第37回金融トラブル連絡調整協議会議事要旨

1. 日時:

平成20年6月17日(火曜日)10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用特別第1会議室

3. 議題:

  • (1)平成19年度における業界団体・自主規制機関の苦情・紛争解決支援について

  • (2)金融ADRの整備にかかる今後の課題について

4. 議事内容:

  • 平成19年度における業界団体・自主規制機関の苦情・紛争解決支援について

    事務局から、資料1の「金融分野の業界団体・自主規制機関における苦情・紛争解決支援の取組みについて(平成19年度)」及び資料2の「金融分野の業界団体・自主規制機関における苦情・紛争解決支援規則の整備状況について」に基づき説明が行われた。

  • 金融ADRの整備にかかる今後の課題について

    事務局から、資料3の「金融分野における裁判外の苦情・紛争解決支援制度(金融ADR)の整備にかかる今後の課題について(座長メモ)【案】」に基づき説明が行われた後、各意見提出者から、資料4の「金融ADRに関する委員等提出意見」に基づき説明が行われた。なお、欠席の森委員提出意見については、事務局から説明が行われた。

  • 大森委員前回業界代表の委員の一部の方に若干誤解があったように感じたので、まず一言申し上げる。この協議会は、業界が行う苦情・紛争解決のレベルアップを目指して、いろいろな立場の方々が自主的に集まっているものであるから、何か具体的な制度を決定する場ではない。したがって、この座長メモの原案も、細かな言い回しがどうかということよりは、両立しない意見は両立しないまま併記されているところであり、本日及び次回、様々な角度から御意見・御議論頂き、なるべくそれを忠実に反映するものとしたい。一方で、最近報道等で御案内の通り、消費者行政を巡る行政が急激に展開している。かつては産業が栄えるとそこで働く人やお客さんも豊かになって国も潤うといったような共存共栄の関係があったと思うが、どうも産業を育成しながら同時に消費者保護を図るのは限界があるのではないかということで、消費者保護に特化した新しい行政組織もできるという中で、過去の霞が関の消費者行政というものが幾つか問われている。例えば、欠陥湯沸かし器や欠陥エレベーター、こんにゃくゼリー、毒入り餃子など色々ある話を伺っていると、かなり金融分野と違うなと思う。誰が使っても欠陥、誰が食べても欠陥なのだが、金融分野における紛争というのは売り方によって紛争になったりならなかったりするし、滅多に命に関わる程の事にはなっていないという意味において、ADRという形態が非常に馴染むのだと思う。急激に消費者行政全体の枠組みが転換しているし、これまでの常識では考えにくかったような施策を消費者庁もどんどん打っていく状況になると思うので、そういった時代も展望しながら、今後に繋がる議論をお願いしたい。

  • 石戸谷委員座長メモ案について異存はない。理念的なところの議論は、この協議会では行った記憶がないので補足したい。経済財政諮問会議その他のところで、金融サービス業については高い期待が込められており、高い付加価値を生み出す産業として日本経済に貢献する高い役割を期待しているレベルにある。金融ADRの考え方もそれに対応した再定義、役割のあり方を整合するように検討したほうがいいのではないかというのが元々の発想である。金融商品というのは、消費者にとって目に見えないもので、かつ、リスクを内包するということで普通の消費生活の物資と極めて違った特色を持っているため、売り方と紛争というのは非常に密接な関係がある。実体的なルールと苦情紛争というのは相互に密接な関係があるというところが特色であり、そこに着目してADRを考えると、裁判所は、個別紛争を判決で妥当な解決ということで解決してしまってそれで終わりだが、ADRは、紛争の中で見た実体的なルールの適切さというのを相関関係の中で検証して組み立て直して、あるべき方向を目指すということが可能であることが最大の特色である。一つには外国為替証拠金取引の顕著な例を挙げたが、苦情は減っているけれども取引は爆発的に増えている。紛争という観点から見ると、発展しつつ苦情は少ないというものの構築はあり得るのだという前提のもとに、苦情とルールの関係を検討して法律によらずに迅速に対応することが可能ということで、自主規制機関を打ち立てている。自主規制規則の紛争解決の中で、自主規制規則を尊重しつつ解決していけば、ルールが法律でなくても決着できる。業界団体の申合せでも可能だが、金融分野では損失補填やいろいろな問題があり、業務・紛争解決が一貫して何らかの法的根拠に基づく適正処理を遂行していかなければならず、単なる申合せでは不足している。信頼関係構築がベースになっており、それがあって初めて顧客資産の有効活用や貯蓄から投資へということが可能になると考えている。検討するに際しては、実体的なルールを金融審でやって、本協議会で紛争解決に特化して検討するという位置付けそのものも見直すべきではないか。

  • 伊原委員全国信用金庫協会です。当信用金庫業界では、地域密着型金融を着実に推進しており、お客様の苦情・要望を経営に反映できる満足度の高い事業展開に留意している。そういったこともあり、苦情件数は少なく、あっても自主的な解決が図られており、弁護士会仲裁センターへ委託する紛争解決支援の事案もこれまでゼロとなっている。全国信用金庫協会では、本年の2月に規則等を改正し、より一層業界挙げて体制整備に努力している。金融ADRについてはその必要性は十分理解しており、まずは自主的な取組みをより一層強化することが肝要と考えている。金融ADRを設立する場合であっても、当協会単独の設立よりも他金融団体や他専門機関と連携した設立の方が望ましいものと考えている。

