ソルベンシー・マージン比率の算出基準等に関する検討チーム(第8回)議事要旨

1.日時:

平成19年3月8日(木)13時00分~15時45分

2.場所:

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3.議題:

「ソルベンシー・マージン比率等に関する検討課題について」

4.議事内容:

  • 第八回検討会が開催された。

  • 事務局より、資料8-1「主な論点(第五稿)」に沿って説明が行われた。

  • 米山座長より、資料8-2「検討チーム 第8回検討会 主な検討課題 ~マージン項目等の見直し~(座長メモ)」に沿って説明が行われた。

上記説明に対して、自由討論が行われた。主な内容は以下のとおり。

「繰延税金資産、税効果相当額、将来利益」について

(意見)

オンバランスとなっているかどうかでマージンへの算入を判断するのは問題がある。会計基準が固まっていないか、又はオンバランス化することの影響が大きいものをオフバランスとして扱っている。会計基準は便宜的な評価であることから、監督上重要かどうかで判断するべきである。

(意見)

生損保の場合、繰延税金資産は準備金の積立によるものであり、銀行の繰延税金資産と性格が違うことは理解する。しかしながら、状況が悪化してきた場合にマージンとならないことがあるため、算入には監督上の制限を設けるべきではないか。

(意見)

繰延税金資産は、USGAAP、IFRS、日本GAAPという会計基準を比較してみても、基準が異なっている。

また、業種別にみると損保は、巨大災害のリスクがあるため、将来利益に関する見積もりは難しい。一方で生保は見積もりが比較的安定しているというように事業により特徴がある。

更に回収が長期にわたるものを全て繰延税金資産としてみている会社もあれば、一年又は全く見ていない会社もあるといった実態の違いもある。

このように基準や業種により判断の異なる指標を規制上どう取り扱うかは重い議論である。また、会計上認められているものを否定するか、あるいは何らかの調整や制限を加えるとすれば、規制当局側の考え方が色濃く反映したものとなる。

(意見)

経済価値ベースの評価を行う際には、将来利益に相当する部分もマージンにカウントされると考えており、一概に否定するものではない。

繰延税金資産に関しては、以前と比較して現状の会計でもかなり厳しくなり適正化が図られてきている。また、将来に渡って、事業が継続していく中で資産性があるかという観点からみれば、資産性が全面的に否定されるものではない。

(意見)

将来利益の計上方式に問題はないか。実質大赤字であっても将来利益をカウントすることはおかしい。将来利益は繰延税金資産を計上する際に一回使っており、二重計上ではないか。

全体として厳しい枠をはめ、自己資本の一割以内とか、一年間でスケジュールできる金額のいずれか小さいほうとしてはどうか。

(意見)

銀行は、不良債権が回収されるかどうかの見極めが難しい。なおかつ不良債権処理を進めるためにインセンティブを働かせた結果、繰延税金資産が積みあがったという事情があると理解している。

どのようなポートフォリオかによって変わってくるが、生命保険会社の利益は運用を除けば安定している。そこで、仮に案を考えるとすれば、一律何パーセントという形をとるか、回収可能性の不安定要因である運用部分に関して保守的な線で見ていくかということである。規制上は、会計とある程度の整合性をとる必要がある。

(意見)

保険会社の繰延税金資産は有税の危険準備金、価格変動準備金の積み立てを行い、健全性を高めていく中で発生しているという実態もあり、業態の違いとして挙げられる。

(意見)

保険会社は、自己資本に対し株のウエイトが高く、株式で含み損が大きくなると、相当額の繰延税金資産が発生する余地があり、必ずしも保険会社が安定しているとは限らない。銀行も有税で不良債権を償却したといって、その時に税金を払っておらず、繰越欠損がたまってきたために、結果として繰延税金資産が相当たまったという部分が最大の要因と考えており、相当厳しく対応していくべきである。

銀行の規制とのバランスも大切であるが、一方を甘くするのではなく、両サイドで適正化していくことが必要。

(意見)

ソルベンシー・マージン比率の計算においては、含み損がでた場合は、有価証券の含み損の部分がマイナスとして計上される。バランスシートの資本を膨らませているのではないかという指摘であれば、回収可能性を前提に計上されていると考えている。

