平成14年5月15日
金融庁

金融税制に関する研究会(平成14年第4回)の議事要旨について

金融税制に関する研究会(第4回)(平成14年4月22日(月)開催)の議事要旨は、別紙のとおり。

なお、第5回は、平成14年5月30日に開催予定。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課 関・土居(内線3182)
本議事要旨は暫定版であるため、今後修正がありえます。


別紙)

金融税制に関する研究会(平成14年第4回)議事要旨

1. 日時:

平成14年4月22日(月) 9時30分~11時30分

2. 場所:

中央合同庁舎4号館金融庁特別会議室

3. 議事要旨

今回は、銀行、信託、生命保険、損害保険の各金融商品に係る課税につき、委員より発表がなされ、次いで自由討議を行った。

【発表の概要】

(金融商品課税の課題と対応策)

  • 複数の課税方法が商品によって混在している。例えば株式に関わる商品から発生する様々な利益も、売却益、配当に応じて課税方法が違う。しかも、配当の中においても、申告不要制度もあれば、源泉分離も、総合課税もある。このように、同じ商品一つ取って見ても、発生する利益の種類に応じて様々な課税方式、課税方法が採られることになる。少なくともこのような複雑な制度をもう少し簡素化すべきではないか。

  • 今の税制は課税方法が個別に決められているため、新しい金融商品については、新商品を開発する都度、課税の認識や課税方法について、税務当局に相談する必要が生じる。それは当たり前と言えば当たり前であるが、実態としては、その際、課税当局で確認した取扱いが、税務調査の際にそのまま踏襲される保証がない。そういう意味で、商品開発を行う場合には、常に課税上のリスクを背負わなければいけないという問題がある。

  • 総合課税を基本としながら所得分類を設け、各所得が持っている性格、あるいは担税力の違い等を考えながら積み上げて来た現行の所得税の枠組みには一定の合理性があると考えざるを得ない。二元的所得税の導入を全面的に行うことは、所得税の根幹をかなり抜本的に変えて行くということになる可能性があるので、実務に対する影響を見極めた上で、十分な検討を加える必要があるのではないか。

  • 金融のグローバル化が進んでいることもあり、資本逃避の危険性に対する対処も必要。ただ、その場合でも、現行の所得税の枠組みの中で十分対応が可能ではないか、すなわち、二元的所得税を全面的に持って来なくても、実務上の工夫で改善する余地はあるのではないか。

  • 二元的所得税が、現在の日本の状況に最も望ましい税制で、それを採用すれば日本が良くなるのかと言われると、実感が沸かない。二元的所得税という言葉が先行し、導入ありきで議論されているような感じがするが、どうしたら金融が望ましい姿になるのか、どうしたら新たに投資家になる人々を増やすことができるのか、そういった点に重点を置いて検討すべきではないか。損益通算や損失繰越の拡大がすぐ投資拡大に結びつくとの意見もあるが、これから投資を行う人に対してどれだけ訴えることができるのかは疑問。新規の投資家を呼び込むためには、やはり緊急対策としての税制も必要ではないか。

  • 金融資産構造を変えようというのであれば、金融税制だけでなく、他の施策と併せてこそ効果があるのではないか。例えば、直接金融促進のため、様々な金融商品の窓販拡大も効果があるのではないか。

  • 集団投資スキーム税制の早急な整備が必要ではないか。日本人全員がプロの投資家にならないのであれば、直接金融と個人投資家をつなぐ集団投資スキームは極めて重要な商品であり、そこにこそ力を入れるべき。まだ発展途上の商品であり、金融税制で措置すれば効果があるのではないか。

  • 生命保険は、相互扶助の仕組みで成り立っている制度であり、他の金融商品と一元化することは不適切ではないか。他の金融商品と一元化した場合は、例えば次の問題が生じる。生命保険は、通常、契約から数年間は、解約した場合に元本割れが生じ、また掛け捨て型の商品は事故が起きない限りは必ず損になっていることもあり、他の金融商品で益が実現した場合に、意図的に保険を解約して損を生じさせるというような保険本来の目的と違ったインセンティブが働く危険性がある。また、死亡保険金が一時所得として課税されるケースの場合に、他の金融商品、例えば含み損のある株式等の売却で損を発生させて、全体の益を小さくさせるというような、恣意性が働く問題も生じる。

(金融商品の区分け)

  • 投資リスクの高い商品と、損失の発生するリスクが低い商品とは区別しておくべき。リスクの低い商品から買って行くというのが一般的であると思われるので、損益通算のメリットは、ある程度リスク資産があって、投資する余裕のある人に対するものという印象が出て来る。一般的な感情等も含めると、やはりリスクに応じて区分しておく方が納得できるのではないか。

  • 例えば損益通算を考えた場合に、超長期的なスタンスから、金融商品全体を一つとするという考え方と、リスク・リターンに応じて区分し、異なる適用税率を設定するという考え方がある。適切なリスク保有、商品間の公平性という視点から考えると、基本的には後者をベースに一旦大幅な見直しを行った上で、将来的に金融商品全体を一つにするというような方向性についての当否を考えて行くというのが望ましいのではないか。

