金融審議会総会(第28回)・金融分科会(第16回)合同会合議事録

  • 1.日時:

    平成24年7月4日(水曜日)11時00分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○吉野会長

それでは、時間になりましたので、ただいまから第28回の金融審議会総会並びに第16回金融分科会合同会合を開催させて頂きたいと思います。

本日はご多用のところをご参集頂きまして、どうもありがとうございます。委員の皆様におかれましては、日ごろから各ワーキング・グループにおきましていろいろご意見を頂いておりますが、本日はそのワーキング・グループの所属を超えた大所高所からのご意見を頂ければと思っております。

開催に先立ちまして、今日の議事は公開の形にさせて頂いておりますので、ご承知おき願いたいと思います。

本日は、私の右側に松下金融担当大臣、それから中塚副大臣、大串政務次官、お3人の方々にご出席頂いております。

最初に、開会に当たりまして松下大臣よりご挨拶を頂きまして、その後、ご挨拶に引き続き本審議会に対する新たな諮問を頂きたいと思っております。その後、大臣は所用のためにご退席されることになっております。

それでは、早速でございますけれども、大臣のほうからご挨拶並びに諮問を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○松下大臣

おはようございます。ただいまご紹介頂きました金融担当大臣の松下忠洋でございます。鹿児島県の薩摩半島の出身でございます。よろしくお願い申し上げます。

金融審議会総会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。

まず、金融審議会の委員の皆様方には、日ごろよりご多忙のところ、審議会の活動にご参加、ご尽力頂きまして、まことにありがとうございます。本日も、自見前金融担当大臣から昨年諮問させていただきました我が国金融業の中長期的なあり方について、精力的な検討が行われ、取りまとめられた報告書が総会に提出されると聞いております。心から感謝申し上げます。

さて、金融を取り巻く現下の情勢を見ますと、このところ、欧州の財政金融問題をめぐる不確実性が再び高まっているほか、世界経済の成長率が低下していること等を背景に、市場にリスク回避の動きが生じ、金融資本市場では不安定な動きが見られます。現在のところ、我が国の金融システムは総体として健全であり、安定していると考えておりますが、こうした内外の経済・市場の動向が与える影響については高い関心を持って注視してまいります。また、グローバルな金融システムを強化する観点から、引き続き国際的な議論に積極的に参画し、各国と協力した取り組みを進めてまいります。

一方、国内に目を転じますと、先般、中小企業金融円滑化法の期限が来年3月まで最終延長されたことを踏まえ、金融庁としては、我が国のデフレ脱却や経済活性化にも資するよう関係省庁等と十分連携しながら、去る4月に公表いたしました「中小企業の経営支援のための政策パッケージ」の具体化等を進めてまいります。これによりまして、経済成長、雇用の牽引役となる中小企業の真の意味での経営改善につながる支援を強力に推し進めていくための環境をしっかりと整備してまいります。

次に、金融資本市場の信頼性を確保するための取り組みについて申し上げます。

AIJ投資顧問に関する問題については、関係省庁とも緊密に連携しながら、金融庁、証券取引等監視委員会の総力を挙げて再発防止に努めてまいります。また、最近のインサイダー取引に関する事案では、会社関係者から重要事実の伝達を受けた者による違反行為が多数見られます。特に公募増資等に関連して金融機関からの情報漏えいに基づいた事案も生じております。こうした事案の発生を防止していくことは喫緊の課題であり、今後、金融審議会の力もお借りして適切な規制のあり方を検討していく必要があると考えております。

このように金融行政をめぐる課題は内外ともに山積しており、こうした問題に対して高い見識を有しておられる金融審議会の委員の皆様方におかれまして活発なご議論を頂くことをお願いいたしまして私の挨拶といたします。

引き続き、諮問をさせて頂きます。

金融審議会会長 吉野直行殿

金融庁設置法第7条第1項第1号により、下記のとおり諮問する。

最近の公募増資に関連したインサイダー取引などを踏まえ、我が国市場の公正性、透明性に対する投資家の信頼を確保する観点から、情報伝達行為への対応、課徴金額の計算方法、その他近年の違反事案の傾向や金融企業実務の実態にかんがみ、必要となるインサイダー取引規制の見直しを検討すること。

平成24年7月4日

金融担当大臣 松下忠洋

よろしくお願いします。

(諮問書手交)

○吉野会長

松下大臣、どうもありがとうございました。

それでは、カメラの方々、順次退席をお願いしたいと思います。

(報道関係者、退室)

○吉野会長

これから自由討議に入らせて頂きたいと思いますが、ただいま大臣からお読み頂きました諮問事項に関しまして、何か委員の方々から、ご質問、ご意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、ただいま頂きましたインサイダー取引制度見直しに係る諮問に対しまして、その課題を検討いたしますに当たりまして、ワーキング・グループを設置させて頂きたいと思います。その設置及びメンバーにつきましては、今後、皆様にご相談させて頂きながら進めさせていただきたいと思いますが、本件に関しましては、私に一任して頂いてよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○吉野会長

