金融審議会総会(第23回)・金融分科会(第11回)合同会合議事録

日時:平成21年3月12日(木曜日)15時00分~16時53分

場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○大森企画課長

新会長の選任までの間の進行役を務めさせていただきます。

ただいまから、第23回金融審議会総会及び第11回金融分科会の合同会合を開催させていただきます。

皆様ご多忙のところご参集いただきましてありがとうございます。また、金融審議会委員へのご就任をお引き受けくださいましたことにつきまして、改めて御礼申し上げます。

本日は宇野政務官が出席いたしております。

なお、与謝野金融担当大臣、谷本副大臣につきましては、国会審議の関係で本日は欠席させていただいております。

では、宇野政務官よりごあいさつを申し上げます。

○宇野政務官

ご紹介いただきました金融担当をしております大臣政務官の宇野でございます。今、お話しいたしましたように、本日ただいま参議院で予算委員会が開かれているものですから、与謝野大臣また谷本副大臣はそちらに出席をさせていただいております。私から大臣に代わってごあいさつをさせていただくことをお許しいただきたいと思います。

まずもって、皆様方には金融審議会委員へのご就任を快くお引き受けいただきましたこと、改めて感謝を申し上げる次第でございます。本当にありがとうございます。

まず、現下の金融経済情勢についてお話をさせていただきたいと存じます。国際的な金融市場の混乱が続く中で、我が国の金融システムは欧米に比べまして相対的に安定しておりますが、株式市場等の大幅な変動や実体経済の悪化からくる影響が大きくなっており、引き続き高い緊張感のもとで状況を注視する必要があると考えております。

また、景気が急速な悪化を続ける中で、企業の資金繰りも大変厳しい状況になってきております。金融機関による、適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮が一層重要であると考えておるわけでございます。

このため、金融庁では、改正金融機能強化法の迅速な施行など、さまざまな措置を講じてまいりましたが、一昨日にも企業金融等の円滑化のための追加的な措置を発表したところでございます。

また、こうした金融危機の克服に向けた短期的な対応と同時に、今般の金融市場の混乱及びその教訓を十分に踏まえまして、より中長期的な観点から、規制、監督の枠組みの再構築に取り組んでいく必要がございます。さらに、その際には我が国市場の競争力強化、金融規制の質的向上といった課題にもあわせて取り組んでいく所存でございます。

昨年12月には格付会社に対する規制の導入や、金融ADR制度の創設、また、本年1月には資金決済に関する制度整備について、それぞれご報告を取りまとめていただきました。これを受けまして、先般関連する2つの法律案を国会に提出させていただいたところでございます。金融庁といたしましては、いずれの法案も信頼と活力のある市場の構築を図る上で重要な法案であると考えており、その早期審議、成立に向け、関係者のご理解を得られるよう引き続き最大限の努力をしてまいる次第でございます。

委員の皆様方におかれましては、今後とも我が国金融のあるべき姿について活発にご議論をいただくことをお願い申し上げ、私のあいさつとさせていただきます。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

○大森企画課長

ありがとうございました。

ここからカメラは退出願います。

(プレスカメラ退出)

○大森企画課長

本年1月25日の委員改選後初めての合同会合ですので、本来であれば委員の皆様をご紹介すべきところでございますが、時間の関係もありますので、お手元の委員名簿、配席図でご確認いただければと存じます。また、本日はこちらにこれまで長年にわたり金融審議会の審議に多大なご尽力を賜りました堀内前会長並びに関前会長代理にもご出席いただいております。堀内前会長、関前会長代理には後ほど自由討議の際に今後の金融審議会が目指すべき方向性、課題などについて、ご意見をいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

それでは、金融審議会会長及び金融分科会長をお決めいただきたいと存じます。金融審議会令では委員の互選により選任することとされておりますが、私どもで事前に幾人かの委員にお伺いしましたところ、当審議会でのご経験なども踏まえますと、いずれについても田中直毅委員にお願いしてはどうかという意見が数多くございました。皆様方いかがでございましょうか。

(「異議なし」と呼ぶ者あり)

○大森企画課長

ご異議ございませんようですので、田中委員のご承諾をもって会長、金融分科会長への就任をお願いしたいと思いますが、田中委員、いかがでございましょうか。

○田中委員

承知いたしました。

○大森企画課長

ありがとうございます。

それでは、田中委員に会長及び分科会長をお願いしたいと存じますので、会長席にお移りいただくよう、お願いいたします。

(田中委員、会長席に着席)

○大森企画課長

それでは、新会長よりごあいさつをいただき、その後の議事の進行をお願いしたいと存じます。

○田中会長

我が国では、こうしたシートは新進気鋭の方が着くとは思われていないわけでありまして、後進に道を譲る前につかれるというようなケースが多いように思っていましたので、私はちょっとびっくりもしたのだけれども、馬齢を重ねたのかなという思いもございます。

タケナカの法則というのがありまして、これは竹中平蔵さんではなくて、タケナカイチヨウさんという、私が仕事の上で大変お世話になった方ですが、彼が、あるときに、社会的発言はもうやめると言ったのです。そのときにタケナカの法則と、おれはずっと唱えていたのがあるけれども、君に言ったことがあるか。聞いたような気もするけれども、忘れていると言いましたら、人間年をとるというのはつらいことだと。大抵病気が出る。病気の出方に4つある。こういう商売をしている者で言うと、第1は当たり前のことを言う。これは病気の一つの出方だというわけです。2番目に、繰り返し同じことを言う、これも病気だと。3番目に、これはなかなか深刻なのだけれども、おかしなことを言うというのが、だんだん加齢とともに出てくる。4番目に、これはひどいのだけれども、人の説をとって自分の言ってきたことだというケースがあって、これは社会的に害悪をなす。自分はどこまでいっているかというのは、自己診断はあるけれども、1番目と2番目は多少出てきたかなと思うから、もう自分は発言はやめると言いました。こうしたシートに座るというのは、そういう自粛自戒しないと、そういう病気を発病したなと皆さんから思われる可能性が高いわけですので、そこはよく勉強して、病気の発現をできるだけ遅くしようと思っております。

それでは、議事の進行とさせていただきます。

まず、会長代理及び分科会会長代理を選任する必要がございます。金融審議会令の規則では、会長代理、分科会会長代理は会長、分科会長が指名することになっております。私といたしましては、これまでの金融審議会のご経験から、島崎委員に会長代理及び分科会会長代理をお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。

○島崎委員

はい。

○田中会長

それでは、お引き受けいただきましたので、続きまして、議事運営でございますが、お手元に配付させていただきました金融審議会議事規則及び金融分科会議事規則にのっとりまして今後とも行ってまいりたいと思います。また、会議は原則として公開といたしますので、ご承知おき願います。

続きまして、金融審議会のもとに設置する部会等についてなのですが、引き続き総会のもとに、自動車損害賠償責任保険制度部会、公認会計士制度部会の2つの部会を、また、金融分科会の下でございますが、第一部会、第二部会、特別部会及び我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループを設置することといたしますので、よろしくお願いいたします。各部会長等につきましては、これまで務めてこられました方に引き続きお願いしたいと存じています。

なお、公認会計士制度部会につきましては、関さんがご退任されたため空席となっておりますので、その後任を島崎委員にお願いしたいと思います。

また、各部会等に所属する委員につきましては、私が各部会長とも相談の上、委員の皆様方には後日メール等でご連絡いたしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、次ですが、事務局から金融審議会の活動状況及び京都議定書環境自主行動計画のフォローアップについて、説明をお願いしたいと思います。

まず、金融審議会の活動状況につきまして、大森企画課長からご説明をお願いいたします。

○大森企画課長

それでは、事務局説明資料の資料1に基づきまして、今日は委員の皆様から意見をいただく時間をたくさんお取りしたほうがよいと思いますので、なるべく簡潔にご説明申し上げます。

1枚開いていただきますと、ご案内のとおり金融審議会の構成のポンチ絵が付いております。先ほどの政務官からのごあいさつとも若干重複いたしますけれども、証券市場の問題を扱っております第一部会におきましては主として格付会社の規制、ディスクロージャー・ワーキング・グループについては、発行登録、目論見書、有価証券の売出し概念といった議論をしていただきました。第二部会につきましては、また決済ワーキングともども資金決済に関する制度のご検討をいただきました。保険の基本問題ワーキングにつきましては、保険の募集、支払い等の基本的な課題、その下の協同組織ワーキングにつきましては、協同組織金融機関制度というものを全体的に検証して、あるべき方向性についてのご議論を、現在この2つのワーキングについては継続して行っていただいているところでございます。

そして、昨年暮れのあわただしい中、すべての金融業態に共通する問題としての裁判外紛争処理制度、金融ADRについて、第一部会、第二部会合同という形で、短期間ではありましたけれども、ご議論をいただいて、今後の方向性についておまとめいただいたところでございます。

