金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第6回)議事録

  • 1.日時:

    平成23年10月28日(金曜日)13時30分~15時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○吉野座長

それでは、ただいまから「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」の第6回目の会を開催させていただきたいと思います。お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。

第1回目の会合でご了解いただいておりますが、このワーキング・グループは原則公開としております。このため、今日も公開とさせていただきたいと思います。

それでは、本日の議事に入らせていただきますが、本日は前回に引き続きまして、地域経済における金融機能の向上をめぐる論点、その中でも地域経済における金融サービスの需給状況につきまして、今日は金融サービスのユーザーサイドでおられます中小企業、それから有識者の方々にお話をいただきたいと思っております。

皆様からごらんになって右手のほうにお座りの4名のゲストの方々に、今日はお話を伺います。第1番目は、新興企業の育成にかかわっていらっしゃるファンドのお立場から、インスパイアの高槻代表取締役に最初にお話を伺います。2番目は、成長段階にある企業で、海外に進出されている中小企業のお立場から、富士セイラ株式会社の髙須代表取締役に2番目にご説明をいただきます。そして一たん質疑応答を挟みまして、3番目といたしましては、再出発を果たされました企業のお立場から高性能駆動装置開発の佐藤代表取締役にお越しをいただいております。それから4番目は、国内の金融機関にお詳しいシティ証券の野﨑マネジングディレクターからご説明をいただく。こういう4名の方々にお話を伺う予定でございます。

それでは、早速でございますが、最初にインスパイアの高槻代表取締役から20分程度、資料のご説明をお願いいたします。

○高槻代表取締役社長(インスパイア)

今ご紹介いただきましたインスパイアの高槻と申します。本日はよろしくお願いいたします。

お手元の資料をごらんください。新興企業及び投融資を行う事業主体としての金融サービスへの認識ということでまとめさせていただいております。

まず最初に、インスパイア自体、何をやっておるかということを簡単に1枚目の資料で説明をさせていただきますけれども、当社は自己資本投資並びに、いわゆるファンドを通じてのベンチャーキャピタル投資、それから主に大企業を対象とした事業開発のためのコンサルティング等の支援サービス、こういったものを行いまして、いずれの場合でも新規事業の開発並びに育成の支援というものを、創業来10年以上行ってまいったというところでございます。

投資に関しては、自己資本投資の場合でも、ファンドの投資の場合でも、現状では取締役を派遣して、一緒にその経営に参画して事業をつくり上げていくというスタイルで行ってございます。

自己資本投資が、右側の図にありますように、どちらかというと、アーリーな、ないしはシードのフェーズに関して関与する場合の投資のスタイルとなりまして、一定の事業基盤ができてまいりますとファンドからの投資をするというようなやり方をしている次第でございます。

2枚目なんですけれども、そういった中で、どういった新興企業に関与しているかというところで、2社ほどピックアップしてまいりました。

まず1社目がユーグレナという会社でございます。この会社は、2005年に、当時東京大学にいた学生によってつくられた新興ベンチャーでございまして、2010年度には東京都ベンチャー技術大賞も受賞させていただくというほど順調に成長してきております。現在は8期目でございまして、7期目の実績としては、売上高が11億円強、経常利益で3億円強上げているというような規模で、社員としては、まだ40名程度のところでございます。

このユーグレナというのは、日本語に直しますとミドリムシのことでございまして、この会社、世界で唯一、ミドリムシを大量に培養する技術を有しております。このミドリムシというものは非常におもしろい生き物で、動物と植物のちょうど中間に分類されているもので、葉緑体を持って光合成をするんですけれども、一方で光に向かって自発的に鞭毛を動かして動くという動物的な特色を持っていて、体の中にいろいろ有用な成分をためるということで、現在、沖縄県の石垣島に製造拠点を持っておりまして、そちらでオープンエアの直径60メートルぐらいのプールを使って培養しておるわけなんですけれども、そこで得られたものを粉末に加工しまして、サプリメントにして今、売っている。

ところが、この会社はそれで終わる会社ではありませんで、培養環境をコントロールしますと、体の中に軽油分をつくりますので、いわゆるバイオ燃料になる。特に軽油ですので、ジェット機が用いるジェット燃料にもまぜることができるということがわかっていますので、そのための効率的な生産体制を今、確立しようとしているようなベンチャーでございます。

その次に、IIDという会社がございます。こちらは2000年4月にできた会社でございます。もう10年ぐらいたっておるんですけれども、いわゆるウェブ、インターネットの世界でビジネスをしている会社でございます。

特徴としては、通常のウェブサービスですと、情報をみずからつくり出すよりは、ある情報を組み合わせて、ポータルのような形で提供して人を集めるということが多いんですけれども、ここは専門の各カテゴリー、例えば自動車、あるいはインターネットの技術、あるいはセキュリティーなど、カテゴリーされた各分野の専門家を抱えていて、彼らがその編集をしながら記事もつくると。

したがって、下に出ているメディア事業の中のレスポンスというものなどは、ウェブの自動車メディアでは唯一だと思いますけれども、自動車メーカー各社のトップマネジメントと直接面談をしてインタビューが記事にできるような力を持っている会社でございまして、そこでまず、非常に専門性の高い記事を配信し、それがヤフーなどの大手ポータルに提供される。そこでマスコンシューマーにリーチして、その後、その記事に興味を持った方がもう一度、その専門メディアに帰ってきて、そこで詳しい情報を見るというような情報のフローをつくっていまして、今流でいうと、OtoO、オフライン・トゥー・オンラインというところをまさにデザインしている会社でございます。

したがって、これがある種のプラットホームになってきておりまして、ここに新たに買収などで入ってきたカテゴリーメディアというのは、単体では赤字だったものが次々に黒字になっていくような経営をやっている、インターネットの会社なんですけれども、少し珍しいスタイルをとっている会社です。

ここも今、売り上げ規模でいいますと21億円強、経常利益は2億円強といったところでございますけれども、成長スピードは倍倍でいっておりますので、この後も順調に成長するだろうというような会社でございます。

こういった会社に関与してきているわけなんですけれども、次のページに参りまして、新興企業へ我々、経営レベルで参加している中で思うことというのを簡単にまとめました。

まず、非常に重要なのは、成長ステージの新興企業というのは、いわゆる経営リソースのヒトも、モノも、カネも、すべて不足します。必要になって銀行借り入れ申し込んで、すぐ貸してくれるということでもございませんし、一方で、じゃあエクイティファイナンス、ベンチャーキャピタル、いろいろありますけれども、これも簡単に、すぐに話が出るわけじゃないといった中で、ぎりぎりのところで成長していても、苦労しながらやっているわけなんですけれども、結局、利益を伴う売り上げがすべてをいやしてくれるというような状況にあるわけです。

したがって、マネジメントということでいいますと、売り上げにつながるような動き方ができる経営者が非常に重要で、したがって我々が送り込む経営者についても、いわゆる経営管理的なことだけではなくて、実際に、その会社、取引先の会社の売上高が生み出されるような形、あるいは自分で売ってくるということも含めてコミットしてやっていくようなスタイルをとっています。

管理のほうに関しては、特に金融機関のほうからCFO人材のような話が出てまいりますけれども、こういう成長途上にある新興企業の場合は、でき上がった財務諸表が分析できて、そこからいろいろなファイナンス的な人が得られることも大事なんですけれども、それ以上に、そもそもどうやって、この会社の財務諸表がつくられるのか、つくられているのか、あるいは正しくつくられているのかということを含めての知識が求められるので、そういう意味でいきますと、経理、場合によっては財務の実務を過去にやったことがあって、経理でいいますと、元帳からちゃんと読み解いてチェックできるような人というのが求められます。

さらに、1人で何役もやらなければいけないので、そういう形に加えて、取引銀行との折衝ですとか、あるいはベンチャーキャピタルが入っていれば、ベンチャーキャピタルとの交渉、順調に成長していると証券会社との話も始まりますので、証券会社との折衝。そういう意味では、資本周りの資本政策に関しての知識も求められるということで、そういった人がどこでも非常にニーズとしてはあって、なかなか見つからないのが今の現状でございます。

金融サービスということで関して、もう少し違う視点で申し上げますと、日本全体としての経済成長率は、なかなか高い数字が出せないという状況において、今ご紹介したユーグレナにしても、IIDにしても、海外でも売り上げ利益を確保していくことは、もはや当たり前に検討して取り組んでいるという状況になっています。

逆に言うと、我々が投資を考える場合には、そのビジネスが海外でも売り上げないしは利益の展開ができるかどうかというのは、常に重要なファクターになっているわけなんですけれども。

したがって、金融サービスには、お金に付随するサービスだけではなくて、情報の提供という意味でいいますと、そういった意味で、海外でいかに売り上げをつくっていくかというところに関係する情報も、もっと積極的にご提供いただければありがたいなと感じているわけですし、特に海外に手厚いネットワークを持っておられる金融機関の場合であれば、現地企業が持っている情報。

現状ですと、どうしても同業他社ですとか、ある製品があれば、それを売ってくれるような会社というご紹介から始まるんですけれども、新興企業、もうちょっと手前の情報が欲しくて、例えば、ある国に出ていくときに、どこの倉庫の業者を使えば安心で取引できるのかと、そういったレベルの情報から必要なわけですね。そういうビジネス展開のために必要な情報というふうに切り分けていただいて、ご提供いただけると非常に助かるところがございます。

その次のページ、これは、今日ご出席の皆様にとっては釈迦に説法のところもあるかと思いますけれども、一応、ベンチャーキャピタル、新興企業、どう取り組んでビジネスをやっていくところで、どんな立ち位置でやっているかということを若干整理したものでございまして、こういった領域では規模の大小ですとか、その企業ステージの状況に応じて、幾つか投資主体等があると思います。

一番左側に、類型としてVenture Capital、これは我々がやっているところですけれども。それから、Private Equityの世界とPrincipal InvestmentとInvestment Banking、証券会社的な話というのを書いておりますけれども、資金源の違いは当然、金融活動への違いにも反映されておりますし、通常、Venture Capital、Private Equity双方のファンドを通じての投資ということになりますが。Principal Investmentは名前のとおり、自己資本の投資になってまいりますし、Investment Bankingであれば、他人資本に関与してビジネスをしていくと。

事業者例は、そこにあるとおり、代表的なものを少し書きましたけれども、それぞれが取り組む人が違うと。

この中で、ベンチャーキャピタルはより新興企業といいますか、アーリーステージ、ないしは交わるといっても、これから公開企業になっていくというプロセスの会社が対象でございますので、その場合のEXITのパターンとしては、下にあるように、IPOから、一番右側がDeadと書いていますけれども、おおむね5つに分かれる。

IPOは株式公開という話でございますし、Trade Saleは、そのプロセスで事業会社などに売却する。Refinanceと書いたのは、ファンドの場合は期限がありますので、ファンドの期限が到来してしまって、まだ会社のEXITのタイミングがないところでありますと、ほかのファンドに組みかえるということを意味して書いてあります。そこから先がEXITにはならないパターンなんですけれども。Living Deadというのは、これは言葉としてあれなんですけれども、要は、会社としてはちゃんとその業容を維持していて、決して倒産だとかいう話はないんですけれども、投資という観点でいきますと、IPOもできないし、Trade Saleで買ってくれる会社もいないし、利益のシステムも十分ではないので会社から買い戻すこともできないといったような状態になると、金融の世界ではLiving Deadという言い方をして、会社は生きているんだけれども投資としては死んでいるという状態になってしまう。あとはDead。これは倒産ですとか、それに類する状態になったということで、投資としては失敗でございますし、金融としても1つの区切りがつくということでございまして、そうならないように、左のほうになるようにするんですけれども、こういったEXITを想定しながらオペレーションをしていくということでございます。

