第3回金融税制研究会議事概要

1.日時:

平成22年6月18日(金曜日)10時00分~11時43分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館12階 金融庁共用第二特別会議室

○神崎政策課長

それでは、定刻になりましたので、第3回金融税制研究会を開催させていただきます。

本日は、ご多忙のところお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

それでは、まず座長である田村大臣政務官からごあいさつ申し上げます。

○田村大臣政務官

おはようございます。今日もお忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

国会も閉会をいたしまして、いよいよ永田町はもう参議院選挙だということでありますけれども、本日、新成長戦略を発表しますので、政府全体としてもかなりいろんな施策についての政策立案については一段落をするわけでありますが、ですので、政府、特に政務三役は、参議院選挙中は選挙の応援などを含め、行ったり来たりになると思いますし、私もある程度そうはなりますけれども、税制に関して参議院選挙の後までペンディングする時間的余裕もありませんので、引き続きまた皆様にお力を頂きながら続けていきたいというふうに考えているところであります。

私も、この研究会は私が座長ですので当然ですけれども、最優先をと考えて時間をとっているんですけれども、今回も11時過ぎに官房長官のところに行かなければいけなくなってしまいまして、金融ではない別の担当の話なんですけれども、なので大変申しわけないんですが、また中座をさせていただきますけれども、皆様の忌憚のないご意見はしっかりと後で議事録でしっかりと拝読をさせていただきたいと思っておりますので、どうかご容赦頂ければと思います。

今日もどうぞよろしくお願いいたします。

○神崎政策課長

それでは、議事に入らせていただきます。

本日は、初めに、前回会合でご質問いただきました本則税率20%の理由について、事務局からご説明をさせていただきます。

○河内金融税制室長

簡単にご説明させていただきます。配付資料は特にないのですが、本則税率20%という水準はどういう目安でというご質問を頂きまして、森信先生からご示唆いただいたんですが、そのとおりでございまして、過去の国会の質疑ですとか、そういったものから総合的に勘案しますと、当時の所得税率は大体大半の方は十四、五%払ってらっしゃる。住民税が最低税率5%であるというこの2つを足し合わせると大体20前後になるわけですが、これを勘案して、そうした水準をまず利子、利子所得に対する課税として設定しているという国会の経緯が当時あったようでありまして、あとはその利子の税率に平仄を合わせる形で配当ですとか譲渡益ですとか、そういったところの水準を設定していると、そういったような議論の経緯があるということでございます。

簡単ですが以上です。

○神崎政策課長

それでは、お手元の議事次第に沿いまして吉井委員、諸富委員の順にそれぞれ20分程度ご説明を頂ければと思います。その後でお二人のご説明に対する自由討議の時間をとらせていただきたいと考えております。

それでは、吉井委員、よろしくお願いいたします。

○吉井委員

大和総研の吉井でございます。

私のほうはちょっと資料をたくさんお出しして申しわけないんですけれども、資料1-1から1-5が私が出した資料でございまして、基本的には資料の1-1を中心に説明いたしまして、補足にほかの資料を使わせていただくという形でお話をさせていただきたいと思います。

私のお話の内容ですが、資料1-1の表紙をおめくりいただきまして、金融所得課税一体化、軽減税率、日本版ISAの位置づけ、納税システムといった4つ項目を挙げています。このうち、一体化については、私よりもずっと詳しい方がもう既に説明されておりますので、 本日の話の中心は、2番目の軽減税率の話と4番目の納税システムのところになると思います。

おめくりいただきまして、金融所得課税の一体化ですけれども、これはあまり学術的な言い方ではないですけれども、簡単に言えば税率を一本化して簡素な税制にするということと、あと金融所得内での損益通算を幅広く行うと、この2点が大きな柱であろうかと思います。税率を一本化するというのは、それによって非常に簡素な税制にするということと、あと同じ税率を適用することで、所得の種類の変換による税率の軽減といったような操作を防止するといったところがあるかと思います。

それから、利子も含めて金融商品全体に対し、通常の所得よりも低い税率を適用するということですが、これは例えば勤労所得で一回課税されて、それをもう一回運用に回した段階で再び課税するのは二重の課税であるといった話だとか、あまり高い税率にするとキャピタルフライトを招くといったようなところが根拠になっているのかなと思います。

キャピタルフライトにつきましては、居住者についてはどこの国で所得が発生しようと日本の税率が適用されるのだから、あまり関係ないんじゃないかという話もあるかと思いますけれども、例えば外国に資金を移して、そこで運用して日本に還流させないとか、あるいは納税者自身が諸外国に転居するといったような形で、そういったことが可能な人ほどキャピタルフライトというのを招きやすいようなところはあるかと思います。

