第36回金融トラブル連絡調整協議会議事要旨

1. 日時:

平成20年5月14日(水曜日)14時00分~16時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用特別第1会議室

3. 議題:

  • (1)日本少額短期保険協会における苦情・紛争解決支援の取組み

  • (2)金融トラブル連絡調整協議会のこれまでの取組みと今後の金融ADRの方向性について

4. 議事内容:

日本少額短期保険協会における苦情・紛争解決支援の取組み

日本少額短期保険協会の百合本参考人から資料1の「日本少額短期保険協会における苦情処理・相談対応」に基づいて説明が行われた。

  • 原委員 平成18年9月までに根拠法のない共済団体は、全国に430社ぐらいあり、少額短期保険として登録されているのが現在31社で、今後、新規を含めて70社程度になると思うが、その他の従来存在していた共済と契約していた利用者は、どういう扱いになるのか。それは協会の範囲外だと思うが、協会への問い合わせについて、どのような助言をしているのか。

  • 百合本参考人 特定保険業者430社の内、保険業法の適用外になる事業者が179社(約41%)ある。また、他の保険会社への団体契約での移行や契約移転を行う事業者が135事業者(約31%)あり、廃業する事業者が51事業者(約11%)ある。相談で非常に多いのは、共済事業者が少額短期保険会社になるのかならないのか、という問い合わせである。現時点では、特定保険事業者として、各財務局に対して登録申請中のものもあり、少額短期保険会社になるかどうか分からないために、明確な返答ができない状況にある。既に少額短期保険会社になった事業者については、その旨の回答をしている。

  • 高橋委員 ホームページの会員一欄をみたが、現在登録をしている会員と未登録の会員との区別が付かない。一律に表示している理由と、どこを見れば登録をしているかが分かるかをお聞かせ頂きたい。

  • 百合本参考人 当協会においては、少額短期保険会社及び少額短期保険業を目指す事業者を会員資格と規定しているので、会員には、今後登録予定の事業者が含まれている。また、会員一覧のページとは別に、会員が少額短期保険会社かどうかについては少額短期保険業者登録一覧として分かるようにしている。

  • 高橋委員 協会ホームページにおいて消費者向けの内容として、苦情受付やFAQやQ&A等を設けて頂くことが業界としての信頼性につながると思うが、今後どのように活動されていくのか。また、協会の事業内容にADR的なことが明記されていない。既に34件の苦情があるということだが、どのような取組みなのか教えて頂きたい。

  • 百合本参考人 当協会のホームページには苦情相談窓口のページはあるものの、ご指摘のとおり消費者に対しては分かりづらい点はあると思っており、今後改善を図っていきたいと考えている。事業内容について、協会内に消費者委員会を設けており、ここで事業者ごとの苦情・相談に関する検討や分析を行っていきたい。既にある苦情については事業者と連携をとって対応しているのが実態である。

金融トラブル連絡調整協議会のこれまでの取組みと今後の金融ADRの方向性について

事務局から資料2「第35回協議会『最近の消費者政策を踏まえた自由討議』における議論の整理」、資料3「第35回協議会における議論を踏まえた金融ADRの方向性に関する業界団体の意見」、資料4「金融ADRについての所感(山本委員提出資料)」、及び資料5「金融トラブル連絡調整協議会の取り組みと今後の金融ADRの方向性について(蓮澤委員提出資料)」に基づき説明が行われた。

  • 土田委員代理 業界団体がかかわった苦情案件については、業界団体から各企業に降ろすこともあると思う。トップマネージメントにはどの様に情報が伝わっているのか。先日、損保の苦情相談の公表があったが、その中で、苦情は各企業の宝とするという話があった。その視点がない限り、苦情はなかなか解決に向かわないと思うため、業界団体はトップマネージメントに意見が言える立場なのかどうか、また、トップマネージメントにどうやってつなげていくかについて、業界内でどのように話し合われ、どのように道標を作っていくのか聞きたい。

  • 竹中委員 生命保険協会では、トップマネージメントにどのように伝えているかというところについては、業界全体の統計数字を毎年・四半期ごとにまとめており、協会の理事会、各社の社長が集まる会合に、必ず報告している。それと、今ちょうど作っているところだが、会員43社ごとの四半期ごとの苦情の件数、代表的な苦情の事例等々をまとめ、相談室でコメントを付している。会社の特徴、我々が感じているところを記載し、これまでは各社の相談の窓口担当者に送付するような形でやってきたが、それではなかなか上に上がっていくスピードが遅いということもあり、より迅速性を求めるということで、直接各社のトップ層に相談室長名で送付し、担当者にも送付している。また、自前で裁定審査会という紛争解決機関を持っているが、そこの事案についても、紛争にあがる前になぜこれが解決できなかったのか、そこに至るまでにもっと考えるべき点があったのかどうかが、経営トップのところでもわかることが大切なので、各社も社長が、自社の紛争を常に把握できるような体制をとるよう取り組んでいる。

