日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会(第4回)議事要旨

日時:平成13年12月14日(金)15時00分~17時00分

場所:金融庁9F特別会議室

  • 第4回会合においては、山上 秀文(やまがみ ひでふみ)委員、川北 英隆(かわきた ひでたか)委員からのレポートの後、それらを基に自由討議を行った。

  • 山上委員によるレポート

(レポートの要旨)

  • アジアにおける日本のプレゼンスは、対外直接投資、アジア向け与信残高ともに、アジア危機以降低下してきたが、既に底を打ち、下げ止まりしたと見ることができる。

  • アジア各国の不良債権処理はまだ道半ばにある。不良債権の発生ルートは各国で区々であり、日本とも異なっている。

  • 今後もアジアとの共生は必要であり、アジアの再生なくして日本の再生はなく、逆も同じである。邦銀が実態経済面でのアジア域内分業の深化を金融面でサポートすることが必要であり、また、金融危機など非常事態時には官民が協調した対応が必要。

  • 今後の日本型金融システムについては、(1)資本市場に向かって開かれた形でリンクした企業と銀行の関係の構築、(2)コーポレート・ファイナンスとノンリコース型のプロジェクト・ファイナンスの併用、(3)企業との長期的な関係に基づくRelationship Bankingの長所の活用、が必要。

(レポートに対し、各委員から出された主な意見は以下のとおり)

  • 結論の部分における「日本型金融システム」としての「市場型間接金融」の重要性(上記(1)~(3))と、金融面でのアジアとの関係が依然として大きいということがどのように結びつくのか。

  • 結論の部分において、一方では債権の流動化といったことを言いつつ、コーポレート・ファイナンスは残る、Relationship Bankingの長所は活用するということだが、うまくミックスできればいいが、そのようなモデルがあるのか。

  • 単質のモデルとして考えると相矛盾しているようにも見えるが、事業部制やハイブリッドバンクとして多面的に金融ニーズを追いかけていくことが必要であり、1つのコンセプトだけあればいいというものではないのではないか。

  • アジア向け与信残高はまだ日米欧のうち邦銀がトップだが、国ごとに足し合わせればユーロ圏の方が上回っている。日本のプレゼンスが依然として高いということではなく、大きく落ちてきているという認識が必要ではないか。

  • 与信残高はアジア危機前までがある意味で異常だったのであり、危機で過剰なものが落ちたという面がある。撤退のみでなく、Joint Ventureを組んだり、付随した金融サービスも維持されており、実体経済で相互依存が深まればまた増えていくと考えられる。

  • 邦銀のアジア向け与信残高の下げ止まりと結論の部分の(1)~(3)との関係については、香港・シンガポールは(1)、(2)が、中国・タイ・マレーシアは(3)がそれぞれリンクすると考えられる。日本は今後(1)、(2)の割合を強めていく方向だが、(3)がなくなることはないだろう。

  • アジアの銀行が貸し出したローン債権を邦銀がアレンジして東京で証券化したり、ノンリコース型のプロジェクト・ファイナンスのファンドを東京で募り、邦銀がコミットするような、東京市場をより生かす方向は考えられないのか。

  • 今後そうしたことは必要であるが、そのための条件である起債者のディスクロージャーや採算性の評価データが不十分なのが現状。米系マルチ主導のプロジェクトや日系のアレンジするJoint Venture などは進んできており、まずはそれらから徐々に活用していくべきではないか。

  • 日本型金融システムの有用性はあり、間接金融にも直接金融にもそれぞれ取り柄がある。これらをどうミックスできるかということ。アジアにおいても、貸出によるリスクテークだけではなく、リスクをとらないアドバイザリー等で利益をあげていくことも必要ではないか。

  • アジアにおいてもリスクとリターンの適正な関係の形成が重要とのことだが、アジアや海外における邦銀の取引が日本国内と同じように適正なリスク・リターンに基づいていない場合が多いのか。日本の4大銀行で見て、75%がコマーシャルベースにのっており、そうでないのはそれほど多くはないということを聞くが、そのような理解で良いのか。

  • ディスクロージャー誌(2000年3月末)によると、各銀行ともアジア全体の不良債権比率は国内外全体の比率と同じ程度まで下がってきており、アジアにおける不良債権の整理は進んできていると考えられる。

  • アメリカでは新しいことを行う場合、パイロット・プロジェクト的に導入し、例えば2年経って再評価して、それを継続するかどうかを考える。邦銀のアジア進出に当たってもそのような制度があってもいいのではないか。初めから失敗したら困るということだと、いろんな構想が出てこなくなる。

  • アジア向け与信の実態というのは、現地での本当にinternationalな取引なのか、日系の現地工場に対するものなのか。例えば、アジアに進出している日系企業の国内の本社に貸したものもアジア向け与信残高に含まれるのか。

  • ディスクロージャー誌(2000年3月末)によると、日系比率は、東京三菱51.1%、IBJ28.5%、DKB38.8%、住友20.9%。アジアの地場中小企業はディスクロージャーが十分でなく、リスク・リターンを形成しやすいのは日系と欧米マルチ。また、現地では日本の100%出資の工場は稀でJoint Venture になるが、そういうものも日系としてカウントされる。

