金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第5回)議事要旨

1.日時:

平成24年5月11日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

  • 1.開会

  • 2.事務局説明

  • 3.自由討議

  • 4.閉会

4.議事内容:

  • 事務局からの説明の後、討議が行われた。

  • 討議における主な意見は以下のとおり。

(総論)

  • 現在の投資信託市場に参入している日本人投資家の中には、もともとリスク性商品の購入を望んでいない層、適合性に欠ける層があると思われるところ、そのような者に販売会社が投資信託を売ることのないように、別途対策を講じる必要がある。
  • 投資信託は、他の金融商品と組み合わせで売られていることが多く、そういう中においてもルールの在り方とを検討すべき。
  • 議論の前提として、一般投資家はどういった属性の人たちであるかを考えるべき。投資信託を国民の資産形成のための金融商品と期待するならば、一般投資家はリテラシーが高くない投資家と想定せざるを得ない。
  • 一般投資家像を考えるに当たっては、投資リテラシーの程度のみならず、情報や時間が不足している者であるということも前提に置く必要がある。
  • 諸施策を行うにあたっては、諸外国の成功事例を参考にして、様々な障害を乗り越えてほしい。

(運用報告書の改善等について)

  • 交付運用報告書はわかりやすさを重視した投資家向けのもの、縦覧(請求)運用報告書は正確性を重視したものとの位置づけを明確にすることで、より一層使い勝手のよい運用報告書となるものと思われる。
  • 詳細な運用報告書については、
    • コスト軽減という観点から、インターネット等による縦覧で足りるものとすべき。
    • 運用報告書の二段階化において、詳細な運用報告書についてはインターネットによる縦覧ではなく、請求を受けて紙ベースのものを交付するという法律の建前は維持すべき。
      • その際、紙ベースの請求運用報告書の交付を行うこととする場合、当該交付に係るコストまでインターネットによる縦覧で十分だと考える投資家が負担することは当該投資家のトータルリターンが不相応に下がってしまうことに鑑みれば、紙ベースの請求運用報告書交付に当たっては、交付を望んだ投資家から費用を徴収すべき。
  • 縦覧運用報告書につきホームページ掲載を求めるものとした場合、外国投資信託については代行協会員のホームページを利用することとなろうかと思われるが、それが実務上ワークするかについて確認が必要。
  • 罰則関係、報告期間関係等に差異があるため、運用報告書と有価証券報告書の単純な統合は難しい。ただ、オープンエンド型投資信託については、有価証券報告書と目論見書の統合を検討する余地はある。
  • 運用報告書の二段階化を行う場合,外国投資信託については、海外の投資運用者に現在求められていない新たな負担が発生しないよう留意が必要。

(トータルリターン把握のための定期的通知制度導入について)

  • システム対応上、販社側で過去に遡及をして累積のトータルリターンを計算していくのは非常に困難であると思われるが、投資家がトータルリターンを把握するためのサポートは、リテラシー向上のためにも非常に重要。
  • トータルリターンの通知制度は、販売会社・運用会社・投資家の目的関数が同一化に資するので、導入すべき。また、どのようにトータルリターンを求めるかということを併せて通知すると、投資家の理解に資すると思われる。
  • トータルリターン把握のための開示については、自主ルールの下での業者間のサービス競争によって強化していくべき。
  • 同制度導入のコストが投資家に転嫁されることのないようにしてほしい。
  • 現状において、個別の投資家ごとのトータルリターンを捕捉して通知することは、少なくとも運用会社には不可能だと思う。
  • 通知義務者については、販売会社と運用会社の二者とすることも考えられる。
  • 信託報酬等については、率のみの通知ではなく、運用期間中の全実負担額を投資家に通知すべき。
  • トータルリターンの算定に当たって保有しなければならないデータはどの程度の期間のものであるべきかという議論は必要。

(販売手数料・信託報酬に関する説明について)

  • 販売手数料・信託報酬に関する説明を充実させることにより、サービスに対する投資家の理解・意識の向上につながる。これにより、有用なサービス、商品を提供する業者が生き残り、そうではない業者が淘汰されていくという競争プロセスの促進が期待できる。ただ、その前提として、法令で開示を義務付けるべき最低限の情報は何かという議論がまず必要。
  • 信託報酬における「その他の手数料」という項目について、記載の有無等が実務において統一的でないため、統一化が図られるとよい。
  • 開示書類においては、一般的に馴染みの薄い「信託報酬」等の用語ではなく、よりわかりやすい用語を使うべき。
  • 市場参加者が情報を得られるようになって、市場参加者が合理的判断を行えるようになった結果、市場のゆがみが是正されることが期待できる。例えば、あるサービスを受けるに当たって割高にコスト払っているという情報を投資家が容易に得られることとなれば、投資家側も当該サービスを利用するかについて選択するようになり、結果として、サービス提供に係る価格メカニズムもより働くようになると思われる

