第24回金融トラブル連絡調整協議会議事要旨

1.日時:

平成16年3月24日(火)10時00分~11時30分

2.場所:

中央合同庁舎4号館 金融庁特別会議室AB

3.議題:

平成15年中の苦情・紛争解決事例、ADR法(仮称)の検討状況の報告等

4.議事内容

ADR法(仮称)の検討状況等

  • 司法制度改革推進本部事務局から資料1を用いて説明があった。

裁判外紛争処理制度の改善のための取組み

  • 全国銀行協会、日本証券業協会、全国貸金業協会連合会及び金融庁から資料2を用いて報告があった。

    • 12月の金融審第一部会及び3月の総会分科会において金融審議会へ報告及び検討を依頼したが、この件について発言者としては言い放しに終わった感がある。金融庁としてこの問題を検討されるのか、今後の状況に関しもう少し具体的に説明して欲しい。

    • 総会では、審議会会長からもはっきりしたお答えはなかった。是非検討を始めるという回答が欲しい。

    • 前回の協議会での議論は、岩原座長より第一部会で報告頂き、第一部会報告の議論に反映されたと考えている。今後は、総会の席上で当局よりお答えしたとおり資料2の別紙として付けている第一部会報告を踏まえよく考えてまいりたいと回答させて頂いた。

    • 第一部会報告にある投資サービス法と金融サービス法の関係がどうなるのかが議論になったが、報告をどう肉付けしていくのかは、今後の第一部会の審議の対象ということだと思う。

    • 外国為替証拠金取引に関する事務ガイドラインと金融商品販売法施行令の改正という対応について、パブリックコメントで出された意見は批判的なものが多いと感じた。それらに対するコメントを見ていると、業法の制定には消極的である一方、横断的なルールの整備には前向きだと感じる。しかし、金融商品販売法の説明義務を課しても解決できる問題ではないことは明らかである。これをどういう格好で解決していくのかという考え方があって、その中で今回の対応は位置付けられるものだと思う。元本割れリスクの説明をしたからといって解決する話ではない。この取引が問題だというのであれば、金融庁の方向性があって然るべきだ思う。

    • 協議会のミッションを超える問題だが、外国為替証拠金取引は重要な問題であると、この協議会でも実態について議論があった。金融庁としてできることをやろうということで、3つのことを行った。まず一つはホームページ等で注意喚起すること、次に外国為替証拠金取引を取扱っている業者の中で、金融庁に権限があるものとしては証券会社が該当するので、証券会社についてはきちんとしたルール作りを行った。三つ目として、金融商品販売法で外国為替証拠金取引は入るかどうか明確ではなかったが、他省庁とも相談の上、民事効をつけることになった。パブリックコメントでは、不十分との意見もあったが、我々が法律で与えられているミッションでできることをできるだけやろうということで実施したことをご理解頂きたい。それ以上の法律改正を伴う対応については、取引が外国為替取引の規制緩和により行われていることから、業者規制をすることが良いのか否かを慎重に検討する必要があると考えている。先ずは、民事訴訟の場で金融商品販売法を活用して頂きたいと思っている。そのような状況を見ながら今後の対応が必要かどうか検討していくと考えている。

    • 裁判の点については、金融庁が金融商品販売法の適用対象としたことから、むしろ為替証拠金取引業者のほうが、いわば公認されたというような使い方をしている。パブリックコメント募集の金融庁のホームページを書証として出してきて、当局はこういう考え方であると主張している。当局がこういうやり方をすれば、業者はそういうやり方をすることは予め分っていたことである。従ってパブリックコメントでもこういう対応はよろしくないという意見が多々出ていたと思う。金融商品販売法の説明義務以前の問題として、金融商品販売法を検討した当時の金融審議会の議論にもあったように、あの程度の説明義務は既に判例法理で確立している。施行令改正前の裁判においても顧客全面勝訴の判決が高裁レベルで出ているわけであり、施行令を改正しなければ救済されないという問題ではない。業者がそのように使うことが想定されたにもかかわらず、なぜこのような対応となったのか。

