第4回金融トラブル連絡調整協議会議事要旨

1. 日時:

平成13年4月3日(火)14時00分~16時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館 共用第1特別会議室

3. 議題:

苦情・紛争処理事案のフォローアップについて

4. 議事内容

  • 委員異動の紹介があった。

  • 前回の協議会で設置することとした「苦情・紛争処理のモデルに関するワーキンググループ」での議論の経過について、ワーキンググループ進行役の山本委員より報告があった。

  • 「必要とされる苦情・紛争処理事案のフォローアップに関するアンケート」及び「苦情・紛争処理事案のフォローアップの現状に関するアンケート」の結果の概要について事務局より説明があったのち、質疑応答を行った。主な議論は以下の通り。

[「処理状況及び処理結果の把握」「苦情・紛争処理事案の解決の促進」「顧客に対する支援」について]

  • 苦情・紛争事案がADR機関間でたらい回しにされるのを防ぐため、最終的な責任の所在を明確化すべき。また、他の機関に苦情事案を取り次いだADR機関は、3ヶ月や4ヶ月といった期間を区切って、解決したかどうかの処理結果を把握しておく必要もある。

  • 苦情・紛争事案が移送された場合、当該事案の処理状況は、最初に苦情を取り次いだところが、随時消費者に確認をとること等により把握すべき。

  • 業界団体・自主規制機関が持つ苦情処理機能を苦情処理規則で明確化すべき。

  • たらい回しが起こる原因の1つとして、会員企業の消極的な姿勢が考えられるので、業界団体・自主規制機関の苦情処理規則において、会員企業が迅速、誠実に苦情処理を行うべき旨を明確化すべき。

  • 苦情処理手続にかけて処理すべきものが問合せとして処理され、解決が図られない事例がある。このため、例えば、電話で事案を受け付ける際に、ADR機関が当該事案を苦情として受け付けているのか、単に問い合わせとして扱っているのかを申出人が把握できるようにすべき。

  • 日本商品投資販売業協会では、過去に苦情が発生したことはないとの回答をしているが、「苦情」と「単なる相談」をどのように区別しているのか。

    • 日本商品投資販売業協会は商品ファンドに関する自主規制団体である。過去、当協会に寄せられた実際の相談の内容は、「商品先物を買わされて損が出ている。最初から商品先物と判っていたら購入しなかった。」というものであった。本件をよく調べてみると、顧客が実際購入したのは、商品先物ではなく商品ファンドであり、しかも顧客は、契約内容を理解した旨、サインしていた。かかる事情に基づき、協会事務局で説明を行った結果、顧客も納得した。こうした内容のものについて、協会では「苦情」ではなく、「相談」と考えている。尚、協会事務局はあくまで、「苦情・相談」の窓口であり、事務局で対応できない「苦情」が生じた場合は、顧問弁護士に処理を依頼する体制を整えている。いずれにせよ、過去、商品ファンド法に基づく、商品ファンドに関する苦情は一件もない。

  • 苦情として処理されるべき事案が相談として扱われることを防ぐためには、苦情処理担当部署の上席あるいは企画担当の者が相談記録をチェックすることが、方策の1つとして考えられる。上席あるいは企画担当は、苦情として処理されるべき事案が相談として扱われてしまうことは、その業界団体・自主規制機関の評価に関わる問題だという意識を持って相談記録をチェックすべき。

  • 顧客が何らかの不満を持って問い合わせてきた場合は、問題を広く捉え、一旦は苦情として取り扱うべきではないか。そのためには、業界団体・自主規制機関の体制の整備も重要。

  • 苦情だけでなく、相談についても類型別にデータを集積して、公表すべき。これにより、相談として取り扱った事案のうち、本来は苦情として処理すべきだったものの有無が明確になると考えられる。

  • 業界団体・自主規制機関間において、「苦情」「問い合わせ」「相談」等の用語について、共通の定義を定めておくべき。定義が定まっていないと、各業界団体・自主規制機関が苦情・紛争処理についてデータを公表したとしても、それぞれのデータは、業界団体・自主規制機関毎に意味が異なることになる。

  • 苦情の申出先が誤っている場合は、その苦情を処理すべき申出先に対する紹介状を作成した上で、事案を移送すべき。事案を引き受ける業界団体・自主規制機関がない場合は、行政型ADR(裁判外紛争処理)機関に移送するようにすべき。