  • 宇都宮委員農林中央金庫の宇都宮です。農協・漁協両方併せて代表し意見の方申し上げさせて頂く。そもそもの立て付けからご説明申し上げると、農協・漁協においては、会員と出資者と主な利用者が同じという特色があり、普段のつきあいがかなり密接である中で、他の業態と比べて、当事者間の話し合いの余地が大きい。そうは申しても、会員出資者以外の利用者も増加している現状である。私どもの特徴的な組織の形態として、指導を専門に行うのをそれぞれ農協・漁協に連合会として設け、その中に相談所を置き、苦情相談に対応する枠組みとしている。協同組織なり農協・漁協という農業者・漁業者とのつき合いという特殊性の中でいくと、基本的な考え方としては、自主的な取組みを尊重させて頂きたいというのが基本線である。世の中の流れとか努力が足りないとかいろいろな批判がある中で、自主規制機関化やADR促進法の認証取得などの方向へ議論が進むという前提を置いた上でのことではあるが、会員・出資者・利用者が同じという中で、元々上がってくる件数が少ないため、単独で農協系統・漁協系統だけで認証取得や自主規制機関化は、持続していくモデルとしては少し厳しいと思っている。将来的に、当協議会や場合によっては金融審で議論が進んでいくのであれば、ある程度拡がりを持った形で組織を設けていく必要があるのではないか。最後に、農協系統・漁協系統両方で出している紙の最後のマルについて補足をさせて頂きたい。金融ADRは裁判外で迅速に処理をしていこうということであったと思う。その中で自主的にやっていくためには一定程度の法的な裏付けが無いと巧くワークしないと思うが、自主的にやっていくのと法的な裏付けでギチギチさせていくのとの両者のバランスをどうとっていくのかは、今後、この議論を進めて行く上では慎重に検討していく必要があるのではないかということ。もう一点、利用者・業者双方の立場というのは業者サイドから見た納得感というのは、それぞれの取引の特殊性に応じて、どこまで受託義務を負うかとか強制力を負わせるかとかというところで議論の幅があるのかなというのが趣旨である。例えば偽造カード・盗難通帳は、数年前、一定程度法律で枠組みを決めた上でやっていくということになっており、今年に入って法律に決まっていない枠組みのところも、それぞれの業界団体で、自主的なルールでフォローしていくという枠組みを作った。偽造キャッシュカード・盗難通帳は取引の苦情なり紛争に結びついていく仕組みがイメージしやすく、ルールを作りやすかったが、一定の法律的担保を持った上で強制力を持っていく、あるいは受託義務を持っていくという議論になったときに、どういう取引のどういう形態のというのが正直まだイメージが沸き切れていない。

  • 近藤委員全国信用組合中央協会の近藤です。私どもは平成14年6月の「金融分野における業界団体・自主規制機関の苦情・紛争解決支援のモデル」(以下、「モデル」という。)の策定を受け、15年4月からしんくみ苦情等相談所を開設している。苦情の受付に当たっては、公正・公平な態度の保持に努め、会員信用組合からは解決支援に対する対応状況や結果の報告を求めることとしており、相応の機能を果たしてきたものと認識している。紛争案件については、弁護士会仲裁センターと移送協定を締結させて頂いている。協議会の議論では、苦情解決支援件数が少ないとか苦情解決支援により解決しなかった案件がほとんど紛争解決支援に回っていないとのことであるが、信用組合の場合、苦情の申立ては誤解等によるものが大半で、苦情解決支援段階で解決を見ており、したがって、紛争解決支援の申立ての少ない状況にある。現在、弁護士会仲裁センター制度以上に中立・公正で透明性、秘密性、迅速性に優れた制度は無く、橋渡しの改善として、東京以外の各地弁護士会仲裁センターとの協定締結に努めることや、制度について会員信用組合への趣旨理解の促進、お客様への案内強化を図っていくべきだと考えている。ということで、当面は、私どものより自主的な取組みを深めさせて頂きたい。仮に金融版のADR組織を設けるという場合は、私どもの取組みの実態から見て、独自の設立は厳しく、相応の規模的拡がりのある横断的な範囲での構築が望ましいと考えている。また、そうした検討を行う際は、自主的対応と強制力を持つ法的担保のあり方と司法手続との関係や、利用者・業者の両側面からの中立感、公平感の確保の見地からも慎重な御議論を頂きたい。

  • 坂本委員日本損害保険協会の坂本です。ADRの機能について、個別の苦情あるいは紛争解決と併せて重要なのは、各事業者の業務改善のためのセンサー機能として働かせることである。会員会社あるいは事業者のサービス改善に資するような機能を各金融ADRが構築し、それでもって金融サービス全体として消費者の期待に応えていくという努力が必要である。そのためにも、業界団体としてのADRの取組みは必須であり、強化は不可欠と考えている。自主規制機関化については、この目的は実効性あるいは強制力の担保と認識しているが、自主規制機関化よりも、どういう規定ルールがその中に設置できるのかということが、基本的な問題と思っている。手続応諾義務や結果の尊重義務がルールとして明確化できて、それが各構成員の中できちんと担保できるのであれば、自主規制機関化という必要性は必ずしも無いのではないか。自主規制機関化はADRのみをもっての話ではなく、座長メモ案の6ページ目の自主規制機関化の2つ目のパラグラフにもあるように、業界団体の機能のあり方そのもの、あるいは行政の監督のあり方そのものの話であり、この金融トラブル連絡調整協議会あるいは金融ADRという中で特化して論じる話ではないと考えている。

    横断的・統一的・包括的ADRについては、完全に金融関係業界を統合したものを作る、窓口機能的なものを作る、一部の業態の部分を統合するといったように、方法論がたくさんあるため、きちんと論議をしていかないと、望ましい方向感は出せないと思っている。利用者の利便ということを考えると、何かしらの横断的な窓口機能を有するものは検討する余地はあると思うが、この場合においても、最終的に処理をする局面においては、業界団体としての業務改善に資する役割も考えれば、自前のものが整備されているところについては、既存の資源や機能を活用しながら、横断的な組織と役割分担をしつつ対応していくことが必要と考える。

    強制力・実効性の部分については、座長メモ案の4ページの(2)のところの紛争解決支援の実効性のところで手続応諾義務・結果尊重義務が十分確保されていないとの意見が大勢を占めたとの書きぶりがなされているが、私ども損害保険協会のADRの中ではこれらの義務については、これまで事業者側は100%守っているところでもあり、例えば、「確保されていないとは言えないのではないか」、「確保されない懸念がある」といった程度の多少和らいだトーンにして頂きたい。

