金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第4回)議事要旨

1.日時:

平成23年9月30日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

開催挨拶

外資系金融機関からのヒアリング

事務局説明

質疑応答・自由討議

4.議事内容:

  • 外資系金融機関2社より、我が国金融業の国際競争力をめぐる論点に関して説明を受けたのち、質疑応答がなされた。その後、事務局が行ったこれまでのヒアリングや議論の中間的な整理に対して、自由討議がなされた。

  • 質疑応答・自由討議の概要は以下の通り。

【外資系金融機関のグローバル戦略に関する質疑応答】

(海外の情報収集について)

  • 世界中の様々な情報を東京1箇所で収集することは困難である。そのためには、海外現地における然るべき人材の配置やビジネスの展開を基盤にした効率的な情報収集体制の整備が必要であり、また、取引先との関係が保たれていることが前提となる。
  • 日本にいるからといって、必ずしも世界の情報が集まらないというわけではない。グローバルなネットワークを強みとする外資系金融機関は、日本の金融機関との情報交換・提供を通じて、彼らの情報収集に貢献している。

(未進出の地域に進出する場合について)

  • 今まで進出していなかった国に進出する場合、まずは事前のマーケットリサーチを行うことが必要となる。そのうえで、進出するという段階では、ライセンスの取得が大きな関門となる。また、当局や現地の実力企業、地場の金融機関との人脈を持っている人を集めることも必要となる。人材コンサルタントや社内外でのインフォーマルなつながりを利用して、必要な人材を発掘している。
  • 成長の可能性、ビジネスの発展可能性を見極めることから始め、次に現地駐在事務所といった小規模な進出を行う。その後、ライセンスの取得やインフラの構築を行っていく。このような準備作業に時間がかかり過ぎる場合などには、自力による業務展開にこだわらず、M&Aという選択肢を検討することもある。人材の発掘については、同業他社で活躍している人はどこにどういった人材がいるかをよく把握しているほか、顧客との情報交換を通じてそうした情報を得ることもあり、それらを踏まえて採用すべき人を絞り込んでいく。もっとも、最初から現地社員だけの組織にしてしまうと、企業文化の浸透に非常に時間がかかるため、現地社員に加えて他地域のオフィスから人を派遣する。こうして、徐々に組織が拡大していくことになる。

(主幹事獲得とランキングの関係について)

  • 引受・売出業務で主幹事を取るにあたり、ランキング上位であることは非常に強い武器となる。ランキング上位となるためには、グローバルなマーケットでそういった案件の引き受け等ができる部隊を有していること、投資家と密な関係を持っていること、恒常的にマーケットにコミットして企業をサポートするという金融機関としての文化を有していること、さらにはそれらを継続的に支えるだけの財務基盤を有していることが重要となる。
  • どういったランキングとなるかについては運によるところもあるが、個々の案件で主幹事を獲得するにあたり重要となる点が3つある。1点目は、顧客である発行体との長期的なリレーションを有しているということ。2点目は、グローバルな販売能力を有しているかどうか。そして、3点目は、情報管理の徹底、コンプライアンス基準の高さである。

(投資銀行業務と商業銀行業務の兼営であることの強みについて)

  • 投資銀行業務と商業銀行業務の両方を行っているということは、企業が海外進出をする際の戦略的な資金調達の場面から、現地における業務が軌道に乗った後の日常的な業務における資金調達まで、様々なニーズに的確に応えることができる可能性があるという点で、顧客からみると非常に有益である。

(中小企業が海外進出する際のサポートについて)

  • 新興市場において、J.P.モルガンのような金融機関は、クロスボーダーの取引では同様の大手グローバルな金融機関と競合し、現地取引では地場の金融機関と競合することになる。特に、中小企業の海外進出をサポートする場合、地場の金融機関との住み分けをどうするかが重要。例えば、現地での資金決済といったよりローカルな領域では、提携関係にある現地銀行の紹介などを行う一方で、クロスボーダーの取引等ではグローバルなサービスが提供できる自らが関与していく。
  • 日本の企業はアジアや新興国への進出を非常に真剣に考えている。このため、アジア現地には日本人スタッフを配置している。今後、ビジネス規模が大きくなるに従って、現地での体制を強化していく可能性は十分にある。

(日本の金融規制について)

  • 昨今、欧米ではかなり踏み込んだ規制強化の動きがある。これと比べると日本の規制環境は、これまでのところ従来からの規制緩和の方向を維持している。日本が真に国際的な金融センターを形成していくには、これまで当局が進めてきた改革を今後も進めていくことのほか、海外の金融機関の目が日本に向くような促進策を行っていくことが望ましい。
  • 同じアジアの国際金融センターである香港・シンガポールについては、その所在地が地理的に我が国よりも有利である中で、国をあげて金融機関や資本の誘致に注力している。我が国は、規模やシステムの面で、これらの都市とは異なるため、同じような制度を整えて競っていくことはそもそも無理であり、そういった必要性があるという議論は誤っている。とはいえ、様々な領域で外国人の住みやすさを改善する方策はあるものと考えられる。例えば、日本で高度な専門性のある職業に従事している外国の人材に対しては、日本で納める税金と受けるサービスとがもう少し釣り合うように改めてもよいかもしれない。