次の我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ、これは具体的な制度をこうすべきというよりは、その前段階のアクトファインディングなどを意図して設けられておるわけでございまして、一昨年の暮れにまとめました市場改革プランは、まさにこのスタディグループでの議論を第一部会が受け継ぐ形で制度化していただいたわけでありますが、現在はコーポレートガバナンス、公開会社の資本政策でありますとか、取締役会、監査役会が果たすべき機能といった論点について議論をしていただいております。一部には百年に一度という時期にそんな議論をしなくてもという声もあるのですけれども、百年に一度だからこそ必要があるのではないかということで、お願いしているところでございます。

次のページとその次のページは、今、申し上げた活動状況を踏まえまして、先週金曜日に国会に提出した2つの法案の概要でございます。金融商品取引法につきましては、一番左側が先ほど申し上げた格付制度、欧米と平仄をあわせた形で規制の枠組みを導入するというもの、真ん中は金融ADR、もちろんこれまでも各金融業態においてADRは行われておるわけでございますが、その中立性、品質を一層高めるという観点から、一定水準のADR機関を指定するという枠組みの導入を図るものでございます。それ以外はマーケットにおける実務的なニーズであるとか、新しい商品の誕生に対応して所要の措置を講ずるといった内容になっております。

その次のページは、資金決済に関する法律でございまして、現在、資金移動、為替というのが銀行の業務という形になっておりますが、これを銀行以外の事業者に解放するための手当、それからプリペイドカードの規制をサーバ型のプリカ、前払い式支払い手段に拡充するというもの、それと銀行間の資金清算機関について金商法並びの所要の規制を導入するといった、性格は異なりますけれども、いずれも資金決済というインフラの水準の向上を図るための法案、この2つを今国会に提出させていただいているところでございます。

この1年に限らず、少し時間をさかのぼって制度改革の流れを整理したのがその次のページでございまして、大きく分けまして、信頼と活力のある市場の構築というのは、言ってみれば狭義インフラものといいますか、新商品とか新しいサービスを可能にするための法制であったり、新しい取引ルールを導入する、あるいは行政のツールを拡充するというものであったり、あるいは金融システムの担い手、典型的には監査法人といったものの機能を強化するといった、インフラ系の整備でございまして、この1年間の動きでいきますと、格付規制とか、取引上の相互乗入れとか、あるいは資金決済法といったものがこのインフラ整備の流れに位置づけられると思います。

真ん中は、利用者保護、利便の向上ということに特に焦点を置いたものでございまして、利用者保護というのも、煎じ詰めると業者の説明責任の強化とか、体制の整備の強化といったことになるわけでありますけれども、場合によっては提供する商品の値段であるとか、量であるとか、そういったことに直接踏み込んでいく、これは貸金業法のケースでありますけれども、状況によってはそういったことも必要になるという形で利用者保護法制の整備を図っているところでございます。

一番右側は金融システムの安定、我々セーフティネットものというような言い方をしておりますけれども、21世紀に入ってしばらくの間は、まだ日本の金融システムが必ずしも万全とは言いがたい状況にありましたので、預金者保護のための措置、あるいは銀行保有株の取得のための措置、あるいは破綻処理のための手当、公的資金投入のための手当といったことを、インフラあるいは利用者保護よりもまずそれをやらなければいけない課題という形で追われていたわけでございます。2003年、4年ぐらいから、徐々に金融システムも安定感を取り戻してまいりましたので、制度整備もこういったセーフティネットものから金融システムのインフラあるいは利用者保護という形にシフトする。その代表的なものが金融商品取引法だと思いますけれども、そういうふうな重点の移行が生じて、これまでやっておったわけでありますが、ご案内のとおり昨年の秋以降はまたセーフティネットものというのを急いで整備しなければならないということになっております。21世紀に入ってからの金融制度の改革の流れを、ざっくり言えばこういうことになるわけであります。

日ごろ委員の皆様、第一部会あるいは第二部会あるいは両方にご参加いただきまして、事務局での提案についていろいろなご意見をいただいておるわけでありますが、今日はこういったこの10年弱の流れも踏まえまして、今後の金融制度の整備の方向性、あるいはアイデア、そういったことについて、大所高所からぜひさまざまなご意見をお伺いしたいと思っております。

最後のページにつきましては、冒頭申し上げたことを少し同じように年代をさかのぼって整理をしただけのものでございますので、ご説明は省略させていただきます。

以上でございます。

○田中会長

続きまして、京都議定書・環境自主計画行動計画のフォローアップ等につきまして、佐藤監督調査室長から環境自主行動計画等について説明をいただきまして、その後各業界団体から対応状況についてご説明をいただこうと思います。それでは、佐藤監督調査室長、お願いいたします。

○佐藤監督調査室長

監督調査室の佐藤でございます。よろしくお願いいたします。

私からは、昨年同様、お時間をいただきまして、環境自主行動計画のフォローアップ等についてご説明させていただきます。

お手元の資料2-1をご覧ください。まず環境自主行動計画について、ご説明いたします。

2005年4月に閣議決定された京都議定書目標達成計画におきまして、各業種は数値目標を設定した環境自主行動計画を策定して、着実に実施することが求められております。当庁の所管業種におきましては、全国銀行協会、全国信用金庫協会、全国信用組合中央協会、生命保険協会、日本損害保険協会及び日本証券業協会の6団体が自主行動計画を策定しています。

また、京都議定書目標達成計画におきましては、政府は各業界団体の環境自主行動計画の取り組み状況について、透明性・信頼性・目標達成の蓋然性が向上されるよう、関係審議会で定期的にフォローアップするということになっております。これを受けまして、本日、昨年に続きまして本審議会においてご報告させていただいているということでございます。

各業界の取り組み状況ですが、1枚おめくりいただきまして、別紙で、各業界団体における環境自主行動計画への取組状況についてというのをつけておりますけれども、そこに書いてあるとおりでございます。この後各業界団体からそれぞれご説明をいただきますので、私からは概略を簡単にご説明させていただきます。

まず、前回本審議会にご報告した昨年2月の段階では、この6団体のうち3団体において数値目標が未設定でございました。しかし、その後既に全6団体において具体的な数値目標を設定していただいております。その内容は資料にあるとおりですけれども、金融機関の業務の特性上電力消費がCO2排出の大部分を占めているということですので、全団体が電力消費量を削減対象目標として策定されていらっしゃいます。

それから、ほとんどの団体が2008年度から2012年度までを目標期間とされていますけれども、2007年度の実績は資料にあるとおりというふうになっております。各団体においては、目標達成に向けて定期的なフォローアップ調査の実施や、先進事例の共有等の取り組みを実施されておりますけれども、引き続きこのような取り組みを継続強化していくことが期待されております。

なお、排出量取り引きの国内統合市場の試行的実施については、資料2-3をご参照いただくということにしていただきまして、時間の関係上説明は割愛させていただきます。

金融機関の個別の目標設定の資料については、後ほど回収させていただきます。

私からは以上でございます。

○田中会長

続きまして、全国銀行協会の和田理事からのご報告をお願いいたします。

○和田理事

全国銀行協会の和田でございます。よろしくお願いいたします。

私からは、資料2-2というものを配ってありまして、その通し番号1のところをご覧いただきたいと思います。時間が限られておりますので、資料に沿ってポイントを説明させていただこうと思います。

初めに、資料の1というところの自主行動計画についてであります。全銀協では、平成13年に日本経団連の環境自主行動計画に参加いたしまして、別紙1の銀行業界の環境問題に関する行動計画、これを策定しております。この行動計画では、資源の効率的利用や循環型社会の構築への取り組みと、具体的な行動計画ということで掲げているところであります。

次に、資料の2の数値目標の設定のところでありますけれども、電力使用量につきましては、(1)のところにありますとおり、平成22年度における使用量を平成12年度に比べて12%減ずる、こういうことを設定いたしておりまして、この目標値については、その後、矢印のところにございますけれども、経団連の方針に沿って平成20年から24年度の5年平均で達成する、こういうことにいたしております。

また、循環型社会形成に対する機運の高まりを受けまして、再生紙の購入率、それから紙の再利用率、これについても(2)(3)に記載しておりますけれども、それぞれ数値目標を設定しているところであります。

次に、3.の数値目標達成のためのフォローアップの調査であります。この数値目標を達成するために毎年度私どもではフォローアップ調査を実施いたしております。具体的な削減状況については、通しナンバーの4、別紙2というところにまとめておりますけれども、電力使用量が19年度は微増ということになっておりますけれども、トレンドで見ると減少傾向になっているということがいえます。

それから、紙関係の2つにつきましては、こちらは順調に推移してきている、こういうふうに判断をしております。

なお、私どもはこうした活動に加えまして、今年度、全銀協エコプロジェクトということで、通しナンバーの6をご覧いただきたいのですけれども、別紙3でお示ししておりますような活動、これを積極的に実施してまいっております。例えば、別紙3の2.(3)にあります全国銀行エコマップというウェブサイトを立ち上げておりまして、私どもの会員、全国の銀行112行、こちらが行っておりますエコ関係の行動とか、環境配慮型の金融商品の提供といったもの、環境問題に関する取り組み、これを紹介しております。また、お時間がありましたら後ほど皆さんのほうでもご覧いただければと存じます。