  • 竹中委員生命保険協会です。今般の今後のADRのあり方を考えるに当たり、まず現状我々が持っている裁定審査会を改めてご理解頂きたい。裁定審査会は、平成13年4月に設置し、生命保険協会の相談所規程に縛られるが、ここの金融トラブル連絡調整協議会にて策定されたモデルに沿った形で運営をしてきている。機能強化するということで18年の1月に改定し、資料2の「苦情・紛争解決支援規則の整備状況」にあるとおり、結果として整備状況は100%になっている。裁定審査会は会員会社に対して運営に対する協力義務・参加義務・裁定審査会が下した裁定に対する尊重義務・尊重義務違反行為があった場合には全て社名も含めて公表するというものが相談所規程の中に規定されており、片面的な拘束力を持たせる形で運営をしている。幸いにして、我々業界で作ったADRでは、会員各社の義務違反は今のところない。中立性・公平性の確保を現状どのようにしているかについては、裁定審査会は弁護士3名、現役の消費生活相談員3名、生命保険相談室長1名の合計7名で運営している。実務的には、現在、弁護士・消費生活相談員・相談室長を1組にして3チームで構成して運営している。最終的な結論に至るときには、全員の合議で決めるというルールでやっている。裁定審査会運営そのものに対するチェック機関としては、裁定諮問委員会を設けており、学者・弁護士・医師・消費者代表という外部の方に委員に就任頂だき、協会常勤役員1名との合計5名で構成されている。その中で、相談所における苦情の解決状況・紛争の裁定審査会での解決支援状況の報告を定期的に行っている。特に、裁定審査会について言えば、裁定に至るまでの考え方等々、業界に対する警鐘も含めて裁定諮問委員の方々から意見を頂戴し、それを協会の中で検討する仕組みを作っている。中立公正性の確保に加え、苦情解決支援については、相談所が会員各社と連携を取りながら、解決に向けた対応を図っている。苦情の段階においては、相談所規程の機能強化として、我々が苦情の発生状況について、異常を感じた場合には、協会の役員から当該会社の役員に対して注意喚起・改善勧告を行うことができるとしている。紛争解決支援については、外部の専門性を持った方々が委員としてご就任して紛争解決に努力して頂いている。苦情から紛争までを一貫して協会で扱うということにより、専門性・迅速性・効率性が初めて確保できるものと考えている。更に、協会だけでなく、各社に対してどのようにフィードバックし、再発防止に向けるかという取組みについては、7年間で裁定審査会は145件の事案を審理しているが、その裁定結果については、四半期ごと・半期ごとの発行物に取りまとめ、協会の中の各社の役員クラスである一般委員会に報告している。紛争について言えば、当然、当該会社には結果は行くが、それ以外の会社、全社に対してもフィードバックする。そして、お客様も素早く見られるように、概要について公表している。更に、協会の中に消費者の声事務局という横断的な組織を作っており、相談所だけでなく、各地の消費生活相談員の方々との懇談・勉強会、マスコミの方々から頂いた意見等々集め、そこで集約分析し、それを会員会社に情報を提供、あとは一つの事案を取り上げて、それに対する各社の取組みについての情報交換等をしており、それらを自主ガイドラインに反映させることで推進している。会員各社においてお客様の意見を経営資源として取り上げることが最重要課題として認識しているので、それらを検証し、再発防止・未然防止の検討材料とすることが一番大切なことと考えている。会員各社においても、裁定審査会に上がる前の苦情の段階で如何に解決するかという社内努力も相当進んでいる。会社の中には裁定審査会と同じような仕組みを自社の中に設けていたり、支払の苦情については、再度審査ができるような外部の方を入れた形での組織で検討するというものも設置されている。

    今後のADRのあり方については、今お話しさせて頂いた状況においては、私どもはそれなりの機能を発揮できていると考えているが、広く金融業界全体として消費者保護の体制を充実していくことは消費者の信用を高め、金融市場の健全な発展に資するものであり、今後金融分野におけるADRの更なる拡充に向け消費者の皆様に安心してご利用頂ける制度の構築に向けた検討を進めていくことは望ましいと考えている。これまでの、ここでの議論については、ADRの法制化・自主規制機関化・横断的なADRの構築がポイントとして上がっているが、まず法整備について、モデルの規定に準拠する限りにおいては協力義務・参加義務・尊重義務・義務違反行為があった場合の公表措置等を設けており、裁定結果のフィードバック、対外公表を通じて会員各社へ意志付け、注意喚起を促すことで、これまで違反した例は無く適切に運営が図られている。必要なルールを各業界団体の中において規定化をし、それを各社が尊重しながら運営をするという方法によって、必ずしも特段の法整備を講じなくても十分に実効性は確保出来ると考えている。

    2点目、自主規制機関化については、ADRの観点のみに留まらず、業界団体全体の問題であると考えている。更に、中立性・公正性を確保する唯一の手段ではないと考えられることから、金融ADRにとって自主規制機関になることが不可欠ではないと考えている。如何に中立性・公正性を担保し、裁定結果を踏まえて再発防止に取り組んでいくかということがこのADR機関に求められることだと思う。ルールを規定化することで当該ルールにおいて、協力義務・参加義務・尊重義務の手当を行うことで、牽制効果は十分発揮できる。このようなことから自主規制機関化は必要ではないと考える。

    3点目、今後の金融分野における業界横断的なADRをどうするかということについては、消費者の利便性・安心感・納得感が向上するのであれば、望ましいと考えている。また、各業界団体が横の連携を取る中で、業界をまたがる裁定事案への解決能力が向上する、業界全体のADR能力がレベルアップする、標準化が図られる、ひいては消費者保護にも繋がるということについても、意味のあることだと思っている。ただ、検討に当たっては、金融商品という中においても、銀行・保険、保険でも生保・損保、証券・信託と色々複雑なものが多く、専門性・迅速性が確保されるべきである。それと、消費者と企業両者にとっての中立性・公正性が担保されることが必要である。更に既存の枠組みを十分活用するということで効率性・合理性についても考慮する必要がある。様々な方法論が考えられるかと思うが、例えばということで以下のことをご説明させて頂く。まずイメージとして、窓口機能を担う業界横断的な組織を設置する。そこから各業界団体の持っている既存のADRに転送し裁定を行う。前提としては、既にADR機関を有している団体については、モデルに沿って機能を標準化する必要があり、更に、ADR機関を持っていない団体については、早急にその点の措置をして頂く必要がある。各団体のADRについては、金融庁が認定する仕組みも考えられるのかもしれない。そうすれば運営もある意味監視するような機能が働くのではないか。窓口機能を担う横断的な組織がそれぞれの紛争事案をきちんと把握し、公表するという仕組みが考えられるのではないか。ただ、このスキームを考えて行く場合においては、既存のADR機関における人員体制・組織の体制にも大きく影響するとともに、苦情から紛争までの一貫性を確保する必要もあるので、詳細な運営の検討にあたっては十分な意見交換が必要になる。

