金融審議会「投資信託・投資法人法制の見直しに関するワーキング・グループ」(第10回)議事要旨

1.日時:

平成24年10月12日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

3.議題:

  • 1.開会

  • 2.事務局説明

  • 3.自由討議

  • 4.閉会

4.議事内容:

  • 事務局からの説明の後、討議が行われた。

  • 討議における主な意見は以下のとおり。

【投資家の信頼を高める意思決定確保のための仕組みの導入】

(利害関係者との取引内容に係る第三者監視機能強化策)

  • 事務局説明資料中、資産運用会社のコンプライアンス委員会について、「その第三者監視機能が制度的に十分に保証されているとは考えられないのではないか」という表現につき、コンプライアンス委員会に係る自主的な取組みの意義が公的に否定されたと誤解されてはならない。
  • 投資法人役員会の事前同意取得の義務化の対象とする個別取引の範囲に、「賃貸借」が含まれること自体に異論はないが、賃貸借条件の総合評価は必ずしも容易ではないのではないか。
  • 投資法人役員会の事前同意取得の義務化により、役員に過重な責任がかからないよう、方向づけをしていく必要がある。
  • マーケット参加者からヒアリングを行ったところ、投資法人や資産運用会社の第三者監視機能に対する期待はかなり少ない。逆に、その第三者への給与や事務費用のようなコスト増加を懸念する意見があった。
  • 海外投資家からは、スポンサー(資産運用会社の親会社等)からの物件取得プロセスにつき、「シンガポールや香港であれば、ファンドの純資産額の5%以上を超える資産取得は投資主総会にかける決まりがある。日本はこういうところが弱い。」というような批判が典型的。日本においても、もう少し投資主総会が活用される基盤を追求する工夫があってもいいのではないか。
  • 投資主総会の開催コストに関して、投資家にとって負担になる部分もあるが、意思反映のチャンスと考えるところもあるだろう。投資家によって考え方は違うのではないか。
  • 一般には、投資信託を含めた集団投資スキームは通常は分散投資しているので、投資法人で言うところの投資主総会を開いて物事を決めることはあまり想定しない。他方、不動産投資法人の場合は不動産事業を行う会社のようになるので、分散投資している典型的・伝統的な集団投資スキームとイメージが異なる。
  • 投資法人の監督役員の欠格要件に該当する者に、スポンサー(資産運用会社の親会社等)の利害関係者を追加することに関し、既に就任している役員が新制度にどの程度抵触するのかインパクトの事前測定を行い、必要に応じ経過措置を手当てすべき。
  • マーケット参加者からヒアリングを行ったところ、物件取得や銀行借入れにおいて、スポンサー(資産運用会社の親会社等)と投資法人の関係がプラスに作用している面も多くあり、必ずしも独立性を一方向で高める必要がないという意見があった。スポンサーのバリューはJ-REITの価値の中に含まれており、無視できない。
  • 制度の考え方は、独立役員過半数ということを要求して出発している。それが担保できなければ、では投資主総会で承認をとるか、という話になる。独立役員制度をきちんとして、そこで事前承認をしていくということで筋を通せないか。

(利害関係者との取引価格に係る事後的なチェック機能向上策)

  • 鑑定評価に係る情報の開示項目統一は非常に有意義。
  • 詳細な情報の開示を求め過ぎて、資産運用会社のテナントとの交渉力が弱まったり、競合物件へのテナント引き抜きの材料になったりして、最終的に投資主の不利益になることを懸念。
  • 鑑定評価額の算出根拠の詳細な情報の開示につき、「特段の理由がある場合は当該項目の開示を免除する」とあるが、「特段の理由」というのをあまり厳格に絞り過ぎないほうがよい。運営上の問題が出てくるのではないか。
  • 単純にテナントが承諾しないという理由で開示が免除されるのならば、顧客は納得しないだろう。どういった理由でテナントが開示を承諾しないのか、具体的な理由を示さなければいけないなど、標準の開示モデルを定めるべき。仮に裁判になった際、一番問題になるのはこの点だろう。
  • DCFでは割引率のほか、将来のキャッシュフロー成長率を動かすと、結果が大きく動く。直接還元法だけでなく、DCFによる評価の前提の開示が必要。
  • マーケット参加者からヒアリングを行ったところ、開示が過剰になると逆に使いづらくなるので、必要な開示項目を統一してほしいというニーズがあった。基本的なことが開示されれば、プロの投資家・いわゆる機関投資家等は判断できると考えられ、そこが抑止力になってリテールの投資家も守られるのではないか。