特にファンドの場合は、先ほど言いましたように期限がありますので、そのファンドの期限の到来に対してどういう対応をするかというのは、これは非常に金融サイドのアプローチとしては重要ですし。なぜならば、事業サイドと全く違う理由で、結果的に事業に対しての影響も与えてしまうことがありますので、限られた期間の中で、より有効にコーワークできるかどうかがキーになっているということですね。

次のページは、これまた釈迦に説法的な話でありますけれども、こういった新興企業はどういう資金技術を持つかを概念的に書いたものでありますし、1つ注意していただきたいのは、これは今どきのインターネットのサービス系の会社には当てはまりません。なぜかというと、最近のネットの世界ですと、設備投資の部分をかなり外部化することができますし、本来であれば、サーバーを次から次に追加投資しなければいけないような状況も、いわゆるクラウドサービス的なものを活用すれば、そこのところをアウトソースすることが、PL化することができるので、これとは違うんですけれども、一般的に物をつくる、設備を維持する、人も雇ってやっていくというパターンですと、この図にあるような形になります。

まず創業の段階で創業資金が当然必要ですし、最初は売り上げも立ちませんでしょうから赤字。期間損益の赤字というのはどんどん積み上がっていくよと。その間も当然、事業は切り回す必要がありますので、資本だけで足りなければ赤字の運転資金を埋め合わせるためのファイナンスも必要ですし、それは増資かもしれませんし、政府系金融機関などからの融資というのもあるかもしれません。

順調に成長してまいりますと、おおむねこれで、日本の場合ですけれども、大体30カ月、2年半ぐらいたちますと期間損益が黒転化していく。その後も順調にいきますと利益計上が積み上がっていくわけなんですけれども、当然、設備も創業期よりも増強しなければいけませんし、そのための資金等も必要になってくる。さらに事業が拡大すれば、運転資金としても、その増加資本、それも要ると。

こういった中で、エクイティの部分というのはベンチャーキャピタルなどが担っている部分が大きいんですけれども、創業資金、それから当初の赤字資金などは現状、多分、政府系金融機関であるとか、あるいは地域の身近な金融機関さんなどがサポートしていると思いますし、期間損益が黒字化してきて設備を伴う投資などが出てまいりますと、通常の銀行などからの融資という話も出てきているのかなとは思います。

全体的には75カ月後、6年以上たつと累損も解消して、いよいよ順調な成長フェーズに入っていくということであります。先ほど紹介したIIDなんかは、まさにこれに近い形かもしれませんし、ユーグレナは、これよりも早いペースで無事に成長しているということではあります。一般的には、このような形になっていると思います。

次に、こういった中で、創業期、それからその後の成長資金を供給しているベンチャーキャピタル業界が今、足元で国内どうなっているかという話なんですけれども、これは日本ベンチャーキャピタル協会が発表している四半期レポートから持ってきたものになりますけれども、まず左側、グラフ1というほうは、投資の金額そのものの推移というところ。多少でこぼこしておりますけれども、2011年の第1クォーターでは、2009年以降でいうと最も高い金額、100億近い金額の投資が行われておりますし、当社も東日本大震災以降でも新規投資をしておりますので、決して冷えている状況ではないと思います。

ただし、その中身ははっきり変わってきておりまして、グラフ2なんですけれども、どういったステージのベンチャーに投資をしておるかというところで、ちょっと白黒だと見にくいかもしれませんが、一番直近の2011年で56%を占めているのはレイター。レイターというのは、株式公開が見えてきて、その手前に来ている新興企業と思っていただければいいんですけれども、そういったところへの投資が半分以上を占めております。

これ、社数の分解はないんですけれども、ベンチャーキャピタル全体の社数はそれほど、若干あいているんですが、それほど変わっていないので。一方、レイターステージまで成長してくる企業の数は少ないですから、何が起きるかというと、レイターにフォーカスしていると1社当たりの投資金額は当然小さくなってしまいます。リスク・リターンでいうと、相対的にリスクが低くてリターンがある程度見えるので、そこにかなり投資したい方々が集中するという状況であります。

一方、それの反対のシードないしはスタートアップのところを合わせて8%でございますので厳しいですし、特にスタートアップ、アーリーのところがそれなりに減ってきているというのがはっきり見えている状況でございます。

ただ、シード、スタートアップ、アーリーといったところをちゃんと拾っていきませんと、その後の成長もないわけですので、ここがこのままずっと続くのは、決していい状況ではないということだと思います。

その次に、こういった中の、特にベンチャーキャピタルのビジネスを中心に当社として取り組んできているんですけれども、長期のリスク資金。先ほどの図式でいうと七、八年間、赤字ともつき合いながらやっていくというところで考えますと、幾つかの問題はちょっとあるかなと思っています。

まず1つは、1番で、融資の際のと書いてあります。これは実は投資もそうなんですけれども、融資ないしは投資の際の連帯保証の問題というのがはっきりあります。これ、融資の場合だけでもなく、投資の場合でも、代表者の個人連帯保証をとるというケースはままありますし、しかも、100%近く株式のシェアを持っている創業社長であれば、それもやむないというところはあると思うんですけれども、シードからだんだん成長してきていて、先ほどのレイターになるような状況であっても、結果的に自分のシェアを持ちますので、議決権の比率でいうと3分の2はない。もっと言うと、3分の1もない。つまり、拒否権も持っていないような代表者であっても、代表者なんだから連帯保証だということで、しかも融資だけじゃなくて、投資契約においても連帯保証をさせるということがありまして。

これは1つは、まず若い人は、やはり、こういう形で失敗してしまいますと、多額の連帯保証に起因する債務を抱えた形になってしまうので、ちょっと踏み切りにくいということになりますし、あとは経験豊富なプロ経営者、こういった方がジョインするのは、海外でいうとグーグルの成功例もありますけれども、とても重要な話なんですけれども、そういった方も代表者になるんだったら連帯保証しろよと言われるとかなり厳しいという話がありまして、ここのところを、少なくとも投資のところは、もう少し投資の成功、失敗という話の中で、失敗した場合に連帯保証で回収ということを考えない世界がもう少し広がったらいいかなと思っています。

これ、全体じゃないです。連帯保証でないところもありますので、全体でないですけど、まま見られるということで、まず書いています。

それから2個目なんですけれども、金融機関が関与する場合の立ち位置といいますか、やりとりのコミュニケーションのところで、どうしても、やはり金融機関の場合は、お金を融通して、その結果、利息なり、あるいはキャピタルゲインなりを得るというのがビジネスですので、オカネをオカネとして増やすことにフォーカス。これは当たり前なんですけれども、実は、並行して事業会社さんなどとおつき合いしておりますと、事業会社の場合、もちろん出資という形、ないしは融資という形でお金を出していただけるんですが、事業上、いろいろなほかのものも持っておられるので、例えば販路も使っていいよという話であったり、製造設備のラインを貸してあげようという話があったり、あるいは研究所の高額の研究機器を使ってもいいという話であったり、セールスのほうでも広告宣伝費は肩代わりしてあげるという話も出てくるということで、非常に事業上、必要なものを多岐にわたってサポートいただけるんですね。

多分、金融機関で同じようなことをやれというのは難しいとしても、例えば、冒頭言った売り上げが非常に重要なわけですから、関係先のベンチャー、企業の売り上げに貢献するような製品がある会社であれば、買ってあげる、サービスがあれば使ってあげるというようなことを取り組んでいただけるだけでも随分変わってくると思っています。

それから、ファンド特有の問題としては、先ほども言いましたけど、期限の問題もあるんですが、もう一つ、我が国のということで考えますと、ネットの世界と違って物づくりというものは非常に、まだ重要な基幹産業の1つでありますけれども、どうしても新規事業展開ないしは新会社設立するときは赤字から始まるということもありまして、なおかつ初期投資もそれなりに要るというときに、なかなかファイナンスがついてこない。そこを何とか工夫して起業家ないしは事業家が参入できるような仕組みはもう少しできないかという意味でいうと、どうしても、やはり融資は難しいところはわかりますので、ファンドを活用した投資の世界でカバーするという意味がまだ残っているのではないかと思っております。

現状、当社が注目している成長領域、この分野のベンチャービジネスは伸びるのではないかというところと、あと、どういうような投資判断をしているかという話なんですけれども、注目しておりますのは、培養ですとか発酵、それから光学系、レンズに付随する処理、あと水の処理、食品そのものの加工、こういったものが技術的にはおもしろい分野だと思っています。これはベンチャーで取り組んで、ニッチな領域でも、マーケットとしては世界で勝負ができるという特徴があります。

それから、バイオテクノロジーと農業、アグリテック的なものですね。かけ合わせて、新たなビジネスをつくる。ただし、これは遺伝子組みかえではなくて、そういったバイオとか発酵に近いところかもしれません。

それから、スマートフォンが出てきているという話でいうと、我が国は、その世界でも、かなり普及が速いペースで進んでいる国なんですけれども、そういったところで展開されているサービスの領域、こういったものもおもしろいだろう。海外でも活用できる位置情報とか、OtoOのサービスですね。

あと、スマートエナジーの関係。これも省エネルギーも相当な技術は国内、多数ありますので、従来のような代替エネルギーだけじゃなくて、今日も後で高性能駆動装置開発の話もありますけれども、そういった省エネルギーにつながるような技術もおもしろいと思っています。

あと、日本の人口構造からすると、いわゆるアクティブシニア、ここに取り組んでお金にするというビジネスも当然伸びると思いますし、我々が関与している中でいいますと、静岡で介護のビジネスを展開しているイーケアという会社は、270人ほどの介護者に生活環境の提供をしているんですけれども、この中で大多数が生活保護受給者になっているんですね。なので、これを300人の雇用を生んでできるというのは非常におもしろいと思っています。

投資判断基準は、そこに書いてあるとおり、アーリーステージ、特にそうなんですけれども、新しいビジネスのことは重要ということと、その時点で、かなり具体的な絵図ら、将来像は見えているかどうか、海外でできるかどうか。不足リソースは必ずあるんですけど、それを補うネットワークを持っているか。特に経営陣の資質というものが、ほぼ事業とイコールなので、経営陣のチームとしての優秀さをよく見るというふうにしています。

最後に、こういった中でファンドビジネスの今後の展開としてどういった課題解決があろうかという話なんですけれども、2つ考えています。

1つは、融資等に関する制約に関していきますと、10年のファンドは物づくりベンチャーファンドで多いんですけれども、1.5倍にしても、それじゃだめだよねという話なので、なかなか地方の実業型優良未公開企業に参画するのは難しい。結果として、投資から回収が早いスマートフォンとかアプリケーション、ゲームなどに投資が集中していて、なかなか、もっと新しい革新を産むというところにお金が回りにくいとなっています。