    • 金融商品販売法の対象とすると、悪徳業者が金融庁のお墨付きであるという説明をして悪用するとの指摘がパブリックコメントにあったことは事実であり、我々としても気を使った点でもある。そういう御意見も踏まえ、金融商品販売法上の取り扱いを慎重に検討した結果、やはり対象とする方が良いとの結論に至った。しかし、金融商品販売法の対象となったことと、例えば業法で許可を得たというような場合とは、全く異なることであると明確に説明し、悪用を防ぐ努力をしている。悪用のリスクがあるから金融商品販売法を広げるのは反対という意見には、賛同できない。裁判の場では、不法行為の立証に、様々なご苦労があると思うが、金融商品販売法の対象となった場合には、より立証がし易くなると思われるので、是非利用して頂きたいと考えている。

    • 投資サービス法の議論の中では、外国為替証拠金取引のようなものについても、押さえるべきところは押さえた法制を作る必要があると個人的に思っており、今後第一部会で検討していきたいと考えている。

      ADR法案については、今国会への提出は、なされなかったが、問題点を更に詰めて法案作成に向けて努力されるということである。協議会のモデルについても、ADR法の検討結果を踏まえて見直すことを考えており、引き続きその検討状況を注目し、それを踏まえて金融分野における取組みを検討して行きたい。

    • 貸金業協会に質問したい。相談対応規則7条に「債務等に係る相談」という条項があるが、協会による債務整理に関する相談については日弁連として何度か意見を出している経緯があるので確認したい。この条文で債務整理の相談の中身について、「弁護士会より担当弁護士が決められている場合は当該弁護士又は協会顧問弁護士と協議し、適法かつ客観的に対応する。」としているが、協会が相談処理をするという意味か。

    • この問題は、貸金業規制法28条(苦情の解決)の延長線上に債務整理があり、それに対して、日弁連は協会には債務整理の権能がないとのご意見を頂いている。私どもは、その指摘を真摯に受け止め、7条に掲げている方法で担当弁護士や顧問弁護士と協議してこの問題にあたっていきたいということである。

    • 難しい問題があることは承知しているが、一方でこういったADRとしての自発的な努力にも期待したいと思う。

「平成15年中の苦情・紛争解決事例等」について

  • 事務局から資料3を用いて報告があった。

    • 国民生活センターや都道府県の消費者センターでは、助言や他機関紹介等を行っているが、あっせんを行っているケースも多い。これには、条例等にも根拠規定があるが、各都道府県知事宛に出されている昭和45年5月4日付の国民生活局長通達において、「窓口で受けつけた苦情については、単に相手方に取り次ぐだけでなく、当事者の希望があればあっせん案を提示するなど積極的に取組みその苦情が最終的に解決するまで見届ける必要がある」とされている。そういった形で専門家の助言を受けながらやっている。例えば、外国為替証拠金取引について国民生活センターはかなり厳しく対応したが、これらも弁護士の助言を得て行ったものである。弁護士法72条との関係においても、全てセンターの判断で行ったと思われると誤解を招くので補足しておく。また、一般的に国民生活センターの苦情件数と言われると非常に多数だと報道されるが、資料の件数は国民生活センターが直接受付けた件数である。全国の件数とは各都道府県で受付けたものも含んだPIO-NETの件数となり、非常に多数となる。

      次に、無認可共済については、一旦問題が出てしまうと、大きな被害となってしまう。しかし、今現在あるものを一概に否定してしまうこともできない。法的根拠のある7つの共済については厳格な定めがあるのだが、「共済」の名前を使用すること自身は、法的に禁止されていない。こういったものは、問題になる可能性があるが、金融庁としてどのような捉え方をしているのか。審議会でも議論されると聞いているが、検討の状況について紹介頂ければありがたい。

    • 金融審議会の保険ワーキンググループで検討するテーマの一つとして無認可共済も挙げられており、今後議論される予定となっている。具体例に則した議論から、制度改正に対するインプリケーションも出てくると思われるので、座長とご相談の上、無認可共済についての相談等の具体例を議論する事も考えたい。

