金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第7回)議事録

1.日時:

平成24年6月1日(金曜日)14時00分~16時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

○横尾企画官

皆様、ご多忙のところ、まことにありがとうございます。資料の確認をさせていただきます。今回は、事務局説明資料が1冊、それから参考資料といたしましてメンバー名簿を配付させていただいております。それから、オブザーバーの不動産証券化協会様より、書面にての意見の提出がございましたので、これもあわせて配付させていただいております。

以上、よろしくお願いします。

○神田座長

資料のほう、よろしゅうございますでしょうか。

それでは、時間になりましたので、始めさせていただきます。本日は、投資信託・投資法人制度の見直しに関するワーキング・グループの第7回目の会合ということになります。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただきまして、大変ありがとうございます。

お手元の議事次第にございますように、本日は、まず事務局から、今回の投資法人制度改革の方向性について、30分程度ご説明をいただきます。その後、それぞれの論点についてご議論をいただくという流れで議事を進めさせていただきたいと思います。

それでは、まず事務局からの説明をよろしくお願いします。

○横尾企画官

お手元の事務局説明資料に従いまして、ご説明差し上げたいと思います。1枚おめくりいただきまして、1ページ目、考えられる主な論点(投資法人)というページがございますが、こちらは当ワーキング・グループの第1回会合に事務局より論点メモとして提出させていただいた資料でございます。本日は、これに基づきまして、次の2ページ目にある事項、これについて一つ一つ、できるだけ効率的にご説明差し上げたいと思っております。

ということで、まずは資金調達手段・資本政策手段の多様化という論点から、考えられる手段の具体的な検討をご説明申し上げたいと思います。まず3ページ目でございますけれども、今回こういう検討を行うに至った背景でございます。現行制度におきまして、投資法人は導管体として制度設計されておりまして、簡素な仕組みが前提ということになっております。簡素な仕組みということで、全業務の外部委託を義務づけられておりますし、従業員の雇用も禁止されているという状況でございます。こうした箱に許されている資金調達手段、あるいは資本政策手段というものは、一般の株式会社に比べれば限定的なものでございます。資金調達手段については、公募増資、第三者割当増資、それから借入金、さらには長短の投資法人債ということになっております。資本政策手段について無償減資の規定がなかったり、あるいは自己投資口の取得も極めて限定的な局面でしか認められないといったような状況になっているわけでございます。

そうした中で、先般リーマンショックをはじめとする世界的な金融市場の危機的な状況が発生したわけですけれども、そうした混乱のもと、J-REIT市場に及んだ影響として、2点挙げられるかと思います。まず1点目は、金融機関の貸し出し姿勢が慎重化したということでございます。もともとJ-REITは満期の到来する負債の一部については借りかえて、それを繰り返しながら運営するという財務構造になっておりますが、一たんこうした市場の混乱が生じますと、金融機関の貸し出し姿勢が変化し、J-REITの資金繰りに大きな影響を与えてしまうということでございます。

もう1点は、投資家の投資姿勢が萎縮したということでございます。本来であれば、J-REITは裏付け資産がちゃんとございますので、その裏付け資産である賃貸不動産からのキャッシュフロー、これ自体が価格を左右するということであれば、投資口価格は安定しているわけなのですけれども、上場している以上、金融資本市場の影響を受けざるを得ず、したがって投資口価格のボラティリティも拡大したという状況でございました。

こうした中で、破綻、資金繰り逼迫、物件取得の低迷、あるいは投資口価格の低迷といった、制度創設時には必ずしも十分想定しなかった問題が発生しているのかなと思います。

これに向けた対応として提案させていただいておりますのが、資金調達手段の多様化・資本政策手段の多様化ということでございます。ただ、検討にあたっては、以下の投資法人の特性を踏まえる必要ということで、簡素なガバナンス構造、導管体としての性格、投資家間の公平性、こういった基本的な特性を踏まえた上で、どう多様化していくかというご議論をいただければと思います。

資料4ページ目以降、具体的な資金調達手段・資本政策手段の説明でございます。4ページ目、まずライツオファリングでございます。こうした要望が上がってきました背景として、右側の現状と課題に書いておりますように、リーマンショック以降のディスカウント増資の経験、あるいは投資口価格の低迷といった中で、投資口の希薄化ということについて、投資家からの懸念が上がっているという状況かと思います。したがいまして、公募増資のみならず、第三者割当増資すらなかなか困難な状況になっているという指摘がございます。

これを解消するための手段として、ライツオファリングということが1つ考えられるということでございます。そもそもライツオファリングとはということでございますが、既存投資主全員に新投資口予約権(ライツ)を無償で割り当てることによる増資手法ということでございます。その持ち分に応じてライツを割り当てられた既存投資家は、以下の3つの手段でそのライツを処分するということになろうかと思います。まず1つ目は、投資法人にそのライツの予約権を行使するという形で金銭を払い込み、投資口を取得するというマル1のチャンネル。それから市場にてライツを売却するというマル2のチャンネル。3点目としては、投資法人へ譲渡するというマル3-1のチャンネルがあろうかと思います。

他方、投資法人側からこのチャンネルを見ますと、まずマル1はそのままダイレクトに資金調達をするわけなんですけれども、投資家から譲り受けたマル3の投資口、これを証券会社に譲渡します。これによって証券会社は受け取ったライツを行使して、一たん投資口を取得する。そのかわり資金を投資法人に払い込むということになります。一方、証券会社は取得した投資口を上場市場で売却することによって資金を回収する、こういう仕組みになっているわけでございます。

この効果でございますが、先ほど申し上げましたように、投資持ち分割合に応じてライツというものが割り当てられ、それを処分することで何らかの投資口の増分もしくはそれにかわる対価を得るということができますので、既存投資主の希薄化懸念の緩和にある程度資するのではないか、既存投資主の公平な取り扱いに配慮されている増資手法ではないかというご指摘がございます。

他方、投資法人側におきましても、信用収縮時において円滑、確実な資金調達を実現し得るということで、このような制度を我が国においても投資法人について導入すべきという意見がございます。

留意点でございますけれども、先ほど申し上げましたように、ライツを割り当てられた投資家は、マル2のチャンネル、市場での売却ということが対応の仕方として1つあり得ますので、それができるためにも金融商品取引市場においてJ-REITのライツを上場するための諸規定といったものが必要になってこようかと思います。

続きまして、5ページでございます。次の手段として転換投資法人債ということが考えられるかと思います。転換投資法人債の概要でございますが、保有者がみずからの判断により、一定期間内にあらかじめ定められた条件で、投資法人債から投資口、デットからエクイティへ転換することができる投資法人債ということでございます。それぞれ投資家が配当もしくはキャピタルゲインを重視するのか、あるいは債券という形で利息を得ることを重視するのかということによって、その処分の仕方が変わってくるということでございます。

これを投資法人側から見ますと、発行投資法人側の視点というところでございますが、発行時点では投資法人債でございますので、負債の一部ということになりますが、投資家の投資口への転換ということが進めば、徐々に負債が減って純資産が増加していく。したがって、転換が進むことでローン・トゥ・バリュー、借入比率の低下に寄与するということでございます。

また、転換にあたってのオプションがつきますので、投資法人債の発行時点でも金利を低く抑えられるということで、たとえ転換が進んでいなくても、金利負担の低減効果というものが期待できるのではないかという指摘もございます。

他方、留意点としては、既存投資主の将来の収益・希薄化の程度の予測が困難になるということでございます。先ほど申し上げましたように、投資家のそれぞれの選好に応じて転換は進むわけですけれども、それによっては既存投資主の配当を受け取る程度というものも変わってきます。そういった意味で、既存投資家の予測可能性というものが一定程度制約されるというおそれがございます。

また、2点目の留意点で書いておりますように、発行体に大幅な裁量を認めると、市場の不安定化を招くおそれがあるという指摘もございます。例えば、権利行使価格修正条項、これは投資口価格が下落した場合に、転換価格それ自体も連動して低下するといった転換価格の修正を行う条項でございますけれども、そういった条項がついた投資法人債は、投機的な動きにさらされやすいという指摘がございます。すなわち、転換価格を低下させることを意図して当該投資口の空売りを行い、投資口価格が下がったところで転換するということで、さやを抜くといった投機的な動きを誘発しやすいので、かえって市場を不安定化させるのではないかという指摘もございます。

次、6ページ目でございます。3つ目の資本調達手段、種類投資口ということでございます。これは株式会社の種類株と同様、左側の図にありますように優先投資口であるとか、劣後投資口といったような、配当とか残余財産の分配等について、優先劣後構造をつけた投資口を認めてはどうかということでございます。現在こうした投資口を種類化するということは認められていないわけですけれども、それを行うことによって、導入効果に書いてありますようなさまざまなリスクを選好する投資家を呼び込むことが可能になるのではないか。普通投資口の公募増資では、なかなか資金調達に応じてくれない投資家も、例えばほかの種類投資口であれば応じるといった形で、資金調達の道を開く期待があるのではないかとも考えられます。

他方で、留意点といたしましては、確かに会社法では剰余金の配当について種類株式が幅広く認められているわけなんですけれども、投資法人という非常に簡素なガバナンス構造であること、あるいは導管体であるというようなことを踏まえると、果たしてこうした種類株的な資金調達を行うことがふさわしいかどうかという論点があろうかと思います。

さらに2点目として、こうした優先劣後構造は、既存投資主あるいはほかの種類株主との利益相反という問題が非常に色濃く出てくるかと思います。先ほど申し上げましたような簡素なガバナンス構造ということでございますので、その利益相反の問題をどう解決するかということが1つ論点としてあろうかと思います。

次に、7ページ目でございます。ここから先、必ずしも資金調達手段というわけではございませんが、J-REITが財務戦略を考えていく上での資本政策手段としていろいろなものが考えられるのではないかということでございます。その第1点目が無償減資ということでございます。無償減資とは、投資法人財産を減少させずに、出資総額を減少させる方法ということでございます。こうしたことが現状認められていないわけですけれども、現状どんな不都合が生じ得るかというと、不動産市況の低迷でJ-REITの保有物件も評価額が低下してきているという状況で、例えば、これが低下を続けて、減損損失の計上といったような事態になりますと、多額の損失をJ-REITが計上するわけなんですけれども、導管体としての性質上、内部利益の蓄積は皆無でございます。したがって、生じる利益で当該損失を解消するということには長期間が必要でございます。

そんな中でも、毎回上がってくるキャッシュフローを配当として投資家に分配するということになりますと、原則として利益超過配当(出資の払い戻し)に該当するという状態が起き、これが固定化するということになります。

