金融制度スタディ・グループ(第3回)議事録

  • 1.日時:

    平成30年1月17日(水)9時30分~11時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

金融審議会「金融制度スタディ・グループ」(第3回)
平成30年1月17日


【岩原座長】  
それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融制度スタディ・グループ」第3回会合を開催いたします。

皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

さて、本スタディ・グループにおいては、前回、金融の機能の分類について議論を行い、検討の進め方として、機能をそれ以上分割できない最小単位に分類するよりも、ある程度大きな単位に分類した上で、各機能の中で業務の内容、範囲、リスクに応じて区分を設け、各区分に応じてルールの内容や程度を調整するアプローチをとることになりました。

そして、具体的な機能の分類や呼称については今後の検討の中で変更があり得ますが、まずは決済、資金供与、資産運用、リスク移転という分類で検討を始めることとなりました。本日以降の会合において、これらの金融の各機能が果たすことが期待されている役割と、金融法制は当該役割の達成に向けて何を守ろうとしているのか、すなわち規制の目的について検討してまいります。

本日は、金融の各機能のうち、決済及び資金供与について、事務局から討議資料についてご説明をいただいた上で、金融の各機能の役割と金融法制の目的について討議を行いたいと考えております。

それでは、事務局から説明をお願いします。

【井上信用制度参事官】
おはようございます。信用制度参事官の井上でございます。それでは、お手元の討議資料についてご説明をさせていただきます。

まず1ポツでございます。先ほど座長からもございましたとおり、前回のご議論等に留意しつつ、同一の機能・リスクには同一のルールを適用することを検討するに当たりまして、まずは「決済」「資金供与」「資産運用」「リスク移転」の各「機能」が果たすことが期待されている役割や、金融法制が当該役割の達成に向けて何を守ろうとしているのか、金融法制の目的について検討させていただきたいと存じます。4つの「機能」に係るこれらの検討を行わせていただいた後に、必要に応じ、「機能」の分類や呼称を見直すということで検討を進めることができればと存じます。

本日は、分量の関係で前半の「決済」と「資金供与」について取り上げさせていただきたいと思います。

2ポツの「決済」の(1)でございますけれども、まず、「決済」分野におきまして金融法制で規定されている典型的な行為としまして、為替取引がございます。脚注の1にございますとおり、銀行法や資金決済法において基本的な概念として規定されているところでございます。これにつきましては、1回目のときにもご紹介させていただいていますけれども、平成13年に最高裁の決定がございまして、「『為替取引を行うこと』とは、顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいう」とされておるところでございます。注のところでございますけれども、この討議資料では、資金というのは、金銭及び容易に現金化できる預金等の財産というように、法定通貨よりも広い概念で理解して進めさせていただければと思います。

その下の丸のところでございますけれども、為替取引が適切に行われることは取引の円滑化に資すると考えられます。例えば、商品・サービスの取引におきまして、商品・サービスの提供を受ける者が対価を支払う債務を、現金の手渡しや物々交換などのような方法で解消しなければならない場合と比べまして、為替取引のように、仲介者を介して価値の移転が適切に行われれば、多額の現金を持ち運ぶ必要がなくなるなどといったメリットが考えられるかと思います。このようなメリットは、先ほど申し上げた最高裁決定における為替取引とは必ずしも整理できない場合でも、例えば清算機関などの仲介者を介して相殺が行われる場合ですとか、自家型前払式支払手段のような商品・サービスを提供する者自身がその対価の支払い手段を提供するような場合などにも当てはまるのではないかと考えられます。

注のところでございますが、ここでいう仲介者には、資金の出し手、受け手の間に介在して資金の出し手の意図する額の資金を意図する受け手に届けるような役割を果たす者、典型的には銀行ないし資金移動業者だと思いますけれども、それらのほか、清算機関のように清算を行う者、電子債権記録機関のように取引に係る権利の記録を行うような者も含めて、やや広い概念で「決済サービス提供者」と呼ばせていただきたいと考えております。

このような決済サービス提供者を介して取引に伴い発生いたしました債権債務関係の解消を行うことにつきましては、先ほど申し上げた為替取引に該当しないような場合でも、金融の「機能」の一つであります今回ご検討いただく「決済」に含めることが考えられるがどうかという論点を挙げさせていただいているところでございます。

続きまして(2)でございますけれども、決済に用いられる手段が資金以外であった場合の論点でございます。資金以外であっても、物々交換等と異なり、商品・サービスの対価を支払う手段として広く認知されている、あるいは交換手段としての役割を果たしているものがあるかと存じます。例えば手形・小切手などによる決済や国債振替決済、交換手段としての役割を果たしている仮想通貨などによる決済については、資金による決済でなくても金融の「機能」の一つである「決済」に含めて取り扱うことが適切とも考えられるがどうかという論点を提起させていただいています。

次に3ページ目にお移りいただきまして(3)でございます。以上を踏まえまして、金融の「機能」としての「決済」分野の保護法益として金融法制が想定すべきものに関し、以下のように考えることについてどう考えるかという論点を提示させていただいています。①としては、「決済」が確実に履行されること、すなわち、意図する額の資金を意図する先に移動できること、又は債権債務関係を解消できること、でございます。②として、利用者(資金の出し手等)の資産が保護されること。③といたしまして、利用者に対してサービスの内容・リスク等に係る情報提供等が適切に行われること。④といたしまして、決済サービス提供者がサービス提供において入手する利用者の情報の保護。⑤といたしまして、マネーロンダリング及びテロ資金供与の防止などが挙げられるかと思います。

その下の丸でございますけれども、以上5つに整理させていただきました保護法益の①の「『決済』が確実に履行されること」に関しましては、決済サービス提供者の「決済」のネットワークといった意味での決済システムは、多数の決済サービス提供者同士が決済システム内で密接につながることによって「決済」が円滑になることが期待される一方で、決済システム内の一部の決済サービス提供者の不払いや機能不全が、「決済」のネットワークを通じて決済システム全般に波及するリスク、いわゆるシステミックリスクですね、を潜在的に有しているのではないかと考えられます。こうしたリスクの回避につきましては、個別の取引における「決済」が確実に履行されることとは別のものとして考えまして、①-2として、決済システムの安全性、すなわち個々の決済サービス提供者の不払いや機能不全等が他の「決済」の失敗を連鎖的に招くような事態を防ぐことというのを独立した保護法益とすることも考えられるのではないかというような点を挙げてございます。

これに関連いたしまして、4ページの注2にございますとおり、日本銀行では、システミックリスクを回避する観点から、金融機関間の最終的な資金決済が行われることになります日本銀行当座預金での取引について、2001年より即時グロス決済、いわゆるRTGSを入れておられるということだと思います。注3でございますけれども、民間決済システムにおきましても、例えば全銀システムでは、金融機関の資金の受け払いが日本銀行当座預金において決済できず、それが他の金融機関や金融システム全体に悪影響を及ぼすことがないように、1件1億円以上の大口取引に係る支払指図ごとの即時グロス決済などの各種の方策が講じておられるものと承知しておるところでございます。

次の丸でございますけれども、3ページの②の保護法益とさせていただきました利用者の資産が保護されることに関してでございますけれども、例えば「資産運用」の機能においても、サービス提供に際して顧客資産を受け入れることはが広く行われているということを踏まえれば、「決済」における利用者資産の保護は「資産運用」等の他の機能の保護法益と共通の側面もあるのではないかということを書かせていただいています。また、保護法益の③の利用者に対する情報提供等が適切に行われること、④の利用者の情報の保護、⑤のマネー・ローンダリング等の防止につきましても、全ての金融の「機能」に多かれ少なかれ共通の側面があるとも考えることができるのではないかということを書かせていただいています。

次の丸でございますけれども、このように各「機能」に共通する保護法益につきましては、それを踏まえて「機能」の分類を再構成することや、あるいは各「機能」の中に含まれる行為に対するルールを調整する際に、当該共通の保護法益を考慮することが考えられるがどうかという論点を提示させていただいています。

(3)の最後の丸のところでございますけれども、なお、「決済」という「機能」が果たすことが期待されている役割を達成するには、利用者利便を考慮することも必要となるかと思います。利用者利便については、保護法益と整理させていただいたもののうちの①、すなわち「決済」が確実に履行されることに含まれるというふうに整理することも考えられるとは思いますけれども、別個の保護法益と位置づけることも考えられるかと存じますので、この点についてもご議論いただければと思います。なお、ご参考ですけれども、銀行法の中では、この利用者利便というところは目的に入っていないのですけれども、比較的新しい資金決済法の目的規定では、「資金決済システムの安全性、効率性及び利便性の向上に資することを目的とする」と記載されておりますので、これもあわせて検討の材料にしていただければと思います。

次に(4)でございます。「決済」の中に含まれる行為の類型化に関する考え方というところでございます。先ほど(3)で挙げました保護法益の②、すなわち利用者の資産の保護ですとか、③の利用者に対する情報提供等が適切に行われることの観点からは、「決済」の中に含まれる行為は、決済サービス提供者に対する資金の預け入れの有無やタイミングの違いにより類型化され、それぞれ保護法益が異なってくることも考えられるのではないかという論点でございます。

ページをおめくりいただきまして5ページの冒頭のところですけれども、資金の出し手から決済サービス提供者への資金の預け入れを受けて、決済サービス提供者が資金の受け手に資金を届ける場合、利用者から見て前払いのような場合でございますけれども、その場合は、決済サービス提供者に預け入れられた利用者資産の保護が必要となる場合があるのではないかということでございます。また逆に、資金の出し手から決済サービス提供者に資金が届くのに先立って決済サービス提供者が資金の受け手に資金を届ける場合、いわゆる後払いということになると思いますけれども、そのような場合には、決済サービス提供者から資金の出し手への信用供与があるため、資金需要者としての保護が必要となる場合もあるのではないかということが考えられるのではないかと存じます。なお、このような区分では類型化が適切に行えない場合、例えば資金の預け入れや信用供与がないような同時履行的な資金移動などが考えられるかということもあわせて記載させていただいているところでございます。

以上が「決済」についてのご説明でございます。

次に3ポツのところでございますけれども、金融の「機能」のうち「資金供与」の検討に移らせていただきます。まず(1)でございますけれども、「資金供与」に係るサービスが果たす役割に関しましては、サービス提供者が資金不足主体に対しまして、資金をその元本が返済されることを原則として供給し、その対価としての金利等を得ることによりまして、この後ご紹介いたします流動性・期間・信用に係る資金需給のミスマッチ解消に寄与するものと考えられます。

その下の丸のところでございますが、前回も多少ご議論いただいたと思いますけれども、資金不足主体の資金需要は、短期から長期まで様々でございまして、例えば、決済の時間のずれなどによる短期の資金繰りなどのための数日程度までの資金需要、一時的な資金の不足を補う1年程度までの中期の資金需要、設備投資や住宅購入などの構造的な長期の資金需要などに類型化することが考えられるのではないかということでございます。

