第8回金融トラブル連絡調整協議会議事要旨

1. 日時:

平成13年11月19日(月)10時00分~11時50分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館 金融庁特別会議室

3. 議題:

苦情・紛争処理のモデルの中間試案について

4. 議事内容

  • 資料1「金融分野の業界団体・自主規制機関における苦情・紛争処理のモデル(中間試案)」の基本的な考え方等に山本委員より説明があった。

  • 資料1「金融分野の業界団体・自主規制機関における苦情・紛争処理のモデル(中間試案)」、資料2「中間試案に対する委員からの意見(対照表)」及び資料3「苦情・紛争処理のモデル等に対する意見」に沿って、両論併記等となっている個所及び委員から提出された意見の概要について事務局より説明があった。

    • このモデルは基本的には完成度の高いものと考えている。ただし、ここに参加している各団体の中には当協会のように小さな規模のものからかなり大きいものまであることから、モデルの中から、特に参考とすべきものを取り入れてはどうかと考えている。これは別に骨抜きにしようということではなく、物理的な課題を含むものまで強制させられるとモデルを受け入れることが困難となるのではないかと思うからである。モデルの採用方法は各団体の判断とさせていただきたいとの考えから、意見を提出させていただいた。

    • 先ほど山本進行役からご説明いただいたように、この苦情・紛争処理のモデルは、前文の第3段落に書いている性格のものだから、強制すべきものではない。このため、委員の御指摘は、当然のことを言っていただいているのではないか。

    • 「消費者への周知」と「当事者の選択権の保障」の二点についてだが、「消費者への周知」に関する業界団体の意見は、必ずしも機関の相談窓口を表示する必要はなく個別の企業が責任をもって苦情処理に当たるべきとのことから当該企業の相談窓口のみを明示すればいいという提案だが、これは危惧をしている。この協議会で、1年ぐらい議論を進めてきてあらゆる仕組みの改善をやっているが、現状を金融機関の店頭で見る限り、この1年間それほどの変化を感じていない。その中で、どれほどの企業が相談窓口を設置したり、相談窓口で実際に苦情相談を受ける体制の整備に着手できるかについて大変疑問に思っている。このため、現状において、苦情紛争処理機関の窓口を記載しないという提案は3年か5年早い話ではないか。だから、消費者への周知はいろいろな形で徹底をして欲しいし、個別の企業の相談窓口も、機関の相談窓口も両方とも周知すべきと考えている。

      それから二つ目が「当事者の選択権の保障」についてだが、これも、この協議会では金融の分野だけで物事を見がちだが、ADRの議論は社会全体で進んでいるところである。つい先日に開催された全国消費者大会でもADRに関する分科会を設けて議論をしたが、話をしていて非常に印象的だったのは、消費者が自由に多様な選択肢から選ぶことができるようにすべきということと、それから、ここでの議論で想定しているものがミニ裁判に類似した形態で、できるだけ公正中立なメンバーで組織した委員により、私たち消費者の苦情を預けて解決をしてもらうという形を採っているが、実際には消費者は自力による解決を望んでおり、苦情・紛争処理機関からは自ら解決をする方法に関するアドバイスを頂きたいと考えておられる方もおられるということだった。こうしたことを実現するための前提としても当事者の選択権の保障が必要と考えている。そうでないと、こうしてモデルを策定し、さらにいろんな仕組みを作って発表しても、金融機関のADRが評価されることはないと思っているので、是非真剣に考えて頂きたいと思う。

    • 消費者としては利用しやすいものでないと意味がないものになってしまう。だから、基本的に消費者に配布される書類に苦情相談窓口の連絡先を記載するということは必要だと思う。

    • 結果的に原委員、関根委員代理が言っている事は正論だと思っており、私達が反論をしても平行線だとは思う。ただ、損保の現実の特性を言わせてもらうと、損保業界にはいろいろな相談センターがあり、また、交通事故の紛争処理センターが関連組織として存在しており、約9万件の苦情相談があるが、これらの相談の半数以上が契約者以外からのものであるという実情もある。このため、契約者の方に周知徹底しただけでは必ずしも十分ではないという問題も抱えているのでこういった主張をさせていただいている。それ以外は、業界団体としてはこういった事情があるということをご理解頂きたいという意見である。

