日本型金融システムと行政の将来ビジョン懇話会(第10回)議事要旨

日時:平成14年7月3日(水)17時00分~19時15分

場所:金融庁9F特別会議室

  • 事務局より将来ビジョンのたたき台についての説明があり、その後自由討議。今回の会合で全体の構成や基本的な考え方などについては合意が得られたため、今後の調整については座長に一任された。

(各委員から出された主な意見は以下のとおり)

  • 「産業金融モデル」と「市場金融モデル」に関して、産業金融モデルにおけるRM(リレーションシップ・マネジメント)に一定の価値を認めることは妥当な方向。また、アメリカについても、「コアバンク」の考え方の下で、企業との長期的取引関係に重きを置いている点には留意が必要。

  • 「市場型間接金融」については、機関投資家によって仲介されるものよりも、もう少し広い意味で捉えるべきではないか。例えばシンジケート・ローンなどは機関投資家と関係しなくても市場化が進められる。

  • アジアとの相互依存に関して、アジア各国が対円相場の安定を重視して使用比率を高めなければというように相手に求めるのではなく、むしろ各国通貨と円の相場安定を重視したり、円の使用比率が高まるような環境整備を重視するといった形が望ましい。

  • 従来のビッグバン等の議論においては、「構造」と「行動」を分け、民間は合理的な行動をするという暗黙の前提があり、構造を変えれば行動がうまくいく、と思われていたが現実にはそうなっていない。「行動」にまで踏み込んだのが今回のビジョンの特徴ではないか。

  • これまで日本の金融業の中で形成された価値基準が、変革に対する阻害要因となっている現実がある。その価値基準を変えることの重要性があって初めてビジョンを出す意味が出てくるのではないか。

  • 「産業金融モデル」と「市場金融モデル」について、具体的に何を対比しているのかが分かりにくい。

  • 取引の形態としてのリレーションの下で、暗黙の長期の契約をしてきたのが産業金融モデルではないか。市場金融モデルは価格中心であるが、ただそれだけですべてが覆い尽くされるはずはなく、両者混在だがウエイトの置き方は市場金融モデルを中核としていくということ。

  • 産業金融モデルは資本市場とは独立に預貸を通じて仲介をしていたビジネスモデルであり、市場金融モデルは資本市場を活用しつつ資金仲介を行うモデルであるという整理ができるのではないか。

  • 金融機関の人事・組織に関しては、そこで働いている人々に対する「インセンティブ・メカニズム」に言及したらいいのではないか。

  • アジアとの共生に関する日本のイニシアティブについては、アジアは銀行中心で債券市場が未発達であり、ベンチマークとなる債券が今のところないため、日本の国債がそうなれば良いし、また、証券決済システムについても、日本のインフラが採用されると良い。

  • アジアにおける日本のイニシアティブについては、バラ色の将来があるということではなく、すでにかなり厳しい競争の下にあるという前提に立つことが必要ではないか。

  • ワールドコムやエンロンなど、市場型であるはずの欧米の銀行も不良債権のようなものを抱えている実態がある。日本と共通するところが残っているとの解釈もあり得るし、単に経営者が駄目だったという解釈もあり得る。日本との共通項や違いにもう少し触れた方がいいのではないか。

  • エンロン等の問題における教訓としては、いかに迅速、柔軟に、客観的基準で対応するかであり、スピードに注目する方向で考えることが重要。

  • 全体のトーンと関係するかもしれないが、銀行のビジネスモデルとしてどのようなモデルを目指すことを考えているのか。

  • 資本市場を補完的に使いながら金融仲介を行っていく仕組みを念頭に置いており、その結果が1つの金融機関で様々な業務・サービスを行えるようになるかは二の次の問題。ユニバーサルバンク化もあるだろうし特定の業務で高収益をあげる金融機関も出てくるであろう。大事なのは資本市場をうまく利用していること。

  • 「国有化」という言葉は、麻薬のようなもの。不安をあおるとともに、国有化で良かったと思考停止してしまう。アクションプランを持ってスピーディーにやることが必要であり、プランを持った形での国有化という配慮が必要。

  • ROE、ROAなどの具体的な一律の数値目標を国が設定できないのは当然だが、行政の金融機関に対する規律づけの議論としてはあり得るのではないか。

  • 公共性のルール化について触れているのは適切。現在、より問題なのは、預金のtransactionが起こる度に赤字が増えるという構造的な問題であり、この点を知ってもらうことが必要。

  • 個人にしろ企業にしろ多様かつ新たなニーズが出てきており、それにどう応えるかという視点がある。金融システム、金融機関側からの変革がある一方、ニーズの拡がっているユーザーサイドにどう応えていくかという視点も欠かせない。

  • 市場金融モデルへの移行は、どうやって実現させるかが問題であるが、具体的にどう転換させるかの中身がない。行政としてどういう新たな施策が必要かが抜けているのではないか。例えば韓国では、経営者を証券会社や外資から連れてくるという点に限って政府が明確なイニシアティブをとったが、国がビジネスモデルの転換にどうコミットするのか、銀行のガバナンスをどうするかを国民は知りたいのではないか。

  • 市場機能と言うのであれば、それを健全に機能させるメカニズム、独禁法にいう競争促進政策に触れる必要があるのではないか。イギリスには反独占委員会などがあるが、日本で金融業の競争促進政策は誰が担うのかよくわからない。

  • 経済がキャッチアップ段階を終え、成熟経済でフロントランナーになったらリスクが増大するという考え方が示されているが、必ずしもそうではなく、逆に、トップに立てば技術革新をしてファースト・アドバンテージをとれるという考え方もあり得るのではないか。

  • 銀行、金融機関の情報発信力、ビジネスモデル転換の発信力がトータルとして極めて弱い。これを強化してイメージを変えていくべき旨を書くことが必要ではないか。本人たちが変わったと思っている割に世間から見て何も変わっていないイメージがある。

以上

問い合わせ先

金融庁 総務企画局 企画課
電話 03(3506)6000 (内線 3514,3515)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正があり得ます。

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