場でございます。

私からは以上です。

○池尾座長

では、柴田さんお願いします。

○柴田メンバー

社外取締役が取締役会に参加をすることには、明らかなメリットがあります。取締役会での議論が活性化する蓋然性が高まるのが最大のメリットでしょうか。企業の業績が好調であるときや、いわゆる平時であるときは、社外取締役の立場というのは質問を沢山する立場であって、執行部隊は株主に対する説明責任を果たすかのごとく、その株主の代表としての社外取締役に対する説明責任を果たすという要素が大きいと思います。

社外の取締役の方の業績への貢献度が極大化する時点は、明らかに業績が悪いときです。先程岩原先生は暴走の防止という言葉を使われましたが、安全弁としての社外取締役ないしは取締役会の役割、これは大きいものでありますし、また大楠さんがおっしゃったとおり、社長の指名権を取締役会が最終権限として行使することもありうるということですから、取締役会の貢献度が非常に大きく見える段階というのは、問題が起きたときであるということかと思います。したがって、平時の業績と取締役会の独立度の相関を分析することにはあまり意味がないのかもしれないということです。

ちなみに、ガバナンスの改善をもって業績を改善させるというカルパースの戦略でございますが、これはまず先に業績の悪いところに投資を行い、それからそのガバナンスを改善しなさいといって業績を上げさせるというものでございますので、やはり業績の悪いときに社外取締役が果たす役割というのは大きいということの傍証かと思います。

以上でございます。

○藤原メンバー

コーポレート・ガバナンスの歴史を見ていると、カルパースとかヘッジファンドが出てくる前と後では、動きというか、強調する部分が変わったような気がします。

「良質なガバナンス機構と企業業績との間に有意な相関関係が認められるか」という点に関してですが、委員会制度を導入しているアメリカのAAAの保険会社が倒産しかけたことや、米国の自動車会社が業績不振により資金調達が難しくなり政府のサポートを願い出た事例からも分かるように、必ずしも相関関係があるわけではないと言えると思います。それゆえ、事務局がまとめたこの1ページ目の2番目の「良質なガバナンス」、この根本メンバーが指摘した部分は、直さなくてもこのままでいいと思っております。

私は、カルパースとかアクティビストが登場してきてガバナンスの話を強く推し進めていった時、なんとなく行きすぎなような気がしました。なぜなら、彼らが台頭してくる以前のコーポレート・ガバナンスは企業業績の向上よりアカウンタビリティーとか、社内役員だけではなく外の専門家を入れることによって株主のための透明性の確保といった動きだったからです。

2つ目の点で触れておきたいことは社外取締役のメリットとその必要性についてです。柴田メンバーも説明していましたが、社外取締役を置くことで役員会の議論は活性化するともいます。社外の役員は社内の役員とは違う、もっと自由な立場で意見を言えると思います。日本の株式市場の毎日の取引の6割が外資による取引であることを考えると、社外取締役を置くようにという外人株主の声を無視し続けることは非常に難しくなってきていると思います。また、日本の金融機関や企業が、サブプライムの被害を欧米に比べあまり受けていないにも関わらず、日本株の下げが欧米より大きかったことの理由の1つとして、日本企業の透明性やアカウンタビリティーに対する外人株主の不安を挙げるアナリストもおります。海外の上場企業にとって、社外を置くことは当たり前のことになっています。こういう環境の変化を考えると、私たちは社外取締役を置くことの義務化をもっと真剣に議論してもいいのではないかと思います。社外取締役を何人置くのが企業にとって最適か等の点については、これから話し合っていくことになるのではないかと思いますが、一部上場、二部上場だけではなくて、少なくとも上場している企業は社外取締役を置いた方がいいと私は思っています。

以上です。

○上村メンバー

私は、コーポレート・ガバナンスというのは、支配の正当性をいかに根拠づけるかという理論だと思っております。有名なマックス・ウェーバーの『支配の社会学』というのがありますけれども、そこでは、伝統的支配、カリスマ的支配、合法的支配という具合に支配の根拠を分類しています。日本のように、1,400年以上の企業があったり1,000年以上の企業があったり500年以上の企業が山ほどある国で、それが浮利を追わず、家訓を守り、一生懸命やっていて何か文句あるかと言われたときに、国ができて300年経たない国にいろいろ説教される必要はないじゃないかというのはよくわかります。

ただし、そういう企業でも、本格的に証券市場とか金融の世界に関わりますと、こういう世界で老舗というのはありませんから、やはりそれだけでは非常にもろい仕組みだということは確かなのですね。もっとも、それでも要はヒトだということでやり抜いていける自信と覚悟があれば、私は内部統制なんかやらなくたって、おたくの方が立派ですと言ってもいいんじゃないかとすら思っております。