ご賛同頂きましたので、ありがとうございます。

それでは、続きまして、金融審議会のもとにこれまで設けられております各ワーキング・グループに関しまして、その検討状況に係る報告を頂きたいと思っております。

まず最初は、私が座長をさせて頂きました「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」、これの諮問の結果及び報告書の概要につきまして説明させて頂きたいと思います。お手元に、資料1‐1、それから1‐2、その下に1‐3という概念図がございますが、私はこの1‐3の横向きの概念図を使いながら要旨をご説明させて頂ければと思います。

横向きになっておりますが、ここに全段3つの段がございます。このワーキング・グループには、総会の委員の皆様の多くの方々にも参加して頂いております。

まず左側をご覧頂きますと、我が国の経済のさまざまな環境変化というものが出ておりますが、こういう変化の中で、我が国の金融業がどういう役割を果たし、さらに成長資金も含め、あるいは地方への資金を円滑に提供する、これが金融の役割であるというわけであります。

それから、左の下に行って頂きますと、金融のリスク環境、情報生産能力、こういうものを発揮しながら、金融資本市場もアジアの中でグローバルな資金が入り、また、そこからアジアにグローバルな資金が向かう、こういうような金融市場にして頂きたいと思っております。

真ん中が、このワーキング・グループでの大きな3つの柱であります。一番上が「グローバルな展開」、これはグローバルな企業、あるいは最近では中小企業もアジアに出ておりますが、こういうグローバルな展開を金融機関がどうやってやっていくか。それから2番目が真ん中のところですけれども、地域の金融、いわゆる「ローカルな展開」。それから、真ん中の一番下が「個人向け金融サービス」。こういう「グローバル」、「地域」、そして「個人向け」、こういう3つに大きく柱を分けました。

一番上の「グローバルな展開」では、我が国の金融業がやはり金融サービス業として海外に出ていき、そこで収益を上げていた。さらに日本の中小企業まで含めた企業がアジアを含め海外に出て行く際に、スムーズな金融サービスを提供し、さらにはその情報を提供する、こういうのが一番上の「グローバル」であります。さらにアジアの成長というものを日本が吸収できるように金融業としても頑張って頂きたいと思います。これまではどうしても製造業中心の海外展開でありましたが、金融サービス業を中心としたこういう集積性を上げていくということも必要であるというのが、まず一番上の「グローバルな展開」であります。

次は、ちょうど真ん中に位置しておりますけれども「ローカルな展開」、これが地域であります。まず、先ほど大臣からもありましたけれども、中小企業の再生・健全化。地域という場合には、やはり中小企業と密接に関係しているわけであります。それから2番目は地域の面的な再生。これは地方公共団体も含め地域をどういうふうに再生していくかということであります。3番目が地域の新産業の振興や新たなまちづくり。こういうものが3つの柱とし、その中で、ある程度リスクマネーが提供できるシステム、それからちょっと下のほうに行きますが、産、官、学、金、この4つが一緒に連携して、そして目ききを利用したさまざまな新しい分野への融資、こういうものを目指して頂きたいというわけであります。

一番下のところは、「個人向けの金融サービス」であります。これはやはり商品開発も含め、それから商品の個人への説明、こういうものを含めた形で個人に対してさまざまな金融サービスをしていくということであります。

最後、これをまとめましたのが、一番右側の列でありますが、復習いたしますと、「グローバルな金融サービス」、地域を考えた「ローカルな金融サービス」、それから「個人向け金融サービス」、この3つの柱をしっかりと金融機関に受けとめて頂き、それぞれの分野でビジネスをして頂きたい。

さらに、この中で一番下にありますが、「官民ラウンドテーブル」、こういうものを活用することが必要ではないか。ややもしますと、最近は官と民が非常に遊離しておりまして、いい意味での官民の「共働」がありません。アジアの中で見ますと、中国だけは完全に官と民と政が一体になってさまざまなビジネスをし、また、韓国もそういう形でやっているわけであります。そういう意味では、我が国におきましても、政、官、民、こういうところが一緒になっていい意味での協調により日本の金融サービスが海外でも展開できるようにするということが必要であると思いますので、最後のところはこういうラウンドテーブルをつくりながら率直な意見交換をし、その中から日本がどういうふうにやっていくべきか、あるいは地域の金融でどういうところが欠けているかということを議論しながらこの3つの柱を進めて頂きたいと思っております。

以上が「我が国の金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」の概要でございます。

続きまして、第2番目のワーキング・グループは「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」でございます。この進捗状況につきましては、グループの座長をして頂いております神田先生からご報告をお願いしたいと思います。

○神田委員

それでは、簡単にご報告させて頂きます。

前回の総会でもご報告させて頂きましたけれども、「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」というものは、本年1月27日に頂きました金融担当大臣からの諮問に基づいて検討を進めているところでございます。

その頂きました諮問は、第1に、「投資信託については、国際的な規制の動向や経済社会情勢の変化に応じた規制の柔軟化や一般投資家を念頭に置いた適切な商品供給の確保等」、第2に、「投資法人については、資金調達手段の多様化を含めた財務基盤の安定性の向上や投資家からより信頼されるための運営や取引の透明性の確保等」を図る観点からの検討ということでございます。

