金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第23回)議事録

日時:平成21年6月10日(水)10時00分~12時00分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○池尾座長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループの通算第23回会合を開催いたしたいと思います。

皆様には、本日はご多用中のところご参集頂きまして、誠にありがとうございます。

それでは、いつものことですが、本日も議事は公開の形で行わせて頂いておりますので、会議に先立ちまして一応お断りしておきたいと思います。

それでは、早速本日の議事に入らせて頂きたいと思いますが、本日はこれまでの議論を踏まえまして、このスタディグループとしての報告の案文を事務局にご用意して頂きましたので、これにつきましてご審議を頂きたいというふうに思っております。意見が早くまとまったイシューもあれば、なかなか幅広い意見が出て取りまとめが難しいイシューもあったわけですけれども、報告案文が一応用意されております。

それで、この報告案文に関しましては、各メンバーの皆様には事前にご送付申し上げていると思いますので、つきましては読み上げというのはちょっと省略させて頂きたいというふうに思います。それで、事務局からポイントだけを最初に確認の意味で説明して頂いて、それから審議に入らせて頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、ポイントの説明をお願いいたします。

○池田市場課長

それでは、ただいまご指示がありましたとおり、報告(案)のポイントについてご説明させて頂きたいと思います。

まず1ページ目から、「 I .はじめに」ということで、上場会社等のコーポレート・ガバナンス強化の重要性についてご指摘頂いたことを整理しております。

1ページ目の下から2行目あたりから、今回の金融危機発生の過程において、欧米の制度が必ずしも有効に機能しなかったのではないかというご指摘もございました。この点について、そうしたことではありますが、このことはコーポレート・ガバナンスの重要性を否定するものではなく、これらの国でもコーポレート・ガバナンスの強化に向けて既に取組みが開始されているということを書かせて頂いております。

また、我が国上場会社等のコーポレート・ガバナンスについては、我が国において真にその実効性が確保できるものであることが求められると同時に、我が国市場が国際化している今日、国際的なレベルでの信認を確保するということも求められるということを記載させて頂いております。

2ページ中程から、市場における資金調達等をめぐる問題としまして、上場会社等の資本政策をめぐるガバナンスの強化の問題について整理をしております。

1.が新株式の発行等ということでございまして、3ページの(1)のところでは、第三者割当増資一般につきまして、資金使途の詳細、あるいは割当予定先の詳細、さらに4ページにかけまして、割当先による資金手当ての状況等について適切な開示を求めていくということを書いてございます。さらに、有利発行に該当するかどうか明確でないものについて、監査役による意見表明を求めていくといったことを記載してございます。

それから(2)では、特に大幅な支配比率の希釈化や支配権の移動を伴うような第三者割当増資につきまして、経営陣から独立した者からの意見聴取や株主総会決議など適正手続を確保するということ。それから、問題ある事案については、取引所において厳正な審査を行い、問題があるものについては厳正な措置を講じるということを記載しております。

それから(3)は、特にMSCB等の発行につきましては、現在既に取引所や日本証券業協会においてルール整備が行われているわけですが、5ページになりますけれども、経済的にMSCBと類似したスキームについても、MSCBと同様の規制に服するようルール整備を図るということ、さらにMSCBに係る開示の充実を図るといったことを記載してございます。

(4)は、併せまして、執行面の充実・連携強化ということを書いてございます。この関連では、不正行為一般の禁止を定めております金融商品取引法第157条、あるいは裁判所による差止めを規定しております第192条、こうしたものの活用を図っていくということも課題として記載させて頂いております。

6ページでございますが、2.キャッシュアウトの3行目に括弧書きがございますが、現金を対価として行う少数株主の強制的な締め出しの問題について書いてございます。

「このため」から始まります段落ですが、取引所において審査を行い、問題があるものについて厳正な措置をするということ。それから、キャッシュアウトの予定がある場合等について開示の強化をしていくということを記載してございます。

さらに、3.グループ化としまして、持株会社等を用いた企業のグループ化への対応ということで、下から2行目ですが、取引所が掲げておりますコーポレート・ガバナンスの原則というものが、親会社単体だけではなく企業集団全体において実現されるべきことを明確化していくということ。さらに、子会社が重要な行為を行った場合に、子会社の経営陣の見解が親会社を通じて、親会社の株主に対して適切に開示されるような枠組みを考えたらどうかということを書いてございます。

さらに、なお書きのところでございますけれども、企業集団におけるコーポレート・ガバナンスの徹底を図るという観点からは、いわゆる企業集団法制の整備が重要であり、法制面での検討を期待したいということを記載させて頂いております。

4.は子会社上場の問題でございます。この問題につきましては、当スタディクループでも若干の議論があったところでございますが、第2段落には、子会社上場自体を否定することは適切でないというご指摘をご紹介しております。他方、こうした上場というのは、必ずしも望ましい上場政策とは言えないという指摘もあったものと考えております。

そして、この問題につきましては、今後そのあり方が真剣に検討されるべきであると記述した上で、少なくとも利益相反関係や親会社による支配の弊害を解消し、少数株主の権利を保護するための十分な措置が講じられる必要があるとし、さらに次の段落で、仮に今後も子会社の上場が認められていくのであれば、親会社や兄弟会社などの出身でない社外取締役等の選任を求めるなど、実効性あるルールの整備が検討されるべきであるということを記載させて頂いております。

それから8ページ、株式の持合いの点でございます。この点につきましては、第1段落で資本の空洞化等の問題を指摘するとともに、上場会社間の持合いに関しては、市況の変動等を通じて、上場会社等の財務内容に影響を与える等の影響についても言及をさせて頂いております。

そして、一部の会社においては、持合いの状況について自主的な開示が行われているわけですけれども、このような開示の一層の促進を図るということ。そして将来的には一定の持合い状況についての開示の制度化に向けた検討が深められるべきであるとさせて頂いております。

それから、なお書きのところは、特に銀行との持合いについて記載しておりまして、現在、銀行等保有株式取得機構による株式等の取得が再開されているところでございますが、その積極的な活用が望まれるとさせて頂いております。

それから、 III .からが、ガバナンス機構をめぐる問題でございます。

9ページの中程から、取締役会のあり方ということでご議論頂いたところの整理を試みております。

下から2行目のところで委員会設置会社制度について記述をしておりまして、これは内外の投資者等には一つの分かりやすいコーポレート・ガバナンスの枠組みであるとしながら、現状、東証の上場会社でこれを採用しているのは2.3%にとどまるということで、近い将来に委員会設置会社化を選択するということは、多くの上場会社にとって現実的なこととは考えにくいというご指摘があったかと思います。

それから次に、内外の投資者等からは、取締役会の例えば3分の1ないし2分の1以上を社外取締役とすべきであるという指摘があったことをご紹介しております。その上で、社外取締役につきましては、当該企業の経営に必ずしも通暁していないといった指摘があったかと思いますが、他方、平時における経営者の説明責任の確保、あるいは有事における社外の視点を入れた判断の担保等の役割が期待されるという指摘があったものと考えています。

ただ、こうした2分の1、3分の1といった形で社外取締役を中心とした取締役会の設置ということを上場会社等一般に求めるということを考えました場合には、会社法制で設置が義務付けられている監査役会との重複といったことも問題になってくるという面があろうかと思います。

それで、10ページの下から2行目のところですが、我が国のいくつかの上場会社等においては、独立性の高い社外取締役を1名ないし複数選任した上で、監査役会や内部監査・内部統制担当役員等との連携を図っていくという形でガバナンスの強化が行われているということを記載しておりまして、こうしたものは我が国の法制等との整合性を保ちつつ、実現可能な、国際的にも通用し得る一つの望ましいモデルとなり得るのではないかと書いてございます。

この点については、コーポレート・ガバナンスのあるべき姿は多様であって、一律に論じることは困難だという指摘があったかと思います。他方、東証の上場会社のうち55%の会社が社外取締役を一人も選任していないという現状とは相当の乖離があって、改善に向けて努力の余地があるということを書いてございます。

最後の段落ですが、取引所においては、上記の考え方に沿って、多くの上場会社にとって、株主・投資者等からの信認を確保していく上でふさわしいと考えられるコーポレート・ガバナンスのモデルを提示し、それを踏まえて、上場会社に対しては、それぞれのガバナンス体制の内容とその体制を選択する理由について十分な開示を求めるということを記載させて頂いております。

2.は監査役の関係でございますが、ここのマル1マル2マル3と掲げてあるような措置を望ましい事項と位置づけて、各上場会社の取組み状況を開示していくということを記載してございます。

3.は、社外取締役・監査役の独立性の点ですが、2番目の段落になりますけれども、親会社、兄弟会社などの出身者の取扱いについては、冒頭の方で出てまいりました子会社上場に関わる問題でありまして、これらの子会社上場のあり方や、少数株主の利益保護策等について、早急な検討が進められるべきであるとしております。

他方、大株主企業、主要取引先などの出身者についても、独立した立場とは言い難いケースがあり得るとしつつ、一方で、こうした者について形式基準で一律に除外するということはなかなか難しいという指摘があったかと思います。したがいまして、ここでは会社との関係について、開示の充実を図った上で当該者の独立性に関する会社の考え方について適切な開示を行っていくということを記載させて頂いております。

監査人の選任議案・報酬の決定権につきましては、13ページの方が結論部分になりますけれども、こうしたものを監査役あるいは監査委員会の権限とすることについて、金融審議会の公認会計士制度部会の方で既に提言が行われておりますけれども、こうしたものについての検討の促進を求めるとの内容になっております。

5.の役員報酬の開示につきましては、最後の4行あたりが結論部分になろうかと思いますが、役員報酬の決定方針、あるいはストックオプションなども含めた報酬の種類別内訳についての開示の充実ということを記載しております。

IV .からが、投資者による議決権行使等をめぐる問題でございます。

14ページ、1.では、的確な企業評価に基づく投資ということで、適時かつ公平・公正な情報提供を含めたディスクロージャーの充実、あるいはアナリスト機能の充実、市場における価格発見機能の確保といったことを記載しております。

2.が議決権行使の問題でございますが、(1)では、受託者責任に基づく適切な議決権行使の徹底ということで、15ページのなお書きの段落になりますけれども、米国のエリサ法のような法制の整備ということにも言及をさせて頂いております。

(2)は、機関投資家による議決権行使ガイドラインの作成、公表について、業界ルール等によるルール化が進められるべきであるとの内容になっております。

(3)は、議決権行使結果の公表についてですが、これにつきましては、議決権行使結果を整理・集計の上、公表することについて、業界ルール等の整備が進められるべきであるとしてございます。

なお書きでは、米国で2003年以降導入されております投資会社に対する個別議案ごとの議決権行使結果の公表について触れておりますが、この点については、当スタディグループでもその影響についての懸念の指摘があったところで、なお幅広い観点から検討される必要があるとさせて頂いております。