  • 白石委員 日本証券業協会でもほぼ同じような対応をとっている。四半期ごとに件数・主な事例をまとめて協会員に周知するとともに、ウエッブサイトで公表している。年度分については、協会の委員会、自主規制会議に報告しており、その結果は各会員会社のトップに行くようになっている。

  • 坂本委員 日本損害保険協会でも同じような形の対応をとっている。四半期ごとの苦情の状況は、経営に携わる役員ベースの委員会に報告している。社長という意味では、年間の状況を理事会の場で報告している。併せて、損保協会に寄せられた苦情の中で、重大なものについては、月1ベースで集約し、いくつか関連する役員クラスの委員会にフィードバックしている。また、昨年度から、新しい取組みとして、全国の消費者行政機関などに寄せられる損保関係の苦情を教えてもらって、その中から重大と思われるものを抽出し、理事会という社長の集まりの場に報告するとともに、関係委員会に対応要請をしていくことを始めた。対応した結果のフォローアップも含め、苦情をもとにしたPDCAスキームができないか取組みを始めつつあるところ。損保業界に寄せられた苦情も、そのスキームに乗せられるか、分析手法の研究をしている状況である。

  • 辻委員 全銀協では、頭取クラスの会合に、毎月の取扱状況を資料配布している。また、相談・苦情関係の委員会には常専務クラスの会合があり、そちらにも毎月の取扱状況を配布するとともに、相談・苦情のうち、多重債務問題に対するカウンセリングとか、個人情報保護に関するようなものなど、いくつか大きなテーマについては、件数等を含めその実情を報告している。

  • 高谷委員 小さい協会を代表して発言させてもらう。私どもは、半期報告は同じような形でやっており、零細な業者が多いため、苦情があった場合には、会員代表者に直接連絡をして解決を求めている。トップマネージメント以下にそんなに人がいない業者が多いため、そのようになっている。

  • 原委員 議論に入る前に、全体的な話で2つ質問させてもらいたい。1つは、消費生活センター、国民生活センターに寄せられる相談・苦情は、全体の苦情のだいたい5%ぐらい、その背後には20倍の相談・苦情が眠っているという話をよくする。また、消費生活センター、国民生活センターにきた苦情のあっせん率は今5%ぐらいというところである。このように消費者が抱えているトラブルの解決について、全体の量及び解決の水準の把握をしている。それぞれの業界団体において、どれほどの相談・苦情が業界全体としてあって、そのうちのどれぐらいが実際に相談・苦情となっており、そのうちどれぐらいが解決に結びついているのかを把握しているかを聞きたい。それから、本日の資料では、消費者側委員とか学者委員、弁護士の委員は、この8年金融トラブル連絡調整協議会の評価としては、遅々とした歩みで、抜本的な解決のための取組みをやってないのではないかというものとなっている。他方、業界団体の意見は、自主的な取組みにより個別の業界団体による金融ADRの改善でいいのではないかというものが多い。認識の食い違いがあるが、私どもの意見に対しては、どのように考えておられるのか。

  • 坂本委員 損保業界では、日本損害保険協会及び会員会社に、苦情として寄せられて認識されているのは、年間で20万件ぐらい。ただし、今、私ども業界では、苦情の定義を広げ、より声を吸い上げる方向で、苦情を広く認識していこうと進めているため、ここ1、2年の間では、この件数はもう少し増えるのではないかと思っている。20万件ぐらいのうち損保協会で認識しているのは、1万7千件ぐらい。解決については、いずれかの段階で解決するケースも多いので、どの時点で切るかが難しいところ。正確な解決割合はとらえられないが、例えば昨年度の苦情について今年度の5月末時点で解決状況を見るというようなとらえ方で見ると、各社申告では、7割から8割ぐらいの解決というような数字が出ている。

    ADRのあり方論については、日本損害保険協会としては、苦情・相談対応体制、それからその先の紛争対応体制について、今年度これから大幅にオペレーションも含めて変更し、より一層機能を充実させるという方針を立てて整備を進めつつあるところであり、まだそれは実施に至っていない。その実効性を評価してから、改めてこの問題を考えてみたいというのが正直なところ。

  • 辻委員 全国銀行協会では、個別銀行の数字はとっておらず、数字として把握しているのは、東京と各地の銀行協会に寄せられた件数である。その中身については、それぞれ各地の銀行とりひき相談所から、解決したか未解決のままであるかという報告をもらっている。全国ベースでは、銀行とりひき相談所を通じた取扱件数は、相談・照会が3万8千件ほどで、苦情が2千件ほどとなっている。