カリスマ的支配というのは、カリスマの日常化という問題があって、社外取締役なんか一人もいなくたって何が悪いと言うカリスマ的な経営者のつもりでも、それは続かない。やはりそれではもたないのですね。やはり、合法的な支配といいましょうか、ガバナンスのシステムそれ自体の権威があり、そこでの手続的正義が大事、ということにならざるを得ないのですね。これは結局、すばらしい高速道路をすばらしい車で運転するみたいなイメージだと思っております。すばらしい高速道路というのは立派な流通市場、資本市場ですね。それから立派な車体はガバナンスですが、立派な車体と立派な道路があるからすばらしいパフォーマンスが上がるなどということはあり得ないわけです。運転手が良くなければだめなんです。ガバナンスが良ければパフォーマンスがよいとか悪いとか、いろいろな実証分析とかあるようですけれども、私はそういうことはどっちに転んでもあまり意味がないと思っております。

それから、欧米のガバナンスは、その社会の質といいましょうか、市民社会のあり方とか、個人中心の社会の規範とか、そういうものが大事で、そういう価値の上に企業社会が成り立っています。そういう価値を犠牲してまでパフォーマンスを上げればいいとは思っていないのですね。ここは非常に肝心なところだと思っております。

結局、簡単に何が良質かは評価できませんけれども、私はマーケット、特に高度なマーケットという危険物にタッチし出したら、これはかなり危険な状況にあるので、しっかりしたガバナンスを心掛けることが必要だと思います。

アメリカのコーポレート・ガバナンスですが、アメリカには金融審議会も法制審議会もありませんので、裁判官を説得するための対策として作られてきています。社外取締役がいないと取締役の責任が追及されます、ということの繰り返しでできてきたルールですから、やはり最大級に資本市場を活用し、運営してみたらこうなっちゃった、という実例が目の前にあるわけですから、それはそのとおり真似する必要はありませんけれども、一つ大きな参考になるはずだという気持ちは大事ではないかなと思います。

長くなってすみません。本当は具体的な問題についてちょっと意見がありますけれども、後でということにします。1点だけ、先程大楠さん、ペン・セントラルからスタートしたとおっしゃいました。具体的にマーケットとの関係で、そういう問題が出てきたのはそうだと思いますけれども、しかし、証券市場を踏まえたガバナンス論議は、実体を伴ってはおらず抽象的ではありますけれども、日本ぐらいコーポレート・ガバナンスの理論の先進国はないと私は思っております。

つまり、今から50年も60年も昔に、株式会社というのは財団法人であって、株主総会というのは投資家保護の集会であるとか、あるいは株式とは配当請求権という債権であって、議決権は人格権であるとか、いろんな、いや議決権は権利ではなくて権限だとか、およそありとあらゆるガバナンスの類型が学問の世界では展開されてきています。これは私は誇るべきことだと思います。

しかし、証券市場が、当時壊滅状態でしたから、それが現実と一体化しなかった。しかし、その学問の蓄積は、今のような時代、証券市場と一体で株式会社を運営していくような今のような時代には、もう一度自信を持って見直していける。そういう理論の蓄積が私は日本にはあると思っておりまして、コーポレート・ガバナンスの会社法の学問的な理論は、アメリカの方が後進国だと私は思っております。

○池尾座長

今日で全部議論を済ませるつもりはないんですけれども、一通りは後半の方の議論もしたいと思いますので、そこはちょっとご配慮頂いてご発言をお願いしたいと思いますが。島崎メンバー。

○島崎メンバー

このペーパーの3ページに、ガバナンス機構について考えるに当たっての留意点ということで、日本における監査役設置会社の場合の監査役の機能について、課題が指摘されています。先程岩原メンバーの方からもお話がありましたが、経営陣が暴走しない仕組みは考えていく必要があると思います。それを社外取締役を入れることによってきちっと機能させるという考え方と、監査役設置会社においては、今の監査役制度のありようを検討することによって、そこを強化できないかというところも検討していくべきではないのかなと思います。

私はこれから所用で退室しますが、先程ご説明があったインセンティブのねじれのところについて意見がありますので、後ほどまた別途メモか何かで意見を言わせて頂くということにしたいと思います。

以上です。

○八丁地メンバー

今の島崎さんと同じ3ページのガバナンス機構の要素というところで、これを仮に例えば、社外取締役の機能だとか社外監査役の機能というふうに読んでもよかろうかと思います。社外取締役、社外監査役の機能は先程柴田さんが言われたところに大体賛成するところであります。

コーポレート・ガバナンスと経営戦略が、ビジネス・ストラテジーとは別のものだとし、インシュアランス・ポリシーだとしても、インシュアランスをするにはその対象である、例えば生命保険であれば顧客の健康の状況、損害保険であれば企業の状況を知らないと、私はインシュアランスは出来ないと思います。大楠さんの意見については、独立性、実効性、専門性のところの独立性に加えて、専門性の領域を是非担保をしておかないと、柴田さんが言われたこと、大楠さんが言われたことへの対応が本当に出来るのかという点が、発行会社としては、実務的に非常に悩む所ではないかと思います。