  • 苦情を受け付けた場合は、申出人に対し、当該事案を苦情として受け付けた旨の書面を交付すべき。できれば、この書面のフォーマットは業界団体・自主規制機関間で統一されていることが望ましい。書面には処理経過を記載するようにしておき、仮にたらい回しの状況になったときは、最初に苦情を受け付けた団体から申出人に対し、裁判の利用等を指示するようにすべき。

  • 処理状況の把握についての回答結果を見ていると、会員企業に対して状況の聴取を行うとの回答は多いが、事案のたらい回しを防ぐためには、申出人に対して状況を聴取することも必要。

  • 顧客への支援としてPRが挙げられているが、銀行よろず相談所については、各銀行の窓口に銀行よろず相談所のパンフレットが置かれており、顧客の周知が進んでいるが、他の業界団体・自主規制機関はPR不足だと考えられる。生保業界、損保業界のように業界の規模が大きい場合は、業界団体・自主規制機関に何らかの苦情受付窓口を設けているだろうと顧客が考えることもできるが、規模の小さい業界の中には、苦情受付窓口があるかどうか顧客にとって不明なところもある。こうした窓口の存在を消費者により把握されることが必要である。

  • 金融商品販売法が施行されたことを受け、各金融機関も勧誘方針を策定・公表しているが、問い合わせ先の電話番号が記載されていたのは私が回った金融機関の中ではシティバンクだけであった。このように、問い合わせ先を明記しておくことも顧客への支援につながると考えられる。

  • 紛争処理費用の負担も顧客への支援の1つと考えられる。

[「苦情・紛争処理の評価」について]

  • 三菱自動車のリコール問題が起きたのは、リコールするかどうかの判断を内部だけで行っていたことが原因であり、このような問題の発生防止には第三者評価が有効。企業約450社で構成するACAP(消費者関連専門家会議)において、ACAP会員企業に対し、第三者評価の導入の是非についてアンケートを行ったが、約9割の企業から否定的な回答があった。第三者評価を行わせるというのは難しいとしても、処理結果を公表することも一種の第三者評価と考えられなくもないので、少なくとも処理結果の公表は行うべき。

  • 石油、家電、自動車関係のPLセンター等のように、業界型ADR機関の中には、処理結果を公表しているところもある。

  • 一般的に、あっせん、調停等の紛争処理手続は、外部の者が行うことにより、苦情処理手続の適否についても検証が行われることとなる。このため、苦情処理手続と紛争処理手続の両方を設けている業界団体・自主規制機関においては、第三者の関与があると言える。一方、苦情処理手続だけしか設けていない業界団体・自主規制機関においては、手続が全て内部だけで完結してしまう。したがって、苦情処理手続しか設けていない業界団体・自主規制機関においては、何らかの形で、第三者が関与する仕組みを設けるべき。

    • 紛争処理手続を設けている業界団体・自主規制機関においても、苦情処理手続から紛争処理手続に移行する事案の数は必ずしも多くないことから、第三者評価を行うことには意義がある。その方法として、それぞれの業界団体・自主規制機関の規模等、その事情に応じて第三者評価機関を設けるほか、あるいはこれに併せて、顧客満足度調査を行うことが有効だと考えられる。事案の公表に伴って生ずるプライバシーの問題については、事案を抽象化して公表することにより対応できると考えられる。

  • 家電関係のPLセンターにおいては、第三者が紛争処理手続にかかる前の案件のうち一部をチェックし、改善すべき点を指摘する等、中立性を高める工夫をしている。

  • 銀行協会では、各行の相談業務担当者の会合を開催し、お互いが抱える問題点について情報交換を行っているところであるが、このような、同じ業界内の他の事業者も第三者に含められるべきものと考える。

  • 全国銀行協会では外部有識者からなる「銀行よろず相談所運営懇談会」を設置しているが、外部から意見を出してもらうことで、全国銀行協会の行う苦情処理、相談業務に対する評価が得られるとともに、相談業務に当たっている職員への励みにもなるものと考えている。

[「苦情・紛争処理手続の改善」「苦情・紛争の再発防止」について]

  • 多くの企業において、苦情・紛争処理担当部署は重要視されておらず、予算、人材の獲得に苦労していると聞いている。苦情・紛争処理担当部署を企業トップ直属にする等、企業内での位置付けを高めることが、苦情・紛争処理手続の改善につながると考えられる。