    自主的な取組みとして、資料3の11ページにあるとおり、これから金商法上の認定投資者保護団体の認定を受けるべく、現在あっせん委員の選定等を行っている段階である。現段階においては、こうした動きに注目して頂きたい。

    横断化の話については、預金取扱金融機関という範囲までであればそれは理解ができる。銀行の他にも労金や農協まで含めて預金取扱金融機関であるが、そこまでの横断化というのであれば、同じような業務をやっていることもあり違和感はない。しかし、その先の生保とか損保、証券という話になってくると、業務内容も異なり、また、今までそういった形のものをやったこともないし、これまで弁護士会仲裁センターへの委託方式だったため、ワンステップ別の検討をしなければならない問題があると考えている。

  • 岩原座長 自主規制機関化するかどうかについては、全銀協はどう考えるか。

  • 辻委員 例えば、日証協は金商法に基づく自主規制団体であって、その中でできる規則が自主規制ルールであり、それぞれについて罰則があるということかと思う。全銀協の場合、例えば、今般、盗難通帳とインターネットバンキングによる預金の不正払戻しについての申合せを行った。私どものような団体の場合、これもある意味では自主ルールと言えるかもしれない。こうしたことを考えると、自主規制機関と業界団体とではどの程度違いがあるのかと思う。罰則については、個別業務についての罰則はないが、全体的な会員としての罰則というようなものがある。また、自主規制機関になったとして、相談・苦情・紛争の解決がそれによってどれほど進んでいくのかについては疑問がある。自主規制機関と任意団体との差について言うと、申合せみたいなものができると、かなり両者は近づいてはいると思う。

  • 高橋委員 唖然としてしまった。2000年の9月に金トラ協がスタートしたときに表明して実行していただきたかったことが、今日皆さんから出ている。この8年間一生懸命改善に努めたところもあれば、とりあえず弁護士会仲裁センターに外出しをして様子を見て8年間、外圧によってまずいかもしれないから見直そうというふうに考えているところがあるようだ。井上委員が前回発言されたが、私たち中立委員は自主的な取組みを期待した。協議会で苦情・紛争の規則をきちんと作って、例えば消費者被害のうち苦情になっているものが5%ぐらいしか表面化していないとすれば。実際にはその20倍もあると考えられるわけなので、一生懸命取り組むことで、今まで眠っているものを掘り起こせば件数が増えるだろうと考えた。そうして未然防止や再発防止に努めていけば、ある程度苦情は収束し、商品や販売にもうまくフィードバックされて、いい金融市場ができるのではないかという青写真を描いた。それがそうならなかったのが、現在の実態ではないか。保険会社の例を挙げて申し訳ないが、生保も損保も昭和30年代から紛争解決機関を持っていながら、それがほとんど機能していないということで、2000年の答申以降に、裁定審査会や調停委員会を整備した。しかし、8年目の状況を見たときに、それが未然防止や再発防止につながっているのか、苦情の発生とか収束のメカニズムをどう見ているのか分析がされてないと感じている。法的根拠のある自主規制機関かどうかについていえば、プロパーの職員がバッサバッサと、いけないものはいけないということで会員会社に対して処分を出せるかどうかに違いがある。それは、そういう機関に携わっている方から、サラリーマンだから大きな声では言えないんだけれどもねということで歴代ずっと聞いてきた。会員会社に対する処分を法的根拠に基づいてできる権限をその人たちに与えなければいけないと思っている。もう一つの問題は、苦情が増えているのは、例えば保険でいえば、苦情を発生させるような複雑でわかりにくい商品開発を業界団体として認め、わかりにくい競争を繰り広げているというのと、資格試験を付与する団体でありながら、非常に甘い試験を行っていること、問題のある売り方をしていることに対しても非常に甘い点に問題があるのではないか。商品や販売体制についてもっときっちりできる体制をつくること、それも紛争解決支援と両輪の輪でやってもらいたいと思っている。それにはやはり制度的なエンフォースメントが必要ではないかと思う。

  • 岩原座長 今日取りまとめを考えているので、業界団体委員も反論を率直に言っていただきたい。

  • 坂本委員 協会・業界団体の権限・権能の部分とも関わってくる話だが、業界団体の立場として、保険が自由化されている中で、各社の商品に干渉することはできない状況にある。ただ昨今問題が生じた中で、現状においては各保険会社とも商品の簡素化もどんどん進めてきており、また、募集人についても、資質の向上の重要性は、これまで本当に十分機能する制度となっているのかという反省も踏まえ、今年度以降、試験制度の再構築を図ろうと進めているところ。その上で実効性がどうだったかは、数年レンジで見ていかなければいけないところであり、新しいシステムの評価はしばらく先にならざるを得ないと思う。各方面から意見を頂いており、業界施策にはなるべく反映させるように、業界団体のできる範囲の中で努力をしていきたい。

