第22回金融トラブル連絡調整協議会議事要旨

1.日時:

平成15年9月9日(火)10時00分~12時00分

2.場所:

中央合同庁舎4号館 金融庁特別会議室AB

3.議題:

公的機関等との連携等

4.議事内容

公的機関との連携について

  • 将来の消費者行政のあり方や苦情・紛争処理における公的機関と業界団体の関係について、幸田委員より資料1を用いて説明があった。

  • 続いて、東京都消費生活部八木調整担当課長より資料2を用いて説明があった。

    • 東京都のご説明について3点質問したい。1つ目は、業界型ADRとの共存といわれているが、これまでは消費者センターの相談・苦情を通らなければ被害救済委員会に上げられなかったと思うが、例えば、業界ADRで不調で終わったものも被害救済委員会で取扱えるようになるという理解で良いか。2つ目は、処理が難しいが専門的な情報があれば解決できる場合、業界団体は資料提供に応じるか。3つ目は、東京都は地方自治体の中ではトップランナーであり、業界ADRや国民生活センターなどと機動的に結びついた活動ができると思うが、全国的に見ると地域間格差が大きく、東京都の活動やノウハウを地域の消費者相談、金融トラブル解決のために生かす仕組みを別途考えておられるのか。

    • 1つ目の質問について、被害救済を直接できるかと言えば、相談前置でないと具体的内容がわからない。移送される場合でも、もう一度ヒアリングを行わなければ、公益性の有無等の判断はできない。我々としてもできるだけ機関間連携を図りたい。現状でも連携を図っている機関もあるが、相談の中でできるだけこじれないうちに、前処理の段階で他機関を紹介している。

    • 質問を補足すると、他機関で解決ができなかった案件を直接被害救済委員会に持ち込むのではなく、センターの相談窓口に持ち込む場合に取り上げるか否かということ。最終的に委員会に行くかどうかは別だが、一度業界型ADRで一定の判断が出ているものを、再度同じ案件を取り上げるかどうかということである。

    • 可能だと思うが、相談の現場としては、やはり業界ADRで判断が出た案件は、そちらの方が専門家であり、その判断をできるだけ尊重することになると思う。ただ、その後の段階として裁判というものも出てこようかと思われるので、一概にあれだからダメ、これだから良いとは言えない。個々具体的な判断となる。既にこじれている場合は、なかなかうまい解決方法はないのではないか。

    • 被害救済委員会であるが、答申の考え方としては、都の委員会であって、都民にとって公益性の高いものを取上げていくという考え方であり、やはり相談は前置する形になる。民間であっせんしても上手くいかなかったから対応しないということにはならない。連携を図っていく際に、情報交換と合わせて考慮していくことだと思う。民間の相談機関と情報を共有化していく中で、被害救済委員会に取上げるのが適当というものが出てくるかもしれず、柔軟に対応していくべきということである。

    • 2つ目の質問については、資料2(参考)に示しているように、専門8分野を設けて業界との情報交換や当方への要望を聞いている。金融関係についても、「金融・保険」として専門分野を立ち上げている。他機関紹介の例を見れば、生命保険協会であれば平成12年度に81件あったものが、平成14年度は15件、日本損害保険協会であれば32件が14件、銀行協会であれば36件が9件となっている。これは、いわゆる金融不安の影響が拭われたこともあると思われるが、我々の方もさまざまな情報の提供を頂いて専門分野の活動を強化している。それと同時に、市区町村も含めて最近の相談案件の特徴まとめた実務メモを提供している。そういう活動によって我々のレベルアップが図られており、件数も減ってきたのかなと考えている。従って、情報を頂きたいということもあるし、プライバシーに配慮しつつ我々からも情報を提供していきたい。情報の相互交流は重要なファクターだと考えている。

    • そうすると、東京都から金融関係の業界団体に対して今後何か要望があれば指摘していただきたい。

    • 私たちとしては、他機関紹介した時に、その後の処理がどうなったのかということを教えて欲しい。プライバシーから何から何まで全て教えろというのではない。結果がどうなったのか、どういう根拠でそうしたのか、その辺を情報として頂ければ非常に参考となると考えている。

    • それに対して業界団体側から何かご意見等はないか。あるいは、業界団体からのご要望はどうか。件数として金融関係で多いのは何か。

    • 今多いのは為替証拠金取引である。これは、業法も規制もない。この協議会とは関係ないが、いわゆる金融商品だと思うので扱いをどうすれば良いのかというのが今後の課題である。