    • 各団体で扱っている商品等の内容等が多岐にわたることや規模の違い等があるため、9ページの「消費者への周知」の具体的内容の1と2は広い範囲で規定した上で、各団体や業者が適切と考える方向で周知に努めればよいと思う。私達の業界で言えば、苦情処理規則で定めて各社の苦情担当責任者のリストを作っているので、そうした方法を活用することや、消費者が認識しやすい手段として金融商品販売法の販売方針に苦情相談窓口を必ず記入するよう各社を指導してきたし、実行して頂いていると思う。商品ファンドの場合、規模が小さいことや、実際には深刻な苦情がないことから、今のところ充分対応できると思っているし、将来対応できないような苦情とかいろいろ出てきた段階で作って頂いたモデル等、これは辞典みたいな非常に立派なものなので、これは、こうしたところは取り入れたいといったことで議論を重ねて改善していけばいいと思う。3に書いている「約款などの消費者に対して交付する書面に自社及び機関の苦情相談窓口の連絡先を記載することにより、消費者が容易に苦情相談窓口を知り得るように努める。」とあるが、私の意見としては、この具体的内容の1、2で、非常に広範に消費者に認知の手段を提示しているし、後は各業界とか団体でこの中で、もっと独自の方向で決める選択の余地を残して頂きたいので、具体的内容の3がここまで広いのは行き過ぎではないか。

    • 消費者への周知徹底に関する川口委員の意見で挙げた理由では、約款は投資家が知るべき基本事項や投資家に対する約束事が記載されているものだから連絡先を書くことはなじまないと述べられているが、連絡先を約束事として記載することによって周知徹底が逆に図られると私は考える。苦情の有無などいろいろと意見が出ているが、苦情の有無に関わらず、窓口を設けているならば必ず配布するものに記載することが周知になると考える。

    • これまでのご意見が、苦情相談窓口の連絡先が(1)約款の一部に記載されることに対する抵抗感での発言なのか、それとも(2)約款等の中ではなくても個別に契約者の相手方に渡る書面に記載することがやりすぎではないか、あるいは(3)別の意図よるもののうちのいずれなのか。久保田委員のお話は、どちらかというと最初は企業で処理して、よっぽど困ったら協会に誘導すればよいとも読めるが、そこが明確にならないと、同じことを話しているのかどうかもよく分からないが。

    • 私の意見は、金融商品の場合、個々に性格が違うから、約款や個々の契約書に全部書かなければいけないとするのは行き過ぎではないかと思っている。先ほど消費者に対する周知に関しては、金融商品販売法で各社販売方針を掲示することが義務付けられているので、その販売方針の中に、「苦情等が起きたときはこちらにご相談ください」と各営業所の窓口で表記してあるはずであり、そうするようにこちらも指導している。それから、パンフレット等や金融庁のホームページも含めて、苦情・相談等があったときは協会のこれこれにご相談下さいと記載しているので、そういった全体的な処理で消費者は分かると思う。このため、個々の取引についてまで、窓口の連絡先を記載することはどうかと思う。

    • 約款等の消費者に交付する書面に苦情相談窓口の連絡先を記載することがそれほどコストのかかるものではないと思う。だから、ここで問題にされているのは、コストがかかるというよりは、あまり広く周知され過ぎることへの懸念か。9ページの具体的内容の3のペンディング部分の前の本文までの部分も各会員にこういう形で、苦情相談窓口を広く周知するように協力してくださいということはすでに言っているわけだが、これに加えて個々の契約書に記載すると知られすぎるということか。あるいは有吉委員がご指摘になっている契約書なり約款等への記載に何らかの抵抗感があるのか、そのあたりのどこに反対が拠っているのか、ちょっと御説明頂ければと思うが。