それから、金融所得内での損益通算ですけれども、これは損益通算をして損失分の税負担を国が分担することでリスクを削減する。それによりリスクを負った投資を促進するということ。他方で、損益通算の範囲を金融所得内に限定することで、勤労所得への波及を防止するといったことがあろうかと思います。

その金融所得内での損益通算ですけれども、これは過去の政府税調の議論ですと、損益通算の範囲を制限するといった話があったと思いますが、制限した場合は、利益は全額課税であることについてのバランスを欠くことになりますし、あと限度額管理というのが非常に困難であるという実務上の問題もあると思います。

こちらの参考資料1と書いてあります資料1-2のほうをご覧ください。こちらは私どもで、課税の非対称性というのを考慮した日本の株式投資の実効税率がどういうふうに推移してきたか、税制によって実効税率がどのように変わるかを説明した資料です。

課税の非対称性とは何かと申しますと、資料の1ページ目に説明しておりますが、同じ金融商品内の譲渡損益などの損益を年をまたいで通算できないという問題、要するに繰り越しとかができないというような問題、同一商品で異なる所得区分から損失を控除できないという問題、異なる金融商品間および他の所得間で損失を控除できないという問題の3つが挙げられるかと思います。

この非対称性を考慮した実効税率というのはどういうものであるかというのを、例えば3ページ目にありますように、100万円を用いて2年間株式投資を行ったとして2つのパターンについて試算しております。パターンAは1年目が損、2年目が利益で1年目に100万円の投資金額に対して10%の譲渡損、2年目に20%の譲渡益が出て配当は1年目、2年目度もに2%であった、パターンBは1年目に20%の譲渡益、2年目に10%の譲渡損10%が出て、配当は1年目、2年目とも2%であったという前提で、それぞれについて4つの税制のケース、譲渡損について繰越控除はできないし、配当とも通算できないという税制1のケース、税制2は譲渡損について翌年の譲渡益から繰越控除できるけれども、配当との通算は不可であるというケース、税制3は譲渡損について配当と通算でき、残額については繰越控除ができるケース。税制4は譲渡損に対する税相当額が直ちに還付されるといったケースについて試算した結果、実効税率は4ページ目にありますように、税制1の場合は平均では36.25%、税制2は28.18%、税制3は25.99%、税制4は17.29%になるということでございます。

5ページ目は過去の実績でそういう非対称性を考慮した実効税率というのがどうであったかというのを算出してみたもので、日本の株式に5年間投資を行ったことを想定して、5年間における非課税時の収益率と課税時の収益率を求めて実効税率を出しました。5年間の投資というのは、1年目に購入した株式を5年間保有し続け、5年末に売却したと考えるのではなくて、毎年の年度末に売却を繰り返して再投資するといったようなことを前提に置いて算定しております。

5年間保有するという形をとらなかったのは、1つはその5年間においての株価の上下というのがそのようなやり方だと反映できないといったことがございますし、あと毎年売却としたというふうに前提を置かないと繰り越しの効果というのがはじき出せないことなどを踏まえて毎年売却したというような前提でやっております。

その試算結果を見ますと6ページ目のような実績値になります。源泉分離課税が選択可能であった90年、91年のあたりは実効税率がかなり低かったわけですけれども、それ以降は、実効税率が20%を超えている年がかなり多いといったようなことが結果として出てきております。

今ご説明したのは実績値ということですけれども、次の8ページ目には理論値、100万円を投資して5年間株式投資を行ったという前提で、モンテカルロ・シミュレーションにより試算を行っております。ケースマル1は配当・譲渡益に対して税率を20%にして、配当と譲渡損との間での損益通算を可能とし、損失の繰越控除も行えるとした、言い換えれば、今の税制で税率を20%に上げたというケースです。ケースマル2は同じく法定税率を20%としていますけれども、損益通算の範囲を幅広にとった。税相当額はすぐに還付されるという前提、ケースマル3は今の税制の例です。ケースマル1と損益通算・繰越控除は同様で、法定税率を10%という形で出しますと、9ページのケースマル1は41.6%、ケースマル2は20%、ケースマル3が21.26%という実効税率がはじき出されています。