これまで8回開催いたしまして、ちょうど昨日、中間論点整理を取りまとめさせて頂きました。これがお手元に資料2として配付させて頂いております。

今後でございますけれども、この中間論点整理に基づきまして、さらに秋以降、ワーキング・グループを開催して検討を進めていくことを予定しております。秋以降のワーキング・グループにおきまして、重点的に議論を予定しているテーマを若干申し上げますと、投資信託につきましては、例えばですけれども、投資家が一定期間の累積損益を把握できるような通知制度を導入する、それから、販売時におけるリスク等についての情報提供を充実する、それから、一定の累計の投資信託につきましてはリスクに対する規制を検討するというようなことがあります。

それから、投資法人のほうですけれども、これにつきましては、例えばですけれども、ガバナンスを強化するための具体的な方策を導入する、あるいはインサイダー取引規制の導入、これは現在その対象になっておりませんので、インサイダー取引規制の導入ということを検討するというようなことがございます。ワーキング・メンバーの皆様方には、また秋以降、引き続き精力的なご検討をお願いしているところでございます。

これに対しまして、今回、中間論点整理の中で書かせて頂いておりますけれども、例えばということですけれども、投資信託の受益者による書面決議制度の見直し、その他のいわば効率的な投資信託運営のための規制の柔軟化、それから、投資法人につきましては資金調達手段の多様化、こういった事項につきましてはおおむねワーキング・グループのほうで意見の集約ができまして、それが中間論点整理に書かれております。

こういったことにつきましては、あと、それを具体化していくための作業が必要ですので、事務局において素案を検討して頂くことになっておりまして、その検討の結果を秋以降のワーキング・グループにおいてご報告頂くことを予定しております。今後、年末までに最終報告を取りまとめさせて頂き、制度整備の実施に向けた提言としたいと考えております。委員の皆様方におかれましては、今後ともご支援とご協力のほどを頂ければ大変幸いに存じます。

以上です。

○吉野会長

神田先生、どうもありがとうございました。

それでは、続きまして事務局から、前回の総会・金融分科会合同会合に諮問が出されました事項についてご報告がございます。

黒澤課長、お願いいたします。

○黒澤企画課長

企画課長の黒澤でございます。

それでは、お手元の資料3に沿いまして現状についてご報告させて頂きます。

資料3‐1でございますが、これは前回4月11日の総会におきまして大臣よりいただきました諮問でございます。2つ諮問を頂いております。銀行規制にかかわるもの、それから保険にかかわるものでございます。

この諮問を頂いた後、資料3‐2に参りますが、銀行規制につきましては、5月にワーキング・グループ、岩原座長のもとに新たに立ち上がってきております。現在までの審議状況をその次につけてございますが、今までのところ、2回開催されております。5月29日、6月25日ですが、1回目は総論的な話です。2回目、いよいよ各論ということで大口信用供与等規制のあり方についての議論が行われているところでございます。

続きまして資料3‐3、保険に関するワーキング・グループですが、メンバーにつきましてはご覧のとおりでして、座長は洲崎先生以下でこのように構成されております。

現在までの審議状況でございますが、こちらのワーキング・グループはヒアリングを中心に現在のところは審議を進めております。第1回目は主に業界からの説明、第2回目は委員からの説明を頂いているということでございます。

いずれのワーキング・グループも、月1、2回程度のベースで現在審議を進めているという状況でございます。

以上でございます。

○吉野会長

ありがとうございました。

それでは、続きましてさらに事務局から、後ろのほうの資料の4のあたりからの資料になりますが、最近の金融行政をめぐる動向につきまして、特に最近注目されております欧州の債務危機、ユーロの危機、さらに金融円滑化法の出口戦略につきまして説明をして頂きたいと思います。

最初の欧州危機・ユーロ危機の関連に関しましては、油布市場分析室長からお願いいたします。

○油布政策課市場分析室長

市場分析室長の油布でございます。

お手元の資料、横長の資料4‐1に沿いまして欧州問題についてご説明させて頂きます。

1ページおめくり頂きまして、この1ページ目のグラフでございます。最近は一般紙にもグラフが出るようなことがございますけれども、ヨーロッパの周縁国と呼ばれるギリシア、ポルトガル、アイルランド、こうした国々の流通市場における国債利回りの推移でございます。ご案内のように足元ではギリシア国債は20%を超える状況であるとか、あるいはスペイン国債についても、一時7%を超えるというふうなことが報道される状況になっております。

しかし、少し中期的な期間でこれを見てみますと、実はこのグラフは、99年1月のところに縦の線を引いてございまして、2002年1月にももう1本線を引いております。つまり、ユーロが当初は抽象的な決済通貨として導入されたわけですが、さかのぼってその前の状況を見てみますと、実はこうした国々の国債の流通市場での評価は必ずしも高くない状況でございました。それが、ユーロがまず抽象的な決済通貨として発足し、それから紙幣も2002年1月に実際に流通が開始される、こういう状況のもとで、こうした国々の国債の流通利回りが一挙に収束いたしました。例えばヨーロッパですと、通常最も信用性が高いのはドイツ国債と言われることが多いわけでございますが、こういうギリシアやポルトガルといった国もドイツ国債と同じ金利で国債が発行できるようになったということでございます。ある意味、国債の発行が容易になったということで財政規律の緩みにもつながったという指摘もされております。

また、おそらく市場の側から見ましても、ユーロに対する評価、ややこれが──これは後知恵ではございますけれども、行き過ぎていたというふうな面もあったのかと思います。こうした国々の国債がその国の信用度や財政状況にかかわらず全く同じに収束していたということでございます。

