金融審議会「我が国金融業の中長期的な在り方に関するワーキング・グループ」(第9回)議事要旨

1.日時:

平成23年12月16日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

3.議題:

開催挨拶

金融機関からのヒアリング

質疑応答・自由討議

4.議事内容:

  • 金融機関(モーニングスター株式会社、カーライル・ジャパン・エルエルシー 三井マネージングディレクター・大塚ディレクター、ミュージックセキュリティーズ株式会社)により、国民のニーズに合った金融サービスの提供に関する論点として、個人向け金融商品の供給について説明を受けた後、質疑応答・自由討議がなされた。

  • 質疑応答・自由討議の概要は以下の通り。

【投資信託について】

  • 最近、毎月分配型の投資信託の人気が高まっていることは、分配利回りの高さを売りにした証券会社による営業攻勢と、その高利回りの意味するところをよく理解していない個人投資家の錯覚ないし勘違いによるもの。証券税制における配当や譲渡益に対する税率の水準は大きな要因ではなく、仮に来年、税率が引き上げられても、毎月分配型の人気は簡単には落ちないと思われる。
  • これまで、運用会社と販売会社の系列構造のもとで、販売手数料獲得に主眼の置かれた商品設計および営業がなされてきたものと理解。この結果、短命の投資信託が量産されるとともに、個人投資家が直面する平均的な販売手数料が上昇傾向にある。
  • 投資信託の販売手数料や信託報酬率は全商品で単純平均すれば一見上昇傾向にあるが、投資スタイルが販売手数料や信託報酬率の違いに表れることを踏まえると、投資スタイル毎に区分して、販売手数料や信託報酬率の平均値を算出すべきである。また、販売手数料は、販売手法の差異(対面販売、インターネットでの販売)によっても異なり得る。比較にあたってはこの点も考慮すべきである。
  • 毎月分配型の投資信託の中でも、複雑な商品性をもつ通貨選択型が人気になっている。複雑な商品性だからこそ販売手数料が高くなるとの説明が正当化されるためには、販売手数料が高くなった分、販売員のアドバイスレベルが向上していなければならない。しかしながら、実際は、個人投資家はもとより販売員もそうした複雑な商品設計を十分に理解していないと思われる。
  • 証券会社による毎月分配型投資信託の販売攻勢とこれを受けた人気の高まりを受けて、高パフォーマンスをあげている投資信託が埋没しており、その残高も小規模に止まっている。本来、高パフォーマンスな投資信託こそが、販売会社によって個人投資家に紹介され、必要な説明を経て販売されることが望ましい。
  • 特定の販売会社では特定の投資信託しか購入できないことは、日本においてはもとより投信大国の米国においても当てはまること。個人投資家が幅広い選択肢の中から能動的な選択を行えるようにするためには、既存の運用会社と販売会社の系列構造に組み込まれていない独立のファイナンシャル・プランナーの機能向上が望まれる。米国ではそうしたファイナンシャル・プランナーが活躍しており、このことが短命に終わらない投資信託が開発・販売される状況の創出に一役買っている。
  • 我が国において、独立系ファイナンシャル・プランナーが不足していることについては、ファイナンシャル・プランナーという仕事が個人の「業」として成立していないがゆえに、いずれかの会社に所属しなければ生活できないという事情がある。
  • 投資信託の統合は運用効率向上の観点から有益な方策であり、法律面でも実行可能なもの。ところが、実際は、ほとんど行われていないのが実情。受託銀行でファンド管理を統合することや当該ファンドに投資している大勢の個人投資家に通知を行うことは手間であることがその一因かもしれない。もっとも、最大の原因は、統合の対象となる投資信託はパフォーマンスの悪いものになりがちであること。この場合、販売会社は、わざわざ個人投資家に通知を行いたくない、すなわち「寝た子を起こしたくない」と考えるのは自然なことであろう。
  • 投資信託の運用報告書については、情報量、読み物としての質、および透明性などの観点から改善の余地が大きい。運用報告書の向上は、個人投資家の金融リテラシー向上に加えてファンドマネージャーの鍛錬にも資すると考えられる。
  • 米国の確定拠出年金制度は、年金資金が投資信託の有力な買い手になることを通じて、一部投資信託のロングセラー化に貢献しているほか、個人投資家に中長期的な観点から投資を行う重要性を認識させ、かつ必要な金融リテラシーを身に付ける良いきっかけになっている。我が国についても、マッチング拠出が認められたことを受けて、確定拠出型の年金残高が増え、かつ個人投資家の意識改革がなされていくことが期待される。
  • 個人投資家の動向に関して、我が国と投信大国である米国との差異は、証券税制における個人投資家に対する優遇措置の差異に由来するものではないであろう。