(4)は上場会社等による株主総会議案の議決結果の公表でございますが、これについては、各議案の議決結果について、単に可決か否決かだけでなく、賛否の票数まで公表することについてルール化が進められるべきであるとしております。

議決権行使に係る環境整備を(5)で記載した上で、(6)で特に議決権電子行使プラットフォームの利用促進について記載しております。17ページの方になりますが、利用促進に向けて、例えば一定の上場会社に対する利用義務化の検討などを含め、積極的な取組みが求められるとしております。

(7)は、有価証券報告書・内部統制報告書の株主総会への提出を行いたいと会社が考えます場合に、現在の金商法令の規定が制約となり得るとの指摘があったところでございまして、この点について所要の手当てを講じるということを述べております。

3.は対話の充実ということについて記載しております。18ページの冒頭の方で、経営に対して建設的にものを言う投資者の厚みをいかに確保していくかということを記載しております。

V .は、上場会社等のコーポレート・ガバナンスに係る規律付けの手法の問題についてご議論頂きました点を整理させて頂いております。冒頭2つぐらいの段落で、いわゆる公開会社法制の構想について記載をさせて頂いております。

一方、こうした構想の意義の一方で、現実には会社法と金融商品取引法の組み合わせで規律をしてきている中で、直ちに「公開会社法」という法律を整備するということについては、なお課題があるとのご指摘があった点を紹介させて頂きまして、「したがって」のところで、法制のあり方については引き続き幅広く検討を行っていく必要があるとさせて頂いた上で、同時に、現在、会社法制と金商法制の規律の間に重複・すき間がないかとの指摘もございますので、この点につきまして、その整合性を分析・検討し、過不足のない投資者保護を図っていくということを記載させて頂いております。

19ページは、やはり同様に、取引所ルールの役割についてもご議論頂いたものを整理してございます。2番目の段落になりますけれども、市場運営の適正を確保するという取引所の本来の役割を果たすために、こうしたコーポレート・ガバナンスについて取引所が適切な規律付けを行うことは極めて重要なことであり、かつ取引所の使命でもあるとさせて頂いております。

なお書きのところは、従来、法の補完ということが強調された結果、取引所ルールについて、内容面においても法令と比べ劣ってもいいと受けとめがちだったのではないかとの指摘があった点について触れさせて頂いております。

「さらに」のところは、将来的な問題提起かと思いますけれども、現在、取引所ルールは上場会社と市場仲介者であります証券会社を規律するものと位置づけられておりますけれども、今後、市場参加者であります投資者に対する規律という役割が適切なケースも想定されるのではないかということで問題提起をさせて頂いております。

最後、「おわりに」のところは、「貯蓄から投資へ」という歩みとの関係について記載させて頂いておりまして、最後になりますが、「貯蓄から投資へ」の流れと「上場会社等のコーポレート・ガバナンスの強化」は密接不可分の関係であるということを記載し、今後も車の両輪として、強力に進められていく必要があるということを記載させて頂いております。

どうかよろしくご審議頂ければと考えております。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいま説明して頂いた報告書案についてご意見を頂きたいと思います。それで、ご自由にご議論頂きたいと思うんですが、ちょっと今聞いていまして、どこからでもと言うと、少し分量が多いようなので、3つぐらいに分けて、最初は、「はじめに」と「市場における資金調達等をめぐる問題」の部分。それから次に、「ガバナンス機構をめぐる問題」の部分、13ページまでですね。それで最後に、13ページの「投資者による議決権行使等をめぐる問題」以下の3つぐらいに分けてちょっとご意見を伺いたいと思います。ただし、報告書全体を通じてのご意見というのも当然おありかと思いますので、最初、「はじめに」から II .のところのあたりのご意見を頂きたいと思いますが、もし報告書全体にわたってご意見がございます場合は、それも出して頂くということで、最初の3分の1ぐらいの部分に関するご意見、あるいは報告書全体にわたってご意見がございましたらお願いをしたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

どうぞ、お願いします。

○江原メンバー

それでは、トップバッターということで、2、3、コメントさせて頂きたいと思います。

まず冒頭に、今回のこのドラフト、大変な作業だったのではないかなと察します。なかなかまとまりにくかった論点等もたくさんあったかと思いますが、一応まとめという意味では大変よくできたドラフトであるというふうに私は認識しております。ご苦労様でした。

2点、細かいところで意見を述べさせて頂きます。まずキャッシュアウトのところですね。ここにも書かれてありますが、諸外国においては、結構明確なルールというものがパーセンテージで示されておりまして、多分90%という数字が一般的ではないかなと思われるんですが、日本においてはここは必ずしも明確ではなく、ここには3分の2以上あれば可能のように書かれてありますが、実際こういうふうなことを考える者としては、3分の2では不十分というふうにほとんどのケースで判断されていると思います。したがって、非常にシンプルな、もう90だったら90という数字、85でも95でもいいんですが、それを明確化して頂ければ、ルールがはっきりして、また、その90という定義もきちんとして頂ければよろしいのではないかなと思います。

第2点、8ページの株式の持合いでございます。これはちょっとガバナンスの議論とは大分離れてしまうかもしれませんが、3段目にあります銀行による持合いということで、去年の秋口から経済危機ということで課題はたくさんあるんですが、その中で、やはり銀行が持っている持合い株というものから来る自己資本比率の問題、それがさらには貸し渋りというふうな、悪い状況になると銀行が貸しづらくなってしまうような構造的な問題にやはり着手しなければいけないんじゃないかなと、私は個人的には思っております。

過去15年を見れば、確かに銀行による持合いというのは数字的には減少しているということなんですが、トレンドとしてはそれはよろしいんでしょうけれども、一方で、ここ2、3年は、敵対的な買収に対する防衛策ということもあり、若干増加していると。銀行からすれば、非常に歴史的な関係のあるところの株は売り切れないんだというのが多分に本音だと思うんですが、ここら辺はむしろ金融庁の方で、もうルールとして、銀行は利益相反等々が色々絡み合っていることでもあるので、一切持合いは禁止というふうなことをルールとして出されれば、むしろ銀行としてはやりやすいのではないかなと。それはひいては、先程言いましたように、経済が悪くなったときに対する対応策という意味では抵抗力を増すような効果も期待できるのではないかと思いました。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

どうぞ。

○小山田メンバー

すみません、銀行に身を置く者として今の意見に一言。

基本的にやはり株の保有リスクというものは非常に高いというのは改めて今回の経済危機の状況の中でも実感しているところです。

ただ、元々銀行の保有株式につきましては、例えば私どもMUFGグループですと、平成14年から平成20年の間に大体9兆円を超えていたものが、今4兆円を割っているということで、簿価ベースでは半分以下に落としてきております。これは法律が入って、中核的自己資本以内に抑えなさいという話にもなっておりますし、今私どもはむしろ中核的自己資本の半分ぐらいまで抑えたいということでやってまいりました。

ただ、足元の株式市場のこういう状況を踏まえて、さらに我々としてもリスクを落とすために株式を減らしていきたい。ここにありますように、まさに銀行等保有株式取得機構等をうまく活用させて頂きながら、そういうことはしっかりやっていくんだろうというふうに思います。ただ、一方で株式を持つということについては、やはり取引先とストラテジックな関係をつくる、中長期的な関係をつくるという側面もございますので、これはやはり後者の、あるいは個別の銀行の取引先も含めて、色々な戦略面の要請もあろうかと思います。ですので、そこを一律に禁止するというのはなかなか正直言って難しいんだろうと思います。

ただ、株式の保有リスクが非常に高まる中で、保有意義の見直し等は一生懸命やっている状況でございますので、そういった環境をよく認識しながら、個社毎にしっかり判断しながらいくということだろうと思います。ただ、全体の流れとしては、やはりこのリスクを考えますと、保有意義に対する目線はどんどん上がっていくんだろうというふうに思いますので、そうした中で、持合い株式の保有のウェイトが下がっていくということは、当然トレンドとしてはあるというふうに認識しております。

銀行等保有株式取得機構もうまく使いながら、そういう対応はしていきたいというふうには考えておりますが、先程おっしゃいましたような、一律禁止というのがなじむか、なじまないか、ここはちょっと難しいところではないかなというふうに思います。

あと、ここに保有状況の情報公開ということもございます。これは確かに、しっかり考えていかなきゃいけないテーマだろうというふうに思います。ただ、何を以って持合いと言うのか、なかなかちょっと難しい部分もございますので、この辺のところの定義のあり方とか、その辺はしっかり議論させて頂きながら、さらに検討を深めていくと、こういうことだと思います。

以上でございます。

○池尾座長

自己資本比率規制の見直しというふうなことが課題になっていると思いますから、その中でまた今出た論点というのは当然議論されていくことになるかというふうに思います。

それから、江原メンバーが最初におっしゃった、キャッシュアウトをやる側からすると数字がはっきりしていた方がいいというのは、誰に決める権限があるんでしょうか。

○池田市場課長

ちょっと私が答える能力があるかどうかですが、理解しているところでは、法律上はここに書いてあるように、特別決議というものに関わりますから、そのまま3分の2というのが原則的な数字になるかと思うんですけれども、実際にマーケットで起きているケースの多くは、確かに江原メンバーご指摘のように、こういう数字でやっているケースは少なくて、もっと高い数字にして、恐らく株主との関係を考慮されているということだと思いますが、逆にそういうぎりぎりの水準でやっているものが皆無かと言われればそうでない面もあって、こういう問題指摘になってくるんだろうと思います。

恐らくこれは、最終的には、株主との関係が問題になれば、裁判等で答えが出されてくるだろうと思います。そういう訴訟を懸念しつつ、一般には江原メンバーがご指摘のような高い水準になってくるということかと思いますので、これをあらかじめ明確化するというときに、私法関係を規律するのにどこで明確化すればいいかというのは、ちょっと我々としては難しい部分があります。

○池尾座長

岩原メンバー、ご教示頂けますか。

○岩原メンバー

その問題はまた後で。

今、全体に対することだけですか。

○池尾座長

全体、あるいは最初の部分。

○岩原メンバー

まず、全体に関して申しますと、これだけ多様な意見のあるところを、よくここまでおまとめ頂きましたことに大変感謝申し上げたいと思います。そこで、むしろ個々の問題についてよろしいでしょうか。

II .の資金調達等をめぐる問題の中で、最初に、新株発行等で第三者割当増資が取り上げられているわけですけれども、基本的な考え方は私もこれに賛成でございます。ただ、ちょっと細かいところで、例えば4ページで、これは趣旨のご質問ですけれども、第2パラグラフのところの「さらに」以下ですが、「有利発行に該当するかどうか明確でない第三者割当増資については、その適法性を担保するため、取引所において、監査役による意見表明を求め、その公表を義務付けることが適当である」というふうに記載されていますが、ここで主に対象にしているのは上場会社のことですね。上場会社の場合ですと市場価格があるわけですから、有利性は原則としては市場価格で判断できて、それほど難しくないことが多いと思います。ということは、ここで書いてあるのは、例えば企業買収等がかけられて、株価が急激に大きく変動して、いわゆる日本証券業協会の6カ月ルールが適用されるような場合を念頭に置いて書かれているのでしょうか。そういうときに監査役の意見表明等を求めるべきだということが書かれているのか、まずその趣旨をお聞きしたいというのが第1点であります。