ですから、この独立性と実効性と専門性のバランスと、それを備えた方のアヴェイラビリティをどう考えるのかが大きなポイントではないかと思います。

独立性の高い方を社外取締役としてお迎えしたと仮定した場合、執行側がどういうことをやっているかというと、非常に緊密な綿密な濃厚なコミュニケーションを徹底的に図ります。例えば議題の説明、その背景を説明することは当然でありますが、加えて実際に営業所に行って頂くとか、生産拠点に行って頂くとか、現場に行っていただくことで、より専門性を高めるという点で執行側としては大変な努力をするのが現実的ではないかと私は思うわけであります。それであれば、専門性が高くてしかも独立性の高いガバナンスの要諦をきちんと分かった方に社外取締役を担っていただくのがいいのではないかと思います。例えば、社外取締役の独立性が低いということで5ページに幾つか書いてございますけれども、この辺は現実的に考えていただいた方がいいのではないかと思います。

この議論をアメリカの発行会社と何度かしたことがあります。彼らも独立性の高い方にはコミュニケーションを密にして、合宿を繰り返して長期に1つの会社を理解していただくということをやっている会社がほとんどでございます。この点から、大楠さんの言われたこの3点は社外取締役にとって所与の条件なのか、社外取締役になってから獲得してゆく条件なのか、それが本当に専門性を持てるまで獲得出来るのか、よく検討する必要があります。

○池尾座長

先程も申し上げましたように繰り返しですが、今日で議論を打ち切るつもりは全くありませんので、また次回以降もこのテーマで引き続き議論をして頂く機会をつくりたいと思っておりますので、一応ちょっと先の方まで議論を進めさせて頂きたいと思います。今ももう話が出ていますので、3の個々の論点のうちの(1)の取締役会の部分と(2)の監査役の部分ですね、8ページぐらいのところまで射程を延ばして、それで議論を引き続きさせて頂きたいと思います。

では、柴田メンバーお願いします。

○柴田メンバー

海外先進国は、取締役会の中の独立取締役の人数を定めるという段階を超えて、独立取締役は何をすべきかということの議論を深化させている段階に入っており、日本よりは一歩も二歩も先に行っているということかと思います。

一例を挙げますと、米国においてはリード・インディペンデント・ディレクターと呼びますが、独立取締役の方々を束ねる方を決めていたり、英国においては会長は社外取締役を束ねる方であり、かつご本人も社外取締役であるというような流れになっているということはご紹介しておきたいと思います。

もちろん、監査役会の機能強化を図り、その独立性とその専門性を強化するという方向性は、非常に良いことではないかと考えます。しかし監査役会の機能を拡大するということによって、はたして取締役会の機能強化の代替がなされるのだろうかと問いかけてみますと、恐らく答えはノーであろうかというふうに思います。そもそも監査役設置会社と社外取締役が多数を占める会社との中間的な発展段階として、日本ではなぜ委員会設置会社という制度を定めなければいけなかったのか、この問題意識は忘れてはいけないのではないかと思います。

また、取締役会は経営の意思の決定を行う場でありますし、その意思決定権限の中には指名権と報酬の決定権という重要な権限がある訳ですが、監査役会は経営の意思決定を行う場ではなく、能動的というよりは、むしろ受け身に徹することで、きちんとしたチェック・アンド・バランスの機能を発揮する場です。つまり、監査役会の機能強化はもちろん必要ではあるけれども、それが取締役会の機能強化の代替手段にはならないということは申し上げておきたいと思います。

○大楠参考人

全く賛成なんですが、そもそも監査役をやっておられる方が、取締役会の監査委員になられることに対してどうして反対なのかと、僕は不思議で仕様がないんですよ。監査役の方が監査委員になられると、取締役におけるボーティングライトも出てきますし、自分の地位も上がるわけですから、なぜそれに対していやいやとされるのかなというのが僕には不思議で仕様がない。

1つには、僕は今の委員会設置会社の設計制度にちょっと無理があるのかなと。各委員会について社外取締役が過半数という全く新しいコンセプトを入れたにも関わらず、要件がやたら厳しくて、むしろプロヒビティブな状況になっているというのがそもそも僕は問題かなと思っています。できるだけ私のガバナンスの観点から言うと、監査役の方は監査委員会に入って頂いて、取締役として機能して頂くと。そっちの方をもう少し推進すべきじゃないかと思っています。