この点を左側の図でもう少し説明させていただきますと、今、申し上げましたような減損をはじめとした多額の当期までの損失を抱えている状態のバランスシートがn期でございます。こうした中で利益が発生いたしますと、n期の左側、当期までの損失の一部を圧縮するということにはなりますけれども、たとえそれを配当という形で投資家に分配しても、会計上は出資総額の一部が払い戻されたということになって、J-REITは上がってくるキャッシュフローを投資家に分配するということが箱の基本的な性格ですが、こうした会計上のミスマッチによって、利益が上がっても資本の払い戻しという扱いになってしまうという問題がございます。ねじれた構造になってしまうということでございます。

これは制度としてねじれた構造ということ以外に、今回、証券化協会様から意見書が出ておりますが、税会不一致の問題によって、投資法人に対して法人税がかかってしまう。しかも、それがスパイラル的にかかってしまう。しかも負の連鎖に入って、法人税の負担がかなり長期化してしまうという問題がございまして、これを解消するためにも、図の右側にございますように、一たんどこかの時点で当期までの損失を出資と相殺するといったような無償減資を認めるべきではないかという意見がございます。

こうしたことを行うことによりまして、先ほどのようないびつな構造を解消することにも資しますし、また、税会不一致による法人税の発生ということも解消されるわけでございます。

次に資料8ページ、自己投資口取得の問題でございます。これは資本政策手段の一環として投資法人がみずから発行した投資口を取得するということでございますが、その取得のチャンネルは市場から取得する、あるいは特定投資主から取得する、もしくは全投資主に申込機会を与えて、希望する投資主から取得するといった方法があろうかと思います。

いずれにしても、こうした自己投資口取得は法令上明確に禁止しているわけでございます。ただし、金融市場の動向が投資口価格に与える影響、これを緩和する手段として、現在各方面から導入の必要性が要望されているところでございます。

その導入効果でございますけれども、例えば減価償却費相当のキャッシュ、あるいは物件を売却した場合の簿価相当のキャッシュ、こうした手元余裕資金があった場合、適当な取得物件がもしないとすれば、資金を有効活用するための1つの手段として、みずからの投資口を取得するということが考えられるかと思います。こうしたことによって、流通する投資口数が削減されますので、一口当たりの配当金の向上にも役に立ちます。

さらに市場で言われていますのは、こういった制度を導入することによって、あるいはそれを活用することによって、市場に対して、投資口価格の割安を放置しないという一定のシグナリング効果が期待できるのではないか。さらに、そのことによって投資口価格が上昇すれば、その後の増資あるいは物件取得といったようなREITの本来の機能が復活するのではないかという指摘がございます。

留意点の1つといたしましては、REITはもともと利益をすべて配当として吐き出しております。したがいまして、残っているキャッシュというものはBS上は出資の一部ということで計上されているわけですけれども、その一部を自己投資口の取得にあてるということになります。しかしながら、株式会社と異なりまして、投資法人は配当可能利益を超えた配当、出資の払い戻しということがもともと認められておりますので、こうした意味からしても、自己投資口取得、その財源として出資の一部を使うということは、制度上整合的に導入可能ではないかと考えている次第でございます。

次に9ページ、今までご説明申し上げましたような資金調達手段、あるいは資本政策手段に係る投資主関与のあり方でございます。投資法人では「みなし賛成制度」というものがございます。投資主が総会に欠席する、あるいは議決権を行使しないといった場合でも、規約に定めを置いておけば、それは賛成したとみなすことができると法令上定められております。これは各投資主が、どちらかと言うと議決権の行使よりはリターンに関心を有する、したがって投資主総会への出席もそれほど期待できないという中で、投資法人の円滑な運営を進める上で必要だということで導入されているわけでございます。先ほどまでご説明申し上げましたいろいろな手段を導入するにあたっては、こうした「みなし賛成制度」自体を見直す必要はないかという論点をチェックする必要があろうかと思います。

検討の方向性として1つ考えられるのは、先ほど申し上げました投資主の特徴、これは資本政策手段をどう多様化しても、おそらくは変わらないものだと思われますが、であるとすると、「みなし賛成制度」が存在するということを前提に新たな資金調達手段がどこまで許せるかという形で検討を進めることが、1つ考えられるのではないかと思います。

したがいまして、「みなし賛成制度」のもとでは、先ほど申し上げましたような投資主の非能動的な姿勢によって、投資家保護の観点から問題となるような決議が可決されるおそれがないわけではございませんので、投資主間の利益相反性の高い資金調達手段、こういったものに対しては慎重な検討が必要とも言えるかと思います。

また、これとは全く別の視点でございますけれども、投資主によるガバナンスを強化するため、投資口発行差止請求制度を検討してはどうかというご指摘もございます。現行投信法上は、会社法の中にあります募集株式の発行等をやめさせることの請求というものの準用規定を置いてございません。したがって、増資条件が公正でない場合に、増資の差止請求というものを、会社法にあるような条文を根拠にするということがかないません。

実務の世界でどうなっているかと申し上げますと、会社法360条の株主による取締役の行為の差止め規定について、その準用規定は投信法にございますので、裁判所が取締役の行為の差止めという形で投資主の差止請求を認容した裁判例がございます。有識者からは、この種の事案は、株式会社であれば会社法210条で差止めるのが普通であって、会社法360条による差止めというというのは、そういう事例は見当たらないとのご指摘をいただいております。

したがいまして、投資主関与のあり方を見直す際には、こうした会社法210条相当の準用規定を置き、投信法において投資口の発行差止請求も可能とするということが1つ考えられるかと思います。

次に10ページ、簡易合併手続きの見直しでございます。吸収する側の投資法人に割り当てる投資口が、存続法人、すなわち吸収する側の法人の発行可能投資口数(A)から、実際発行されている投資口(B)を引いたものの範囲内であれば、吸収する側の投資法人においては投資主総会での決議は要らず、役員会での承認決議で足りる簡易合併制度が利用できるということになってございます。

しかし、もう少し考えますと、Aの値を例えば規約で非常に高く置いておくとか、そういったことによっていろいろな吸収合併が簡易合併制度を利用してできるということにもなりますし、そもそも吸収される側の投資法人の財務の状況とか規模というものが、どう吸収する側の法人の既存投資主に影響を与えるかということが、あまり考慮されていないというご指摘もございます。

したがいまして、会社法と並びで考えて、そこに書いています改正例にありますように、実際に吸収する側が発行している投資口、これの一定規模以内であれば簡易合併制度を認めるということが1つ考えられるかと思います。投資主の利益を保護するという観点から、簡易合併制度を見直すということがあり得るかと思います。

次に11ページでございます。ここからはガバナンス、それからインサイダーの話を少し差し上げたいと思います。まず投資家の信頼を高めるための意思決定確保のための仕組みということでございますけれども、資料11ページにございますのは、現状の投資法人、特にJ-REITにまつわるガバナンスの仕組みでございます。規約のもとで投資主総会も開催され、その投資主総会では役員の選任、解任が行われ、そこで選ばれた役員会によって投資法人が運営されているわけでございます。ただし実際の運営は資産運用会社に運用委託という形で外出しされておりますが、ここに対しては利益相反取引の規制ということで金商法上の規制がかかっている、こういった状況でございます。

しかし、先ほど申し上げましたような利益相反取引の規制はあるものの、個別物件の売買等はその枠内であれば運用会社の裁量で可能でございますし、利害関係人との売買取引の書面報告は事後で構わないということになってございます。こうした中、利害関係者との取引の公正性の担保については自主的な取組が進んでいるわけなのですけれども、引き続き投資家の一部には利益相反性を不安に思う投資家もいらっしゃるということでございます。

これに対する対応でございますが、資料の12ページでございます。利害関係者との取引に係る第三者チェックの仕組みということが考えられないかということでございます。諸外国の例を見ますと、例えば日本と同じように運用を外部委託しているオーストラリア、あるいはシンガポールのREITでは、関連当事者の取引は純資産の一定割合以内でなければならない、あるいは、行うにしても投資主総会の決議を要するといったような規制があるようでございます。

他方、それぞれのJ-REITにおきましては、重要な意思決定については役員会の決議を取っていたり、あるいは資産運用会社側に社外取締役やコンプライアンス委員会を設置しているという自主的な取組が進められているところでございます。

こうした中、どういう制度的、あるいは何らかのルールの対応が可能かということで、いろいろな案をそこに掲げさせていただいております。まず第三者チェックをするにしても、その第三者とはだれにするかということでございます。資産運用会社による取引内容の役員会への事前説明、あるいは役員会の事前の承認といったように、役員会にそれを期待するということが1つのアイデアとしてはあり得ると思います。

ただし、投資法人の運用は外部委託しなければならないという義務がございますので、例えば物件の取得にあたって役員会の承認を必要とするということになりますと、外部委託との関係で整理が必要か。すなわち、どこまでが投資法人が運用に関して意思決定するのかという整理が必要かと思います。

また、2つ目の担い手としては、資産運用会社内のコンプライアンス委員会といったような外部有識者を活用するということも方向性としてあり得るかと思います。ただし、この場合は運用を委託している会社の内部機関にとどまるわけですから、ガバナンスに限界はないかといった指摘があるわけでございます。

具体的にどういったことをチェックさせるのかということでございますけれども、例えば利害関係者から十分な情報を収集した上で鑑定評価を発注しているか、鑑定評価を踏まえて利害関係者との取引交渉を適切にしているか、こうした意思決定の公正性、意思決定のプロセスの公正性、こういったことをチェックするということが考えられます。

もちろん、さらに進めて鑑定評価なり取引価格なりをチェックするということも考えられないわけではないですが、それができる者が第三者として存在するかといったアベイラビリティーの問題もあろうかと思います。

こうした取組の方向性とはまたちょっと違いますけれども3点目、鑑定評価に係る根拠となっているもろもろの情報を公表してもらう。現在でも投資法人はある程度の評価の概要ということを公表しているわけなんですけれども、さらに詳細なものについて公表してもらう。それによって投資家というよりは、むしろ市場関係者によってチェックをしてもらう。アナリストや、そういった方々のチェックを期待する、牽制を期待するということも方向性としては1つあろうかと思います。

いずれにしても、最後の留意点に書いていますが、取引金額要件等、軽微基準を検討する必要があると思っております。

次、13ページでございます。インサイダー取引規制でございますが、このワーキングでも何度か繰り返し申し上げていますけれども、現行制度上、上場投資法人J-REITに係る投資証券、これはインサイダー取引規制の対象となってございません。その背景といたしましては、まず一般の上場会社とは異なり、非常に簡素な箱としての仕組みであるということ。それから、本来構成する資産から算出される純資産価格が投資口価格を根拠づけるということ。さらには、インサイダー取引規制こそ適用になってございませんが、金商法157条の不正行為の禁止という規定は適用されているということでございます。しかしながら、現在の状況を改めて検証してみますと、当初の想定以上に投資口価格のボラティリティが存在しており、不公正取引で利益を得る可能性自体は存在している。