それから、その次の(2)のところで、大幅な支配比率の希釈化等を伴う大規模第三者割当増資への対応として、取引所が、恐らくこれは上場基準等を用いて株主の利益を守るために厳正な審査を行うべきだとしています。金融商品取引法の下での対応としては、私もこれが適切ではないかと思います。ただ、この問題は、本来、上場会社に限る問題ではないように考えておりまして、こういう第三者割当増資により不当に既存株主の利益が侵害されるようなケースというのは、むしろ非上場会社の場合が多いわけですので、本来は会社法制を含めて見直しが行われることが望ましいと考えております。これは意見であります。

それから、5ページのところで、第三者割当増資についで、MSCB等の問題が出ているわけですけれども、MSCBについては、先程の第三者割当増資に比べると発行条件の合理性の判断がはるかに難しいわけです。第三者割当増資は、さっきも申しましたように市場価格があるわけで、ほぼそれに沿って判断すれば通常は足りるわけですけれども、MSCBには市場価格がない。MSCBの方がある意味で発行条件が合理的かどうかということの判断はより難しいわけであります。先程の第三者割当増資について、かなり手厚い手続的な保護・開示等が提案されているのと比較して、MSCBの方が割と簡単に、単に開示の充実を図る等の措置が講じられるべきであると書いてありますが、むしろ難しいのはこっちの方であって、先程の第三者割当増資について書かれているのと、少なくとも同等の措置が考えられていいのではないかと思います。

例えば、仮に監査役の意見表明を第三者割当増資に求めるのであれば、こっちだってあり得るのではないか。ただ、さっきの第三者割当増資について、監査役の意見表明を求める趣旨が、そういう企業買収絡みのことを考えていたりすると、あるいは違ってくるのかもしれませんけれども。先程の第三者割当増資についてかなり手厚い開示のやり方等が書いてあるのと比較して、第三者割当増資についてそれだけのことを考えるのであれば、MSCBについても考えられるべきではないかという感じがいたします。

それから、6ページの、先程も議論のありましたキャッシュアウトのところでありますが、そもそもこのキャッシュアウトとしてどういう場合までを考えているのかという問題があるかと思います。それは海外法制とどこまで比較して考えるかということにもなると思いますが、従来の関係資料で出されておりました海外法制の例を見ると、主にスクイーズアウトのことを考えているようでありますけれども、それ以外にキャッシュアウトマージャーのような場合のキャッシュアウトもあるわけでありまして、それぞれキャッシュアウトと言ってもどこまでのことを考えているのか。どういう場合のキャッシュアウトかによって手続が違っているわけでありますので、報告書の最終的な形としては、恐らく注か何かの形で、より細かく説明した方がいいのではないかと思います。基本的な問題意識は、私もこれに賛成したいと思います。

それから次に、このキャッシュアウトのところの第3パラグラフのところで、取引所がキャッシュアウトについて厳正に審査をすると。さらに、「第三割当増資などの後におけるキャッシュアウトの予定の有無等については、その具体的内容とともに、適切な開示が義務付けられるべきであり、法定開示等の整備を求めたい」と書いてあるんですが、ここで言う法定開示というものは一体何に関する法定開示になるのでしょうか。第三者割当増資をするときの開示でしょうか。第三者割当増資が、募集・売出しに該当する場合の法定開示なのでしょうか。具体的にどういう場合の法定開示を考えて、どういう開示をさせることを考えているのか、それを伺えればと思います。

その後に、キャッシュアウトについての、株主に交付される代金の多寡を争う手続は存在しないという問題が指摘されています。これはまさに会社法の問題でありまして、会社法の問題として検討されればというふうに考えます。

それから、7ページのところの第2パラグラフの「なお」以下のところの「企業集団法制の整備が重要であり、法制面での検討を期待したい」という箇所は、私も大いに検討を期待したいと思います。是非政府全体として、金融庁だけでなく、法務省等においても検討して頂きたいと思っております。

それから、その次の子会社上場に関する問題提起、それから当面のそれに対する方策についても私は賛成したいと思っております。

その次に、8ページの株式の持合いについてでございますが、先程若干のご議論があったところでありますが、第2パラグラフの3行目のところに、「将来的には、相互に又は多角的に明示・黙示の合意のもとで、株式を持ち合っているような一定の持合い状況の開示について、制度化に向けた検討が深められるべきである」とありますが、「将来的には」というのを、できれば「速やかに」というふうにして頂きたいと願っております。

一応8ページまでですと、以上でございます。

○池尾座長

何点か意見を出して頂きましたが、その中で2点ぐらいご質問があったというふうに思います。

それからちょっと、MSCBの方が合理性の評価がより難しいのではないかというご指摘はそのとおりだと思うんですが、もう一つ、こうした手段がどれぐらい頻繁に用いられる可能性があるかという評価が掛け合わされて対処ということになると思うんですね。それで第三者割当増資の方は、我が国において非常にポピュラーに行われている。MSCBについて、今後も非常に行なわれるだろうか、それと類似のスキームが多く使われることになるだろうかというと、そう必ずしも予想されないというふうなことを反映している、取扱いの差になっているということで、もしも第三者割当増資と同じような形でMSCB的なものが今後も頻繁に使われるのであれば、ご指摘のとおり、もっと踏み込んだことが必要だということなんでしょうが、現状ではこういうことでとりあえず対応できるんじゃないかという、そういう判断をしているんですが、ご意見頂ければ。

質問に関してちょっとお願いします。

○池田市場課長

有利発行云々は、具体的な内容は東証の上場制度整備懇談会で議論し、今それを踏まえた取引所規則の検討が行われていると承知していますので、この有利発行に該当するかどうかを明確にする、どういうものを典型的に想定されているかについては、できれば飛山メンバーの方にお願いしたいと思います。もう一つ、第三者割当増資の後のキャッシュアウトについての法定開示の件ですが、ここで念頭に置いておりますのは、第三者割当増資をする際の開示書類、有価証券届出書になります。ここでは上場会社を一般に想定していますが、上場会社の場合は、第三者割当増資をする場合には、ルール上、原則として有価証券届出書が出てくると理解をしておりまして、その届出書の中で第三者割当増資の後にキャッシュアウトなどが予定されている場合には、そのことを記載して頂くということを考えております。

○池尾座長

お願いします。

○飛山メンバー

第三者割当の場合に監査役から意見を求めるというケースですけれども、岩原メンバーが言われたとおり、普通、株価がついておりますので、その株価に沿って判断して頂けばいいので、通常の場合にまで意見を求めるということではございません。私どもで考えているのは、私どもが必要と認める場合に監査役の意見を求めたいということであります。

それは何かといいますと、株価があまり、信頼がおけないというのは変ですけれども、企業買収絡みとかでちょっと一時変動があるような場合に、監査役はどういうふうに考えているのかというようなことで意見を求めたいというように考えております。まだ具体的な例示までは詰めておりませんが、大体そういう方向性ということでございます。

○池尾座長

野村メンバー。

○野村メンバー

キャッシュアウトの話を続けてお話しさせて頂ければと思います。6ページのところ、全般的に非常によくおまとめ頂いているんですが、キャッシュアウトのところは、どちらかというと若干、制度に踏み込んだ書き方をしている割には、少し制度が漠然としているというところがあるので、質問が出てしまうんじゃないかなというふうに思いました。

そこで、ちょっと岩原メンバーがおっしゃったことを踏まえてなんですが、現行法の会社法の中でも、もうこれは釈迦に説法ですけれども、スクイーズアウトと言われる、要するに追い出される人が一切株主総会の決議などで意見を言う機会も与えられずに追い出されてしまうケースというのは略式組織再編として既に法制化されていて、これはもう90%の基準ですので、既にそれ自体は現行法としてあるというふうに、まずきちっとした方がいいんじゃないかなというふうに思います。

問題となっていますのは、例えば合併の対価がキャッシュであるような場合には、存続会社の方に株主として収容されませんので、将来シナジーとかにはあずかれないまま出ていくというケースというのがあるわけです。これは昔からある合併という方法でやりますから、合併で対価柔軟化をしますと、3分の2の基準でというのはご指摘のとおりということだと思います。

そういう中で最近問題となっていますのは、いわゆる全部取得条項付種類株式を使ったりとか、あるいは株式併合等を使って、単純ないわゆる特別決議だけでキャッシュアウトされてしまうということについての問題意識だと思います。実際の実務では、株式の買取の機会を保証するために、全部取得条項付種類株式を使ってキャッシュアウトするということを実務の良心としてやってきておりますけれども、しかしながら、それが株式併合の場合にはそれを保証しなくても法制上問題ありませんので、バランスがとれないという、そういった問題は明確化して指摘して頂いた方がよろしいんじゃないかなというふうに思います。これが最後に書かれてあることだと思いますが、だとしますと、会社法制上、株式買取請求権がないということが書かれていますので、それは一応言及されているということなのかもしれません。

問題となっていますのは、恐らくそういった決議さえ通ればやってもいいのかということについての、たがのはめ方として、諸外国の中には、乗り越えられている国もありますけれども、正当な目的というものを必要とするというような議論があります。その正当な目的というのを株主総会決議の単なる数によって合意がなされただけではなくて、要件として必要なんじゃないかというようなことが議論されている部分もあるかと思いますので、そういったところを明確化して頂いていけばいいんじゃないかなというふうに思います。

それから、キャッシュアウトを予定している事前行動といいますと、いわゆる2段階買収みたいなものがあるかと思います。公開買付けというものが行われて、それでかなりの人たちが少数派になった後、ごねている人たちをキャッシュアウトしていくというときに色々トラブルが起こるわけです。そういうときに、2段階買収の強圧性を排除するために、価格をそろえるといったようなことが実務上行われていますが、これも実務の良心になっていて、実際のところはやらなくてもいいということをあえて訴訟リスクを回避するためにやっているという、そのあたりのところが不明確なわけですから、必要であればそれをルール化していくということを考えて頂ければというふうに思います。

いずれにしても、ここは踏み込んでお書きになっている割には、ちょっと漠然としているところがあるので、既に法制化されているところを明確にするとともに、その他の場面のどこに問題があるのかということをクリアにして書いて頂いた方がいいかなというふうに思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

引き続き、「はじめに」と II .の資本政策の部分につきまして、ご意見がございましたらお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

根本メンバー。

○根本メンバー

この「はじめに」のところも含めて、全体としてとてもバランスがとれて、妥当な内容かと思います。

6ページのグループ化なんですが、ここを書いて頂いたのは大変良いと思いまして、例えば持株会社、親会社がコーポレート・ガバナンスの原則に沿っていても、親会社のコントロールなりリスク管理能力なりが必ずしも十分でない例というのも、ままあるのではないかと思います。やはり持株会社自体、歴史が浅いこともあり、また金融機関の場合、例えば合併をされたものの子会社は統合をしないで緩やかな統合で持株会社形態になっているとか、そういう例もあって、持株会社の機能自体が全体を統括しているところとそうでないところと違いがあるというふうに感じています。ルール化というのが明確になればと思います。