(意見)

税務上の繰越欠損金に対する繰延税金資産は、将来の利益を見込んで節税効果を資産認識しているもの。危険準備金の有税積立は、本来であれば費用として認識されるべきものが、税務処理上損金として認められないため結果発生しているもので、前払い税金の資産計上という意味がある。本当に利益体質の会社か、規制上区別する意味はあるのではないか。

(意見)

保険の場合の特徴について議論してきたが、銀行に比べて大きく違うものではないと認識しており、規制上整合性をとる事が適切ではないか。

「責任準備金中のマージン・逆ざやの評価」

(意見)

高利回りで長期の保険契約を持っている保険会社について、将来の逆ざやをどう評価するかという問題である。ロック・イン方式の下では、金利が上昇した場合に責任準備金の価値が低下することによる利益が計上できない。したがって、資産と負債をマッチングして、リスク管理をすると窮地に陥るという矛盾が生じる。

今後金利が上がることを考慮に入れると、負債についてもある程度時価を考慮してソルベンシー・マージン比率の計算上反映させておくことが必要である。

しかし、20年先の金利をどうするかと考えると全面時価評価は困難であることから、将来収支分析の考え方に基づいて、5年、10年キャッシュフローを時価評価することを提案した。現在のところは厳しくなるが、今後金利が上がれば、ソルベンシーが上昇することとなる。時価評価は、当面短い期間とし、金利が上がったときに期間を延ばすという方法があるのではないか。

(意見)

中期的対応の実施時期が問題と考える。今の将来収支分析は時価評価には不十分な点もあり、実務的に中期的対応となることはやむを得ないかもしれないが、そうだとすれば、中期的な課題についてロードマップを描くことが重要である。

(意見)

いきなり欧米の先進的事例に追いつくのは飛躍がある。まずは、現状のサーベイからを行っていくことが必要ではないか。

(意見)

当面5年分であっても時価評価をやるべきである。金利が上昇したら保険会社のバランスシートが悪化することへの対応が必要である。

(意見)

長期金利と短期金利はパラレルに動くものではないことから、5年間のみの将来キャッシュフローを用いることは、判断を歪めることにならないか。できることであれば、一気に時価評価を入れるべきである。必ずしも長い期間がかかるというものではなく、迅速に行えば、比較的短期で導入できるのではないか。

(意見)

現状の将来収支分析を用いるとしても、追加責任準備金だけでなく、マージンもあり、短期的な対応として組み込むことは問題がある。オープンモデルではなく、クローズドモデルで20年間の将来収支分析であれば、つなぎとして考えうるのではないか。

(意見)

簡便な方法で評価することは問題がある。どのような工程でやるかが問題であると考えている。

(意見)

海外と比較した場合、金融商品的な保険が多いか、保障性の商品で、転換、更新などが複雑に絡み合っている商品が多いのかという商品性の問題や保有ボリュームの問題など実務的な難しさがあることも論点であると考えている。

(意見)

レギュレーションが変わらなければ、自発的なインセンティブが働かないことは問題である。先進的な手法を用いてできる会社があるのであれば、進んだ手法で評価する会社が有利になるようインセンティブを与えるという方法がある。

(意見)

欧米だけでなく、台湾、シンガポール、オーストラリアなどにおいても既に動き出しており、3、4、5年後ということになると、相当遅れをとることになる。

(意見)

日本の保険会社は、全面時価にした場合で、資産に対して2%くらいの利ざやはあるのではないか。逆ざやが2%くらいであれば、利益マージンでは2%くらいあり、対応できないものではない。中期的な対応については、実際にテストをやり、始めることが必要ではないか。テスト期間のみ短期的な対応とすることにしてはどうか。

「劣後債務の扱い」

(意見)

広い意味での倒産処理において、契約を守るためのバッファーとして機能するかという問題でもある。会社更生法、破産法、予定利率の引き下げ、いずれの破綻処理の場合でも契約を守るバッファーとなるのであればマージンとして算入する意味がある。生保会社の劣後債務や基金の優先劣後関係に矛盾が生じていると考えている。