【事務局説明に関する自由討議】

  • 我が国金融機関の海外展開を阻害する海外規制があれば、官民協働のもとで、現地当局に是正を働きかけていくことが求められる。例えば、中国の適格海外機関投資家(Qualified Foreign Institutional Investors: QFII)の枠が拡大されれば、我が国の大きな金融資産にとって中国投資の機会がより広がることになる。
  • 議論の対象がメガバンクや大手証券会社に偏っている印象を受ける。保険会社はもとより、その他の金融機関(例えば、モーゲージバンクなどのノンバンク)も対象にすべきである。さらに、免許制の下にある既存の金融機関は社会的インフラとしての役割を有するため、収益性だけを追求することには自ずと限界があることを踏まえると、国際展開を行う主体として新しい金融業者の可能性も検討すべきである。
  • IT技術のさらなる活用を梃子にして特定分野(例えば、電子債権)によって国際的に席巻していくことを目指す視点も重要。
  • 国際協力銀行や日本政策投資銀行等を戦略的に活用するといった政府系金融機関と民間金融機関の連携も検討すべきである。
  • 我が国金融業の今後の国際戦略について、構築すべきビジネス・モデルの一つはアジアを主たる対象にした「アジアン・プロフェッショナル」ないし「アジアン・ホールセール」と呼べるものと考えられる。この関連では、アジアのプロ向け市場創設に向けたインフラ整備をいかに進めるかといった視点も重要となってくる。また、かつて欧米金融機関に高収益をもたらしたビジネスを今後も続けていくことが難しくなっている昨今にあっては、トランザクション・バンキングが「アジアン・プロフェッショナル」の中核業務として注目される。
  • 「金融業」の定義が不明確である。個別の金融機関というプレイヤーを育てることを意味するのか、金融市場を発展させることを意味するのかはっきりしない。
  • 「金融業」が個別金融機関を意味し、それらをグローバルなプレイヤーに育てることを目指すならば、そのプレイヤーには誰が含まれるのか。本社国籍によらず日本におけるプレイヤーを意味するのか。また、国内に本社を持つプレイヤーでもプレイヤーごとに成功度合いが違うので、最も成功しているプレイヤーみたいにみんながなれるように、ほかのプレイヤーをアシストする、ということなのか、それとも、日本のプレイヤーは全部だめなので、その理由は日本という場にあるはずなので、その場を変えるための環境整備、あるいはヴィジョンの提示を行うのか。この点を一旦整理してから、議論を進めた方がよいのではないか。
  • 金融立国を目指すなら、国民および企業が認識を共有し具体的な行動に移せるような国家戦略、さらには国としての覚悟や国民の割り切りが必要である。例えば、輸出立国を追求する韓国・台湾では、中小企業の海外進出は当然のこととなっているほか、国民レベルで海外留学熱が高く、英語を話せる人や海外で働くことを厭わない人が多い。
  • メガバンクと地銀を峻別して議論すべき。地銀については、海外進出を行う地元企業に対する支援態勢が不十分であるという印象を持っている。このため、複数の地銀が共同で海外拠点を作ることは考え得る一つのアイディアであり、これを可能にする仕組み作りも検討に値する。
  • 金融機関の国際競争力の向上に資する税制面での施策や、金融市場関連の税制改革も論点整理・議論すべき。
  • J.P.モルガンは母国にてリテールでしっかりした基盤を持っているからこそ、グローバルな展開ができていると思われる。このように、国内展開とグローバル展開は常に密接に絡んでいるものであるため、我が国の金融業の在り方を検討するにあたっては、国際競争力のみならず、国内展開の在り方についても、両者を関連づけながら議論すべきである。
  • 大手金融機関の国際競争力の強化をめざす中で、国内業務における顧客の選別が進む結果、(社会的弱者や貧困層が金融サービスを受けられなくなる)「金融排除」が発生しないように配慮すべきである。
  • 国際競争力強化に関する議論では、その対象がまずメガバンクに集中してしまうのは致し方ないかもしれないものの、必ずしも外に出るのでなく、国内回帰を目指す戦略も考えられる。この場合、地銀やより小規模な金融機関は影響を受けることになる。従って、国内をマーケットとしている地域金融機関への目配りが必要であることに加え、今後の議論は国内の金融業界の再編につながるようなものになると想像される。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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