ケースマル1、即ちは現行の税制のまま税率を20%に上げると実効税率は41.66%であり、高くなっているのは損益通算に制限あるからということでございます。ケースマル2は損益通算を幅広に認めて税率を20%に上げた場合で、ケースマル3は現状の場合といったことでございます。したがいまして、税率を20%に上げるとした場合は、やはり幅広く損益通算を認めるという形にしないとバランスはとれないのかなといった感じでございます。

ちなみに、今の話は法人課税を考慮しない場合、即ち法人段階と個人段階の二重課税を考慮しない場合でございまして、二重課税を考慮すると10ページのような結果になるかと思われます。

資料1-1に戻りまして、2ページ目はイメージ図というのを設けています。これはいろいろな金融商品の損益を通算して、いろいろな金融商品に同じ税率を掛けて税額をはじき出すというような簡単なイメージでございまして、この中にはデリバティブとか為替差損益も含めるというやり方になろうかと思われます。

ちょっと最初の説明が長くなりましたが、金融所得課税の一体化については以上です。

続きまして、軽減税率に話を移しますが、軽減税率には2つの側面があろうかと思われます。

1つは政策税制としての側面ですね。これは低い個人のリスク資産保有比率を上げるというようなことが目的です。

それから、もう一つはそれによりリスクマネーを供給することによって、企業の資金調達を容易にするといった、そういった2つの目的があるかと思います。

こちらは、ですから政策目的のための軽減という位置づけになるかと思いますけれども、もう一つの側面は、二重課税の調整のために表面税率を低くしているということでございます。配当は法人・個人を通じて二重に課税されている。株式譲渡益も内部留保分につきましては、そういった二重課税が起こっているということが言えますので、その調整ということを考えた場合に、一つのやり方として軽減税率が考えられるということでございます。

それ以外に何か理論的にその税率を軽減する理由があるかというと、あまりないのかなと思います。例えば支出税論ということで、資金運用収益には非課税というような考え方がございますけれども、この考え方ではインフレ率というか、安全利子率の部分については理論上非課税になるかと思いますけれども、それを超過した部分については通常どおり課税するという考え方かと思いますので、安全利子率を超える例えば譲渡益などは通常通り課税するというふうになるのかなと思われます。

あともう一つよくあるのは長期保有を優遇するというような話でございます。長期保有を優遇するのは政策目的としてはあるのかなと思いますけれども、理論的には難しいと思います。

長期優遇というのは、もともと累進税率を前提にした話で、長期間保有していて多額の所得を得た場合に、一度に売却すると適用される税率が高くなってしまう。それを緩和するために、例えば2分の1だけ課税するとか、そういったことで調整していると思いますので、20%などの低い税率で一律に分離課税にしているという場合には、なかなか論拠としては、理論的な論理としては挙げづらいのかなといった感じがいたします。

以下、軽減税率のそれぞれの側面について、続いて説明させていただきます。まず、政策税制としての側面でございますけれども、ここでは幾つかポイントを分けて、参考資料の2、資料1-3のを使いながら説明させていただきます。最初に日本の株式市場の現状でございますが、ご存じのとおりかなり悲惨な状況にあるといったことは言えるかと思います。

1ページ目にリーマンショック以降の株価指数の回復を示していますけれども、日経平均がほかの主要な指数に比べると回復の度合いが非常に低いといったようなことが指摘できます。

投資家、特に国内の投資家の投資意欲ということで見ますと、これは2ページ目、3ページ目に、金融庁からも同じような資料が示されましたが、売買金額に占める個人の割合長期にわたり低迷しているといったことがございます。3ページ目のほうにいきますと、保有比率で見ると趨勢的には下落しているといったようなことがございます。

投資信託を見ましても、4ページ目にありますように、投資資産全体に占める株式の比率、特に円建ての株式の比率は非常に低いという状況でございまして、投資信託全体に占めるような国内株の比率というのは1割程度に過ぎないといったような状況でございます。

こういった数字以外に、例えば最近聞いた話だと、ここ最近入社した弊社グループの若手社員では、顧客に日本株を売ったことがないというようなセールスマンも結構いるようでございまして、極端に言えば、日本人にすら見向きもされない市場になってきているというような状況なのかなという感じはいたします。

そういった状況の上さらに、5ページ目にありますように、新興企業のIPOは非常に低迷しているという状況でございまして、世界のIPO件数に占める比率というのはもう非常に微々たるものになってきております。これがわが国の株式市場の現状でございます。

政策税制としての軽減税率ですが、効果として期待されているのは、個人の自助努力による資産形成を促進するということと、リスクマネーの供給によって企業の資金調達を直接金融にシフトするといった、この2点だと思うのですが、果たして、期待通りの効果があったのかどうかを見てみたいと思います。