  • 竹中委員 確かに皆様には業界の行動が遅いと思われているかもしれないが、ここの2、3年間契約者に迷惑をおかけしたが、今日現在随分変わってきたなというのが客観的に見て思うところ。各社が苦情に対する取組みを、協会と一緒にやってきているということで、自浄作用が随分出てきているのかなと思っている。ただ、その結果が随分変わったと話せるまでには、もうしばらく時間がかかるのかもしれない。例えば資格試験の問題では、甘いんじゃないかという話しがあり、ちょうど見直しを始めたところであり、そういうところのレベルも上げていかなければいけないと考えている。

    自主規制機関という位置付けではない中で何ができるかということについては、業界の背骨になるようなものを作っていこうということで、告知を正しくするためのガイドラインを始め、支払に関する考え方のガイドラインなど、現在10本ぐらいガイドラインを作っている。拘束力は持たせられないが、これを一つの判断基準として、業界内でのスタンダードとして、各社それに寄り添う形で事務的には動いてきている。商品の簡素化は、個別会社の経営の問題にもなるので、協会としてはなかなか意見ははさめない。横断的なADRについては、協会の中に作った裁定審査会がワークしてきており、それも、裁定の結果をフィードバックすることで、ビジネスリスクを放置することが賢明でないことを各社理解してきている。そこの動きを止めたくないし、もっと動かしていかなければいけないと思っており、自前のものを持っている効用が極めて大きいというのが感想である。横断的なADRについて、業界としてあるべき、なくてもいいということは今の段階では申し上げられないが、消費者の選択肢を狭めることは当然すべきでないし、選択肢が増えることはいいと思う。あと一つの側面で考えておきたいことは、消費者の利便性の向上は当然図らなければいけないが、相対するところの企業側にとっても中立・公正性が保たれるのかどうかというところは、見逃してはいけない視点である。箱を作っても、そこに会員企業が寄り添わないという状況ができてしまってもいけない。裁定審査会では、基本的には企業側は裁判を起こせない形になっており、裁定審査会にあがったものは、特別な事情がないものについては、手続に参加しなくてはいけない義務を課している。また、裁定の結果については、尊重という言葉を使っているが、実質応諾義務を課している。そこまで厳しく課している以上、当然審議においては企業に対しても中立・公正にしていかなければいけない。

  • 高橋委員 保険業界が金融業界の中で前向きに取り組んできたということの評価はしている。しかし、金融市場全体で、銀行・証券・保険の3分野では、証券は、自主規制機関化し、あっせん制度を使って、かなり紛争解決がスムーズに進むようになった。保険は、相当苦労しながらやっとテーブルに着けさせることができて、結果に対して従わせることができるようになってきたという段階である。銀行は、全然そこに行っていない。この3つを考えたとき、消費者としては融合した商品を利用していくわけなので、証券を買った場合はこう、保険はこう、銀行で買った場合はこうといった形でいいのかということには非常に疑問を持っており、それが横断化とか統一化という意見になっている。

  • 大森委員 先ほど全銀協から業法上の自主規制団体になっても差がないのではないかという話があったが、差がないのであれば、なればいいのではないか。明確な業法上の自主規制機関である日証協の自主規制部門にいる職員の意識は、他の業界団体よりも明確に、きちんと取り締まらなければいけないというものがあると思う。一方で、竹中委員の表現を借りると、箱を強制的に作らされてというようなことにもなるが、それで何が困るのかということである。自主規制と業界団体としての利益追求との間には利益相反があり得るため、日証協は業界団体としての戦略本部と自主規制部門とを内部的に分けて対応している。そういった対応でも十分じゃないほど何か自主規制化ということに対して障害があるのか。あるいは、問題の深刻さにかんがみて貸金業協会については、まさに箱のほうから強制的に作ったという展開をたどった。それはこれまで貸金業協会の業務をやってきた皆さんにとって、おもしろくないのはとてもよくわかるが、借り手にとってそのことによって何か問題が生じているのか。自分自身が業法上の根拠を持つ自主規制機関になるということについて、本当に気分的にいやだという以上の重大な問題があるのかどうかについて、意見があれば聞きたい。

  • 辻委員 先ほど銀行が遅れているという話であったが、全銀協では金商法上の認定投資者保護団体の認定を取得しようとしており、あっせん委員については、弁護士とか消費者団体の代表の方に入ってもらうことにより、公平性・中立性・専門性については、ある程度カバーできると思っている。件数が実効性の一つのメルクマールになるのかもしれないが、今後の行方が業界型ADRか横断型ADRかはわからないが、その場合でも実効性が一つのキーポイントになると思っている。ADRを作るに当たっては、実効性が保てるよう工夫しなければいけない。