簡単ですけれども、私からは以上であります。

○田中会長

続きまして、全国信用金庫協会の小此木常務理事、お願いいたします。

○小此木常務理事

小此木でございます。それでは説明させていただきます。

まず、1点目は業界の数値目標と実績についてでございます。資料は7ページからございますが、この目標につきましては11ページのところをご覧いただきますと掲載してございます。一番下の(6)数値目標というところでございます。

私どもでは温暖化対策として、電力使用量の削減、これを平成20年度から24年度までの5年間としまして、基準年度は18年度、5年間で6%削減することとしております。計画対比の実績は20年度からということでございますが、19年度につきまして予備的な調査を行いましたところ、18年度に比べて0.9%増という結果になっております。改めて目標達成が難しいなと考えておるところでございます。

2点目は、それ以外の、数値目標以外の取り組みでございます。これにつきましては、資料の12ページ、通し番号の12ページをお開きいただきたいと思います。取り組んできている活動等についてアンケート調査を行ったものでございます。総じてすべての活動が活発化して期を追って増えております。融資商品の取り扱いであるとか、環境配慮型の景品等の配布、こういったものが特に増加しております。

また、お手元には協会で行っております社会貢献賞、これの冊子が入っております。カラー刷りのものでございます。こういったものも後ほどご覧いただきたいと思いますが、毎年行っているわけですが、最近では環境問題の取り組み事例が増えておるということ、この中でも直近で3つほどの事例を環境問題で取り上げております。

それから、次に全信協、協会としての取り組みについて申し上げますと、協会での取り組みにつきましては、環境に関する問題提起、情報発信、それらについて積極的に行ってきております。あわせて機関紙とかセミナーを通じまして、信用金庫を啓蒙する活動を行ってきております。また、お手元にやはりもう一つカラー刷りのもので、「中小企業こそ環境経営」という、中小企業の経営者向けの環境啓蒙パンフレットを作成しております。信用金庫だけで取り扱っていくということではなくて、中小企業を巻き込んで、お客様に働きかけを行うような施策を講じているということでございます。

3点目といたしまして、今後の取り組み方針についてでございますが、これも2つほどございます。1つは、先ほどご報告しました数値目標の達成を目指しまして、個別の信用金庫が、みずからの省エネ、CO2排出量も含めて削減について取り組んでいこうということでございます。それから、もう一つは地域に密着した金融機関として、お客様に対して働きかけをしていこう。環境配慮行動を、中小企業の方、お客様方に促していこうということでございます。

以上のとおりでございます。

○田中会長

続きまして、全国信用組合中央協会小安常務理事、お願いいたします。

○小安常務理事

全信中協の小安でございます。よろしくお願いいたします。

早速当信用組合業界の取り組み状況につきまして、ごく簡単に説明させていただきます。

資料の通しナンバー20ページに、当業界の数値目標を示しております。このグラフにありますとおり、平成18年度を基準年度といたしまして、この平成20年度から24年度までの5年間で電力使用量を合計6%減少させるもので、年平均にいたしまして1.2%ずつの削減を目指すというものでございます。

2枚めくっていただきまして22ページは、その進捗状況についてお示ししたものでございます。本年度上半期の業界の電力使用量は1,507万kWhでございまして、1年間の単純平均2倍いたしますと3,014万kWhということになります。これは基準年度でございます平成18年度の3,041万kWhから0.9%削減ということになり、残り0.3%が未達という状況でございます。各信用組合では、引き続き電力使用量の削減に努めているところでございます。

以上、簡単ではございますけれども、信用組合業界の取り組み状況についてのご報告でございます。

○田中会長

続きまして、生命保険協会棚瀬理事、お願いいたします。

○棚瀬理事

生命保険協会の棚瀬でございます。

それでは、私どもの取り組みにつきまして、ご説明させていただきます。資料の24ページをご覧ください。生命保険業界では、資料の中段の枠内にありますとおり、本社ビルの電力消費量について、2008年度から2012年度までの平均で2006年度比2%削減すること、床面積当たりの電力消費量が2006年度水準を上回らないことを目標としております。

少し飛びますが、28ページの別紙3として、2007年度の電力消費量についてフォローアップ結果をまとめております。当会所属の会員会社が増加したこと、本社ビルを増床したこと、職員を増員したことなどから電力消費量が2006年度に比べ0.89%増加しております。

なお、2000年度から数値把握が可能な19社については、2000年度比マイナス15.4%となっております。

また、床面積当たりの電力消費量は2006年度比0.42%減少しております。

次に、29ページの別紙4をご覧ください。当会では会員各社における環境問題への取り組み状況と、好事例を共有化し、各社における取り組みの促進を図っております。例えば生命保険事業を通した取り組みとして、1つ目にありますとおり、環境配慮型投資用ビルの建設、投資用ビルの環境配慮型への改修、あるいは3つ目の、環境問題へ取り組む企業・個人への優遇金利制度の導入などの取り組みを行っております。さらに、お手元にお配りしております生命保険協会SR報告書2008の23ページでは、生命保険業界の環境問題への取り組みに関し広く社会に対して情報提供を行っております。当会では引き続き自主行動計画のフォローアップを行うとともに、各社における好取組事例の共有化を継続することにより、取り組みの推進を図ってまいりたいと考えております。

説明は以上でございます。

○田中会長

続きまして、日本損害保険協会の志鎌常務理事、お願いいたします。

○志鎌常務理事

日本損害保険協会の志鎌でございます。よろしくお願いいたします。

先ほどの配付資料2-1別紙に基づき、簡単にご報告申し上げます。

この資料の下から2番目が損保でございます。私ども損害保険業界では、今から13年前の1996年に、「損害保険業界の環境保全に関する行動計画」を定めまして、以来業界全体で取り組みを行ってきております。

業界全体の省エネルギー対策といたしましては、2010年度における各会員会社本社での電力使用量を2000年度比18%減とするという数値目標を掲げ、取り組んでおります。2007年度の電力使用量の削減状況は2000年度対比でマイナス13.8%でございました。2010年度までにはマイナス18%の目標達成に向けて努力していく所存でございます。

また、その他の業界ベースでの取り組みといたしましては、環境保護と交通安全を組み合わせたエコ安全ドライブの推進などを行っております。また、各社ベースでは、環境に配慮した商品開発の推進のほか、カーボンニュートラル宣言を行った会社やエコファースト企業として環境省から認定を受けた会社、あるいはグリーン電力を導入した会社等々、積極的に環境への取り組みを推進している会員会社が増えております。

詳細につきましては、資料2-2の31ページから42ページに記載してございますので、後ほどご覧いただきたいと思います。

簡単でございますけれども、報告は以上でございます。

○田中会長

続きまして、日本証券業協会の伊地知常務執行役、お願いいたします。

○伊地知常務執行役

日本証券業協会伊地知と申します。証券界の環境問題に関する取り組みについて、ポイントをご説明させていただきます。

資料の43ページをご覧いただきたいと思います。昨年2月8日の当審議会で証券界としての環境問題に関する行動計画、またその具体的な数値目標について案という段階でお示ししておりますが、当月中に決定する予定であるといったことで説明させていただきました。資料の中段にございますように、2月19日にお示しした案そのままで決議いたしまして、4月1日から実施に移しております。5月には会員に対しましてクールビズの実施を呼びかけますとともに、また6月にはこの行動計画に従いまして2007年度の電力使用量調査を実施いたしております。

また、国連環境計画の金融イニシアチブ特別顧問の末吉先生ですとか、東京電力の担当者の方にお越しいただきましてセミナーを実施し、会員証券会社に対しまして環境問題に対する意識の高揚を図ってきております。

また、ご承知のとおり、次の44ページになりますけれども、関係者のご尽力によりまして、この1月5日から株券の電子化がスタートしたところでございますけれども、これも環境問題に大きく寄与するものと考えているところでございます。

次に、具体的な効果でございますけれども、47ページをご覧いただきたいと思います。証券界では、数値目標といたしまして、2006年度を基準として原則2008年度から2012年度の間に6%の削減を目指すこととしておりますが、2007年度の数値が出ておりますのでご紹介させていただきたいと思います。

2006年度との比較で見ますと、この時期はまだ市場を取り巻く環境も悪化していないといったことから業務が拡大しておりまして、会員証券会社数で25社、床面積で06年度に比較いたしまして13%ふえております。そういったことから電力使用量につきましては残念ながら絶対値では6%増といった状況でございます。しかし、これは平米当たりに直してみますと逆に6%の減少といったような状況となっておるところでございます。

今後の対応でございますけれども、引き続き定期調査を実施いたしまして、行動計画の目標達成に努力するとともに、年度内にも協会ホームページに環境に関する専門項目を設ける予定としておりますので、こういったことを通じまして会員証券会社と連携した対応を引き続き検討していきたいというふうに考えております。