他方で、諸外国のREITを見ますと、およそほとんどのものがインサイダー取引規制の対象となってございますので、我が国の投資法人がインサイダー取引規制の対象外になっているということ自体、問題視されるわけでございます。

こうしたことを踏まえまして、対応の方向性としてはインサイダー取引規制の対象にしてはどうかということでございますが、ここで考える論点のうち大きな2つを資料にさせていただいております。1つは、インサイダーとはだれなのかという論点でございます。14ページから16ページ目でございます。14ページ目には、現行のインサイダー取引規制を一般の株式会社に適用した場合の状況でございます。これを全くパラレルに投資法人について適用したものが15ページでございます。こうなりますと、会社関係者の中に資産運用会社や、その他業務委託先が入ってくるわけでございます。そこから関係がございますスポンサー、不動産鑑定会社あるいは業務委託先のさらに契約の先といったものも規制の対象の範囲になってくるわけでございます。

ただし、規制の対象外という吹き出しがございますように、例えばJ-REITの運営について物件の供給等で重要な役割を担っているスポンサーから情報を受けた者、これは同じ情報受領者でも2次情報受領者として原則として規制の対象外となってしまう。

もう一つの考えとしては、資料16ページでございますけれども、そもそも投資法人はすべての業務を外部委託しているわけでございますから、株式会社と同じような機能がどこまであるかということの線引きを考えた場合、投資法人という箱そのものだけではなくて、それに加えて資産運用会社や、その他業務委託先の会社まで含めた、そういった機能が分散した上での1つのグループということが考えられるかと思います。

こうなりますと、会社関係者の中にスポンサー、あるいは不動産鑑定会社、契約先というものが入ってきて、さらにスポンサーやその他会社関係者から情報を受領した者は、1次情報受領者として規制の対象になるというわけでございます。このように考えることの妥当性ということもご議論いただければと思います。

次に17ページでございます。インサイダー取引規制についてのもう一つの論点、重要事実を何にするかということでございますが、いろいろ書いてありますけれども、結局言わんとしたことは、重要事実・軽微基準については、一般の上場会社に対するインサイダー取引規制の規定を基本的にはベースとして、投資法人特有の事情を考慮して、例えば資産運用会社に係る事実を重要事実に加えるといった投資者の判断に及ぼす影響を勘案した調整をするということが1つの方向性として考えられるかということでございます。

インサイダー取引規制について、ちょっと時間がございませんので、以上でございます。

それから18ページは、これもまたちょっと違う話なのですが、海外不動産取得促進のための議決権保有制限の見直しでございます。これは簡単に申し上げますと、現在投資法人は海外不動産の取得というものは制限されてございません。しかしながら実際取得しようとすると、さまざまなリスクを遮断するために、間に1回SPCを介するということが考えられます。ところが、会社支配をJ-REIT投資法人は行ってはならない、したがって過半の議決権を保有してはならないという全く別の規制があるために、こういったスキームを組むことができません。純粋に海外不動産を取得することのみを目的とするSPC、こうしたことであれば、今申し上げたような議決権の過半保有禁止の例外としてもいいのではないかということでございます。

なお、留意点の一番最後に書いておりますように、これは租税特別措置法上も同様の規定がございますので、これは税務当局との相談、折衝というものが必要になってくることでございます。

最後、19ページでございます。その他の論点として、運営にあたってのいろいろな事務、役員任期であるとか、2カ月前の公告規制、あるいは投資主への軽微な変更の通知、こういったものを効率化していくということが考えられるかと思います。19ページの一番最後になりましたが、今までいろいろ申し上げてきましたけれども、現状不動産投資法人が大多数でございますので、それを念頭に置いていろいろ検討してきているわけなのですけれども、例は少ないですが、証券投資法人というものもございます。あるいは制度としては投資法人というものに不動産用、証券用というものはございません。したがって、同様の見直しを投資法人一般についても行うかどうか、これが適切かどうかという配意・点検をしながら検討を進めていく必要があろうかと思っております。

私から、以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは、今ご説明いただきました項目につきまして、まずはメンバーの皆様方からご質問、ご意見をいただきたいと思います。ただ、どこからでもご自由にと言うと、あまりに項目が多いので、二、三分けさせていただいてはどうかと思います。お手元の資料の右下のページ数で言いますと、タテ1とタテ2、すなわち3ページから10ページまでです。これが1つの区切りかと思います。

そしてその次がタテ3とタテ4、11ページから17ページ、そして最後が、その他というのでしょうか、タテ5、18ページと19ページ、こういった区切りでやらせていただいてはどうかと思います。

それで、まずタテ1とタテ2、すなわち資料の3ページから10ページまで、具体的な見直しは4ページから4、5、6、7、8、それから9、そして10になろうかと思います。

委員の皆様方からご質問、ご意見をいただきたいと思います。どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。

○井潟委員

非常にわかりやすく整理されたこの資料自体で大変勉強させてもらったと思っております。自己投資口取得について、お話し申し上げたいと思います。

前回も発表者の方々からもご指摘ありましたし、私も言及しました。また、本日も事務局からの説明にもありましたが、3ページのところです。現在のJ-REIT市場の大きな課題に、ネット・アセット・バリューに対する倍率が1倍割れしている銘柄が全体の7割を占めているという、投資口価格の割安放置の状況がなかなか解消されないということがあるのではないかと考えております。

この解決策を優先して検討すべきではないかと思っておりまして、その点で、8ページの投資口価格の割安放置の状況の解消策として自己投資口取得というものは、非常に重要な役割を果たすのではないかという意見は、私も関係者の方から聞くにつけ検討に値すると思っています。

日本における事業会社の場合ですと、例えば中央値、メディアンで時価総額の1~2パーセントの資金を使いながら自己株式取得を行って、また、そうした自己株式取得の取得枠を設定してから大体20営業日で株価パフォーマンスが平均で市場を4%ぐらいはアウトパフォームするというデータもあるようです。

ただ、まさにこの8ページの留意点のところにも書いてありますように、J-REITの自己投資口取得の資金としては、減価償却あるいは売却物件資金で余裕資金になっているものがある一方で、事業会社の自己株式取得の場合ですと、株主還元の一環ということで行われて、配当可能利益に原資が限定されているのに対して、J-REITの場合は内部留保がそもそも今、積み上げられないということもあるわけで、J-REITの自己投資口取得の実現は非常に重要だと思いますが、その取得目的あるいは原資の考え方について、J-REITならではということになるのか、事業会社の場合との比較、あるいは海外事例を参考にしながらという点で整理、検討というものをあわせて行う必要があるのではないかと思った次第でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

石黒委員、どうぞ。

○石黒委員

ありがとうございました。順番に参りたいと思いますが、4ページのライツオファリングですけれども、ここでコミットメント型のライツオファリングということを前提としてご議論いただいているということで、それと上場制度の手当も必要ということでございまして、こういった形での制度改善については賛成でございます。

今、株式会社についてのライツオファリングをめぐる改善がずっとなされているわけですけれども、そちらのほうでも、例えば割当通知の通知時点の問題とか、株式会社に関するライツオファリングでの色々な論点というのを横目で見ながら、こちらの制度の導入においてもそれらの論点・課題に対処しつつ、まさに使い勝手のよい、使えるものにするという観点から検討していく必要があるのではないかと思います。

それから、ライツオファリングに関連して、ライツオファリングに限定される問題ではないのですが、REITのエクイティファイナンスということを考えるときに、日割り配当を認める必要が高いのではないかと思っておりまして、REITの場合は利回り重視の商品でありますので、かつ各営業期間の利益のほぼすべてを配当しますので、内部留保はないということを前提としますと、分配金の原資というのは、その期間の利益そのものということになってまいりますので、そうすると投下資本の稼働期間、その投下資本が使用された期間に応じた配当を行うというほうが、むしろロジカルではないかと思います。

それがそうでないとすると、既存投資主の取り分が希薄化するということで、今、多くのエクイティファイナンスにおいては、営業期間の期初にファイナンスを行うということが実務的な配慮として行われています。

ただ、これは増資時期が読める、それを読んだことによって、その読みをどう使うかとか、そういった問題にもつながってくるところでありますし、他方日割り配当を認める方向で改正して特に弊害というものはない一方、むしろ論理的にも正しいのではないかということで、ちょっと1つ言及させていただきました。

それから、転換投資法人債については、予測可能性の問題とか一部消極の声もあるようですけれども、ただ、基本的に転換投資法人債が必要になるのは、危機的な状況であると想定されますので、そういった状況において多用な資金調達の手段の確保という観点からは、やはり同様に賛成でございます。

また、その同じ観点から言いますと、危機的な状況における緊急避難ということであるとすれば、いわゆるMSCB、この資料の5ページの下のところで権利行使価格修正条項つきのものという言及がございますけれども、これについても少なくとも全面的に禁止するというのは、せっかく導入するのであれば望ましくないのではないか。

それについては、株式会社についてもいろいろな形でソフトローで対応しておりますけれども、株式会社と同様の規律にとどめて導入するという考え方とは一貫するのかなと思います。

6ページの種類投資口ですが、これにつきましても、やはり危機的な状況における多様な資金調達手段の確保という観点からは、そのメニューを取りそろえるという意味で賛成でございます。

それから無償減資でございますけれども、これも、まさにご指摘のとおり、災害等によって例えば投資物件が倒壊した場合に除却損が出たというようなときに、なかなか欠損が解消できないという形になってまいりますので、むしろそういったときこそREITが活躍して、災害復興に機能を果たさなければいけないときに身動きができないということもございますので、その制約から解放する手段として無償減資についても賛成でございます。

それから自己投資口の取得、これは前回のご議論も含めて、なかなか難しいところがあるのかなとは思いますけれども、これも基本的に賛成、導入すべきだと思っておりますけれども、ここも財源の手当てが、やはり例えば譲渡益を原資とした自己投資口取得ができるような税務上の手当ても考えるのか、あるいは、前回も申しあげました内部留保を許容する手当てをするとか、自己投資口の取得を実行あらしめるためには、そういったところまでの配慮が必要なのではないかと思っております。

それから9ページのガバナンスの強化のところでございますけれども、投資口の発行差止請求制度、これはやはり必要だと思います。基本的にご説明ありましたように、やはりREITについてリスクプレミアムが発生してしまっているということの中で、1つは今の資金調達手段の多様化のきっかけとなったリファイナンスリスクというのがあると思いますけれども、やはりガバナンスについてもきっちりとしているのかというところは、もう一つのリスクプレミアムの要素になっているという見方もあると思います。