ページをおめくりいただきまして6ページでございますけれども、これに対しまして、一般の資金余剰主体は、将来いつ資金が手元に必要になるか完全に見通すことができないということもあり、安全性が高く随時引き出せる要求払い預金ですとか、あるいは売買が容易にできる流動性の高い金融商品に対するニーズが比較的多いものと考えられます。こうした中で、「資金供与」に係るサービス提供者は、長期の資金需要などの供給が不足しがちな資金需要の充足や、資金の出し手と受け手のマッチングを担っていると考えられるがどうかという論点を掲げさせていただいております。

次に、(2)の「預金受入れ」との組み合わせの場合に移らせていただきます。ここでいう「預金受入れ」につきましては、預金取扱金融機関のみに認められているものでございまして、当然これには信用金庫等も含まれるというふうに思っておりますけれども、ここでは預金取扱機関の代表例として銀行と呼称して進めさせていただければと思います。公的なセーフティネットも背景といたしまして、これらの銀行等は、預金の安全性への信頼などから、比較的低い調達コストで資金すなわち預金を集めることができるとされているところでございます。

2つ目の丸でございますけれども、普通預金や当座預金を代表例とする銀行の受け入れる要求払い預金につきましては、預金者の求めに応じ随時引き出すことが可能な短期の資金ということができるかと思います。一方で、資金需要者は、投下資本が回収できるまでなど、中長期の満期の貸し付けを希望することが多いと考えられます。銀行は多くの預金者から預金を受け入れ、通常の環境の下では預金の一定割合しか現金として払い戻しがされないということ等、銀行が受け入れた預金に対して100%の現金準備が必要とされないこともあいまって、短期の資金を受け入れつつも、短期だけでなく中長期の貸付を行い、流動性変換(liquidity transformation)ですとか、満期変換(maturity transformation)を行うことができるということかと思います。

3つ目の丸でございますけれども、また、銀行は、資金需要者の審査・モニタリング等の情報生産機能を通じまして、資金需要者のリスクを専門的に評価し、また、さまざまなリスクを有する貸付先を組み合わせることによって貸付ポートフォリオのリスクを軽減することができます。このようにして、本来低リスクであるべき預金を比較的リスクの高い資金需要者への貸付に回し、信用変換(credit transformation)を行うということもやっているかと思います。

最後の丸でございますけれども、このように銀行は、預金を原資とする貸付によりまして信用創造をすることができますけれども、こうした流れが止まったり逆回転したりすると、経済活動や金融システム全体に悪影響が及ぶおそれがある、すなわちシステミックリスクのおそれがあるということかと思います。

7ページの冒頭の(参考)では、このようなシステミックリスクに対しまして、現状、公的なセーフティネットによって銀行等の預金の元本保証を強化し、取り付けが起こることを防ぐとともに、健全性規制や他業制限を含む規制が課されていること等についてご紹介させていただいているところでございます。

次に、7ページ目の(3)のところでございますけれども、「預金受入れ」を伴わない「資金供与」に移らせていただきます。典型的には貸金業ということになるかと思いますが、1つ目の丸ですけれども、貸金業法では、貸金業を営む者の業務の適正な運営の確保及び資金需要者等の利益の保護を図るとともに、国民経済の適切な運営に資することを目的としております。ここでの貸金業とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介を業として行う者をいいます。

2つ目の丸のところでございますけれども、貸金業におきましても、資金需要者の審査を通じ、貸付のリスクに応じた金利を設定することで、流動性や信用、一定の期間に係る資金需給のミスマッチの解消には寄与しておられるものと考えております。

3つ目の丸ですけれども、また、貸金業法・利息制限法・出資法におきましては、上限金利が規定されているほか、貸金業法では多重債務問題の経緯等に鑑みまして、多重債務防止のため、与信限度額を原則債務者の年収の3分の1とする総量規制を設けて過剰貸付を禁止しているところでございます。

このほか貸金業法では、国民経済の適切な運営に資する観点からする貸金業の実態把握のための報告等が規定されておりますけれども、こうしたものを除けば、貸金業法の規制は、専ら資金需要者の保護を目的としたものになっていると考えております。

次に8ページ目の上の丸でございますけれども、金融商品取引業者ないし保険会社が行う金銭の貸付でございます。金融商品取引業者は、顧客から保護預りをしている有価証券を担保とする金銭の貸付を行っております。また、保険会社が行う金銭の貸付についても業法の中で業務範囲として認められているものでございます。このような貸付は、銀行や貸金業の貸付と同様、「資金供与」の機能を有していると考えられますけれども、現行の各業法における整理は本業に付随して行われるものというふうにしておりまして、それぞれの本来の「機能」に付随するものと整理されているところでございます。

続きまして、(4)の「資金供与」分野における金融法制の保護法益についてご説明させていただきます。上記の(1)から(3)までを踏まえまして、金融の「機能」としての「資金供与」分野の保護法益として金融法制が想定すべきものに関して、以下のように考えることについてどう考えるかという論点でございます。①でございますけれども、資金需要者に対する信用供与を効率的に行うこと、より具体的には、流動性に係る資金需給のミスマッチを解消する流動性変換、短期から中期に集中しがちな資金供給と短期から長期まで幅広く存在する資金需要の間にあって経済全体の期間に係る資金需給のミスマッチを解消するいわゆる満期変換、サービス提供者による審査・モニタリング等を通じ投資家から直接資金を調達することが難しい個人や中小企業等に対しても資金調達の手段を提供するいわゆる信用変換ということかと思います。

②と③は、典型的には「預金受入れ」との組み合わせの場合になるかと考えられますが、②としまして、信用秩序を維持すること、すなわちシステミックな金融危機を防ぐことを挙げさせていただいています。③としまして、利用者、典型的には預金者の資産が保護されることとさせていただいています。

④といたしましては、資金需要者の保護、すなわち、資金需要者に対して情報提供等が適切に行われること、過剰貸付の防止等を記載させていただいているところでございます。

⑤はサービス提供者がサービス提供において入手する利用者の情報の保護、⑥はマネー・ローンダリング及びテロ資金供与の防止等ということで、⑤と⑥については「決済」のところでご説明したものと同じものを書かせていただいております。

続きまして(5)の「資金供与」の中に含まれる行為の類型化に関する考え方のところでございます。これも1回目からご指摘がございましたけれども、「預金受入れ」と「資金供与」をあわせて行えば、預金を原資とする貸付によりまして信用創造が可能となりますけれども、そうしたサービス提供者の健全性が損なわれた場合に、信用創造の流れが止まったり逆回転したりして金融システムの安定を損ない、経済活動にも悪影響が及ぶおそれがございます。そのような場合には、「資金供与」を単独で行う場合に比べまして、免許制等の下で加重されたルールを課す必要があるという考え方があり得るがどうかという論点を掲げさせていただいています。

これに関しまして、例えば貸付債権を担保として資金調達を行って、それを用いて更に貸付を行うことなどにより、預金受入れを行わずとも一定程度信用創造ができることについてどう考えるかといった論点も付記させていただいております。

ここで、注のところでございますけれども、横長の参考資料をつけております。こちらに欧米の主要国における銀行や信用機関の定義規定をまとめさせていただいているところでございます。上から見ていただきまして、アメリカ・EU・イギリス・フランスでは、基本的には預金受入れと貸付の両方を行う場合を銀行というふうに扱っているものと承知しております。アメリカの場合ですと、支払いのために引き出される預金の受入れ及び商業貸付を行う組織を銀行持株会社法で銀行と定義しておりますが、アメリカの場合は預金保険法加入銀行につきましては預金受入れ単独の場合も銀行としておられるところでございます。

また、フランスについて補足させていただきますと、従来は預金受入れだけ、貸付だけ、決済だけでも銀行業務とされていたものと理解しておりますけれども、2015年5月に通貨金融法典の定義が改正されておりまして、そのときにこのEUに合わせたというふうに理解しておりますけれども、現状では預金受入れと貸付の両方を行う場合を信用機関と扱っておられるというふうに理解しております。

これに対してドイツでは、預金受入れだけ、貸付だけの場合でも信用機関に当たるというふうに整理されていると理解しております。

なお、この参考資料記載の主要国・地域におきまして、現状において決済業務だけで銀行業務とされているものはないというふうに理解しております。

なお、日本では現状、預金受入れと貸付の両方を行う場合のほか、決済だけを行った場合でも銀行法上銀行として同じルールが適用されることになっておりますけれども、今後のあり方を考えていく上での一つのご参考としてご紹介させていただければと思います。

討議資料のほうにお戻りいただきまして、9ページの(6)でございますけれども、金融規制の対象外と位置づけられているサービスについてでございます。例えば、販売信用・リース・ファクタリング、包括的ではございませんけれども、このようなサービスにつきましては、金銭の貸付、いわゆる金銭消費貸借とは異なりまして、商品等の購入・利用に付随する信用供与であったり、仲介者の介在しない債権の売買であったりすることから、現行の法制では金融規制の対象とはされていないところでございます。

2つ目の丸でございますけれども、同様の機能を有するサービスに異なるルールを適用すれば、規制の回避(規制のアービトラージ)につながるという可能性もある一方で、様々な社会的要請に基づく規制の適用範囲を明確にする等の観点から、ある程度法形式に依拠せざるを得ないというふうにも考えられますがどうかという論点を提示させていただいております。

最後に10ページでございますけれども、(7)といたしまして、ITの進展等に伴う新たな「資金供与」サービスの取り扱いについて幾つかご紹介させていただいています。1つ目の丸では、ITの進展等に伴いまして仮想通貨やデジタル通貨などを用いた貸付など、新たな手段を用いた「資金供与」と同様の機能・リスクを有するサービスが提供される可能性があるが、それについてどう考えるかという論点を提示させていただいております。

2つ目の丸でございますけれども、いわゆるトランザクションレンディングと言われるようなものかと思いますけれども、取引等に伴いまして蓄積されたデータをサービス提供者が資金需要者の審査等に活用することにより、従前よりも迅速に「資金供与」を行うことが可能となってきております。その際、例えば数日程度までの極めて短期の事業者の資金需要に対応することも技術的には可能となってきておりますけれども、市場の金利情勢によりましては、上限金利の規制等によりまして資金供給が困難になり得るというような指摘がございますけれども、どう考えるかという論点でございます。

最後の丸でございますけれども、サービス提供者がインターネット等を活用しまして資金の出し手と受け手のマッチングのためのプラットフォームを提供するような場合、いわゆるP2Pレンディングと言われるものについてでございます。そうした場合の規制のあり方についてどう考えるかという論点もございます。注のところに書かせていただいておりますけれども、現在の貸金業法では金銭の貸付を業として行えば、P2Pレンディングのプラットフォームを利用するような個々の資金の出し手についても貸金業登録が必要となります。このような場合、P2Pレンディングのマッチングのためのプラットフォームを提供する者をプラットフォーム提供者と位置づけまして、そうしたプラットフォーム提供者に対する規制のあり方を検討していくほうがより実効的であるというようなご指摘もあるかと思いますが、どうかといった論点でございます。