簡単でございますが、以上でございます。

○田中会長

それでは、これからは自由討論としたいと思います。その前に、堀内さんと関さんから、今後何が重要なのか、どういう議論をしていったらいいのか、宿題をいただこうかと思っています。まず堀内さんからお願いいたします。

○堀内前会長

急にあてられまして、ちょっと戸惑っていますけれども、余り具体的な問題として私は提案するようなことはできないのですが、金融審議会は金融全般に関して、必ずしも金融庁の抱えている政策的な課題と直接的には合致しないような問題に関しても積極的に発言していただけるような、そういう場であったらいいのではないかというふうに私自身は思っています。

もちろん、金融庁自身のいろいろな課題があることははっきりしておりますけれども、金融審議会そのものは、そういう課題に粛々とこたえるというだけでなくてもいいのではないか。あるいは、場合によったら金融庁の考え方とは必ずしも整合しないような、そういう考え方を述べることもあってもいいのではないかというふうにも思います。

ですから、そういうことが私の時代にできたかというとできなかったと思いますけれども、今後は金融庁自身が非常に自由な立場に立っているのではないかというふうに思いますので、そういう点でいえば、そういうより積極的な発言をしていただくことによって、金融審議会のソーシャルステータスというようなものを高めていくことにご尽力いただければ幸いだと思います。

以上です。

○関前会長代理

私は、ちょうど2001年、平成13年に金融審議会の委員に入れていただきまして、今まで大体8年間、この会で勉強をいろいろさせていただいた、こういうことであります。若干感じている問題意識のようなものを申し上げて、私の責務は終わらせていただきたいなと思っています。

1つは、日本の金融改革といいますか、金融ビックバンからということで、いろいろな金融にまつわる改革をやってきた。それは大変画期的なことで、もしこの改革をやらなければ大変なことになっていのではないのかなというふうに思うわけであります。そういう意味で、これまで、先ほど2001年からの表がございましたけれども、こういうことで進めてこられた金融審議会の皆さんや当局の方々のご努力に、大変敬意を表さなければいけないのではないかというふうに私は思っております。

しかしながら、金融ビックバンやその後の改革の一つの柱であったのは、私の理解では貯蓄から投資へというスローガンのもとに、過度に直接金融といいますか、金融機関にリスク負担をかけないで、国民それぞれがリスクを担っていくということから、市場間接金融というものを大きく進めようではないかというのが、一つの旗であり、柱であったのではないかと私は思っております。そういう意味で、先ほど申し上げたようにいろいろな改革をやって、それが成果を得て、もしやらなかったらどういうことになっていたのだろうかと思うと慄然とするものがあるわけですが、今日の金融危機というもの、これは世界的な金融危機ですから日本だけがどうだということでは必ずしもないという議論は当然あると思いますが、私は、先ほど言った旗といいますか、柱の成果ということからいうと、今日金融機関の問題もございますけれども、やはり直接資本市場といいますか、株式市場もそうですし、債権市場に至っては全く機能不全に陥っているということなのではないか。したがって、こういう危機のときだからそれは仕方がないのだという議論はもちろんあると思いますけれども、やはり日本の資本市場が機能不全に陥っているということが依然として問題だということなのではないかということを、私は最近強く、政府系金融機関の長になったせいもあるのですけれども、強くそういう問題意識を持つに至ってございます。

したがって、局面ががらっと変わったわけでありまして、国際的にもこういった問題というのは当然いろいろな議論をされる。そしてそれが機能不全に陥った原因は一体何だということから、規制の強化等含めていろいろな議論がなされると思いますが、ぜひ従来の路線で、直接資本市場というものをどう育てるのか、市場間接金融というものをどう育てるのかという観点から、新しくするどく提起された問題をご研究いただいて、よりよい市場というものをつくっていく上に努力をしていただきたいなというふうに私は思います。これが一つです。

2つ目は、私は金融機能強化法にもかかわりましたけれども、主として公認会計士部会長ということで、内部統制制度、J-SOXと公認会計士の改正、2回やったのですけれども、最初の改正がちょっと中途半端だったものですから、今回も若干残された問題があるのですけれども、公認会計士法の改正に関係をさせていただきました。私は、J-SOXだとか、それから、改正公認会計士法というのは、すばらしい、画期的な仕組みが入ったというふうに実は思っておるわけですが、これの実際の適用は本年度からということで、実際の運用はことしの株主総会あたりからこれの実践といいますか、運営にも入っていくわけであります。私は、形はできたと思うのですけれども、本当に魂が入っているのか、入るのかなというのが最大の関心であります。多分、魂は余り入らないのではないか。予測を先にあえて申し上げれば、そういうことでありまして、こういう金融危機だとか、経済の悪化の中で、恐らく、財務諸表の信頼性というのはまた再び厳しく問われるということに必ずなると、私は思います。

ですから、できた形を本当に魂あるものとして運用しなければいけない。そのためにさらにどういう工夫が要るのか。ぜひ皆さんで注視をして、必要あればすぐ措置をとるということで、実効あらしめるようにしていただきたいなということを強く思っておりまして、島崎委員が後任を引き受けていただけるということですので、ぜひそういうことでやっていただければ私としては大変幸せであるというふうに思っております。

いずれにいたしましても、また大変な時代になってきたわけでありまして、今までの延長線上ではない考え方で、先ほど堀内前会長がおっしゃられた、少し広く活発にご議論していただければ、私としては大変うれしく思います。

以上です。

○田中会長

どうもありがとうございました。堀内さん、関さん、これからもご発言、ぜひ問題提起がしたいということがありましたら、ご一報いただければと思います。よろしくお願いいたします。

それでは、これからは自由討論でございますので、委員の皆様方から、今後の課題、研究上、審議上の課題等総括的にお述べいただければと思います。取りまとめは事務局の人がやってくれると思いますので、余りどこに着地するかは気にせずにお話しいただければと思います。もし挙手いただければ挙手していただいた順にお話を承ろうと思います。

○池尾委員

堀内先生がおっしゃったこととちょっと重なるかもしれませんが、それと関さんがおっしゃったこととも関係すると思いますが、我々がこの間目指してきた方向性というのは、大枠においては決して間違っていなかったというふうに思うのです。今般の世界的な金融危機の経験を踏まえても間違っていなかったというふうに私自身は思っているのです。ただ、大枠において間違っていなかったとしても、反省すべき点だとか、点検すべき点が全くないかというと、それはそうではない可能性は非常に高いわけです。要するに、大枠としての考え方ということになると、結局我が国金融システムの将来ビジョンというところまでさかのぼるわけでして、あれは2002年段階で取りまとめられたものなわけです。今般の経験等を総括できるところまできていない、まだ金融危機以後を語れない状況で、なかなかその後というのを語れる状況になっていませんが、これまでの経過を踏まえた上で、日本の金融システムの将来的なあり方についてのビジョンを再点検するような作業はやったほうがいいというふうに思います。

だから、そういうことを何らかの形で個別的な具体的な制度整備の話と並行して、それの基礎となるものとして議論するような機会を確保できればいいのではないかというふうに思っております。

それから、もう一点追加ですが、制度整備に関しましては随分努力してやってきた結果として、これも大枠といいますか、大きなところで制度的な不備が残っていて、それがあるがゆえに金融ビジネスがうまくできないというふうなことはもうかなりなくなってきているのではないか。もちろん、細部において制度整備を図ったり、見直したりすべき点は多くあるかもしれませんが、基本的なところで大きな障害が残っているという段階は過ぎたと思うのです。制度としてそこまで整備が進んできたといえると思いますが、制度の運営だとか、ある種のインプリメンテーションのレベルでもっと経験を積んでいったりとか、知恵を重ねていかないと、うまく回っていかないようなところは大いに残されているというふうに思います。

特に我が国の雇用慣行だと、回転ドアというのですか、ローテーションというのですか、いろいろなことを経験するということはなかなか難しいので、レギュレーターの方は一生レギュレーターをやっておられて、銀行員の方はずっと銀行員をやっておられるということで、お互いの抱えている問題に関して、観念的には理解しても、実体験としてなかなかそれを経験するようなチャンスが極めて限定的にしかない。そういうことで、インプリメンテーションのところで円滑にやるということの課題には、極めて意識的に取り組まないとなかなかうまくいかないようなところがあるのではないかということで、形式としての制度整備を越えて、それを実質化していくプロセスでの課題というのにも目配りをしていく必要があるのではないかというのが、もう一つの点です。

その2つを感想として申し上げておきます。

○翁委員

私は、金融システムの安定のことについて一言問題意識を述べたいと思うのですけれども、2000年の前半で、先ほどもお示しいただいたように、日本の金融システムを安定するためのセーフティネットというのは一応築かれてきているわけなのですけれども、また、自己資本比率規制なども国際的にバーゼル II が試行されるということになってきたのですけれども、やはり今起こっていることを見ますと、その金融システムの安定を保つためのやり方がミクロの視点に非常に、ミクロの特に銀行を中心にきちんと健全性を担保すればシステム全体の安定が保たれるというような、そういう前提のもとで構築されてきたという感じを持っております。