    • 当方の意見は、資料2の9ページの意見で(1)、(2)、(3)と書いているものが優先順位である。まずは各保険会社が苦情を解決するのが第一義であり、その苦情が解決しない場合に損保協会に来て、損保協会の中でも、必要があれば調停委員会に諮るという流れになっている。このため、その流れを変えなくともうまく機能すると考えている。具体的内容の3については、会員は既にあらゆる手段で、自社の相談窓口を周知することのコンセンサスを業界の中で得ているので、問題はないと思っている。むしろADR機関が必要以上に前面に出ることによって窓口が混乱をするのではという意見とご理解頂きたい。

    • 「消費者への周知」の具体的内容の3の本文、ペンディングでない部分でも、そういう形でADR機関の苦情窓口を顧客に周知するような努力を各会員にしてもらうということはいいのか。

    • 最近私達は調停委員会の機能を活性化すべく手当てをしたところであり、このことを各保険会社はあらゆる場を通じてPRしている。ただし、この3は、コストはあまりかからないという指摘もあったが、私共の契約の特性から言うと、非常にコストがかかってくるのではないかと考えている。また、苦情等があればすぐADR機関の窓口に行くのは、ADRのあり方の問題に関わってくると思うが、まだ現在の段階では、積極的にPRできような段階にはないのではないかという印象を受けている。

    • 11月10日、11日に「金融トラブルなんでも110番」を開設して、全国6支部で相談を受け付けたところ、573件の相談が寄せられた。まだ完全には分析をしていないが、その内容を見ると、意見に書かれているように、消費者の方はまずは自分が契約をした会社に対して相談をしたり、苦情を申し立てている。その段階で頓挫して解決がつかないのでどうしたらいいかとの相談が多くあった。このため、消費者に交付される書類に業界の苦情相談窓口の連絡先が書いてあれば、私達の110番に連絡しなくても、行政の相談窓口に連絡をしなくても、苦情処理機関やの紛争処理機関に相談できると思う。今は民間の中できちんと処理をしていく時代なので、皆様、これだけやろうという熱意でお集まりなのだから、そのへんのところは書いていただいたほうが、金融機関がこういう形で苦情を処理して行くという姿勢がより表されるのではないか。

    • 金融審でそもそもADRの議論が始まったのは、個社では解決できないものをどう解決するかという問題意識に基いていることを確認する必要があると思う。各業態ごとに固有の事情があると思うが、周知の方法及び程度に関してはそれぞれの機関が工夫すればよいことと思う。ただ、現状を見たときに、「消費者への周知」の具体的内容の1、2もできていない状況の中では、3の規定を置かざるをえない状況にあると思う。実際にホームページ等をいろいろな金融機関が拡充しており、ごく一部の団体は非常に積極的に消費者が窓口の存在をすぐ分かるようになっているし、規則まで読めるようになっている。ところが、今回ご意見を頂いている三つの協会に関しては、ホームページを開いても、調査会とか審査会の存在に関して消費者が知ることがほとんどできない仕組みになって、大変消極的な姿勢だと思う。せっかく4月から生保協会、損保協会ともに新しい紛争処理規則を策定し制度をスタートしたのに全く周知していない状況である。証券業協会の場合、会員証券会社が販売した投資信託に関する苦情はこちらで受け付けるが、銀行、生保、損保が販売した投資信託に関しては受け付けないという非常に複雑な仕組みになっているが、それはホームページを見ても全く分からない。こうしたことは、電話すれば担当者が教えてくれるが、そうでないと一般の消費者は分からない状態にある。だから、冒頭に原委員が述べたように、消費者に確実に渡る書類の中に何らかの表記がされないと他の機関の方に苦情がどんどん流れていく状況は変わらないと思う。コストの問題も言われたが、保険会社の約款にせよ、投信の目論見書等にせよ、小さな文字で一杯書いているが、残念ながら消費者を守る方にはエネルギーを使っていないので、コストの問題としてでなく、姿勢の問題として、前向きな姿勢を示していただくことが、それぞれの業の発展に有効なのではないか。だから、バックに業界のADRがあることをマーク化なりして、そのマークを別の手段で告知してもらえれば、BLマークのように一般の方に認知されるわけだから、そういう努力をして頂きたいと思う。