事務局の資料の論点は以上でございます。必要な論点を出し尽くしていないというところもあるかと思いますし、これまで掲げてきました様々な論点に対するご意見のほか、金融の「機能」としての「決済」及び「資金供与」の役割及び保護法益について他に検討するべき点があればご指摘いただければ幸いでございます。また、次回、次々回以降、リスクですとか、あるいは規制の手段についても検討してまいりたいと思いますので、そういった観点の参考になるようなご発言もお願いできればと思います。

事務局からの説明は以上でございます。

【岩原座長】  
どうもありがとうございました。それでは討議に移りたいと存じますが、その前に少し発言してもよろしいですか。

【井上信用制度参事官】  
はい。

【岩原座長】  
ただいまの説明の中で、欧米の銀行の定義、参考資料にありましたところで、EUなども含めて資金移動あるいは日本でいう為替取引については銀行(信用機関)の定義には入っていないという御紹介がありました。それはそうなのですけれども、一方でEUは第二次支払サービス指令で資金移動に係る支払サービス業者対して信用機関に準じる規制をしておりますので、それも含めて考える必要があるということを申し上げておきたいと思います。

それではまず決済について、どなたからでも結構ですので、ご発言をお願いしたいと存じます。戸村さん、どうぞ。

【戸村メンバー】  
ありがとうございます。全般として討議資料の趣旨には賛成ですが、決済については2点ほどコメントを申し上げたいと思います。討議資料の2、(3)①にある決済の保護法益に関連してコメントを述べたいと思います。

まず最初に、討議資料2(2)で述べられているように、決済機能を広く定義することには賛成なのですが、その中で、現在の通貨法、日本銀行法で定義されている法貨及び法貨と固定比率での兌換性を持つ預金、電子マネーによる決済と、それ以外のものによる決済は、法制度上区別したほうがよいと思います。法貨による決済に対しては、日本銀行が法貨の発行者としてシステミックリスク防止のための最後の貸し手機能を無制限に発揮することが可能なので、法益保護の社会的費用が安いと考えられます。そうすると、異なる決済手段の間で法益保護のための社会的費用に違いがあることになりますが、そのような違いを踏まえて各個人・企業が決済手段を選ぶのが社会的に望ましいと思います。また、法的保護の社会的費用が高い法貨以外での決済が一旦広がって、何らかの危機を経てしぼむというような過去のシャドーバンキングに見られたような展開は望ましくないと思っております。これらの観点から、法貨と法貨以外の決済に同じ義務を課す一方、利用者保護制度は法貨による決済のみを対象とするなど異なる取り扱いをするほうがよいと思います。これが1点目です。

討議資料2(2)に関連するもう1つの論点として、利用者が各決済手段に内在するリスクを正しく認識するためには、制度の名称も重要だと考えております。例えば、現在の資金決済法上の仮想通貨交換業を例にとると、仮想通貨という名称は経済的機能に即したものになっておりますが、電子台帳業や電子取引記録業のような技術の特徴に即した名称にしたほうが、政府が法的な通貨の一種として仮想通貨を保護するかのような誤解を利用者に与えずに済むのではないかという印象を最近の報道を見て感じております。

また、引き続き仮想通貨の例を取り上げますと、背後にある技術は、決済サービスのみならず他用途の利用可能性も大いにあると思いますので、産業振興の観点からも、法制度上のアクティビティーを経済的機能ではなく技術的特徴に基づいて定義したほうが柔軟性のある規制となる場合があるかどうかは検討すべきだと思います。

以上2点です。ありがとうございます。

【岩原座長】  
神田さん、お願いします。その後に福田さん、お願いします。では神田さん。

【神田メンバー】   
済みません、どうもありがとうございます。決済の部分について3点ほど申し上げたいと思います。資料の記述は基本的にこれで結構かと思うのですけれども、何か初めて読んでもなかなかわかりにくいというか、どういう論理的な順番になっているのかという部分があると思いますので、私がわかりやすく言えるということでは全然ないのですけれども、3点申し上げます。

第1は概念です。まず、決済という概念ですけれども、資料の中にも出てきますけれども、英語でいうとペイメントというのがあって、AさんがBさんから物を買って支払うと。それからその上に清算という概念、クリアリングになるのですけど、それで最後にセトルメントという概念があるのですが、まあ日本語はなかなかいい概念がなくて、広い意味で全部決済と呼んでいるのですけれども、システムテミックリスクを議論する際にはクリアリングとセトルメントのところも重要になるということです。ただ、どのレベルを問題にしているのかということをきちんと認識する必要があると思います。それで、今日の資料との関係では、主としてペイメントですので、支払というふうに私は表現し、この日本語を使わせていただきます。

それから、この概念は債務が消滅するという法的な説明があると思うのですが、債務の消滅と同義ではありません。通常は決済、すなわちペイメントによって債務が消滅しますけれども、債務はほかの方法でも消滅することがあるわけで、例えばですけれども、消滅時効が完成していてそれを援用すれば消滅するわけですので、したがって、そこは気をつける必要があると思います。

2点目ですけれども、ここで利用者保護が課題になるのは、ペイメントというか支払の当事者ではなくて、その当事者とは別にその支払行為を仲介することを業として行う人がいる場合、これは伝統的には決済サービスとか支払サービスというふうに呼んでいます。それを仲介と呼ぶとすると、AさんがBさんから物を買って自分でペイメント、ペイするのは自己責任の世界です。その間に別の人が入って、そこで支払仲介行為をすると、それはいろいろな国で法制度で何らかの規制というかルールを設けたほうがいいということになっている。そうだとすると、その支払サービス行為というものをどう類型化していくかというのがこの紙にも書かれている話ということになります。

支払仲介行為の類型化は、いろいろな方法があると思うのですけれども、抽象的に言えば、その支払仲介行為自体を実行するという行為、これが一番中心です。2番目に、その媒介というのでしょうか、例えばAさんがBさんから物を買って支払う、これを仲介するMという人が業として行っているときに、AとM、MとBの間にさらに入る、媒介などと言ったりすることがありますけれども、そういうものを業としてやる人、これの位置づけは、抽象的にこれまでの経験から言えば、独立した業をしているという整理と、まあ何というか代理業というか、従属業などといっていますけれども、そういう整理とがあって、それぞれ法制度のあり方は変わってくると思います。

3番目に、資料にも出ているのですけれども、もうちょっと違った観点で、今、支払が問題ですので、支払の仕組みを提供するような行為を業としてする人、あるいは支払の手段も提供することを業としてする人、こういう人たちというか、そういう行為が問題になりますけれども、これも独立して業としての行為と考えるやり方と、従属する行為として、例えば支払仲介行為の実行というのを主たる業として、それに従属させて考えるという考え方とに整理ができると思います。

3点目、利用者保護です。これが規制目的になるかということですけれども、繰り返しになりますけれども、AがBに支払うというペイメント自体は、まあ自己責任という表現がいいかどうかよくわかりませんけれども、利用者保護をすぐ要請するわけではなくて、それは場合によっては消費者契約法とかそういう課題はあるかと思いますけれども、間に仲介を業として行う、支払サービス業者が登場するので問題になるということであります。

利用者保護の観点は、3ページに資料で5つ挙がっていますけれども、この5つはもうちょっと大きくいうと3つだと思います。1つは支払の実現ということで、3ページの資料でいうと①、②、③です。なお、資料の①に「又は」と書いてあるのですが、オアだけでなくてアンドの場合も多いと思います。それは細かいことです。で、支払を実現するためには先に支払手段を渡すということがありますので、時期がずれる場合には、その間、ここでいう資金預けというか、預け資産の保護ということが当然問題になります。他方、支払が実現した後は、こういう問題は普通はないのですけれども、余分に支払手段を預けておいて、次の支払に充てるというようなこともあり得るので、次の支払との関係では事前に預け資産ということになります。

私は①、②、③は支払の実現ということでいいと思います。もう1つは情報の供与でして、当然、支払取引をするために支払う人は何らかの情報を提供しますので、その目的外利用の制限というか、資料でいう4番目が問題になります。それから、資料の5番目でシステミックリスクのような話が書いてあって、これも当然問題になりますけれども、これはちょっと繰り返しになりますけれども、ペイメントだけでなくてクリアリングやセトルメントをあわせてこの場合は考える必要があると思います。

なお、以上とは別に、資料にはマネーロンダリングとか、これは大変重要な規制なのですけれども、これは決済・支払で問題になるのではなくて資金移動の問題だと思います。資金移動という概念と支払という概念は、前に申し上げましたように同じではありませんで、互いにはみ出る部分と重なる部分があるのですけれども、資金移動についてはこれが問題になるということかと思います。あまりわかりやすく整理していないかもしれませんけれども、以上を申し上げます。

【岩原座長】  
はい、それでは福田さん、お願いします。

【福田メンバー】  
非常に丁寧に整理されていると私は思いました。ただ、伝統的な決済の問題を考える上では非常にぴんとくるんですけれども、新しい時代に起こりつつある現象にどこまで対応できるかという問題は、やはり考えなければいけないと思います。例えば1ページ目に、「現金の受け渡しや物々交換などのような方法で解消しなければならない場合と比べ」と書いてありますけれども、今起こっていることはまさに、従来は現金でやっていたようなことをもう現金でやらなくなっているということです。日本はそれほどでもないですけれども、海外ではほんとうにキャッシュレス化が進んでいて、現金決済をもうほとんどやらなくなっている国が非常に大きくなってきているということだと思います。ただ、機能的に見ると、これはかつて現金決済でやっていたような問題とほとんど変わらないわけですから、これはどういうふうに区別するかということというのは、考え方というのはやはり大事なんじゃないかなとは思います。

それから2番目は、戸村さんとの話とも若干関係してはいるんですけれども、伝統的な決済というのはまさに中央集権的な決済であって、日本であれば全銀ネットと日銀ネットという形で、最終的には日本銀行のネットワークを通じて銀行間の決済が行われるということだったとは思うんです。けれども、新たに生まれている新しい決済の仕組みというのはまさに分権的な決済という仕組みです。その分権的な決済の仕組みにも対応する概念になっているのかどうかということは大事です。それは規制をするにもそもそもそういうことができるのかどうかということも含めてだと思いますし、あるいはそもそも国境のない世界になってきている中での議論として、どこまで当てはまるような議論になるのかということにもなるかと思います。そういう意味では、先ほど申し上げたように伝統的な決済の概念の整理としては非常に妥当とは思うんですけれども、新しい時代に今生まれつつある決済の考え方としてこの概念整理というのがどこまで当てはまるものなのか、当てはまらないものなのかという議論は、やはり常に問うていかなければいけないし、実際そういうものが急速に広がっているという現実はやはり重要だろうというふうに思われます。