  • 辻委員全銀協の辻です。全銀協では、これまで弁護士会仲裁センターを利用して解決を図ることとしていたが、この場での御指摘等を踏まえ、利用者保護に関する更なる取組み・強化が必要との認識のもと、自前の紛争解決支援機関を設置すべく現在準備を進めている。具体的には、金融商品取引法上の認定投資者保護団体の認定申請を近く行うことを予定している。これにより、業界内における苦情・相談解決から紛争解決まで、一貫した対応を行うことができることになり、利用者の方々にとっての利便性・効率性を高めるとともに、業界型のADRとしての専門性を兼ね備えた体制を作り上げていきたい。また、こうした取組みの実効性の部分については、重要なポイントは、その適切な自主ルールの制定と会員銀行への運用ルールの徹底であると考えており、全銀協としては、あっせん手続への参加義務、あっせん案の受諾尊重義務、それから罰則になるが、規則不遵守のときの対応等にかかる自主ルールを制定するとともに、これらを担保するために、改正する規則の遵守に関して全銀協の申合せ等を行い、会員銀行に徹底する予定である。

    座長メモ案4ページにある「(2)紛争解決支援の実効性」の最初の「業者について、金融ADRでの手続応諾義務、金融ADRの結果の尊重義務が十分に確保されていない」という意見に対しては、こうした実効性を高める方策をとる予定である。なお、その申合せについては、今まで預金の不正払戻し、盗難通帳、耐震構造計算偽装書等においても、自主ルールを制定して申合せをやってきている。その申合せにより、会員銀行への対応を徹底してきている。また、銀行自身がADRに対する意識を高めていく必要性を十分認識しており、こうしたことから、自主規制機関化は必要ないと考えている。更に、今申し上げた実効性のある体制の構築に向けて、引き続き自主的な取組みを行っていきたい。

    次に、生損保、証券を含めた統一的・包括的な金融ADRについては、対応の一元化により利用者の利便性の向上が期待される一方、相談員の専門性の確保や業界各社との利用者サービス向上にかかわる連携等、解決すべき課題も多く、慎重な検討が必要であると考えている。こうした課題を踏まえ、モデルの見直し・高度化を行い、各業界団体における認定投資者保護団体の認定取得、活用が進むような方向を目指すことにより、まずは各業界が一定水準以上のADR機関を整えていくほうが実効性が高く望ましいと考えている。

    なお、最後に銀行界の取組みは、未だ十分でないとの御指摘を受けているが、今回の認定投資者保護団体の枠組みのもと、利用者視点からこうした取組みを着実に進めるとともに、会員銀行の意識を高めていくことにより、利用者の利便性と紛争解決の実効性を高めていきたい。

  • 土田委員代理 座長メモ案をもとに、大きく分けて、独立性、中立性、公平性の3つの論点を考えてみた。まず第1に独立性ということで、座長メモ案の5ページにある金融ADRのあり方で、「英国では、業界が、国民の不信感を払拭するため、自ら資金を拠出して独立性の強い第三者機関を設置し、そこでの裁定結果に従うという姿勢を示した」とあり、消費者側委員として、英国型の金融ADRの設置を強く求めたい。業界が自らの資金を提供して機関を設置し、そして行政に頼るのではなくて、業界自らの専門性のある人材を生かしながら、金融ADRの設置を希望したい。次に、業界内の金融ADRの中立性と公平性の確保の視点から見ると、座長メモ案の6ページには、「事業者に遠慮することなく、中立・公正に権限を行使できる立場を確保されるべき」とある一方で、「業界団体等委員からは、金融ADRは、業者からも信頼されなければ有効に機能しない」ともあり、事業者に遠慮するなという言い方をしており、もう片方は事業者に信頼性がなければ機能しないとする、2つの際立った一見対立するような意見がある。これは業界団体として全銀協のホームページを見ると、「全銀協は、日本国内で活動している銀行を直接の会員とする組織で、わが国の銀行業界の代表として、銀行業の発展のためにさまざまな活動をしています」ということが全銀協の役割となっている。そこからは、会員向けの団体であって、同じ会員である企業に、業界団体が遠慮なく意見が言えるのか、言える立場にあるのかということであり、金融ADRを、もし業界の中で設置するとすれば、その独立性と中立性・公平性に強く疑問を持つ。このような業界団体の域から脱していない業界に、果たして、業界内の金融ADRとしての役割を果たせるのかという疑問がわく。一方で、日本証券業協会や損保業界のように、業界内で自前のADR機関を設置している業界がある。特に、日本商品先物取引協会のように、会員企業に対して厳しい応諾義務を負わせているような業界もあるので、こういう方向が見えれば消費者としても一定の評価をしたい。業界内に金融ADR機関を設置するのであれば、まず業界内での独立性をどうやって担保するかが一番問われる。できれば業界の組織上においても、独立性がわかるような機関ということが、組織としてもできないか。できるのであれば、我々のところでは独立性が非常に確立されているということを消費者に向けても公にしてもいいのではないか。独立性が確保されれば、むしろ中立性・公平性は自ずから解決していくのではないか。業界団体内での金融ADRと第三者型の金融ADRを考えてみると、第三者型とは、要するに外部でできた金融ADRで、独立性は担保できており、中立性・公平性も非常にいいというような仕組みとなっている。ここでいうと、弁護士会の仲裁センターがこれに当たる。業界内の金融ADRとしては、独立性ということで二重丸までは行かない、でもある程度の独立性はあると思っている。中立性はどうかと見てみると、会員向けでは非常に中立性は高く担保されているのであろうと消費者は見ている。公平性についても、会員企業向けには、非常に公平性は担保されていると思っている。消費者向けにどうかということを考えて見ると、消費者向けのところがどうも見えてこない。独立性があろうと思っているが、それがはっきり見えない。消費者向けの顔をしても、中立性に関してはなお見えない、公平性に関してはなお消費者向けの顔は見えてない。できれば業界の全銀協のホームページにもあるように、銀行業の発展のために様々な活動というような文言があることを見れば、銀行の業界の発展ということから見て、消費者を無視することはできないと考えている。消費者向けの業界内のADRであっても、消費者向けの中立性・公平性をどうやって担保できるかということをもっと考えて頂きたい。

    次に、統一化と包括化の問題については、最優先されるべきは、各業界の金融ADRの確立である。業界のADRの設置がなくて包括的・統一性のある金融ADRをつくるとなれば、各業界団体のADRをスルーして自分のところでは解決せずに、包括化・統一化された金融ADRに回してしまう可能性が非常に高くなってしまうため、もう少し議論が必要ではないかと思っている。4番目に、認定投資者保護団体の制度の認定には、一定の認定基準が設けられているので、厳正な運用を金融庁に是非望みたい。

