金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第3回)議事要旨

日時:平成19年3月1日(木)14時30分~16時30分

場所:中央合同庁舎4号館9階 特別会議室

議事内容:

○  事務局説明、鈴木メンバー、矢野メンバー、東京証券取引所のプレゼンテーションの後、質疑応答と自由討議が行われた。主なやりとりは以下のとおり。

  • 日本の公的年金は全体で200兆円(厚生国民年金150兆円、共済年金50兆円)の規模があり、世界で群を抜いて大きい年金基金。この資金で運用益をあげれば、国家財政の潜在的負担を軽減できる。
  • 公的年金には制約も大きい。一番大きな制約はガバナンスの姿。公的年金は基本的には議会に対する責任ではなく年金の受益者に対する受託者責任を第一義に考えるべき。二つ目の制約は、規模そのもの。200兆円の規模は、マーケットインパクトが非常に大きいので、分割運用により、運用主体間の資産分散を行うとともに、運用主体に対して競争原理を導入すべき。第三の制約は人材。公的年金における人材の質・量双方の改善が必要。第4は、株式や債券の資産割合を決める縛りをなくすべき。
  • 確定拠出年金については、日本はアメリカ、オーストラリアから学ぶ必要がある。オーストラリアでは、拠出や払い込みには課税されるがリターンに対しては課税されない。オーストラリアの確定拠出年金は急成長しており、オーストラリアの投資信託の残高は日本の残高に匹敵するくらいに成長している。
  • 我が国の年金基金は東京からの移転が決まっており、平成20年度末に神奈川へ移転する。東京に金融特区を設けて金融を振興しようというときに、世界最大の年金基金を移転させるのは国の政策として矛盾しているのではないか。
  • 東証への外国からの上場を増やすための方策として、以前はブルーチップの重複上場を促進したが成果を上げられなかった。そのため現在は東証をメインマーケットとして上場するアジア企業を誘致していくという基本コンセプトに改めている。
  • 初めは海外企業が東証に単独上場してもいずれ本国へ回帰してしまうのは株式のような現物ではやむをえない。しかし、初めに流動性を高めてしまえばそのマーケットがメインマーケットとなることもある。また、海外企業の上場誘致に際し、日本と非常につながりのある企業を誘致したいと考えている。
  • 東証がアジア企業の上場誘致する際の課題の一つはアジア企業の東証上場への認識・理解不足があり、広報面で努力したい。また、会計やコーポレートガバナンス等の質が確保された企業を誘致し、東証のステイタスを確保する必要がある。
  • 外国企業は一般的に日本語に翻訳する手間と費用がかかるのを好まないが、それ以上に自分が理解できない言葉で書かれた書類に署名をすることに対し恐怖感もあるという問題が大きい。せめて現在の世界の金融の共通言語である英語による書類を正本として、日本語版はその翻訳という扱いとし、署名は正本に対して求めるという対応が必要ではないか。
  • 海外の大企業が日本に上場したがらないのが日本の市場の問題。会計原則の収斂作業において、欧州当局が米国当局に対して発言力を持ちうるのは、多くの米国企業が欧州でも重複上場しているため。大企業の上場を誘致することで日本の市場の魅力は高まる。
  • シンガポールやロンドンのAIMは開放主義的な考え方で上場基準も高くないが、東証は企業の内容をしっかり見ており、コンセプトが違う。また、シンガポールやロンドンは英文開示であり、中国企業にとっては日本に上場するより手間が少ない。
  • 日本の1,500兆円という金融資産を、海外の企業の資金調達も含めてどのように活用するか検討する必要があり、POWLや預託証券のような非上場での資金の供給スキーム等についても今後官民あげて研究していく努力も必要。
  • 日本の金融制度をアジア諸国で存在感があるよう官民を挙げて広め、アジアマーケットを日本の指導力を発揮できるマーケットにするような長期に亘る努力も必要。
  • この20年間、製造業は右肩上がりの業績で商品開発も行ってきたが、金融は右肩下がりで新商品も生まれてこなかった。コーポレートガバナンスでも、日本の金融機関は株主ではなく大蔵省を向いていたため、国際化が遅れたと言われている。 
  • 日本の製造業の研究、開発がうまくいったのは日本の人材によるものであり、日本にはまだポテンシャルが多くある。
  • ノーアクションレター制度の利用実績がそれほど伸びていない理由の一つは、照会の内容及び結果が公表されることで、先行者利益が失われると判断されるためではないか。そこで、ノーアクションレターを補完するものとして、一般的な法令解釈に対する書面照会も可能としている。
  • 規制はビジネスの種であり、排ガス規制などのように、規制があることがビジネスのチャンスを生む。金融庁の規制にもビジネスの種があるだろうし、それに取り組んで商品開発が行われて欲しい。
  • 証券取引所における投資家保護は必要不可欠。一方、それとは別に、参加者をプロに限った別のマーケットを創設するということも検討してよいのではないか。

(以上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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