それから、株式の持合いのところなんですが、私も先程、江原メンバーのおっしゃったように、何らかの目標なり、自己資本の半分とか、こういったターゲットを設定して、銀行の持合い株式をなるべく減少させた方がいいんじゃないかと思います。株式保有が構造的に、プロシクリカリティーを増幅させるような要因になっていると思いますし、銀行に限らず、これは事業会社の方も多分そうだと思います。投資家から見ると、市場リスクの大きさに対してメリットというのは色々ご説明を受けてもよく分からないところが多いです。あと、海外投資家から持合いがどのぐらいあるんですか、どのぐらい解消しましたかという質問をよく受けるんですけれども、これに関しての統計なり、数字のものが何もないという中では、できれば開示をして頂きたいと思います。

ちなみに、ご承知とは思うんですけれども、例えばドイツとかも銀行と事業会社は持合いが多かったんですけれども、これも株価の下落を受け、2001年2002年の頃にかなり解消してしまって、今、先進国で持合いというのがあるのは多分日本だけということで、投資家に対してはいつも説明しにくい要因になっています。この後段にあるような、例えば個人とか受け皿となる投資家が投資をしたくなるような様々なガバナンスの改善なり経営の開示なりが進むことも持合い解消の一つの効果というんでしょうか、ガバナンス全体を高める効果だと思いますので、是非ご対応をお願いしたいと思います。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。

じゃ、鹿毛メンバー。

○鹿毛メンバー

この上場会社のコーポレート・ガバナンスの強化に向けてというテーマのスタディグループで、私は機関投資家という、この強化を期待する立場で参加させて頂きました。こういう立場から見ても、今回のディスカッションを通じて、非常に有意義な検討が行われたと思います。報告書全体としても、もちろん上を見ればきりがないという点はありますけれども、現実的あるいは実質的な意味で進展を見た点が確かに幾つか含まれていて、そういう意味では是非評価させて頂きたいと思います。

その上で、2点ほどコメントします。一つは全体に関することで、特に「はじめに」と結論の両方に関わることです。なぜ今この時点でコーポレート・ガバナンスの強化が必要なのかという点について、もう少し危機感の共有というトーンが出てもいいのではないかという感じがします。というのは、確かに日本でも何年か前と比較すれば少しずつは改善しているわけですが、特にこの数年の東京市場の状態、世界市場全体の時価総額に占めるシェアで、例えば80年代の4割というのは行き過ぎだとしても、最近では10%を切るような状態で、内外、特に国内の投資家もあまり株式を買っていない、というような批判も海外からも出てきています。投資家からの評価・信頼が低下しているということは、我が国の株式会社制度から考えても、非常に重大な問題だと思います。もう少し日本経済全体から見て、こういう状況についての危機感が示されてもいいのではないか。そういう観点から、このコーポレート・ガバナンスの強化が必要ではないかという議論が、特に現時点で重要な観点ではないかという感じがいたしますので、ご検討頂ければと思います。

それからもう一つは、情報発信ということです。この数年我が国のコーポレート・ガバナンスについては、政府も問題意識をもち、特に大企業、日本のリーディング企業は、実質的には相当進めてきていると思います。ところが、投資家は世界の投資対象、米国株、日本株、欧州株という非常に幅広い投資対象の中から選んでいくという観点があって、つまり各国市場間の相対比較が非常に大事なわけです。幾らこちらがよくやっていると思っても、国際比較、相対比較の中ではまだ十分でないとなると、やはり投資家からは買われないという事態が現実に起こっているわけです。一方で、アメリカでもイギリスでも、途上国も含めて、世界のほとんどの国では、官民挙げたマクロの意味での、コーポレート・ガバナンスの質も含めたIRを積極的に推進しています。もちろん日本でも個別企業のIRは、積極的にやっていますけれど、政府、あるいは財界等による、マクロの意味での、東京市場全体についてのIR、すなわち情報発信は必ずしも十分ではないという気がします。

具体的には、今回の一つの重要な論点である、例えば社外取締役の問題です。海外の投資家から見れば、日本はボードに対する、あるいは企業に対するオーバーサイト、管理・監督機能が非常に弱い、だから社外取締役が必要だという議論が多く聞かれるわけですが、現実的には様々な形で管理監督機能強化の積み重ねもみられます。半分近い企業には社外取締役が入っているとか、あるいは社外監査役制度がそれなりに機能している面もあり、コーポレート・ガバナンスのストラクチャーという面では評価できる要素もあるわけです。しかしそうした積極面は必ずしも十分理解されていなくて、どちらかといえば、むしろ過少評価されていると思います。

OECDのコーポレート・ガバナンスの議論でも、ストラクチャーとメカニズムが主要論点になっています。ストラクチャー、その組織構造がどれだけ確立しているかということと同時に、もう一つ、そのメカニズム、実効性の問題があるわけです。そして欧米でもストラクチャーについてはある程度、進んでいるとしても、実効性については決して十分とは言えないわけです。逆に実効性に関しては、日本ではこれだけ進んできているという面もあると思います。

ですから、今回のスタディグループでこれだけの中身のある実質的な議論がされて、こういう報告書がまとまったわけですから、この中に情報発信の重要性ということを、これはマクロレベルと企業レベルと両方ありますけれども、これをもう少し強調して頂けないかと思います。同時に、これで報告書ができたから終わりということではなくて、むしろこれの海外への情報発信というアクションが非常に大事ではないかと思います。事と次第では、いわゆるストラクチャーという点からは、若干期待外れというような反応も懸念されるところもあるだけに、むしろ実質的な面では一歩も二歩も進んできているということを強調して頂く必要があるのではないかと思います。それからこの点は、あえて申しますと、本件は公開の議論で、マスコミの方も沢山いらっしゃると思いますから、こういった点についてもご理解を頂いて、結局これは市場間とか国家間の競争という面もあるわけなので、官民挙げた取組みというのが私は必要ではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○池尾座長

大変ありがとうございました。

じゃ、島崎メンバー。

○島崎メンバー

全体としてというか、初めのところに非常にきちっとしたメッセージが出ていると思います。特に1ページ目の「勿論」というところから次のページに至るところは非常に重要なメッセージではないかと思います。

また、2ページの上から6行目、「我が国市場が国際化している今日」云々というところですが、こういうところが非常に大事になってくるだろうと思います。我々がとっているガバナンスについて、やはり内外の投資家が、特に海外投資家がきちっと理解をして頂けるようなアカウンタビリティーというか、説明をしていくことが一番大事なんだろうと思います。

私もこのスタディグループで申し上げましたが、この10年間で、先程来議論になっている持合いの構造が崩れてきて、どこの企業も安定株主比率が大きく崩れてきており、恐らく今はもう3割を切っているような状況になっていて、この安定株主に代わって個人投資家とか外国人投資家が増えてきているということで、そういう人に対する、今鹿毛メンバーがおっしゃったようなIR発信というのは相当されているだろうと思います。

そういう中で、先程来、持合いの話が色々出ていますけれども、会社の投資に対して、どれだけのリスクがあって、どれだけのリターンがあるのかというのは、当然投資家やステークホルダーから説明を求められているわけで、そういうものに見合わないものを持っているということ自体が経営的に許されない状況になってきているんだと思います。その意味からすると、8ページのところにありますが、そういう投資について開示をしていくということについては非常によろしいのではないかと思います。

それでは、外国の金融機関とか海外の企業が、特に金融機関が、そういう投資に対してのディスクロージャーがどうだったかというのは、これはまた色々問題があるわけでして、今回のこういう金融危機も、そういう投資について、実際にはそれだけのリターンがある、あるいはリスクに見合う以上のリターンがあるという基準から全く外れていたわけなので、必ずしもそういうことが十分でなかったということはやはり反省しなければいけないんだろうと思いますが、我が国においてもそういうことをもっと充実させていくということについては非常に結構なことではないのかなと、こう思います。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。

増井メンバー。

○増井メンバー

簡単にご意見を申し上げたいと思います。

非常にうまくまとめて頂いていると思いますが、幾つか私どもの日本証券業協会にも宿題が出ておりますので、そこはきちっとやっていきたいというふうに思っております。

それから、今あまり議論にはなっていないんですけれども、5ページ目の金商法の第157条とか第192条という適用の話ですけれども、なかなか難しい問題ではあるんですけれども、私は非常に大事だと思っていまして、ここに書いてあるから安心してもうそのままになっているというのではなくて、もうちょっと具体的に、どういうふうに適用ができるようになるかというのは、是非検討して頂きたいというふうに思います。

それからあと、もうこれも議論は何回か出ておりますが、株式の持合いのところでございますけれども、先程、岩原メンバーからもお話がありましたけれども、そこの開示のところに、将来的には制度化に向けて検討が深められるべきであるというのは、ちょっと情けない感じがいたしまして、やはり将来的ではなくて、なるべく早くやるということだと思います。

○池尾座長

それでは、時間の関係もありますので、真ん中の「ガバナンス機構をめぐる問題」の方まで進んで、もちろん前のところでまだご意見があるということでしたら出して頂いて結構ですが、真ん中の III .の「ガバナンス機構をめぐる問題」、8ページから13ページあたりまでのところについてご意見がございましたらお願いしたいと思います。

上村メンバー。

○上村メンバー

私も報告で申しましたけれども、資本市場で使える会社法として形成されてきたのが株式会社法でありまして、そうした株式会社の数はそんなに多くなく、資本市場と一体のものとして、強行法規であるという世界が今まで展開されてきていたわけです。それが、バブルが崩壊しまして、ベンチャー用の要請が中心になり、会社法はどんどん任意法規になっていきまして、株式会社の中に有限会社も入るし、大規模公開会社も入るということで、ついに会社の分類は株式会社と持分会社しか種類がなくなったわけですね。そこでは原則が任意法規である。つまり株式会社とは有限会社なりというところまできてしまった。これは強く言えば、今問題になっている資本市場向けの会社法という観点からは、一種の劣化であると思っております。

しかし、そうなりますと、今度は資本市場の要請にかかる部分をどうにかしなければいけないということになります。今までは法務省は株式会社というのは大規模公開株式会社だということでやっていたのが、株式会社とは有限会社だというふうになってきますと、その部分をどこかがやらなければならない。そうすると金融庁とか証券取引所ということにならざるを得ない。本当は法務省なんじゃないかなと思いながらも、しかし、やらなそうなので、そうすると結局、金融庁、取引所が対応せざるを得なくなる。この二箇所が会社法の制定箇所、と言うことになりますが、しかし、従来の通念と違うのでちょっと及び腰というところもあって、結局押し付けやすいところ、それは取引所と監査役ということにどうもなっているという感じがします。全体として会社法制が本当に充実して、堅固な資本市場に立ち向かえるようなものになっていくためには、これはやはり本格的な株式会社法制の再構築が必要だろうと思います。