【岩原座長】  
はい、それでは次に植田さん、お願いします。

【植田メンバー】  
ありがとうございます。非常によくまとまっているかと思います。ただ、皆様方のご意見とほぼ同じではあるんですけれども、やはり今のこの論点ですと、今まさに金融業の機能の定義を書かれているんですけれども、本来もともとそういう金融業が何でそうあるか、仲介業がなぜあるかというところの議論がない。神田先生もおっしゃっていましたけれども、やはり決済でいえば対価の支払いをする人が、主体があって、対価を受け取る主体があってという、そこのところをやはり、その金融業の枠外にある部分から、社会全体から考えて、初めて新しいサービスがどうして生まれてくるかということが理解できると思うんですよね。対価支払いのためにもっと利便性の高いものになるようなそういうサービスが生まれて、対価受け取りのためにもまたそういうサービスが生まれたりしてくるわけなので、そこから書かないといけないのではないかなと思います。

それで、今書かれていないことは、逆に言うと書かないようにしているんだと思うんです。けれども、いわゆる伝統的には日本銀行券、現金ですよね、現金でそもそも決済を行っていたというのが大昔からあるわけでして、それが金融業じゃないから書いてないんでしょうけれども、広い意味での金融、決済という意味では、やはり現金というのは大事なものなのです。それを書かないでおくということ自体によって、現金にかわるものが出てくるときにどう対処するかというのが、今度は書けなくなってしまう。ですので、やはり現金という言葉をどこかに出して、それにかわるものが最近どんどん出てきたんだと書く。ここはちょっと戸村さんと違うんですけれども、法制上はともかく経済上はやっぱり現金にかわるものが出てきているので、そういうものは仮想通貨でありポイントなんかであり、そういうものもうまく定義していく、この文章の中にはめ込んでいく、という努力が必要になってくるのではないかと思います。

【岩原座長】  
それでは大野さん。

【大野メンバー】  
岩原座長、ありがとうございます。決済について幾つかコメントを述べさせていただきます。

1つ目は、決済の対象と射程に関してです。典型的な取引である為替取引を起点にして論点整理を進めるアプローチに異論はございません。ただし、為替取引の概念で捉えられる範囲はやや狭過ぎるきらいがあると感じております。これを限定的に捉えるのではなく、もう少し広い視野を持って拡張可能性を踏まえることが肝要だと思っています。その意味では、2ページに書かれている2つの論点を視野に入れることが重要と思います。1つ目は決済サービス提供者を介して債権債務関係の解消を行う行為、これを決済に含めることが望ましいという考え方に賛成いたします。

2つ目は、その下の(2)の論点、資金以外の交換手段としての役割を果たす決済手段についての考え方です。これをどこまで視野に入れるかは議論の余地はあろうかと思いますけれども、資金以外の方法、例えばポイントの利用であるとか仮想通貨など、こうした新しい動きも極力決済のフレームワークに取り込んで検討の対象とすることが有益であると考えています。

最近の動きと少し先を読むということから3点申し上げたいと思います。1つは、先ほど神田先生からございましたペイメントのツールといたしましては、近年、プリペイド方式、フェリカ、QRコード方式などのさまざまな手法が開発され、サービスの提供が既に展開されております。しかもこうしたサービスの提供主体は、伝統的な金融機関というよりも、Eコマース企業、通信キャリア、IT企業、フリマ企業などの広がりを見せているのが実情であります。こうしたさまざまな業態によって提供される類似のペイメント機能に対して、顧客保護の確保、それから規制を含めた競争条件の均衡をいかに整えていくかが重要な論点になると考えております。

2つ目は、決済のデジタル化の進展です。この動きというのは小口化、短期化、リアルタイム化を加速する可能性が大きいと思っております。規制対応のコストをどれだけ抑えることができるか、あるいは適切に対処することができるかが、イノベーション促進の観点から重要な検討課題ではないかと感じているところであります。

もう少し先読みをしますと、いわゆるスマートコントラクトの進化などITイノベーションの発展に伴って、今後、資金決済だけではなくて証券決済、物品の権利移転などが一体化するような動きが加速する可能性があります。こういったことも視野に入れていくことが重要ではないかと思っております。

次の論点の決済分野における金融法制の保護法益については、決済(ペイメントとセトルメント)は国民経済活動の基本を支える不可欠の社会インフラと位置づけられるものでありますし、この安全性を確保するということは極めて重要な保護法益とすることに異論を挟む余地はないと思います。事務局ペーパーの3ページの1に述べてあるように、まずは個々の取引決済について債権債務関係の解消が迅速かつ確実に履行されること、さらにつけ加えれば、不可逆的に実行されること、これらを担保するような法制度のフレームワークを整えることが目標となると思います。

2つ目のシステミックリスクの問題については、伝統的なシステミックリスクというのはおそらく大恐慌時代でみられた銀行の連鎖的な破綻から、最近では2008年ノンバンクの取引を起点としたリーマン・ショックへと、システムリスクが顕現化する態様も時代とともに非常に変化をしてきております。このリスクをいかに軽減できるかというのは今日においても非常に重要な政策課題であると思います。その対応策としては、事務局ペーパー4ページの注意書きで記されておりますように、中央銀行が取り組むRTGSなどの即時性の高い決済の迅速化が有効な施策として挙げられると思います。システミックリスクの削減策については、これまで中央銀行が積み上げてきたノウハウ、知見が大いに役立つと思っております。

最後に保護法益のところについては、3ページにずっと掲げられているリストに違和感はございません。ただ、金融の各機能にとって共通の項目が少なくないという点については、先ほど神田先生がおっしゃったことに全く賛成でございます。ただし、特にシステミックリスクについては、これはもちろん決済のところでは重要な要素でありますけれども、資金供与やリスク移転にも非常に関係が深いわけでありますし、さらには市場流動性リスクみたいなものが今日的には重要でありますので、そういった広がりを持つ論点として認識していくことが重要と感じております。

以上です。

【岩原座長】  
それでは翁さん、お願いします。

【翁メンバー】  
ありがとうございます。保護法益という言葉なのですが、リーガルな分野では当たり前のように使われる言葉だと思うのですけれども、規制なりなんなりのルールで守るものという言葉の印象を受けるわけですが、ただ、政策課題として重要であっても、こういった例えば決済が確実に履行されることというようなことは、むしろ技術革新によって確保できたり、また、金融機関同士の競争によって実現できたり、そうした情報開示による市場規律の発揮によって確保できたり、そういういろいろな手法があるというふうに思っております。ですので、何かこの言葉を気をつけて使ったほうがいいかなという印象を持っておりまして、というのは、リーガルな方々には非常にフィットする言葉なのかもしれないですけれども、必ずしも何らかの規制によって守るべきものであるというものではない可能性もあるんじゃないかと私は思っておりまして、守るというよりも、確保されるべきこととか、政策的に重視しなければいけない課題とか、そういった言い方をするとこれらの議論は当てはまるかなという感じを持っております。例えば3ページの①で決済が確実に履行されることというのがございますが、例えば為替取引というのが、人手に頼ってやっていたころというのは、銀行業だけに免許を与えて人的専門性とか信頼性とか、そういったことで決済を担ってもらうということにしていたわけですけれども、それは規制や法でそういった決済というのを守ってきたという印象を与える保護法益というのはぴったりフィットするわけなんですけれども、この分野というのは以前から技術革新が進んでいて、決済の確実性、安全性というのはまさに革新的技術とか業務設計の工夫ということでかなり担保できるようになってきているというようなことが私の印象としてはございまして、そういう意味でこういったコメントをさせていただいております。

また、2のRTGSのことも書いてございますけれども、これもそういった設計の工夫によって未決済残高を減少させて資産が保護されるというようなことを可能にしているということだと思っておりますので、そういった言葉というか思想というか、そういうことを少しコメントさせていただきたいと思います。

その意味で、利用者利便も保護法益というふうに書いておられるんですけれども、まさにこれはイノベーションとか業務設計の工夫で達成できる部分というのが非常に大きいのかなというふうに私は感じております。

それからあと2点ほど申し上げたいんですけれども、為替とか為替取引というのは、従来銀行業特有のものとして議論されてきたわけですが、近年、資金移動業が参入し、それから近年は仮想通貨とかいろいろな手段によって決済や送金も行われるようになってきていると思っております。その意味で、当初は預金などを想定して議論されていたと思うのですけれども、交換手段がさまざまなものが出てきているということ、それからネッティングというのも広い意味で決済に含まれるというようなことというようなことを考えますと、決済という中に為替取引というのがベン図の一部になっているし、また、為替取引という言葉自体も再定義とか決済との関係についての整理というのがちょっと必要になってきている。今までの先生方のご議論にも関連するのですけれども、そういう印象を持っております。

それからシステミックリスクという観点につきましては、大野さんのご意見と非常に通ずるものがございますけれども、決済のところで書かれている法益というのは、利用者保護とかマネーロンダリングとかこういったところを射程に入れているものだと思いますけれども、このシステミックリスクというのは、それをも含むかなり広い分野で経済的なコストを最小にしていくという意味で必要になってくるということで、法益が異なるというよりは達成すべき目標がさらに広いものになっているというイメージで議論していくことが必要なのではないかというふうに思っております。

以上でございます。

【岩原座長】  
それでは次に加毛さんお願いします。

【加毛メンバー】  
ありがとうございます。性質の異なる話を都合4点申し上げます。第1点は、最初に戸村メンバーがおっしゃり、植田メンバーもご指摘されたところです。2(2)の資金以外の交換手段としての役割を果たす決済手段の取扱いについて、戸村メンバーは両者を区別すべきだとおっしゃり、植田メンバーは広く両者を対象に含めるべきだとおっしゃいました。いずれも私はそのとおりだと思います。その上で、若干、議論の整理のために申し上げるのですけれども、まず、商品やサービスの対価を支払う手段というときに、この対価というのが法定通貨建てなのか、それとも法定通貨とは切り離された仮想通貨建てなのかということを区別する必要があると思います。この点は戸村先生のご意見のとおりであると考えます。次に、対価が仮に法定通貨建てである場合には、法的には金銭債務であることになりますが、その金銭債務を弁済するために何を用いることができるのかは、別途問題になるだろうと思います。既に電子マネーをめぐる議論において、金銭債務を弁済できる支払手段とはどのような属性を備えたものであるのかについて、議論の蓄積がございます。そのあたりの議論を参考にできるのではないかと考えました。

