金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」(第20回)議事要旨

1. 日時:

平成21年3月18日(水)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3. 議題

上場会社等のコーポレート・ガバナンスのあり方について

  • ヒアリング

    • 関メンバー

    • 上村メンバー

  • 討議

4. 議事内容

  • 上記についてヒアリングの後、討議が行われた。

  • 主なやりとりは以下のとおり。

  • (1)上場会社等のコーポレート・ガバナンス改革の必要性について

    • 今コーポレート・ガバナンスの問題について議論する背景には、(1)資本市場の機能不全、(2)企業不祥事の多発、(3)国際的に通用する企業統治体制への対応があると思う。

    • 貯蓄から投資への掛け声にも関わらず、我が国の資本市場は外国依存が定着しており、機能不全に陥っている。従って、資本市場の活性化においては、外資の呼び込みも重要ではあるが、国内機関投資家が資本市場を必ずしも十分使っていないことが問題の本質であり、国内機関投資家が資本市場の信頼性やコーポレート・ガバナンスというものをどう考えているかが重要なのではないか。

    • 企業不祥事の多発が我が国の資本市場の信頼性を著しく低下させているため、これを如何に防止するかが重要な問題。特に今のように経済が悪化している時期になると、会計不祥事が起こりやすい。

    • 我が国のコーポレート・ガバナンスの仕組みは、国際的に見てかなり特異なものがあるため、国際基準に如何にコンバージェンスしていくかということも考えておく必要がある。

    • 委員会設置会社は監督機能の観点からは厳格な組織形態であると思うが、日本では委員会設置会社への移行数が少なく、監査役設置会社が主流である現状では、この監査役設置会社を国際的に通用する制度として説明可能なものにしていく必要があるのではないか。また、社外役員に関しては、社外要件が非常に緩いため、独立性の要件をきちんと定めることが重要である。

    • 会社法と金商法の二重監査問題に関しては、有価証券報告書と内部統制報告書を株主総会の報告対象にすべきではないか。また、インセンティブのねじれ問題は、監査役と公認会計士の連携を阻んでいる最大の要因であり、財務報告の信頼性を担保する観点から、是非とも解消しなれければならない。

    • 資本市場においては、情報開示による透明性・信頼性の担保と、少数株主の保護が重要な要素となる。少数株主の保護の観点からは、やはり、支配権の移転を伴うような第三者割当増資が、取締役会決議のみで行われることは問題。

    • 東京市場の毎日の取引の6割が外資であり、市場に対する影響力が大きい中で、外国人投資家のコーポレート・ガバナンスに対する考え方は無視できない。外国人投資家の言うとおりにする必要はないという意見もあるが、それでは、今後、東京市場は外国人投資家を抜きにしてやっていけるのか、という問題まで考える必要があるのではないか。

    • 今回、米国で金融危機が発生したため、米国に学ぶものはないという意見も出てきているが、やはり、いい部分については取り入れていくべきである。ただ、日本特有のガバナンスのあり方も考慮する必要がある。また、産業界として最低限のあり方を提言していく必要はあるが、各社各様の良しとするガバナンスのあり方があるということには留意していただきたい。

    • 今のように厳しい経済環境にあるときには、企業不祥事といった問題が出てくるので、こういう時期にこそ、本当に日本の現在のガバナンス体制で大丈夫なのか、また、世界各国との競争が激化する中で、日本企業が国際的な競争力を保っていけるのかについて検証しておく必要があり、コーポレート・ガバナンス改革が必要であると思う。

  • (2)ルール整備等の手法について

    • 欧州では個人を尊重する市民社会の伝統、そうした市民社会の質を変えたくないというこだわりがあり、法人と資本市場への警戒が強い。一方、日本では、この二つへの警戒感が欠けていたことが、短期的な経済成長をもたらしたが、それと引き換えに市民社会的な部分が代償として支払われていたと言えるのではないか。

    • 戦後の企業社会は資本市場を使ってこなかったが、資本市場を使いこなそうという、株式会社本来の機能を発揮する時代になった今、株式会社の意義を再構成する必要がある。資本市場の論理も同様であり、資本市場の機能の確保の重大性を先端的に規定したのが、金融商品取引法第1条の「資本市場の機能の確保と公正な価格形成」という目的規定である。

    • 資本市場の主役が個人や個人のための存在である機関投資家であることを想定して株式会社制度が設計されているかが重要となる。公開会社法理論とは、資本市場、市民社会と対応できる株式会社制度を構築するための理論であり、欧米のような経験「知」の不足を理論「知」で克服し、欧米に一気に論理で追いつき、追い越すための提案である。

    • 基本的事項については法令できちんと規定した上で、できるだけ取引所規則や証券業協会などの自主規制ルールを活用していくことが重要ではないか。また、ルールベースではなく、プリンシプルベースで問題を捉えていくというプラクティスを定着させることが重要な課題ではないか。

    • ソフトローの活用は極めて重要であり、法令よりも取引所規則の方が実態に即して柔軟に対応できると思う。例えば、一部上場企業とベンチャー企業とでは、異なるガバナンスのあり方の義務づけがあってもいいと思う。一方で、取引所規則があくまでも上場会社と取引所との間の私的契約にすぎないとすると、上場会社にとって負担が増大するような不利益変更を実施する場合には、慎重に対応しているのが実態。今も、ガバナンスに関して企業行動規範で義務づけるような場合、経過措置を設けた上で、その期間経過後も実施されていない場合でも、上場廃止にするのではなく、勧告や公表といった措置をとっている。上場廃止といった強い措置まで求めていくには、現状のソフトローに関する社会的なコンセンサスを前提にすると限界がある。

    • ソフトローの議論をすることによって、法令より下回る理論になるのか、上回る理論になるのか、という点がポイントで、上回る理論にならないのであれば、会社法でできることを、わざわざ自主規制でやる必要はないと思う。従来、取引所の自主規制は法令の補完であるとの位置づけがなされてきたが、問題によっては、自主規制の方が法令よりも重要であることは幾らでもある。また、業者に対する規制の根拠は上場契約に基づくものという考え方がまだ残っているようだが、あくまでも資本市場の機能を確保し、公正な価格形成を守るという取引所の使命から一定のことを要求する権限は当然あって、同様に、投資家に対しても、取引所が一定のルールを課すのは当然のことであると思う。そういうふうに、取引所自身が自らの地位を高める努力をする必要があり、従来の低い位置づけを転換した上でないと、大幅にその役割を期待していくのは難しいのではないか。

    • ガバナンスの問題については、本来は会社法で対応するのが筋であると思うが、それができないのであれば、取引所がやらなければならない。資本市場を守るという取引所の目的のためには、ガバナンスに介入するのは当然あり得ると思う。

    • 現在、会社法と金商法の規制が必ずしもうまく噛み合って機能するようになっていない点があるので、そういう点を洗い出して全体としてうまく機能していくように見直す必要がある。ただ、それを公開会社法の法制化によって対処するのがいいかどうかは別問題であり、どういう手法が適当かという観点からアプローチする必要がある。それを考える上では、エンフォースメントの手段としてどういうものが適切かということと併せて考えることが重要である。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3615)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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