    • 最初の議論で出たとおり、このモデルは、各業界がこれを踏まえた取組みを期待するものであり、強制する性格のものではない。苦情相談窓口の連絡窓口を記載することが本来理想と思うが、モデルを最終的にまとめるときにどういう形にするかは、協議会の皆さんの広いご承認が必要だから、もう一度ワーキンググループで練っていくことにしたいと思う。

    • 10ページに関する意見として、「当事者の選択権の保障」の項目はもっと上の方にという提案をした。それから、二つ目の意見では、別案で書かれていることが委員の名簿の公開だけとなっていて、選択権の保障がなぜ別案で落ちた形で提示をされたが疑問だったの意見を出しておいた。そうしたら、業界の方からのご意見が、選択権の保障をあまり認めたくないような意見が並んでいたので、やはりこれは大切だということを申し上げたい。もう一つ、別案の扱いだが、最終的にこれをモデルとして決定するときに、別案という形がついたもので確定するのか、それともどちらかに統一した形で確定するのかも分からなかったのだが。

      • これからの議論次第だろうが、できれば別案がない形で出すほうが形として美しいし、有益性も高まるとは思う。しかし、どうしても意見が一致しない問題が残った場合、あるいはものの性格によっては場合によって分けた方がいい場合には別案が残ることもありうる。

    • ADRで委員の名前は公表しているところもあるのか。

      • 簡易保険の審査会については、現在郵政審議会の方に統合されて改組されていて、委員の名前は公表されている。ただし分科会の内容は非公表となっている。

    • 委員名の公表に伴い当該個人に不当な圧力がかかるというのは実際懸念されるのか。

      • 過去の事例では暴力団関係者の示談介入等で、こういった方々に圧力としてかかるケースが皆無とは言いきれないと思っている。

    • 金融庁のホームページに全部の各業界団体や業者側の窓口等の一覧できるよう掲載しているので、そのホームページに参照してもらい、そこからさらに問い合わせていただくことでいいと思う。委員名まで細かく公開してしまうと、かえって消費者にとって分かりにくくなる。また、消費者も個々の案件で相談したいのだから、まず窓口を紹介することがむしろ消費者にとって有効であり便利ではないかと思うが。あと、協会のパンフレットとホームページに苦情・相談があったときは機関の方にも電話して頂いてもいいとしており、各会社の場合は、金融商品販売法の販売方針に相談窓口を明記しておけば、委員名の公開まで行う必要はないのでは。

    • 今の話は一般的な形で公開することは必ずしも好ましくないが、実際の紛争が起こって、窓口等に問い合わせた場合には委員名を教えることは差し支えないと言う理解でいいのか。そうすると委員に対してある程度圧力がかかることはあり得る。

    • いろいろな消費者団体や弁護士の研究グループ等が金融商品販売法の勧誘方針を集めて分析しているが、勧誘方針の中に苦情受付窓口を記載しているものは非常に少ない。だから、勧誘方針に苦情相談窓口を記載しているというのは事実誤認である。それから、利用する手続の選択に当たっては、申立先が誠実に対応してことも大切なことであるが、あっせん案等の判断を行う人が分からないと申し立てるかどうかは決められない。弁護士が委員といっても、調べてみたら業界寄りの弁護士ばかりだったのでは、これはもう申立を止めておこうとになる。このため、名前なしでもどういう人かが分かるようにしてもらわないと実務的に機能しないと思う。ある段階から名前が分かるのであれば不当な圧力云々というのは全然意味がないので、はじめから出してしまった方がいいと思うし、そういう場合には毅然として対応する以外にはないと思う。