    • 全体的なところを3点伺いたい。この資料は面白いデータとなっていると思う。資料3は公表されると思うが、各業界団体に取扱案件を公表して頂きたいと思う。二つ目は、特徴的なこと、例えば金融先物では、不適格者への勧誘がほとんど、商品先物では、「必ず儲かる」という言葉が勧誘場面で使われているとなっている。傾向として、こういうものがクレームとなることが明確になった場合は、業界としてどのような対応をしているのか教えて欲しい。三つ目は、このような情報を金融庁としてどのように活用しているのか。このように出された案件の中で問題だと思われるものについてどのように取り組んで行き、どういう仕組みを作るのかを考えるべきだと思っている。

    • 金融先物取引業協会です。当協会の会員のほとんどはホールセールであり、苦情の対象となる個人顧客への勧誘を行っている業者は限定される。事案を詳しく公表した場合、顧客が特定される可能性もあり、プライバシーを侵害するため公表は差し控えている。

    • 問題のある業者には、何らかの注意等を行っているのか。

    • 処分は行っている。処分した場合は、当協会のホームページで業者名を含めて公表している。

    • 行政的なADR機関の場合はどうか。

    • 行政処分された場合は、業者名等を公表している。東京都や静岡県などのように事業者名の公表等に積極的なところもある。国民生活センターでは、業者名を伏せた手口公表の形での事案の概要については積極的かつ多く公表している。

    • 日本証券業協会です。あっせん事案については、顧客の申立て、会員の答弁書最終的な和解契約書等で客観的に要約可能で、顧客が特定されない情報に限り、ホームページ等で公表している。

    • 金融庁における具体的な活用状況については、公表できるような性格のものでないと思うが、日常的に苦情等の情報を活用し行政活動を行なっていると思う。また、各協会へもお願いし、財務局に苦情事案の件数等の報告頂き、それらの情報を踏まえて活動しているものと考えている。なお本資料は、各関係団体がどのようにADR機関としての役割を担っているのかというイメージを捉えるためにまとめたので、このフォーマットで金融庁が報告を受けているわけではない。

    • 協議会において各団体が苦情紛争に対しどのように関与しているかをみるということが大事な視点だということはそのとおりである。しかし、苦情をどのように活用しているか公表できる仕組みにして頂きたい。そうでなければ、例えば無認可共済なども省庁の狭間に落ちる問題になるわけであり、非常に危惧している。

    • 各協会の対応事例のベストプラクティスを共有するという面も非常に重要である。一方で、金融庁の政策やADRの議論を前進させるために、そういうことも踏まえて考えるべきとの意見は受け止めさせて頂くとともに、今後検討して参りたい。

    • 法定化されていないADRとしては、生命保険協会が裁定審査会制度を作られ、処理件数は13件となっている。資料では、「比較的類似例の多いケースとして掲載」としているが、「類似」の意味を教えて頂きたい。また、13件というのは、全て裁定審査会に懸けられた案件なのか。聞くところでは裁定審査会に懸けられそうになった時に、保険会社が和解に応じ、実際には審議していないケースもあるようだが、そういうものも含まれているのか。

    • 保険契約というのは長期の契約であり、この事例のように20年で満期となり初めて保険証券を見て、個人年金のつもりが終身であったというようなケースや、極端な場合では、保険証券が送付されそのまま、中身も見ずに金庫にしまったというケースもある。相当年数が経ってから始めて問題に気づいたというケースが多いと言う意味で「類似」と記載した。件数は年度でまとめており、平成13年度の発足時4件、14年度で14件、15年度現時点で15件ということになっている。裁定審査会では、申立てを受理し、会社に答弁書を求めるという手続を踏むが、その答弁書の中で和解を申出てくるケースでも、裁定審査会が関与して和解契約書を作成するとか最後まで結論を導き解決することにしているので、受理して解決をしたとしている。

    • 13件は受理の件数であり、実質的な審査をしたものと、していないものを含むのか。会社から答弁書が出てくる割合はどのくらいあるのか。

    • 基本的に、まず裁定のテーブルに着くことを前提に会社から答弁書を出してもらっているが、それ以外にテーブルに着くかどうかというところで、会社側が裁判で解決を図りたいというケースがある。その場合、裁定審査会で適格性、つまり裁判で解決を図ることについて相当の事由があると裁定審査会が判断すれば裁判での解決を認めている。この、適格性の判断は厳格にしている。規定上、会社は裁定結果を尊重することとなっているが、運用上は応諾義務に近い形である。特別な理由がない限り、会社側が途中から裁判にいく道は閉ざしており、裁定のテーブルに着けば、会社には裁定による解決を受け入れて頂いている。会社は申出人と相当な期間にわたり交渉しており、その中から裁定に上がってくるので、会社の方針として裁定に馴染むのか、裁判で解決するのか基本的な考え方をすでに持っている。従って、会社側には裁定のテーブルに着いた場合は裁定結果に従って頂くことにしている。