これを解決するためには、1つの考えとしてなんですけれども、イノベーションを勃興する、意識した、金額のボリュームが大きいリスクマネーをファンドから出すという仕組みができたらおもしろいと思っています。特に日本の場合は、製造業、大企業に、社内に50億ぐらいの売り上げ規模になるビジネスシーズはいっぱいありますけれども、なぜか、大体100億円ぐらいの規模にならないと事業化のゴーサインが出ないということが多いので、そういうものを切り出してやっていく。切り出すといっても、完全に切り出すのではなくて、一部は大企業にも株式シェアを持ってもらうような形で連携をしながらやると非常におもしろいと思いますし、これをファイナンスの面でいうと、地方のお金を集めて大きな1つの固まりにして、中央でファンドマネジメントをしながら、いろいろな地域に事業展開をしていくというような話もデザインできるので、そういったファンドをつくってまいりますとおもしろいのではないかと思っております。

これ、結果的にいうと、いろんなリソースが中央に吸い上げられている構造が残っているんですけれども、こういったファンドを使うことで、もう1回地方に戻すということもできるのかなと考えているので、そういった面で取り組めるとおもしろいなと考えている次第です。

以上です。

○吉野座長

どうもありがとうございました。

それでは、引き続きまして富士セイラの髙須代表取締役からお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○髙須代表取締役(富士セイラ)

皆さん、初めまして。ただいまご紹介にあずかりました富士セイラ株式会社の髙須と申します。

本日、プレゼンの機会を得られましたこと、事務局の関係者に対しまして御礼申し上げます。

また、金融にかかわるスペシャリストでいらっしゃいます皆様の前でお話しする機会は初めてであります。そのため、何かとお聞き苦しい点多いと思いますが、よろしくお願いいたします。

それでは、ページをめくっていただきまして、プレゼンの骨子といたしまして示しております。1つ目として、国内外における当社の事業展開。2つ目として、求める金融サービスとその充足状況。3つ目として、今後の経営戦略と我が国金融業への期待について、許される時間の範囲で、要点を絞ってご説明させていただきたいと思います。

それでは、次のページに移っていただきまして、国内外における富士セイラの事業展開です。

弊社は、創業から84年続いています歴史あるねじメーカーなんですが、創業、昭和2年でございます。資本金は5,716万円。売上高は前期、23年3月期で、21億円。海外の関連会社を含めて約34億円でございます。社員数は国内が85名、海外の関係会社を含めて約600名であります。事業内容は、ねじ部品及び機械加工品の製造販売を手がけております。

また、主要取引先は、富士通様、日立様、東芝様、その他大手の組み立てメーカーが主でございます。いわゆる、このグラフにありますように、私どもの参入しているマーケットは弱電関係と、いわゆるIT機器メーカーでございます。

近年、自動車向けの商品の開発とかを強化しておりますけれども、まだ、その占める割合は低いものです。ただ、今後、新規参入マーケットとして、次世代自動車向けのねじの開発等に取り組んでおります。

苦しい経済環境ですが、本業を主体として新規開発、新規市場開拓で堅実経営のもとに成長路線の道を模索していきたいと考えております。

次に、ねじ業界の市場構造ですが、ねじ工業協会の統計によりますと、2010年度における全企業数は約3,000社、従業員数、従事者数が約5万人です。その他は、ここにあります情報をごらんください。

一言で言いまして、業態の中心は、大多数が小企業であり、経営スタイルはオーナー経営であります。また、事業形態も、製造会社と販売会社に二分され、役割がはっきりしております。その中にあって、当社は製販一体型で事業を進めております。

この業界の経営の視点から見ますと、やはり薄利多売業種という印象であるということはぬぐえません。

全般を通じて、ただ、ねじ業界は大変地味な存在なんですが、一方で粘り強い経営をしている業界とも言えると思います。

こういった業界の市場構造を背景に、当社実績は孤軍奮闘しております。先ほども申し上げましたように、前年度の売り上げは21億円で、おかげさまで、ここ10年以上は約20億円の売り上げは堅持しております。営業利益は同期で約2,000万円ほどです。自己資本比率向上に向けて、利益構造を描くことに苦慮していますが、堅実な経営運営を行っております。今、現在の自己資本率は約19%でございます。

では、次のページに移らせてもらいまして、当社の強み、当社らしさですが、一言で言いますと、つくる、つくる、売ると考えています。つくるというのは、創造してつくる、物をつくるという2つです。そして販売するです。この長年の経験が、小さく精度が厳しい製品をつくるということに大変生かされております。

また、納入先の主体が直接大手メーカー様でありますことから、これまでも、かなり厳しいご要求にこたえており、品質、また開発力の点でも力をつけることができました。

また、当然、大手メーカーほど競合他社との争いも多くて、それが結果的にコスト競争に打ち勝つ、デリバリー上のサービスを向上させるということにもつながっております。

では、ページを繰っていただきまして、5ページ目ですが、次に当社の海外での取り組みですが、お客様の海外進出に追随し、ご要求の製造コストに抑えることと生産コストの削減、そして当初は、やはり本国への輸出拠点として海外進出をスタートさせました。現在は、ここの下の段にありますように、フィリピン、タイ、中国に2カ所で計4カ所の拠点を持っております。

国内、海外の機能的役割につきましては、国内拠点は品質、付加価値向上によるブランド力のアップ、海外拠点は進出初期の経営課題として、コスト、量産性を最重要政策としてきました。ただ、その後、海外拠点ごとに主体性ある収益構造体質企業へというような取り組みをして、そういった展開を図っているところでございます。

そういった事業構造の変革の背景といたしまして、現地拠点が自分たちのために、自分たちの力で、みずから利益を生み出すというビジネススタイルに変えていかなければ、ほんとうの意味でのビジネスの発展につながらないと考えております。

こういった背景をもとに、次のページに移らせていただきまして、求める金融サービスとの項目ですが、この項目の前段といたしまして、国内、海外拠点を個別に説明する前に、総括的に共通認識として、我々から見て金融機関の役割というのは、総合的な情報源であってほしいと希望いたします。

総合的な情報源というのは、設立から撤退まで金融機関さんは専門家でありますので、また、そういったことの代理人であっていただきたいと希望しております。取り組む中で気さくに、時には遠慮なく、いわゆるインフォーマルコミュニケーションによるご相談を、我々としては必要としております。

では、下の箱の中の国内向けの金融サービスというのを挙げさせてもらいました。一言で言って、長期的な視点で親身になって相談に乗ってほしいということですが、その期待する内容ですが、ここに挙げてありますとおり、外生ショックによる緊急・危機時のバックアップ。民間の金融機関の長期的視点に立った融資。経営者の個人保証に頼らない融資。為替変動に柔軟に対応する支援。海外取引の債権回収のための情報提供等ございます。やはり、日ごろから親身にご相談に乗っていただきたいと希望しております。

では、次のページの国内拠点2のところですが、次に、ここのページは海外進出時のプロジェクトの企画立案段階で求められる金融サービスを示しております。

ここにありますとおり、現地市場動向調査、現地での展示会・商談会への出展支援等の、やはり現地でのマーケティング活動というのは重要であると考えております。

例えば、大手企業1社を当てにした進出であったり、現地ローカルの同業種がどれだけ現地で力をつけているかということを知らずに現地に進出を進めてしまうと、例えば顧客の事業再編によって、すぐ撤退したりだとか、また顧客ができて、早々にローカルメーカーとコスト競争に巻き込まれてしまうというようなことがございます。

また、その下の段の支援サービスといたしましては、仮事務所・サポート人員の派遣ですとか、内部管理面の指導や助言、現地生活面での支援や助言が挙げられます。

企画段階では、やはり何もかもがわからないことだらけで、法務・税務・労務の現地の正確な情報をはじめとして、検討する事項は大変山積みです。こういった情報交流こそ、数値の資料よりも進出決定の判断材料となるものと考えております。

では、また次のページに移らさせてもらいまして、海外拠点1としまして、進出初期に必要となる金融サービスを挙げさせてもらっております。

企業設立準備期間中の活動支援、また総務・人事・財務等の現地法務解説読本配布サービスとか、現地の金融制度の情報提示、現地法務アドバイス、取引先の事業者交流支援等を挙げさせていただいています。

総合的に言って、やはり進出当初というのは、各種相談窓口になってほしいと希望しております。やはり金融機関さんの持っている人的なネットワークを十分に活用させていただきたいと願っております。そのネットワークを利用した二次的な効果として、経営基盤を安定化させるためにお客様とのよい交流をつながっていくと考えております。

では、次のページに移りまして、その海外拠点の事業が軌道に乗った後のサービスですが、ここに挙げておりますとおり、即日決済、即日送金、近隣諸国にある企業とのビジネス・マッチング、現地企業との直接融資。括弧して、これは親会社の保証がなければということなんですが。あと事業再編のパートナーのマッチング、緊急事態等の資金取引の柔軟な対応を挙げさせていただいております。やはり現地に進出した後ですので、根差した企業になるお手伝いをしていただきたいと希望しております。

その中で、永続的に事業を続けるとなると、途中、業界の再編、構造の変化等が生じることがあります。先ほど設立から撤退までの専門家であると申し上げましたが、せっかく資本を投下した海外拠点ですから、その状況、時代に合ったベストな解決法に導くための親身なるご相談に乗ってほしいと思っております。

ちなみに今、巷の話題としてホットなタイの洪水ですけど、当社は、先ほど言いましたようにタイに拠点がありまして、2カ所の工業団地に3工場あるんですけれども、先週から、そのすべてが浸水しております。まさに、こういった点については、いろいろと親身になって相談に乗ってほしいなというような状況でございます。

では、次のページで、当社の今後の経営戦略と我が国金融業への期待となっておりますが、我々の中長期の戦略といたしましては、日本側と海外関係会社の経営資源、つまり人、物、金をバランスよく配置し、安定した収益を維持していくことです。そのためには経営を主体的に行える人材を国内外に育てていくことが必要だと思っております。真のグローバル展開への拡大へとつなげていきたいと思っています。

また、その下の2番の戦略実現のための戦術については、このように入れておるんですが、やはり製品戦略を拡充して、いかにマーケットを広げていくか。こういったことがかぎであると考えております。

では、次のページで、その3番で、戦術実施に当たっての必要になる金融サービスの方向性とありますが、やはり我々規模の企業ですと、企業の財産である「人・物・金」、これが全般的に不足しております。先ほどインスパイアの社長さんもちらっとそういうことをおっしゃっていたので、我々としてはつくづくそうであるなと思いました。

この中で特に、やはり資金調達というのは金融機関さんからの融資頼りなんですね。率直に言って、やはり返済能力や余剰資金が潤沢でないのが、我々中小企業の実態であります。つきましては、必要事業資金の調達には無担保保証枠の拡大などで融通、またはいろいろ利便性を高めてもらいたいと希望しております。

また、海外の事業資金については現状、本国での親子ローンが中心でありますけれども、我々希望するのは、邦銀の出先機関が存在することを前提に考えて、現地での人、これをぜひ内容を確認した上での直接融資の拡充ということを希望したいと希望しております。

最後に、まとめといたしまして、我が国の金融機関にサービス向上や新規開拓を求める分野として挙げさせていただいておりますが、やはり現地拠点と親身にコミュニケーションをとって、我々のビジネスの理解度を上げてもらいたいと希望しています。

そういうことにより、ここの上の箱にありますとおり、期待する効果のところにありますとおり、ビジネスマッチングでの質が上がって、商売のかさが上がることにつながったり、また緊急時には後ろ盾になっていただけるものと考えています。

また、親会社の保証に頼らない融資が可能となれば、海外子会社の自立が促せることにつながっていくと思っております。

最後に、華僑を例にあげておりますけれども、華僑は外地で同郷者、中国・台湾・香港・シンガポール等を含む皆さんで形成されるコミュニティを形成して、これをもとに商売つながりができ上がって、現地でも経済的に実力をつけ、政治面でも力を持つようになっております。一旦信頼したら、とことん信頼し、友人を大切にする。それが彼らの団結力の背景にもなっております。