  • 宮内委員国民生活センターからは運営主体に関して意見を出している。金融ADRについては、金融の専門性の観点から運営主体は民間でとの意見もあるが、本年4月の国民生活センター法改正によって、来年4月を目処に、国民生活センターの行政型ADR機能が強化される予定。国民生活センターでは、金融だけではなく広範な商品サービスを取り扱い、解決が全国的に重要な事案を対象とする。国民生活センターのADRでは中立・公正な手続が法で定められており、消費者問題に関する知見もある。それから国民生活センターが毎年実施している国民生活動向調査でも、国民生活センター・消費生活センターの認知度が80%を超えている。また、関係書類の提出要求・結果の概要公表など、実効性担保の措置があることから、紛争処理の専門性を確保でき、更に専門的な知識を持った特別委員の参加により、内容の専門性についても補完できる。このため、国民生活センターのADRによっても金融トラブルにかなりの程度対応できると考えている。民間主体の金融ADRが設置された場合には、国民生活センターに導入される行政型ADRとの協力連携を図ることによって、金融トラブル全体が適切に解決され、被害が未然防止・拡大防止されることが重要である。金融業界にも積極的にADRに取り組んでもらうと同時に、国民生活センターのADRも活用してほしいと考えている。なお、事務局には今申し上げたような内容を踏まえた修正意見を出している。

  • 山本委員私は前回欠席のため、金融ADRについて一般的な観点からの見解に関するメモを提出した。本日は座長メモ案を踏まえ制度的な観点からの所感を述べてみたい。1点目は基本的なスキームとして一定の水準を満たしたADR機関と利用契約をし、ADRの規則を遵守すること等を金融機関の免許等の要件として監督官庁が監督する。当然そのためには法律の改正等が必要かと思う。具体的な中身としては、そのADR機関の水準の確保の点で、金融庁が認定をするという形が考えられるのではないか。2点目はややテクニカルな話だが、認定のあり方として、一つの考え方は法務省がADR促進法に基づく認証制度を既に持っており、その上に金融庁が独自基準により認定する二階建ての方法と、金融庁が完結的な認定を行う一階建ての方法がある。前者のようなスキームの例としては、産業活力再生特別措置法に基づく特定認証紛争解決事業者がある。事業再生ADRなどと言われ、産業再生機構の後継のような機関としてつくられるものだが、これは法務省の認証を受けたADRに、経済産業省が上乗せの要件を課して、独自の効果を付与するような仕組みである。後者のようなスキームとしては、自動車損害賠償保障法上の指定紛争処理機関、あるいは、住宅品質確保について同様の制度がある。これらは完結的な指定の要件を定め、ADR促進法施行令第1条で認証制度の適用除外にしている制度である。ただ、後者のようなスキームで、ADR促進法に基づくような時効中断その他の効果が付与できるかどうかについては、法制的に認識できていない。メモに書いたようにADR促進法による効果も付与するのであれば、前者の構成が素直だという感想を持っている。それからより重要な点は、認定の要件であるが、ADR促進法は様々な認証要件を16個程規定しており、特に中立性・公正性についてかなりの配慮がなされている。

    更に金融ADRとして、独自の認定の要件が考えられるのではないかということで、4つほど明示した。第1に、手続実施者の専門性。金融関係についての専門的な知見を有していることが重要なことだと思う。第2に、手続規則の中での実効性。ADR手続は実効的な解決をもたらすことができる規定が担保されていることが実効性確保の観点から非常に重要である。第3に、費用の問題。中立性とも関係するが独立採算性にして業界からの独立性を確保する。そういった方法で、顧客の費用負担が生じない、利用しやすいものにするということが必要ではないか。第4点に中立性と関係するが、ADR機関の運営について、利用者の代表等が参加する独立した委員会が行うことを要件してはどうか。基本的には現在のモデルを維持しながら、いくつかの点を強化する要件が考えられる。その意味では苦情解決支援から紛争解決支援まで一貫性を持ったADRであることが重要だと思うが、議論を聞いた印象で、苦情解決支援手続の点において、現在、相対交渉によることが多いとのことであったが、制度設計の際には、この点でADR機関の積極的な関与を明示的に定めることが必要だという印象を持っている。私の認識では、モデルにおいても、項目3-11で相対交渉の際の手続を定めているが、モデル策定時本来の考え方としては、顧客と企業の相対交渉に委ねるとしても、その相対交渉に完全に放置することは考えておらず、完全に放置することはそもそも定義上ADRとは呼べないのではないかと思われる。少なくとも一定の交渉期間を設定して、一定の期間ごとにADR機関の側から積極的に顧客へ連絡を取り交渉についての要望・意見等を確認し、それを適切に業者に伝達する、あるいは場合によっては業者を説得するような積極的な関与をして苦情解決支援していくことが考えられていたのではないか。そのような形で関与していけば十分ADRと呼べるわけで、そういう意味での苦情解決支援と紛争解決支援を認定していくことが必要と思っている。

    もう一つは、大胆な案かもしれないが、業者が金融ADRの提示した解決案を拒否し訴訟が必要になる場合、消費者による提訴か業者による訴えに対する応訴ということになるが、そのための訴訟代理人として金融ADRが契約する弁護士を選任することができ、その場合に金融ADRが弁護士費用を負担するということが考えられないか。これは、金融ADRが自らの提示した解決案を訴訟においても積極的に貫徹していく姿勢を見せることによって、ADRによる解決をより実効的なものにするという発想である。このようなスキームとしては、東京都の消費者被害救済委員会の制度等があり、制度的なハードルはやや高いのかもしれないが、一つの提案としてここに書かせて頂いた。

    最後に、今まではADRの認定の話であり、認定ADRと業者との義務としては、契約することが基本的な義務であるが、その他にも手続応諾義務、誠実交渉義務、結果尊重義務等、それぞれモデルにも記載されているような義務を業者の義務として課すべきではないか。その義務の遵守については、金融庁による検査・監督・処分の対象になると考えてよいのではないかと思っている。もちろんこのような形で業者の義務を課すことについては、裁判を受ける権利との関係での問題が指摘される可能性はあるとは思っているが、このような制度を法的な義務として課したとしても憲法第32条の裁判を受ける権利に違反することにはならないと認識している。これは業者が訴えを提起する権利、裁判を受ける権利を侵害するものではなく、あくまでも一定の水準を持ったADR機関において誠実に交渉しなければならない、あるいは不当なものでない解決案が提示された場合には、それを尊重しなければならないという義務を課し、その義務違反に対して一定の不利益処分を課するとしても、それは直ちに裁判を受ける権利を侵害することにはならない。そういう意味では、制度化は可能ではないかというのが私の認識である。