(意見)

銀行規制とのバランスについては整理する必要があるのではないか。要件が不十分ということであれば、実務的な移行措置も考えた上で段階的に取り入れていけばよいのではないか。

(意見)

過去の破綻処理の中には、劣後ローンなどをカットする手段がなかったということもあって、任意でカットされた。保険業法が改正され、更生計画の下で劣後ローンをカットすることが可能となった。

予定利率引き下げの場合については、曖昧さはあるが、一定のマージン性はあると考えている。

(意見)

相互会社については、95年の保険業法の改正で、株主としての立場が転換された。相互会社の保険契約については負債としての性格が強くなったが、予定利率の引き上げによりもう一度条件が変わったものと考えている。

したがって、条件を厳しくするという考え方に賛成。更生法、破産法、行政処理による破綻処理、予定利率の引き下げなど全てにおいて劣後することが保障されていることが必要ではないか。長くても、5年間の移行期間を設け、保険契約者の保護になるようなタイプの劣後債務に移行すべきである。

(事務局)

劣後ローン、劣後債務に関しては、「少なくとも破産、又は会社更生といった劣後状態が生じた場合には、劣後債権者の支払いの請求権を一旦停止し、上位債権者が全額の支払を受けることを条件に劣後債権者の支払い請求権の効力を発生する、という条件付債権」とされている。

「連結ソルベンシー・マージン比率、ダブル・ギアリング」

(意見)

全部を連結ベースとすることは難しいが、少なくとも含み損を抱えるような子会社については、ソルベンシーから除くよう反映してはどうか。

ダブル・ギアリングは、相当程度自己資本が改善していることからこの機会を捉えて厳しくすべき。

(意見)

再保険する会社を海外に持っていて、これが関連会社の場合、再保険で本体のリスクは下がっても、全体としては下がらないといったケースも想定される。生命保険会社については、連結対象の会社に損がたまっている場合、ソルベンシーから除くべき。保険会社の場合、不動産を持っていることからその点でリスクがある。

(意見)

保険会社の劣後債務のとり方については、銀行と持ち合いになっているケースが見られた。極めて低い利回りで劣後債務を大量に取り入れている。損害保険会社と生命保険会社の間のダブル・ギアリングは厳しくなったが、銀行と保険会社はまだまだではないか。

(意見)

現実には、損保と銀行の否定は大変大きな影響がある。広い範囲で考えることは有効である。現実のインパクトはかなり大きい。

(事務局)

生保、損保とも、平成13年3月31日以降、我が国の銀行子会社等、長期信用銀行子会社等及び証券子会社等が借手となる劣後ローンの供与若しくは劣後債の引受けを行っている場合、又は我が国の銀行子会社等、長期信用銀行子会社等及び証券子会社等の株式その他の資本調達手段(劣後ローン及び劣後債を除く。)を経営再建・支援・資本増強協力目的として新たに引き受ける場合、控除対象となる「意図的な保有」に該当することとなっている。(生保同士又は損保同士の場合は平成11年4月1日以降、生損間については、平成12年2月4日以降にそれぞれ「意図的な保有」に該当するとされている。)

「解約返戻金相当額超過部分」

(意見)

標準責任準備金制度の枠組みの中では、全期チルメル式責任準備金を上回る部分をマージンとすることは保守的ではないという懸念はあるが、現在の保険会社の財務健全性確保のあり方からみれば現行基準を維持するという方向性は考えられる。

(意見)

全期チルメル式責任準備金の水準を確保していることがポイントである。責任準備金の評価と絡むが、海外の議論からみると純保険料式の評価にはならない方向であり、このような海外の動向を踏まえるべきではないか。

「信用リスク」

(意見)

バーゼルIIの一番簡便な方法は問題があると考えているのでバーゼルIIの中のそれ以外の方法を用いてはどうか。

(事務局)

バーゼルIIの内部格付け手法については、一定程度評価は可能であるが、信用リスクに価格変動リスクが織り込まれており、切り離すことは困難である。

(意見)