やはり金融機関様におかれましては、地域コミュニティのボス的な存在になって、地域の日本企業の牽引となる働きをしてほしいなと希望しております。

それでは、最後に参考資料といたしまして、当社の海外進出の歴史及び設立、目的を一覧にしておきました。進出の過程では、なかなか、こういった文章では書き記せない苦労もありましたことをつけ加えさせていただきたいと思います。

では、ご清聴ありがとうございました。以上でございます。

○吉野座長

髙須代表取締役、どうもありがとうございました。

それでは、2時半ぐらいまでの間、皆様からのご質問があれば、お受けさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

では、まず私のほうから、それぞれの方に1つずつお伺いしたいんですけれども、高槻社長に関しましては、技術の評価は非常に難しいような気がするんですけれども、それぞれいろんな分野があると思うんですけれども、どういう形で最初の技術の評価をなさっていらっしゃるのかというのは1つお聞きしたいと思います。

それから、髙須社長のほうには、海外に出られたときには大手の金融機関さんのサポートで行かれたのか、それとも地銀さんとか地域の金融機関のサポートで行かれたのか、その点をお一人ずつお聞きしたいと思います。

高槻社長、お願いいたします。

○高槻代表取締役社長(インスパイア)

技術の評価なんですけれども、我々がやるのはビジネスの評価で、そのうちの1つとして重要なものとして技術はあるんですけれども、技術そのものを各領域で自社で評価しようとすると、ご指摘のとおり、大変なコスト高になりますし、コスト高でおさまればいいですけれども、ちゃんと評価できるかもわからない。

当社の場合は、ファンドの組成の段階から意識的に、いろんなビジネス領域の事業法人さんに資金を出していただいておりまして、化学のメーカーさんもありますし、携帯電話のキャリアさんもありますし、いろんな領域のメーカーさんが入って、それから商社にも入っていただいているということなので、実は検討のプロセスの段階から、もちろん秘密保持等はするんですけれども、彼らの目線で評価をしてもらう。技術であれば、物づくりメーカーさんの研究所も含めた評価をしていただきますと、かなり立体的な情報を得ることができますので、その上で、じゃ、ビジネスとしてはどうするんだという話をします。

必ずしも、ビジネスといいますと、すぐれた技術がすぐもうかるわけでもないので、そういったところを含めて最終的には投資の判断をするというふうにやっています。

○吉野座長

ありがとうございます。

では髙須社長、いかがでしょうか。

○髙須代表取締役(富士セイラ)

我々の海外進出に関しましてというよりも、まず前提として、我々はメガバンクさんとのおつき合いは何社かやらせていただいているんですけど、実際、地銀さんとはなくて、メガバンクさん以外には信用金庫さんとおつき合いさせてもらっています。

やはり、信用金庫さんとなりますと、海外のネットワークはないもので、その点は、なかなか面倒見てもらえないので、メガバンクさんを中心とさせていただいておりますが、本国保証というのが前提にありまして、本国での借り入れをそのまま海外の現地の資本金に充てるとかいうやり方。または、本国が保証をして海外の現法さんの出先機関のほうで融資をしてもらうようなことになっておりまして、基本的には本国保証が切り離せないという状況になっております。

○吉野座長

どうもありがとうございました。

小野委員、どうぞ。

○小野委員

貴重なお話、ありがとうございました。高槻様に2点、ご質問させてください。

1つ目は、アーリーステージの企業のファイナンスに関して、融資、投資、自己資金に分けてみると、我が国の場合、融資の比重が相対的に高いという話を聞いたことがあります。高槻さんの実感として、融資の比重が大きいという事実認識は正しいでしょうか。また、もし融資の比重が大きいとすると、その理由についてお考えをお聞かせください。

2点目ですが、レイトステージの企業への投資が最近増えているというお話がありましたが、お示しいただいたグラフは過去2~3年についてみたものでした。高槻さんは、この業界に10年ぐらいいらっしゃるとのことですが、この10年のトレンドで見たときに、やはりレイトステージの企業への投資は増えているといえるのでしょうか。また仮に、レイトステージの企業への投資が増えているとすると、その背景について教えてください。

○吉野座長

お願いいたします。どうぞ。

○高槻代表取締役社長(インスパイア)

今いただいたご質問の前半のアーリーステージにある企業のファイナンス、融資の比率が高いんじゃないかという話なんですけれども、これ、どういう統計をとるかという話が1つということと、あと、おそらく、政府系金融機関の創業支援的な融資制度はかなり充実していますので、その範囲で、ほぼ起業を考えられた方は融資を受けると思いますから、そういう意味でいうと、融資が多いという話だと思うんですね。

ただ、制度はありますけれども、それじゃ、金額が多額に用意できるかというと、これまたいろいろあって、物づくりで工場のラインを持って、人を雇ってやりたいというビジネスをやろうという話になってくると、なかなか簡単ではないんだと思うんですね。そういう意味では、起業というのもいろいろありますから、その類型も分けなきゃいけなくて、そういった設備も持って大きく成長を目指していくんだというような場合のファイナンスで関していいますと、融資だけでは賄い切れなくて、やはりベンチャーキャピタルなどからの調達というのも出ていますし、まずは一部、富裕個人からの援助的な資金供与というのもあるとは思います。そういった感じがしております。

2個目の、最近、レイターへのベンチャーの投資が増えているというのがあって、じゃ、過去10年どうかという話なんですけれども、相対的な、これ、イメージの話ですけど、もう少し、シードとはいいませんけれども、アーリーに近いステージの会社への投資が過去10年ではあったと思いますし、特定の領域で、いわゆるインターネット・バブルと言われたころでいいますと、かなり、むしろアーリーの段階からばんばん投資が行われているという状況は過去にはあったと思います。

最近は、相対的には、さっきの比率のとおり、レイターが増えている。それはなぜかといいますと、やっぱりリーマンショック以降を含めて、いろいろ投資の失敗という形でファンドにはね返ってきているケースは増えていますので、ファンドないしベンチャーキャピタルのリスク強度というのも下がってきてしまっていますから、結果的にリスク・リターンでいうと、小さいほうにまとまる。それでレイターに集中するというような話になっているんじゃないかなと思います。

○吉野座長

ほかにいかがでしょう。では太田委員、それから大垣委員。

○太田委員

今日はありがとうございました。

髙須様に1点だけご質問したいんですけれども、海外の子会社の事業の出資比率を拝見すると、1社を除いて100%で出られているわけですが、ここに書かれている海外の事業進出で期待されるようなサービスは、日本の金融機関に求めるということもあるかもしれませんけれども、ジョイントベンチャーを作って現地のパートナーに求めたほうが早いのではないかとも思うわけですけれども、その辺、ポリシーを持って100%を貫いていらっしゃる、そういうことなんでしょうか、というのが質問でございます。

○吉野座長

では、お願いいたします。

○髙須代表取締役(富士セイラ)

これは決して100%にこだわっているわけでございませんで、今、現状は1カ所だけがジョイントベンチャーなんですが、実は中国に最初出たときは、最後のページの当社の進出の歴史の中でちょっと入れてあるんですけれども、そのとき2社と、合計3社で進出したという経緯がございました。ですので、特にこだわりがあるわけではございません。

ただ、やはり、我々の業種というのが、ねじですとか、機械加工品だとかという業種で、完全に異業種と組んでしまうと、ちょっと経営の中身ですとか、要は利益率もありますし、事業形態というのがあるので、なかなか難しいのではないかということですね。

それと、大体同業種ということになってきますと、やはり同じような形態の。先ほど、ちょっとねじ業界の話をしましたが、ねじ業界でも、やはり大きいところは少ないし、あとは、例えばプレス品の業界ですとか、ダイキャスト品の業界ですとか、こういったところも、やはり同じような形態のところが多いんじゃないかと思いますので、うまいマッチングが自分たちでなかなか探せないというのが結論でございます。

ぜひ、もし、そういったいいマッチングとか、逆に、そういったチャンスがあるのであれば、そういったご提案とかいうのも十分参考にさせていただきたいなとは考えております。

機会がなかったということが結論でございます。済みません。

○吉野座長

では大垣委員、どうぞ。

○大垣委員

簡単に。

髙須社長にお聞き致します。非常に細かくきちっとご要望とかをまとめていただいて非常にわかりやすい資料だと思います。現在、どこの金融機関も今、アジアでサポートを強化するとおっしゃっているんですけれども、髙須さんが今回おまとめいただいている項目の現状というところを見ますと、日本の金融機関は、ほとんど対応できてきていないように思います。高須さんのご実感として、日本の金融機関は今後各項目に対応できるよう努力をなさっているとお感じでしょうかというのが1点。このようなアンケートにお答えになるのは今回が初めてでしょうか。私としては、既に民間の金融機関から、どんなサービスが要るでしょうかということで何度も聞かれたこともあるんじゃないかと思いたいわけですが、その辺はいかがでしょうか。

○吉野座長

では、お願いいたします。

○髙須代表取締役(富士セイラ)

金融機関さんのスペシャリストの前で、なかなか的確な答えになっているか、ちょっと難しいんですが、まずは、後のほうのご質問からいきますと、質問を受けたことがあるかという話ですけど、あまり正式な用紙でのアンケートとかということは記憶にないです。

ただ、やはり、先ほど言いましたインフォーマルな形の情報交換とかという点では、そういったところでは、いろいろ話を、こんなのがあったらいいのかという相談を受けたことはあります。

あと、最初の質問だと、サービス……。

○大垣委員

さえぎってすみません。資料にある充足状況というところが、率直なところ、ほとんど対応できていないようになっているわけですが、これは今はできていないのだが、要望に応えようとはしてくれているな、だから、もうちょっと待てば何とかなるのかなというような感覚をお持ちかということなのですが。あるいは、思いが伝わらないなという感じをお持ちでしょうか。

○髙須代表取締役(富士セイラ)

そうですね。そうしますと、ちょっと率直な話になってしまいますが、多分、我々が知り切れないところというのもあるかとは思っております。ですので、ただ、我々の知り得るリソースが、それほど網羅されている企業でないので、やはり多少、受け身になっちゃっているところもあるかもしれないんですが、いろいろ話を聞くと、例えば、じゃ、こういうのがあるんじゃないのとかということはちらっと話を聞いたりとかということはありますので、もうちょっと情報伝達というか、メニューですとか、体系的なところをやっていただけると、もしかすると、やはり、かなりサービスのほう、充足させている最中だと思っていますので、大分、我々の活用できるメニューがあるのかなと思います。

ちょっと印象的なことで申しわけないんですけど、そういうことでございます。

○大垣委員

どうもありがとうございました。

○吉野座長

では、篠原委員。

○篠原委員

お二方に1つずつお聞きします。高槻さんに聞きたいのは、ベンチャー企業を育てていくうえで、金融機関の対応というのが1つの大きなポイントだと思うんですけど、その点、どう見ておられるのか。もう一つは、日本の学生さんもそうなんですけれども、リスクをとって起業するという風土が日本ではできていない。前よりは大分出てきたように思いますけど、まだまだ欧米、特にアメリカなんかに比べると、弱い。学生さんなんかも、大企業への就職をまず第一に考える。アメリカなんかは、大学生のときから、そういう就職じゃなくて起業するという人が、たくさんいますよね。