ただ、現状起こっていることを見ましても、金融システムは非常に大きく変化をしておりまして、今後金融システムの安定のための政策を考えるためには、よりマクロ的な視点が非常に重要になってきているのではないかというふうに思っております。

例えば、今、起こっているような市場の流動性が枯渇してどんどん金融商品の価格がスパイラル的に低下していくというような形のシステミックリスクをどう考えていくのかとか、また、景気が非常に悪くなってくるときに、自己資本比率規制が、これは前から言われていたことですけれども、非常に同調的に働いてしまうことをどう考えるのか。そういったことも含めて、今後金融システムの安定、これは国際的な議論と密接に関連することだと思いますけれども、そういった観点から規制や監督のあり方を点検していくということが大事ではないかというように思っております。

○島崎委員

先ほど大森さんからここ最近の現在までに審議してきた内容についてご説明ありました。その中に、先ほど関さんも触れられましたが、コーポレートガバナンスが取り上げられていました。これについては、今日的に日本のありようをどう評価するか、経済界の中には、こんな大変なときにそんな悠長なことを言っている場合かという人もおられるわけですけれども、私はこういう時期だからこそこの考えを見直すということが必要なのだろうなと思います。

アメリカ発の金融危機が契機となって、今は日本の経営のあり方、ガバナンスも含めた日本的経営のあり方というのが見直されるというか、逆に評価される時期にあるのではないかと思います。私は、アメリカ的なガバナンスを批判するつもりはないのですが、今まで五、六年継続して海外の投資家と接触していて、日本的な経営、例えば投資家を含むステークホルダーに対する日本企業の考え方についてはかなり異なる意見を頂戴しました。意見というのはどちらかというと否定的な意見でありましたが、結果として振り返ってみるとそれはどうだったのかということだろうと思うのです。

長期的な視野に立って、内部留保をしながら、次に供えて手を打っていく。すなわち将来のための投資とか開発を継続的に進め、株主だけではなくて、従業員を含むすべてのステークホルダーを考えた日本的な経営が改めて見直されるのではないか、企業がとるべきリスクの許容度が企業の体力に対してどうなのか、リスクプロファイルがどうなのかなどを常に考えて、中長期的な視点で会社のありようを考えて経営していく。その結果として日本には100年、200年経つ企業がたくさん残っているということだと思うのです。

これは短期的な期間で利益を追求する株主から見たら、そういう経営のあり方については否定的であり、もう少し資本を減らして、デットを調達して、もっとレバルジョンをかけて経営すべきではないかという意見は随分あったと思うのです。いわゆる企業の財務的な体力を超えてリスクを取ったことから経営破綻を来したという今回の問題をも踏まえた上で、日本的経営のありようについて、今一度再評価をして、日本企業のガバナンスはどうあるべきなのかということを考えてみるべきだろうと思います。

確かに、外国人の株主の比率が3割ぐらいになってきていることは確かであり、彼らの意見に耳を傾けるという気持ちは大事ではありますが、彼らの要求をそのまま我々として受けるべきものなのかという観点で、ガバナンス問題をもう少し深め、今だからこそこの問題を議論したらよろしいのではないのかと思います。

○藤原委員

島崎委員が金融危機後に日本的な経営のあり方が見直されてきていることについて触れていましたので、私も金融危機後に日本の官僚の仕事に対する評価が見直されてもいいのではないかという点について簡単に述べてみたいと思います。金融市場の安定性を維持していくことは、どの国の金融監督当局にとっても非常に大変なことです。皆さんもご存じのように、最近まで日本政府は自国の金融・資本市場の規制緩和が進んでいないことを国際的に批判されてきました。また、金融庁は金融機関への監督が厳しすぎると批判されてきました。この金融庁の厳しい監督姿勢は新聞を初めとするメディアや日本の金融機関にバッシングされてきています。しかし、見方を変えるなら、金融庁が金融機関に対する厳しい検査姿勢を変えなかったからこそ、また、日本の資本市場に対する規制がより多く残っていたからこそ日本の金融機関は米国の金融機関ほどサブプライムの被害を受けなかったのではないでしょうか。

官僚の天下りや渡りは批判されていいと思いますが、世界同時不況のなかで、米国の大手銀行が軒並み潰れかけているのに比べ、日本の金融機関は比較的被害が少なかったというこの事実に関しては、金融監督当局で仕事をしている官僚はもっと評価されてもいいと思います。また、メディアの方たちもただ官僚批判をするだけでなく、官僚がいい仕事をした時は、そのことを認めて、もっと褒める記事を書いてもいいと思いますし、国民にこういう事実をもっと知らせてもいいと思います。そういう場合、日本だけでなく世界に向けて発信していってもいいのではないでしょうか。

次に日本政府に委員として1つ提案があります。米国発の金融危機は瞬く間に世界的に波及し、日本でも需要の大幅減という異例の状態が起こっています。この経済危機の原因を作ったアメリカは先日「90年代の日本政府みたいに失敗しないように」と日本を批判していましたが、こういう発言を耳にした時、政府関係者はただ黙って聞き流すのではなく、反論するか、彼らのミスを訂正してもいいのではないでしょうか。

以上です。

○吉野委員

さきに池尾先生が金融全体の見直しということをおっしゃったのですけれども、マクロの資金の流れで見ると日本は国が一番赤字でして、そこにお金が今一番流れている。ですから、民間の金融機関を通じて余り投資に流れていないというのが現状です。それは、ただ運がいいのは、余り民間の設備投資がないためにそういうことになっているわけですけれども、ですから、マクロで考えるのであればいかに民間で資金を流すかということは少し考えなければいけないと思います。

2番目は、金融市場を考える場合、私はいつも考えるのは、金融機関と市場と、それからそこに資金を提供しているプロとかアマという3つを考えているのですけれども、今回のサブプライムローンで、一つ金融機関でアメリカにジニーベイというのがありまして、これは証券化するところなのですが、ここがインセンティブメカニズムでストックオプションというのを2年前に導入したそうなのです。これによってジニーベイがずっと拡大する指向になりまして、少しぐらい悪い商品でも証券化をどんどんやっていった。つまり、金融機関がどういうインセンティブメカニズムを持ってそこで働いている行員の方々にやっていただくかということが非常に重要で、そこを間違えてしまうと変な方向に暴走してしまう。

逆にいうと、日本の場合には、インセンティブメカニズムをうまく、これからどういう形で活用したら日本の金融業が海外に攻められるのか。それから欧米が弱っている中ででき得るのかというのをぜひ考えていただきたい。

あと、英語について、日本はハンディがありますから、英語を使わない金融でどこかで勝てないかというのも考えていただけるといいのではないか。例えば、決済システムとか、ああいうところは言葉が要らないところですから、そういうところから攻めていくというのがあるのではないかと思います。

それから、市場に関しましては、銀行を通じた預金と貸し出しの市場と、あと株式、債権市場というところがあると思うのですけれども、債権市場はまだなかなか社債の市場が大きくなっていません。国債市場だけですから、そういう意味では市場の部分がちゃんとしているのかどうか。市場間での資金の動きがどうかというのを考えていただければと思います。

それから、投資家の保護ではプロとアマとよくいわれるのですが、プロが日本の場合本当にプロなのか。個人であっても金融経済教育が必要だというふうに思います。

それから、ちょっと違う視点で、地域の金融という、日本がこれだけ今後疲弊していく中で、地域経済をどうするかという中には、地域の金融機関のあり方というのが一つ重要ではないかと思います。それは中小企業金融ということになるかもしれませんけれども、高齢化社会、あるいは地域の中でリレバムを含めた地域の金融というのをぜひひとつ考えていただきたい。

それから、最後は貸金業法が改正されたわけですけれども、その貸金業法の改正の後、地域の個人あるいは地域の中小企業も含めて、これがきちんとフォローアップできるかというところまで含めたことを考えていただければと思います。

以上です。

○和仁委員

今まで、先ほど藤原委員から金融庁が保守的な態度をとったからよかったのだというコメントがありました。金融庁がやってこられたことは立派だし、ある程度、説得力のあることをやってこられたし、佐藤長官がいろいろなところで講演されているのを拝見すると、きちんとしたメッセージが海外に伝わっているということで、それは非常に評価いたします。やはりもう一つ、我々がここでやるのかどうなのかわかりませんけれども、要するに十数年前に金融監督庁が成立したころから、ずっとアメリカ側の言うことに頭を垂れて聞いていたという時代が10年ほど続きました。それでしばらくして、いや、やっぱり日本のやってきたことはよかったのではないかという話になってきているという印象ですが、ここで考えなければいけないのは、アメリカというのは結構良い、金融機関を金融危機から守る制度を持っていたはずなのに、どうして今回うまく働かなかったのかという検証はだれもなさっていないのです。