次のページ、2ページ目でございますが、これは少しまた中長期的なお話を幾つかさせて頂きます。

左側がユーロ圏諸国の資本収支でございます。上にある国々、ポルトガルやギリシアといった国は、99年のユーロ導入以降、ずっと資金を取り入れる、外国から資金を借り入れる側になっていて、その傾向が、かなりリーマンショックまでは加速していたと。リーマンショック後は、一転してこの資金の流入が細ったということでございます。資金の出し手は、例えばドイツやオランダといった財政状態の健全な国、こうした国々が資金の貸し手に回っていた、こういった国々の資金が周縁国に流入して、不動産市場など、高いリターンを求めていろいろなものに投資マネーとして回っていったという状況が見てとれます。

右側が、それとある意味裏表がございますが、貿易収支でございまして、ユーロ導入後、オランダ、ドイツといった国々は貿易黒字を拡大させていく一方、スペイン、ポルトガルといった国々は貿易赤字が膨らんでいったということです。なお、2008年以降、こういった国々は、貿易赤字が若干改善しておりますが、これは輸出が増えたというよりも、内需の減少で輸入が減ったということではないかと見ております。

3ページでございますが、こうしたユーロ導入後の資金の流入が周縁国にどういう経済状況の変化をもたらしたかということでございます。

左側が住宅価格でございまして、99年を100として指数化しております。ご覧になっていただいておわかりになるとおり、スペイン、アイルランドという国では、指数が260ぐらいまで伸びておりまして、足元でもスペインはまだ200を超えている状況でございます。アイルランドのように住宅価格の調整がわりと進んだ国もあれば、スペインのグラフについてはまだまだ下がる余地があるというふうな見方をするエコノミストの方もいらっしゃいます。

こういった、一種のバブル的な状況のもとで賃金も上昇しております。右のグラフでございますが、これも2000年を100とした指数でございますが、こうした国々の賃金は150を超える状況まで高くなっている。これはひるがえって申し上げると、国際的な競争力を一種弱めるような面もございます。また、一度上昇した賃金については、南欧諸国の一部にはなかなか制度上の問題から賃金の引き下げが難しい国もあると聞いております。

4ページでございますが、左側がこういった国々の単年度の財政収支でございます。そもそもユーロ導入時の一種の約束としては、単年度財政収支はマイナス3%以内におさめるということになっていたわけでございますが、やはりリーマンショックのあたりから急速に財政状況が悪化しています。それから一部の国、スペインやアイルランドといった国、それから実はキプロスもそうでございますが、そういった国は、実は2006年ごろまではどちらかというと健全財政であったというふうな状況が見てとれます。他方で、ギリシアなどにつきましては、これは紫色の線でございますが、むしろユーロ加入当初からわりと財政規律が緩い、そういう状況で運営がなされてきたことがわかります。

右側は、不良債権でございます。これも、スペインの不良債権が、今、注目されておりますが、足元、8.8%といった水準まで不良債権比率が上昇しているという状況でございます。

5ページをおめくり頂きまして、これは今回のユーロの問題についてはもちろんいろいろな切り口、いろいろな捉え方があると思いますが、一つの捉え方として、左側に概念図を書かせて頂いております。

大きく分けましてブルーの循環と、それから緑色の矢印の循環と、2つに分けてご説明できるかと思っております。1つが実体経済との関係でございまして、これはブルーの矢印で示してございます。「財政赤字の拡大」が左端にございますが、ここで財政赤字の拡大、一旦これは注目を浴びるという形になりますと、流通市場で国債価格が下落する、金利も上昇するわけでございます。国債発行コストの上昇につながりまして、ごく単純に申し上げれば、国債費の増加による財政悪化が懸念される。あるいは、あまりに国債発行コストが多くなりますと、そもそももう市場調達自体を断念せざるを得ないというような場合もあります。現在、経験則的には足元ヨーロッパでは、7%を超える水準がずっと続くと市場調達が困難になるという見方もされているところでございます。

したがいまして、そうならないようにということで、緊縮財政、これは必要なことではございますが、それを猛烈に加速する必要が出てくる、マーケットにそういう対応を迫られるということでございますが、その中で実体経済が悪化していく、失業率も上昇し、かつ税収が今度は減少する、あるいは失業給付が増えるというようなことで、それがまた財政赤字のほうに戻ってくるという悪循環が1点でございます。

この点につきましては、先日のEUサミットで例えば1,200億ユーロの資金を成長促進のために新たに振り分けようというふうなことが合意されております。このブルーの循環を何とか遮断しようという動きではないかと思います。

それから、巷間報道されておりますユーロ共同債というアイデアもございまして、もちろん現在、実現のめどが立っているわけではございませんが、これについては、この上のほうのループを遮断して、実体経済と財政赤字の間を遮断しようという試みではないかと思います。

