金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第3回)議事要旨

1.日時:

平成23年9月2日(金曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

開催挨拶

調査研究機関、企業、外資系金融機関からのヒアリング

質疑応答・自由討議

4.議事内容:

  • 調査研究機関、企業2社、外資系金融機関より、我が国金融業の国際競争力をめぐる論点に関して説明を受け、その後質疑応答、自由討議がなされた。

  • 質疑応答・自由討議の概要は以下の通り。

【我が国金融機関の海外業務の現状】

  • 地銀の海外業務については、貸出しからほとんど撤退している中で、一部先が事務所を作って助言・情報提供を行っている。また、国内では、かつての中小企業の海外進出は、属する系列の上位に位置する大企業の進出に伴って行ったものが多く、当該大企業なりその取引銀行なりが金融面の支援を行っていたが、現在は、独立系の中小・中堅企業が単独で海外進出を企図することが増えている。こうした中で、取引関係のある地銀や信金は、主としてアドバイザリー業務を行っている。
  • 新興諸国では、旧宗主国系の金融機関が強く、また、オーナー経営者が多い。こうした所で現地市場を開拓するためには、当該地域について特有の知識や、ノウハウ、当局とのコネクションを築けるような地域の専門家の育成が重要。しかし、現状においては、2年か3年経ったら言語すらきちんと習得していないうちに帰国してしまう。そのため、ますます地域の専門家が少なくなる。現地での専門家育成は以前よりも後退している印象がある。
  • 買収先を十分に活用して、迅速に買収効果を得ることに関連して、野村證券の旧リーマンの欧州・中東地域の株式・投資銀行部門買収が興味深い。両者は、人事制度や報酬体型が全く異なっていた。異なる文化をもつ集団を受け入れたことが、どのような効果を持つのか、どのような問題を生じさせるのか、さらにはいかに問題を解決し、融合させていくのか、注目されるところ。

【企業から見た我が国金融機関等の現状・課題】

(企業が海外で事業展開する際の資金調達)

  • 企業の資金調達力は、金融機関が持っている金融仲介機能を利用させてもらうことでも成り立っている。また、金融機関には、企業からマーケットのリスクを遮断するという役割もある。
  • 中東(サウジ)での大規模投資にあたっては、カントリーリスクに関するコンサルタントなどを複数雇い、その分析結果を踏まえて意思決定を行った。プロジェクトファイナンスについて、国際協力銀行(JBIC)に入ってもらうことで、日本の国としての後ろ盾があり、有事の際には関連省庁の協力も得られるという安心感につながると思われる。
  • 総合商社の国際的なビジネス展開において、取引企業が資金繰り上の問題に直面しても、ただちに支援することはなく、まずは銀行に掛け合ってもらう。それでも問題が解決しない場合には、総合商社自身が、商社金融と云われるようなトレードファイナンスの機能を提供することがある。
  • 新興諸国にも大規模な現地銀行はあるが、リレーションが皆無な中でいきなり取引を申し出ても相手にしてもらえないことが多い。このため、新興諸国でも、日本でリレーションのある邦銀と取引を行うことになる。同様に、グローバルなネットワークに強みのある外資系銀行とリレーションがあることは、グローバルな業務を展開する上で役立つことになるため、すでに複数の外資系銀行とリレーションを構築している。

(企業と金融機関とのリレーション)

  • 日本の銀行では、担当者のローテーションが早いということがあるが、人が変わっても会社対会社のリレーションは変わらずに続いていく。逆に、外資系銀行の場合は、ある人に担当してもらっている時間が長くても、その人が会社を変わってしまうと、会社間での取引が変わってしまうということがある。

(我が国金融機関への期待)

  • 金融機関はインフラであり、われわれ企業のようなユーザーを支えるというのが基本。企業が海外進出する際に、最初はある程度採算に合わなくても、その企業をサポートし、共に成長していくというような協力関係が重要と思う。
  • 海外における現地化及びネットワークの再構築、更にはスピード感のある意志決定が重要。

【外資系金融機関から見た我が国金融機関】

(我が国金融機関の強み・弱み)

  • 日本の金融機関の強みは、バランスシートの健全性と流動性。一方、弱みは国際的な支店網が十分ではないという点。日本の多くの企業が海外展開を考えている時代においてこれは弱みとなる。
  • 日本の銀行は国内において非常に潤沢な預金を獲得しているが、海外におけるリテールのネットワークが不足しているため、海外における外貨の流動性は十分ではない。このため、為替スワップ市場を利用することになっているわけだが、これによって同市場の高いマーケットリスクを負う形となっている。

(日本の金融市場)

  • 日本の規制当局は過去15年間にわたり一貫して規制を緩和してきたため、規制の観点からいえば、日本の市場は他のアジアの市場に比べて非常にビジネス展開が容易である。
  • ただし、実際にビジネス展開を図るとなると、コストの面では以下のような問題があり、必ずしも容易な場所ではない。第一の問題は、邦銀の方が外資系に比べて、達成すべき資本利益率の水準が低いことである。このため、円貨貸出では、外資系銀行と邦銀とでは勝負にならない。競っていくとなると、収益に比して大量の資本を投下する必要が生じることとなり、外資系銀行では割に合わない。当行では日本で円貨貸出を行うのは、他の市場でのビジネスでの収益と相まって、全体的に一定の収益性が確保できる場合である。第二の問題は、日本では、人件費、賃料、および土地取得費が嵩むため、支店網拡大コストが大きくなることである。

【金融機関の海外展開の課題】

  • 新興諸国では、貸出しを行う前にまず預金を確保することが重要。新興諸国での市場調達はとても不安定なものであり、簡単に資金調達手段が途絶してしまうことがある。
  • 国際的な連結性を背景にグローバルな金融サービスを提供するビジネスについては、先行者の収益性の高さをみて、追随する金融機関が増えており、競争が激しくなってきている。しかし、先行者がこれまで構築してきた大きなマーケット・プレゼンスを同じように確立することは容易ではない上に、一般に、新興諸国では新規参入障壁が高い。
  • 現状、自己資本の積み増しを求める方向でグローバルに規制環境が変化している。この変化そのものは望ましいことだろうが、銀行業界において国際的な再編を促すことを通じて、既存の大銀行がさらに大規模化する結果になることも考えられる。しかし、この帰結は規制当局の本来の意図とは異なるものかもしれない。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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