  • 岩原座長只今の山本委員の意見について、資料4の23ページに東京都消費者被害救済委員会の制度についての言及があるので、その制度の趣旨や背景等について、東京都消費者総合センターの永野委員に補足して頂きたい。

  • 永野委員東京都の消費者被害救済委員会の制度及びその訴訟援助について簡単に説明させて頂く。被害救済委員会は、当センターに寄せられた苦情・相談の内、解決する見込みがなく、特に都民の消費生活に著しく影響を及ぼし又はおそれがある紛争について、知事が消費者被害救済委員会に付託しあっせん・調停を行うことによって、公正かつ速やかな解決を図ることを目的として設置された。これまで35件が付託され、内8件が残念ながら不調と終わっている。この不調になった案件については、条例に基づき今後被害の防止や救済を目的として社名の情報提供を行っている。ただ、被害に遭った方にとっては、解決したことにならないため、不調となったものについて、訴訟にかかる費用が被害額を超え又は超えるおそれがあり、同じような被害を受けた消費者が多数生じ、被害者が都内に引き続き3か月以上住所を有するという要件を満たした場合には、いわゆる訴訟資金の貸付けなどの必要な援助を行っている。実際に不調になった案件について訴訟援助を行った件数は3件である。なお、判決により確定額が貸付金の額を下回った場合には、貸付けの返還を免除する制度もある。平成12年以降実績はないが、11年に貸し付けた事案では、事業者である信販会社が立替金の請求訴訟を消費者に起こし、それに対する応訴の訴訟援助を行った。

  • 瀧下オブザーバー外国損害保険協会は外国損害保険会社21社で構成される団体で、会員全体で日本の損害保険業の約6%を占めている。当協会の意見としては、銀行による保険・証券の窓販やその逆のケースも色々ある中で、金融・保険全般に渡り法律の裏付けがあり、お客様・消費者にとって分かりやすく利用しやすい一つのADR機関の設立を求めたいと思う。このADR機関は各業界団体から独立し中立の立場でADR手続及び組織運営に当たることによって、消費者の信頼を確保したらどうかと考えている。また、このADR機関では、相談からあっせん・仲裁に至るまで、消費者のニーズあるいは事案に応じた最適な手続を提供できる機関であって、その手続が時効の中断等の法律的効果があるものを求める。更に、金融ADR法を制定して頂き、金融庁の監督を受けることがふさわしいのではないか。ただ、新法を制定するとなると時間がかかり、片や金融ADRの整備は非常に急務であるため、現在のADR促進法のもとで業態横断の金融ADRを作ったらどうか。一方、今後も各業界団体だけでとの意見もある反面、当協会のような小規模の事業者団体もある。そういう団体にとって、ADRの負担も非常に大きい。したがって、当協会も今後ADRを整備したいと思っているが、業態全て横断できなくても、いくつか横断した、あるいはいくつかの業界団体が連携したADR機関ができないかどうか模索しているところ。もし、このような考え方に賛同頂けるようなところがあれば、連絡頂きたい。また、自主規制機関化に関しては、この議論とADRの整備とは全く違う議論であると当協会は理解している。自主規制機関化に関しては、1994年10月11日のアメリカ合衆国政府と日本国政府による保険に関する合意、いわゆる日米保険合意の中で、「日本国政府は、保険分野に関する自主規制機関に関し、加入は任意であり、その運営は、それぞれの機関の定款及び規約に従って行われ、また、日本国政府は、かかる機関に対しいかなる権限も委任しない」等の約束をしていることに留意頂きたい。

  • 原委員まず、日常的に膨大な相談・苦情を耳にするが、それぞれの金融ADRで取り扱う事案が少ない。資料1参考(業界団体における相談・苦情・紛争の件数(平成15~19年度))において、紛争は預金が4件、保険が66件、投資サービスが317件となっている。消費生活センターでも金融分野の比率は高くなってきており、個別金融機関が扱う相談・苦情の総数からしても金融ADRで取り扱っている事例が基本的に少ない。

    2つ目として、度々この協議会で指摘をしてきたが、消費者の認知度が抜本的に改善されてこないという印象がある。東京1箇所だけ設けておいてはダメであり、アクセスしやすくするための工夫が必要。先ほど山本委員から紛争解決支援の利用を積極的に推めることをやるべきとの指摘があったが、その辺も欠けていると思う。相談・苦情解決に当たる人材の強化も重要。また、各金融機関をテーブルに着かせ、調査に協力させ、結果を尊重させる権限を持って、各金融機関に臨んでいないということを感じている。

    3番目の点が一番強調したいところだが、単純に困りごとの解決だけを図って欲しいということではない。苦情が少なくて良かったということではなく、事業者として金融サービスの改善、市場ルールの整備に活かす責務があり、それらの中に位置付けて金融ADRをどう考えるかを検討して頂きたい。平成17年度ディスカッションペーパー「金融ADR制度の比較法的考察-英国・豪州・韓国の制度を中心に-」が金融庁金融研究研修センターから出されており、英国、豪州、韓国においては、金融改革の一環として法整備を図っており、こういう金融サービス・市場ルールの国際的な整合化の観点から見ても、法的整備をして取組強化を図るべきだと思っており、私は行政にも責務があると考える。具体的には、既存制度の法制化、金融監督当局の関与、決定の拘束力、ADRの段階的手続、ADRに関するコスト負担、人材確保面での問題点ということが検討すべき項目として掲げられている。また、業界団体における業務の一環という捉え方ではなく、独立した自主規制機関に移行し、事業者としての責務を果たすべきで、その上で横断化・包括化を図るという道筋をたどって頂きたいと思う。業界団体の意見提出を見ると、業界団体の中で努力できるからやらせて頂きたいという趣旨だが、土田委員代理からも意見が出ていたが、業界団体はADRを業務の一環と認識しているが、それでは限界があり、そこを越えた金融ADRの果たすべき目的、狙いがあると思う。それから2つ目に、自主的取組みでも良いではないか、一生懸命頑張っている、中立性・公平性も確保するとの業界団体の意見だが、消費者から見ると業界団体の中にADR機関があることで、一歩引いてしまう感覚は拭いがたいものがある。独立性・実効性の確保の観点から、独立した自主規制機関に移行して、事業者としての責務を果たす道を辿ってほしいと私は思う。ただ、自主規制機関という言葉だが、今回の議論において、自主規制機関とは何なのかという思いがあり、自主規制機関を定義をした上で議論を深めていくことが必要。