他方、銀行につきましては、グリーンのラインでございます。国債価格が下落するということで、銀行は国債を保有しておりますが、その財務基盤がやや懸念を持たれる状況になる。他方で、そうした銀行は下落リスクのある国債を引き続き購入するようなことができないというのが上の矢印でございます。さらに、その下の矢印でございますが、そういった状況で財務基盤を強化しなければいけないということで、国内銀行は「貸し渋り」、「貸しはがし」というふうにご説明するのが一番簡単かもしれませんが、いわゆるデレバレッジを行って、それが実体経済をさらに悪化させる。それがまた不良債権化して国内銀行をさらに傷める。国内銀行が傷んだ結果、自力で資本調達ができなければ、公的資本増強が必要になるわけでございまして、それがこの緑の左に伸びている矢印でございます。

次の1ページは、説明を割愛させて頂きます。

7ページでございますが、これは主要国の株価の推移や国債利回りをとったものでございます。昨年夏以降、急速に市場にも動揺をもたらすような形で欧州問題が発展してきたということでございます。

次に8ページをおめくりいただきたいと思いますが、先ほど申し上げた欧州の金融セクターの同様の件でございます。

左側にとっておりますのは、ブルーの線がユーロ圏の全般的な株価指数でございます。他方、オレンジ色の線がその中で銀行業だけをとった株価指数でございまして、全体的に株価が下落する中で特にやはりヨーロッパでは銀行業株価が下がっているのが見てとれると思います。

ご参考で日本の株価を真ん中に小さく入れておりますが、日本の場合はむしろ逆になっておりまして、株価はもちろん欧州危機で下落しているわけでございますが、むしろ銀行業株価は相対的に堅調であるという状況でございます。

右側が、ヨーロッパの銀行の資金調達の状況でございます。一時、相当資金がとりづらい状況がございまして、これは結果的に中央銀行の流動性供給によって、現在、その懸念はやや後退しているということでございます。

最後に、10ページをご覧頂きたいと思います。

これは先週末のユーロ圏首脳会合の声明文の大意でございます。声明文の第1行目に書かれておりますことが、銀行セクターとソブリン、すなわち政府債務との間の悪循環を断ち切ることが喫緊の課題であるという内容でございます。以下、3つほど大きなポイントを掲げてございますが、この銀行セクターとソブリンとの悪循環を断ち切るための方策が合意されたというのが先週金曜日の状況でございます。

以上でございます。

○吉野会長

油布室長、ありがとうございました。

それでは、引き続きまして金融円滑化法の出口戦略などにつきまして、監督局の長谷川総務課長、お願いいたします。

○長谷川監督局総務課長

監督局総務課長の長谷川でございます。よろしくお願いいたします。

資料は4‐2「金融円滑化法の出口戦略等」という資料がございます。表紙をめくって頂きまして1ページでございますが、金融円滑化法は、皆様ご案内のとおり債務者から条件変更の申し出があった場合に、これに対して対応する努力義務を金融機関に課したものでございまして、21年12月から施行されているものでございます。

その実施状況でございますが、下の棒グラフがございますけれども、21年12月から、これは累計で条件変更の状況を足し上げたものでございますけれども、一番右側の足元24年3月末で見ていただきますと、申し込みが累計で3,087とございます。308万7,000件、これに対して実行が284万9,000件ということで、実行率は9割を超えております。そういう意味では、条件変更の取り組みそのものはほぼ定着したのかなと見ておりますが、ただ、その中身を見ますと、いろいろ問題がございました。それが2ページでございます。

2ページは、昨年12月に円滑化法の期限を最終延長するということを金融庁として意思決定した際に公表した資料でございます。

「基本的な考え方」の2つ目の矢じりを見ていただきますと「一方で」とありますが、まず、貸付条件の再変更、再リスケが足元増加している。幾つかの金融機関からヒアリング等をいたしますと、足元の条件変更で言いますと、ほぼ8割以上が再リスケの債務者であって、新規の条件変更の債務者は2割未満ということで、限定的でございました。

また、貸付条件の変更等を受けながら経営改善計画を策定されていない中小企業者も一定程度いたということで、いわば経営改善計画が策定されないまま何度も条件変更だけ受けているという債務者が一定程度いたということでございます。

こうした状況を踏まえまして、その下の矢じりですけれども、金融規律の確保を図りつつ、金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮を行いながら、中小企業者等の真の意味での経営改善につながる支援を強力に推し進めていく、これを「出口戦略」と呼んでおりますけれども、そういった環境整備をこの1年で行っていこうということを決定したわけでございます。

その中身は下にございますけれども、その中で、一番下の「3.中小企業者等に対する支援措置」、これを具体的に肉づけしましたのが、4月20日の「政策パッケージ」でございまして、これは後ほどご説明いたします。

次に3ページでございますが、では、そういう中小企業支援の対象となる中小企業のボリューム感、どのくらいあるのだろうかということでございますけれども、先ほどご説明しましたように、足元の条件変更の件数は累計で約284万件でございますが、これは先ほど申しましたように、繰り返し条件変更を受けている債務者については、その都度、1件1件カウントしておりますし、複数の債権者から条件変更を受けている場合も、これも1件1件カウントしておりますので、実際の債務者数は、推計ではあるのですけれども、大体30万から40万社くらいではないかと見ております。日本の中小企業全体で約400万強と言われておりますので、それの1割未満、1割弱ぐらいかと見ております。それから、この3、40万がすべて問題があるとは考えておりませんで、この中で、先ほど言いましたように改善計画ができていないような債務者、したがって不良債権になっているような債務者は、これも推計ではありますけれども、5、6万社ぐらいではないかと見ております。