2点目は、2(1)において、「決済」の射程に何を含めるかという問題についてですが、自家型前払式支払手段のようなものも議論の対象に含めることは結構なことであると思います。その上で、事務局資料では非常に慎重に検討されていると思いますけれども、自家型前払式支払手段について、いかなる問題を検討する必要があるのかが問題となるだろうと考えます。自家型前払式支払手段については、少なくとも現在までのところ決済の連鎖のようなものはないだろうと考えられます。他方、顧客財産保護は、自家型前払式支払い手段についても、やはり問題となるでしょう。自家型支払手段を議論の射程に含めた上で、そこで具体的に何が問題となるのかを慎重に検討する必要があるだろうと思います。

3点目は小さな話なのですけれども、3ページの2(3)③の情報提供というのは、それ自体が保護法益あるいは達成すべき政策目標というより、何かの政策目標があって、そのためにどのような情報を提供すべきかを論ずべきもののように思います。①から⑤と並記されているところに若干の違和感を覚えた次第です。

4点目として、2(3)②の利用者の資産保護は重要な問題であると思いますけれども、利用者資産をいかなるリスクから保護するのかにより、異なる性格の問題があるように思います。例えば仲介者が存在する場合に、その仲介者の倒産リスクから利用者資産を保護することと、無権限取引などがなされた場合に利用者にどのような保護を与えるのかということは、性格の異なる問題であろうと考えられます。例えば、クレジットカードによる決済を考えてみますと、顧客の財産を預からないタイプのサービスであるため、倒産リスクからの資産保護は問題にならないかもしれませんが、無権限取引からの顧客保護は問題となります。金融機能を横断的に考えるという意味で、両者の区別が重要な視点になるのではないかと思います。無権限取引については、冒頭で岩原座長がご指摘された、PSD2ではルールが明確にされています。他方、日本には全国銀行協会による自主ルールがございます。どのような規制の手法が望ましいのかという点を含めて議論の対象とするのが良いのではないかと考えています。

ありがとうございました。

【岩原座長】  
それではその次に舩津さん、お願いします。

【舩津メンバー】  
ありがとうございます。先ほどの加毛先生のお話の1点目と関係する話なのですが、2ページの2のところの資金以外の交換手段としての役割を果たす決済手段の取り扱いというところで何を含めるのかというところがあるかと思いますが、例えば円建てのものを仮想通貨で払うというようなことまでを決済機能ということで整理するかどうかというのが一つの論点ではないかという気がしております。具体的に申し上げますと、昨今の報道などを見ていますとおわかりかと思いますけれども、仮想通貨のような相場が変動をするものですと、それ自体で価格変動リスクがあるということになります。そうしますと、支払人の払った価値と受け手側の受け取る価値の表示が違う場合には、仲介者はおそらくそこで何らかの形で資産の転換をしているということになると思います。その転換ということ自体をこの為替取引の中に含めるのかどうかということによって、為替取引の中に価格変動リスクに対処するような方策を設けるかどうかということが変わってくるのかなという気がしております。見方によっては、そういう資産の転換をしたという段階がまさに超短期の資産運用だと整理できなくもないのかもしれませんが、ただ、決済の段階ですと、まさに受け手が欲しいと思う資産の形態でなければ債務は原則として解消されないはずですので、決済における究極の利用者保護ということになると、利用者の財産というか経済的な何らかの価値が保護されればよいというのではなくて、まさに受け手が欲しいと考えている価値をその形態のままで保護しないと決済としては回らないはずだと思います。そういうふうに考えますと、やはり決済機能というものにそういった資産形態の転換というものを含めるのか含めないのかというあたりは少し考えてみてもいいのかなと思いました。

以上です。

【岩原座長】  
それでは次に、坂委員お願いします。

【坂メンバー】  
ありがとうございます。3点ないし4点意見を述べさせていただければと思います。

まず1点目は、自家型前払式支払手段についてですけれども、前払式支払手段については、交通系の電子マネーですとか流通系の電子マネーなど汎用性の高いものが拡大してきていることから、これを含めるべきだというふうに思いますし、自家型のものについても、大規模なネット販売業者が自家発行を行って、これを活用していくというようなことがあるとすれば、これはやはり含めるべきであろうと思われます。

2点目ですけれども、決済の保護法益に関してなんですが、ここには①から⑤まで挙げられていますが、基本的には利用者が安心して決済手段を利用することができるということが重要なのではないかと。そういう意味では、この③に書かれていることをもう少し広げて考える必要があるんじゃないかと考えております。この間、リテールの分野では、悪質業者による決済手段の悪用ですとか乱用の対応が課題となってきています。例えば投資詐欺や振り込め詐欺などの送金手段に用いられたり、あるいは高齢者への勧誘販売やサクラサイト被害等の決済手段に用いられたりしているという問題があります。これらの問題に対しては、現行法でも犯罪収益移転防止法のほか、振り込め詐欺救済法、資金決済法、割賦販売法の加盟店管理制度等、こういったことで政策的に対応が図られてきているところと思います。また、保護法益を検討する利用者としては、資金の出し手だけではなくて資金の受け手も考える必要があるんじゃないかと思います。この点は、特に拡大してきているインターネット上でのピア・トゥ・ピアの取引においても問題になってくるところと思います。

次に3点目ですけれども、先ほど来出ております新しい支払い手段についてどう考えるかということで、いろいろと電子マネー等出てきておるんですけれども、基本的には現行の出てきている新しいものも、多くのものは既存の預金体系の決済制度にひもづけられているものが多いのではないかと。例えば前払式支払手段についても、これは基本的には基準日における残高の半分の額ということにはなりますが、保証金の預託が義務づけられているということになりますと、全く預金と独立して存在しているわけではなくて、ある意味預金の外縁を広げているというものなのではないかと思われます。そうしますと、多くのものは現在の預金制度の枠内あるいはそれに関連した範囲にあるということになります。もっとも、これから外れるものをどう考えるかということは一つの論点かというふうには思います。

あともう1点、論点として提示されている4ページの利用者利便というところなのですが、利用者利便は非常に大事だとは思うんですけれども、ある意味、決済の確実性ですとかそういったこととはトレードオフの関係にもあり得るということも考える必要があるんじゃないかと。こういうことを考えるときに、基本的に、利用者利便はどちらかというと市場競争によってかなり解決を図れる部分があり、他方で決済の確実性というのは、ある意味どちらかというと利用者には見えにくい面があるということになりますと、政策的にどちらをどう支援するかは、これらをある程度念頭に置いて検討する必要があるのではないかと思います。

以上です。

【岩原座長】  
それでは次に森下さん、お願いします。

【森下メンバー】  
ありがとうございます。4点ほど申し上げたいと思います。

まず1点目ですけれども、決済という言葉に関してですけれども、今までのお話に出てまいりましたように、決済といった場合に、例えば清算システムのようなものを考えるのか、そうではなくて、資金移動的なものを考えるのかということでは大分違うのではないかというふうに思います。資金移動ということに関して言いますと、必ずしも債権債務の清算を目的としないような資金移動もございますので、決済という言葉にこだわるあまり、債権債務関係の清算を目的としない資金移動というようなものが落ちてしまうというのは適切ではないのかなと考えております。また、資金移動といっても、順方向のものに限らず取立型のようなものもありますので、少しそこは視野を広げて考える必要があるのではないかと考えております。

手段、対象という面に関してですけれども、先ほど来のお話にもありますように、私は機能やリスクが同一なのであれば、例えば電子マネーですとかあるいは仮想通貨ですとか、あるいはクレジットカードなどもリテールの決済においては非常に重要な役割を果たしていると思いますけれども、そういったようなものを幅広く対象に入れ、検討の対象とすべきであるというふうに考えております。

当然、種類が違えば決済法制という部分からははみ出してしまう関係のない部分、例えばクレジットカードなんかを使いましても、別に決済のためだけに持っているものではありませんし、仕組みも異なると思いますので、そういったことによる規制のバリエーションが出てくるということは当然だとは思いますけれども、やはり共通する部分というものがあると思いますので、機能やリスクが同一なのであれば、対象に取り込んで考える必要があるのではないかと考えております。

3点目は、規律すべき事項といいますか、保護法益というべきなのかもしれませんけれども、それにつきましては、資料に掲げられている点というのは全て異論はございませんけれども、最近の海外の決済法制などを見ますと、規律すべき事項の範囲がもう少し広がってきているのではないかと思います。例えば、これが利用者利便に関係するのかどうかわかりませんが、例えばPSD2では、何営業日以内に送金が完了するといったようなことについても資金移動業者が責任を負うですとか、あるいは着かなかったときの資金の返還の保証などについても規定を置いております。あとは、このような決済サービスですとか移動サービスは、複数の事業者が一体となってネットワークとしてサービスを提供するというケースが多いと思いますけれども、そういったネットワークの内部で事故が発生したような場合に誰がリスクを負担するのか、これはもう既にいろんなところでも話題になっているかと思いますけれども、そういったような論点というのも重要になってくるのではないかと思います。海外の法制なども参考に規律すべき事項については少し幅広に検討した上で、日本に適さないものは落としていっていいと思いますけれども、最初から検討の対象にしないというのはあまり適切ではないのではないかと思います。

4点目です。冒頭にも申し上げたかもしれないのですが、最近は決済ですとか支払いというものが商取引の一部として、あるいは商取引と融合してなされ、利用者があまり独立した決済を意識せずに資金のやりとりをしているというようなケースが出てきていると思います。法的にいえば、商取引サービスの提供者が例えば資金を支払う者の代理人として機能しているようなケースもあるのではないかと思います。そういったようなケースについて、一方の当事者の代理を務めている、あるいは双方の当事者の代理として機能しているというような場合にはどうしたらいいのかというような視点というのは、商取引なんかと一環となったような決済を考えていく上で重要な視点であると思いますし、PSD2の議論との関係でも、この代理というものをどう考えるかというのは非常に大きな論点であったと思いますので、ぜひご検討いただければと思っております。

最後ですけれども、資金移動ですとか決済のシステムというのはほんとうに多様なものであると思います、それから、これからどんどん技術が進展していきますと、いろいろあるリスクを技術の発展でカバーしていけるとか、ある一つのリスクに対する対処の仕方としてさまざま異なるアプローチが考えられるというようなものもあるかと思いますので、今後の法律制度というのは、細かな仕組みですとかとるべきリスクへの対処法ということを細かなルールで規律するというよりも、守るべきものを、これをプリンシプルベースというのが適切かどうかわかりませんけれども、守るべきものをしっかりと明確にし、それに対してどのように対処するかというような部分につきましては、仕組みの多様性ですとかあるいは事業者の工夫ですとか、そういったようなものを生かしていけるような枠組みにしていくのが適切ではないかというふうに考えております。