    • 4ページの守秘義務のところだが、現実問題として、こういう形で秘密を漏らしてはならないという書きぶりは少し厳しいのではないか。私達の苦情相談窓口では苦情相談専従の担当者がおらず兼職になっているので、こうした形で守秘義務を規定することは難しいのではないか。もう一点は14ページの中立性・専門性の担保という表現あり、一定の独立性のある組織とすることも留意すべき点で書いてあるが、私達の相談所で見ると、会員は協会を会員の利益代表機関と考えており、現実問題としては、お客様も業界ADRについては中立性専門性をどこまで要求しているのかよく分からないので、ご議論頂きたい。苦情を持ちこむお客様からすると、わかりやすく親しみやすい苦情相談の持ち込みがいいわけであるが、その方々が専門性・中立性を規則に明記するだけで本当に担保できるのか非常に気になるところである。

    • 守秘義務の問題で書き振りが厳しすぎるという御指摘だが、一体どれぐらいの書き振りなら納得できるのか。それとも、そもそも守秘義務は馴染まないと考えているのか。

    • 守秘義務は絶対に必要だと思うが、現実問題として、我々の業界だと専従ではなく兼職であり、なおかつ紹介して頂いたお客様からの電話に対して担当ではない者も応答できるようになっている。そうでないとお客様の苦情が多い場合には対応できないからだが、専従ではない又は兼職の人に守秘義務はどこまで負わせるかというとなかなか難しく、守秘義務を厳密にすると専従職員を雇わないといけなくなる。そこまでの予算が取れるのかと言うと現実問題として難しいので、どうかと思う。あくまでこれは理想だからというのであれば、実効あるものにはならないので、その辺はどう考えているのかをお聞きしたい。

    • 守秘義務に関する議論は、協議会の議論とは別に個人情報保護法や個人信用情報保護法の議論において、業務等で知り得た個人情報には守秘義務がかかる方向にあるので、それは兼務や一般職だからという話ではなく、業務を担当している人は必ず守らなければならないと整理できると思う。PLセンターや東京都の被害救済委員会の委員をしているが、必ず案件にかかる前に、守秘義務に関しての書面を交わしてから処理に入るので、他のADRの機関と比較しても当然守秘義務はかかってくると思う。

    • 今の話で、守秘義務を必ず守らなければならないとなると受けられないとの話だったが、商品投資販売業協会では、守秘義務を自主規制規則集に入れていることもあり、精神論として入れておいた方がいいと思う。これは一つの参考にしかならないと思うが、当協会の自主規制規則では、その範囲について、「苦情の解決に関する事項に関し、その職務上知ることができた秘密を正当な理由なく他に漏らしてはならないものとする」としている。これはあくまで参考に過ぎないが、行き過ぎということであれば、このような制限事項をつけて入れておいた方がよいのではないか。

    • 14ページの中立性・専門性について明記するとあるのはどういう趣旨なのか。

      • 明記する記述は、その具体的な書き振りは特定しないが、苦情処理機関が中立的・専門的なものであることとイコールとしてであるが、会員企業から独立したものであることをを明らかにするための規定を設けるという趣旨である。また、具体的内容の3では、それを担保する具体的な仕組み、外部評価のしくみが例示されているが、そのような具体的に中立性・専門性を担保するような措置について考慮することを規定すべきという趣旨である。

    • 要するに業界団体というのはそういうような業界の利益ということも最優先した形でできているわけであって、今のような玉虫色の言い振りでどこまで一定の独立性なり、中立的・専門的な組織というものをどういうふうに理解するのか、これはあくまで理想だからいいというのならいいのだが、もう少し言ってくれないとよく分からない。

    • 確かに業界団体はまさに会員企業のためにあるものであって、会員企業による会員企業のための業界団体であろうと思うが、ただ、会員企業のために業界団体が活動する中での苦情紛争処理に関することは、むしろ会員企業のためにも、一定の中立性・専門性は必要だということを宣言することがこの規定の趣旨だと思う。最初からADR機関が会員企業による会員企業のためのADRであると宣言したのではそれこそ誰も相談には来ない。だから、お客さんに来ていただいて、ADRとしての役割を果たすためには、例え会員企業のためにある業界団体が作ったものであっても、そこには一定の専門性、中立性がないと存在意義がないため、そのことを宣言したいという趣旨の規定ではないか。