    • 受理したものの、会社が裁判での解決を望む場合は、裁定審査会で適格性を判断するということであり、その件数も含まれているのであれば、事例研究として答弁書が出て和解に応じたケース、裁定審査会が裁判へ行くことを認めたケース、裁定審査会で裁定を行ったケースなど、中身までわからないと実際に裁定審査会がどういう形で機能しているのか分らず、消費者から信頼性を獲得していくことは難しいと思われるが、そういうものを公表しないのか。

    • ホームページで全件公表している。件数だけでなく事案概要や裁判に行ったケース、裁定の要旨を含め全件公表している。相談所リポートを年2回作成しており、その下半期分が年報となっているが、その中で裁定の概要を全件公表している。

    • まだリポートで公表されていない事例で気になることがある。公表されていない段階のものがマスコミ公表になっている。コメントを求められたので取材したが、当事者、会社と申立人を取材した内容と雑誌に書かれている事実に乖離があった。レポートの書きぶりがどうなるか気になるところである。今まで見ていたリポートでは、細かいところまでは読み取れない。正確だろうとは思うが、我々が活用可能というところまでは至っていないと思う。

    • 今の事案は、15年度の事案であるので15年度の年報に掲載する予定である。先の意見で出ていたが、プライバシーの問題もあるため、概要ということにしている。今言われたようなことが分るように書いているつもりではあるが、今後ともいろいろと工夫していきたい。

「金融商品販売法の施行状況調査のフォローアップ」について

  • 事務局より資料4を用いて説明があった。

    • 内容の改善について是非お願いしたい。金融オンブズネットでは勧誘方針について銀行、損害保険、生命保険、証券を調査した。金融商品販売法ができた時に、消費者側、利用者側が評価をしながらステップアップさせ、充実させて行くことが念頭にあった。しかし、調査結果について懇談したいと言ってきたのは、銀行と損保だけである。他の団体は、そもそも金融商品販売法の趣旨を理解していないのではないかと思う。私どもの調査では32項目の調査項目があるが、少ないところでは5項目程度しか定められていない。内容の充実という点では、顧客調査や適合性、不召請勧誘、表示、記録に関する項目が決定的に欠落している。検討して頂きたい。特に銀行は、いろいろな商品を今後販売していこうとされているにもかかわらず、一番大雑把な勧誘方針を掲げている。是非早急に検討に着手して欲しい。

    • 山本委員よりISO関係のご発言があるとの要請がありましたので、よろしくお願いしたい。

    • 以前この協議会で、ISOにおけるADRの規格化について質問を受けていたので、その後の状況について報告したい。昨年10月からワーキングループの審議が開始しており、今のところ、紛争解決について三つの規格、一つ目が企業の内部規則(Code of Conduct)、これが10001になる予定、次に企業内部の苦情管理(Complaint Management)、これが10002になる予定、そして外部の紛争処理、ISOではEDR(External Dispute Resolution)と呼ばれているが、これがADRに対応するもので、10003となる予定である。本格的な審議は5月にワーキンググループがカナダで開催される予定であり、既にそれに向けての原案が作成されている。原案作成にあたり、各国から資料を提供しているが、日本からは本協議会で作成されたモデルを参考資料の一つとして送付した。今後は、数回のワーキンググループを経て、再来年あたりに規格の成案が得られるのではないかと思われる。なお、5月ワーキンググループ開催を控えて、どういう状況であるか、日本としてどういう態度で臨むべきかという各方面のご意見を伺うためシンポジウムの開催を企画しており、4月6日に日本海運クラブにて日本規格協会主催で行われる予定となっている。御関心があれば日本規格協会へお問合せ頂きたい。

  • 議事資料の公表について了承された。

(以上)

問い合わせ先

総務企画局企画課
電話03-3506-6000(内線3517)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。

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