以上です。どうもありがとうございました。

【岩原座長】  
それでは次に松井さん、お願いします。

【松井メンバー】  
ありがとうございます。もう皆様の意見に結構尽くされていますので、私から簡単に2点だけお話をさせていただければと思います。

まず1点目なのですけれども、決済で実現しようとしている機能と保護法益について非常にクリアに整理していただいて私も納得できたところであります。この機能について、例えば債権債務関係を仲介者等が入って消滅させていくときに、それ自体非常にシンプルに抽象化されているのですが、実際の債権債務関係というのは個々の事例によってかなり事情が違うので、その消滅に向けた機能を果たすために通らなければいけないプロセスやシステムも、実際には非常に多様なのかと思います。まさにここが多様であるがゆえに、以上の機能を果たすべくさまざまな事業者が入ってくる余地が出てきているのだろうと考えています。このスタディ・グループの今後の議論では、金融制度なり規制なりを考えていかなければいけないので、その多様なものをどう制度や規制に落としていくのかということを意識しなければいけない。そのために、その多様なものあるいは多様なプロセスやシステムについてある程度定型的に整理をし、ある種の因数分解をして考えていく必要があるのだろうと今日感じました。例えば先ほどの資金を預かっているかどうかといった点は、決済というプロセスの中の一つの要素なのですけれども、そういう要素をできる限り抽出していけるかどうかというのは今後の議論で大事なのではないか、ということを単なる印象ではございますが、考えた次第です。

それからもう1点なのですけれども、これは先ほど翁メンバーのおっしゃっていた部分に近いのかしらと私は思っているんですけれども、機能に関する保護法益というのがある程度整理された次の段階として、ではその保護法益を守るためにどういう政策ツールを使っていくのが適切なのかというのが多分問題になるんだろうと思いました。何も制度がなくて初期状態で考えたときに、例えば民事上のルールだけでもし法益が実現できるのであれば、わざわざ金融法制として用意する必要はないのかもしれないわけです。当事者の合意を守って、民事上のエンフォースメントの手段を使えばそれで足りるとなればそれでよいのだろうと。そうなりますと、なぜ監督官庁を置いて行政上の政策実現をするツールを用意しなければいけないのかということを、今後、考えていく必要があるのだろうと思います。つまり、当事者の合意を保護し、当事者に履行させれば足りるというのであれば、それはそれで十分なわけですから、それに加えて金融制度なり規制を設けるというのであれば、行政庁が関与すべき必要性というようなものをそれぞれの保護法益等についてやはり考えていくということが必要になるのかなというふうに思いました。

感想めいたものばかりで恐縮ですが、以上でございます。

【岩原座長】  
それでは永沢さん、お願いします。

【永沢メンバー】  
ありがとうございます。私は、事務局のほうでおまとめいただきました内容についてはおおむね賛成でございます。2点ほど申し上げたいと思います。

先ほどから保護法益という文言についてご意見が出ておりましたが、私は、保護法益として、情報に関する保護というところは明記いただくことが重要と思います。

一方、その次のページの利用者利便のところですが、利用者利便を保護法益とするのには違和感がございます。坂先生などからもご意見が出ましたように、利用者利便という言葉自体がどういうことを意味するのか、前のページの利用者保護に比べるとはっきりしないものがございまして、もっと議論が必要と思います。利用者利便というのは法規制で促進するというよりも、むしろイノベーションで図られていくものだと思います。利用者の中には多様な方がいるわけで、多様な利用者の利便性というのもますます多様なわけです。利用者利便ということを推し進める中で、、イノベーションについていけない人、漏れてしまう人が出ないようにしていくことが必要で、金融排除とかという言葉が一時言われたりもしておりましたけれども、この分野においてのそういったことが起きないよう配慮をしていくことが大事なのではないかと思います。むしろそれこそイノベーションで解決していくべきなのではないかとも思います。

もう1点は、最後のページでP2Pの話が出ておりました。このP2Pという取引の形態は急速に世の中に広がっておりますが、ある意味、イノベーションによって原始的な取引形態へと回帰しているように思えるのですけれども、いろいろなトラブルも起きてきているようですので、プラットフォームの提供者というところに規制を課していくことが必要ではないかという意見を持っております。規制という表現がいいのかわかりませんけれども、プラットフォームの提供者に一定の責任を求め、そしてまた、情報の提供などに関して、やはり一定の規律というのを求めていくということが、世の中で混乱が起きないようにするためには必要であり、なるべく早く規制の導入へと動くべきなのではないかと感じております。

以上でございます。

【岩原座長】  
田中さん。

【田中メンバー】  
ありがとうございます。今までお話を伺っていまして、実務的にこれは一体どういうふうな影響が出てくるんだろうというふうな観点から考えておりました。例えば、今からちょうど20年ぐらい前に山一証券が潰れたというケースがあったのは皆さんご存じのとおりです。例の有名な野澤社長の記者会見の直後に、日本銀行が主要銀行3つ、当時興銀と富士と東京三菱だったと思うのですけれども、その三行を呼びました。その際、私、東京三菱の次長をやっていたものですから、そこに行ったんですね。日銀の建物の中でどういう議論をしたかというと、正に決済の議論なんですね。どういうことかといいますと、それは日曜日の議論だったのですが、月曜日は日本は祝日で、海外のマーケットが開くんですね。それで、当時の山一というのはオランダのオペレーションが非常に大きくて、そこの決済をどうするのかと。日本銀行は、円は幾らでも出しますと。それを通貨を交換して、そしてそこの決済に充てる、このプロセスをどうするんだという議論があったんです。結論から言いますと、そのときの最大のテーマは、このプロセスの中であちこちに信用供与が発生するわけです。その信用供与に関するリスクが銀行団はとれないと主張し、日本銀行のほうは何とかとれないかという議論が随分ありました。その結果、最終的には日本銀行がそのリスクを全部とりますということで、皆さんご承知のとおり相当な損失が出たというプロセスがありました。

今日そういうことを思い出しながらお話を聞いていますと、決済の議論でペイメントとかクリアランスとかセトルメントというのは当然考えられるコンポーネントと思いますけれども、この決済のプロセスに必ず出てくるリスクというものをどのように捉えていくのかという観点が必要なんじゃなかろうかと思います。そのうちの1つが、今の例のような、クレジットリスクですね。それから皆さんもご経験があるかもしれませんが、この決済事務を担っている会社、現在は銀行が中心になると思うんですけれども、事務のミスというのはさんざんあるわけです。ここにはオペレーショナルリスクというのがありまして、私も最近海外からお金が来たんですけれども、これが事務ミスで大変なことになっちゃったんですけれども、数日間お金が入ってこないみたいな、そういうオペレーションリスクというのがそこにあります。それから、先ほどおっしゃっていたんですけれども、円で送ってドルで受け取るという事例。そこには別に仮想通貨のような大きな価値変動でなくても為替リスクというのはあるわけですね。ここにマーケットリスクがある。こうした実務にのっとってお金が流れるプロセスの中のリスクというものは一体どういうところにあるのかという発想を少しここに入れてみたらどうかという気がいたします。そういう整理をすることによって、伝統的な整理だけではなくて新しい技術の発展の中で出てくる決済の事業というものが、その中で少し類型化、分類するのに役立つんじゃなかろうかという気がしております。最終的にはそういうリスクに関しては自己責任でやってもらうことになるものもあるでしょうし、一定の何らかの制限を事業者に求める、そういうこともあるかもしれませんが、そうしたアプローチも一つのやり方じゃなかろうかという気がいたします。

以上です。

【岩原座長】  
神作さんお願いします。

【神作メンバー】  
ありがとうございます。まず、決済の概念についてコメントさせていただきます。神田先生からご指摘がございましたように、資金を移動する支払いの側、それから受け手の側に介在して支払サービスに係る仲介等のサービスを提供する、このような広い定義のもとで機能的に横断的に支払サービス業者に対する監督法上の規制のあり方について検討していくという基本的な考え方が重要であると思います。検討する際には、現在の銀行法が前提としているような、為替業務が銀行の排他的業務であるというような規制のあり方とは相当に違った規制のスタイルになると思います。

第2に、本日さまざまな議論が出ております保護法益という言葉についてでございますけれども、本日の資料は基本的に同一の機能、リスクに着目するということでございまして、規制を考えるというときにも保護法益というといろいろと誤解を招く可能性がどうもあるようです。私は、機能を保護するという観点から、正面から議論したほうがいいのではないかと思います。その機能を実現するために、今も田中委員が言われましたように、さまざまなリスクがあって、先ほど申し上げたような広い意味での支払サービスを想定すると、場合によってはかなり民事的な規律と申しますか、無権限で支払サービスの提供がなされた場合ですとか、先ほど森下委員や加毛委員からご指摘がありましたけれども、そのようなリスクについて監督法上も規律を行うということが一定の機能を保護するという観点から必要であれば、民事的な性格をもつ規律についても当然に本スタディ・グループの射程の中に含めて議論すべきではないかと考えます。たとえば、本日の資料にいう利用者の保護というのは、個別的な利用者の保護という意味ではなくて、あくまでも機能を保護するために必要な利用者の保護と申しますか、保護しようとしているのは金融にかかる様々な機能の確保であるという観点から議論するとよろしいのではないかと思いました。以上でございます。

【岩原座長】  
はい、どうも。後藤さん。

【後藤メンバー】  
ありがとうございます。皆さんが既にいろいろとお話をされているので、屋上屋を重ねることになってしまうかもしれませんけれども、この保護法益という言葉を、ここで使うことには私も違和感があります。どういうことかと申しますと、今まさに神作先生がご指摘されましたように、例えば3ページの①というのは決済をやろうとしている人がやりたいことそのものであって、決済の機能というべきもので、保護法益というのとは違うと思います。こういう表現をされなかったのは、金融の機能と決済の機能とで機能という言葉が2回出てきてしまうのを避けたかったからではないかなと推察いたしておりますけれども、やはりこの①というのはどう考えても決済の機能であろうと思います。その上で、この機能を得ようとする人がお金を預けるときにそれを保護する必要があるということや、そのときに個人情報を提供するのでそれを保護する必要があるということ、またどういうふうに使えばいいかという情報を提供してほしいという話というのは、決済サービスを利用しようとする人の保護やりたい人には結局必要になってくる保護ということだと思います。今、神作先生は利用者の保護よりも機能の確保に着目すべきではないかとご指摘をされましたけれども、利用者の保護もやはり重要な目的であると思います。ただ、この①と②、③、④とは、やはり次元が違う問題として分けておくべきであり、これを保護法益という名前のもとに①から⑤までべたっと並べてしまうと、その構造が見えにくいような気がしているところでございます。

さらに次元が違う問題としまして、例えばシステミックリスクについて、これは翁委員から、もっと広い話であるというご指摘がございましたけれども、まさにそのとおりだと私も思っておりまして、個別の利用者の保護を越えた機能というのがここにあるのかなと思っております。この点で、この話が①—2として別立てにされているのは良いと思いますが、⑤のマネーロンダリングの防止も、個別の利用者というよりは社会全体にとって重要であるという問題で、そのように整理すべきではないかと思います。