    • 企業に本気で苦情・紛争処理に対応してもらうには、1つには金融商品販売法等により、違法、不当な行為があった場合のペナルティーを重くすることで、企業の認識を明確にすることが考えられる。もう1つの方法としては、苦情処理窓口が企業内でどのように位置付けられているか、また、苦情処理窓口が企業トップの監視下にあり、そこからの情報が経営方針にどのように反映されているかといった点を、行政当局が金融検査等により確認するということが考えられる。

  • 企業が破綻した場合等、非常事態における苦情処理体制を整えるべき。

    • 破綻時における顧客への対応は、個々の企業では手に余るものであり、業界全体として体制を整備する必要がある。

  • 企業によっては退職した人が苦情処理の窓口をしている場合もあると聞いているが、実際にはどのような人材が担当者として配置されているのか。年々複雑になっていく金融の仕組みに対応していくためにも、担当者のトレーニングは必要と考える。また、担当者がトレーニングされているか否かによっても苦情処理の仕方が大きく変わってくる。今までのアンケートではこの点について明確になっておらず、業界団体・自主規制機関から回答をいただきたい。

  • 「非会員の苦情への対応」はアンケートに対する回答の分類表においては大分類の下の「項目」に整理されているが、これは重要な問題であり、独立の大分類として整理した上で、別建てで議論すべき。

    • 非会員に対する苦情への対応についても、個々の企業だけでは対応しきれない。法律で業界団体・自主規制団体への強制加入を定めるのは1つの解決方法であるが、そのような法律がない場合、行政的な対応が行われるべき。場合によっては法的な手当てを行うことも必要ではないか。

    • 日本証券投資顧問業協会に申出が行われる苦情のほとんどは、非会員に対するものであり、そのような苦情については、申出人に対し、日本証券投資顧問業協会では対応できない理由を明らかにした上で、監督官庁を紹介している。

[「その他の苦情・紛争処理のフォローアップ」「フォローアップに係る体制」について]

  • 苦情処理窓口の明確化が必要。業界団体の苦情処理窓口だけでなく、会員企業の苦情処理窓口も明確化すべき。また、このような苦情相談窓口の所在が会員企業の営業窓口でも分かるようにしておく必要がある。

  • 業界団体・自主規制機関によって苦情・紛争処理体制に大きな差があり、ようやく窓口で相談を受け始めた状態にある団体から、全国銀行協会のように、苦情・紛争処理に第三者評価を導入している団体まで格差がある。各業界団体・自主規制機関には、苦情・紛争処理の体制を整備するにあたって、どこに困難な点があるのか教えていただきたい。

    • 日本証券投資顧問業協会では、「協会事務局内に苦情相談室を設置し、専任の担当者を配置している」と回答しているが、苦情相談の受付担当者とは別に、フォローアップ専任の担当者を置いているわけではない。

    • 苦情・紛争処理制度を濫用しようとする者へ対処する必要があることも考慮していただきたい。

    • 苦情・紛争処理制度の濫用を防ぐためにも、建前だけで議論するのではなく、苦情・紛争処理の実情を踏まえ、業界団体・自主規制団体から率直に問題点を指摘していただきたい。

    • 日本商品投資販売業協会では、「協会のマンパワーの点から、苦情処理担当の専任者をおく事はできない。」と回答しているが、商品ファンドの年間売上規模は、2000年度、1年間で48億円程度に過ぎないこともあり、事務局の人員も、元々6人しか置けなかったところが、最近、さらに5人に減り、それぞれが複数の業務を兼務しているのが実情である。このため、個々の会員企業に対し、勧誘方針を策定・公表するにあたり、電話番号等を明記して窓口を明らかにする等、責任を持って苦情処理を行うよう指導している。

  • 資料の公表について了承された。

  • 次回の協議会の進め方について、事前に委員に対して実績の公表のあり方についてアンケートを実施するとともに、各業界団体・自主規制機関における実績の公表状況をまとめた資料を作成し、これらの結果をまとめた資料を基に議論を行う旨、了承された。

  • 続いて、裁判外紛争処理制度の改善に向けた取り組みについて、信託協会、全国銀行協会、投資信託協会、日本証券業協会、農協系統金融機関、不動産シンジケーション協議会から報告があった。

  • 最後に、投資信託協会から、第3回のアンケート結果の修正について申出があり、了承された。

問い合わせ先

総務企画局企画課
電話 03-3506-6000 (内線 3517)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。

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