ただ、それに向かう第一歩といいましょうか、そういう観点はこの報告書案に出ているように思っております。従来ですと到底取り上げられなかったと思われるような公募原則の話とか、市民社会なんていう言葉が出てきたりとか、公開会社が出てきたりとか、やはりそういう大事な観点は出てきているので、こういうものをスタートにして、本格的な株式会社法の再構築に向かわなければいけないと思っております。

証券取引所は一生懸命対応しようとされているんだと思いますけれども、私が報告で申しましたように、やはり取引所ルールの方が制定法より上というヨーロッパ型の取引所になっていくことが、こういう発想を現実化していく前提だろうと思っておりますので、そういう方向で頑張って頂きたいと思っております。

それから、さっき野村メンバーがおっしゃいましたけれども、原則は任意法規で契約は自由となってきますと、今までは、例えば有利発行の場合には正当な理由が要るとか、あるいは株式併合の場合には必要とする理由の説明が要るとか、要はこうした局面は危険な状況だから正当な理由が要るということだったのですが、今の状況ですと、資本市場を想定して、例えば変な分割が行われるとか、変な株式併合が行われるとか、あるいはそもそも第三者割当は、前に申しましたけれども、諸外国では行われないのが原則なわけです。しかし日本ではずっと行われている。何もかも原則自由になった場合には、私はやはり個々の規定の解釈によって、正当な理由というものが常に求められるというような解釈を展開し、そうした判例を積み重ねていかなければならないと思っております。そうしたときに、監査役に意見を聞いたからというようなことが免罪符にならないような、そういう構成を心がけていく必要があるように思っております。

キャッシュアウトにしましても、岩原メンバーはキャッシュアウトマージャーの話をされましたけれども、事業再編というのは人と人の結合だという観点に立てば、対価は株が当たり前なわけですね。だけど事業再編というのは人と物の結合だというふうに考えることに対する抵抗感が日本の社会にあるかというと、あまりないような気がします。だからそういう意味でも、特別決議3分の2とおっしゃいますけれども、しかし特別決議というのは、定足数の3分の1まで下げられるわけですから、要は9分の2でもいいわけです。そういうキャッシュアウトが理論上可能であるという前提になっているということ自体も問題だと思います。第三者割当については、先程申しましたように、そもそもそれをやる場合には合理的な理由、正当な理由がなければやってはいけないんだという原則を立てる必要があると思います。

報告書案については、私はそういうことが書いてないからどうこうと申すつもりはございませんで、とりあえず今日の、今回の報告は色んな将来に向けた視点というか、芽があるというふうに考えますので、これ自体には賛成いたします。しかし、今後の課題が沢山あるということだけ申し上げておきたいと思います。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

じゃ、順番に、八丁地メンバーから。

○八丁地メンバー

あまり熱心にこのスタディグループには参加をしていなかったので申し訳ないと思っています。様々な問題点を指摘して頂いて、大変勉強になりました。

先程どなたかから指摘がありましたけれども、2ページの冒頭の、内外の投資者等の十分な理解を得て国際的なレベルの信認を確保するということが、特に発行会社に対する強いご指導、教訓かと思いまして、そのためには開示をすべし、対応すべしということで重く受けとめて、大いに対応したいと思うところであります。

それで、その中で何点かありますけれども、あまり全体の議論には出てこなかったと思いますが、親子上場の話が出てまいりました。ここに書かれている状況はそういうことかと思われますが、この辺はよく議論をする必要があると思っております。この辺に関しては、東証のコーポレート・ガバナンス報告書においても去年から、「その他コーポレート・ガバナンスに重要な影響を与える特別な事情」という項目が設けられた中で、ここに書かれているようなことは随分開示されていると思います。その辺を踏まえて、広くコンセンサスが得られるように議論をして頂きたいと期待をしております。

それから、全体的に思いますのは、取引所とか投資家の方、もちろん発行会社も含めて、形式と実質のコンセンサスをどこに求めるかということは、これからも変わりなく重要だと思います。

最後の方に書類の開示に関する点が随分出てますが、現実的には、株主総会に合わせてということになりますと、実務的には非常なロードになり、ガバナンスコストの増大ということも随分出てくると思います。コストとベネフィットという面も含めた、市場全体として、ここにかけるコストはどれ位か、ここから得られるベネフィットは何なのかの分析も含めたコンセンサスの形成を、池尾座長、池田市場課長を中心とされて、今後とも是非まとめて頂ければと期待しております。お願いします。

○池尾座長

じゃ、藤原メンバー。

○藤原メンバー

社外取締役の件につきまして、若干意見を述べたいと思います。

国際金融市場で長く仕事に関わってきた者として、金融・資本市場がかなりの速度でグローバル化していき、その間、金融関係者であるなら誰の目で見ても分かるように、日本の金融・資本市場に関しては地盤沈下が起こってきています。投資家サイドの話として、ファンドマネジャーの方から、先程意見が出ていましたが、金融のグローバル化の結果、投資家は誰でも自由に、どの国のどの会社の株を買うか買わないかを決められます。つまり、日本の企業が投資家が望むガバナンスをしていない場合、その企業の株を売却しアジアの他の企業の株を自由に買うことができます。今日は報告書提出前の最後の会合ですので、今まで話したことをもう一度触れてみたいと思いますが、現在、東京の資本市場の6割の取引は外国人投資家による取引です。彼らは日本の上場企業のガバナンスの強化を望んでいるし、特に社外取締役を置くことを望んでいます。資本市場は発行体と投資家によって成り立っているのですから、私たちは発行体である企業の意見だけではなくもっと投資家の話も聞いて改革をしていくべきだと思います、

皆さんもご存じのように5年前に社外取締役の義務化の話が議論され、経営者側からの反対により義務化の話はなくなりました。今回も社外取締役の義務化の話は、業界の人たちの反対で消えたわけです。これはどういう意味かと考えてみると、あと4、5年このままの状態で行くということなのだと思います。日本の金融・資本市場の今後のことを考えると、私は危機感を感じます。このスタディグループメンバーである業界の方達は、一日の取引の6割以上が外資であり、外資の投資家が社外取締役を置くことを望んでも、それは別に社外取締役を置かなければいけないという理由になるわけではないとか、役員会に投資家を代表する社外取締役を置くことで、透明性や説明責任について担保できるのではないかと提案しても、社外を置くことの支持には繋がりませんでした。

1つ質問として伺いたいのは、義務化は産業界の反対により難しかったようですが、東証のルールとして、社外取締役を1人置くことを決定することはできなかったのでしょうか。この辺のところを事務局の方に少し説明をしていただきたいと思います。よろしくお願い致します。

○池田市場課長

今の件は、このスタディグループでもかなりの回数、このテーマの審議に充ててきたところは皆さんご案内のとおりであります。

それで、今回の報告について、事務局という立場でこれまでの議論を整理させて頂いたというつもりでおります。義務化というご指摘もございましたが、一方で、コーポレート・ガバナンスのあるべき姿は企業ごとに多様であって、一律に論ずるのは難しいというご指摘もあったかと思います。

ただ、この報告書案でも示しているように、そのことと、一方で、上場会社の55%の会社において社外取締役が1人もいないということには随分な乖離があるんじゃないかということで、改善に向けての努力の余地があるということを記載させて頂いています。

それで、義務化は難しいけれども東証のルールとしてというご指摘がございましたが、もちろんその点は取引所の方で検討されるべきものと思いますけれども、一応この報告書のメッセージとしては、取引所も含めて、改善に向けての努力ということを記した上で、社外取締役を1人ないし複数置いて、それと監査役等との連携を図っていくということを、現在の法制との整合性を保ちつつ、実現可能なモデルと記載させて頂いた上で、取引所においてそうしたモデルを提示するということは記載させて頂いているというふうに考えております。藤原メンバーご指摘のとおり、義務化かと言われれば義務化ではありませんけれども、株主・投資者からの信認を確保していく上ではふさわしいと考えられるモデルだということを取引所が示していくということは記載をさせて頂いているというふうに考えているところでございまして、私どもの力が足りない分はあるかもしれませんが、事務局としてはこれまでの議論を整理させて頂いたというつもりでいるところでございます。

○池尾座長

野村メンバー。

○野村メンバー

色々議論のあるところだと思いますが、私はちょっと上村メンバーほど勇気がないので、縦割り行政の弊害が出ているとは言えないわけでありますが、やっぱり議論として出ていた問題というのは、外国の投資家から見たときに分かりにくいことは確かなわけですね。分かりにくいというのはなぜかというと、例えば昭和25年の改正まで遡ってみても、元々取締役会というところがなくて、監督をする、監視をするのは監査役だけという、そういうシステムから始まって、そこに昭和25年の改正で、なぜか監視をする役割も担っていて、意思決定もする取締役会というのがくっついたわけですね。それでも監査役という制度が残って、それらが渾然一体として、独立性はないけれども権限だけを持っているボードというのがあまり機能しない中で、何か言われると、独立した監査役がいますと言い続けてごまかしてきたという長い長い歴史を持っているわけですよね。

こういうような状況の中で、我が国のガバナンスがやっぱり分かりにくいということもあると思うんですが、じゃ、そのことを説明するのは個々の企業だけの責任なのかという問題をちょっと考えてみる必要があるような気がするんですね。というのは、制度の問題というのは、別にそこで生きているから仕様がなくその制度の中でやっている人たちもいるわけで、制度自体がちゃんと発信されているのかどうかということも問題としてあるんじゃないかなと思うんです。つまり、我が国は一つの選択肢として監査役制度というものを残して、委員会設置会社と監査役設置会社を選択させるという仕掛けを制度上残しているわけですから、じゃ監査役というのは何者なのかということを説明するのは、メカニズムとして実際どうなっているかという制度の説明は、むしろちゃんと制度をつくっている人たちが説明すべきだと思うんです。

この議論の中でも色々ありましたが、ドイツから私たちは学んで、Aufsichtsratというのを学んだんですけれども、当のドイツは、もはやそんな説明はしていないわけですよね。国を挙げて別な説明の仕方をしているという状況にあるということの中で、国はアカウンタビリティーをすべての個々の企業に負わせてしまっていいのかという問題はあるような気がします。

一番分かりやすいのは、本当に誰が見てもみんなが分かっているような姿に変えて、そこの説明を軽減化してあげることによって、企業は特別に制度の説明をしなくても、あとはメカニズムの説明をすればいいという状況に置いてあげることも選択肢の一つとしてあると思いますが、そこにもし行かないのであれば、制度の説明責任はある程度国の方で情報発信を充実していくことよって担っていってあげるということも考えていく必要があるかなというふうに思います。