このように様々な次元の問題がある中で、それぞれについてどのような規制をかけていくかを考えることになると思います。ただ、保護法益という言葉は、何らかの規制を前提にして、その規制が守ろうとしている利益は何だろうかというときによく使う言葉であると思いますので、翁先生がおっしゃった達成すべき利益といった言葉のほうがしっくりくるかなという気はしておりますが、いずれにしても申し上げたいのは、次元をはっきりと分けるべきではないかということでございます。

それとの並びで申し上げますと、この4ページに利用者利便という言葉が出てきまして、これを保護法益とするかというところについて、永沢メンバーのほうから何か少し違うのではないかというご指摘がございました。利用者利便をどう捉えるかという問題はあるんですが、これは、何らかの利益を保護しようとするときに規制をかけるというときに、イノベーションを阻害して利用者利便が害されることがあってはならないというような話だとすると、保護法益というよりは規制をするときの心づもりというべきものであって、保護法益という言葉に一番違和感があるように思われるところでございます。

【岩原座長】  
岩下先生、どうぞ。

【岩下メンバー】  
恐れ入ります。1点だけ申し上げたいと思います。2ページの下の部分、(2)の資金以外の交換手段としての役割を果たす決済手段の中に、例えばということで「手形・小切手や国債、仮想通貨など」というところで、ここに仮想通貨が入っているわけであります。ただ、これは実際の今の取引の実態を見てみますと、仮想通貨が、例えば前者の手形・小切手、まあ国債は微妙かもしれませんけれども、に匹敵するような形で決済に用いられているケースというのは実はほとんどありません。これは専ら投機目的で利用されているものでございます。ちなみに、きのうから今日にかけて20%ほど価格が下落しておりますが、そういうものを決済に使うというのは、資金を払う側も受け取る側もいろいろな形で無理があります。一方で、例えばマスコミ等で実はこれが某電器店で使えます、某旅行会社で使えますとかと言われておりますけれども、あれは実際は仮想通貨を使っている、つまり仮想通貨を払うほうが払って、受け取るほうが受け取っているわけではなくて、あくまでも仮想通貨を一種媒介とした形で提供業者が最終的には円で入金をするという形の方法をとっておりますので、そうすると、これを手形・小切手等に準ずる支払い手段であると区分するのは、やや実態からすると厳しいところがあります。むしろ後段のほうで、例えば(3)の中でマネーロンダリングとか資金供与の防止等に仮想通貨が利用されることを、そういうことは非常に大事だと例えば思うわけですけれども、その前の、例えば決済が確実に履行されることを仮想通貨に対して求めるというのは、逆に技術的に無理な部分がございます。そういう意味で、この仮想通貨というのが大変今回のこの種の議論の中においてある意味で象徴的な位置づけ、ニューカマーとしてのものを持っているという意味を含めてこれをどう考えるかというところは大変重い問題だと思うんですけれども、少なくとも実態としては、こういうふうに分類すること自体にやや違和感があるのではないかというところをご指摘させていただきたいと思います。

以上でございます。

【岩原座長】  
以上で全てのメンバーの方からご意見をいただいたと思いますが、特にほかにございませんでしょうか。タイムキーパーとしての私の役目としては、本来すぐ次の資金供与に向かうべきところですけれども、私にも若干の発言の可能性を与えていただきたいと思います。

まず、細かい言葉の使い方の問題で、今まさに岩下さんが取り上げられた、2ページ目の下のところでは、決済手段の例として手形・小切手、国債、仮想通貨を挙げているわけですが、私の感覚では、この中で手形・小切手は、決算手段、すなわちミーンズ・オブ・ペイメントではなくて、決済媒体、すなわちミディアム・オブ・エクスチェンジであって、決済手段である銀行の要求払預金を移動して決済等をするための方法(手段)なのです。性格の違うものが列挙されているという感じがします。

それから、4ページの3行目のところでRTGS化がなされた、書かれています。それはそのとおりで正しいのですが、この後さらにLSFモード(流動性節約機能)を導入しているわけで、それもあわせて書いたおいたほうがよろしいかと思います。

次に、全体的な問題として、私は法律家の常としまして、金融制度スタディグループですので、制度化ということを考えざるをえません。こういう金融の機能を議論していても、それを最終的に法律のどういうルールとして落とし込んでいくかということをどうしても考えるわけです。そういう観点から見ると、現行法は為替取引を銀行の要件としていて、為替取引をすることが規制対象になって、決済そのものは規制の対象にはしていないわけです。為替取引というのは要するに資金移動で、資金移動を規制するというか、資金移動という機能に着目して現在はルールを設け規制をかけているわけです。それを決済にかえるということがどういうことを意味するのか。それをできれば考えておきたいと思います。

例えば2ページの「清算機関などの仲介者を介して相殺が行われる場合や」ということが書いてありますが、例えばキャッシュマネジメントサービスなどで、金融EDIみたいに相殺の計算だけしているようなものまで、これをルール化の対象として考えていく意味で決済を機能のメルクマールとして考えるのかどうかということが気になります。決済だけでなくて、決済以外の単なる資金移動についても、重要な金融上の行為としていろんなルールや規制の対象にする必要があると考えております。さっき申し上げましたようにEUは第二次決済サービス指令で必ずしも決済に限られない資金移動に関しても規制をしているわけで、決済だけを金融の機能として議論すると、そのような面に関する見方が落ちてしまわないかというのが私の懸念するところです。

それから、先ほどの欧米の銀行の定義を見るとわかりますように、いろんな国によって銀行の定義は違いますが、全部の国に共通しているのは、預金業務をやっている以上は金融機関として規制しているということです。事務局の4つの機能の中では、前回も議論しましたけれども、預金というものを機能として取り上げていないのですが、今の決済の議論をしていても、やはり元本保証をしている資金を預かるというところで保護が必要になってくるような部分が非常にあるのではないかという気がしていまして、やはり預金という項目、機能を独立して検討する必要があるのではないかというのが私の意見であります。ただ、それがほんとうにほかの機能で十分代替して考えることができるのかどうかということは詰めて考える必要があると思います。

司会者としては余計なことを申し上げましたが、何か今の点でご意見があれば承ります。よろしいですか。それでは先に進ませていただきまして、次は、資金供与についてどなたからでも結構でございますので。はい、後藤さんどうぞ。ご意見をお願いします。

【後藤メンバー】  
先ほど決済のところで保護法益と銘打たれている箇所について意見を申し上げさせていただきましたけれども、この文書を全体として拝見したときに一番わかりにくかったのが、この保護法益として並べられているものが、どうも一貫したポリシーに基づいて整理されているようには思えないところです。先ほどの決済のところではシステミックリスクという社会全体に影響を与えるような話というのは、ほかのものとは別立てであることがわかるような形で書かれていたのですけれども、この資金供与のところでは、どちらかというと流動性変換ですとか信用変換といった経済全体において銀行が果たしている意義が前面に打ち出されておりまして、それはもちろん大事であることは否めないのですけれども、決済のところの並べ方と大分違うつくりになっているように思えるわけでございます。

また、今の岩原座長の整理も踏まえますと、決済のところでは一番最初に利用者が何を目的としてこの決済サービスを使うかという話が来ていたわけですが、では資金供与分野における利用者はといいますと、今の預金をどうするのかという問題があるわけですけれども、お金を借りる人と、仲介者にお金を預金する人という二種類出てくるわけでして、それぞれにとって、それは借りることと預けること自体が目的なので、それを機能として挙げるまでもないというふうに思われたのかもしれないのですけれども、決済のところと同じ構造にしたほうが、読み手としてはこの文書がどういう考えでつくられているのかが見えやすいのかなという気がいたしました。また、③の預金者の資産が保護され、銀行の倒産リスクにさらされないという話や、④のお金を借りるときに高金利で収奪されないとか、⑤の個人情報の保護は、利用者の保護のお話ですが、決済のところでは経済全体の話より利用者保護が先に出されていたとすると、そこでの並び方に合わせたほうがわかりやすいと思います。

他方で、8ページの①と②のシステミックリスクのお話、そして⑥のマネーロンダリングは、社会全体にとっての利益ということで、おそらく今後資産運用とかリスク移転というところについても同じような整理をされていくのかと思いますけれども、その際にはこの辺を踏まえて整理をしていただけるとよいのではないかなと感じております。

残り2点は細かいお話なんですけれども、9ページで、貸付債権を担保として資金調達を行って、それをさらに貸し付けするというところで、そういうことはもちろん可能だと思うのですけれども、金融論などで用いられる信用創造という言葉はこういうものも含んでいたのでしょうか。信用創造という、法的なタームではなくて、経済学的な概念を規制につなげる話の中でこういう形で外縁をちょっと曖昧にしながら取り込んでいくというのがほんとうにいいのかどうか。信用創造ができるかどうかというよりは、結局それに規制をかけるべき要素が含まれているかということが問題なのだとすると、ちょっとこの書きぶりというのは曖昧過ぎて、議論の焦点がぼやけていってしまうおそれをはらんでいるように思われます。

もう1つ、10ページの2つ目の丸ですね、データの処理が速くなったので、与信の審査が迅速にできるようになったと。それはそれでいいんですけれども、その話と上限金利規制の話が、実態として結びつくところはあるのかもしれないんですけれども、市場金利次第で上限金利にひっかかってしまうレートでないと貸せないという人がいることは、審査が速くなるかどうかとは全く論理的には別の問題であるように思います。たまたまこういうことがあらわれてきたのかもしれませんけれども、その上限金利規制をどうするかというのはまた別途問題だとは思うのですが、少しこの書き方は整理が足らないような気がします。私が実態を知らないだけかもしれませんけれども、もう少し、このお話を取り上げるのであれば詳しく関係がわかるように書いていただければよいのではないかなと思います。

以上でございます。

【岩原座長】  
それでは神田さん、お願いします。

【神田メンバー】
どうもありがとうございます。2点意見を述べさせていただきたいと思います。1点目は概念であって、2点目は単品なのか、預金受入れその他との組み合わせなのかという点です。

1点目の概念なのですけれども、資金供与という概念と資金という概念です。資金供与という概念は資金を供与するという趣旨だと思うのですけれども、より広い概念として信用供与というのがあると思います。例えば物を売って支払は3カ月後でいいですよといえば、その間信用が供与されますけれども、ここにいう資金は供与されていないと思いますが、ただ、利用者にとっては同じ機能だと思います。先に借りてそれで支払って3カ月後に返すということと同じだと思いますので。できれば信用供与という概念もあわせて整理していったほうがいいと思います。

それから、座長からご指摘のあった預金というのも、決済の手段として非常に使われますし、資金供与の手段としても使われますし、信用供与の手段としても使われますので、非常にこれは謎というか、預金というのはおもしろいものなのですけれども、そういう面があると思います。