したがいまして、この発行差止制度は資金調達の多様化のための、その公正性の担保ということもありますけれども、今日後ほど議論するガバナンスにも大きくつながるところだと思いまして、こういった制度も相伴う形で、今いろいろと議論したような各種の手当てをするということが適切であると思います。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

河野委員、どうぞ。

○河野委員

今のお話とほぼ同意見でございますけれども、4ページのライツオファリングのところ、あるいは6ページの種類投資口の概要、それから7ページの欠損填補のための無償減資の概要のところ、これは海外の事例というのを、我々がどこを一番ベストプラクティスとして見ているかというところをちょっと教えていただきたいし、要するに海外の事例を参考によりよいものを取り入れていただきたいと思っているということと、今もお話に出ました9ページのところは、もちろん後の議題にも関係するのですけれども、今の時点では投資口の発行差止請求などについても、株式と同様の扱いとすべきだろうと思っております。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございます。

それでは、清水委員、黒沼委員の順でお願いします。

○清水委員

まず7ページの欠損填補のところでございますが、前回も若干お話ししましたが、今回このような欠損填補の無償減資が必要とされる理由の1つに、例えば減損による損失の計上ということが挙げられています。やはり日本の投資法人の制度上の最大の欠点は、会計上の利益と税務上の利益に差が生じると、2倍近くのレートで法人税が課されるという構造上の問題があるために、こういうことを実施しましょうと今提案されていますので、やはり根本のところを改正する必要があると思います。

先ほどから海外のREITの事例を参考にというご意見がございましたが、シンガポールや香港ですとか、オーストラリアですとか、各国でこういった問題点はないという認識です。それぞれ、適切な開示の目的のために会計基準があり、税務は税務上の規則があって、両者を一致させなければ大きなペナルティ(税金)を払うというようなことにはなっていません。せっかくJ-REITといういい制度があるのに、非常に制度を不安定にする1つの大きな理由になっていると思います。

ただし、配当を毎期出さなければいけないという規則もありますので、ここについて、こういった税会不一致の制度が解決するまでに、こういった欠損填補のための無償減資の制度を認めることは有効であると考えています。会計上の資本の部における振替でございますので、それで解決するのであればいいと思います。

ただし、実際に実現した損失があるのに、家賃等収益があるから、それをそのまま分配していいかどうかということについては、若干保守的に一度検討をして、この制度を始めるのであれば、協会等のルールで一定の歯止めをかけるような施策が必要だと思います。

それから、8ページのところでございますが、基本的にこういった制度を導入することには賛成なのですが、せっかく投信法等の制度を改正しても税務上がついてこないと、結局J-REITというのは課税されないという器なのですが、課税されるということになってしまうと、実施できないということになってしまいますので、税制上の改正も合わせて必要だと思っています。例えば8ページでございますが、自己投資口の取得を仮に制度上できるようにしたとしても、テクニカルな話で申しわけないのですが、今現在投信法上のバランスシートで計算される利益概念というものと、税務上の利益の概念が違っていますので、その計算式の違いにより、こういった自己投資口を取得することによって課税されてしまう可能性があります。

ですので、制度上こちらを改正した場合には、同様に税務上も改正しないと、皆さん実質的にこれを実施することができないということがあると思います。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

ちょっとすみません、河野委員からご質問いただきましたので、事務局からお答えできる部分をお答えお願いします。

○横尾企画官

海外での資金調達手段の多様化がどのくらい進んでいるかというご質問だったと思います。私どもが調べましたところ、まずライツオファリングについては、オーストラリア、シンガポール、英国のREITを中心にライツオファリングが行われていると理解しておりました。米国は入っていませんけれども、もともとライツオファリングの方式自体がヨーロッパで趨勢なやり方でございますので、そういったヨーロッパ系のところで行われていると思っております。

それから転換投資法人債につきましては、米国はもちろんですけれども、シンガポール、豪州、あるいは香港などで可能だと認識しております。

種類投資口につきましては、米国、豪州、オーストラリア、それから欧州の一部でも可能だということでございます。

それから自己投資口の取得とかも、ほぼ他国では、大きなREITの国では可能だと認識しております。この点、ちょっと今回は配っておりませんけれども、有識者からご説明いただいた前回の資料の中にも、各国との資金調達手段や資本政策手段の比較表というものがあって、日本だけができないというところが並んでいたのを覚えていらっしゃる方もいるかもしれませんが、私どもの認識としては、諸外国というのは、こういった手段の多様化というものが、日本と比べれば許されている割合が大きいと認識しております。

それから、ついでに先ほどの税会不一致のお話でございますけれども、ご指摘のとおり、根本的に課税上の所得と会計上の所得の乖離を直さない限り、パッチワーク的にいろいろな手段が必要になってくるということは、ご指摘のとおりかと思います。

他方で、税会の不一致というのは何もREITにかかわるだけの問題でもないというところもありますので、根本的に課税所得を会計側に寄せているようにしていくという方向性も、理論的にはないわけではないのですけれども、税務当局との意思疎通というものも必要になってきますし、なかなか我々自身だけでことを進められるというわけでもございません。方向性としては、そういうことも考えていかなければならないとのご指摘も多く受けるわけですけれども、他方で、大きな話が進まないからといって放置するわけにもいきませんので、パッチワーク的に税会不一致が引き起こす問題を解消させる手段というものを地道にこつこつやっていくということも必要かなと思っております。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは、黒沼委員どうぞ。

○黒沼委員

資金調達手段、資本政策手段の多様化と、簡易合併手続については、会社法で採用され、維持されている制度に相当するものは合理性があると考えられますから、一般的にはそれを投資法人についても導入していくという方向性に賛成いたします。

ただし、若干疑問がある点は、1つは種類投資口でありまして、留意点のところで書かれているように、簡素なガバナンス構造を有する投資法人にとってふさわしいかという問題点があると思います。種類投資口制度を採用した場合に、種類投資口の間の利害調整のための手段も同時に採用するのかどうかという点が気になります。例えば拒否権付種類投資口とか、取得条項付、取得請求権付、さらには場合によっては全部取得条項付投資口まで導入するとなりますと、非常に制度は複雑になりますし、種類投資口総会による承認というようなことをやるとすると、後で出てくるように「みなし賛成制度」のもとでそういう利害調整手段を導入して、うまくいくのかという問題もあるものですから、私はどちらかと言うと、ここは消極的でありまして、種類投資口については会社法と同様の利害調整手段を採用することに無理があるので、種類投資口自体を認めないほうがいいのではないかと思います。

それから自己投資口の取得ですが、ここも分配可能額は全部配当してしまっているというところが会社法と違うのですが、現在でも利益を超過して配当をする場合に、債権者保護手続は入っているのでしょうか。債権者の異議手続のようなものは入っているんですか。

○横尾企画官

利益超過配当となる場合であっても、現在認められている範囲で実施する配当について、債権者保護手続は入ってないんです。

○黒沼委員

入ってないんですか。投資法人制度が最初につくられたときは、投資法人が借り入れをすることができるかということもはっきりしていなくて、途中から解釈によって借り入れもできるようになったし、投資法人債を発行することもできるようになったのですが、債権者保護手続を入れずに自己投資口の取得を認めて、あとは債権者の保護は契約でやりましょうということで、うまくいくのかという点を検討しておかないとまずいのではないかと思いました。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。川波委員、神作委員の順でお願いします。

○川波委員

今の簡易合併手続の件について、コメントというか、ご質問かもしれませんけれども、申し上げます。いわゆる消滅投資法人投資主に割り当てる存続投資法人投資口の口数、つまりCです。これは発行可能投資口数から発行済みの投資口数を引いたものを上回ってはならないということが現行なんですけれども、そのCは発行済み投資口数を基準にして、その5分の1を上回ってはならないと改正するということでございます。

10ページの右側の図で申しますと、先ほどのご説明にはなかったのですが、B法人投資口1口当たり合併比率、α口のA法人投資口を交付するということ。その交付されたCは、先ほどのBの20%以下であれば簡易合併に手続は該当するということなんですが、その場合の5分の1ということの根拠、これはもともと存続投資法人の投資主が利益を害されるおそれがあるので、利益を害することがないものとして一応5分の1という数値が提案されていると思うのですが、それをどう根拠をつけたらよいかというところが、いま一つわからないところがありましたので、その辺、どう考えたらよろしいかということを少しお聞かせいただけるとありがたいと思います。

○横尾企画官

会社法に同様の規定がございまして、会社法の中で20%となっています。では、会社法の中で20%どう正当化されるかというのは、すみません、ちょっと私も今、ここでつまびらかにご説明できないのですけれども、基本的に投資法人制度は会社法を参考にしながらつくられているものの、簡易合併については会社法と違う形での制度が導入されていたということなので、そこの平仄を合わせようということでございます。

その際に、その数値についても、なかなか先生がおっしゃるように合理的な確かな根拠を持って定めるということが難しいところでございますので、1つの参考として会社法の数値を使ってはどうかということでございます。

○神田座長

会社法の考え方は、インパクトが大きいか小さいかということでして、インパクトが小さければ総会にかけなくてもいいでしょうという考え方です。昔は5%基準だったのですけれども、考え方が変わって、現在は20%までは株主総会にかけなくてもいい、そういう意味でのインパクトというのが大きいと見なくていいでしょうという考え方だと言っていいかと思います。

それをこちらに持ってこられるかどうかということが、ここでは問われているのだと思いますけれども。

○川波委員

どうもありがとうございました。

○神田座長

よろしゅうございますか。

それでは、神作委員どうぞ。

○神作委員

ご質問も含めて、何点か申し上げさせていただきたいと思うのですけれども、まず初めに、種類投資口の制度につきましては、私も黒沼委員と同じような感想を持っておりまして、ここに一体何が含まれるのかをご確認させていただければと存じます。資料には「剰余金の配当や残余財産の分配等」と「等」という文字がついておりまして、剰余金の配当や残余財産の分配のほか、どのような種類投資口が含まれるのかに関心がございます。私はあまり広げる必要はないのではないかと思うのですが、他方で、優先的な配当がある分、議決権がないような種類投資口というのは合理的な商品であるようにも思います。しかし、他方で、支配権にかかわる領域にまで踏み込んで種類投資口を認めて差を設けていくことについては、また後の「みなし賛成制度」等の制度設計とも関係して参りますが、ちょっと心配なところがあります。