そういう意味で言いますと、例えば社外取締役の制度についても、法制上は特別取締役制度というのがあって、6人以上取締役がいる会社で特別取締役制度を導入すると、重要な財産の処分と、それから多額の借財については、3人以上で構成される特別取締役が決定すれば取締役会の決議になるという制度を一応入れていて、法制上、この制度を入れるための条件として、社外取締役を1名置けというのが実はあるわけですよね。

これは、使っていないからみんなやっていないわけですけれども、監査役設置会社にだって、実はそれを選択すれば社外取締役を入れなきゃいけないという制度は既に用意されていて、そういったようなことというのは、うまく活用していけば、我が国においても社外取締役を無視しているわけではありませんよということを説明する一つのきっかけにもなり得るわけなんです。ただ、実際には、実務は使っていないから、それを誰も説明しませんし、そんなふうなことについては誰も知らないと。諸外国の人も知らないし、日本国内の人も知らないというような状態になっているような気もしますので、むしろ政府が我が国の法制度そのものを海外に対しても理解して頂くような努力をして頂ければというふうに思います。

○新原経済産業省産業組織課長

経済産業省の新原でございます。オブザーバーの身で恐縮ですが発言させていただきます。

今ご質問があった点について、池田市場課長と時期を同じくして、経済産業省の方でも同様の問題について関係者と調整させて頂いていたので、その際の議論をお話しして、池田課長に対する弁護をして、その後、法務省の河合民事局参事官に対する弁護を致します。

まず池田市場課長への弁護です。少しブレークダウンをしていくと、なぜ1名でも社外取締役を義務化することがいいのか悪いのかという議論があります。私も調整を行っている中で感じましたが、確かに社外取締役導入はとりあえず嫌だという会社がないわけではありません。確かに藤原メンバーが言われるように、理解が行き届いていない会社もあるように思いました。ただ、やはりこういう時代ですから、随分真剣に考えている会社というのは多くなってきているのは間違いありません。そのような真剣に考えている会社からお話を伺った際に、以下のような議論がありました。

一つは、前回、帝人の長島会長が来られましたが、帝人のような会社に関係するものです。恐らく投資家サイドからすると、帝人という会社はかなり真っ当な会社であるという認識は共有されていると思います。帝人は前回説明されたように、現在は社外取締役を導入されていますが、当初は諮問委員会の設置から出発していらっしゃいます。これは相当程度、外部の委員が会社の経営に意見し、経営者に対して相当の重しとして効いていました。諮問委員会は法律上の概念ではないため、諮問委員会を設置したとしても法律上は単なる監査役設置会社ということとなりますが、それでも投資家から評価されているではないか、そのような会社も社外取締役を導入しなければならないのか、それでも導入しなければならないと言われればそれはしようがないかもしれないけれども、もう少し会社の側に、「当社は社外取締役を導入していないが、このようなスキームを採用しているのでガバナンス上問題はない」という議論をさせてくれてもいいのではないかと、このような議論が比較的真っ当な会社からございました。

それからもう一つ、次のような議論もございました。先程実効性と独立性の間のトレードオフに関する議論がありましたが、ある会社では、独立者を外部の目として導入した方がいいと思っており、そのような意味では、利害関係のない人物を採用していきたいが、実効性を担保するために、まず業務執行に携わっていただきたいと考えられていました。現場に配属して、まずは工場などを回ってもらい、その会社の実態を認識して頂いた上で、社外的な目で取締役会において経営に貢献をしてもらいたいということです。しかし、会社法上は一度でも業務執行に携わると、その会社の社外取締役にはなれません。そのような場合でも、無理にでも、社外取締役を導入しなければいけないのかという議論です。導入するようにと言われれば、そのような会社は導入することではあるのでしょうが、そのような負担をすることがガバナンスの改善になるのかという議論があったわけです。確かにガバナンス改善に向けた取組みを何も行っていないというのは問題ですので、独立社外取締役などを導入して頂くか、あるいは、そうでなければ、やはり投資家が納得できるような形で、「当社ではこのような視点でしっかりと外部の意見を取り入れていますよ」ということを説明する機会は与えられてもいいのではないかという議論です。

以上のような議論を踏まえて、投資家とも議論しましたが、そのように実態を考慮することはあってしかるべきではないかという結論となりました。恐らく事業会社サイド、投資家サイド、両方に多少不満が残っているかもしれませんが、実質の議論をした上での結論だというふうに思っています。

次に、河合参事官への弁護となります。法務省に対する厳しいご発言がありますが、私などは、河合参事官など法務省の方々といつも接していると、かなり真剣に考えられているという印象を覚えます。

ただ、非常に重要なことは、当省も産業界を所管していて思うわけですけれども、ある種、会社法というのは、会社に関する法律の憲法であると思います。その会社法に様々な問題点があるということで、現在議論が起きているのは間違いなく、これは考え直さなければいけないという部分は確かにあるわけです。ただ、改正するのであれば、相当慎重に検討しなければならないと思います。毎年会社法を改正していくというのは、恐らく法律の性格からしても現実的でないと思います。そういう意味で、法務省もかなり勉強されているように思います。

それから、先程野村メンバーも言われた点ですけれども、この報告書案の終盤部分にも公開会社法制についての記述がありますが、これは非常に重要な指摘だと思っています。民事法である会社法と、市場ルールの観点から規律する金融商品取引法とでは、その適用範囲や効果、あるいは手法が異なるということで、どちらによって規制するかというのは冷静な吟味が必要であると書いてあるのですが、これは非常に重要な点だと思います。これは所管する省庁がどうであるかということとは関係なく、当省のようにこの分野について何も所管の法律を持っていないところからすると、ステークホルダー間の利害調整に関わるものは司法である裁判で議論ができる会社法の方へ、それから投資家保護や情報開示規制のようなものは金融商品取引法の方でというふうに、しっかりと整理していかないとおかしくなります。現行の会社法には上場会社の定義がありませんが、このような整理があれば、上場会社の範囲に限定されるべき規定であっても会社法で規定できないということではないと理解をしています。このような整理に従って、法務省の方でも議論がされていると思いますので、しっかりとした整理が出てくるというふうに思っております。これが河合参事官への弁護ということでございます。以上でございます。

○関メンバー

私はこの問題は、従来のように社外取締役をどうしても入れなきゃいけないのか、入れるべきか、入れざるべきかという是非の議論にあまりこだわる必要はないのではないかと思います。あまり意味のある議論になかなかならない。外国がこうしているからこうだとか。むしろ実態的に、そういう是非の議論ではなくて、機能というか、本当に社外取締役や社外監査役の機能をどういうふうに充実させていくのかという議論にした方がいいと私は思っているんです。

恐らく取締役について言えば、上場会社でも、約半分ぐらい今までに入っているわけですね。恐らくよく子細に見れば、従来1人だったところが2人になり、2人だったところが3人になりというようなことで、社外取締役というのは随分入ってきているのではないかということだと思うんです。一方、社外監査役というのは、これは上場会社も監査役の半分以上でなければいけないということになっているわけであります。

したがって、社外取締役と社外監査役を含めて、非執行役員の役割なり機能というものをどう充実させていくのかという議論にしていかなきゃいけないと思うんです。それはこのレポートではそういう方向がきちっと出ているんだと思うんですよ。ですから、それで私はいいんだと思います。

ですから、問題は、中身を、本当に社外の取締役及び監査役に、どういう役割と機能を持たせていくのか。幾つか切り口はたくさん出ていると思うんですけれども、これをもう少し深めて整理をして、そのために法律を、金融商品取引法であったり、あるいは会社法であったり、その役割を果たす上で、法的な手当てをしなければいけないのかどうか。あるいは東証のようなルールのところできちっと整理して、それで十分なのかどうか。そういう議論をすると必ず、今ちゃんとできることになっているんだからやる気があるかどうかだと、モラルの問題だとかいう議論がすぐ出るんですけれども、私はそう思っていなくて、やはり法的な手当てなり、取引所でのきちっとした手当てが要るのではないかという問題が沢山あるんじゃないかと実は思っているんです。そういう議論に是非進んでもらいたいというふうに私は思っております。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。

野村メンバー。

○野村メンバー

すみません、ちょっと先程の発言の仕方が悪かったので、私が何か役所を責めているかのように聞こえましたので、一応訂正させて頂きます。別に私は法務省が重い腰を上げないと言ったつもりもありませんし、金融庁のやり方がおかしいと言ったつもりも全くありません。

今結論として、それぞれに理論があって、それぞれの積み重ねの中でここに至っているわけなので、そういうことにはそれなりの理由があるわけですね。日本において、いわゆる例えば民事法制と、それから市場に関する法制を担っている役所がそれぞれあって、それぞれがそれぞれの理由のもとに、今こういう状況に至っているということを、諸外国の投資家の人はなかなか我が国のことは分からないわけですから、それはどういうふうな形で整理されているのかということをちゃんと説明して頂きたいというふうに申し上げただけのことであります。

それから、ちょっと新原課長のお話、私も同感でよく分かるんですが、ただ、先程の例からいきますと、例えば執行をやろうと、あるいは執行外で監視しようとに関わらず、全く社外者がいないというガバナンスの構造を正当化する理由はお示し頂いていないわけです。結局、単に過去に我が会社には無縁だった人であったとしても、その人が執行をやるといわゆる社外取締役にならないから、それでもいいんじゃないかというご指摘はよく分かるんです。じゃ、そういう人が1人もいなくてもいいという状態にとどまってしまっていることを正当化するご説明というのがあったかと言えば、やっぱりなくて、そこが多くの人たちの期待と少しずれているところではないかなという気がするんですね。

関メンバーがまさにおっしゃられたように、そこの部分をいわば任意にしておきながら、自分の評価を高めるために、やりたい人は努力してくださいというふうなやり方にしておきますと、マーケットの中にはそれについてこない人がいて、そういう人たちがある程度、固まりとして存在していると。外から見れば、そんなものが許されている国なんだねというふうに見られてしまうというところがあるので、そこのところは何か、どういう形であれ、社外の意見が入るような、そういう制度を必要とするんだというメッセージだけでも伝わる方向で今後考えて頂いたらいいんじゃないかなというふうに思うんですね。これはもしかすると社外取締役のただ単なる定義の仕方の問題なのかもしれませんけれども。

○新原経済産業省産業組織課長

それは全くおっしゃるとおりです。私どもが産業界と接していても、社外の目を気にしなくていいとか、外部の意見を聞かなくていいという議論はなくて、外部の意見をどのように取り入れるかという形ややり方の問題だと思っています。それはおっしゃるとおりだと思います。