【インサイダー取引規制の導入】

  • 基本的にREITの運用は、資産運用会社までで一応完結しているというのが投資法人制度の前提だと思う。資産運用会社には、投資法人のために預かった情報を厳格に管理する義務があり、スポンサー(資産運用会社の親会社等)に情報が素通しになっているようなことは実態としてもないと理解。スポンサーを株式会社の親会社と同様に考えていいのだろうか。
  • 実態上、スポンサー(資産運用会社の親会社等)発の情報が重要な情報になることもあるのではないか。インサイダー取引規制の範囲について、事務局の整理に賛成。
  • スポンサー(資産運用会社の親会社等)も投資法人と一律同視することになると、スポンサーの株主まで会社関係者に入ることになり、範囲が広くなり過ぎるのではないか。
  • 一般の株主は会社関係者にはなっておらず、帳簿閲覧権を行使して情報を知ったような株主しか会社関係者にならない。範囲が広くなり過ぎるという点をあまり心配する必要はないのではないか。
  • 重要事実の範囲につき、実例に基づいたアプローチは大変ありがたい。現実的なところでは、事務局案でよい。
  • 軽微基準に加え、除外規定も別途検討し、具体的な制度への詰めがなされるものと期待。
  • 公開買付けの決定や、株式買集めの決定も重要事実として捉える必要があるのではないか。
  • 個別列挙方式で行う場合の軽微基準等の定め方に関連して、現在の取引所の開示指針は、できるだけ投資家に情報を提供するという観点から定められており、刑事罰や課徴金の対象になるという前提では定められていない。技術論の話になり、取引所の開示指針との並びを考える際には、この点に配慮して検討すべき。
  • 重要事実の範囲をどこまで絞っていくかは、親子間の関係にあるケースにおいては難しい問題。スポンサー(資産運用会社の親会社等)の株主にとって情報が全く得られなくなってしまうということがないよう、配慮が必要。
  • 行動経済学から見れば、インサイダー取引がなされることによって、金融市場全体が大きな外部効果を受ける。罰則が甘過ぎると続くと思う。

【資金調達・資本政策手段の多様化】

  • 資本調達・資本政策手段は、リーマン・ショックのような有事の場合に対応できるよう、柔軟に使えるメニューを取りそろえておくべき。

(ライツ・オファリングについて)

  • 基本的に新投資口予約権の発行に関連させないということであれば賛成。
  • 新投資口予約権発行のニーズには、ライツ・オファリング以外に、運用会社の役職員のインセンティブとしてのストックオプション等もあるのではないか。

(無償減資について)

  • 欠損填補を目的とする出資の減少に範囲を限定するということで賛成。
  • 通常の会社でも欠損填補の手続等はできるが、厳格な法手続きが要求されるし、頻繁にできるものではない。無制限に認めてしまうと、過去に累積で損失が出ているのに利益の配当を計上し続けることができることを懸念。ある程度の歯止めとなる規定が必要。

(自己投資口取得について)

  • 投資主総会の開催には非常に時間と労力がかかると聞く。万一の市場の変化に対する機動性を確保する観点からは、自己投資口取得上限枠の決定も役員会決議とすべき。
  • 利益超過配分を許すという考え方からいうと、特に自己投資口取得上限枠を定める必要はないのではないか。
  • 自己投資口取得の導入目的が、財務基盤の安定性向上であるというロジックが理解できない。資金や資本効率向上や、株式の需給対策のツールとしての解禁には賛成だが、財務基盤を強化するための手段としての解禁には違和感。
  • 非常時にはある程度フレキシブルに利用できるような例外事項を加えておくと、マーケットがスムーズにいくのではないか。
  • 例えば、スポンサー(資産運用会社の親会社等)交代に伴う旧スポンサーの保有投資口エグジットの際、市場に大量に出ることを避けるための方法の1つとして、特定投資主からの自己投資口取得が考えられる。弊害がなければ、認める方向性がよいのではないか。
  • 特定投資主からの自己投資口取得を認める場合には、投資主の平等な取扱い、公平性の観点から、投資主総会決議が必要。
  • 現在利益超過配当が役員会決議でできるという法制になっており、この妥当性についても議論があると思う。今後、いろいろな者が参入してきたり、投資法人が一層発展したりしたときに、濫用されたり、議論が出てきたりするのではないかと懸念。

【その他】

  • 日本の投資法人において、投資主が直接参加・意思決定をもっとしたほうがいいのか、あるいは基本的には「お任せ」であって、役員会で意思決定をしていくのか、方向性を出す必要がある。
  • 中間論点整理において事務的に検討すべき事項とされた「海外不動産取得促進のための過半議決権保有制限の見直し」に関して、海外不動産だけではなく、国内不動産をSPCを使って取得をしている実態も出てきている。この点も今後の検討の中に残しておいていただきたい。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局市場課(内線3621)

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