これは少し、学者の方にお願いして、アメリカの金融法制度がなぜうまく働かなかったのかなということを、我々はもう一回検討する必要があるのではないか。

その中で、ゲートキーパーといわれている人たち、この中にはレギュレーターも入るでしょうし、それから公認会計士も入るでしょうし、我々弁護士も入ると思います。あるいは金融機関のコンプライアンスセクションも入ると思いますけれども、ゲートキーパーがきちんと機能していないから、サブプライムローンに関してはいい加減なことが起こって、どんどん火だるまになっていってしまったという事態があるわけですけれども、ゲートキーパーの役割というのは何だろうかということを、もう一回我々は考えなければいけないということが一つあるのではないでしょうか。

それから、業界と金融庁との間で物の考え方の共有がなされていない。金融庁の過去の検査のやり方等で、マーケットは金融庁に対してある種の怨嗟を持っているというか、素直に聞かないというところはどうしても残っています。この不信をどうやって解決するか。人間を交流するということももう少し考えるべきで、マスコミは天下りになるからけしからんとすぐ言うんですけれども、本当のことをいえば、検査畑の人は金融機関にそのまま天下りしてもらって、そこでもう一回、金融庁でやっているのはこれなんだから、共通の認識を持つためにそれに合わせるようにしなさいという指導をできるようなことをやっても良いと思うのです。ところが、それができていない。人事交流ができていないがゆえに、お互いに金融市場でやるべきこと、守るべきルールについての共通の理解の形成というのですか、もちろん幅があるでしょうけれども、それができていないというところがあって、これをどういうふうに考えるべきかということを私どもが考えてもいいのではないかなと思います。

それから、もう一つ、3つ目、私は法律屋ですので申し上げたいのですけれども、我々金融商品取引法とか、いろいろ法律を導入してきました。決済法もありましたし、それは今までの改革を続けてきて、今日本の金融制度がだからこそまだ活力があるのだというところはあるのですけれども、過去につくった法律のフォローアップを定期的にやっていくということを金融審議会の課題としたほうがいいと思います。例えば、今回の資料の1-2の2ページ目に書いてある利用者保護の充実のところに、有価証券、店頭デリバティブへの分別管理義務の導入と書いてありますけれども、そもそも分別管理義務は昔から金商法の中に最初から書いてあったわけで、それがうまく動かないのでどうするかということで今回改正されたのだと、私は理解しておりますが、定期的なフォローアップというのが必要なのではないかと思います。

それから、もう一つお願いということであれば、日本で規制を入れるときに、どうしても大口市場、ホールセールマーケットと、リテールマーケット、小口の小売り市場との区別をしていただけないのです。金商法は今回その区別をわずかに設けたのですけれども、金利規制等に関しては何の区別もなく、これが非常な障害になっております。ですから、レバジットファイナンスとか、プロジェクトファイナンスをやろうとすると、日本ではどうしても利息制限法、貸金業法の金利規制が重くのしかかってきます。要するに大口の市場でどういうふうにお金が動くようにするかということの工夫をもっとする必要があると思います。そうしないと、確かに国内の一般投資家や零細な借り手を守ってあげる必要はありますし、その重要性はいくら強調しても足らないとは思いますが、この国のシステムのグランドデザインを考えていく上には、大口の取り引きをどうやって活性化させるかということを考えていただきたいと存じます。

以上でございます。

○川本委員

2つ問題意識を申し上げたいと思います。

大きな枠組みとしては、現在は経済危機に変わりはないのですけれども、心理的なネガティブバブル的な側面も非常に大きいと思います。資本主義の総本山ともいえるアメリカの金融界が自壊して、自分の境遇が悪くなっているために余計ネガティブに心理的に働いて自信喪失になって、議論がものすごくぶれているという感じがしています。こういう危機の中で短期的な施策と中長期的な方向性のベクトルが必ずしも合わない場合に、中長期的な方向性の枠組みでぶれないという議論をしていきたいというのが1点目であります。

それから、2点目は、規制とか監督とか商慣習など、それらが金融機関の方たちの行動、経営陣のビヘービア、職員のビヘービアにどのように影響していくのか、効果があるのかということを、いま一度点検したほうがいいのではないかというふうに思っています。

といいますのは、抽象論でない利用者保護、利用者保護といいながら利用者利便につながっていない例などを点検する。もはやインフラづくりとか、市場の整備で金融規制においてやることはないというご議論もあると思いますけれども、本当にないのかということ。歴史は前に向かって進んでいるので、今回の危機を見据えて日本の金融というものをどういう形に創っていくのか。そのときに個々のプレイヤーの競争力は必ず問われるので、そこに対して規制と監督がどういう影響を与えるのかということは、どんなに見ても見過ぎることはないと思います。

以上です。

○根本委員

今回の金融危機の影響があぶり出した、明らかにした構造的な問題というものをもう一回考えていただきたい。一つには株式の相場によって非常に不安定になる銀行あるいは保険業界というものの問題があると思います。例えばドイツの銀行業界を見ていると、非常に日本に似ていて、国内にバブルというのはなかったですし、余りサブプライムのエクスポージャーというのはなかったのですけれども、収益を見ると非常に落ち込みが激しい。幾つか共通点があるのですけれども、一つはもともとの収益性が非常に低いということと、それから、国内での成長力が弱くて、経済が輸出依存で、その影響を受けやすいということ、それから、非常にプレイヤーが多いというか、非効率な金融機関が残っている。ただ、一つ違うのは、ドイツというのは、かつては株をたくさん持っていてその影響が大きかったのですけれども、2001年、2年に多額の損失を受けてかなり処分をしているのです。今、ある意味日本だけが株のリスクにさらされて一喜一憂しなければいけないという状況にありますので、そこは例えば自己資本規制を緩和するというのが一つなのかもしれませんが、それはやはり対処療法的なことであって、本当にそれをどう考えていくのか。エクスポージャーを減らすのか。もしくは資本をもっとふやすのか、対応すべきことなのではないかと思います。

先ほど藤原委員もおっしゃった海外へ伝えることなのですけれども、今海外では銀行の国有化など、政府のコントロールが強まっているということがあると思います。いわばそれを余儀なくされているという状況があると思うのですけれども、日本においては、経験がいろいろあります。今アメリカの対応を見ると、余りコンシーステンシーがなく、経営責任とか、株主責任がよくわからないとか、透明性の意味でも余り高くないとか、そういう問題が多いかと思います。日本の場合は、90年代後半から金融再生法をつくり、預金保険法を改正したり、いろいろな経験の中にノウハウの蓄積をされてきたと思いますので、システミックリスクを起こしそうな金融機関に対してどういう対応をするのかとか、失敗例も含めて何か伝えられることが多いのではないかと思っています。

以上です。

○永沢委員

私は、このたび初めて参加させていただきましたので、他の委員の皆様のような立派な意見を申し上げることはできませんが、消費者の立場から金融商品の品質の改善を求める提言をしております消費者グループの一員として、2点ばかり意見を申し述べさせていただきたいと思います。

1つは、この10年の間、国民の間には、自分の老後は自分で支えなければいけないという意識が高まりましたし、また、貯蓄から投資というスローガン、そういう言い方をしてはいけないのかもしれませんけれども、そういう流れもありましたので、かなり多くの国民が投資というものに一歩踏み出したというふうに認識しております。

先日、どの新聞だったか記憶は定かではございませんが、去年の秋の時点で国民の半分が含み損を抱えているという記事を読みました。昨年の秋からさらに相場は下がっておりますことを考えますと、さらに含み損を抱えている国民の比率は高まっていると思います。集団投資スキーム型の投資商品は、金融ビックバン以後の10年の中で、私どもの国民の資産形成の中核商品として位置づけられてきました。こうした商品が、今後も我々国民の資産形成の中核としてあり続けるのでしょうが、投資家の立場としては、商品の運営にかかるコストというものについて、金融業界の方々には再考をしていただき、投資家に還元をする方法を検討いただくことをお願いしたいと思います。

集団投資スキーム型の商品では、ファンドの運営にかかるコストは、購入時の契約で決められると、その後も、そういう約束事だからということで、ずっと同じ料率の報酬がとり続けられるという仕組みになっています。投資家にとっては、コストは損失です。運用の改善が期待できないなら、他の産業界でも行われているようにコスト削減を図り、報酬率の引き下げなどを行って投資家への還元を行うことをご検討いただくことはできないものでしょうか。

ファンドの運営コストの削減と関連いたしまして、制度的な対応も必要になってくるのではないかとも思っております。先ほど大森企画課長からお話のありました投資者保護の仕組みだとか、投資家が信頼できる仕組みづくりといった制度づくりの流れは正しい方向ですし、後退を許してはいけないと思います。しかし、先ほど関前会長代理からもお話がありましたように、仕組みはできたが、形ばかりになってしまって魂が入っていない仕組みが、投資家のコスト負担のもとで運営されているということもあるのではないかと思うこともあり、ぜひ点検をしていただきたいと思っております。

例えば投資信託の場合、年度末に監査が行われるようになりました。その監査のコストは、投資家が負担しているわけですが、この監査がどのような効用を投資家にもたらしているのか、どのようなガバナンスが行われていて、私たち投資家にどのようなメリットがあるのかというところが投資家に十分に知らされなければ、そういう制度への投資家からの支持というのは最終的に得られないのではないかというふうに思っております。