実際、現場でやられていて、そこらをどう見ていらっしゃるのか。そういう風土を変えずに、ただ金融の再生だけでうまくいくのかどうか。そのご感想をうかがいたい。

それから、髙須さんにお聞きしたいのは、さっき金融機関のいろいろな使い方や、対応を表にして、ご説明いただいたんですけれども、実際のところ、一番頼りになる金融機関はどういう、どの種類の金融機関なのか。あるいは貸し渋りということを実感として一番お感じになるのは、どのタイプの金融機関なのか。それも実際のご体験の中でお話しいただければ。この2点です。

○吉野座長

では、高槻社長からお願いします。

○高槻代表取締役社長(インスパイア)

ベンチャービジネスの世界で若者どうなのかという話なんですけれども、過去10年ぐらいの感覚でいいますと、いわゆるITバブル盛り上がっていたころというのは、今よりはるかに多数の若者がチャレンジしていたと思います。その流れはしばらくあったんですけれども、多分、ライブドアの件が起きたあたりから少し潮目が変わったといいますか、手控える若者が増えたような印象がありますし、さらに経済全体の状況が少し悪くなって、その傾向が続いているのかなという印象はあります。

ただ、じゃ、ゼロになっているかというと、そうではなくて、引き続きトライしている人たちはいますし、先ほど申し上げたように、政府系金融機関等、あるいは役所などの提供する起業支援サービスというのが手厚くありますので、ほんとうのスタートアップのところはできると思うんですよね。

その後、成長フェーズに入ってきたときに、追加的にお金が必要だというときのファイナンスが、多分まだ、工夫すればマッチングが増えるんじゃないかと思うんですけれども、ちょっと不足しているんじゃないかという印象があります。

1つは、今日もちょっと言いましたけれども、連帯保証の短所が出てきてしまうというのはと思います。

○吉野座長

ありがとうございます。

では髙須社長、お願いします。

○髙須代表取締役(富士セイラ)

やはり一番期待にこたえてくれるというか、ほかがこたえてくれないわけじゃないんですけれども、政府系の金融機関ですね。政策金融公庫さんですとか、中小企業公庫さんというのは、やはり、具体的にリーマンショック時ですとか、あとは東日本大震災時、こういったときのサービスの展開ですとか、こういったことがわりと早くやっていただけたかなと。

また、今回のタイの洪水の件でも、昨日あたりも、サービスは今、構築中ですというような話もいただいたので、ちょっとその辺では、後ろに政府のバックがあるからということはあるんでしょうけれども、一番最後のとりでになるかなというような印象になっております。

また、信用金庫さんなんかも、やっぱり、資金力というところでは色々制約がありますでしょうけれども、小まめに我々の会社を回ってくれていますので、その都度の親身な対応はしていただけているかなと思います。

ちょっと、なかなか申し上げられにくいんですけど、一番期待になかなかというのは、やはりメガバンクさんとかで、特にメーンバンクでないところですと、どうしても業績中心の融資が優先されてしまいますので、いいときはいいんですけれども、悪くなってくると、ちょっと、なかなか融通がきかなくなったりということがあるのは実態として体験しております。

以上です。

○吉野座長

それでは時間の関係もありますので、まだご質問のある方も、あとの2人のご説明が終わってからにお願いしたいと思います。

それでは次に、続きましてお二人に、高性能駆動装置開発の佐藤代表取締役社長から、15分程度お願いいたします。

○佐藤代表取締役社長(高性能駆動装置開発)

ただいまご紹介にあずかりました佐藤です。非常に会社の名前が長いので、私自身もなかなか言いにくいので、長い名前の会社だと覚えていただければと思います。

まず、会社概要です。当社は2008年8月に民事再生法を申請した、省エネ高出力サーボモータの開発、製造をやっていた日創電機という会社からスピンアウトした技術者が設立した、モーションシステム開発株式会社という会社が母体となっております。2009年7月に同社技術の将来性を評価した、ドイツのしにせですけど、混載機メーカーのアイリッヒグループ、それから新日本工機グループ等が出資して、企業の再生を開始いたしました。2010年、昨年10月に日本のファンドによる第三増資割当を実行して、同時に経営陣の刷新に着手したとなっています。

当時の日創時代の銀行からの倒産に伴う銀行からの借入金に関しては、金融サイドでの不良債権処理がなされたようですけれど、当社は日創電機負債等とは全く無関係で、当時の借入金に関する詳細は、私はあまり明確には存じておりません。

それでは、当社の事業概要、それから当社の強み。我々はエネルギー、要するに対環境性、それから省エネということで、非常に高出力、小型で高出力のモーターを開発・製造・販売を行っております。

モーターというと、非常に基幹産業で、それほどイノベーションがないのではないかというような感じを受けますけれど、やはり、あらゆる産業の動力源ということで、まだまだ効率化をしていかなくてはいけないという命題が残っております。

具体的なアプリケーションは、例えば輸送機械。これは当然、自動車も含みますけれど、それから建設機械等々の油圧装置ですね。それから射出成型機、プレス機械、こういった従来の油圧の電動というものと、それから内燃機関の電動化ということは皆さん、ご高承のとおりでございます。

ただし、モーターの効率化ということで、非常に、いかにコンパクトに、いかに高出力にできるか。同じ電機を使っても、どれだけ効率化できるかということが非常に技術革新のかなめになって、しております。

その中で、サーボモーターは非常に精密な制御ができるということで、色々な産業分野での精密加工に使用されており、中国からもこうした技術を導入したいとの問い合わせが来ております。

そういったモーターの中で、同業の大手のメーカーもサーボモーターをつくっておられますけれど、これらは非常に高回転で、ギアを使って出力を出す。

私たちの技術は低回転で出力が出ますので、ギアを使う必要がないということから、小型化、高精度、そして省力化ができる特徴がございます。

私たちは当社の技術のイノベーションを推進して、地域産業の活性化と、世界に通用する技術ブランド、技術の海外流出の防止を基本コンセプトに活動しています。

次に、金融サービスとその充足状況です。これに関しては、いろいろフェーズを分けてみました。我々の企業サイドの課題、と投資サイド、融資サイドの課題がございます。

まず融資サイドの課題が、小規模の企業に融資する目的が産業育成という命題はご考慮いただいており、また当然ながら、融資に対するリスクマネジメントは不可欠ですが、往々にして、融資対象の技術アセット、または人的アセットへの評価が不得手。財務諸表による評価が中心になってきた。

しかし、事業の育成、また価値向上という観点から、事業計画の数値に対する理論的な分析にはすぐれているものの、技術開発やマーケティング、営業といった実務分野での評価については、ご経験がなかなかないことから不得手ということで、事業立ち上げ時期の融資実行は、リスクマネジメントの側面から非常に困難な状況があるように見受けられます。

次に、投資サイド側の課題についてです。先ほど高槻さんのほうからもお話がありましたように、よりリスクの高いエクイティマネーの投資ですので、リスク・リターンの評価上、財務諸表に加えて将来価値を見据えた事業計画のデューデリを徹底的に行いますが、一般的には、やはり技術評価や営業、小規模企業の労務管理といった実践経験は少ないという問題を抱えております。

実質上、運営マネジメントは投資先のトップに委ねられますが、経営サイドとの温度差から種々困難な局面に直面することが多々見受けられます。

また、投融資両方に言えることは、市場における風評や、凄い技術だ、といった、所謂パイプによって投資してしまうケースが散見されます。これは昔の超電動でも同じことが起こりましたけれど、ITでも同じです。ITバブルが、それで崩壊した。

何か新しくおもしろそうだというような投資が非常に多い。わが国は、もっと資本産業、基幹産業を充実するべき時期に来たと私は思っております。

次に、投資を受ける我々のサイドの課題ですが、皆さんおっしゃっているように、供給された資金をほんとうに有効活用できているか。要は経営者は、銀行からお借りしたお金は金利を付けてお返ししますが、投資に関して往々にして起こることは、これは返済をしなくて済む自分のお金だと思ってしまうケースです。経営者は株主資本という観念を徹底する必要があります。

経営者は投資に対するリスク・リターンを求められています。したがって、これは銀行の融資の金利よりも高いのですがそのために企業の経営者は全力を尽くすことが大前提。この認識を持って頂けなければなりません。

次に、コンプライアンスの意識の改革。これは財務・経理の透明性、それから内部牽制機構。また、契約、与信、並びに法務関連知識の醸成。これは海外も含みます。この他情報の管理、労務管理といった、企業としての最低条件を満たす努力をしなくてはなりません。

次に、素晴らしいと思われる技術でも陳腐化します。当初の技術が商品化できずに次から次に新しい技術開発に時間を費やし、なかなか商品化が出来ないといった事態も往々にしてあるため、将来を見据えた開発のシナリオプランニング、それから時間管理を徹底する必要があります。

また、資材購入等々のプロキュアメントマネジメントの充実、これは絶対必要条件です。

ただし、ビジネスの推進における大きなネックは資金調達、人材確保、および人材育成に費やす時間の浪費です。

我々小規模企業の市場競争における問題は、少量生産に伴うコストアップ。これは部材がどうしても大量に買えずコストダウンが出来ません。したがって、製造原価が大企業に比べて高くなります。

一方、我が国はいわゆる売上至上主義になっているので、良い物を安くという命題に対し、中小企業は良い物を安くは供給できないというジレンマに陥ってしまい、価格競争に耐えられない状況があります。

以上より、金融機関にお願いしたいこと。まず、金融機関の融資サイドには、技術アセットや人的アセットを踏まえた事業価値の評価を今後深耕していただけたらと思っております。

また、対象企業の融資担保として、これは先ほど高槻さんからもお話がありましたけれど、個人連帯保証が経営者に必要以上のプレッシャーを与え、売上げに奔走して本来のやるべきステップが踏めず、その中で往々に起こるのはコンプライアンス問題です。したがって、担保としての必要性は判りますが、担保としての本当の有効性、担保の意義をご検討いただければと思います。

要は多くが個人に対するRecourse Debtなんですね。これはそうではなくて、企業、事業に対するNon Recourse Debtであるべきだと私は感じております。

日本の銀行さんは、いろんなアセットビジネスでも、やはりアセットベースのDebtは出せない。ですから、どうしてもアセットを持っている大きな企業に対するRecourse Debtになってしまう。でも、外銀はNon Recourse Debtを出してくる。中小企業に対しても、同じような考え方が持たれるところがあるのではないかと推察されます。

次に、融資対象項目の仕分けをご検討頂きたいと思います。要は、担保をどうやって特定したらいいのかということで、これをもう少しきめ細かくやっていただけると非常に助かる。例えば、中小サイド、または小規模企業で材料を買いつけるには大きな資金が必要となります。この場合、その材料が転売できるのであれば、材料というアセットをベースに融資していただく。すなわち、例えば部材購入支援融資であるとか、製造機器購入支援融資、従業員雇用ローンといったもので、きめ細かい商品をいろいろご考慮いただけたらと思います。

次に、Securitizationの深耕。これは大手ではよく行われていますが、売掛債権に対してのものです。売掛サイトが150日とか180日であれば、その間売ったものの賃金回収ができず、次の生産部材購入や開発に対する資金、キャッシュフローなくなり、私たちが資材を購入している地元の小規模企業さんへのサイトが伸びてしまう。ですから、悪いサイクルになってしまっています。

したがって、売掛債権担保の債権買いがありますが、非常にフィーが高いことと、債権先の与信があります。これと並行して、製品の売先企業がそれを受けるかどうかという問題もあります。