種類投資口の種類として、どのあたりまで考えられるのかということと、それから、これも黒沼委員のコメントと全く重複しますけれども、種類株主総会に相当するような、種類投資口総会制度というのは想定されているのかについてご質問させていただければと思います。

第2に、またご質問なのですけれども、取得された自己投資口というのはどのような取り扱いになるのでしょうか。株式会社における金庫株と同じように、投資法人が保有し、それをまた外に出すことも可能なものとして構想されているのか、それとも、自己投資口を取得したら消却しなければならないことが想定されているのでしょうか。制度のシンプルさという観点からしても、投資法人が自己投資口を取得することを認めるとしても、それを保有しておくことまで認める必要があるのかどうかちょっと疑問に思いましたので、その点ご質問させていただければと思います。

それから第3は、「みなし賛成制度」についてでございます。基本的には「みなし賛成制度」を前提に検討するということでございますけれども、私は、もし可能であれば、「みなし賛成制度」に代わる何か新しい仕組みがあるのであれば、見直すことも含めて検討していただきたいと思います。特に投資主の利害関係に大きな変動をもたらすようなことが可能になるといたしますと、何も言わなかったときには賛成として扱うのではなく、例えば定足数を撤廃するとか、あるいは定足数を下げるとか、法人の意思決定に積極的に関与する人たちの意見が重視されるような考え方をとれないかどうかも含めて、さらに検討していく必要があるかと思います。

最後に、会社法210条の準用についてでございます。このことには私も賛成でございますが、前提としてお尋ねしたいのは、有利発行についての規制が今回のご提案では、正面からはなされていないように思うのですが、例えば投資主総会で特別決議等を経れば、有利発行もできるようにすることは、今回は対象としないのでしょうか。この点についても、ご質問させていただければと思います。

何点かご質問も含まれておりましたけれども、以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございます。

事務局のほうで……。

○横尾企画官

ありがとうございます。

まず種類投資口で、どの程度の種類を想定するかでございますけれども、まさに私ども、実はまだ詳しい検討に至っているところではございません。むしろ種類投資口のところは、後の資料9ページのみなし賛成制度を前提とした資金調達手段、こうした簡素なガバナンスを前提にした資金調達手段として運用できるかどうかというところで、ある意味、思考がとまっているというか、そこで悩んでいる状況でございます。

黒沼先生や神作先生からご指摘いただきましたように、その制度を完遂しようとするとどんどん制度が複雑になっていきますので、かといって中途半端な形、あるいはものすごく初歩的な形での種類投資口が考えられるかどうかですが、なかなかそれもガバナンスとの関係、あるいは利益相反との関係でも難しいのかなということを思っております。したがって後ほど神作先生がおっしゃっていましたように、みなし賛成制度を根本的に変えるとか、あるいはガバナンス構造を、黒沼先生がおっしゃったようにどんどん精緻化していくということでもない限り、なかなか種類投資口は導入するのにハードルが高いかなと思っております。そういう意味では、どこまで具体的な構想を持っているかというと、今申し上げたようなところで、構想に至る前に悩んでいるということでございます。

それから自己投資口買いで、その取得した自己投資口がどうなるかということでございますが、投信法上、合併などの限定した局面で今認められている自己投資口買いで取得した投資口については、相当の時期に処分しなければいけないとなっております。資本政策手段として自己投資口買いを一般化したときに、上記の規定までいじる必要があるかというと、1つ議論があるんだと思います。単純な考え方としては、これはある意味、投資する物件がないため、財務戦略上、バランスシートを小さくするという対応の1つだと考えれば、買い上げた投資口を後から市場に放出するというよりは、もう消却して小さくしてしまうことが考えられるかなと思っています。詳しい検討はまだ至っていませんけれども、基本的には消却するということではないかと思っております。

それから有利発行制度でございますけれども、ご指摘のように今回の提案の中には特に有利発行制度については扱ってございません。なぜかと申しますと、資料3ページ目の一番下のところで、留意すべき事項として3点挙げた中の3つ目、「投資家間の公平性」についてどこまで考慮しなければいけないかという議論と関係します。J-REITにおいてはの投資口の均一性というか同質性といったものが前提の制度になっているという分析も、有識者や学会でされているようでございます。そういうことを踏まえると、種類投資口はその最たる例ですけれども、有利発行についてもあまりに一部の投資主に対してほかと差別化した発行は、慎重に考えなければいけないかなと思っております。

お答えになっているかどうかわかりませんけれども、以上でございます。

○神作委員

ありがとうございます。

○神田座長

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

ありがとうございます。

私も先ほどの黒沼委員、神作委員のご指摘と似たような感想を持っておりまして、特に種類投資口という制度については、9ページの記述にもございますけれども、簡素なガバナンス制度との一種のトレードオフみたいなところがあるのかなと思っておりまして、その場合には、簡素なガバナンス制度の維持のほうに、むしろ重きを置くべきではないかなと、正直思います。会社法とのアナロジーでどんどん制度が複雑になっていくと、究極的にはそもそも導管体として非課税にするのはどういうことなんだという話にも行ってしまうわけでして、もともと投資法人は投資の手段に過ぎないもので事業を支配したりする会社とは根本的に違う点があるので、あまり精緻化して実質を失うようなことがあってはいけないのではないか。その意味では、そのために種類投資口が仮に若干制約を受けるとしても、それはしようがないのかなと思っております。ただ全く認めないのかというと、契約型の投資信託でも種類の異なる受益権を認めてもいいのではないかという議論もあるわけでして、そこはどうなのかなと率直に思っております。

ちょっと気になるのは、ガバナンスの話で、どうも投資主総会に期待するという感じが強く出ているように思うのですが、私は、株式会社の場合は従業員がいて、それとほぼ一体となった経営者がいて、それをどうコントロールするんだという議論で、外部から役員をどう入れていくのかとか、株主総会をどう機能させるかという話になっているわけですけれども、J-REITの場合は、ガバナンスの課題とは運用会社を投資家の意に反したような方向へ持っていかないようにするという話なんだと思いまして、J-REIT自身が変なほうへ従業員、役員一体となって動いていくというのは、あまり想像がつかない話だと思うんです。その意味では、私は役員会によるコントロールをもっと強調すべきではないかなと思っていまして、投資主総会はみなし賛成制度に象徴されますように、まさにリターンのみに関心があって、さらにあまりひどいようなら投資口を売ってしまうというのが基本的な姿勢だと思うので、ここの機能を強化することでガバナンスを強化するというのは、そもそもあまり現実的ではないのではないかと思う次第です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、上柳委員。

○上柳委員

この多様化は、選択肢が増えるという面からはいいんですけれども、反面から言うと、予測可能性の問題あるいは利益相反の問題と裏腹になるところを配慮しなければいけないと思います。私が気になるのは、やはり種類投資口のところです。いろいろな投資家あるいは資金を拠出される方があるんだと思いますけれども、やはりわかりにくい面が多くなる。あるいは理屈的に言うと利益相反の問題をどのようにして解消するのか、実際的に難しくなるのではないかと懸念します。

もう一つは、自己投資口のほうですけれども、私は正直なところ感覚がよくわからないのですが、何となく理屈的にどの範囲で配当するのか。それをどうやって決めるのか。もちろんそこは投資法人自体が自分に不利益になるようなことはされないということではあると思いますけれども、実際上の数値を決めていくのについて、難しいところがあるのではないかと思いました。そういう点から言いますと、9ページでご提案というか指摘されておりますが、発行差止請求制度であるとか、あるいは不動産証券化協会からは説明義務の指摘がありましたけれども、やはり利益相反をしないということを、実効性を担保するような手当てが必要だと思いました。

それから9ページの発行差止請求制度の説明のところで、私がうまく理解できていないのかもわかりませんけれども、「増資条件が公正な金額でない場合」と書いてありますが、多分金額の問題だけではなくて、そもそも発行自体であるとか、大きく不公正な発行としてくくればいいのかもわかりませんが、対象の範囲については工夫が必要だろうと思います。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。石黒委員、どうぞ。

○石黒委員

種類投資口が非常に評判が悪くて、私はシンプルに賛成と申し上げたので、ちょっと説明させていただきますと、あくまでも危機的な状況における救済手段といいますか、資金調達手段の1つのメニューとして意味があるのであれば、考えてもいいのではないかということでございますので、そもそも投資法人の支配にかかわるような、支配権の問題に影響するような種類というメニューは全く考えてございません。ですので、危機的なときのメニューとして、これもバンカーの方たちのお知恵拝借ということになるのですが、「こういう投資の形態があれば、こういう状況においては非常に有効に使えるのだ」というシンプルなものがあれば、かつそれは種類投資主総会みたいなものを開いて保護しなければいけないような状況の発生が非常に限定的であるという形で、ガバナンスのところでもあまり影響がないというあたりが立法事実的に検証できれば、それは意味があるのではないかということであります。株式会社と同じような非常に大きな多様なバラエティーを持った種類投資口をイメージして申し上げたことではございません。

一応、補足で申し上げました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

タテ1で、10ページまででほかにご注意いただく点あるいはご意見がおありの点、ありますでしょうか。

そうしますと、ちょっとまとめさせていただきますと、いろいろご指摘いただいた点は、もちろんそのご指摘を踏まえての検討ということになりますけれども、ご指摘をいただかなかった点については、ページで言いますと4、5、6、7、8、9、10とあるのですが、それぞれ4ページから8ページについては留意点を書かれてありますので、このまま資料の線でご検討いただく。それでご指摘いただいた点については、そのご指摘も事務局で検討させていただきたいと思います。具体的には、石黒委員からの日割配当、それから清水委員からの根本的な税会の不一致の問題はあるのですけれども、それはより根本的な問題。そして種類投資口については、複数の委員の方から疑問が出されましたが、これはどうですかね、結局、実際にニーズがありそうなのは優先投資口だけですよね。優先出資口だけを認めるかということに尽きると思うのですけれども。そうでないと借り入れるしかない。あるいはデット・エクイティ・スワップをするみたいな話があるのかもしれませんけれども。ですから優先投資口だけを制度化するということであれば、利益相反とか利害調整の手当てがちゃんとできるということであれば、ご発言の委員の方々の危惧には対応できるということではないかと思います。ただ、うまく利害調整ができるかと言われますと、そのためにご指摘がありましたように、種類投資口総会とかいろいろ制度をつくらなければいけないとなると大変かもしれませんね。いずれにしても委員の皆様からのご指摘を踏まえてご検討いただければと思います。

それから黒沼委員ご指摘の債権者異議手続については、現在合併等については手続がありますので、おそらく今は自己投資口の取得という手続がないので債権者異議手続もないだけであって、その手続が設けられれば入ってくるのだと思います。