○池尾座長

藤原メンバー。

○藤原メンバー

私は、海外でやっているからということで社外取締役を置いた方がいいと述べているのではなく、日本の資本市場が地盤沈下を起こしていることに対して危機感を感じていることと、その原因の1つは機関投資家が日本の上場企業のガバナンスに対して不満を持っていることなので、投資家サイドの声にも耳を傾けて改革を実施した方がいいと述べているのです。また、上場企業に社外取締役を置くことは企業にとってもメリットが多いことを実際に体験してきているので勧めているのです。繰り返しになりますが、資本市場の発展には、発行体だけではなく、投資家の意見を聞くことも大事です。日本においては、産業界が強く、どちらかというと産業界の意見を中心に、ガバナンスについて決めてきた方な気がします。その投資家の声の1つである、社外取締役を置くことに関して今回は拒否されましたが、海外の投資家によく次の質問をされます。「日本の上場企業は社外監査役を2人とか3人置いているのに、なぜ、社外取締役を1人も置かないのか。社外取締役を1人も置けない理由は何なのか」という質問です。この質問に対して答えることは非常に難しいです。日本の経営陣は投資家からのこういう質問に対して答え、投資家を説得していかなければならなくなると思います。

○池尾座長

時間の関係もありますので、13ページ以下の部分も対象にして、全体、最後の3分の1のところについてもご指摘があれば出して頂くということで、引き続き議論をしたいと思いますが。

じゃ、上村メンバー。

○上村メンバー

社外取締役はたった2人で、例えば指名委員会で指名しますと、それは取締役会としては覆せないということになっています。そして、それを社外取締役の方も本気でそう思い込んで、自分が決めるということで面接して、ちょっと偉そうに振る舞い過ぎる人がかなりいるんじゃないかなと思うんですね。

私は実は社外取締役をやっていますが、社外取締役というのは、その会社の中身のことはよく分かりませんし、次に社長として誰がいいかというようなことも分かりませんけれども、その後継者を決定するプロセスや、理念や、方針を確認し、会社の他の人々がそれをどう考えているかを知ろうとします。それから、社外取締役というのは経営陣の経営判断を覆すとか、リードするという役割ではなくて、それを理解して、評価して、そして信認を与えるというのが役割です。ただし不正や違法があればもちろん、それではすみませんが、信認がある状況ではそうした役割を果たすのだと思います。こう見えて結構温厚な社外取締役なのです。

ですから、たった2人しかいない社外取締役が妙に張り切り過ぎている例もあるものですから、会社もびっくりして警戒感を強めるのかなという感じもいたします。アメリカでも、元々は取締役会というのは経営体だったわけです。それが今や大半が社外取締役で、監督機関になったわけです。経営体から監督機関になる過程では、独立性の委員会があって、そこで決めたことは覆せないとなっていましたけれども、今は大半が社外ですから、独立、独立と強調する意味は乏しく、こうした委員会は取締役会のただの下部組織みたいなものに、変質していくのですね。

ですから、アメリカでも時間をかけて変質してきているものです。日本の委員会設置会社というのは、社外取締役がたった2人でいいのですから、アメリカの昔のシステムであって、今のシステムではないわけです。ですから、それをアメリカ型だと言うと、アメリカにちょっと失礼に当たるかなという感じもするぐらいです。どうも社外取締役の機能とか役割がどういうものかということについて、日本で共通の理解があまりないので、何か妙に恐れてしまったり、過剰に反応してしまうこともあるような感じもしています。

それから、報告書の最後の部分でございますけれども、先程、新原課長がおっしゃいましたことに関係します。岩原メンバーは覚えておられるかとも思いますけれども、原田晃治さんという、商法改正をずっと担当していた元審議官が急逝されましたが、あの方が、公開会社法というようなことがほとんど知られていない頃に、当時極めて権威の高い法制審の会社法部会で、メンバーでもない私に報告しろと言われました。それで非常に張り切って、きら星のような大先生の前で緊張しながら報告した覚えがありますけれども、そのぐらい法務省は先取りして公開会社法の問題意識を持っていたと思います。法務省は一生懸命やっておられると思いますし、大いに期待しておりますが、やはりかつての法制審の会社法部会での議論のあり方なんかを見ていますと、やはりもっと大胆に踏み込んでやってもらいたいなと思います。

それから、最後の公開会社法の関係ですけれども、私は公開会社法というのは、ただの普通の会社法の話だと思っています。証券市場に向けて出来てきたのが株式会社ですから、公開会社法とわざわざ言うのは、我々はこの分野で、証券市場を活用する株式会社という問題についての経験が不足しているために、欧米が当たり前だと思っていることまでえぐり出して、意図的に理論構成をする必要がある、そういう観点から主張しているだけです。ですから、公開会社法といえば普通の会社法だと思っていますので、会社というのは私法的な権利関係で、金融商品取引法というのがマーケットだから、その議論は本来かみ合わないとか、そういう批判は全く理解できない見当違いの批判です。

例えば会社が、情報開示や、会計や、監査や、内部統制や、コンプライアンスや何かをやっているのは、誰のためにやっているかと言えば、当然、これは買おうとしている投資家のためにもやっているわけです。買おうとしている人というのは誰だか分からないわけですが、現実にそういう人々、つまりは投資者といっても良いし市民と言っても良い、そういう人々のためにやっているんです。それが株式会社なので、株式会社というものは設立されて、単なる私法的に見える世界から、背中に証券市場を背負いそうになる段階、現実に背負った段階になるとその本質が変質してくるわけで、その変質した部分を単に株式会社法あるいは公開会社法と言っているだけですから、その当たり前の理論が、あたかも当たり前でない、そもそも矛盾があるかのような言い方をされている人がいるようですが、この段階の株式会社を私法的な規律と市場規律の間の矛盾などというのは、まったく理解できない批判だなと個人的には思っています。

ただ、報告書としては、やはりバランスよくきちっと意見を述べるというのは当然ですから、これでよいのですが、何か公開会社法の議論にはそもそも重大な矛盾ないし問題があるかというと、私はそうはまったく思いませんので、そのことだけは申し上げておきたいと思います。

○池尾座長

藤巻メンバー。

○藤巻メンバー

報告書としては非常によくまとまっていると思います。

細かい点ですが、先程来議論していることであり、また今、上村メンバーからご指摘があったとおりコーポレート・ガバナンスとは、全部とは言い切れなくても、大半が株主のためだろうと思うんです。ですから社外取締役の件に関しましても、入れればいいということで形式だけつくってもしようがないのではないかと。要は、入ってきた社外取締役が、例えば株主と利害が対立する立場の人間であれば、外国人の投資家だって嫌だろうなと思うでしょうし、やはり株主の利益となるような、株主を守ってくれるような社外取締役が入って初めて外国人投資家は満足いくのだと思います。ですから、単に社外取締役を入れるべきであるとか、そういう制度ばっかり言っていても、単に形をつくって魂入れずじゃないかと思うので、別に今回は入れるべしというような結論は出すべきではないと私は思っていますが。

○翁メンバー

13ページで、役員報酬のことが書いてありますけれども、今回の欧米の金融危機でコーポレート・ガバナンスの最大の反省の一つが、やはり報酬体系の問題で、ここにも書いてありますように、それが非常に過度に経営を短期的なものにしたという点だと思います。

その背景として指摘されているのが、やはり報酬委員会とか、取締役会がそのガバナンスとして経営者の方を見ていて、他のステークホルダーを考えた上での報酬の決め方をしていなかったという点が指摘されていると思います。日本ではまだこの問題というのはあまり問題にはなっていないと思いますが、ここに書いてあるような役員報酬の決定方針を開示していくというのは非常に重要で、決定方針を開示するというのは、いわば手段であるというふうに思っています。ですから、開示を通して、そういった報酬体系についての考え方などについてもガバナンスを機能させていくということが非常に重要なんだと思っていますので、ここについてもやはり役員報酬の決定方針自体を定めていくことが非常に重要だということを強調して頂きたいなと思っています。

○池尾座長

はい、そうだと思っています。

根本メンバー、それから江原メンバー、岩原メンバーで。

時間がなくなってきていますので、すみませんが、手短にそれぞれお願いします。

○根本メンバー

先程、野村メンバーがおっしゃった、我が国の制度自体、投資家に理解されていないというのは本当にそのとおりだと思うんですけれども、色々努力すべき点はあると思うんですが、一方で、やはり会社の開示自体というか、開示努力というのも不十分な点はあると思います。色々な企業のアニュアルレポートなどを読んでいると、やはり日本の場合は記述がミニマムというか、そっけないという印象を受けまして、そこが本当に、色々やっていらっしゃるんだけどアピールが下手なのか、あるいは、あまりガバナンスを重視していないのか、外から見ると何とも判定できないというところがあります。

11ページにも書かれていたような、個々の会社でそれぞれ個性があるとしたら、なぜそれを選んでいるのかというのを開示されるというのが大変重要なのかなと。先程実態の方が重要だというお話もあったのですが、例えば中国とか韓国の企業は上場されていると社外取締役の設置というのは義務化されていまして、やはり投資家というのはそういうところと日本をどうしても比べがちです。一方は成長率も高いし、ガバナンスも形式的にはある。それに比べて日本は不利な状況にあるというところは認識をされつつ、開示を充実された方がいいかなと思います。

あと、先程、翁メンバーもご指摘のあった報酬の開示なんですけれども、私個人としては、やはり個別報酬を開示されるのがすっきりしていいと思っています。そうすれば、報酬とその成果というのがどう結びついているのかは、投資家にははっきり分かるということです。ただ、報酬のレベル自体を比べたところ、日本の証券会社と海外の投資銀行というのは1対100ぐらい違っていて、日本はもう少し収益から見ると配分していいということなのかなと思うんですけれども、ただ、やはり海外は当然ながら内容も詳細に書かれていたり、あと最近は報酬が株の形式であるとかストックオプションでもしばらく行使できないとか、なるべく長期業績と結びつける工夫をしてあり、その辺の開示も充実しつつあるので、日本が不利にならないような開示があっていいかと思います。

以上です。

○江原メンバー

今まで多数のメンバーの方々から日本の金融基盤の危機感ということに関してご意見があったかと思います。まさしくそこは強調されなければいけない点なんですが、やはり今回、社外取締役を強制しないというこの話、これはここの場で決まったのか、日経新聞が決めてくれたのか、よく分かりませんが、やはり基本的な論点は次のところに絞られるんじゃないかなと思います。それは何かと申しますと、日本におきまして、投資家というグループですね、ここの位置づけがやっぱり弱いということを今回また再確認したのかなというのは非常に強く感じます。

やはり株式市場、または金融市場と言ってもいいんですが、もちろんそこには上場会社とか、またはその仲介をする証券会社、金融会社、色々あるんでしょうけれども、やっぱり本当の軸になる、軸足を置くべきところというのは投資家なのではないかなと思いますね。三波春夫が昔よく言いましたけれども、お客様は神様だと。じゃ、お客様って一体誰なんだろうということを考えると、ちょっと極論を言うのであれば、やはり投資家に軸足を置くべきではないかなということなんだと思います。もちろん他の参加者も重要なのは、これは間違いありません。したがって、私はそれを無視した意見を述べるつもりはないんですが、今回のこういうふうなご判断というのは、多分に海外の投資家のみならず、国内の投資家も、やはりここの点に関しては日本という国はやっぱり変わってないなという判断を下すのではないかなと思います。