    • この協議会におけるADRの議論は、金融審議会のときに業界団体の苦情紛争処理では不十分ではないかとの議論が多くあったが、業界側の反対が非常に強く、イギリスのような第三者機関を設立することができないので、業界団体が自主規制的に動くことを前提にして始まっていることをご理解頂きたいと思う。だから、消費者側からすると「中立性が確保できるできない」ではなく、「して頂く」という要望である。今、苦情対応の根拠規定を各業法に持っている団体は六つしかないが、根拠規定がないからできないというのであれば、そうした意見をここで出して頂きたいと思うがどうか。

    • 中立性・専門性という言葉をモデルの中にいれるかどうかよりもむしろ実質的にそうした役割を果たせるような、個々の規定を設ける方が大事だと思うが、中立性・専門性という言葉を入れることによって、外部から分かってもらるとともに、あるいは自らを律していく一つの糧にしたいという趣旨だろう。確かに実態は全然中立的でも専門的でもないのに、こうしたことを書くのはかえってまずいと思うが。

    • ワーキンググループでも結論が出ておらず、他の協議会委員からの意見も頂いておいた方がいいかと思うのが、苦情処理段階での解決案や紛争処理段階でのあっせん案等の尊重義務である。苦情処理規則では、業態によって紛争処理機関を持っていないところがあるからということで、括弧書きでの尊重義務になっている。紛争処理規則では、あっせん案等の受諾義務についても企業名の公表のあり方とも併せて検討することとなっていた。特に企業名の公表のところでは紛争の概要と最終案と受諾しない理由を公表することになっているので、尊重義務であっても充分受諾義務的なところが出てくると思われるが、ワーキンググループに所属していない団体の方はこのあたりどのようにお考えか。私は紛争処理規則の担当だったが、全く両論に分かれてしまうということで、両方の形を提案してワーキンググループに上げたが、ワーキンググループでもここは結論がはっきりでていなくて、案1と案2の両論を提示しているところにとどまっている。これに次の公表がどう関わるかということと、それから、もう一つが最終的には措置勧告も公表するとなっていたので、そこまで含めて、この案1、案2をどうするのか。私はもちろん案1で話を進めてきたが、業界の方は案2を推された。

    • 私は苦情処理のところを担当しており、苦情処理における解決案の尊重義務は苦労したところである。なぜなら、苦情処理の段階で解決しないものがその後の紛争処理の段階に移行するかどうかの問題があるとともに、モデル全体が苦情と紛争という二つのプロセスで作り上げられているため、苦情処理段階での解決案の尊重義務を設ける必要ないという話もあり、私もむしろそのほうがすっきりするのかという気持ちもある。紛争処理手続がない団体の場合、苦情処理で解決できないものについては他のADRに申し立てるか若しくは裁判、調停を選択することとなるのでしょうがないと割り切るか、又は苦情・紛争という二つのプロセスを持った手続を設けるかのどちらかとなり、そう割り切れば、この括弧書きの尊重義務はそもそも設ける必要もないこととなる。しかし、業界側の委員の方々とも議論して、直ちに紛争処理手続の設置が困難という団体があった時に、裁判しかないとか他のADRに行くようにと言う前になお、その機関内で若干の努力を経て解決が可能と見られる部分について、機関の方が解決案を提示して、これを尊重して解決できる部分があることから、いわば苦肉の策でもある。だから、ここはいらないとの議論もあるだろう。また、ここから議論をスタートした上で、苦情処理段階だから尊重義務に留めるということにもなる。だからそこは紛争処理段階とバランスがとれてなくても構わないというふうに思っている。

    • 精神規定で言うよりは具体的な規定を入れる方が大事との考えからは紛争処理手続におけるあっせん案等の受諾義務は案1でも案2でもよくて、むしろ大事なのは第2項の企業名等の公表の方だということになると思うが。