したがって、その辺の構造を改善していただければ、今度は私たちが資金、キャッシュフローが余裕が出る。それが即、私たちの下請さん、零細企業に払えるということで、お金の循環がよくなるということで、産業の発達には寄与するのではないかと思います。

なお、投資サイドには、産業・事業育成を主眼とした投資であってもらいたいと思います。要は、短期にCapital Gainを得られそうだとか、技術的に流行しているといった観点フェーズから、派手ではありませんが基礎産業への投資フェーズを勘案していただきたいと思います。

ITバブルの結果、結局、日本ではMICROSOFTも、Appleも、Googleもできなかった。ですから、どこに私たちの国の特性があるのか。そこを我々は見きわめていかないと、私たちの次世代のアセットが創出できないという事態になってしまうと思います。

また、投資評価検討時間の改善ですが、色々なデューデリを行い、私たちも、種々将来予測をつくります。しかし、将来予測は将来予測で、何がどう起こるかわからない。その将来予測の中で、どういうシナリオプランニングをしているか、そういう評価の仕方というのを深耕していただければと思います。

国際的に何が起こるか。その中で日本の産業が耐え得るかどうかという観点。例えば中国に進出したものの、中国がバブルで崩壊したときに、日本の企業は大変な目に遭います。そういうリスクマネジメントが、どういったシナリオになっているか。こういう評価を中心にして頂き、できるだけ早い時期に投資を行って頂きたいのが私たちの希望です。

当社の充足状況に関しては、現在、借入金はゼロです。現在は、投資サイドからのエクイティと、それから経産省の助成金を頂いております。これは平成22年度に低炭素型雇用創出産業立地新事業に選択され、その資金をいただいておるものです。重要な国の税金を使わせていただいており、これをベースに鋭意事業を運営しています。

現在、投資サイドは、新しい開発に対する新規投資に関して、次の新しい増資を考えています。それを当社と一体になって活動して頂いております。

当社の加工品購入先に非常に優良な加工技術を保有する地域の零細企業がありますが、資金難の状況であり、銀行さんに、融資等々の検討をお願いしましたが無回答であったため、当社が投融資を実行しています。こういうことをやらないと、地域産業って育たない状況です。

自分の企業だけではなく企業として地域の力をどうするかということが、経営サイドとしては考えていく必要があります。

次に、我が国の金融企業への期待と中小企業へのあり方というテーマの前に、今後の経営戦略と我が国金融業への期待というテーマに対し、私を含め皆様も資料を出されて、戦略や戦術を書かれていますが、本来はこの種の資料に載せるものではないものと感じております。私がここに書いてある中期戦略とか具体的な施策はこのため、すべては書いておりません。

情報管理というのは非常に大事です。我が国はこれまで、情報管理が杜撰でした。欧米の企業は日本企業に比べて非常に緻密な情報管理を行っています。したがって、情報管理というのは非常に重要なものだと思っております。

私達の戦略戦術を簡単に言えば、基本的には戦略は資金調達という後方支援も含めた全体的な地勢学上、即ちGeopoliticsを勘案した将来予測のシナリオです。また、Tacticsはストラテジーを実行する手段ですので、これは市場の変化に対する柔軟性、それにレバレッジ効果を駆使した策定を行っております。資料に書いたものは実際に実行した簡単な例です。

戦術に必要となる金融サービスに関しては新製品開発に伴う資金需要へのご支援を投資サイドにお願いしたいと思っております。

また、海外への輸出に関してはUL、CEといった安全規格が我々の分野にはあり、この取得が必要です。例えば1つの製品のために約300万円から400万円かかるわけです。大手ではできますが、我々ではその資金の捻出が難しい。海外からは非常に良い技術ということでビジネスチャンスはありますので、安全規格取得のための資金需要を持っています。

あとはMan Powerですが、なかなか優秀な人材が来にくい。これが大手と違うところです。このために取引先、関連先からの人材の紹介等、それからRunning Costの支援等をしていただけたら非常に助かります。

また、先ほど申しました零細企業である地域加工業者への融資をどういう形でやるかを、ぜひ検討していただきたいと思っております。

最後に我が国の金融業への期待と中小企業のあり方というテーマです。まず我が国の産業の空洞化。これまでの大企業を中心とした規模のイノベーションが、中国等の台頭から、世界のコモディティ市場での優勢を失ってしまったことが大きな要因ともいえ、大きな問題になっております。

一方、欧米諸国は、この道を歩んできました。高度な技術力に裏づけされたブランド戦略等で、地域社会から世界に発信していますが、特技・ブランドイノベーションも、我が国の国家規模からすると、その創出に私たちは苦労しています。

例えばスイスを見ますと、あの国家規模で非常に優秀なものをつくっている。例えばスウォッチ。時計産業は高級ブランド化を経て、スウォッチというブランドコモディティーをつくり出している。そういう例があるわけです。

これはやはり国家規模によりできることで、我が国の規模は特技のイノベーションにはもっと大きく、一方、量のイノベーションをするにしては中国等、大規模なところがあり、非常に中途半端な位置づけにあります。

したがって、規模と特技のイノベーションの融合をどう仕分けをするか、そして、特技のイノベーションを今後、育てていくことが非常に肝要なポイントだと思っております。

それから、海外進出に関しては我々いろいろ考えておりますけれど、ほんとうに海外進出がすべてか?と思っています。今はそうかもしれませんが、例えば中国のバブルが崩壊したらどうなるか。また、例えば今回のタイのように、要するに産業のインフラに係るリスクは、どこでもつきまとうことです。現在、海外進出問題というのは、円高による非常に大きな問題です。

そういうことを踏まえた上で将来の海外進出を見きわめないといけないということで、国内産業が空洞化になるということは、国家として非常に拙いことです。空洞化にならないためには、やはり地域産業の育成が必要です。ほんとうのハイテクで、世界のブランドとして通用するもの、これを育成することが急務だと思っております。

例えばドイツ等は良い例ですが、あそこは大企業と中小企業の差別がほとんどないのです。我々日本は、大企業、中小企業という言い方が一般化していますが、ドイツではその区別化がありません。というのは、中小の基盤が非常に整備されていること、そして大企業が中小に対して支援をする。要するに、安くて良いものではなく、良いものに対しては、それだけのコストを認めている。だからブランドができるわけです。

我々がほんとうに売上至上主義で、どんどん、安くて良いものを追及してきました。これはよく判りますが、その時代が終わってしまったということです。例えば、LEDやパワーデバイス、これは、自動車に必要ですが、この表面を処理する薄膜技術に必要なシステムをMOCVDと言いますが、ドイツのエキシトロンという中小企業が全世界の70%のシェアを持っています。

日本の企業さんもこのシステムを買われますが、1台、3~4億円するので価格交渉に多大な時間を費やします。価格交渉が始まり、数量は1台、2台ですね。当然、ドイツ側は必要以上の価格低減は受けないわけです。良いものを何で安く売らなければいけないんだと。その間に、サムソンが100台をオーダーしています。この事実からも、もはやユーティリティの世界では勝てません。こうした実情があるわけです。

我々はほんとうに、いわゆる基礎産業を、我々の技術をもって特化していかなくてはいけないという時代に遭遇していると思います。

以上、纏めますと、金融機関への私たちの期待は、他国で散見されるようなマネーゲームであってはならない。真に産業を育成する金融機関であってほしい。また、大企業と対等な立場で小規模企業が事業を営める資金(Equityや事業育成ローン)を提供していただきたい。そして、小規模企業・地域産業育成のための取引先大手企業への橋渡し、金融機関による事業支援の方法論を検討していっていただきたいと思っております。

以上、ありがとうございました。

○吉野座長

佐藤社長、どうもありがとうございました。

それでは、シティグループ証券の野﨑さん、お願いいたします。

○野﨑株式調査部マネジングディレクター(シティグループ証券)

シティグループ証券でエクイティの調査を担当しています野﨑でございます。今日は地域金融のあり方の思いのたけを申し述べさせていただく機会を得て、ほんとうにありがとうございます。なお、今日の発言等に関しましては、必ずしもシティグループの会社の意見ではないというふうに、ディスクレーマーを述べさせていただくことで、より踏み込んだ発言ができると思いますので、ご承知おきください。

まず資料のほう、縦型の資料ですけれども、最初の見開きですか、2ページ目、3ページ目、あわせて鳥瞰いただきますと、これが今日お話しする内容であります。基本的には、需給ギャップ、具体的には金融サービス、それから受け手であるお客様のほうの需要と、どれだけギャップがあるかというところを中心にお話ししますけれども、その文脈の中で、こちらの3ページ目にあります、例えばミドルリスクのマーケットへの期待と失望、あるいは人事政策、この辺の4点を1つの需給ギャップのバックグラウンドということで仮説を立てております。その上で一部、このソリューションとして、再編も1つの選択肢というような議論も出てこようかと思いますので、ここも触れさせていただきます。

まず4ページ目、5ページ目を開いていただきまして、マーケットの評価について若干申し述べさせていただきます。

まず4ページ目ですけれども、これは世界の金融機関の時価総額の比較であります。何をここで感じていただきたいかというと、時代の流れですね。89年当時のベストトゥエンティですか、この中で19社が日本の金融機関であった。それに対して、今や、1番が14位の三菱UFJという形になっております。

なお、この89年は為替レートがドル円で140円でありました。ですから、この倍でなければいけないはずである。なおかつ再編が続いているというところを考えれば、かなりの地盤沈下というところがご確認いただけると思います。

なお、この背景なんですけれども、いろいろご意見はあろうかと思いますけれども、1つには、やはりバランスシート調整、それからROE、ROA等の低収益体質というところと、あとは、やはり国内フランチャイズでありますので、国内フランチャイズのマーケットの成長性の限界というところがあろうかなと思います。

特に今日は地域金融というテーマでありますので、5ページ目で、地域金融機関に対するマーケットの見方というところをごらんいただきたいんですけれども、バリエーション、株価の形成の仕方の中で、株価純資産倍率、PBRというのがございます。1つ特徴的なところが、太線が地方銀行の平均なんですけれども、非常に大手行、主要行と比べて安定的に推移している。ただ、やはり地域金融機関に関してはROEが低いということで、この辺の株価純資産倍率については相対的に低い局面が多いというところであります。

また、一番下のところで再編に対する強い期待は存在したがということなんですけれども、こう書くと、あたかも私が再編論者というところで誤解を与えるといけませんけれども、私は再編自体はあまり肯定的な考え方は持っておりません。後ほどお話しします。

6ページ目、7ページ目で、地域金融機関の財務的な特性と問題というところを若干触れさせていただいています。

まず6ページ目、従前からの本会合におきまして、ある程度この辺の議論はされているかもしれませんけれども、やはり有価証券の占める割合が年々増えてきているということであります。

また、地方銀行、それから大手銀行比べますと、特に、この債権の関係の損益を含んだその他の業務利益という項目がございます。これはトレーディングの収益、特定取引利益といいますけれども、これを含めた内容で比べていただきますと、かなりボラティリティが高いというところがごらんいただけると思います。

ですから、ある程度信用リスクをとってもうけるモデルから、ある程度信用リスクをとってもうける機会が少なくなっているものですから、市場リスクのマネジメントが非常に極めて重要な課題になってきているということであります。

7ページ目に関しましては、コスト構造の比較であります。こちらで、まず下のほうのチャートをごらんいただきますと、粗利経費率。これは大手銀行と地方銀行と比べておりますけれども、2009年は少し異常値が出ておりまして、これは証券化商品等の損失が出ております。しかしながら、安定的に地方銀行の粗利経費率が高いと。

