平成14年4月24日
金融庁

金融税制に関する研究会(平成14年第3回)の議事要旨について

金融税制に関する研究会(第3回)(平成14年4月11日(木)開催)の議事要旨は、別紙のとおり。

なお、第4回は、平成14年4月22日(月)に開催したところ。

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総務企画局政策課
関・土居03(3506)6000 内線3182
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


別紙)

金融税制に関する研究会(平成14年第3回)議事要旨

1. 日時:

平成14年4月11日(木) 10時00分~12時00分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館金融庁特別会議室

3. 議事要旨

今回は、証券、投資信託の各金融商品に係る課税につき、委員より発表がなされ、次いで自由討議を行った。

【発表の概要】

(金融商品間の中立性)

  • 証券市場の活性化が上手く実現していない理由の一つとして税制というのも見逃せない点ではないか。預貯金というのは非常に単純明快、利子に対して20%の源泉分離課税で課税関係が完全に終了する。庶民的感情として、税務上の煩わしい処理を望まない人たちからすれば、預貯金であれば簡単だという心理的なものがあるのではないか。

  • 金融商品の課税方法がバラバラであると、どの商品がどういう状況では得である、損であるという問題が出てくる。つまり、金融商品間の中立性というものがなくなり、結果的に、本来商品設計の時に予定されていた意図とは違う形で、投資家にとっての商品選択の選好というものが生まれてしまっているのではないか。

  • 投資信託に関して、損失が全く考慮されていないという問題は大きく残っている。例えば、ETFと従来型の契約型投資信託であるインデックス投資信託を比べてみると、ETFで売買した場合、損失が出れば繰越控除ができる、キャピタル・ゲインについても一定の条件下で非課税になる。それに対して、インデックス投信は、利益が出た場合には20%の源泉分離で徴収されて、損した場合は手当てされない。しかしこの二つの商品は、基本的には株価指数に連動して集合投資をするという同じ商品。これはおかしいのではないか。

(納税方法)

  • 実際の納税に当たっての、投資家の負担をどうするかという点が重要。現在導入が予定されている特定口座制度(株式の取引によって生じる損益を証券会社段階で把握して税金の源泉徴収を行うことにより申告納税の負担感を和らげるための制度)を上手く活用して、例えば一定の商品については全てこの制度の中へ盛り込み、できるだけその中で損益通算も含めてやってしまって、とにかく投資家が大変な手間をして納税をするということではなく、できるだけ簡便な形で納税ができる仕組みがないと、たとえ損失の部分、リスクを考慮すると言っても、結果的に投資家が嫌がってしまうことになりかねない。

  • 金融商品から得られる利益についてはあらかじめ源泉徴収で行い、損失がある場合に限って投資家が確定申告するという形で二元的所得税を導入すべきではないか。

(二元的所得税の対象商品)

  • ありとあらゆる金融商品が絶対に入っていないと、この制度は一歩も動けないと必ずしも考えるべきではない。預貯金も、二元的所得税論であれば当然のことながらキャピタル・ロスと通算する仕組みが必要となり、理屈の面からは、預金利子についても全面的に申告納税に移行するべきであるが、それが困難であるから金融所得は一元化できないんだという議論になることを非常に怖れている。今現在簡素な扱いで、しかもリスク・リターンの観点からいって何ら問題がないものまでも、わざわざ複雑な税制に持ち込む必要はない。極端な理想論、原理主義的な立場は採るべきではない。

(投資信託)

  • ビッグ・バンのスタート前は証券投資信託のみで、20%の源泉分離課税という非常にシンプルなものであったが、ビッグ・バン以降、会社型投信、私募投信、不動産投信、ETFが導入され、商品の多様化が進むとともに税制も複雑化している。投信というのは個人投資家の証券投資の入り口商品であるので、シンプルな税制が必要。

  • 個々の投信には約款というものがある。税制変更や制度改正に伴う約款変更も、実際に約款変更しようとすると、2、3ヶ月の期間がかかり、投信会社などが負担する事務負担等のコストが実務上大きな問題となっている。

(配当課税)

  • 配当課税の問題は、一般の投資家の立場からすれば、配当についての二重課税が調整されているかどうかよりも、配当を受け取った場合の課税関係がどれくらい複雑になるのかということの方が関心が高いのではないか。

  • 配当は10万円を超えると総合課税になる。不動産投信の場合、配当利回りが5~6%と高いが、通常、一口50万円くらいであるため、年間配当金を10万円以下に押さえるにはだいたい二口くらいまでしか買えない。この点が、不動産投信が個人投資家に普及する際のネックになっているのではないか。

【委員より出された意見の概要】

(優遇措置)

  • 二元的所得税を導入する際、優遇措置の位置付けが一つの重要な問題。特定の金融商品に対して特別扱いすることはやめた方が良い。リスクに対して中立的な税を実現するには、損失が全額控除される制度が必要であり、その前提として、収益と損失をきちんと対称的に取り扱うべき。そうでないと、納税者による租税逃れ等を招き、税制に無視できない歪みが生じてくるのではないか。

  • 政府の施策は市場での経済活動に何の影響も与えないということを目指しているものではないのであるから、政策目的上必要な措置は採れば良いのではないか。

  • できるだけフラットな、簡素な税制にすべきという観点からは、特定の金融商品に対する優遇税制を設けるべきではない。基本的に簡素なものにした上で、例えば株式に限らず1,000万円の非課税枠を設けるとか、そういうやり方はある。