    もう一点、先ほどから横断型という話が出ているが、横断型の設計図がまだ出ていないわけであり、それは単に金融ADRという形になるのか、あるいはもっと広い消費者庁のような形のADRになるのか、業界型と比べるに当たっても、横断型のある程度の形が見えないと、なかなか議論ができない。

  • 原委員 銀行協会の銀行とりひき相談所がよろず相談所であった時期の運営懇談会の委員を5年ぐらい務めた感想だが、担当の方が一生懸命なのはすごくよく感じるが、銀行協会全体として、消費者の視点とかこういった苦情をきちんと解決しなくてはいけないとか、未然防止とか再発防止に結びつけなくてはいけないという意識が感じ取れなかった。銀行業界全体として考えるべき。先ほど回答の中に、預金の取扱機関での横断化というのはある程度イメージはできるが、他のところとはイメージ化、横断化ができないと言っていたが、今銀行は保険も投信もみんな販売しているので、自ら先頭に立って横断化のイメージとか設計図作りをやるべき。業界全体としての課題も大変大きいのではないかと思っている。

  • 土田委員代理 実効性をどうやって担保するかというところが、各業界団体の方が一番悩むのではないか。私どもは、金トラ協では、何とか権限を持った機関であってほしいということで、自主規制機関に是非考慮していただきたいと随分話し合ってきた。企業なので、トップダウンで物事が決まるのであれば、トップに情報が行けば、実効性があるというのであればものすごく簡単ではないかと思っている。それで先ほど、トップのほうに情報が上がっているのか、行くシステムがあるのかという話をさせてもらった。どうもあるところとないところがあるようなので、トップを巻き込んで、早急に、まず自分のところで自主規制機関なりを作るということを考えてもらいたい。その上で、業界団体で横断的な機関ができないのであれば、横断的な自主規制機関の必要性は、むしろ行政主導、金融庁主導で、トップとの話合いということも含めて考えていいのではないか。

  • 辻委員 先ほどは自主規制機関の定義が法律上無いという意味で申し上げた。また、相談・苦情解決業務だけを自主規制機関化することについて、日本証券業協会や金融先物取引業協会は組織全体が自主規制機関であり、相談・苦情対応の部分だけが自主規制ではない。苦情相談に至る前の販売ルールや業務行為も含めて自主規制機関化するのかどうか、という議論になるのではないかと思う。そうであれば自主規制機関化の範囲の検討については、この場よりもむしろ金融審議会での話になってくるのではないか。

  • 白石委員 当協会が提出した意見の自主規制機関化というのは、苦情相談・あっせん制度の自主規制機関化ではなく、証券業務であれば証券業務全般に関しての自主規制機関という意味である。ADRでは双方の話し合いに基づいて解決を図る訳だが、その基準になるのが法令であり、法令をブレイクダウンした自主規制であると考える。「自分達はこういうふうにしますよ。」と自分達で宣言したベースがあって、双方が話し合いに乗ってこれると思う。あっせん制度の枠組みだけを自主規制機関化しても、話し合いでの解決は難しいと思う。自主規制なりガイドラインなりによって自分達の主張がきちんと外に向かって出ている状況であれば、話し合いで解決を探るあっせんが成立しやすくなると考える。

  • 岩原座長 自主規制の問題は紛争解決・苦情処理だけの問題ではないという指摘があったが、そうすると、それ以外を含めた業界団体のあり方についての議論があってもいいと思う。全国銀行協会が金融審議会でしてほしいということであれば、是非議論させて頂きたいという気もする。

  • 竹中委員 自主規制機関の検討となると、私どものような立場の者では議論ができないというのが本音だと思う。実際問題、業界団体である以上、会員会社の考え方がなければ、自主規制機関の議論はできないし、自ら手を挙げてやりますと言う状況にはない。そういう意味で、業界団体として出席している我々は今申し上げたような意見になってしまうのだろうと思う。また、自主規制について、日本証券業協会の白石委員が発言されたが、生命保険協会の相談所規程が金トラ協のモデルに準拠した形になっており、会員会社に一定の強行規定をはめてきている中で、やれる、という実態はあると思う。個人的な意見として、原委員・高橋委員・土田委員が言ったように、各業界団体がまだ努力が足りず、まだまだ業界団体で努力する余地があるのではないかな、と感じている。これ以上できないから、横断的なADRへという議論もあるのかもしれないが、もう暫く進捗も見ては如何か。

  • 岩原座長 現在の枠組みの中でどこまで期待できるのか、今までもう8年間やってきたではないかという意見もあるかと思うが、中立的な立場からは、例えば、井上委員のような、ステップを踏んでいってはどうか、ただ必要があれば制度的な枠組みも考えなくてはならないかもしれない、という指摘もあったところである。竹中委員のような意見について、今までの延長でそれぞれの団体にご努力頂くことでスピード感を含めて十分なのか、制度的なことも考えたらどうかということも示唆されているわけだが、井上委員あるいは石戸谷委員から発言頂ければと思う。