なおかつ、この要因なんですけれども、上のほうのチャートを見てだくと、やはり人件費の割合が高い。これは、だから地方銀行は効率性が悪いんだ、ここを何とかしなきゃという話ではなくて、あくまでも地方銀行のビジネスフランチャイズは手数がかかるんだというところの問題認識であります。

続きまして、8ページ目以降で、今日の本題であります需給のギャップというところをお話ししたいと思います。合計で、この辺のギャップに係るところの背景を4つお示ししたいと思います。

まず第1に、経済合理性の部分であります。こちらに関しましては1つ、大手銀行の過去のモデル。現在も続いておりますけれども、三井住友銀行のビジネスセレクト・ローンというところを取り上げてみました。こちら、今まで中小企業は一くくりにされておりますけれども、大手銀行の目線というのは大体、10億でも100億でも中小企業なんですね。この中で、今まで看過してきました10億円未満の階層ですか。いわゆる中小の中でも粒の小さいところに対して少し融資の機会があるんじゃないかということで、これはある程度トランザクショナルバンキングとリレーションシップバンキングを折衷しながらモデル化したものが、こちらのほうのローンであります。

ただ、ある程度ハイリスクでローリターンのモデルがどの程度これで緩和されるかということだったんですけれども、結果的には、かなりの損失率、これを得まして、なかなか、この辺のモデル化が進まないどころか、逆に縮小を余儀なくされていると、こういう状況であります。

ですから、ここでの問題意識としましては、リレーションシップバンキングにおきまして、この情報の非対称性的な部分がどれだけ解消できるのかというのが1つの論点になろうかと思います。

続きまして9ページ目で、これは経営戦略に、この辺の需給のギャップがあるんじゃないかということですけれども、先ほどの話で、やはり、こちらのリレーションシップバンキングの関連でいきますと、目ききというのが極めて重要である。しかしながら、金融危機におきまして、ほとんどの金融機関が大リストラを行った。自然退職を前提にしながら新卒採用を絞ったということで、ちょうど今の年代ですと30歳の半ばですか、30歳代の半ばぐらいの人材が極めて枯渇しております。結果的には、今のマネジメント層、支店長である30代後半から40代の支店長がみずから若手の教育をしなければいけない。そうすると、どうしても、きめ細かいような指導ができない。

もうちょっと申し上げれば、やはり、この辺の目ききというのは、ある意味で伝統芸能の伝承みたいな世界がありまして、そこが1つ、人材的に断絶してしまったというのが私の問題意識であります。

もう一つが、エクイティに対する抵抗感。これは少し私の先入観も入っておりますけれども、過去の金融危機で、やはり持ち株というのが銀行の財務をかなり毀損してきた。結果的には、やはりエクイティ=罪悪感というところが少し背景としてあるのかなと。ですから、エクイティ=ロークオリティの感覚ですか。ここのところが少しエクに対する過剰なディスモチベーションにつながっているのかなと考えております。

続きまして、10ページ目でございます。経営基盤と能力に起因するものということで、こちらでは全国銀行協会が実施しましたサーベイ、この結果を幾つか事例として取り上げておりますけれども、上の3つが主要行の事例であります。

残された課題、一番右端をごらんいただきたいんですけれども、この3つの銀行、共通しているのが、いずれも制度的な問題である。自行に係る問題、自社に係る問題というよりは、むしろ制度的な問題である。

ところが、以下4番目以降、これ、地方銀行でございますけれども、いずれも、ある程度経営基盤というか、あるいは情報のリソースへのアクセスですか、こういった、かなりインフラ的な問題が課題として出されております。

例えば上から5番目ですか、充足されたニーズというところをごらんいただきますと、インターネット等に情報を求めているということは、かなりの苦労が見てとれます。

また6番目、東京都民銀行さんですけれども、なかなか、やはり営業開始後の、例えば会計であるとか、税務であるとか、その辺のニーズへの対応が非常に厳しいということです。

あともう一つは、特徴的なところとしては、9番目の山梨中央銀行さん。現地ネットワークだけでは限界がある。

それから、11番目の南都銀行さん。こういった情報提供の機会というのは、かなり一過性の性格を呈しているということなので、こういうところからごらんいただいても、なかなか、特に地域金融機関で、こういった海外進出のニーズを網羅的にサポートするのは厳しい状況かなというのが私の感想であります。

また、もう一つ経営基盤以外にも、今度11ページ目で、先入観に起因するんじゃないかなというところが私の問題意識として持っていて、銀行員の常識は世間の非常識というような書き方をさせていただいておりますけれども、例えば住宅ローンは勤続年数が長い既婚男性向けの商品であったと、こういう歴史があるんですけれども、今や女性向けの専用のローンは当たり前になってきております。しかしながら、こういったブレークスルーをするに当たっては非常に長期を要した。

例えば私みたいに過去十数年で4社を経験している人間は、なかなか住宅ローンも借りれないと、こういう状況でありますので、極めて私ごとではありますけれども、その辺の先入観とか偏見に類するところはあるのかなというところであります。

次に12ページをお開きいただきたいんですけれども、じゃあ、この4つの需給ギャップにかかわるところの背景に関して、どういった解決の方法があるのかなということでありますけれども、例えば経済合理性に起因する部分に関しましては、信用リスクの分散化。これは特に地域金融機関の場合は、非常に、例えば地域的な、ジオグラフィカルなリスクの集中化はありますので、ここを分散化しなければいけないというのは1つあります。

あと、取引条件の工夫というのは、先ほどの担保の問題、佐藤社長のほうからでも提起されましたけれども、いわゆる動産を担保にするようなABLの工夫ですとか、あるいはリコース性を含めてノンリコース的な色彩の借り入れ条件ですか、そういったところも1つ必要になってくるのかなとは考えております。

2番目、経営戦略に起因するギャップでありますけれども、これはリストラといった瞬間に人を削るということではなくて、あくまでも長期的なゴーイングコンサーンの立場から人事政策を考えるべきであるということと、あと、特に私は強調したいのは、次のエクイティ投資の再考です。

先ほど佐藤社長のプレゼンの中で、重要な要素が2つあります。ベンチャーキャピタルはリスクが高いので、極めてデューデリが厳しいという点と、もう一つが長期的な視点からのエクイティ投資を考えてほしいと。実はここに、いにしえからある日本の金融機関のよさが隠れているのかなと考えております。

すなわち、特に創業から成長ステージにかけての企業というのは、エクイティでなくてもリスクが高いわけですね。なおかつ、ここは非常にオプション的なボラティリティが大きい状況でありますので、フィクストインカムのローンでは、なかなか性格的に合わない部分があるということで、やはりエクイティ的な色彩を込めて、例えばストックオプション的な要素を組み入れたローンの形態等も考えるべきかなと。あるいは、今ある銀行の関連会社の事業投資の機能を拡充するですとか、その辺も再考の余地があると思います。

3つ目としては、経営基盤の能力。これは、やはり、特に地域金融機関、小規模になればなるほど、プラットホーム、これが重要になってきます。ですから、ここは共有化する、知の知識のデータベース化、こういったところも1つの課題かなと。

最後の先入観に起因するギャップに関しては、銀行というのは極めてデータマイニングが不得意なところかなと考えております。ですから、やっぱりニーズの深堀りというところを、もうちょっと基礎研究、あるいは長期的な視点からデータマイニングすべきじゃないかなと思います。

こういったところを業態別に述べさせていただいたのが13ページでありますけれども、これは後ほどご参照いただければと思います。

最後に、手短に再編について一言だけ申し上げたいと思います。14ページをお開きください。

14ページに関しましては、やはり再編というのはシナジーがねらいですね、フランチャイズも拡大できますねということなんですけれども、シナジーに関しましては、当初の統合コストが非常に過大であるということと、よいところを持ち寄ればいいんですけれども、どうしてもパワーバランスの中で、強いほうの価値観を強要するような印象がございます。

また、フランチャイズの拡大に関しまして、例えば、その銀行のことがあまり好きではない、そういった顧客も少なからずいるような地域もありますので、そういったところのフランチャイズの拡大はマイナスになるようなこともあるということであります。

一応、15ページ、再編の歴史がありますけれども、この中で主要銀行についての今までのコストですとか、あるいはシナジーの推移を少しだけでも、印象だけでも知っていただくために、16ページのチャートをご用意いたしました。

16ページに関しましては、いわゆる収益のシナジー、粗利のほうが上のチャートです。下のほうが、これはコストということなんですけれども、コストに関してはわかりやすいんですけれども、どこの銀行も減らしております。粗利に関しては、これは数ある銀行の中で住友信託銀行だけが再編の中にはいなかったということで、いずれも、この住友信託銀行を1つ軸にして見ていただくと、あまり再編のメリットが、コスト面でも、あるいは粗利面でも感じられないということであります。

それから、17ページは一応、地銀のほうの過去の再編以降の効率化効果を検証しておりますけれども、あくまでも、これは統計的な意味はありませんけれども、大体コストシナジーはきいているのかなという印象がございます。

何よりも正直なのは株価なんですね。これが18ページ目です。4つの視点に分けまして、株価のパフォーマンスというのをお示ししております。パフォーマンスというからには、相対的なパフォーマンスです。

ごらんのとおり、合併1カ月前というのは、合併のうわさ話すらないのに対して、合併の発表があって、合併の当日があって、1年後パフォーマンスはどうかということなんですけれども、5社あるサンプルの中で、合併の当日までは5社中4社が銀行セクターの株価をアウトパフォームしている。よりよいパフォーマンスが見られている。それに対して、合併1年たつと、5社中2社。要するに、パフォーマンスがいいのはマイノリティーになっております。

これは非常に合併自体が婚約、結婚というようなプロセスに似ているんですけれども、やっぱり合併当日までは夢も語れる状況だったのが、1年たつと現実が見えてくるというところかなと考えております。

ですから、やはり株価は正直であって、過去の再編に関しては、少なくとも、あまり評価が高いとは言えないということであります。

ただ、そうはいいましても、日本に比べてアメリカのほうでは再編がかなり進んでおりまして、過去の統計的な結果から申し上げれば、19ページにありまして、これが同じように株価のパフォーマンスから再編を評価したものでありますけれども、これは結果だけごらんに入れたいと思います。

右下のところで、とにかくマーケットが評価した再編というのは、規模の経済が働く。要するに、地域が集中して、業務が集中する。機能が集中して、同じ地域の金融機関同士の再編が評価されているということであります。

結果的に、これをどうまとめるかというと、20ページでありまして、結論だけごらんください。一番下の四角のところであります。

規模のいかんを問わず地域内における再編は望ましいんじゃないか。これは、ある程度プライスリーダーシップを握れるようなところができて過当競争を避けられるということと、それから、ある程度顧客のニーズに対して共通のプラットホームを組織内に持てるということで、なかなか手数が足りないので、こういった新規事業、あるいは海外の進出等のプラットホームがなかなかつくれませんねというところに対しては、ある程度ニーズにこたえることができるんじゃないかなと考えております。