現在の規制の取扱と内部管理でリスク量に大きな違いはない。

銀行の指標は、デフォルト率ではなく、期待値その会社の信用度合いの変化をみており考え方が異なっている。保険会社の場合の信用リスクは銀行と大きく異なっているが、どちらの考え方をとるかは大きな問題である。

(意見)

コングロマリットが生まれてくることを考えると規制の甘いほうに資産が流れるような仕組みとならないよう留意する必要がある。

「再保険リスク」

(意見)

格付け別も検討したが、再保険先は極めて多岐に渡り、1つの元受契約から複数の保険会社に出再している。実務上の負荷が大きい割には、再保険先のリスクのウエイトはそれほど高くない。費用対効果的にどうか。米英でも、一律の掛け目になっている。信用リスクの係数で、破綻先以外のもので4%であり、こういった数値を参考にしてはどうか。

(質問)

  • 再保険リスクのトランスファーがあるかどうかという点に関し、移転がないかどうかを確認するルールに関して明確になっていないのではないかという認識を持っているが、リスクトランスファーがなくとも網が掛けられていないのではないか、という問題意識がある。

  • 保険リスクのところに正味収入保険料を基準としており、再保険加味済みのところから始まっているように感じるがどうか。

(回答)

  • 05年の監督指針により、事後的に調整される再保険の扱いについて、ファイナイト保険の場合は、追加支払いに係る費用に関しては、追加記載することとされている。

  • 正味収入保険料については、正確に算出するとシミュレーションが必要となるため各国とも割り切ってやっていると理解。

(意見)

再保険の機能としてリスクトランスファーがあるかどうかに関しては、ソルベンシーの評価とは別のところで議論するべきではないか。

(意見)

ソルベンシーとは離れるが、大口信用供与規制との関係で再保険に関してもあまりに大きな再保険を1ヶ所だけに出しているということに関しては、チェックしていく必要があるのではないか。

「最低保証リスク」

(意見)

現在の規制は、ダイナミック・ヘッジなどの効果を見ていないが、最低保証はヘッジするかどうかで大きな違いがある。現時点でそれをするには、要件固めなどがあり難しいと考えるが、重要度は高いのではないか。

(事務局)

規制導入前にアクチュアリー会で議論を行った結果、今後の動向を見極めるという方向性が示された。今の規制の考え方はヘッジ会計に準じているものを認めるというものである。

(意見)

当時の検討経緯又はその後のマーケットの成熟度合いを考慮すると、検討のための材料はそろってきたのではないか。

(意見)

変額年金に偏った会社がでてきたことから、変額年金とその他の資産の分散効果を考えてもよいのではないかと考えている。想定外の事態となっているのではないか。

(意見)

変額返金のシェアの大きな会社があることを考慮するときめ細かくやる方法もある。価格変動リスクにおけるリスク係数を利用して最低保証の責任準備金の変動額を計算する方法であれば、実務的負荷がなくできるのではないか。

(事務局)

当時の考え方としては、変額年金における標準責任準備金制度を考えたものであり、ヘッジの扱いなどに関しては、今後とも検討していくものとして整理されたと理解している。

(意見)

最低保証の種類に因らず一律リスク対象額の2%というリスク量は、かなりラフという感じがある。また、110%を超えたらいきなりカウントしないというのは安定性として疑問がある。

(質問)

  • 変額年金の場合、解約返戻金超過部分は、どういう整理をしているか。

(事務局)

全期チルメル式の場合、平準払い保険料に対して、ローディングをとるということであるが、変額年金の場合は、残高に合わせて手数料を取ることから、変動するものとなっている。現行規制ではソルベンシー・マージンは新契約費の未償却額の範囲で認めることとなっているが、検討課題が多いところであり、今後とも議論が必要ということでどうか。

「デリバティブ取引リスク」

(意見)

デリバティブは進歩が速く、取引ごと告示などに列挙することには限界があることから、ある程度定性的な表現で包括的に規制できるようにできないか。

「損害保険の一般保険リスク」

(意見)

主要な保険種目のリスク係数による算出方法であるため、単種目の保険会社にとっては、係数が想定されていないケースもあり、一般保険リスクとして適正なものとなっているか検討する必要があるのではないか。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
監督局保険課 秋田(内線3770)
山村(内線3431)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

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