○藤巻メンバー

柴田メンバーと大楠参考人の意見には非常に賛成なんですけれども、その前提として先程大楠参考人がおっしゃったように、「ストック・オプション等をもらって、自分の資産構築が会社の業績にえらく連動している経営者に対して、同様に会社の業績が自分の資産構築に大きな影響を与える立場の社外または社内取締役が監督している」アメリカの企業と、「ほとんど成功しても報酬が増えない経営者を全く株を持っておらずすなわち会社の業績が自分の財産形成と全く無関係な社外取締役が監督している」日本の企業とでは、監査のモチベーションとか真剣度がどうしても異ならざるを得ないと私は思っております。会社がうまくいっても自分の財産が増えないのであれば、なにか失敗をしないようにという発想しか出てこない、と思うのです。そうすると、日本の制度とはやはりある程度米国の制度とは変えて、日本の社会現象に合わせて制度を作るか、もしくは取締役に関しては非常に突飛な意見かもしれませんけれども、株を強制的に与えるか、それとも社会のカルチャーとして取締役になると株を持たなくてはいけないような雰囲気を作るとか、金額が少なくとも自分の財産におけるその会社の株数が幾らあるかという情報を公開して、取締役の判断が信頼に値するというようなことを考えないといけないかな、と思うのです。制度上だけでは、やっぱりなかなか社外取締役といっても、自分の身がかわいくて、会社のことよりは自分の身という判断、すなわち間違いさえ起こさなければよい、というディフェンシブな判断をすること、絶えずブレーキ役になってしまうんじゃないかなという気がいたします。

○上村メンバー

まず、委員会設置会社と監査役設置会社の関係ですけれども、よく委員会設置会社はアメリカ型だと言いますけれども、昔のアメリカ型ですね。つまり、取締役会に社外取締役を入れ始めたころのアメリカ型なのであって、今のアメリカ型じゃない。今の委員会設置会社をアメリカ型だと言ったら、多分アメリカの人は怒るんじゃないかと思うんですね。もう彼らの取締役のほとんど8割、9割は社外ですから。

ですから、その辺を踏まえて評価しなければならないと思います。つまり、立派な監査役設置会社と、立派でない委員会設置会社を比べれば、それは立派な方がいいに決まっているのですね、なかなかそれはうまく比較できないので、両方立派だったらどっちがいいかということを考えなければならないと思います。

それからもう一つ、例えば、アメリカは、取締役会はモニタリングで監査意見は公認会計士で、それ以外にないのですね。それからドイツもそうですね。取締役はいますけれども、監査役会との二層制で、あとは公認会計士ですね。イギリスも、オーディターが会計専門家として監査をしていて取締役会がある。どこも非常に単純な構成をとっていると思います。

それに対して日本は、歴史的な経緯もあって、例えば業務監査でいいますと監査役会あるいは監査役と取締役会が重複しているのですね。会計監査でも、監査役と取締役会、あるいは監査役と会計監査人と金商法の公認会計士監査が重複しているわけですね。監査意見も、公認会計士の金商法の監査証明と、それから会計監査人の監査報告書と、監査役の監査報告書と3つも出しているわけですね。そんな国はどこにもないと思うんです。

ですから、そういう重複を前提として、しかしこれは無駄な重複じゃありません。何か理由があるんです、ということを説明するために、やれ適法性監査だとか、妥当性だとかと言っているだけであって、そんな議論をしている国はどこにもないのではないでしょうか。ですから、そういう意味では私は現在の制度を前提にすれば柴田メンバーがおっしゃったように、取締役会に代替はできないと思いますけれども、ここは大楠さんと意見が割と──普段はあんまり意見が合わないんですけれども──近いのは、つまりこれだけ監査役がたくさんいる、社外監査役もいっぱいいるわけですね。これは実は社外取締役ですと言えちゃえば、物すごい社外取締役の比率になるわけです、国際的には。

それにはどうしたらいいかというと、先程申しましたように、まず会計監査についての公認会計士の監査の相当性の意見を監査役に言わせるなんていうのはやめたらいいんじゃないかと思います。その代わり、監査役は会計・監査の専門性のある業務監査の担い手として、例えば取締役会の中の監査委員会の構成員になってもいいですけれども、そこが例えば公認会計士の選任とか解任とか、あるいは内部統制の評価とか内部監査の評価だとか、そういう会計監査に関わる問題のモニターをし、毎年きちっと意見も述べるというような形にしてはと思います。

しかし、監査役が適正意見とか公認会計士の監査の相当性の意見を言わないということになれば、これは大楠さんおっしゃったように、やはり監査報告書の作成をしない監査委員とほとんど変わらなくなってきて、委員会設置会社と監査役設置会社の差が著しく小さくなってきますから、そのうちに監査委員会の監査委員のことを監査役と呼んでしまってもいいかもしれないですね。そうすると両者は一本化していって、国際的にも、対外的には極めて社外取締役の比率の高い国であるということになりますから、非常に名声も高まるのではないでしょうか。割と真面目にそう思っているところです。

○池尾座長

そうしましたら、日本公認会計士協会の友永副会長にも来て頂いておりますので、8ページの(3)の会計監査人以下も、あと最後の11ページまでの部分も対象にして議論を引き続きやりたいと思いますので、この最後の3分の1の部分のところでもしご意見があれば。もちろん他でも結構なんですが、お願いしたいと思います。