確かに関係者のご意見を聞いてみると、それなりの諸事情はあるんでしょう。でも、先程鹿毛メンバーがおっしゃったように、我々は相対的な競争において存在しているわけですね。ここで競争に負けてはいけないんだという意識を持たなければいけなくて、ここまで頑張ったから許してちょうだいということは、例えばスポーツの世界で言うならば、オリンピックだとかワールドカップの中では許されないわけなんですよ。そういうふうな意識の中で、もうちょっと思い切った、投資家というものに軸足を置いた国としての戦略というものを打ち出してもよかったのではないかなと思います。

以上です。

○池尾座長

岩原メンバー。

○岩原メンバー

私は、先程関メンバーおっしゃいましたように、機能が重要であって、社外取締役の強制といったことを単に形式的に要求するだけでは意味がないというのは、そのとおりだと思いますけれども、さはさりながら、前回も申しましたように、やっぱり社外の目を入れるということはそれなりに意味があると思っております。そういう意味では、そちら側の方向に向けて、是非一歩でも進んで頂きたいと思います。

また、その際には、社外取締役というよりは、むしろ独立取締役であって、12ページに書いてあるところも、独立性について、これもより実質的なものになるように制度改正を是非今後していかなければいけないと思います。またそういうことは、本来は上場会社だけに限らない問題であると私は思っておりまして、会社法の問題として今後取り組んでいく必要があると思っております。

それとの関係で、ちょっと気になったのは10ページの表現ぶりなんですけれども、第3パラグラフのところで、「しかしながら、こうした社外取締役を中心とした取締役会の設置を上場会社等一般に求めることは」と書いてありますが、「こうした」というところに書いてあるのは、海外の投資家等から出ている3分の1ないし2分の1以上を独立取締役にするようにということですけれども、イギリス型の3分の1以上を社外とすることを原則とするというような場合であれば、監査役設置会社と必ずしも矛盾まではしないと思いますし、さらにこういったことを上場規則等で定めることによって、結果的に委員会設置会社の下の制度にするということになっても、それが我が国の法制と整合的でないということは言えないわけです。こういう形で社外取締役を要求しない理由を説明するということは、まさに海外の投資家に対してきちんと理由を説明していないということになり、それこそアカンウタビリティーを問われかねないので、なぜ現時点では海外の投資家の声に応えられないかということを、もう少し率直に書いた方がいいのではないかと思います。何か日本の制度はこうなっていますから、それと整合的でないから受け入れられませんと、こういう説明の仕方を今までずっと実は日本は続けてきたわけですけれども、そういうことはあまり望ましくないのではないでしょうか。もっと率直に理由を書いた方がよいと思います。

それから、13ページの役員報酬のところ、私は根本メンバーと同じ意見を持っています。インセンティブ報酬の意義をはっきりさせるためには、現在のような役員の報酬を一括して開示するようなやり方ではなくて、やはり個別の役員の報酬と結びつけた形で、こういう報酬体系になっており、それはこういう意味を持っていますということを説明しないと、報酬のあり方の開示として十分なものにならないのではないかと考えております。

それから、14ページから15ページのところに、議決権の行使を通じたガバナンスの発揮の問題が書かれております。例えば15ページの上から2行目の「この点についての一層の明確化」というのは、恐らく「議決権行使は、機関投資家の受託者責任の重要な要素を構成するものである」という、そのことの明確化なのでしょうね。それだとすれば、私はこのとおりだと思うんですが、ただ、ここで機関投資家として一括して議論しているわけですけれども、機関投資家の中には一体何が含まれるのかということ自体が問題で、またそれぞれの機関投資家の性格によって求められるレベルも違ってくるはずだと思います。確かに全体としてこういうことをやってほしいというのはあると思いまして、ここに書いてあるのはまさにそのとおりだと思うんですけれども、機関投資家の中でも、例えば15ページの一番下に書いてあるSECのルールがある投資会社のような場合、あるいは相互会社原則によって、契約者に対して、いわば契約者を受益者的に扱い、それに報いる義務のある保険相互会社の場合とか、あるいは信託会社で信託法上の義務を負っている場合、それぞれ場合によって違ってくるはずであり、それぞれの法制のもとで、特に例えば信託なら信託業法で金融庁が所管されているわけですし、保険でしたら保険業法で所管されているわけで、それぞれのそういう監督法制のもとで一体どこまでのことができるのかということを、本当はきちんと書くべきではないかと思います。

それとの関係で、16ページの上から3行目に書いてある、議決権行使結果を開示すると、各種団体や発行会社から圧力がかかるから開示しないというのは、何とも情けない理由づけでありまして、こういうことを言っているから、いつまでも責任のある機関投資家としての行動ができないのであって、こういうことはできれば言ってほしくないと思います。むしろ正々堂々と、自分たちは機関投資家として受託者責任をちゃんと果たしていますということを説明するようになって頂きたいと考えている次第であります。

最後の V .のところは、私はここに書いてあることに賛成であります。

以上であります。

○池尾座長

もう時間がほとんど来てしまっているんですが、ごく手短に、鹿毛メンバーと関メンバー、一言ずつお願いします。

○鹿毛メンバー

役員報酬の問題です。アメリカではコーポレート・ガバナンスの実質的な最大の問題というのは、マネジメントの報酬が巨額過ぎて、それをもうちょっと株主に回せというか、株主とマネジメントのある意味では利益の取り合いのようなことが一つの大きなきっかけではなかったかと思います。その点に関する限りは、日本のマネジメントの報酬は海外比では非常に低い水準にあって、むしろ逆にガバナンスが働いているという面があろうかと思います。

同時に、投資リターンということで考える限りは、これは個別の問題ではなくて総額の問題です。現実には、一部の例外を除けば、機関投資家サイドからは、実は個別開示はあまり重要な問題になっていないという点は、一つの見方としてあろうかと思います。

それからもう一つ、現在、欧米の投資家サイドの反省として出てきているのは、個別の報酬情報を開示した結果、実は全体としての水準を高める結果、つまり彼はあんなに取っているのだからこっちを高くしろというような格好で、水準が上がってしまったという点です。一つの情報として申し上げたいと思います。

○関メンバー

手短に話しますが、私は日本の資本市場が低迷している原因は色々あると思いますけれども、一つは財務情報に対する信頼性というのがやっぱりないということだと思うんですね。特に新興市場を中心に財務情報の信頼性がないということなのではないかと思っております。

そして、私は実は去年の10月から銀行家になったわけですが、今、危機対応というようなことで一生懸命やっていますが、結局金融も、率直に言って、企業の財務情報に対する信頼がおけないということで、融資実行が出来ない事例が数多くあるわけです。私は間接金融の世界でも、金融機能を十分発揮していくという上で、会計情報の信頼性が非常に重要なのではないかという感を実は深くしておるわけであります。

八丁地メンバーが言われたように、例の内部統制報告制度が導入されたわけですが、メッシュを細かくしていくというようなことではなくて、結局、ほとんど経営者の問題なんですね。ですから、実務をややこしくするということではなくて、本当に今度の内部統制報告制度にどのように魂を入れていくのかということを是非真剣に考えて頂きたいと思います。17ページに書いてあります(7)の問題もそういう問題の一環として真剣に考えて頂きたいと思いますし、いわゆる会計監査人の報酬のねじれの問題も真剣に取り上げて頂きたいなというふうに思います。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

まだご意見おありの方もおられるかと思うんですが、時間が来てしまいました。本日の議論を通じまして、この報告書案に対して基本的にちょっと異議があるというご意見は幸いにしてなかったというふうに思いますので、この報告書案について、基本的にはご承認頂いているということで理解させて頂いてよろしいでしょうか。

そうしましたら、ちょっと時間切れでもっと言いたいことがあったという方もおられると思いますので、追加的なご意見がおありの方は事務局に、メールとか直接にお伝え頂くということでお願いします。それと本日のご議論を踏まえて、必要な修文をさせて頂いた上で、後日公表ということにさせて頂きたいと思うんですが、その修文と公表の手続等に関しましては私にご一任頂くということでよろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。

それでは、そのように進めさせて頂きたいと思いますので、来週、予備日を用意しておりましたが、予備日までは使わないということでやらせて頂きたいと思います。

それでは、ちょっと内藤局長から一言。

○内藤総務企画局長

もう時間も過ぎていまして、申し訳ありません。今日も非常に活発なご意見を頂きまして、ほぼまとめて頂きまして、本当にありがとうございました。

今回のこのスタディグループはコーポレート・ガバナンスの問題を扱うということで、実は私ども、金融商品取引法であるとか、市場関係の法制あるいは行政というものに携わっている立場からいきますと、若干違和感もある。ただ、非常に深いところでは密接な関係があるというような問題について、議論をして頂いたというふうに思っております。

今日もご議論に出ましたように、会社法とか基盤的な法制というようなものも、大いにこれからまた議論されていくことになるだろうと思いますけれども、私どもとしては、このスタディグループの運営の中で、日本のマーケットの位置づけが落ち込んでいる、非常に元気がないというような指摘もございましたけれども、その中でどういう取組みをしていくのがいいのかという、非常に現実的といいますか、プラクティカルな発想に立ってご検討して頂いたというふうに考えております。

その中で、開示規制とか、あるいは東証の上場規則等々で直すべきところは直していって、それですぐにでも取り組むものは取り組んでいくという形で、迅速に対応できるものは対応していくというふうに考えております。

今日も上村メンバーからちょっとお話がございましたけれども、役所の方は、金融庁も含めて、やや逃げているんじゃないかと。変なものを東証とか監査役に押しつけているんじゃないかというようなお話もございましたけれども、決してそういうことはございませんで、金融庁としてマーケットに対応できるものはきちっと対応していく。

それから、投資家というものに対する位置づけが若干薄いんじゃないかというご議論もございましたけれども、我々はやはりマーケットの活性化というもののためにどう対応していくべきかというのが最も重要なことだというふうに思っています。その中でこのコーポレート・ガバナンスの問題が位置づけられてくるのではないかなというふうに思っていますので、今後、最終的に技術的な色々調整をした上で、最終的に世の中に公表しましたならば、これを踏まえながら、できることは迅速に行動に移していくという形で取り組んでいきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いをいたします。

ありがとうございました。

○池尾座長

どうもありがとうございました。当スタディグループは昨年10月21日から再開して、通算8回、このテーマで議論させて頂きました。一応区切りがつけられたというように思っておりますので、私からもメンバーの皆様にお礼を申し上げたいと思います。

ちょっと事務連絡だけして終わりたいと思います。

○池田市場課長

今もう既に座長の方からお話がありましたけれども、先程のようなことでございますので、今日の議論等を踏まえさせて頂きまして必要な修正を行い、必要に応じ、メンバーの皆様にもご相談させて頂いた上で、後日公表ということにさせて頂きたいと思います。

17日、予備日ということでお願いをしておりましたけれども、基本的には開催しないという形で調整をさせて頂きたいというふうに考えております。どうもありがとうございました。

○池尾座長

時間が延びましてすみませんでした。これで終わります。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)

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