その5、6万社がまさにこの支援の特に対象になってくるというわけでございますけれども、それの担い手をイメージしたのがこの資料でございますが、富士山のような形になっておりますけれども、これの大層はやはり金融機関自身がみずから経営改善の支援を行っている。場合によっては、その再生の可能性の見込みがない場合には、転業の支援ですとか、場合によっては廃業支援ということも含まれると思いますけれども、いずれにしても金融機関みずからがまずは取り組む。その中で債権者調整が必要になってくる場合には各県の中小企業再生支援協議会を使うとか、あるいは県をまたがる場合ですとか再生の困難度が高いような場合については、さらに企業再生支援機構を使っていく、こういった外部機関と連携しながら中小企業の再生支援を行っていくというイメージでございます。

4ページは、条件変更と不良債権の関係を念のために整理したものでございますけれども、左のチャート図をご覧頂きますと、基本的に円滑化法に基づきまして条件変更を実施しますと、これは貸出条件緩和債権ということになって、原則として不良債権になります。債務者区分は「要管理先」以下ということになります。

ただし、基準金利というものがございまして、これは採算がとれている金利ということですが、採算がとれている金利をもらっている場合には、これは不良債権にはなりません。それがとれていない場合には原則として不良債権になりますが、さらにその下、経営改善計画がつくられている場合、これは正式には実現可能性の高い抜本的な再建計画、略して「実抜計画」とも呼んでおりますけれども、この実抜計画がある場合にはやはり不良債権にはならない扱いになっていまして、実抜計画がないものについて不良債権になる。これが、先ほど申しました大体5、6万社というふうに推計しているところでございます。

次に5ページでございますが、再生支援を行う場合に、債権者調整が必要になってくる場合がございますけれども、その制度としてはいろいろなものが用意されておりまして、法的整理から私的整理、全国版のものから被災地に限定したもの、また、私的整理について言うと、左から右に行くにつれて単なる債権者調整だけではなくて、助言の機能ですとか、債権の買い取りの機能ですとか、出資の機能ですとか、そういった機能が付加されているような制度が整備されております。そういった、さまざまなツールを最適に組み合わせながら再生支援を行っていくことが必要かと考えております。

そうしたことを受けまして、6ページでございますが、先ほど申しました4月20日に公表しました「政策パッケージ」の骨子でございます。本文は8ページ以下でございますが、この骨子に基づきまして簡単にご説明いたします。

これは企業再生支援機構を所管します内閣府、それから金融機関を所管する金融庁、それから中小企業再生支援協議会を所管する中小企業庁、三者連名で公表したものでございます。

まず大きく1番目は、やはり金融機関みずからによるコンサルティング機能の一層の発揮が重要と考えておりまして、5月から6月にかけまして各財務局において各金融機関に対して出口戦略ヒアリングを実施いたしました。その中で、中小企業に対する具体的な支援方針や取り組み状況などを確認したところでございます。

また、2つ目では、企業再生支援機構や中小企業再生支援協議会のそれぞれの機能の強化、さらには連携の強化ということを考えております。

まずは機構ですけれども、専門人材を拡充したり、各県の協議会との円滑な連携を深めるために企画・業務統括機能を強化したり、連携窓口を設置するなどの組織改正を行っております。

また、中小企業の実態に合わせた支援基準の見直しを考えておりまして、例えば従来、企業再生支援機構の基準ですと、有利子負債のキャッシュフローに対する倍率が3年以内に10倍以下にしなければならないという基準があったわけですけれども、これはなかなか中小企業にとっては厳しいということで、この10倍以内に抑えるのを5年以内に延長する方向で、今、検討しております。

また、資産査定、デューディリジェンスに係る手数料の負担軽減なども検討しております。

また、各県の協議会については、再生計画策定支援を迅速・簡易に行う方法を確立いたしまして、標準処理期間を2カ月に設定して、1年で3,000件程度を実施することを中小企業庁としては考えているようでございます。

また、専門人材の確保とか人員体制を大幅に拡充して、相談機能も充実していくということを考えております。

また、右上の(3)「機構・協議会の連携強化」ですけれども、案件の相互仲介ルールを策定したり、中小企業の経営状況の把握・分析や支援の手法等に係る改善とか指針について共働で策定するとか、それから各県の協議会に対する相談・助言機能を企業再生支援機構が提供していくということで、この企業再生支援機構のいろいろなノウハウ・知見を各県の協議会に均てんしていくということを考えております。その他、専門人材をプールして紹介体制をしていくとか、あるいは連携会議を設置する。

3番の「その他」のところでは、各県においても金融機関とか、実務家、専門家、中小企業関係団体、国、自治体等で構成する「中小企業支援ネットワーク」を構築したり、あと、民間の事業再生ファンドの設立を促進しまして協議会と連携していく等々の項目を考えておりまして、現在、これを順次、具体化しているところでございます。

7ページは、それを図式したものでございます。

8ページ以下は本文となります。

以上、簡単ではございますが、私からの説明を終了させて頂きます。

○吉野会長

それでは、ここで大臣と政務官はちょっと時間になりましたので、ご退席されるということでございますので、きょうはどうも諮問をありがとうございました。

(松下大臣・大串政務官退室)