上柳委員からもちょっとご質問があったところですけれども、現在の分配規制、配当規制はどうなっているのかという話があると思うのですが、私だけ条文を持っていてフェアではないのですが、現在の分配規制は利益で切っていませんで、137条の1項のただし書ですけれども、貸借対照表上の純資産額から基準純資産額を控除して得た額というのが、分配可能額になっています。これを基準に、会社法の分配可能額規制と同じ並びで、例えば超えた場合に、差額をてん補する責任とか、そういった規定が置かれています。138条、139条であります。そして最低基準純資産額というのですか、それ自体を減少するのは規約変更が要るのですけれども、これについては債権者異議手続が用意されている。142条です。

ですから、そういった現在ある枠組みとの整合性が必要になってくると思いますので、黒沼委員のご指摘のところは、おそらく債権者異議手続を設けるということだと思いますけれども、あわせて自己投資口を取得した場合の分配規制というのですか、ご指摘がありましたので、現在の枠組みと平仄をとって、検討していただくことになるかと思います。

それから有利発行規制は頭の痛いところですけれども、おそらく特別決議を通したらそれでやっていいですと言えるかということだと思うのです。一方ではみなし賛成制度でいいのかというのがありますし、他方では大崎さんがおっしゃったような、あまり何でも株主総会に諮りましょうというのとちょっと違うのではないかというのもある。そうだとすれば、おそらく不公正発行のところで、有利というのと、上柳先生のご指摘のありました、通常は著しく不公正な方法と呼んでいるものですけれども、会社法210条にあるものと、あわせて判断できるような枠組みでどうかというのが、現在の提案になっているということかと思います。なおご指摘を踏まえて検討させていただいてはどうかと思います。

そんなところで、次へ進ませていただきます。オブザーバーの皆様には、申し訳ないのですけれども、先に委員の皆さんのご意見を伺って、最後に時間を設けたいと思いますので、お許しいただきたいと思います。

タテ3とタテ4、具体的には11ページから17ページ、具体的なご提案は12、13にほぼ尽きているというか、13の各論に重要なのがあるようですけれども、11ページから17ページまで、特に12ページ、13ページの方向で考えることについて、委員の皆様方からご意見をいただきたいと思います。ご質問でも結構です。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

この点については私が先ほど申し上げたことを繰り返したいんですが、第三者のチェックというお話が出ておりますが、ここで言う第三者というのは、心は資産運用会社の内部者ではないという気持ちかと思います。その意味では、役員会が本来そういうものとして設計されているわけですから、役員会に基本的には期待するのかなと思っております。資産運用会社における社外取締役とかいう話も出ているのですが、これは多分、ちょっと目的が違う存在のように思うので、つまり資産運用会社の株主と、その資産運用会社の経営陣との関係において出てくる話だと思うので、その人がこういういわば受益者の権利を守るみたいな文脈で出てくるのは、ちょっと不思議な感じがすると思います。

役員会にとにかく形式的にかければいいというのは、私はあまり正直賛同できないのですが、役員会でどのような議論があったか、検討があったかということを、何か簡素な形でわかりやすく開示していくような工夫をしてもらうのが、一番いいのではないかと思います。

それからインサイダー取引でございますが、基本的にそれは適用対象にすべきだというのはそのとおりだと思うんですけれども、会社関係者の範囲ですよね。私も気になっているのは、スポンサーが情報受領者になってしまうというのは、REITの実態からするとすごく違和感がありまして、できればそうならないように含めたいなと思う一方、16ページの絵を見ていますと、資産保管会社や一般事務受託者と各種契約を結んだ契約先もみんな会社関係者だということになるような絵になっているんですけれども、この辺まで来ると、この人たちは果たして自分がそうだという自覚を持てるような状況なのかなというのが非常に不安で、何かうまくスポンサーだけを取り込むような工夫が、ここに「親子関係」とも書かれていますので、何かできないかなと思った次第でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

草野委員、どうぞ。それから、小沼委員。

○草野委員

12ページについて意見を述べます。投資家の信頼を高めることの担保は非常に大事だと思います。内部の役員会で十分に審議することで公正を担保することは、私は期待していません。客観的に外部のもので担保するとなると、鑑定は大事なことだと思います。ただ鑑定というのが、私の裁判官の経験から申しますと、かなりいいかげんなものです。原告から出された鑑定書と被告から出された鑑定書の内容は全く違うのです。というのは、鑑定人の方は、だれから依頼されたかによって鑑定書の内容を考えるのです。だから売買のときでも、どうしてこんな鑑定書が出るだろうかと不思議に思うものです。確かに一見、客観的基準に従っているのですが、どこの基準点をとるかによっても結論は全然違ったものになるのです。ですから、依頼者がどういう結論を期待するかによって、鑑定人はそれを察知して書くのですから、裁判所が鑑定書を依頼したときは裁判所の気持ちでやってくれるのですけれども、不動産業者が依頼して、この取引を通したいために鑑定書をつくるのだとなると、大体それに沿うような鑑定書をつくってくると思われます。ですから、こういうことが可能かどうかわかりませんけれども、監督官庁に、金融庁がいいのかどうかわかりませんが、鑑定人の選任を依頼し、監督官庁が鑑定人を選んだとなると、鑑定人はその官庁の顔を見て鑑定書をつくることになりますから、公正な鑑定がされると期待されます。

それからもう一つ、鑑定書の内容を公表するということは、いいことだと思います。やはり鑑定書の内容が公表されるとなると、批判の対象になりますから、鑑定人もそれを意識して作成すると思われますので、相当に公正を担保すると思います。世間の人は、鑑定という言葉を聞くと、とかく公正なものだと誤解しますので、公正な鑑定が出るような環境を作らなければなりません。鑑定の名がつけばいいということは絶対にないとだけは、申し上げておきます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

小沼委員、どうぞ。

○小沼委員

12ページの利害関係者との取引の件でございますけれども、少しマーケットサイドというか、投資家、とりわけ外国の投資家様などの話を聞いておりますと、J-REITに関しましてはここの部分が最も質問が多いところでございます。それで、左上に書いてございますように、シンガポールあるいは香港まで含めまして、基本的には投資主の関与を経て、利害関係人との一定規模以上の物件の取得・譲渡がされる形になっておりまして、そこが質問が多い実態でございます。私の印象として、ここの議論は日本でも何とか投資主が何らかの形で関与するようなプロセスができないのかというところも、ひとつ議論してみるべきではなかろうかと思っております。

先ほどほかの委員の方からも出ておりましたけれども、役員会をより活用していくべきだと。そのほうが実態に即している。あるいは投資主をかませるプロセスは、なかなかワークしないようなことがあるのであれば、こういった役員会等を通じて進めることが考えられる、ということだと思いますが、仮にこのような場合でも、やはりグローバルにも評価をされるような手当てとか説明が必要なんだろうと思っております。

インサイダーの件でございますが、ちょっと各論でございますが、やはり物件の取得関係のところでございまして、17ページの右の真ん中ぐらいに、取引所の開示では5,000万未満のところが軽微基準として省略されているという例示をしておりますけれども、このインサイダーの軽微基準につきましては、慎重に、取引所側がお願いしています開示のレベルの問題と、それから内部者取引規制に該当する軽微基準のところでは、ある程度考え方が場合によっては違うところもあると思います。J-REITの開示のガイドブックでお願いしているのは、基本的にある程度本業に近い形で物件の取得をやっておりますので、なるべくそういうものはできるだけ出してもらいましょうと。本当は軽微基準を設けずに出してもらいましょうということがきっと根底にあって、ただしあまりにも小さいものだと煩雑過ぎてしまってということで、少し低い金額のバーをここに引いているのかなと思いますので、内部者取引の議論をするときにはまた違う見方があっていいのかなと思っています。

以上でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

永沢委員、どうぞ。

○永沢委員

私からは意見というよりも質問でございます。先ほど大崎委員や小沼委員から、役員会の機能をもっと充実させていくことが必要なのではないかというお話がありまして、私も基本的に賛成でございまして、やはり個人投資家からいたしますと、役員会の独立性を投資家が認識できるようになることが、信頼の確保につながるのではないかと感じております。

そこで質問ですけれども、例えば11ページに役員会の絵がありまして、執行役員1人と監督役員2人という構成になっておりますが、この執行役員はスポンサーからいらっしゃることが多いと思っております。実際にそのマーケットに詳しい、あるいは不動産業に非常に経験が豊かであることを考えますと、やはりスポンサーからいらっしゃることが多いと思うんですけれども、スポンサーのほうに戻ることが可能なのか、その辺の規制はあるのでしょうか。執行役員の独立性について、何らかの規制があるのかどうかをお尋ねしたい。

それから、監督役員というのは外部の方になると思うんですけれども、例えばスポンサーにとって不都合な意見を言ったりしたときに、その後監督役員に再任されないということがあるなら、やはりおっしゃらないのではないかと思うんですが、監督役員のチェックに対して、何らかの制度的な手当がされているのかどうかについて、教えていただけたらと思います。

以上でございます。

○横尾企画官

ありがとうございます。

執行役員の、今おっしゃったような人事的な取り扱いについて、少なくとも法令上、特段の定めがあるわけではありません。それから監督役員の業務についてでございますけれども、おっしゃっているのは監督役員の地位の保全みたいなことですか。

○永沢委員

はい、そうです。

○横尾企画官

執行役員は投資主総会の選任、解任を受けます。任期は4年ですが、その前に解任しようとすれば投資主総会の決議が必要になります。また任命するときも投資主総会の決議が必要になるということでございます。

○永沢委員

ありがとうございます。

○神田座長

平成10年に投資法人制度をつくったときの考え方は、役員会自体が株式会社でいえば取締役会で、執行役員というのが業務執行取締役で、ここにいる監督役員というのは、最近の言葉で社外取締役というか独立取締役。だから社外者、独立者が過半数でなければいけないというつくり方をしているといえます。ただその後、株式会社では実務の変遷、あるいは制度論の変遷等もありますので、現在のこちらの投資法人でいいますと、監督役員の資格という規定があるわけですが、そのあたり、それから監督役員の職務の規定はあまり問題ないと思いますけれども、このあたりの規定その他を、今日的な観点から経験を踏まえて見直す必要があるかどうかは、課題にはなるかと思いますが。