  • 井上委員 個人的には絶対に統一的ADRにすべきだと思っているわけでもなければ、現状の各ADR団体が連携を高めていく方がいいと思っているわけでもない。いずれもあり得るしフィージビリティスタディを進める中で分かってくることもあるだろう。ただ、金融ADRのゴールとして3つの要素が求められると思っている。1つ目は、何らかの形で業界横断的な機能を持つこと。1つのところでやるか、複数のところで連携を深めるかということなのかもしれないが、横の広がりということである。2つ目は、手続について苦情解決・あっせん・仲裁といった一連の手続がメニューとして整えられたADRという、縦の手続の広がりがあること。3つ目は、手続の中身として、中立・公正であり、透明性があり、秘密性があり、迅速であり、低コストである、という手続のクオリティの問題。この3つの要素が実現できるのが最終的なゴールになれば良いということについて、大きな異論は無いだろうと思う。ただ、私が本当に興味があるのは、できあがりが1つであれ連携であれ、どうやって実現するかというステップである。具体的に考えると難しいが、前回申し上げたのは、まず手続のクオリティについて、ADR標準(スタンダード)を策定・認識する必要があり、例えば金トラ協でも他の研究会でも良いのかもしれないが、モデルのアップデートを行う。例えば業界の方の力を借りるにしても当該個別案件については出身母体の案件に関わらない等、常識的な要素をどんどん抽出・具体化してADR標準をまず共有する。それを共有した上で、全業界が足並みを揃えることは難しいので、ADR標準を満たすことが出来たところから、いくつかの団体がまずは協同して新団体を作り、そこに窓口機能を置く。その団体は、例えば認定投資者保護団体となり苦情・相談のスクリーニングのような業務から始めても良いと思う。既存の団体に振り分けた先の段階で、こじれにこじれてあっせんさらに仲裁にまで至る案件は相当数減るはずであるから、その段階で、新団体が既存の団体からもう一度紛争を取り込んで、第三者的なオンブズマンのようなADR機能を発揮する場となることも考えられる。このように、新団体が最初からフル装備のADRとなるのではなく、最初は多くの案件の解決を既存の団体が担うとしても、一定程度窓口機能を担ったり、こじれたときのバック・ストップが客観性の高いオンブズマン的ADRを利用できるということであれば、利用者から見て、最終的な客観性が保たれるという信頼感があるかもしれない。以上をまとめると、まずADR標準を共有できれば、次はそれを横に少しずつ広げていく工夫を考える。前回はフランチャイズという言葉を使ったが、統一的な新団体がフランチャイザーとしてフランチャイジー(既存の団体)に一定のクオリティを求め、それを満たすような団体が1つずつポツポツと参加して横の広がりが出来てくる。縦の広がりとしては、最初は入口のところで振り分けしかできない団体かもしれないが、ゆくゆくは相談窓口的な業務を縦に広げていき、途中を既存の団体が担うとしても、最後の出口のところはオンブズマンのような機能を備えることも考えられる。真ん中を分かれたままにしておくのか、最終的に一緒にしようよという話になるのか、そこまでは私は価値判断できないが、そういう形で縦と横を広げていく方法はあるだろう。

  • 岩原座長 問題としては横断化の問題と実効性を上げるためにはどうしたらということで、自主規制機関化はむしろ実効性を上げるための全体的な団体のあり方の問題ということですね。井上委員のご発言の中で、スタンダードの作成はある意味でモデルの作成でやってきたことだが、今までのモデル作成で実効性の点で十分だったのか。確かにご指摘にあったように、出身母体が関わらない等は今までのモデルにプラスしていけるところだろうが、果たして実効性の面でモデルをよりブラッシュアップしていくことで十分なのかという点。その辺どうでしょうか、井上委員。

  • 井上委員 私が申し上げたのはステップのような話。それをどう動かしていくのかについて、私は元々自主的取組みを尊重したいと思ってきたが、最近の議論を拝聴していると、法律なり行政の力の後押しが必要なのかもしれないと感じてきている。一つには既存団体の自主規制機関化なのかもしれないし、一つには法令により、一定のクオリティを備えた手続を行う団体に対する手続応諾義務の付与等、いろいろな点で行政なり法令なりが力になれるところがあるのではないか。どこを一つ押せばいい方向に回転し始めるのかについては、巧くいっているところといっていないところの現状を把握して、現在のADRの方々から話を聞いて勉強しなくてはならないことが一杯あるのだろうと思う。