  • 川北委員によるレポート

(レポートの要旨)

  • 日本の金融市場に欠落していた重要な要素(の候補)は、「専門性の高い金融仲介機関」であり、「利用者にとって満足度の高い金融市場」であったと考えられる。

  • 銀行が全面的にリスクを負担することには限界があり、証券化や投資銀行的機能等による限定的なリスク負担に向けた工夫が必要。信用リスクの評価能力の強化やそれを促進するインフラ(会計制度等)も必要。

  • 専門化としての能力の保有を当然の前提として、投資に関する機能、資金調達に関する機能、ブローカレッジといった多様な金融仲介機能が必要。

  • 金融機能を包括的に規制するルール、プルーデント性を確保するためのルール、情報開示のためのルール、金融市場に対する公的監視の強化といったインフラの整備が必要。

  • 個人金融資産については、預金、高齢者に集中している実態や公的年金の不安定さがもたらす影響も踏まえた検討が必要。

(レポートに対し、各委員から出された主な意見は以下のとおり)

  • 間接金融・直接金融という言い方が定着してしまっているが、(金融仲介機関を介在しない)文字通りの直接金融などは例外的。今後は、
    [貯蓄部門-金融仲介機関]→金融仲介機関→[金融仲介機関-投資部門]
    という形態が追求されなければならないが、
    貯蓄部門→金融仲介機関(銀行等)→投資部門
    が現状。銀行が一体的に丸抱えしている機能をいかに分解していくか、その際に、制度としてどのように戦略的にできるかということが将来ビジョンにつながるのではないか。

  • 既存の金融仲介機関の意識をどう変えるかが大きな問題。今までは外資参入による競争原理によっていたが、制度的にも、貸付債権の時価評価、自己資本規制、プルーデントルール等を整備し、きちんとモニターする機関をつくることでしか意識は変わらないのではないか。

  • 人材に関しては、決して外国に比べ見劣りしているわけではないが、ただ優秀な人材は外資系に行ってしまっている。邦銀では能力を生かしてくれない、また生かそうと思ってもそのためのインフラがないということではないか。

  • 株式持合と利益相反的取引が多いことが根本の問題ではないか。国内でグループで持ち合い、例えば、ある会社が、株式を持ってもらう代わりに高い保険に入るといったことは、経営者としてのベストな行動ではなく、利益相反である。商法の規定の実効性にも問題がある。

  • 銀行が適正なリスク・リターンに基づいたプレミアムを取れていないのは事実だが、直接金融化でリスクを分散したとしても、経済全体としてハイリスク・ローリターンという構造が変わらなければ、結局、割に合わない部分を誰が負担するか(銀行がリスクを取らない場合に誰が取るのか)という問題になる。日本の現状はハイリスク・ハイリターンでも、ローリスク・ローリターンでもなく、日本型の経済システムをどう考えるかということになる。

  • オリジネートしているローンの量が多すぎて過剰供給だからリスクに見合うリターンが取れていないだけであり、結局、ローンの量を減らすしかないのではないか。

  • 金融機能を金融仲介とリスク負担とに分解するという議論は、89~90年にアメリカの学会でやっていた議論と同じ。誰にリスク負担をさせるのか、いかにしてリスク負担機関を加えるかという議論が必要。金融仲介機関とリスク負担機関が同じでいいのか、別にするのか、それに対してどう行政が関与するのかが、まず議論されるべき。

  • 最終的には国民、貯蓄者がリスクの相当部分を負担せざるを得ない。また、日本では、リスクに対応してリターン(プレミアム)を要求しようとすると企業が払えないで潰れてしまうという問題が議論を複雑にしているのではないか。

  • リスクの大数化やデリバティブはプロの世界の話であり、プロのリスク分散機関をどう育てるかが重要。銀行の中でも、リスクに関わる分野と安定的な分野などをセレクトすることが必要ではないか。

  • 格付けが低い(信用リスクが高い)企業に対するリスク・リターンが相当歪められている。例えば、メインバンクが資金供給に対して適正な利ざやの拡大を求めようとすると貸し渋りと批判される。また、格付けの低い企業は社債市場へのアクセスが限定的であるため、自らに対するマーケットのリスク評価が認識できない。それをどのように是正していくか。

  • 金融機能としてリスクの評価・加工・負担をどうしていくか。最終的なリスクの負担者は自然人である家計しかあり得ないが、そこにそのままの形でリスクを押しつけるのではなく、リスク仲介機関の多様化の中身の問題として、時間的・空間的にプールしてリスクを減らしたり、加工・変形してリスクをとりやすくする仲介業者を育てなければならない。

  • リスクを分散する行為は保険や投資信託などで多々行われているが、マクロ的なリスク、システミックリスクはヘッジのしようがない。日本経済がマイナス成長である時には、リスクを負いきれない。経済の運営が安定しない限り、どうしようもないのではないか。

  • リスクは経済全体との格差で見るもので、経済全体に平等に分散を進めれば、リスクは減ってくると考えられるのではないか。

以上

問い合わせ先

金融庁 総務企画局 企画課
電話 03(3506)6000 (内線 3514,3515)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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