    • 処理の結果、その根拠について説明が欲しいとの要望について業界から何かないか。提供できない事情等いかがか。

    • 業界ではなく恐縮だが、東京都の消費生活対策審議会の委員もしており、資料2の都の答申の作成にかかわっており補足をさせて頂きたい。答申の参考資料32、33ページに、事業団体相談・ADR機関及び企業相談窓口に対するヒアリング結果を掲載しているが、「都への要望」の中に「都から相談を回された場合、解決の方針や内容について、要望や意見がついてくると困るし、下請け機関的なやり方は困る。協会の判断によるのであれば相談を受け付けることができるので、相談を回したら協会に任せて欲しい」や「守秘義務が生じるため、処理結果の報告はできない。従って、問題解決のための連携は難しい」という意見が出た。ここでいう事業者団体の中には、金融関係団体だけでなく様々な団体が含まれているが、都の会議ではこの2点について、どう判断すべきか話し合われた。金融業界としては、この2点の意見についてどう考えておられるか是非お伺いしたい。

    • 今のようなご指摘があったが、業界の方から何か意見はないか。率直なご意見を頂ければありがたい。久保田委員いかがか。

    • 都から直接案件が移送されたことがないので具体的な事例はないが、情報提供を求められれば可能な限り提供していきたい。昨年、都から具体的な情報提供を求められた際、会員会社が、個人情報保護の観点から断ったことがあった。たまたま同じ時期に複数の会社が断ったことから、都から情報提供に関して協力依頼があり、相談担当の責任者を委員とする全社構成の会議の場で、都の依頼に対する協力要請を行なった。また、併せて各社の相談担当の責任者宛てに文書でも都の依頼に対して協力要請を行なっている。この件については都から迅速な対応に感謝している旨のお言葉を頂戴している。全体的には協力していくということをベースに考えているので、中立公正との観点から移送されるのであれば、移送して頂きたいと思う。

    • 東京都からいろいろ要望が出ているが、新しい金融商品が出ており、消費者は選ぶのにも苦労するのが実態。そこでクレームが発生したとき、どこに相談すれば良いのか、どこで対応してもらえるのか分からないので行政のセンターに出向くことになる。そういうことを業界団体の皆様もよく考えていただけなければ、この協議会の意味はなくなると思う。是非、業界団体でもよくお考え頂きたい。

    • 都から具体的な取組の説明があり、具体的に要望が出されたが、そういう形で議論を進めるのも一つのやり方ではあるが、資料3の具体的な説明をして欲しい。

  • 事務局より資料3「『公的機関との連携』に関する論点メモ」の説明があった。

    • 東京都の今後の取組について何か追加説明はあるか。

    • たくさん提言を頂いているので、すぐ取り組むべきものと準備が必要なものを整理し検討しているところで、特に他機関との連携については十分検討が必要と考えている。

    • 公的機関との連携についてはただいま頂いた意見を参考に、現段階で取り組むべき項目のリストアップ等を事務局にお願いし、次回以降それを叩き台として検討を進めていきたい。