【ファンドへの個人資金の直接的・間接的動員】

  • 我が国では、PEファンドに対して、個人の資金はもとより、年金基金など機関投資家の資金も十分に供給されていない。この背景には、投資初期にはリターンがマイナスになること、投資期間が長いこと、開示情報が乏しいこと、および流動性が低いことなどのPEファンドそのものの一般的な特性がある。その上で、我が国独特の事情としては、我が国機関投資家の運用担当者は大体3~5年で交代してしまうことも指摘できる。自分の任期中に利益の出ないものにわざわざ投資しようと思う運用担当者はかなり限定的。
  • 我が国においてPEファンドへの資金流入が増えるためには、PEファンドに対する誤ったイメージを改めていく必要がある。PEファンドに投資する立場の機関投資家である金融機関と、PEファンドから出資を受け入れる立場にある事業会社いずれにおいても、「ファンド」というものに様々な形態があることが理解されていない。例えば、出資先企業と二人三脚でその企業の付加価値生産力の向上に貢献するPEファンドが、新聞紙上を時折騒がせるアクティビストファンドと混同されていると感じることも多々ある。
  • PEファンドは、海外では個人の富裕層にとって主要な投資対象の一つになっている。彼らからPEファンドへの資金の流れは様々な経路があり得るが、その一つが証券会社(投資銀行)によって組成されるフィーダーファンドを経由したもの。このファンドの存在により、投資単位金額が小さくなるため、富裕層のPEファンドへのアクセスが高まる。我が国ではまだフィーダーファンドは存在していないと思われる。投資期間の長さゆえに回転売買困難なPEファンド投資を仲介することは、回転売買の奨励を通じた手数料獲得をめざす我が国証券会社のビジネスモデルに適合しないことが一因だろう。
  • 個人投資家によるマイクロ投資は、利潤動機に基づくというよりは、公共心や参加意欲を背景とした投資先企業に対する「共感」に基づくものである。我が国金融システムにおいて、まだまだ小規模だが、新しい動機に基づく新しい資金媒介経路が出現したものと積極的に評価できる。
  • マイクロ投資ファンドの運営においては、「共感」に基づき投資を行っている投資家が投資先企業の商品・サービスの消費者となって業績向上に貢献する経路を整備していくことが重要である。このほかにも重要な取組みして、たとえ金銭的な投資収益率が芳しくなくても、個人投資家の「共感」が維持されるように、投資資金が利用されていかなる企業活動やプロジェクトが進行しているかについて積極的に情報を開示することや、様々なイベントを開催することが挙げられる。
  • マイクロ投資ファンドの運営業というビジネスについては、個人投資家から得る販売手数料だけで企業として中長期的な持続可能性を十分に確保するのは困難である。このため、ファンド運営事業者としては、周辺的な収益源の開拓が不可欠であり、そのための試行錯誤が鋭意行われているところ。金融面に止まらず、実体的な事業面で投資先企業に貢献する一方で、過度なリスクテイクは回避していくというバランスが重要である。
  • 地域にしっかり根付いた企業はマイクロ投資ファンドの投資先として魅力的である。そうした企業は、地域経済においてファンが多く、しっかりした企業ネットワークを有している。さらに、その経営者も地域経済の活性化に向けて責任を果たすことに意欲的な人が多い。

【その他】

  • 欧米では、PEファンドによる企業投資や経営支援が産業再編の起爆剤になった例がいくつかある。しかしながら、我が国の企業経営者の間では、自分の任期中にPEファンドと組んで経営刷新を行っていくことを忌避する傾向が残っている。その一方で、中国の企業経営者の間では、PEファンドのような便利な存在はないとして、積極的に利用しようとする意識が広がっており、対照的である。
  • マイクロ投資は匿名組合方式による資金供給であり、投資先企業は、得た資金を出資ではなく債務として扱える。このため、経営の自主性が確保される点で、企業経営者にとって魅力的である。資本性借入金について、金融庁が、先般、金融検査マニュアルの運用を明確化したことは、マイクロ投資として受け入れた資金が銀行によって資本と評価される道を開くものであるため、地域の中小企業にも金融機関にも高く評価されており、また地域金融を円滑化する効果が期待されている。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課(内線3645、3520)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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