以上、かなり駆け足で広範囲に及びましたけれども、つたない説明、ご清聴ありがとうございました。

○吉野座長

野﨑ディレクター、どうもありがとうございました。

それでは、あと10分ちょっとございますが、どなたでも結構ですけれども。では大崎委員、どうぞ。

○大崎委員

大変興味深いお話、ありがとうございました。

佐藤社長に1点お伺いしたいんですが、先ほどベンチャーキャピタルの投資の課題ということで、投資案件の選定が人気、流行に左右される傾向があるんじゃないかというお話があって、私もそういうような感じをやや持っておりますので、1つお伺いしたいんですが、金融的観点からベンチャーキャピタルをやる方と、むしろ技術者の出身の方がやられるとか、あるいは大企業がコーポレートベンチャーというんですか、戦略的なパートナーを探すという格好でベンチャーキャピタルやられるようなケースと、2つに分けた場合に、技術に強いとか、あるいは大企業が戦略的パートナーを探しているというケースでも、やはり同じような問題をお感じになっているのかどうかを教えていただければと思うんですが。

○吉野座長

佐藤社長、お願いいたします。

○佐藤代表取締役社長(高性能駆動装置開発)

先ほど申し上げた中で、まずいろんなベンチャーキャピタルのファンドがございます。やっぱり一番時間がかかるところは、金融系なんですね。商社系は早いです。総合商社は自分たちがビジネスをやっていますから、よくわかるんですね。ここは早い。

それから、そういうことを踏まえたところのファンドですね。あと、ファンドのLPが大企業のところは早いです。

特に金融系が創設したVC、これは非常に時間がかかる。見方が、やっぱり金融重視になってしまうという状況です。

○大崎委員

ありがとうございます。

○吉野座長

ほかにいかがでしょうか。では川波委員、どうぞ。

○川波委員

同じく佐藤社長にお伺いしたいと思います。資料の7ページに投融資サイドの課題ということで、融資対象のエバリュエーションにおける技術アセットや人的アセットの評価が不得手だとお書きになっているのですが、実は私も同じような感覚を持っています。新技術に対する評価力が、やはり全般的に日本の金融の場合には弱いのではないかと私は思っています。

これは本来、金融機関側が考えるべきことだと思いますが、その原因はどこにあり、そして、それを克服するにはどうしたらいいかということを我々は考えなきゃいけないと考えているのですが、ユーザー側のお立場として、何かその点についてご示唆がいただければ大変ありがたいと思います。

先ほど高槻社長のお話は、そういう意味では大変示唆的でありましたけれども、同じく佐藤社長にも何かお考えがあればお聞かせいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○吉野座長

佐藤社長、お願いいたします。

○佐藤代表取締役社長(高性能駆動装置開発)

まず技術観点なんですけれど、非常に何の技術がいいのか、どうなっているかという観点は、我々自身も非常に難しいということで、それは何も金融機関さんの問題だけじゃないと思います。ただし、やっぱり物の見方が、私たちの国の産業基盤はどこに置くべきかという観点から、まず始められるといいんじゃないか。

ですから、先ほどはたまたまドイツの例を挙げましたけれど、やはり、あそこはITでは栄えない国なんですね。アメリカなんです。コモディティでも、あまり栄えない。でも、基礎技術でほんとうに栄えるんですね。それがコモディティの下支えになっていると。やっぱり、そういう分野の見方というのは非常に重要だと思っています。

たまたま私がそのような、このモーターという、去年から見ているんですけれど、初めは私自身も、モーターですかと。こんな一般的に何がイノベーションがあるんですかと思っていました。でも、これをよく深掘りにしますと、ああ、ほんとうに、ここに日本の技術を入れる余地がある。それから、日本のいわゆるノウハウですね。たくみのわざですよ。こういう見方は非常に重要という観点を、やはり見きわめることが必要かと思っています。

ですので、先ほど申し上げましたハイプですね。産業界でこういうことが今後、流行しそうだと。流行に乗った投資はなかなか難しいけど、やっぱり、そういうところからの情報は多いということに左右される情報だと。これが技術の視点でございます。

ですから、そこを、ぜひ事業会社とよくお話しいただいて、どういうシナリオなのか。この技術が、コンペティターに対して何が違うのか。今、それから将来、10年後どうなっているのか。そこの納得性というのを、やっぱり早急に探索されるのが一番早い方法かなと私は個人的には思っております。

○川波委員

ありがとうございます。

○吉野座長

河野委員どうぞ。

○河野委員

すいません。野﨑さんにお聞きしたいんですが、ページでいいますと、9ページのところに、要は銀行業務の日本の低迷においては、目ききと技術伝承というまとめがしてあるんですね。そういう意味では、我々民間的にいえば、銀行の方というのは必ずお二人で出てこられまして、常に記録を全部おとりになって、ある意味ではそれがベストプラクティスを追求するためのスタイルなのでしょうか。こういうリストラとか人材不足という中でも続けられています。そういうスタイルで続けて来られて、目ききや技術伝承が日本の場合は起きなかったのかということについて何かご意見があれば教えていただきたいというのが1件と。

もう1件、同じことに近いんですけど、14ページに再編に関する考察というところで、再編の功罪。これも、どちらかといえば、今のさっきの9ページのもそうです。これもそうなんですが、非常に日本的なのか、そうではないのかという意味では、まさに過大な統合コストとベストプラクティスからの逸脱という第1番目のところですね。これが1つも実現されていない。なかなか実現事例にはお目にかかっていないということがあって、それは海外と日本の間に差があるのでしょうかということを、できれば教えていただきたい。

○吉野座長

野﨑ディレクター、お願いいたします。

○野﨑株式調査部マネジングディレクター(シティグループ証券)

ありがとうございます。

まず最初の質問ですけれども、必ずお二人でお見えになるということに関してはそのとおりだと思うんですけれども、それによって何を、例えば年長者が年少者に伝えられるかというところが問題でありまして、例えば何らかの予兆が出たときに、こういったところでビジネス上は定量的なところではなくて定性的に出てくるんだよというところによって、例えば企業の危機というものを教えるとか、そういったものは、なかなかお客さんとのコミュニケーションだけでは得られない情報だよと。その中で、やはり中核となる年代の人間が欠落してしまうというのは、非常に、そこの技術あるいはノウハウの伝承については、やっぱりギャップが出てきているというのが1つであります。

それから、2つ目のご質問なんですけれども、2点ありまして、1つは、やはり欧米の金融機関の場合というのは、早目に勝ち負けがはっきりすると。例えばボクシングに例えますと、15ラウンド戦って判定でドローというのが日本の金融機関の特徴ですけれども、海外の場合は1ラウンドKOですということで、大体はそこで決着がついて、統合のフリクションが少ないということと、あと2点目としては、これは一部の日本の金融機関の中で、例えば信託銀行の合併は比較的ベストプラクティスが何とか貫けたのかなという印象を持っています。

なぜかというと、それは共通の運用者としての目線があるからですね。特に信託銀行というのは年金の運用をしております。ですから、マーケットと非常に密接な関係があることを背景に、マーケットが何を評価するのかというような共通の価値観を持っている関係で、結果的には何が一番マーケットで評価されるかという目線で物事を決められることかなと。

ですから、お答えになっているかどうかわかりませんけれども、やはり、まだまだ通常の再編の中では改善すべき点があるのかなというのが結論であります。

○吉野座長

では家森委員、どうぞ。

○家森委員

野﨑さんにお尋ねしたいんですが、13ページのところで、第2地銀について、地域を越えた知のデータベース化というご指摘があるんですけれども、興味深い内容と思いましたので、ご説明いただけますでしょうか。

○野﨑株式調査部マネジングディレクター(シティグループ証券)

ありがとうございます。

まず地銀の1と2というところをご比較いただきますと、1のほうは、再編ないしは緩やかな目的別連合体の形成として、それに対して地銀2の書き方としては、地域を越えた知のデータベース化。これ、実は同じことを目的としております。

やはり地銀1に関しましては、ある程度規模がありますので、再編によって共通のプラットホーム。例えば、先ほどの海外の進出の対応ですとか、そういうものは共有化できるプラットホームができる。しかしながら、なかなか第2地銀さんですと、規模的に、そういった再編によって、そういうプラットホームができにくいということなので、例えば第2地銀全体として共通のプラットホームをつくって、そこで、例えばこういう事案があったというところを持ち寄って、それに対応する方法を、そこからリソースとして取り入れることができるようなメカニズムは1つ提案できるのかなということであります。

○吉野座長

ほかにいかがでしょうか。では、井潟委員。

○井潟委員

野﨑先生にお伺いしたいと思います。非常に明快なご説明ありがとうございました。地域金融機関の再編に関する考察ということで、非常に説得力があるかなと思いました。

お聞きしたいのは、少子高齢化と人口減少。先進国の中でも最高のスピードと最高の水準で推移している我が国の少子高齢化、それと人口減少ですが、これの今後の地域金融機関の再編の関係については、わりと大きい影響があるのではないのかなと思っています。

直近の、例えば国勢調査(速報ベース)ですか。世帯数が初めて、たしか15以上の県で減少になった。あるいは夫婦と子供の世帯数を、いわゆるご老人中心となると思いますが単身者世帯がついに上回り、典型的な世帯が夫婦及び子供の世帯ではなくなった。あるいは働き手がいる世帯数が、たしか33道府県で減少に転じたと。こういう、地域金融機関にとってのお客様の姿が、すごく大きく変わっている。

それから、貯蓄率も今後はおそらく減少傾向。それに加えて、以前、地方から都会に出てきて、そのまま都会に住み着いた方々に、今後は相続を通して地方からの資産移転が発生する。我々の推計では、その効果だけでも向こう10年足らずで20近い県で個人金融資産が1割以上減るかもしれない。

こういった大きな、これまで経験したことのないような地方の根本的な変化というんですかね、そういう中で地域金融機関さんの立ち位置、あるいは経営をめぐる環境というものが随分大きく変わると思うのですが、これと再編といったものの関係は先生はどうお考えになっているのかなと……。

○野﨑株式調査部マネジングディレクター(シティグループ証券)

ありがとうございます。2点お答えいたします。

まず再編に関しましては、やはり2つの空洞化。具体的には円高等によります国内の経済の空洞化ということと、こと地域経済に関しましては、ご指摘のとおり都市部への移転ということで、地域の中での空洞化が進展しております。なおかつ、少子高齢化といいますと、サプライヤーである金融機関の数が一緒で、顧客数が減るというのは、やはり不均衡が出てきております。

ですから、結果的には、マクロベースで考えれば、やはりサプライヤーの数というのはある程度減少しなければいけないのかな。その際に再編というのは、うまくできれば非常に有効なツールになるんじゃないかなとは考えています。

もう1点は、これは再編とは直接関係ないんですけれども、少子高齢化はほんとうに銀行のビジネスにとってマイナスなのかということなんですけれども、私はプラス面もあると思っています。これは、例えば相続の問題ですとか、今まで銀行がニーズとして上がってくる以上に、やはり新たなニーズというのが増えてくる可能性が高いです。例えば企業取引でいえば、事業承継というのが、その中で問題になります。

ですから、ある意味で、少子高齢化の中にもビジネスのヒントは隠されているのかなというのが私の感想です。

○吉野座長

ちょうど時間になってしまいましたので、今日はこれぐらいにさせていただければと思います。

それでは、事務局から今後の予定についてお願いいたします。

○黒澤総務企画局企画課長

本日はご審議、どうもありがとうございました。

次回の審議につきましては、11月半ばごろの、やはり金曜日という方向で設定したいと思います。また後ほどご相談させていただきます。よろしくお願いします。

○吉野座長
 

本日は、いろいろなご意見、どうもありがとうございました。それでは、これで終了させていただきたいと思います。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事録は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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