    4番目は、金融政策だけでなく、消費者政策としての明確な位置付けが必要だと思う。冒頭大森委員も発言されたが、例えば情報通信分野でも、ADRの議論・検討が進められており、全体にADRをどうしていくべきかは大きな課題となっている。また、東京都の被害救済委員会の訴訟援助の話が出たが、私もこの委員会に所属していたので、少し補足すると、被害者の救済・援助がもともとの目的ではなく、事業者に結果の尊重をしてもらうことが目的で、結果の尊重が法的に位置付けられないので、この訴訟援助の仕組みを持ってきて、実質的に皆様が結果を尊重して頂くという制度設計の中で考えたものである点を補足したい。また、私としては、郵便局を含め、是非、金融機関横断的に金融ADRの整備にかかる議論を先に進めて頂きたい。

  • 井上委員今、いろいろな意見を伺った中では、私の意見は森委員の意見と一番近いと感じている。法的な位置づけやADRのイメージについては山本委員が仰ったことと重なるし、業界側では竹中委員の意見に比較的近いものを感じた。いずれにしても現在の状況はまずいと、現在のADRの状況をもっと強化しなくてはならないという点については異論は無いと思うが、強化の方法として自主規制機関化という方法とそれ以外の方法が挙げられているところ、自主規制機関化は必ずしも唯一の方法では無いと私自身は思っている。自主規制機関化に何か特色を見いだすとすれば、組織自体としての強化を図ることができる点と、石戸谷委員が指摘された販売・勧誘に関するルールメイキングとのセットで考えることができる点があろうかと思う。ただ、販売・勧誘のルールメイキングとセットで行うことについて、それが一番良いかどうかは、まだ検討の余地が残っている。例えば、認定投資者保護団体となることを義務付け、業者に何らかの認定投資者保護団体に参加することを義務付け、その認定の過程で手続応諾義務やあっせん案等の尊重義務を備えていることを求めることで、相当程度、法的裏付けを持ったADRが動くようになるはずである。そうなれば、ルールメイキングを持った自主規制機関にならなくても良いのではないかと思う。では、その2つのうち、どういう観点でADRの強化を議論すればいいかといえば、ルールに従った解決を一貫して重視するということであれば自主規制機関化に馴染むと思うが、少なくとも苦情解決・あっせんのレベル、つまり、多数・迅速な対応が必要になるようなレベルにおいては、必ずしもルールもしくは精緻な事実認定を重視する必要はない。ちょっと言葉は悪いかもしれないが、足して2で割るとか、足して2で割って色をつける、というくらいの迅速な解決を行い、情報の収集を通じてマーケティングに利用することも重視するのであれば、自主規制機関化とは違う形での強化もあると現時点では考えている。ただ、いずれの強化方法をとった場合でも、横断的機能の強化と中立化があわせて必要になると思う。横断的機能の強化方法として、本日の意見の中には、単なる窓口の連携という意見もあったが、窓口の連携にとどまるのではなく、窓口を何らかの形で統一団体化して、そこからのフィードバックを各業界団体が受ける、もしくは、業界団体の処理その他について、統一団体がフィードバックを受けるという形を考えていく方が、消費者から見てより中立的な窓口に見えやすいと思う。

    次に、そのあとの中立化の問題にもつながるが、窓口機能を持った横断的な団体が、傘下というのはちょっと変かもしれないが、各業界団体に対し、クオリティーコントロールのような役割を段々果たしていけるようになれば、行政による認定とも相まって一定のクオリティが確保されやすくなるのではないかと感じている。現実には、苦情を振り分けられた業界団体が専門性を持って問題を解決することは非常に重要だが、最終的には、業界団体における苦情解決支援・あっせん等のADR機能をもってしても解決できないものが少数ながら出てくるだろうと思われる。そこで、窓口を共通化するだけにとどまらず、先ほどの窓口団体のようなより中立的な機関が、こじれた案件をもう一度引き取って、より中立的な委員によって解決できるような紛争解決支援機能をあわせ持つことが出来れば、消費者から見てより安心感のある解決ができるのではないか。つまり、あっせんや苦情解決の段階では人的物的体制の観点から業界団体ADRの協力を仰がざるを得ないが、本当にそこでまとまらなければ、最後はより中立的なところが引き取ってくれるという安心感も併せてあったほうがいいと思う。ここは意見の分かれるところだと思うし、コストの問題も含めて、どう解決するのかは考えがまとまっていないが、その辺りのレベル(こじれにこじれた案件)までくると、ADRに対しては、金融の専門性よりは、中立性や紛争解決のプロという側面がより強く求められると思う。

  • 辻委員意見書の中で自主規制機関化は必要ないと申しあげさせて頂いたが、井上委員からも話があったが、私たちは現在、金融商品取引法に基づく認定投資者保護団体の認定を取得すべく準備をしており、更にそこに書いている要件だけでなく、あっせん手続への参加義務、あっせん案の受諾尊重義務も更に加重し、他の委員の意見書に金融庁の監督が必要という指摘もあったが、例えば、金融商品取引法第79条の16等で金融庁は報告を徴取すること、認定業務の実施の方法の改善等の必要な措置をとるべき旨を命令することができ、認定の取消しもできるので、これらを加重することによって、業者団体という形だが、今後は実効性を高めていけるのではないかと考えている。

    もう一点、土田委員代理から指摘のあった、独立性・中立性・公平性に疑義を持たざるを得ないという点については、内部組織ではあるが、消費者団体の代表2名、弁護士2名に入って頂き委員長は弁護士の方にやって頂く、あっせん委員5名で紛争解決を図っていくことにより、ある程度の独立性・中立性・公平性は保てるのではないかと思う。