「金融トラブルの解決に向けたその他の方策」について

  • 事務局より資料4「総合的なADRの制度基盤の整備について」、資料5「各国の金融関連紛争調停制度について」の説明があった。

    • 公的機関との連携についての議論も踏まえ、金融トラブル解決に向けたさまざまな方策や今後の検討課題について、ご自由にご意見等を頂きたい。

    • 東京都から話のあった為替証拠金取引は,非常にトラブルが多い。この話は、今に始まったことではなく、前から出ている問題であるのに具体的な対策がなされていない。これは、一刻も猶予がならない状況にあると思う。20年前の海外先物の被害状況と非常に良く似てきた。あの時は、海外先物規制法を当時の通産省で立上げ、その後300社と言われた業者が、順次淘汰されてほとんどなくなったのだが、為替証拠金取引についても何らかの対応が必要だと考える。イギリスのように横断的な法制になっていれば、このような問題は起きないが、横断的にやるのは中長期的な観点という話になっており、各分野別に検討がなされるのでこのような問題になる。分野別、個別的対応ということになっていると必ずこのような問題が起るので、分野別に対応する路線をとる以上、こういう問題についてはきちっと対処するということでないとまずいと思う。為替証拠金取引について、アメリカではSECなのかCFTCなのかという問題があったが、2000年の先物取引近代化法でCFTCの権限であることがはっきりし、対応している。日本はただ様子を見ているだけで非常に具合が悪い。既に裁判も各地で行われており、今年の5月、6月には、札幌地裁で判決が4件出ており、業者の取引手法、取引構造を厳しく断罪している。過失相殺なしで損害賠償請求全額が認められている。従って、中長期的に横断的な法制を考えるか個別分野別に対応するかという路線対立はあるが、当面個別分野の対応でいくのであれば、そのような中で責任ある形でまとめて行かなければいけない。「今後の取組について」の最後でも、「横断的なものを含む裁判外紛争制度の充実のための方策について協議会の立場から検討し金融審議会等へ提言していくこととする。」となっているが、この問題は非常に急ぐ問題なので、これとは別に対処して欲しいと思う。

      次にADRは使ってみなければ問題点が分からないので、最近よく利用しているが、生命保険協会は紛争解決支援規則を是非見直して欲しい。生命保険相談室に申立をしたところ、苦情の段階でまず、「苦情では応じられません」と言われ、裁定申立てをしたところ、「裁定にも応じません」と言われた。規則を見るとは確かに書面をもって裁判ないし調停で解決すると会員企業が差入れれば、裁定に応じなくてもよいことになっており、全く中身に入ることなく却下される。これでは、形を作っただけで実際使えないと言うことになってしまい、モデルの水準にも達していないことになる。運用で何とかなるのではないかということで、そういう規則になっていると思うが、運用でなんともならないことがはっきりしたので、少なくともモデルまで引き上げて頂きたい。

    • 久保田委員なにか意見はないか。

    • 個別の案件なのでここで取上げるのはどうかと思うが、私どももその件は残念に思っている。当該の会社とは何度か話合い、裁定手続に応じて欲しいとの話もした。しかし、規定も含め、私どもの立場は、裁判制度の補完ということが基本であり、裁判ないし調停で解決を図る道は閉ざしていない。その点は規定でも明確にしているので、会社側の「どうしても裁判で解決したい」との申出を受け入れざるを得なかった。一方で、13年度から始めた裁定審査会の中で、石戸谷委員の僚友の弁護士さんの案件では石戸谷委員が当会の裁定審査会を使うようアドバイスされ、裁定審査会としては難しい案件であったが、和解と言う形で解決している。裁定審査会ではそういう案件も扱っている。当該の件については残念であったものの、規定上も裁判で解決を図る道を閉ざしていないのでご理解いただきたい。

    • それは、規則上書面により裁判で対処すると会員が出せば、それに委ねると言う規則になっているのか。

    • 規程がある。

    • 要するに手続の応諾義務がないと言うことである。だから中身に入る前に終わってしまう。これでは、全くモデルの域に達していない。話を進めて、まとまらないから裁判というなら話はわかる。しかし、始めること自体を拒否できるような規則では、趣旨が違う。

    • 応諾義務はある。ここで論争する話ではないのかもしれないが、憲法で裁判権が保障されている以上それは侵せない。私ども裁定審査会としても、個別事案について、裁判なり調停なりで解決する方がふさわしいのかどうかのチェックはしている。当該会社については、裁定案件は3件目の案件であり、他の2件は手続きに応じている。そのうち1件は和解で解決もしている。従って、当該会社は裁定審査会の手続きについては理解をした上で、裁判で解決を図る旨の申出があり、裁定審査会として受理したものである。

    • 機関間連携や他機関紹介と言っても紹介された方にやる気がなければ、実質的に前進しない。何も、調停案を受け入れるべきだとかを言っているわけではなく、テーブルに着くレベルの話である。いくらモデルを作って、運用改善の議論をしても、初めから拒否することが出来、それで問題はないという話であれば、失望を禁じえない。是非見直していただきたい。