○藤原メンバー

その手前の方の部分ですけれども、平成14年の商法改正で委員会設置会社制度が導入されたわけですが、私はその内容を読んでちょっと行き過ぎかなと思いました。理由は、あまりにもよくできていて、どちらかというと日本的な経営を無視してアメリカ的なものを持ってきたような気がして、委員会設置会社制度を導入する企業は少ないだろうと思いました。

私は上場企業が社外取締役を1人置くことに関しては賛成ですし、法律で義務化した方がいいという意見の持ち主です。しかしながら、役員の過半数を社外取締役にすることに関しては反対です。理由は日本的経営にそぐわないと思っているからです。

なぜ社外取締役が必要なのか、メリットは何かについては先程少し説明しましたが、社外取締役について総論賛成で各論反対の先生たちの中には、人材がいないということを理由に反対をしている人たちがおります。しかし、日本に関してはそれは当てはまらないと思います。何年か前に英国の学者と雇用問題について意見交換をしていたとき、彼は社外取締役というポジションは50代、60代で、経営経験はあっても仕事をしていない男性たちに対して雇用を生み出すという点からも大事なことであると言ってました。その先生によると英国の50歳以上の男性の2人に1人は仕事をしていないそうです。例えば日本の場合、上場企業に1人社外取締役を置くことを義務化すると4,000人の雇用が創出されることになります。日本には大手企業の元経営陣で優秀な人たちが多くいます。なぜなら、日本の企業では、例えば、副社長の1人が58歳で次期社長に任命されると、62歳で優秀な副社長が数人いても、社長よりも副社長が年上であってはいけないといった目に見えないルールから、62歳の副社長がどんなに優秀であっても社長就任の際に辞めてしまいます。社長が一番年上といった慣習がいまだに残っているからです。こういう人たちが新興市場や建設会社の社外取締役になると、彼らの元経営者としての経験は生かされるだけでなく、不正はもっと減るのではないかと思います。私は優秀な元経営者は沢山いると思うのですが、もし本当にいないというのでしたら、その場合は社外監査役の中から1人選んで社外取締役になってもらえばいいと思います。

大事なことは、外の専門家を入れて取締役会の機能を強化することだと思います。すべての上場企業に経営の経験の豊富な社外取締役を1人入れる。そこが大事な点ではないかと私は思います。

○池尾座長

どうもありがとうございます。いかがでしょうか。

では、江原委員、翁委員の順で。

○江原メンバー

長年プライベート・エクイティをやっている立場からしますと、実を言うとガバナンスというのが重要な商売の種になっております。プライベート・エクイティというのは、ガバナンスを徹底しているのだということで、いろいろな機関投資家からコミットメントを頂戴して投資させて頂いていると。

過去10年、15年、20年、期間どれだけとってもよろしいんですが、欧米におきましてもプライベート・エクイティに対する投資の比率が高まっているというのは、ひとえにガバナンスの徹底というものの表れではないかなと私は思っています。それが第1点。

もう1点、これは11ページの一番最後のポイントなんですが、私は取引所のルールというものがあってもよろしいんではないかなと思います。すべての企業を会社法ということで縛るというのは不適切で、やはりここで大切なのは、公開されている企業なのか、そうでないかというところで分けていいのではないかなと。取引所及びいろいろなマーケットというのがあるんですが、そこにはある程度プライベート的なクラブの意識というのがあってもいいと私は思っていまして、こういう条件を満たしている会員さんに限って上場しています、ないしは公開していますと。したがって、特に社外取締役のことに関しては、もっと東証が、過半数がいいのかどうかはわかりませんが、それを前面に出してもよろしいんではないかなと思いますね。

ちなみにニューヨーク取引所の場合には、そういうルールがあって、それをある程度満たさなければ上場できないということなので、そこら辺は多分に会社法ですべてのことをクローズするといろいろな困難が出てくるのではないかなと思います。

○翁メンバー

先程から社外取締役のアベイラビリティーというか、その話が出ているんですが、私も非常に社外取締役は重要だと思うんです。日本でよりそれを積極的に拡大していこうと思えば、やはり欧米などで英国や米国などでどうやって社外取締役の裾野を広げる努力をやっているのかということについて少し調べておく必要があるんじゃないか。それをした上で、よりそういった人材を育成していくというプロセスを経ていく必要があるのではないかということが1点です。

あと、もう一つ私自身が問題意識として持っておりましたのは、今回、内部統制報告書制度などができまして、金商法上の会計監査人と、それから会社法上の監査役と、ここについては先程ご指摘もありましたけれども、やっぱりいろいろ重複している点がございます。例えば会計監査人が監査役を含む企業投資全般について、一体どういったところまで、何を評価するのかと、そういう責務があるのかというようなことについて、ちょっと整理をしておくということが必要ではないかというふうに思っています。