最近、投資信託の目論見書制度の改革に金融庁が着手されましたが、この動きは、形式ではなく「実」に合致した制度を作ろうとするものであり、大きな一歩だと評価したいと思っております。この改革についても、国民から最終的に評価されるためには、その改革のメリットが国民に十分に伝わるようにしていただくことが必要かと思っています。

もう一つ申し上げたいと思うことは、金融分野での技術革新に、すべての投資家が対応できるわけではないという点です。例えばインターネットの普及が非常に進んでおり、コストの削減への寄与だとか利便性といったメリットは大変大きなものがあると思いますが、投資家の中には高齢者などそういうものを使いこなせない人もおります。制度をつくる側の人間は現役ですから、今は使いこなせるかもしれません。しかし、10年、20年、30年たったときに、果たして急速な技術革新に自分がついていけるのかどうかという視点も忘れてほしくないと思います。

以上でございます。

○若松委員

私は、今後の日本の金融をどうしていくかということについて、政府が目指すべき方向とか理念というのをもう一度国民にはっきりさせていかないと、なかなか議論は進んでいかないと思うのです。なぜこういうことを言うかというと、例えば金融審議会の中にも、我が国の金融・資本市場の国際化に関するSGがあるのですけれども、そこでの議論というのは、始まった当初というのはアメリカのウォール街はこうなっている、シティではこうなっている、それを一つのモデルケースにしたような論調、意見を述べられた方も結構多かったと思うし、アメリカの大学ではこれだけの運用益を上げている、日本では、日本の大学は非常に運用が下手だと。でも、その結果起こっていることというのは、今回の金融危機というのはなかなか皆さん予想できなかったということもあるのですけれども、日本の大学でも巨額な損失を出してしまったということが出ている。国民からすると、ではそういうふうに貯蓄から投資と、私は、これは考え方としては間違ってはいないと思うのですけれども、国民からすれば一体何だったのだと。今、政府のやっている、一部の識者の人が進められて、アメリカ、ヨーロッパ型の進んだ、今では強欲資本主義と批判されるのもあるけれども、それを金科玉条のように日本も目指すべきではないかという議論というのが非常に引っ張ったということがあると思うので、もう一回今回の金融危機を受けて、ある程度今闘っている最中なのでなかなか、闘い終わってから、ある程度落ち着いてからでいいと思うのですけれども、やはり政府なり金融庁なりがはっきりと一つの総括をして、今後日本はどういうふうに目指すべきだというのを、一つの見解を出されるべきではないかと思うのです。

なぜこういうことを申し上げるかというと、私は日本の金融市場を強化する。国際市場において力をつけていかなければいけない。そこの部分においては、私は、それはある種認識は皆さん一致すると思うのです。ただ、国民からするとそういう方向というのは、あたかもそれは今問われた強欲資本主義みたいな方向にいくことだというような誤解を非常に、今いろいろマスコミの論調の中でも、一般的な読者の声とかそういうのを見ると非常にそこも誤解を受けるので、そういう誤解を受けないためにも、日本は今後どういう方向を目指すべきなのだというのをわかりやすく、今回の金融危機を受けてちゃんと説明しないと、国民の間には不信感が残ったまま進んでいってしまうような懸念を持っています。

以上です。

○淵田委員

今、本当に重要なテーマというのは金融システムの安定だと思います。振りかえってみれば、先ほどお話があった金融の将来ビジョンという、2002年に行われた議論もかなりの点は金融システムの安定ということを念頭に置いて議論が進んだと思います。つまり、銀行の不良債権問題というのが非常に大きな問題になっていた当時において、こういうことを繰り返さない金融システムはどうあるべきかという観点で、銀行に集中したリスクへの対処が必要と考えられ、その問題意識の一環でその後の各種の制度改正も進んできたという経緯があると思います。

先ほどインフラものとか、利用者保護という柱が金融システムの安定という柱と並んであるというお話がありましたが、そういう部分で近年実現してきた改革も、結局資金の流れをもう少し市場型に変えていくためには、市場の信頼性が必要だし、投資家保護も必要だしということで、金融システムの安定というものを起点としつつ、いろいろな議論をこの審議会でやってきて、制度改正に結びついてきたという展開だと思います。

この従来型の枠組みというのは、これは引き続き重要だと私は思っております。というのは、1つ例を挙げれば、株式持ち合いの結果今日、先ほどご指摘もありましたような問題が起きているということは、ひとえに銀行というものにお金が集中していることが背景となっているからです。これは別に銀行が悪いということではなくて、まだまだ市場型金融というものが十分信頼をかち得るに至っていないということの反映だと思いますので、引き続き従来的な枠組みでの制度改正というのは必要だと思います。

同時に、言うまでもなく、新たな問題というものが、この金融システムの安定という点一つとっても出てきているわけで、これへの対応も必要です。これは先ほど来のお話を踏まえますと、1つは翁委員がおっしゃったマクロの問題です。マクロの金融の安定というのは、私なりに分けると、1つは個別の金融機関の健全性を保っていればよかったと思われていたのが、そうではなくて、金融システム全体の安定性を見なければいけない。個別の金融機関の安定性を追求することが必ずしも金融システム全体の安定性につながらないということだと思います。

もう一つは、従来は銀行に焦点をあててその安全性を議論していたわけですけれども、銀行だけ守ればよいわけではなくて、場合によっては大方のヘッジファンドも含む、ノンバンクも含めた安定性を考えなければ金融システムの安定性は議論できないということです。

それから、さらにマクロという意味では、マクロ経済と金融システムの安定性の関係です。つまり、さんざん言われておりますような貯蓄、投資の大きなインバランスというもの、あるいは長期にわたる低金利状態の継続といったものが金融機関、プレイヤーの行動にどういう影響をもたらすか。そういうマクロ経済と金融システムの安定性の関係というものも深く考えなければいけないということです。例えば金融審議会でそういうマクロ経済政策のことまで議論しろということが、堀内先生の先ほどのご発言の趣旨かどうかはわかりませんが、金融システムの安定性というものを考える場合には、そういうことまで考えなければいけないという時代になってきているのかなと思います。

もう一つ、ミクロの問題というのも同時に新しい観点で見なければいけなくなってくると思います。制度がもたらすインセンティブあるいは経済環境がもたらすインセンティブの影響というものをもっともっと深く考えなければいけないということだと思います。例えば、報酬の問題とか、あるいはガバナンスの問題とかがあります。従って、島崎委員がおっしゃったような論点というのは非常に重要なことではないかというふうに感じました。

マクロの問題、ミクロの問題いずれにしても、今お話しがありましたように、我々がキャッチアップしようとしてきた欧米の先進的な資本市場の人たちが大いに頭を悩ませているような問題であります。我が国は、まだまだそこまでひどくなってはいなかったという面もありますから、我々日本のマーケットの人間がこうした先進的な課題を共有して、何らかの提言ができる部分もあるかと思います。金融審議会等の場で官民知恵を出していかなければいけないのではないかと思っております。

以上です。

○佐々木委員

皆さんがおっしゃっていることと似ているのですけれども、やはり金融の安定化という社会像というのでしょうか、どういう社会になっていくのかということの全体像を、ビジョンを明確にするという意味で明確にし直し、もう一度新しい委員も含めて見直して、そこに向かって何をするのかということを考えていく必要があるだろうと思います。

金融のご専門の皆様の前で私が今の問題点を挙げる立場にはないと思うのですけれども、やはりシステムがどんなに正しそうに見えても、それを運用する人の信条だったり、あるいはここで利益を上げることがどれだけ自分に短期的に得かというような心理的なことが働くことによって、これだけ本来は世界的にも安定したり、成長したりすべきシステムがうまくいかなくなってしまったということではないかと思うのです。そうすると、机上のシステム論だけを述べている時代がもしかしたら終わって、幾ら金融審議会といえども、やはりそこで働く人の信条や心の動きまでも加味した、あるいは日本の中でいえば消費者という人たちがその制度の改革の方向や発表を聞いたときに何を感じるのか。どういうふうに参加してくるのかというところまでも少し想像した今後の発展が必要なのではないかなというふうに、漠然と感じております。

ですから、具体的にどういうふうにするのかがまだ明確に見えないのですけれども、本当の意味でのうまくいく、機能する金融システムや、あるいは活用したり、みんながハッピーになっていく金融社会づくりというのが一体何なのかということを、一度白紙に戻してというか、新しい気持ちで考え直してから再スタートを切れるといいなというふうに思っております。

○斎藤委員

私は、自分の専門がファイナンシャル・ディスクロージャーとか、会計基準という問題ですので、冒頭関さんがおっしゃられた開示制度の信頼性というところにかかわらせて、ごく狭い一面だけ感想を申し上げたいと思います。