  • 石戸谷委員 横断化が出てきてしまうので、話が難しいなと考えていた。自主規制機関とそうでないところは実績から見ると歴然と差がある。法律上の根拠があるのが自主規制機関だと思うが、今の業法が縦割りで残っている一方、いろいろな商品が扱われるという非常に難しい状況になっている。いきなり横断化はなかなか難しく、実体法が横断化されて金融サービス法のようになると自主規制機関も横断したものに対応すると思うが、実体の法律が横断化していない中で、果たして紛争処理のところだけが横断的になるのか。例えば、金融商品取引法の範囲ではある程度工夫すれば可能かもしれないが、商品取引は全く別系統になっており、実体法との関係を無視して論じられるのだろうか。当面は業法に根拠を置いた自主規制機関を作り、規則制定権・ルールメイクはちゃんとあり、そのルールに基づいて紛争解決を行うべき。高橋委員が言われた「銀行で預金の他に証券・保険等をいろいろ売っている。」というのは、難しい問題であるが、銀行が販売しているが故に通常の証券会社が売るのと違う要素が加味されてくるので、銀行で自主規制機関を作ってルールメイクすれば対応可能ではないか。金融サービス法で横断化すればよいのではないか。私は自主規制機関の動きをずっと見ていて、証券業協会の改善の努力は大変高く評価してこれまでもいろいろ言ってきているが、それで十分という意味では全くない。例えば説明義務が争点になった判例の流れに関して、説明義務が法的義務であるという判決を裁判所で出し始めたのが1994年であり、金融商品販売法ができたのが2000年。2000年の段階の金融商品販売法では、裁判所の判例法理の方が中身が豊かだったため、そちらの方が使われて、2006年の金融商品販売法の改正でようやく判例の水準にかなり近づいた。やはり12年前後経過しており、単に苦情処理すればいいんだということではなく、安心して取引できる環境を整備していくため、こういうことはこうあるべきということを積極的に出すのが専門的機関の大きな役割だと思うので、そこを睨んだまとめを是非お願いしたい。

  • 辻委員 まず誤解のないように申し上げるが、全銀協が自主規制機関化を望んでいるというわけではない。また、井上委員の話の中で横の広がりというのは比較的分かりやすいと思ったが、縦の広がりの方で、横断化ADRの業務範囲は苦情と紛争解決までか、それとも相談も含まれるのかという点がある。業界団体で相談・苦情を受けなくなってしまうと、お客様からの生の声が入ってこなくなってしまい、お客様にとってどこに問題があるのかが業界団体ではなかなか分からなくなってしまう。先ほど申しあげた申合せのようなものも含め、どういった問題についてどういった解決を施せばいいのかが分からなくなってしまうというデメリットがあると思う。

  • 原委員 相談・苦情を個別の銀行・協会で受け付けて解決することは大前提なので、どういう制度設計をしてもそれから離れるということは無い。個別の事業者の責務にもなるし、相談・苦情からの情報をいろいろと考えて頂きたい。また、被害の未然防止・再発防止はADRの救済だけではなく出口としてもあり、金融トラブル連絡調整協議会をやってきて良かったと思う点もある。それは、無認可共済やFX取引についての相談が増加し、どういうふうに解決したらいいだろうかということを、この場でディスカッションすることができたこと。一堂に会して話をすることは重要で、どういう形でADRが設計されるにしても、こういった機能は必要ではないか。金トラ協スタート時には、金融庁金融サービス利用者相談室は無かったが、相談室も立ち上がったので、相談室との情報交流・連携も新しい制度設計では十分考えて頂きたい。質問的なことで大変恐縮だが、弁護士の委員の話を聞いていて、石戸谷委員からは現状、業法に基づいての自主規制機関という話があったが、井上委員からは最後にどうしても解決がつかない事案は、一番最後のところに全体で誰もが持ち込めるような金融ADRがあった方がいいのではないかと私には聞こえたのだが、石戸谷委員はどのように考えられるのか。

  • 石戸谷委員 全部の金融分野がカバーされる横断的ADRでは全ての案件が解決されるというのは錯覚ではないか。例えば、元々違法な未公開株の被害について金融ADRで解決というのはおかしい訳で、むしろ法律の執行力の問題である。業法の隙間を狙う悪徳商法を横断的なADRで解決するのは無理がある。横断的なものは消費者庁で議論している父権訴訟等、法の執行力の話であり、金トラ協での話はあくまで法に則っている業態を念頭に、それぞれ自主規制機関なり業界団体を持っていることを想定している。例外的に業態自体が違法とは言えないがトラブルが多発している海外先物について、業界ADR・自主規制機関ということは考えづらく、別世界の話を混ぜるのは適切では無いと思う。