以上です。

○柴田メンバー

この監査人に係るペーパーの主張ですが、委員会設置会社では会計監査人の選任議案と報酬の決定を監査委員会に委ねているのだから、監査役設置会社でも同じことを監査役会に委ねたらどうかとあります。この方向だけから考えますと、確かにこの主張にも一理あるように見えますが、別の方向から考えますと、監査役は自らが経営の意思決定には携わらないで、意思決定の枠の外にいて、人のやったことが正しいかどうかチェックする立場ですから、会計監査人を選任するという能動的な意思決定事項にまで手を染めてもいいのかどうかということには議論の余地があり、本来の監査役会のあり方というものを見直さない限り、少し無理があるのかもしれないというふうにも思えます。

○友永参考人

私どもは、監査役がほとんどだという現状を踏まえてこういう意見を出しているわけですけれども、やはり全体の枠組みを変えればまた話は違うというところはあるかもしれませんが、それを前提にする以上、今監査役が行っている会計監査人の監査の方法と結果についての相当性の監査というものは、やはり中身を全部つぶさに精査するとか、そういうことを意味しているのではなくて、会計監査人が適正な監査を実施し得る環境にあって、現実にそれを実施しているかということを見てもらう。これは、欧米における監査役会が監査のプロセスを監視するということと全く同じ意味にとっていいのではないかというふうに考えております。その範疇からすれば、監査が適正に行われるかどうかということは、適正な監査計画に基づいてそれを実行していくというところにつながるわけで、そこにおいて監査役が自らの監査報酬を請求できるのと同じ形でもって会計監査人の監査報酬も最終的な決定をすると。

私ども、経営者を排除して決定をしてほしいと言っているわけではございませんので、実際に監査を効率的にやる上においては、相対して頂く経理部門や内部統制部門といったところの協力が必要なわけで、全体的な観点から相当性を判断して頂いて、監査報酬の適正性も見て頂くと。そして、最終的な決定権を待って頂くということを主張しております。

○池尾座長

どうぞ。

○飛山メンバー

まず1つは、総論のところでございますけれども、私ども東証の立場から言いますと、個々の企業が独自のガバナンスを駆使して株主との良好な関係をつくっている会社もいっぱいあるだろうと思うんですけれども、やはり総じて見た場合に、資料1の1ページ、2ページに書かれている「他方」という意見のところが非常に強いと思っております。したがって、私どもは、国際的に通用する充実した一定のガバナンス機構の確立というのがやはり大事なんじゃないかと思っております。

それで、その上に立って個別の話でございますけれども、まず1つは、上場会社について社外取締役の選任をどうするかというところでございますが、ページで言うと5ページ目ぐらいのところだと思います。これはやはり義務化の方向性ということについては、私どもは非常に賛成だと思っております。

今、社外取締役を求める理由というのは、監査役制度があるわけですけれども、監査役制度が評価されていないということだと思っております。監査役制度を見直すということも必要かと思いますけれども、監査役による監督が不十分であるということが言われております。監査役会設置会社におきましては、半数以上の監査役が社外監査役であるはずなんですけれども、取締役会では投票権を持っていないというようなこととか、妥当性監査に必ずしも権限が及ばないというようなことを言われておりますので、やはりそこら辺で監査役の限界というものがあるんじゃないかということ。

それから、取締役の選・解任権に関わることもございませんので、その点からも監査役の監査では不十分だと思っておりますので、社外取締役の選任を上場会社について義務づけていくという方向は正しいんじゃないかというふうに理解しております。

社外取締役を義務づける場合においては、社外取締役の定義に独立性の観点というものを加味して頂きたいと思っております。従来から言われているとおりで、親会社の出身者が社外取締役として扱われるというようなことはおかしなことでございますし、それから逆に、これは先程説明の中で、社外取締役の要件として、従来の社員等でないということについては、5年だったものが無期限になったということでございますけれども、これは海外に比べた場合には非常に強化されているところでございますので、ここもちょっと海外との関係で見直しをして頂く必要があるのではないかと思っております。これは特に社外の定義のところに独立性の観点を加えたときには、人選という観点からも必要なんじゃないかということでございます。

それから、義務づけるに当たっては、50%以上の会社がまだ社外取締役を採用していない会社でございますので、慎重に進めないといけないのかなということは思っております。

それから、先程取引所がルールメークしたらどうかということを言われたわけですけれども、これは1つの考え方だと思っておりますが、やはりアメリカと違って、日本は単一法でなおかつ会社法の中に大会社という区分がありますので、そこを活用することによって、上場会社をかなり縛れるんじゃないかと思っておりますので、そういうことも検討頂きたいと思っております。どういう法分担をするかということは別途また検討すべきことでございますので、その場でも言わせてもらいたいと思いますけれども、そんな感じを持っているということでございます。