○吉野会長

副大臣は引き続き参加して頂けるということでございます。

それでは、ただいまのご説明に関しまして、何かご質問がございましたら、いかがでございましょうか。

では、河野委員、どうぞ。

○河野委員

今ご説明いただきました中で7ページの表なんですけれども、その中で真ん中あたりの「中小企業再生支援協議会(各都道府県)」で「専門人材の確保・人員体制の拡充」ということは何度か先ほどお話が出たんですけれども、ここにおける「専門人材」というのは、都道府県、要はこれはどういう人材──公務員の方ですか、それともボランティアの方ですか、それとも企業に属する方なんでしょうか。聞きたいことは、「専門人材の確保」ということで言えば、どこから持ってくるのかということも気にしておりますし、実際に目ききを含めて具体的にパワフルな方がお見えになれるだろうかというのと、こういう計画なので、人だけがついて組織ができてしまっても非常に無駄な人件費になってしまうというイメージもちょっとありますので、そこらのところを教えて頂ければと思います。

○吉野会長

長谷川総務課長、よろしいでしょうか。7ページの図のところですけれども。

○長谷川監督局総務課長

専門人材は、基本的には銀行員、あるいは銀行のOB、場合によっては法曹の関係者、あるいは公認会計士なども念頭に置いていると思います。

○河野委員

そこは雇用というのか、賃金はだれが、どこが払うというものですか。

○長谷川監督局総務課長

これは中小企業庁の所管の予算にはなると思いますけれども、中小企業再生支援協議会の費用が何らかの形で国や県の補助が出ていると思いますけれども、その協議会から支払われるということになるかと思います。

○吉野会長

河野委員、いかがですか。よろしいですか、それで。

○河野委員

すみません、もう一つだけ同じ質問で、これは総数としては人員のイメージは、ではどれぐらいというふうに、予算のことも含めてイメージされているのでしょうか。

○吉野会長

長谷川課長、お願いいたします。

○長谷川監督局総務課長

予算の規模でしょうか。

○河野委員

人数を含めた、これに該当する予算ですよね。

○長谷川監督局総務課長

具体的な人数をどの程度増強していくかについては、ちょっと中小企業庁の所管になりますので、私は今、手元にないものですから、後ほどご説明させて頂きたいと思います。

○吉野会長

ありがとうございます。

では、家森委員、どうぞ。

○家森委員

2つほど教えて頂きたいのですけれども、1つは、最後の長谷川さんのご説明に関連するところです。出口ヒアリングをされているということも含めてなんですが、吉野先生からご説明頂いた「我が国金融業の中長期的な在り方について」の19ページでも指摘していたように、昨年来、「資本性借入金」の積極的な活用を促していこうということになっておりましたけれども、これについて個別の金融機関のレベルでどのような取り組みが行われているかの現状を教えて頂ければというのが第1点目です。

それから2つ目は、いろいろなところで金融円滑化法後の世界を考えると、やはり不良債権化する企業が多く出てきて、それに対して一部の金融機関が十分対応できないのではないだろうかという心配が言われることがあるんですけれども、そういう点についてもヒアリング調査等から何かわかることがございましたら教えて頂きたいということです。

○吉野会長

では、お願いいたします。どなたがよろしいですか。

○桑原検査局長

検査局長の桑原でございます。よろしくお願いします。

まず、「資本性借入金」でございます。「資本性借入金」については、その積極的な活用を図るために、まず要件を明確化いたしまして、それを金融機関はじめ各方面に周知活動を行ったところです。それで、今のところ、徐々に実績が出てきつつあるんですけれども、今、集計中でございますので、それがある程度まとまったところでまたご報告をさせて頂ければと思いますが、特に被災地等で一定の数が出てきているというふうには聞いております。改めてまとまったところでご報告させて頂ければと思います。

○吉野会長

円滑化法の不良債権に関しまして。

○長谷川監督局総務課長

まず、出口戦略ヒアリングは、各財務局で6月末いっぱいかけましてやっているところでございまして、その結果がまだちょっとこちらに集計されておりませんので、その状況がまたわかり次第、ご説明させて頂きたいと思います。

また、対応できない金融機関がいるのではないかという点につきましては、基本的にこの中小企業の再生のいろいろな努力は、それぞれの金融機関の規模とか特性に応じたものであって、全く構わないと思っておりますので、特にむしろ信金とか信組のような下位業態については、それは円滑化法の前からそれぞれ、それなり、信金、信組の業態に合った形での中小企業再生の努力はされておられたと思いますから、その努力をさらに進めて頂ければよろしいのではないかと思っております。

○吉野会長

では、大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

欧州の債務危機の話に関連してちょっと2点ほどお伺いしたいのですが、1つは、先ほどご紹介があったとおり、欧州では銀行に対する公的な資金の注入ということが国を超えるような枠組みの中で行われているわけですけれども、いわゆる2007年、8年の世界金融危機を境に、アメリカではToo Big to Failということはいかんということが強く言われて、公的資金による銀行救済については極めて否定的な制度へ移行したわけですが、欧州で行われていることを日本の政策的な観点からどのようにごらんになっているか、また日本としても、もちろん危機が起きないに越したことはないわけですが、遠い将来、そういうような危機が起きた場合に備えた何らかの枠組みの検討とかというものを必要と考えておられるのか、あるいは逆にもうToo Big to Failはいかんということで日本では粛々と破綻処理をするのだという考え方がいいと考えておられるのか、その辺、ちょっと感触だけでもどなたか教えて頂ければというのが1点でございます。