○永沢委員

ありがとうございます。

○神田座長

ほかにいかがでしょうか。それでは清水委員、黒沼委員の順で。それから石黒委員、よろしくお願いします。

○清水委員

1点だけ。12ページの鑑定士の評価が全く信頼できないというのは実務家としてはショックな意見なんですが、仮にそういうことであるとすると、詳細な開示というご提案がありますので、現在、不動産の評価というのは収益還元法、DCF等で通常行われていますので、その鑑定評価に使われたキャッシュフロー、あるいは家賃収入等の情報と、それからキャップレート、ディスカウントレート等の情報を開示すれば、その後、実際の家賃収入等が開示されてきますので、大体妥当な評価が行われているかどうか、プロの方々が見ればすぐ見当はつくと思いますので、そういった開示の充実をしていくことも考えられると思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

では、黒沼委員、どうぞ。

○黒沼委員

インサイダー取引規制の適用範囲について、一言申し上げたいと思います。16ページの図で、点線で囲まれた白い枠内は、おそらく166条1項1号の会社関係者という意味でつくられているのではないかと思うのですが、スポンサーも重要な情報の発生源になることを考えると、この白い枠の中に入れたほうがいいのではないかと思います。そうすることによって、スポンサーの契約先は情報受領者ではなくて会社関係者になる。大崎委員とちょっと方向性の違う意見かもしれませんけれども、その点だけ申し上げたいと思います。

○神田座長

ありがとうございました。

石黒委員、沖野委員の順で。石黒委員、どうぞ。

○石黒委員

まず利害関係者との取引に係る第三者チェックの仕組みですが、先ほど申し上げましたように、REITが我が国の不動産をめぐる環境の活性化の推進役としてどんどん発展してほしいという観点から言いますと、やはり今のリスクプレミアムの原因になっているのは、リファイナンスの制約のリスクだけではなくて、やはりガバナンスに対する信頼が十分ではないという面もありますので、先ほどの資本政策の自由化ということだけ一辺倒で賛成申し上げるのではなくて、ガバナンスも車の両輪として非常に重要だと考えております。

その上でここを見たときに、チェックの仕組みを強化していくことは大賛成ですが、具体的にどうするかはほんとうに難しいなと思っております。第三者チェックをどういう形で入れるのか。例えば物件の取得についての事前の承認も1つのしっかりとした、かつ効果のある手法かなと思うんですけれども、REITの投資対象がレジデンス、居住不動産であるのか、大型のオフィス、商業ビルであるのか、そのいずれであるかによって物件の取得の頻度などは全く変わってきて、取得頻度と数が多いレジデンス型で事前承認制度を入れるとなると、ガバナンスの負担、実務のところがオフィス、商業ビルの場合とは全然違ってきて、ほんとうにできるのだろうかと心配される面があります。かつ、従業員の雇用が禁止されておりますので、全くスタッフを持てないとなると、役員自身がそういった頻度でそういったチェックを実効的に、かつ物理的な負担も含めて、どこまで果たせるかというところまで目を配って考えないと、制度としてはワークしないのだろうということがあって、では何がいいのかというと、私もパッと浮かばないんですけれども、第三者チェックの強化は必要だと思うんですが、ほんとうに難しいなと思っております。またハードローとソフトローをどのように活用するのかという議論も絡んでくるのかなと思います。

その意味で、一番ある意味でシンプルで効果的なのは、既に何人かの委員の先生方がおっしゃっていますけれども、鑑定評価の詳細について公表させるということで、前提となったファクターについて問題がないかどうかを市場にチェックさせることは、非常に結構なので、これはぜひやるべきだと思います。

それからインサイダー取引規制ですが、これを導入することについては、もともと当初から申し上げておりますように賛成でありまして、そもそもREIT制度ができたときに、開示の中でインサイダー取引規制がありませんよということを、リスクファクターとして書くべきだという議論をしていた頃からずっと私も実務に参加しておりますので、そういう問題意識は前から持っております。

他方で、これも申しわけないのですが、どのようにやるのがいいのかは、なかなか難しいと思っておりまして、今の会社関係者の範囲を一般の株式会社と比べて広げるべき必要性の、立法事実的なものがきちんと検証されているかという意味から言うと、まず検証は必要だと思うんですけれども、そういう意味で検証前の感覚的なことを言うと、やはり何人かの方がおっしゃったように、資産運用会社までは入ってくる、あるいはスポンサーまで入ってくるというあたりの議論と、資産保管会社、一般事務受託会社に関する議論は、相当濃淡が違うのではないかと思います。一般の上場会社のアウトソース先に当たるようなものまでが、内部者として同視されないような配慮は必要だろう。まさにお書きいただいているように、REITの特性、実態をよく見きわめて考えないといけないのではないかということでございます。

同じことが重要事実の選別についても、これについては事務局のご提案の方向としては、株式会社を前提として実態を見ながら差し引きしていくみたいな、あるいは加減していくようなことなんですが、ほんとうに株式会社を前提として、それに足したり引いたりするというアプローチが適切なのかどうなのかという、その前提のところからやはり検討がなされるべきではないかと思っております。株式会社の場合は非常に複雑で雑多な事実が、業績とか株価に影響するわけですけれども、比較的REITの場合は、利回りに重要な影響を与えるかどうかというところに最も大きなポイントがあって、そこが投資判断に影響してくる、一応そこがコアになってくるのではないかと思います。株式会社ほど複雑な活動をしているわけでもございませんので、それらを横に並べて、これからここを外してこれを足してというような発想自体がどうなのかと思います。

資料でも金商法157条に言及されているのは、あるいはそういう趣旨なのかなという気もしたんですけれども、もともと今の株式会社のインサイダー取引規制が理想的なものであればまだしもということですが、申しわけありませんが、必ずしも皆さん理想的だと思っていない中で、それを前提としていいのか。

いずれにしても物件の売却とか購入のサウンディングとか、そういったものにまで萎縮効果が出るような重要事実の範囲の拡大、あるいは会社関係者の範囲の拡大は、REITのオペレーションそのものに悪影響が出ますので、そういうことがないように配慮が非常に必要だと思っています。極論しますと、やはりほんとうは包括規定1つでいったほうがいいのかなという感じが私はしております。

そうはいっても包括規定一つとならない場合に、適用除外ですけれども、今株式会社の場合には従業員持ち株会の適用除外がございますが、REITには従業員がおりませんで、資産運用会社とかスポンサーの職員が、愛社精神の発揮で持ち株会みたいな形で投資をしたいというニーズがあるのではないかというときに、除外規定でそれをカバーすることを検討されてはどうか。また持ち株会のところで、そこに集団投資スキームの規制がかかってしまってもいけないと思います。

それから、過半数議決権保有制限の見直しのところですけれども、資料で、例外の対象とすべき例がほかに存在するかという問いかけがございまして、1つちょっと思い浮かぶのは、大規模な不動産の再開発みたいなことをするときで、地権者が多数いるときに、その不動産の管理目的でSPCを設立して、多数の地権者がお互いに話し合っていたのでは、らちの明かない管理行為をSPCがまとめてやるというケースがございますけれども、そういったものの場合、REITのスポンサーになる企業がその土地の過半数、半分以上を持っていて、管理会社SPCの持ち分の半分以上を持っている。これをREITに入れるようなときに、こういった管理会社SPCの持ち分についても、やはり50%以上一緒に移す必要が出てまいりますので、これはSPCの法人の支配権の50%をとるということですが、事業法人の支配権とは異なって、この場合はもう不動産の所有権・支配権とほぼイコールでございますので、必要がある一方で弊害は出ないだろうと思っております。

それから税務上のご指摘がございますけれども、租税特別措置法の導管性要件として、株式保有割合だけではなくて「出資」についても50%未満となっているんですが、投信法上は株式しか制限されていなくて、出資には制限がないんですが、匿名組合出資等における出資割合の50%以上を取得することを、特にそれを投信法上の考え方と変えて別異に考える必要があるのかなということもございます。先ほど来、税務の話が出てございますけれども、この点の税務当局との話し合いが必要になるというご紹介がございましたが、そのときにこの点も1つのポイントとして検討していただいたらいかがかと思います。

その他の検討事項については、いずれも賛成でございますし、税会不一致についてほかの委員の先生がおっしゃったことについても、全く同感で、やはりREITについてはご苦労の一たんは先ほどご説明いただきましたけれども、税務との関係でワーカブルなものにしていくことがどうしても必要かなと思います。

以上です。

○神田座長

ありがとうございました。

それでは、沖野委員、どうぞ。

○沖野委員

ありがとうございます。

11ページの「投資家の信頼を高める意思決定確保のための仕組みについて」ということで、12ページで幾つかの方法が提唱されており、その手法のどれがよいのか、あるいはどういう組み合わせがよいのかを考えていくに当たっての、理解のために確認させていただきたいことがございます。

第三者チェックの仕組みという中で、役員会の役割を重視する考え方、あるいは資産運用会社におけるコンプライアンス委員会の設置等の活用ということで、外部者の活用とされているのですけれども、先ほど大崎委員から、このコンプライアンスのほうは視線が違うことにならないかというご指摘もあったところですので、その点を確認させていただきたいのですが、それぞれの第三者が期待される役割を十分に果たしてくれなかったときの責任といいますか、担保といいますか、それはどのような形で仕組まれることになるのか、あるいは現在なっているのかという点を確認させていただきたいのです。

具体的には、例えば役員会での意思決定が適切になされなかった場合に、おそらく各人の善管注意義務違反ということで責任追及をしていく。あるいはコンプライアンス委員会や社外取締役についても、それぞれの善管注意義務違反ということが問題になるかと思うのですけれども、それが最終的に投資主から直接、間接、あるいは段階的にその責任を追及できるような仕組みになっているのか、なり得るのか。役員会はそうなりそうな気がするのですけれども、資産運用会社の場合ですと、そこはやはりそのままでは無理なのかなという気がいたします。そうすると先ほどの大崎委員のご指摘につながっていくように思います。その部分が確保されないと無用だとは全く言わないのですけれども、提示されている手法間にその部分の手当てにおいて軽重があるような気がしたものですから、確認させていただければと思います。

○横尾企画官

ありがとうございます。

ここの問題はほんとうに非常に難しくて、私どもも、これ1つとか妙案がなかったものですから、いろいろなものを列挙させていただいているわけですけれども、今、沖野先生からご質問のありました点は、資産運用会社のコンプライアンス委員会などが正常に判断されなかった場合に、投資主からどういうアクションがあり得るかということでございますね。

当然でございますけれども、現行法上、REITから業務の委託を受けた資産運用会社のガバナンスについて特に投信法上何か規定があるわけではございません。コンプライアンス委員会の設置などは単なる各社の自主的な取り組みでございます。しかしながら今日、ARESから資料を出していただいておりますように、そういうことを非常に厳格にやっているので、役員会によるチェックとかをルール化することは重層的で、かえって実務を阻害するという意見も出てございます。そういったこともありまして、我々としては複層的にいろいろな選択肢を挙げさせていただいています。