  • 神作委員前回の意見に若干補足して発言させて頂きたい。まず一番重要なのは、形式ではなく実質であると考える。実質にはいろいろな論点あるが、とりわけ議論がまだ不足しているのは、コストと情報の問題であろう。利用者からはコスト・実費だけでなく、機会費用も含めて、コストが見合うかどうか、十分な情報に基づいて的確な行動がとれるか、という2点がADRの利用にあたり決定的に重要だと思う。紛争にも2種類のタイプがあり、販売・勧誘に起因する紛争は個別的・具体的な妥当性を追求できやすいタイプの紛争であるのに対し、約款の解釈等が問題になっているケースについては、約款の中での一貫性・整合性が問題になるため、統一性や専門性も重視される。したがって、ADRにおいても2つのタイプを分けて考える必要があるが、前者すなわち販売・勧誘に係るトラブルについては、先ほど井上委員が指摘されたとおり、整合性や専門性よりも時間が極めて重要である。短期間に解決できて、しかも、消費者・利用者から納得できる解決をするのに非常に適した紛争の類型だと思う。そのような観点からすると、販売・勧誘に起因する紛争については、業界団体がADRに関わるのは非常に適している、つまり、コストの面からしても情報の面からしても現場に近いので、むしろ業界団体がADRに深く関わることによって、消費者・利用者から支持が起きてくるのが当然なのではないかと思っている。それにもかかわらず、これまでの取組みに対して色々批判があることについては、コストと情報の点から更に地道な努力を要するということが示唆されているのではないかという気がしている。

    また、自主規制機関化については、前回の意見と同趣旨だが、やや形式から入っている議論のような気がしており、自主規制機関化には勿論プラスの面もあるが、諸刃の剣の側面もあり、場合によっては、消費者・利用者から見ると業界団体側寄りでかつ強大な権限をもっているということになり、中立性・公正性に疑念が出てくる。また、自主規制機関化したところで、自主規制の策定部門とADR部門とは分離せざるを得ないのではないかと推測しており、ここも形ではなく実質から議論をするべきである。まさに当協議会は、そういう面から仕事をしてきたはずであり、この方向で更に仕事を進めていく方向が考えられる。全国銀行協会からはこれまでよりも踏み込んだ提案がなされておりし、国民生活センターからも行政型ADRのお話もあり、多様なADRの中からいろいろな選択肢が出てくるのは、一つの望ましい方向ではないかと思う。

  • 高橋委員冒頭説明において、両論併記で書くという方針とのことなので、他団体委員から4ページの紛争処理支援の実効性に関して、書きぶりを変えてくれという意見要請があったが、金融ADRの結果の尊重義務が十分確保されていないというのは意見として申し上げているので、「のではないか」と変える必要は全くないと思う。各団体の意見で中小規模の団体からはADRを持つことのコストの問題が非常にたくさん出され、ある程度規模的な拡がりをもって業界横断的な範囲で構築していくという意見表明があったが、座長メモ案の4・5(6ページ)の統一化・包括化の点に関して、将来的にはという書きぶりになっているが、必ずしも自主規制機関化が先にあり、その後に統一化・包括化があるという整理でなくても良いと思う。小規模団体あるいは同業で一緒にやった方がメリットがあるところに関しては統一化・包括化という連携の形も早めに検討していく必要があるのではないか。

    それから、業界からも信頼されなければ有効に機能しない、利用者だけでなく業界にも中立公平性が必要という意見が前回及び今回出されているが、この点をどう読むかについて、少し頭を抱えている。今日、外国損害保険協会からは特定の会員の影響下にある業界団体が競合業者に対して拘束力ある認定を行うことが可能であっては困るという話があったが、この辺も含め業者にとっての信頼性は何なのかも今後詰めていく必要性があると思う。例えば、生命保険協会では10年前に損保系生保や外資の参入により、段々まとまりが無くなり、どこの意見でどういうふうに動いているのか、が私のような第三者から見て良く分からなくなった。協会長会社や資金の面は大手社が輪番制で担当しているが、会員が多岐にわたっている。最近かんぽ生命が入ったが、協会及び生命保険文化センターの消費者向けの資料を見ても余り簡保に配慮した対応をしてない。約款や商品性が全然違うものがあるにも関わらず、そういう苦情も今後受けることになるのかな、と想像するわけである。業界団体というものが金融ビッグバン以降の業界再編や新規参入の波の中で中身も変わってきていることを配慮した上で、業界団体の自主規制機関化でいいのかどうかということも検討していく必要があるのでないかと感じている。

  • 竹中委員高橋委員の仰るとおり、本当にいろいろな文化の会社が入ってきて実務においては難しい問題が出てきた。例えば、認定投資者保護団体に認定されたが、投資性のある保険一つとっても極めて難しいというのが我々の実感。外資系、損保系の参入の中、いろいろな文化・商品が出てきており、裁定審査会及び相談員にとっては、協会の会員である以上はお客様に対しての苦情・紛争は取扱わせて頂くという前提で日々勉強していくしかない、と思っている。そこの努力を省いてしまうと、業界内の自浄作用は見えてこなくなってしまう。そこは大切にしたいし努力を続けたいと思っている。

  • 原委員次回6月24日で最後なので、座長メモ案の第4金融ADRのあり方ということで書かれているが、理念、運営主体、中立性・公平性の確保、自主規制機関化、統一化・包括化と、組織体の話が主でまとめられている印象があるが、先ほど井上委員の発言のように、苦情・相談の窓口機能、相談・苦情の解決の部分、それから紛争になった場面での解決というふうに機能を横に分けた形での、あり方という項目もいるのではないかな、という印象がある。

  • 大森委員意見というよりは事実を2つ程、聞いていて感じたことをお話したい。業界団体が今まで自主ルールを作り鋭意取り組んできたという思いは、私が冒頭申し上げた消費者庁構想に対する各省庁の思いと同じだと思った。自主ルールどころか法律を作り、一生懸命主観的ではあっても執行してきた訳だが、いきなり今後は消費者庁に仕事を移してもらうという話に比べると今日の話はかなりマイルドな話なのではないか。それから、様々な自主ルールを作ってきたという話があったが、その自主ルールの内容が消費者保護上十分かという点については、自主ルールとは言いながら、行政・立法府が事実上どこまで強くプレッシャーをかけたかに依存しており、盗難通帳の自主ルールなどがその典型だと思う。その意味でADRについては、当協議会が8年間かけていたプレッシャーが余り強くなかったので、今現在こういう議論が行われていると感じている。

  • 岩原座長本日頂いた御議論を踏まえ、座長メモ案の修正を行い、次回協議会でその了承をお願いしたいと思う。

以上

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金融庁総務企画局企画課内 金融トラブル連絡調整協議会事務局
Tel 03-3506-6000(内線3682、3516、3647)

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