    • ただいまの点等について、ご意見ご指摘はないか。

    • 今の点に関連して申し上げたい。東京都の答申で機関間連携を盛り込んだが、移送元が相手方をどう見極めるかが議論になった。連携して移送したのは良いが、そこがちゃんとやってくれなければ、都として責任があるのではないかとの意見がある。答申には都としての基準を作るなりするよう盛り込んだが、具体的にどうするのかと言えば、多分暗礁に乗り上げるのではないかとの思いがある。特に都では商品、役務等いろんな業態を対象にしており金融だけではないので、いろんな事業会社なり業界団体を相手にどこまで連携できるか、との思いがある。どこかの機関とモデルケースとしてやってみてはどうかという提案もしており、例えば金融のように機関間連携を模索し始めた業態は他にはないので、もし皆さんの機関の中で東京都と実験でやってみたいと言うところがあれば是非申し出て頂けるとお互いの信頼性のために良いのではないか。良い事例になれば消費者もそういう機関を信頼して利用するようになると思うので、お持ち帰り頂いて前向きな取組をお願いしたい。2点目は、為替証拠金取引の話だが、具体的に私のところにも電話が架かってきて、某証券会社と名乗り、「外貨預金です」と言って勧誘してきた。どうも従来先物会社だったところが証券業務の登録をして証券会社を名乗ったようである。そこで、上司を出して下さい、コンプラ担当を出して下さいという話になったが、証券会社の名前で勧誘しているところも多い。例えば、日本証券業協会にそういう問い合わせが持ち込まれた場合はどうしているのか。こういう谷間に落ちる取引に対して金融庁としてどのように対応を考えているのか。

    • 小西委員から。

    • 日本証券業協会です。外国為替証拠金取引については、25種類ほど位置付けられた届出を要する業務の1つと考えている。従って、証券会社に限られるが、私どもの苦情相談の対象となっており、対応している。それから、証券会社を名乗ることについては、証券取引法の規制があり、「証券」を商号に入れることが義務付けられている。証券業務を何%を行っているかという規制ではなく、例えば、証券会社が商品取引業を兼業できるが、商品取引業者が証券業を兼業できないということになっている。証券会社の苦情については、相手方の証券会社に取り次ぎをし、解決しているものもある。

    • 事務局から。

    • 外国為替証拠金取引については、取引がどういう仕組みになっているのかが結局判断のポイントと考えている。北海道で判決のあった業者は、名目は外貨証拠金取引だったかもしれないが、注文も出ておらず取引実態がないのではないか。自分で賭場を開帳したような形になったものもある一方、いわゆる金融先物商品として考えられるようなものを扱っている業者もいる。全体として、外貨証拠金取引をどのように考えるかについては、関係者の間で議論されていることは承知しているが、現実の問題を解決することについては、1件1件の取引実態を見た上で考えるとしか申し上げられない。先ほどの横断化法制の話の中で、こういう問題について手当てが出来るかどうかというところが、分野別の縦割りでやるのか横断的にやるのかの分かれ目だという話があったが、それに併せて、この取引は金融なのかという点もある。商品の範囲から金融を限定する際にも業という問題が出てくるのではないかと感じている。つまり金融の中で横断化を行ったとしても、非金融分野との溝は残るのかなと感じている。

    • 単に、紛争解決処理機関統一という前に、そもそも取引行為そのものに対するルールが業態単位で出来ていて、かつ外国為替取引については自由化されたこともあり、ルールに穴が出来ているところもある。そういったものを全て横断的にカバーする法制が必要ではないかとの議論が、金融サービス法が必要だという議論になっている。その中の一部として、紛争解決の部分について横断的ADRが必要かどうかの議論も行われているが、その前に、そもそもどういったことをやって良いのかという横断的なルールがないことも問題の一つである。ただ、指摘のとおり、横断化するといってもどこまで横断化したものとしてできるか。金融の範囲を超えるのではないか。本日例として取り上げられた韓国では、実体法の方も横断的な金融サービス法を作ろうと立法の検討を進められているようであるが、韓国の方に聞いたところ、ほぼ横断的なものだが、商品取引まではそこに入れるところまではいっていないようなので、やはり相当難しい根本的な問題として残っていると思う。ADRもそうだが、その前にルールそのものに穴のないような体制が必要ではないかと思う。では、特にご発言がなければ、頂いた意見等を踏まえて事務局で整理していただき、次回以降の協議会で順次検討して行きたい。

  • 裁判外紛争処理の改善に向けた取組について、全国信用組合中央協会、全国銀行協会から報告があった。

  • 議事資料の公表について了承された。

(以上)

問い合わせ先

総務企画局企画課
電話03-3506-6000(内線3517)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。

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