○鹿毛メンバー

先程の上村先生のご意見を私も大変興味深くお伺いしました。例えば投資家の立場で企業の方とお話しするときに、社外取締役によるチェック機能が日本は少ないという問題提起をすると、すべてではないんですけれども、特に大企業の一部からは、その代わりに監査役というのがあって、しかも社外監査役がいるから、いわば欧米で言う社外取締役の少なくともチェック機能を果たしているんだよという答えが帰ってきます。もちろん取締役と監査役とでは法的、論理的にもいろんな点で違いがあるわけですが、ただ、実際問題として「社外」の目が入って、取締役会が少しずつ変わってきている面もなくはない。この辺をもう少し詰める必要があるんじゃないか。他方、監査役制度については海外から見た場合に中々わかりにくいものです。そもそもこういう制度がない。

つまり望ましい取締役会機能、社外取締役機能を考える場合、今ある社外監査役機能に、もう少し工夫の余地があるのではないかという感じが、私もいたしました。これも、恐らくいろいろな変化を起こしていく上での、いわば第1ステップではないかとは思います。

それから、最後のところの取引所のルールメークのところです。先程ご意見がありましたけれども、私は法律という形でやっていく上でのいろんな意味での理念的整理の壁とか、ここにあったようないろんな多様な意見ということを考えた場合に、やはり段階的に考えるときは、取引所のルールというのも現実性を持っているのではないかと思います。特に、幾つかの海外の事例等を見ても、やはり法律でなく取引所による規制というものが実質的にはワークしている、あるいは存在しているケースも結構見られるようです。この点も議論の対象になるだろうと思います。

以上です。

○大楠参考人

もともと、この金融審議会の大命題が、資本市場の国際化ということであれば、やはり海外からもちゃんと安全に資金が入ってくるというのが非常に重要でありますし、今の証券取引所自体が国際化して国際競争が起こって、どうしたら日本の投資家が我が国へ来てくれるだろうかという競争が今起こっているわけですね。

そういう意味で、海外の機関投資家も安心して入ってこれるようなルールづくりを東証さんにぜひ頑張って頂きたい。やっぱりそれは上場会社じゃないと意味がないので、一般の上場していない会社に対してそこまでの規制が必要かというと、上場していろんな株主が入ってくる会社との間では差があって当然だと思っていますし、そういう意味では東証さんがやっぱり独自のリーダーシップを発揮して頂きたいと思っております。

○根本メンバー

海外の投資家とよく接触する機会があって、その関係から申し上げると、いろいろ申し上げることはいっぱいあるんですけれども、絞りますと、1つは社外取締役が少ないということは、大変ネガティブにとらえられているということです。

社外取締役が過半数いれば、問題が解決するとか、全くそういうことではないんですけれども、やはり、ないとか少ないということに対して、一方、多いということは、それだけやはりチェック機能が働きやすいとか、内部の閉鎖的な論理からもっと一歩離れた議論ができるんじゃないかとか、プラスにとらえることは間違いなくて、個人的にはこの上場企業の義務化ということに賛成いたします。

あと、この論点に入っていないことで伺いたかったのは、取締役の報酬の決定とか開示ですね。ここも、よく投資家から聞かれるところでして、今、アメリカでも非常に大きな問題で、投資家の関心も高いところです。日本において、そういう基準自体、報酬額とかも違うので議論に値しないと考えていいのか、あるいはそうでないのかというのはちょっと整理してもよろしいのではないのかなと思いました。

というのは、報酬額、個人の額もそうなんですけど、決め方というところが長期的な業績に連動しているのか。今、アメリカでは短期的な収益にあまりに傾斜していたというところが見直されているんですけれども、そこに対しての考え方というのは、仮に個別報酬を開示しなくても、もう少し考えを示していいのではないかという気がしています。

あと、仮に日本で法外な報酬を経営者がもらっていないので、問題がそんなにないんだとすれば、むしろそれを開示することで海外の投資家はそれをプラスに見るということはあるんではないでしょうか。

○岩原メンバー

2点申し上げたいと思います。

1点は、一番最後の今日の論点整理の11ページのところのルール整備の手法をどうするかという問題に関してであります。実は、昨日このスタディグループに関する記事が新聞に出たところ、私の先輩の会社法の先生からお叱りのメールを頂きまして、このような社外取締役の義務づけのようなことを金融庁の会議で議論するというのは、果たして金融庁の権限に則っているのであろうか。これは本来、会社法の問題ではないかというお叱りのメールを頂いたところであります。

確かに先程飛山さんからお話がございましたように、むしろ会社法の方でこういう問題について考えてほしいというご意見もあることは、十分承知しております。

しかし、この金融庁のスタディグループでこういう検討をするというのは、先程から何人かのメンバーの方のご意見にございましたように、日本の金融・資本市場をアトラクティブなものにするために、金融庁としてやれる権限の中でどういうことができるのか。その方針を検討するというのが、このスタディグループでの検討の趣旨だと思います。

金融庁に係る最終的な権限としては、恐らく一つは、先程から議論のあります上場規則の形で、こういうことについて何らかのルール化を図るということがあると思います。上場規則ということになりますと、これは証券取引所を監督する権限のある金融庁の権限の問題でありますから、上場規則として上場企業のガバナンスについていかに関わるべきかと言う事を考える上では、本スタディグループでこういう検討をすることが必要であると思います。