それからもう1点は、欧州では、ご紹介頂いたいわば緊急対応的措置のほかにも、例えば空売り規制等々、もう少し中期的な枠組みの規制の見直しも進んでいるようでございますが、こういったものが日本の今後の制度改正に与える影響といいますか、参考になると見ておられるのか、ちょっと欧州は、今、大変な状態なので、やや日本とは文脈が違ってあまり参考にならないというような見方がいいのか、その辺ももしご意見があれば聞かせて頂きたいと思います。

○吉野会長

まず最初にToo Big to Failはどなたがよろしいでしょうか。

○森本総務企画局長

大崎委員ご指摘のリーマンショックの反省に立って金融機関の破綻処理のあり方をもうちょっと考えるべきではないかという議論が欧州でかなり進んでいるというのは、我々も注目しております。

それで、これについては、国際的にかなり議論がある程度行われておりまして、その結果が、例えばFSBのKey Attributeというような形でまとめられております。我が国においては、皆様ご承知のように金融危機対応のための制度は、リーマンショックより前にバブル経済崩壊のときにかなりのものは整備されていると我々としては考えておりますが、一方で、特に市場に悪影響を与えない形で金融機関を秩序ある形で処理するといった点については、我が国の従来の仕組みとちょっと新たな視点がそういう意味では加わっているという認識は持っておりまして、こうした欧州を中心とする国際的な金融機関、Too Big to Failにならないように、あるいは公的資金をむやみに注入することにならないようにといった制度整備の議論に我々は注目して、日本として何か対応しなければいけないのかどうか、これから注意深く検討していきたいと考えております。

○吉野会長

それから、もう一つの欧州のさまざまな規制が、今後、日本にどういうふうに影響しそうかというのはどなたが答えたらよろしいでしょうか。森本局長でよろしいですか。

○森本総務企画局長

空売り規制については、大崎委員はよくご存じのとおりだと思いますが、我が国の規制は、リーマンショック後、緊急のものとして導入されてきておりまして、一方で、諸外国においては、かなりリーマンショック後は空売り規制についてはこれも議論が進んで、米国においても、欧州においても、制度の基本的なあり方がある程度煮詰まってきているというか、かなり結論的なものが出てきておりますので、我が国においても、これはちょっとマーケットの情勢もにらみつつ考えなければいけないわけですが、現在の緊急措置の延長の繰り返しということだけでなくて、そろそろ中長期的なあり方を検討していかなければいけない時期だと考えております。

○吉野会長

ほかにございますでしょうか。

では、川波先生、どうぞ。

○川波委員

特に質問ということではございません。感想を2点ほど申し述べたいと思います。

1点は、先ほど油布室長から大変わかりやすいご説明、ありがとうございました。9ページのところの国際与信の表ですけれども、全体としてアジア向けの与信が、6月末、12月末で見ると減少している中、日本は他の国に比べて非常に伸びているということがございますけれども、日本の金融機関が与信を伸ばしているということは、欧州系の金融機関がややそのスタンスとして消極的になっている反面、日本は非常に積極的ということなんですが、これはやはりインフラ・ファイナンスであるとか、ホールセール向けがかなり伸びていると思うんです。アジアの将来について、もう既に数年前から言われていることですが、やはり中間層の拡大というものをにらみますと、これからリテールにおいては、保険会社さんなどはかなり積極的だと思いますけれども、バンキングのほうでもどうリテールレベルで伸びていくかということが一つの課題として私自身も考えてみたいと思っているということが1つです。

それから、もう一つは、やはり先ほど吉野座長が概念図をご説明くださった、こういう形での日本の金融資本市場の改革と申しますか、それがまさに日本から資本が出て行くだけではなくて、日本に資本を引き寄せていくというような形の好循環をつくり出していく上で極めて重要であるということを改めて感じましたので、さらに今後、議論を続けていきたいと思っております。

以上でございます。

○吉野会長

ご意見としてリテールはなかなか現時点で難しくて、欧米の金融機関でも数社しかうまくいっていないところがありますから、ホールセール、リテール、両方というのはご意見頂き、ありがとうございます。

ほかにございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

先ほど、河野委員から、専門人材のところで箱だけつくって中身がないといけないという、非常に私も同じ感想でありますので、ぜひしっかりした目ききと、それをうまく再生できる人材を中に入れて頂ければと思いますし、それから家森先生のローンとキャピタルのところも両方やっぱりできる機能が必要だと思います。

それでは、今日は大臣、それから副大臣、政務官にお越し頂きまして、総会、それから金融分科会の合同部会を開催させて頂きました。副大臣、最後までご出席頂きまして、どうもありがとうございました。

それでは、本日の議事の模様につきましては、事務局から、後刻、記者会見をさせて頂きたいと思っております。今後の日程などにつきましては、また事務局からご連絡させて頂きたいと思います。

本日はお忙しい中をご出席頂きまして、どうもありがとうございました。これで終了させて頂きたいと思います。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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