ちょっと答えから外れてしまいましたけれども、法令上あるいは自主規制上、何らかそのコンプライアンス委員会等に対して、投資主がアクションを起こせるような措置があるかというと、現状ないところでございます。

○神田座長

ありがとうございました。よろしいでしょうか。会社で言えば、取締役については法令上責任とか手当てがあるけれども、コンプライアンス委員会とかを自発的につくって、そこで何かしても、そのことについては、結局は取締役がそういうことをした全体を見て、任務懈怠あるいは忠実義務違反があったかどうかというところでしか、法的には担保されないという話ですよね。投資法人の場合も同じで、執行役員とか監督役員については、投資法人に対する損害賠償責任の規定は、115条の6がありまして、第三者に対する責任も115条の7、それから投資法人に対する責任については、いわゆる代表訴訟と呼ばれている制度が116条で用意はされているのですけれども、結局ここに帰着するというか、そういうことなので、ですからおそらく先ほどから出ているご指摘からしても、仮に例えば鑑定評価等の情報開示をしてはどうかというお話でも、その開示する主体は、やはりこの役員とする必要はあると思います。ただ開示だけでいいのかということがあって、割引率の取り方によってものすごく変わるという、実際数字が全然違ってくるということだとすると、なぜこの割引率を使ったかという説明をやはりしてもらわないといけないと思います。

東証がおそらく一般の事業会社、上場会社に求めている一定の行為のルールは、そのように独立した人による説明を求めていると思いますし、ですからなぜこの割引率を使ったかという、やはり説明を、例えば独立した人ということで言うなら、監督役員がする。それは投資主あるいは市場に対してするというふうに、情報主体のルールで行くなら行くか、それに加えて、またはということで、シンガポールの制度ですか、投資主総会で承認するか、これはオアの関係だと思いますけれども、何かそういうところで工夫ができないのかなというところかと思います。皆様方からいろいろなアイデアなりご指摘はいただいているところですけれども。

そんなところで、今の点は、差し当たりよろしゅうございますか。

それでは大分時間が押しておりますので、タテ3、タテ4、石黒委員からは最後のタテ5について、もう意見をいただいてしまったのですけれども、ほかの委員の皆様方から、タテ5について、具体的には18ページ、19ページですが、もしご意見があればと思いますけれども、いかがでしょうか。

小沼委員、大崎委員の順で、小沼委員、どうぞ。

○小沼委員

18ページのこちらの記述につきまして、こういう理論の整理ができるといいなと思っております。それは、投信法上のこういった支配をする観点から実質パススルーしているものについて、不動産ということでございますので、前回これはグローバルにREITが発展するために非常に重要だというお話を私もしたんですが、よくよく考えてみますと、少なくとも投信法上こういう概念で整理ができるのであれば、対象の不動産はもしかしたら国内の不動産であっても同じ理屈なのかなと思っておりまして、一部の不動産関係の業務で、国内の物件にもSPCを通すことも徐々に出てきているというお話も聞きましたので、コメントさせていただきました。

○神田座長

どうもありがとうございました。

大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

19ページに出ている件ですけれども、まずここに出ている事柄はいずれも非常に妥当なことで、対応すべき問題ではないかと思っております。特に「一般事務委託契約変更のうち軽微な変更の」云々のところですが、これは私は基本的にはいろいろなことが外部委託されているとはいうものの、資産運用をどこに任せているかというのが投資主にとっては最も関心のあるところなので、そもそも一般事務委託契約について一々通知する必要があるかというのは、甚だ疑問に思っております。

それから、最後に、J-REITを念頭に置いているが、それ以外について見直しが要らないかという話ですが、これは私は非常に気になっていまして、例えばさっきのインサイダー取引なんかの件も、不動産に特化してしまったような重要事実の書き方なんかはぜひしないようにしていただいて、そのようにしないと後々すごく混乱するのではないかと懸念しておりますので、またあまり一般化しようとして書くと意味がわからなくなるというリスクもあるんですけれども、できるだけ、どのような対象資産を運用していても対応できるような規定にしてほしいなと思います。

○神田座長

どうもありがとうございました。

ほかにタテ5、いかがでしょうか。井潟委員。

○井潟委員

私も、18ページのSPC等への出資規制のところの緩和についてです。非常に重要ではないかと思っております。たしか前回、ARESの巻島さんからもお話があったかと思いますが、日本企業が海外、例えばアジアで事業展開を行って、そういった企業が自社の商業施設などのオフバランス化と資金調達を目的に、J-REITの組成を検討するケースが生じているとも伺っています。現状においては、このページにもありますように、海外不動産のJ-REITへの組み入れが実質できない、難しいという状況であるようでございますので、これをSPC等出資規制を緩和することで、グローバルに事業展開している日本企業が保有・使用する不動産を、J-REITで日本国内から投資できるようにすることは、J-REIT市場の発展、広がりにつながると同時に、日本企業の海外への積極的な展開を日本国内の金融資産で支援していくという、大きい効果ももたらされるという点では、非常に重要視しています。

吉野会長や黒澤課長でまとめられている、先月発表された、もう一つの金融審ワーキング・グループ、いわゆる「在り方ワーキング」でも、日本企業の海外への積極的な展開を日本の金融が支援できているか、日本の個人金融資産などが支援できているだろうかということが、1つの大きいテーマだったかと思いますが、そことも重なる点で、法律の話ではないのですが、税務当局との相談なども必要なわけですけれども、意義は大きいのではないかと思っている次第でございます。

○神田座長

どうもありがとうございました。

そろそろ予定の時間ですけれども、11ページ以下をもう一度振り返りますと、11ページ以下の12ページ、13ページ、そして今の18ページにつきましては、いずれも資料にある留意点には当然留意をしながらですが、先ほどから皆様方から大変貴重なご指摘を幾つかいただいておりますので、それも踏まえてご検討をいただく。18ページも、今幾つかご指摘をいただきました。19ページは、どういう方向と具体的に挙げられているわけではありませんが、大崎委員のご指摘もありますので、なお検討をしていただくという方向かと思います。

私がちょっと気になったのは、インサイダー取引は、若干ご意見にニュアンスの違いがあった委員の方々があったと思うのですけれども。1つは、内部者の定義のところで、これは私の理解では、黒沼委員がおっしゃったように、現在の枠組みが、契約締結者はゼロ次情報取得者になっているものですから、そう図は書いてあるということですよね。

それからもう一つ、石黒委員でしたか、あまり厳しくすると不動産取得に影響が出るのも、またそれはそれでというご指摘があったと思うのですが、これも現在のインサイダー取引規制の枠組みですと、一般の事業会社でも例えば工場を建てたりいろいろなことをする事業展開についての内部情報はあっていいわけで、取引をしなければいいので、そこは現在のルールで言えば、いわゆるディスクローズ・オア・アブステインというルールになっているわけですから、ちょっとそういうものとのバランスで考えられると思います。ただし、内部情報の不正な利用に関する規制のあり方そのものについて将来ひょっとするとまた違った議論になってくるかもしれませんけれども、インサイダー取引規制の一般的な動向をもにらみつつ、ルールを整備していくということではないかと思います。

吉野先生、お願いします。

○吉野金融審議会会長

時間になっていますが、1点だけ、3ページのところの、これを目指していただきますと、今回の大きなJ-REITの価格の変動というのは、金融機関の左側、真ん中の左ですけれども、「金融機関の貸し出し姿勢」と、右側の海外の短期の投資家が資金を短期で動かしたことにより、大きく価格が変動した可能性があると思います。

それから18ページの、海外の不動産に投資する場合には、為替リスクの問題がありますので、井潟委員のお話のように日系企業が海外の投資対象不動産にオフィスを構えているのであれば、日系企業が円で海外不動産の賃料を払うという、円・円で支払い・受け取りにより為替リスクを回避するという、おもしろいやり方もあるような気がいたします。コメントです。

○神田座長

どうもありがとうございました。

オブザーバーの方々、ちょっと時間が過ぎましたけれども、もしご発言があれば承りたいと思います。できれば手短に。投信協会、どうぞ。

○投資信託協会(城川オブザーバー) 

投信協会です。手短にですね。

委員の皆様から貴重なご意見を賜り、ありがとうございます。私からは、資金調達手段・資本政策手段の多様化については、やはり金融危機のときに資金調達に苦労した経緯もございますので、ぜひ前向きにご検討のほどをよろしくお願いしたいと考えております。

次にガバナンスについてですけれども、ガバナンスの中のインサイダー取引規制について、これは当然導入するという前提であった場合に、重要事実の範囲というご議論があったかと思いますけれども、例えば、その重要事実の範囲は基本的に賃貸事業を行う上場企業並みとすることも、1つ考えられるのではないかと思っております。また資料の16ページに記載されています、投資法人と同視する範囲についてですけれども、先ほどから議論がありますが、資産保管会社と一般事務受託者は除きまして、主体となっている運営に係る運用会社までというふうに含めてはどうかと考えております。

私からの発言は以上です。ありがとうございます。

○神田座長

ありがとうございました。

不動産証券化協会、どうぞ。

○不動産証券化協会(巻島オブザーバー)

 これまでの議論に出なかったことで1点だけ、要望がございます。私どもの協会から本日提出しております書面、「投資法人法制の見直しについて」の4ページ目、5「運用財産相互間取引について」です。投資信託にかかる運用財産相互間取引につき、合理的な範囲で規制の見直しをすべきだとの議論が4月13日の本WGにてございました。不動産の運用は、特殊であり状況は異なりますが、信託受益権にかかる運用財産相互間取引禁止規定の適用除外につき、現物不動産の当該取引にかかる適用除外の取扱いも踏まえ、合理的な範囲で規制の見直しをお願いしたいと思います。今、上場リート、私募リート、及びその他私募ファンド等、複数のファンドを運用し規模拡大を図る投資運用業者が既に出てきております。こういった取組が、投資運用業を含む金融業の成長・発展につながるものと思います。詳細な要望内容は、本日提示しました書面に記載がございますので説明は割愛させていただきます。是非ともご検討をお願いできればと思います。

以上です。

○神田座長

どうもありがとうございました。

それでは予定の時間をちょっと超過して、大変恐縮でございますけれども、本日はこのあたりとさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。なお追加でお気づきの点、ご意見がおありの場合には、事務局までお寄せいただければと思います。どうもありがとうございました。

最後に事務局からご連絡等がありましたら、お願いいたします。

○横尾企画官

ありがとうございます。次回の日程でございますけれども、6月22日14時からとさせていただきたいと思います。後ほどまた改めてご連絡を差し上げますが、よろしくお願いいたします。

○神田座長

それでは本日はこれで散会いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3621)

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