  • 神作委員 3点ほど感じたことを述べさせて頂きたい。第1点は自主規制機関化してADRを担うという点について、確かに自主規制機関は自分でルールを作り解釈し適用し実行するため、非常に強力であり実効性の観点からはプラスのように思うが、消費者との間での自主規制機関自体の客観性、中立性、公平性は必ずしも自明ではないと思う。その意味から、自主規制機関化して苦情紛争解決支援するのは一つの十分あり得る考え方だと思うが、本当に正しい方向なのかは慎重に検討する必要があると思われる。第2点は、統一的なADR機関について、どこかに穴が空いていて救済されない消費者・投資家がいるのはよろしくないということについては、これまでの議論からコンセンサスがあると思う。そのような観点からの点検が必要である。第3点に、販売勧誘段階で説明義務を尽くさなかったとか、適合性の原則に反した売り方をしたというようなことは、各業態共通にとらえることができる問題だと思うが、難しい問題があるのは、ADRの大きな特色、メリットと言われている実質的・妥当な解決と各商品におけるルールの整合性との問題があると思う。個別ケースを見て、これは救ってやらなくてはならないというので実質的・個別的妥当性を追及できるのがADRのメリットの1つである。それに対して、裁判所では法規の体系的な解釈があるので、法令に従って、基本的に整合的に解決していく結果、個別的なケースの解決としては、あまり適切ではないと思われるケースが出てくる。金融商品の中で例えば預金・保険は、約款の中での体系性が非常に重視されていて、可哀想だからこの人にだけこういう解決をというのが全体から見ると望ましくない、という場合があり得るのではないか。そうすると、入口を共通化するのは、コンセンサスが得られると思うが、トラブルの中身については,具体的にどういう商品でどのようなトラブルが生じているかに依存するところが大きい場合があり,なかなか一律に解決するのは難しい印象を持っている。

  • 岩原座長 横断化の問題の一つの方向として、国民生活センター等既存の横断的なADR機関により活躍してもらってはどうかという議論があるが、その点について、国民生活センター等からの意見は如何か。

  • 宮内委員 国民生活センターです。消費者相談も年々増えており、10年前から比べ3倍の100万件ぐらいになっている。その中で、高齢化の影響もあり、金融に関する相談が年々増加する傾向がある。現在でも国民生活センターで、金融に関する相談も含め各種相談をやっているが、今回、国民生活センター法が改正になり、ADR機能を持つということになった。したがって、国民生活センターでは来年4月以降、ADR機能を持って運営していくが、金融だけでなくいろいろなサービス・商品の相談を扱っていく。ADR機関というのは各業界団体でそれぞれの特殊性・専門性があるが、消費者の視点で問題解決を図るということであれば、ある意味共通した問題があると思っている。話を伺っているとどうしても、それぞれの団体の方は業界団体として出席しており、会員に遠慮しているようだが、消費者の視点ということであれば、決して自主規制機関であろうが、そういったものもそう難しいことでないと考えている。勿論、相談がどんどん増えている状況にあるので、企業・団体としても早急に取り組んで頂きたいし、国民生活センターも金融トラブルについても積極的に取り組んで行きたいと考えている。専門性については、特別委員として専門的知識を持った方に委員に入ってもらいながら、国民生活センターは取り組んでいきたいと考えている。

  • 高橋委員 議論を金融審議会に戻すといいという話が出たが、岩原先生を含めて数人金融審議会の委員が金トラ協委員にはおり、岩原先生の努力で金融審議会の方で検討頂いたことがある。最近では2005年に検討し金融庁の金融研究研修センターの方たちが海外事情を調査頂き、英国モデル・韓国モデル・豪州モデルということで、行政なり法制度がどういうふうに絡むかということについて、論文を出している。ご存じの通り、英国は業界自主規制でいったけれども、段々統合して行政も関与して金融サービス市場法の下に行われているし、豪州は業界型と言われるが、そこには行政がしっかり関与しているし、韓国はそういうケースを見ながら、後から作られたのでボーンと行政主導に跳んでいったところがある。現在の消費者庁・消費者行政の議論をみてもそうだが、今の状況でわが国はどういうふうに行ったらいいのかということについて、そろそろ私は結論を出す時期ではないかと思っている。金融庁に金融審議会での検討やセンターでの検討等に基づいて、案を出して頂けると有り難いと思う。

  • 岩原座長 本日はまさに大量の意見を頂いたわけであり、次回ではとりまとめに向けた議論をして頂き、次々回の金トラ協で協議会としての報告をしたいと思う。皆様に協力をお願いしたい。次回は集約に向けた議論ができるように、事務局には努力をお願いし、事前に関係各委員の意見も伺いつつ、取りまとめに向けた努力を是非して頂きたい。

以上

お問い合わせ先

金融庁総務企画局企画課内 金融トラブル連絡調整協議会事務局
Tel 03-3506-6000(内線3682、3516、3647)

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