(配当課税)

  • 配当に対してどういった税制を採るのかということを議論すべき。配当の二重課税の問題をどうするかということをきちんと議論した上で腹を決めておかないと、ここがふらつくと極めて歪な税制になる。

  • 純粋な二元的所得税の考え方では、法人税率と金融所得に対する税率を同一としつつ、配当については法人段階のみの課税とし、個人段階では課税しない、といった仕組みになるが、北欧の例を見ても、現実には株を持っていて配当を受けている人が何故非課税なのかという議論があり、それは低い税率で課税する形で良いのではないかという妥協した制度になっている。

(二元的所得税の対象商品)

  • 本当は銀行預金であろうが、保険を買った場合であろうが、全てを金融所得と考えなければならないが、それは困難だろう。有価証券取引法上の有価証券と呼ばれているものに加え、証券会社で取り扱っている商品や、抵当証券、不動産小口化商品などを足したような形で、まずは金融商品というカテゴリーを確立するというのが現実的道筋ではないか。

  • 一元というのは必ずしも全部一元でなくても、まずは良いのではないか。儲かった方へ課税するという意味では完全に一元にならなくても良いから、損失を引くという意味で一元的に扱う、要するに控除できる対象として取り込めていればそれで良いのではないか。全て一元把握しなければ何も得られないんだという原理論に陥ってしまって、結果的に、仕様がないから今のままでという結論になることを非常に怖れている。

  • 二元的所得税というものを自分たちでやるんだという最後の旗みたいなものはしっかり持っておくべき。最初から理想を低くするよりも、まず、皆で目指す所を、配当を含めて、しっかり議論した上で、しかし当面はこんな感じでと考えるべき。

(税率)

  • 今の所得税率を議論のスタートラインにしてしまうと、おかしなイメージができ上がってしまう。金融所得の多くに課せられている20%という税率とのギャップが大きく、かつ累進性がきつい。個人所得税の税率もある程度フラット化して最高税率を下げた上で、その個人所得税率の最低税率と金融所得税率が同じくらいになるようなイメージで考えるべきではないか。

  • 制度を考える時には税収を中立的に考えるべき。最初から減税ありきとか、増収ありきと考えるのではなく、基本的にはプラス・マイナス・ゼロと考えるべき。

  • 税率が30%になると、今20%で課税されている金融所得は増税になってしまう。個人的には20%、上がっても25%くらいが限度ではないか。

  • 理論的にはリスクとリターンが違うものについては違う税率をかけた方が、個人の選択に歪みを生じさせない。単純に中立ということで、全部一律で課税すれば良いというのは、理屈からすると違うのではないか。リスクのあるものには損失の手当てを考えるのであれば、リスク・リターンの高いものは高めの税率、現行の20%を上げて30%、リスク・リターンの低いものは低率、現行の20%を下げて10%で課税するといった、リスク・リターンに応じた税率の使い分けも考えるべき。リスク資産に対する投資を促す観点からは、現在3年である損失の繰越期間を延長するといった形で手当てするのが筋ではないか。

  • 今の日本人の投資行動、資産選択がどうなっていて、それがどちらへ向かって変わっていくことが政策的により好ましいのかという判断の問題がある。リスクの低いものの方がより税率が低いという構造になるのであれば、多分資金の流れはリスクのより低い方へ集中する。それは政策として望ましくないのではないか。

  • リスク・リターンをどう考えるかを判断するのは個人に任せれば良い。税制で、これはリスクが低い金融商品であるから低い税率といっても、例えば10年後に非常にリスクが高い商品になったということはあり得る。

(簡素)

  • 簡素と言っても、理論的に簡素なのか、業者にとって簡素なのか、投資家にとって簡素なのか、その辺りがはっきりしない。全部一元的でも、皆が必ず税務署に行って申告する必要があるのは簡素なのか。人によって持っている簡素のイメージがやや違うのではないか。

  • どこかの金融機関を通して投資行動を取るわけであるから、納税は金融機関に任せれば良い。個人が税務申告をしないから税金の使い方に対する関心を持たないとか、そういう別の議論があれば、それはまた別の観点から検討すれば良い。

  • どの商品はどういう税制なのか、ということをいろいろと調べたり、どちらが損か得かというようなことを考える必要がなく、誰かが100万円で何らかの商品を購入し、その結果、1年後に120万円になったという時に、この20万円に対する課税が同じように扱われるということが重要なのではないか。

  • 税法の遵守ができる制度が簡素な税制である。租税回避がない、租税裁定が働かない、支払調書などが課税当局にしっかり行く。つまり、納税者がきちっと適正な申告ができるかどうか、それを課税当局も把握できるかどうかというところが、簡素の最大のエッセンスである。

  • 申告は郵送でもできるわけであるから、業界がもっとしっかり関与して、本当に数字だけ入れれば打ち出せるようなソフトを開発して、証券会社の窓口に置いても良いのではないか。

(包括的所得税)

  • 目的は損益通算で、しかも納税者番号まで入れるのであれば、総合所得税にすれば良いのであり、何も二元的にする必要はない。

  • 必ずしも包括的所得税を全否定しているわけではない。ただ、現行の所得税率と金融商品に対して多くの場合課されている20%という税率を考えた時に、総合課税へ一足飛びに行くと資本逃避が起きるのではないか。スウェーデンでは資本逃避が起きてから対処したが、日本ではそんなことをわざわざ起こす必要はない。

以上

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