私は、関さんがおっしゃられたように、日本でもこれから開示される情報の信頼性が改めて問い直される時代は必ずくると思います。この問題をめぐる日本の議論のあり方というのは、第一線から下がって冷静に見ますと非常に特徴的な2つのパターンがあると思うのです。1つは、今、国際会計基準というものが非常に大きなテーマになっていることもあって、それにどう合わせるのかという議論に閉じこもる。特にはなはだしいのは、中身に関係なく全部あわせるか、そうではないのかという、オール・オア・ナッシングの話でいったりきたりするという、そういう議論の仕方が非常に特徴的だと思います。

国際基準への対応は、日本に限らずヨーロッパはもちろん、アメリカでも大きな問題なわけですけれども、少なくともアメリカでの議論を見ていますと、個々のルールの中身をまず議論して、その話を踏まえて国際化の話をするという流れですけれども、日本はそこがちょっと違う。これは必ずしも会計基準だけの話ではなくて、さっきから出ているいろいろな議論にもかかわることだと思うのです。

もう一点は、今、未曾有の危機だから、通常のレギュラーな状況でのルール・メーキングは棚上げして、当面の危機対応だけを考えるという、そういう議論が非常に強い。しかし、特にディスクロージャーの問題を考えていくときには、危機だから使えないルールというのは、危機でないときでも間違ったルールだと思うのです。そういうものをもう少し広く考えることは当然に必要だと思うので、そもそも危機であるのか、通常の状況なのかという話を別にして、個々のルールがどういう結果を伴うのか、それをどう評価するのかという、実質の話をまずしたい。それを踏まえて国際化の議論をするスタンスを持ってほしいと私は強く思っています。

それはさっき関さんがおっしゃった公認会計士制度あるいは監査制度にもかかわってまいりますし、島崎さんがおっしゃられたガバナンスの議論にもかかわります。私は島崎さんのおっしゃった論点はもっともだと思いますが、それは単にガバナンスだけの問題ではなくて、こういうディスクロージャー制度一般の問題にも当然かかわってくると思います。

これはある意味で当たり前のことでもあり、いつもと同じことを言っているにすぎないかもしれません。新会長がおっしゃられた何とかの法則の1番目と2番目に該当するのですけれども、あえて申し上げたいと思います。

○黒沼委員

法律の研究者として審議会の議論に加わってきたこれまでの経験から、若干のことを述べさせていただきたいと思います。

具体的にどうすべきかという、具体的な政策論を今持っているわけではないのですけれども、金融資本市場の分野の政策を決定して、それを具体化するよう提言するというのが金融審議会の役割だと思いますけれども、残念ながら法律の分野では金融資本市場の専門家はそれほど多くありません。日本では法律の学者は個人営業でやっていまして、共同で実証研究をすることは今まで余り多くなかったのですね。最近はそういうのも出てきていますけれども、まだまだ十分な基礎ができていないところであります。

私も審議会においては、技術的な点についてアドバイスをするとともに、あとは、自分はこう信じるとか、自分はこれがいいのではないかという政策論を述べることがありますけれども、それはわたしの知見の範囲内で学者の実証研究に基づいて言っていることもありますが、そうでない場合もあって、非常に心細いところであります。

金融資本市場の問題は対象が金融資本市場ですから、経済学の分野の実証研究がなされている。あるいは諸外国のものであってもいいのですけれども、実証研究がなされていると思うのですが、そういうものが審議会あるいはワーキング・グループで使われたことは余りなかったように思います。その分野をぜひ強化していただけないかと思います。

先ほど斎藤委員が言われた、個々のルールがどういう結果を伴うのかというのは、実証研究である程度明らかにすることができますし、あるいはモデルを組み立てて、過去にないようなルールであっても、結果を予測することはできるわけです。そういった基礎的な資料をもとに政策判断をしていくべきではないかと考えています。

もし研究者の分野でそれが少ないのであれば、金融庁には法律や経済の専門家もかなり集まっておられると思うので、金融庁の事務局でそういう機能を強化していただいて、資料についても諸外国の制度はどうなっているかとか、あるいは過去の統計数値だけではなくて、こういうルールをつくればこうなるのではないかといった研究を伴ったものを出していただけると非常にありがたいし、結果として、いい提言ができるのではないかと考えております。

○田島委員

2001年以降金融制度整備ということでいろいろな措置をとってきたわけですけれども、その中には、立ちおくれた国際競争力の強化を目的として米欧に追従する形で措置されてきたものも多々あったと思います。米欧の構成が正しければ、それはそれでよかったはずなのですけれども、かなりの意味で大きな失敗に終わっている現状をかんがみますと。やはりそういう観点で行われてきた制度整備が本当にこのままでいいのかどうかということの見直しをこの時点で一度行う必要はあると思います。

もう一つ、方向性としては正しい改革として法整備が行われたものにつきましても、必ずしも法律が整備されたからといって実態がそれについてきているわけではないと思いますので、その実態を正しい方向に進めるためにさらに、欠けている点があるのであればその辺ももう一度見直しをして、追加的な法整備を行うということを考えるべきではないかと思います。

以上です。

○田中会長

今日ご出席の委員の皆様方から、すべての方からお話を伺いました。二順目にいくだけの時間はないのですが、ずっと委員の方のご意見を聞かれまして、追加的にこれだけは述べておきたいということがございましたら。

○藤原委員

金融審議会でこれから議論する課題の1つとして提案したいことがあります。今回の金融危機は世界全体のGDP、5,500兆円の4倍ほどの金融資産が積み上がり、そのバブルが崩壊したのですから、日本の金融危機に比較にならないほど問題は深刻だと思います。また、この金融危機に対し米国や英国政府は完璧なソリューションを持たずに動いているので不安です。エコノミストの中にはこの金融危機は、後1~2年で終わると発言している人たちもおりますが、本格的な不良債権処理はこれからですので、経済はデフレを伴いもう一段悪くなっていくのではないかと思います。各国政府は4月に開かれるG20で互いに協力し合って対策を練っていくようですが、参加国の経済力の差を考慮するに、本当に1つのグループとしてソリューションを探せれるのかは分かりません。私の国際金融市場での経験をもとに述べさせてもらいますと、この規模の金融危機が起こった場合、経済が回復するまでは2年ではなく、最低10年はかかると思います。私が何をいいたいかと申し上げますと、今起こっている前代未聞の経済危機から立ち直るためにはどれぐらいの時間がかかるのかという時間軸も考慮して今後の金融審議会の課題を選んでいくことが重要だと思います。つまり、現在の危機が仮に2年で終わる場合は課題として考えなくともいい問題であっても、回復するまで10年かかると想定した場合は審議会として取り上げていく課題になるといったケースはあると思います。1例を述べるなら、現在の経済危機が回復まで10年かかると想定した場合、企業や金融機関の時価会計基準を変更することはこの審議会で議論する議題の1つになると思います。

以上です。

○田中会長

追加的な論点で何かございますか。

それでは、今日は皆さんからご意見を承りました。これらの意見も参考に、今後の方向については考えてみたいと思います。ハーバード大学の基金を運営しているインダーブメントというところがあるのですが、この間聞きましたら、この1年で8,000億円ダメージを受けたそうで、大体3割ちょっとだと言っていましたけれども。これは恐らく、今後ハーバード大学が用意する奨学金にも影響を持つと言っていますし、それからそもそも奨学金を与えてそれを商品化した商品というのは、ご存じのように出ているわけですが、これは引き受け手がないものですから奨学金供与の枠組みもマーケットを通じては簡単ではないという議論になってきていまして、当面、今、年金の受給者にももちろん影響が出るのですけれども、次の世代にも影響が出るなという議論になっているように思います。そういう意味では、今回の金融危機というものが、足元の景気、信用収縮に伴う経済活動の圧縮というのはもちろんあるのですけれども、もう少し長い目で見てもどうも影響が出る。日本の年金についてもまだそんなに、資産は内々にはされているかもしれませんが、表には出ていないようですけれども、相当なダメージを受けているわけで、年金給付額の議論は我が国でも恐らく相当深刻な問題提起にならざるを得ないような局面になっていると、私は思っております。

そういう意味では、金融審議会が直接手がけるかどうかはともかくとして、そういう問題がある中でのこの審議会だという、現状は相当なものだということを前提にして、私も発言しているつもりですし、今後皆様方からの問題提起がございました場合には、そうした枠組みの中でどこまでこなせるのか。あるいはどういうこなし方をすればいいのかというのをまたご相談してまいりたいというふうに思います。

今後の日程等につきまして。

○大森企画課長

ありがとうございました。こちらに座っている役所側の人間というのは、今日のご意見を聞いていて、共感したり、何か一言、二言、言いたくなったり、多分長官も言いたいことで頭の中がいっぱいになっているのではないかと思うのですけれども、またそれは改めてということで、非常に多角的なご意見をいただきまして、ありがとうございました。この総会・分科会というのは大体年1回ということでございます。先ほど申し上げましたように、委員の皆様それぞれ第一部会、第二部会あるいは両方に所属していただきまして、また今日いただいたご意見を踏まえて、課題を設定して議論をしていくということになりますので、進め方、また会長等と相談させていただきまして、ご連絡させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

○田中会長

それでは、本日はお忙しいところありがとうございました。これにて閉会といたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3512)

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