それから資金の定義ですが、前半で私が自分の意見を申し上げなかったのですが、いろいろご意見を伺っていて、資料ですと1ページ目に資金というのが定義されていて、2ページ目ですか、資金以外が定義というか例示されています。しかし、資金が定義できないと資金以外は定義できないので、ある支払手段がどっちなのかという問題があるということになります。私は大きく3分類しますと、第1が法定通貨、第2が1ページにあるように、法定通貨ではないかもしれないけれども、社会一般で換金性というか支払手段として一般に使われやすいもの。3番目は、そういうことに関係なく相手が同意しているもの。私は3番目を基準とすべきだと思います。で、なぜなら、支払の世界というのは、法定通貨というのは、AがBに払いますというときにBが拒んでもAは裁判所へ行けば勝てるというか、法律家の言葉で言えば有効な弁済の提供になるとかいうのですけれども、ただ、普通は裁判所へ行っている暇はないわけでして、ニューヨークの真ん中で100ドル札を出して受け取ってくれなかったら、裁判所へ行けば勝つのですけれども行っている暇はないので。そうではなくて、ここは相手が受け取ってくれればそれでいいわけですね、それはビットコインであれ何であれ。ですから、相手がいいと言っているときにそういうペイメントを仲介することがここで問題になっているわけですから、相手が同意していればいいということではないかと思います。そうだとすれば、支払手段というものは何でもいいわけでありまして、概念を整理していく上ではそう考えるべきだと思います。先ほどのビットコインについて、実態についてのご注意があったと思いますけれども、実際どうかということは非常に重要だと思います。ただ、ここで概念整理する上では、相手が同意しているという定義が私はいいと思います。

2点目は、単品か、組み合わせかです。預金も非常に不思議なものかもしれませんが、因数分解すれば、信用供与あるいは資金供与というのも非常に不思議で、単品で見る場合と組合わせで見る場合で機能が違ってきます。したがって、ここでの問いは、組み合わせるとどういう機能を生むかというのが問いだと思います。単品で見ると比較的単純でして、法制度という観点からいえば、例えば消費者信用法制みたいなものが問題になると思います。しかし、組み合わせで見ると、預金受入れと組合わせというのは資料に書いてあります。そして預金以外というふうに整理してあるのですけれども、預金以外にもいろいろあるのではないかと思います。例えばファンディングサイドでいえば、昔話になりますけれども、都市銀行が例えば転換社債を発行して資金調達をして、それを貸し出しに回すことは禁止されていたと思います。設備資金にしか使ってはいけないというルールになっていたと思います。どういう組み合わせが何を生むのかというその機能というものを整理するというアプローチがあると思います。

以上です。

【岩原座長】  
大野さん、お願いします。

【大野メンバー】  
ありがとうございます。資金供与について申し上げます。

まず、預金の受け入れを伴うか否かの区分については、預金受け入れ機関に対してある程度の厳しさを求める健全性基準、預金保険制度が必要であると考えています。むしろ対象として悩ましいのは、ノンバンクやEコマース業者などの非金融機関が付随的な業務として資金供与を行うケース、こういうものが増えてきておりますので、これをどのように取り込むかという点だと思います。ITの進展に伴う新たな資金供与サービスが拡大する可能性は極めて高いと思います。さらにはプラットフォーマーなどが業務を拡大する領域、これは資金供与のみならず決済、保険、その他の金融機能に広がりつつありますので、こういったものをどのように捉えるかが重要な論点と思います。

それから資金供与とシステミックリスクについて留意点を1点述べたいと思います。事務局ペーパーの8ページにシステミックな金融危機を防ぐことを「預金受け入れとの組み合わせの場合い」のところで整理しています。しかしながら、これは言うまでもありませんが、システミックリスクの問題は、もはや銀行だけではなく証券会社や生命保険会社など預金受け入れ機関以外の金融機関、ノンバンクがシステミックリスクの起因となり得るということがリーマン・ショックの大きな教訓だと思っております。

もう1つ、P2Pレンディングについては、信用力の評価とファンディングをアンバンドルしたプラットフォームサービスと捉える方が自分としてはすっきりしております。こうしたサービスの発展の方向性としては、個人間ではなくて法人、それからプラットフォーマーがどんどん入ってくる可能性があると思います。従って、実質的な直接金融市場をつくり上げていく可能性を秘めた動きというふうに思っております。そうした取引を育成することが望ましいかどうか、個人的にはポジティブに考えておりますが、望ましいかどうかという切り口から、先ほど永沢メンバーからもございましたけれども、規制の適正なあり方を検討していくというのが重要な視座だと思います。

最後に明示的に示されていないその他の論点として、おそらくリスクの集中と蓄積といった論点も、それを削減することが望ましい目標、目的に掲げてよいかと思っております。以上です。

【岩原座長】  
それでは植田さん、お願いします。

【植田メンバー】  
ある意味私が先ほど決済のところで申したのとよく似ているんですけれども、先ほどは決済のときは、直接利用者が家計から渡される現金のようなものが書いていないと言いました。ここでもやはり議論が、銀行とその銀行に近いものにかなりフォーカスした議論になっているかと思うんですけれども、その前に直接金融というものがやはりあるので、株式とか社債の購入というのもございますから、それをまず書かないといけない。資金供与といっても、金融業が資金供与するんですけれども、家計も資金供与を直接企業にするということもあるので、ちょっと法律の議論をするとややこしいんですけれども、どのように整理するかということを考えないといけないかと思います。

それで、直接金融を考えて初めて銀行業の特殊性、要求払い預金とその裏で長期資金を供与しているというような銀行業の特性が初めて出てくるんですね。直接金融の場合は、まさにこの間も申し上げましたけれども、あまり資金を預ける期間と供与する期間と、株式と社債を買うのであれば、全くミスマッチはあり得ないわけですよ、直接的なわけなんですから。それからグレーゾーンとしては、当然ミューチャル・ファンドとかヘッジファンドなんかのファンドを経由したものもございまして、バーゼルの世界ではこれをシャドウバンキングなんていうかと思いますけれども、そこもあわせて考えていかないといけないと思うんですが、そこもやはりあまり期間のミスマッチは起こらないようなものとして存在するわけですよね。それを議論の中にぜひ入れていっていただきたいというのが大きなコメントです。

ちょっと細かいコメントになるんですけれども、それを考えますと、5ページの3の(1)の、「資金供与ではサービス提供者が資金不足主体に対し、資金をその元本が返済されることを原則として供給し、その対価(金利等)を得ることにより」だとすると、いわゆるそれ以外の株式とか、先ほど言った転換社債もそうですけれども、元本が保証されていないことがあり得る商品自体がそもそもここに載っかってこないのは非常におかしい文章になるのではないかなということがあります。

もう1個細かいところに気がついたところなんですけれども、その意味では9ページの金融規制の対象外と位置づけられているサービスなんですけれども、どういう文章にしていくべきかというのは、これはもちろん座長のご意見も非常に尊重すべきだと思うんですが、まずその前にどういう金融の機能があるかという議論を、我々はたしかしていると思います。ですので、この金融規制の対象外かどうか、だからここで話さなくてもいいよということではなくて、まず金融機能としてどういうものがあるか、金融サービスはどのようなものがあるかをまず大きく考えてから、じゃあどんな業種を対象にしていくかというのはそれからの議論になるんじゃないかと思います。 

【岩原座長】  
それでは翁さん、お願いします。

【翁メンバー】  
ありがとうございます。この2つ目の資金供与というのは、ちょっと前回の議論もありましたけれども、やはりどちらかというと機能というよりもアクティビティというような印象を受けて読ませていただきました。

それから、先ほど神田先生がおっしゃったことと共通するのですが、6ページの2つ目の丸のところにもありますけれども、資金供与というのは、資金需要の充足とか資金の出し手と受け手のマッチングだけでなく、信用供与、リスクをどういうふうに管理しているかというところが基本的にこのサービス提供者にとって非常に重要な要素ではないかというふうに思っております。

それから6ページ目の3つ目の丸のところにありますけれども、銀行等の預金受け入れ金融機関の場合は、公的セーフティネットを背景としてということがございますけれども、セーフティネットは確かに存在しているわけですけれども、これを維持するためにコストを払っている、保険料を払っているというところがありまして、公的と書くとあたかもセーフティネットがフリーのものであるという印象を受けると思うんですが、そうではなくて、預金が特別であるからこそコストをかけているということは重要なことではないかなと思っております。ただ、これは金融機関が負担しているのか、帰着は預金者なのかという議論はあるかと思いますけれども、その違いがあるということは指摘しておきたいと思います。

それから、8ページのところに並んでいる保護法益のところですけれども、ここでも、私は守るべきものとしては利用者の保護とか健全性の維持といったところが基本的に重要で、例えば資金供与を効率的に行うというのは、射程として法律の中で、さっき座長がおっしゃったように射程として含めるべきでないというふうに申し上げているわけではなく、いろいろな手段を使って達成できるだろうと思っており、例えば証券化は、信用供与をさらに効率化するために使える手段でありまして、そういった規制、法律で守るというほかにもいろいろなイノベーションで確保できることはあるということではないかというふうに思っております。

それから、預金取扱金融機関が特別な免許制であることについてどう考えるかという問いかけがありますけれども、やはり預金というのが、資金仲介のみならずファイナリティーに近い決済機能を持っていて、かつ元本保証の身近な金融資産であるというようなことから、特別な扱いになっているということだと理解をしております。であるからこそ免許制だと思っております。ただ、預金が特別であるということ、だから守らなければいけないというようなプレッシャーというのは、やはり技術革新が起きたり、それからさまざまな伝統的な機能を代替的に果たす事業者があらわれてきていて、かつてに比べればその過重なルールというものの重要性というのが相対的に低下してきているということではないかと思っております。

【岩原座長】  
先ほどのタイムキーパーとしての役割からしますと、本来予定していた時間が来ておりますが、この問題は非常に大きい問題ですので、そもそも今日でこの2つのテーマを全部議論し尽くすのは難しいのではないかと当初から想定しておりまして、そういうことで、もしお認めいただけるのであれば、せっかく手を挙げていただいたメンバーの方々がまだいらっしゃるんですけれども、次回引き続きこの資金供与のところの議論をしたいと思いますので、次回にご発言をいただきたいと思いますが、それでよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【岩原座長】  
どうもありがとうございます。

最後に、事務局のほうから連絡事項がございましたらお願いいたします。

【井上信用制度参事官】  
次回の日程につきましては、皆様のご都合を踏まえた上で、後日事務局よりご案内させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【岩原座長】  
それでは、以上をもちまして本日のスタディ・グループを終了させていただきます。どうも熱心なご議論をありがとうございました。

 
―― 了 ――

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