(相続税・贈与税)

  • 相続税、贈与税の議論を交えて議論すべき。金融資産が高齢者に偏っていることを踏まえると、相続税、贈与税を無視して金融税制の議論はできないはず。特に生前贈与を如何に活用するかがポイントではないか。

【委員より出された意見の概要】

(相続税・贈与税)

  • 景気刺激の観点からは、生前の消費を促す効果を持つ相続税引上げの方が良い。しかも金融所得に係る税金を労働に係る税金よりも軽くするのであれば、その分資産課税は強化すべき。

  • 過去、高度経済成長期に地道に資産を積み上げて来た、お金の使い方を知らない人々は、今更リスクなんて取らないのが現実。ちょうど高度経済成長に活躍した人々がリタイヤされて、その人々の資金を、ここ数年の間にどうやって動かせば良いのかということで切実たる思いがあり、贈与税の活用が考えられないか。

(納税者番号制度)

  • 納税者番号導入のコストは、相当なものだろう。ただし、一回初期コストを乗り切ってしまえば、後はメンテナンス費用に収斂されて行く。ここまで日本の個人金融資産が積み上がって来ると、どこかの段階でやはり思い切って考えていかないといけない局面があるかもしれない。ただ、そうは言っても、当面は各企業とも苦しい状況にあるので、そういった中で多額のコストをかけさせるのかというのも、もう片方で考えるべき。そのバランスが非常に難しいのではないか。

(保険)

  • 保険は色々な要素が複合されている商品が多い。最終的に満期保険金を受け取る時、受け取った結果だけを見ると他の金融商品との類似性というのが出て来るが、その途中のプロセスでは死亡保障や医療保障などを行っており、やはり他の金融商品と大きく違っている面がある。保険については、金融商品との類似性を考えていくアプローチというよりは、やはり社会保障制度の改革等が今議論されているので、社会保障制度との関係から保険の性質を考える議論が先にあるべきではないか。

(金融商品の区分け)

  • 例えば金融商品の課税対象を3つくらいに区分けするとして、損益通算というのはハイリスク商品であれば、ハイリスク商品間でのみ認め、繰越控除の期間を更に長めにして行くことが必要。税率は、ミドルリスク・ミドルリターン商品については、勤労所得なり、現状の20%という税率と整合させた上で、ハイリスク・ハイリターン商品はもっと税率を高く、ローリスク・ローリターン商品はもう少し低いといった構造が納得できるのではないか。

  • 一番人々がハッピーになる税制は何か、あるいは一番不幸にしない税制は何かという観点で考えると、各所得の中身によって経済的な意味合いが違うので、違う扱いをするのは合理的。現在の税制の中で、必ずしも合理的とは言えないのは、雑所得として分類されているもの。雑所得は何かというのは、税務当局でも説明できないと思う。この雑所得に含まれている金融所得を、実態に応じてきちんと整理して行くことが重要ではないか。

(二元的所得税)

  • 現状の非常に複雑な税制がそのままで良いという意見はないし、それを一挙に包括的所得税として全部累進にすべきという意見もない。目指している解決策というのは、二元的という言葉を使っている人と、その言葉を使うことを躊躇している人との間で、実はそれほど違ってはいないのではないか。違っていないのであれば、現在のように包括的所得税と言いつつ実態が異なった状態よりは、二元的所得税と名付けて変えて行く方が良いのではないか。

  • 何年も前から議論が全く変わっていない。総論賛成で各論反対。金融業態の縦割りの中で議論すると、必ず各論で利害が出て来るが、結局は変える意思があるのかどうかという問題ではないか。パッチワークで、少しずつ自分の業態だけ良くなれば良いと思っているのか、そうでなく、日本経済全体を考えて、もっと資本の効率を上げようと思うかどうか。導入できるか否かは、そういう志のようなものの有無次第ではないか。

  • 包括的所得税というのはどう考えても上手く行っていない。包括的所得税にまだしがみついているというところに、建前と本音の分離というのがあるので、そういうところをもう少し考えて行くべき。包括的所得税というのはもう時代遅れの税制なのだというところから出発して、しかし支出税といったところに一気に行くというのはなかなか難しいので、その中間点にある二元的所得税を目指すべきではないか。

(不動産)

  • 日本の家計ベースで言えば、実はポートフォリオの中で一番大きなウェイトを占めているのは住宅を含めた不動産。これを別にしてポートフォリオの話をするのは片手落ち。しかし、不動産についても金融資産と同じような取扱いにすべきだというのは、話としては良く分かるが、帰属家賃には課税していないとか、住宅には様々な優遇措置があるとか、その一方で固定資産税を取られているというような話もあり、難しい点がある。少なくとも証券化商品であるREITについては割り切って金融商品として認める、ということではないか。

以上

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