日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会(第5回)議事要旨

日時:平成14年2月4日(月)18時00分~20時05分

場所:金融庁9F特別会議室

  • 第5回会合においては、刈屋 武昭(かりや たけあき)委員からのレポート、事務局によるこれまでの議論の整理の後、それらを基に自由討議を行った。

  • 刈屋委員によるレポート

(レポートの要旨)

  • 金融システム設計のねらいは、機能的金融の視点に立ち、グローバル化の流れの中で我が国に価値(将来からのキャッシュフロー)をもたらすことができる金融的プラットフォームの構築にある。

  • 金融業は、「金融製造業」と「金融総合サービス業」へ分化していくことが必要である。「金融製造業」においては、金融技術がその競争力を左右し、「金融総合サービス業」においては、マーケティング技術、情報技術等が必要となる。

  • 金融ビジネス発展の鍵は、資本効率性に関しての新しい概念生産力である。企業とともに価値を創造していくことが必要であり、専門性の高い金融機関になることが求められる。

  • 経済成長を継続するためにはリスクテイカーが必要である。スペキュレーション能力を育成するとともに、価格メカニズムや金融商品のリスクセグメンテーション機能を重視することが必要となる。

  • 伝統的ビジネスモデルはリスク会計的にバランスしないものになっており、業態を超えたリスクの最適配分によりポートフォリオを再構成することが必要である。

  • 機能的金融の視点からの金融システムへの提案としては、ノンアセットビジネスへの促進、金融商品の多様化や金融的ビジネスの分化のための業態的制約からの解放、事業・信用リスクの分解を可能にする総合リスク取引所の創設などがある。

(レポートに対し、各委員から出された主な意見は以下のとおり)

  • 「機能的視点からの金融」に関して金融商品を「媒介」と位置づけているが、金融商品は派生的なものである。金融取引は本来、現在の所得と将来の所得、あるいは将来の異時点間の取引であり、そのために金融商品が生まれてきたと考えられるのではないか。

  • 将来のキャッシュフローは非常に不確実であり、その価値をどう見たらよいのか。何らかの価値があることを前提に異時点間の交換ができると考えられるが、その異時点の間に価値がなくなっていることもある。

  • 「リスクの要因の数に比べて現存している金融商品の数が少ない」という点が出発点ではないか。金融商品は絶えず流動的に考えていかなければいけないが、我が国ではこれまで固定的に考えられていたのが問題ということではないか。

  • 規制緩和を最も重要な産業政策と位置付けているが、規制を緩和すればよいというものではないのではないか。一般論として、事前規制からルールに基づく事後チェックへの移行という中で、全体のリスクコントロールをしていく上では「よい規制」は残るべきであるし、ルールを監視するための機関は必要と考えられる。

  • リレーションシップ中心の業態的アプローチから価格中心の機能的アプローチへの移行ということだが、リレーションシップ・マネジメント(RM)は時間軸としては重要な点である。これに関連するメインバンク機能についても、企業再生に対する能動的な支援をしていくといった観点からも、必要性が認められるのではないか。

  • 自己資本比率によるリスク管理や時価会計の導入という中で、3月31日時点の株価で大きく上下するような自己資本比率によるコントロールがワークしているとは思えないが、この辺りをどのように考えるべきか。

  • 株式の評価には様々な方法が考えられるが、仮に、簿価評価したり加重平均で評価したりしたところで銀行がリスクを抱えていることに変わりはない。評価方法や規制の問題とは別に、もともと銀行が自己資本に比してリスクの高い株を持ち過ぎているということが問題ではないか。

  • 国際基準を作るといった場合に、まず最初に日本がたたき台を出すということがない。先行投資をしていくことも重要ではないか。

  • 行政にしても銀行にしても株価に左右され、翻弄されるのが根本的におかしい。株価依存体質から脱却しない限り、問題は解決しないのではないか。

  • 株価は上下するものだということを前提とするならば、金融機関のリスクを減らすためには、借り手側の自己資本が十分であればいいということではないか。自己資本を厚くするためには、やはり直接金融に持っていくべきということになるのか。

  • 株のリスク感応度(株1単位持ったときのリスクの大きさ)がこの10年間で変わってきたことが問題。企業や市場自体のリスク感応度が変わってきたということであり、銀行が株を持ち過ぎているという論点だけでは足りないのではないか。

  • 以前に比べて株価に大きく左右される経営をしているのであれば、むしろ株価を直視して、それに対応できるヘッジ型の経営を銀行ができるかどうかということではないか。これまでに銀行が市場の動きに対してあまりにも無関心すぎたのではないか。