恐らくもう一つの権限行使の可能性は、金融商品取引法上の開示においてガバナンスについての開示をさせるという形で、マーケットの力を借りてガバナンスの強化を図ることにあると思います。金融商品取引法を所管している金融庁の権限として、そういうことを検討することは十分考えられるのではないでしょうか。

そういう意味で、ガバナンスの問題について、金融庁のこういう会議で検討するのはけしからんということには私はならないとは思います。ただ、その先の問題として、やはり上場規則なり金商法上の開示という形でガバナンスについての改善を図るのか、それとも会社法の改正という形で図るべきなのか、それは十分考える必要がある。これは両法の適用範囲も違いますし、効果も違います。効果について言えば、この論点整理にもありましたように、例えば金融庁ですと、監督検査権限という形でチェックをする、上場規則ですと上場審査や上場廃止ということになるのに対して、会社法の方でいきますと、これは登記の際の審査や私法上の効力を無効にしたりするという形で守らせることになっていくわけですが、それで実効的なガバナンスの改善につなげることができるか、疑問のありうるところです。

もう一つの違いは、やはり適用の対象範囲が違ってきますので、これは問題に応じて、どちらの法でやったらいいのかということは違ってくるのではないかと思っております。

先程の飛山さんの上場規則でガバナンスについて規制することに、ある意味でやや消極的なご意見がございました。私の見るところ、今まで日本の証券取引所は上場規則の形で、こういうガバナンスの問題を上場会社についてルール化するということに極めて消極的というか、ほとんどやってこなかった。これを変えられるのかということが大きな問題としてあると思います。これは、まさに日本の証券取引所のあり方の根本に関わるところで、これは十分考えていく必要がある。

じゃ、アメリカは何で上場規則によって上場企業のガバナンスについて強力に規制するようになったかというと、これは前回も申し上げましたが、アメリカは連邦と州の権限の違いがあって、会社法の立法は州の権限であり、そして連邦は証券取引法という形で初めて規制ができる。州会社法は会社にその州を設立準拠州にしてもらうと税収が入るので、会社経営者に極めて甘い。そこで連邦としては、証券取引法という形で規制するものですから、それで会社法的な問題を規制しようとすると、結局、証券取引所の上場規則という形で規制せざるを得なかったということがあって、結果的に上場規則という形でガバナンスの規制が行われたわけであります。

サーベンス・オックスレー法もそうであります。同法が監査委員会は独立取締役により構成されなければならないということを規制しているのは、上場規則をつくらせるという形の立法の形式をとってやらせているわけであります。アメリカの場合はそういう事情があるということを認識した上で、日本はそういう問題がないわけですから、さっき申し上げましたようなファクターを考えて、どちらの法でガバナンスに関するルール化を図っていくことが適切かということを検討する必要があるというふうに考えております。

それともう1点、会計監査人の報酬決定権につきましては、これは友永さんなどと監査役協会の研究会で随分議論をして、そこで申し上げていることで、あまり詳しくはここでは申し上げませんけれども、さっき柴田メンバーがおっしゃった問題が実質的な問題としてあると思っています。現在の監査役に、アメリカのサーベンス・オックスレー法などが定めております監査委員会が会計監査人を選任しその報酬を決定するといったような権限を与えるだけの相応しい能力と素質があるのか、そういうことを実行するだけの体制ができているのか、ということが大きい問題であって、まず、そういうことができるような体制をつくることが必要ではないか。会計監査人の選任、報酬の決定等について監査役が決定権を持つということになっても、株主は勿論、経営者にとってもそれで十分納得できるような決定が行われるような、まずそういう条件をつくることが必要ではないかというように考えております。

最終的には、柴田メンバーがおっしゃいましたように、経営者の選・解任権を持っている監査委員と、そういう権限を持っていない監査役で、果たして本当に同じだけの機能を果たすことができるのかというのが、最後に残る問題ではないかというように考えております。

以上であります。

○池尾座長

それでは、もう時間になりましたので、引き続きの議論は次回に継続して議論をして頂くということで、本日に関しましては以上で審議は終了とさせて頂きたいと思います。

最後に、事務局の方から日程等につきましてご連絡をお願いいたします。

○池田市場課長

それでは、次回の日程についてお知らせをしたいと思います。次回につきましては、2月10日の火曜日、午前10時からということでお願いをしたいと思います。

次回につきましては、今、池尾先生からもありましたように、今日の議論を踏まえて必要に応じ補完的なご議論を頂くとともに、もう一つの議題であります機関投資家による議決権行使あるいは会社と投資家との間の対話の充実など、投資家の行動等をめぐります問題についてご議論をお願いしたいと考えております。

以上でございます。

○池尾座長

それでは、以上をもちまして本日の会合は終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

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