(販売・勧誘時等のリスク等についての情報提供について)

  • わかりやすさと正確さとのバランスをどのようにとるのかを検討する際には、投資信託の製造と販売を行う両業者、法律家、金融工学系の研究者等から知見を得ることが必要。
  • 欧州の動向に配慮しながら、制度導入の是非を検討すべき。
  • 説明されるポイントが多過ぎて商品内容がよくわからなかったという投資家からの指摘があることに鑑みれば、標準偏差等を用いて開示することが逆に投資家を混乱させる可能性があることに留意する必要がある。
  • リスクの情報提供については、専門用語を使わない、日常用語のみで理解できる説明内容に改める等、とにかくわかりやすく行われるべき。例えば、東証株価指数等の馴染みやすい指数との比較においてどの程度のリスクがあるのかといったことを示すことができればよいと思われる。また、投資信託の購入者の多くは高齢者であるところ、その高齢者が実際にわかるような説明となっているかにつき、作成段階で検討を行って欲しい。
  • 様々なリスクを内包している商品については、それぞれのリスクが具体的にどの程度かを投資家が理解することは困難であるため、「最悪のシナリオを想定した想定最大損失額」等を含めた形の説明を要求することは有用だと思われる。
  • また、販売員が金融商品の複合的なリスクを把握して、適合性の原則に基づいて販売できているのかというと疑問があるので、販売員においてリスクを把握しやすくするという観点でも、わかりやすいリスク開示が必要だと思われる。
  • どういったリスクを内包した商品であるかということを感覚的に投資家が理解できることが重要。例えば、とある販売会社のホームページにおいては、リスク要素ごとにマークを独自につくって、各ファンドに該当するリスクのマークを付すといった取組みがなされている。
  • 商品のリスク開示に際しては、投資家にとってのわかりやすさを確保すべく、一定の統一性をもって表示されることが必要。それを法令において求めるか、自主規制ルールにおいて求めるかは要検討。
  • リスクの情報提供に係る欧州の取組みは、一定以上のリテラシーを備えた投資家にとっては非常によい取組みだと思われるが、投資初心者クラスに理解容易な情報を提供するものであるかは疑問。
  • どのような商品が複雑で、投資家の理解が困難なものとなっているかについて、消費生活センターや金融ADRから具体的事例を聴取する機会があれば、制度のあり方をより具体的に考えられるものと思われる。
  • 販売・勧誘時に商品のボラティリティを開示する場合、当該ボラティリティがあくまで過去データに基づいて算出されたものであることに留意。
  • 投資対象資産の種類ごとに分布が異なる点を勘案すれば、ボラティリティだけで商品を比較できるものではない場合も多いものと思われる。

(商品のリスク量についての制限について)

  • 商品のリスク量制限については、
    • 情報の非対称性の解消により投資者保護を達成していくことが望ましいが、現在の投資信託市場ではその達成に時間がかかるであろうことに鑑みれば、投資信託について何らかの商品内容の規制は検討せざるを得ないと思われる。
      • 法令上の措置によって「投資家の信頼を確保するんだ」というメッセージを出すことが重要。その一環として、一定の商品内容規制を法令上導入することはあり得ることだと思われる。
      • 投資信託市場に参加する人の類型化を行いつつ、一定の場合に商品内容の規制を考えることも必要。規制のあり方については、様々な専門家による常設の会議体による公開の議論に基づくこととすると、国民の投資信託への安心感が増すものと思われるので、そういった取り組みも行って欲しい。
    • リスクの総量規制のような商品に直接制限をかけるようなタイプの規制は、本来は自由なマーケットである投信マーケットにおいては慎重に行うべき。
      • 一定の基準を超えるリスク量を有する商品については、商品のリスク量を直接制限するのではなく、その旨を明示することによって注意喚起する等の方法もありうる
  • 仮に商品のリスク量制限を導入する場合、機械的に同じ基準を外国投資信託に適用するのが適切かについては慎重な検討が必要。
  • 商品のリスク量制限を導入するに際しては、UCITS等海外事例やその効果を参考にするべき。ただ、欧州においても、国内販売をするのであれば必ずしもUCITSの規制に従う必要はない点に留意。

(その他)

  • 投資家保護のためには、情報開示の強化のみならず、分配金の原資の問題や投資信託のガバナンスの問題をも検討する必要がある。
  • 外国投資信託については、その投資パターンによって異なる体系の開示規制に服する仕組みとなっているところ、各開示規制の厳格さのバランスをとることが重要。また、どのような点が国内投資信託と異なっているかについて、販売資料等において明示し、投資家の理解を促進することも重要。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3621)

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