  • もっと活発にリスクを取引するためのシステムを目指すべきではないか。銀行が貸出をオリジネートするのは当然のことであるが、その後もずっとバランスシートにのせて抱え続けてきたことが問題であり、自己資本に応じたリスク管理が必要ではないか。

  • 業態を超えた様々な金融商品の組み合わせでポートフォリオを考えるというのは一つのユニバーサル的な考え方であるが、それとは逆に、コア・バンクのように銀行の業務をもっと制限するという考え方もある。銀行とは何かという出発点にもなる。

  • 事務局より、前回(第4回)までに出された主な意見の概要についての紹介。

(各委員から出された主な意見は以下のとおり)

  • 銀行のビジネスモデルに関しては、ナローバンクのように、もっと細かくセグメントを分けた方がリスク管理がしやすく、また、監督当局もチェックしやすい面があるのではないか。

  • 定期預金や年金、生保関係の商品は資産蓄積の手段として社会的に大きな需要がある中で、それを誰が発行したらいいのかという問題がある。それを業態別に発行し、それぞれの枠内でリスク管理をするとなると、リスク会計的なバランスに無理が出てくる可能性があるのではないか。

  • 金融機能の分化という中で、リスク負担機関の存在が金融システムを安定させることも考えられる一方、自然人たる個人にリスクをすべて引き受けさせた方が安定的だという議論もある。例えば、国債に関しても、個人だと満期まで保有することにそれほど痛意を感じない人が多く、中途での時価評価によるリスクの発生があまり問題にならないということも考えられるのか。

  • 銀行が貸出を回収できなくなった場合のリスク負担については、(1)破綻した銀行の預金者が負担、(2)預金保険で健全な銀行も一部負担、(3)税金で国民全体が負担、が考えられるが、どの場合でも最終的には個人に戻ってくる。結局、どの場合が長い目で見たロスを一番抑えられるかということになるのではないか。

  • 投資信託では、基本的に自己責任で投資家が負担するということになる。投資信託が何らかのリスクプールになるわけではないが、個々の株を個人が自分でポートフォリオを組んで持つということではなく、やはり、リスク管理のプロフェッショナルとしての専門家は必要だろう。

  • 保険については、変額保険と一般の保険とは少し構造が違うが、変額保険であっても、資産運用の部分は価格変動リスクがあるが、死亡保障の部分に関しては一般の保険と同じ。最終的には保険会社が破綻したときは、契約者がその損失を負担することになる。

  • 最終的に個人が負担するといっても、負担したい個人としたくない個人がいる。多様なプレファレンスをもっている個人をいかにして納得させてリスクを分散させるかが問題。個人の選択の自由を妨げることになってはならない。

  • ペイオフを解禁した時に1000万円以上の預金の部分に任意保険をかけられるのか。任意保険をかけていない銀行ほどハイリスク・ハイリターンになるが、ペイオフを解禁する場合には、ある程度そういう制度があってもいいのではないか。

  • 銀行の収益性というものはリスクを取ることから発生するという認識がまず必要。例えば、東京都が実施しているCLO(ローン担保証券)のような仕組みについても、ポートフォリオ管理の中でリスクを分散化できれば、銀行がそのようなことを行うことも可能ではないか。

  • これからは銀行も多様でなくてはならない。自分の実力、ノウハウをきちんと評価し、自分ができることに重点を置いた経営が、これまで市場の競争の中で必ずしも生まれてこなかったというのが現実ではないか。

  • 個人にリスクを負担させるとした場合に、ローリスクであろうが、ハイリスクであろうが、自分の資産が毀損することを期待しているわけではなく、毀損が前提になるようなリスクは誰も取れないということを忘れてはならないのではないか。

  • 行政の在り方に関して、MMFの元本割れであれだけ解約の列ができるというのは、投資家の目線でマーケットを監視している人はいないと日本の投資家は判断しているのではないか。リスクを最終的に家計や個人に負わせるというなら、日本版 SECを作って、投資家の目線から、ディスクローズや仲介業者の行動についての明確な基準を作っていく仕組みが必要。

  • 監視体制だけではなく、マーケットのインフラは、色々な面で不足している。先日、証券化商品の発行による資金調達が株式発行による資金調達を上回ったとの記事があったが、単なる「流動化」ではなく、それが転々流通する「証券化」にならなければならない。

  • 規格大量生産の時代とは、安全というものに対する考え方が大きく変わっている。リスクを取りたくない個人が多い中でリスクをいかにして分散していくかという問題は、相当大きな思想的、文化的改革が必要になる。過去の体制と現状との間の繋ぎ目として、どのようなメカニズムを構成していくのか。

以上

問い合わせ先

金融庁 総務企画局 企画課
電話 03(3506)6000 (内線 3514,3515)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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