    • おっしゃるように案1、案2はどうでもよくて、2番がきちんと担保していればと思う。

    • 森委員の公表の部分についてのご意見だが、基本的には企業名の公表は有効だと思われるとの評価があり、ただ、その具体的な方法は各業態の特性に鑑み、紛争処理機関で個別に定める必要があるとことである。しかし、この意見の「各業態の特性に鑑み」という部分がよくわからないが、これは具体的に言えば、どのようなことか。

      • 生保協会さんも共通かもしれないが、当方の紛争には保険金の支払いに関する紛争が多く、事実確認が非常に困難な場合とか、判断が難しい部分とか、契約締結時の言った言わないというケースが多いので、一律の企業名の公表となると手続に応じないことが非常に危惧されることと、さらに保険金詐欺という問題があって、モラルリスクが介在しているころを考えると企業名の公表には慎重な取扱いをお願いしたいというのが考え方である。

    • 留意すべき点で、「裁判を受ける権利」との関係をどのように考えるかということが書かれているが、将来裁判となる可能性があることを前提とすると、一方的に概要とか会員企業が受諾しなかった理由を公表した場合に、支障が生じないだろうかということも考えられることから、公表するにしても当事者名は非公開とか、概要、理由は、その内容をある程度定型化するなど、あまり具体的な内容には踏み込まないよう留意する必要があるのではないか。

    • 正当な理由があれば胸を張って拒絶するのが筋で、もしくは文句があるなら裁判の場ではっきり白黒つけましょうと、それは当然そういうことがあっていい。

    • 全体にまたがる部分だが、苦情や紛争の「処理」という言葉は、どうも業界寄りの人間が、何かわずらわしいことを右から左に機械的にやるというニュアンスが出てしまう。紛争は「処理」という言葉が馴染むのかもしれないが、苦情には「処理」という言葉は非常に冷たい響きと受け止められている部分がある。私達の中で議論をしているが、「処理」という言葉を別な言葉、例えば、どこまで具体的に違うか分からないが、「苦情対応規則」といった言葉が考えられる。「処理」という言葉を使った方がなじむ部分と「処理」という言葉が少し気をつけて使ったほうがいい部分とがあるので、我々の今のルールも若干見直しをしているが、この辺は単に言葉の問題かもしれないし、その言葉が持つ消費者側の方の受け止め方ということかもしれないが、少し、苦情と紛争の意味が違うという点から言えば、「処理」という言葉の使い方も、もう少し神経を使った方がいいのかなというような気がしている。

    • 52ページの原委員からの御意見で費用に関わる部分だが、モデルではあっせん・調停に係る費用が無料だというだけだが、全銀協の場合は弁護士会仲裁センターにお願いしているが、実際契約しているのは東京、大阪、名古屋だけであり、東京の場合は関東一円の銀行協会に申し立てられた案件を担当している。こうしたこともあり、交通費等の自己負担ははっきりと告げる必要がある事であって、留意すべき点だと一段ランクが下がるのではないか。

      • 原則の中に「簡易・迅速・低廉」ということが入っていて、それでこの低廉の部分を生かそうと思うと、原則に無料と書くべきであり、「ただし」以降が留意すべき点又は細則的なものであり、第何条とかと書かれる大きい項目ではないのではということを言いたかった。だから、特に留意すべき点のところに入るのが適当ということではなくて、細則的なところというのが本来の私の意見である。

    • 先ほど苦情という処理が適切であるかどうかという議論があったわけであるが、私達の場合を言うと業者側には苦情と言って、相談者側については相談対応という表現をしているが、その方が柔らかくて受入れがいいのではないか。

  • 事前に各委員から提出された意見及び今回の協議会の議論を踏まえ、再度ワーキンググループにおいてモデルの検討作業を行うこととされた。

  • 資料の公表について了承された。

  • 苦情紛争処理の改善のための今後の取り組みをとりまとめることについて了承された。

  • 次回協議会においては今後の取り組みについての論点メモを基に議論することとなった。

  • 裁判外紛争処理制度の改善に向けた取り組みについて、全国銀行協会、投資信託協会及び日本証券業協会から報告があった。

問い合わせ先

総務企画局企画課
電話03-3506-6000(内線3517)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る