6ページ目は、あまり株価への影響を言うのはどうなのかとは思いますが、2002年の11月6日、これは今の10%税率を配当に導入するというアナウンスが日経の1面にでかでかと出た日だったと記憶しておりますが、それ以降の高配当利回り銘柄の株価の推移が図表1で、図表2が全体の市場に占める高配当利回り銘柄の相対的な株価の推移を示したものでございます。配当利回りの高い銘柄の株価が全体に比べても、日経のアナウンスがあった後高水準で推移していたというようなことが1つございます。

それから、7ページ目、これは金融庁が示された資料ですが、軽減税率についてよく金持ち優遇ということが言われますが、むしろ効果としては高所得者層ではなくて中所得者層の株式保有比率上昇に効果がございました。高所得者層、例えば通常所得の限界税率が50%の所得者層にしてみれば、10%が20%に上がったといっても大した痛みはないのかもしれませんが、中堅所得者層にしてみると、通常の勤労所得よりもむしろ税率が高くなってしまうというようなことがあると思われます。そういったところから考えると、軽減税率は中堅所得者層のほうにむしろ効果があったということが言えるのかなと思われます。

8ページ目は、これは全世帯の年収別の株式・株式投信の保有割合です。2003年以降、今の10%税率だ導入された以降、徐々に中堅所得者層の保有する割合は増えてきているという傾向は見られるのかなと思います。

ただ、9ページ目に示しましたように勤労者世帯で見ますと、増加傾向にあるものの、それほど顕著には増えてはおりません。とするとこれは自営業者と高齢者、特に高齢者の世帯で保有比率が増えているといったことが考えられるかと思います。高齢者のほうがチャレンジャーだというのはあまり望ましいことではないかもしれないので、若年層の投資を増やすという意味で、例えば日本版IRAとか、そういった政策が必要になってくるのかなと思います。

それから10ページ目に示したように、扶養控除とか配偶者控除見直し後の税制を前提に総務省の統計を用いて見ますと、限界税率が15%となる給与所得者の比率というのは大体半分ぐらいで、20%になる給与所得者の比率は7割強といったところでございますので、10%から20%への税率の引き上げというのはこういったところに影響を与える可能性はあるということは指摘できるかと思います。

11ページは、リスク資産の個人金融資産に占める比率がどの程度上昇しているかを示しております。個人金融資産に占める比率は株式は軽減税率導入前は4%だったところが直近では7.1%、投資信託が2.1%だったところが3.8%と一応上昇しております。ただ同期間の株式保有金額の増加が40%強だったのに対して日経平均は39%、TOPIXが24%上昇しており株価上昇の影響が大きいというところがあり、数量的にはまだそれほど増加しているとまで言えないのかなという感じはしています。本格的な投資促進はまだ未実現と言えるのではないかと思います。

このような政策効果ににつきまして、一体化で代替できるかどうかという点ですが、次のページをご覧いただきたいんですが、ここでは、損益通算を行って税率を引き上げる場合の効果を考えています。損益通算を完全に行った場合の効果として、1つはリスクが減る、例えば、税引き前で利益が100、損失100だったのが税率20%にすると利益が80、損失が80ということで、収益の分散が減りますので、その結果リスクが減ることになります。

さらにリスク資産の税率を引き上げることによって、リスク資産の投資比率が上がります。例えば、目標利益を5%と設定した場合に、税引き前の期待収益率が非リスク資産は2%、リスク資産は10%であったとします。税率がそれぞれ20%と10%だった場合は、5%の目標を達成するためにはリスク資産の比率は46%でよかったのが、税率を引き上げることによって、リスク資産の税引き後の期待収益率は下がりますので、同じ目標5%を達成するためにはリスク資産の比率を53%に引き上げないといけないといったようなところが効果として考えられると思います。ただ、実際の個人の投資家は、こういう目標利益を設定した運用というのを実際に行っているのかどうかというと、かなり怪しいものがあるのかなという感じはいたします。

次のページとその次のページは、ファイナンシャルプランナー対象に2006年と2007年にアンケートを行った結果でございます。このときはファイナンシャルプランナーですら損益通算よりも10%の税率のほうがいいという意識でいたということでした。さらにその次の2010年6月の最近の証券投資に関する意識調査で見ますと、損益通算の範囲の拡大の効果というのは「わからない」という回答が半分ぐらい占めていて、10%税率の維持を望むような回答が多いということからしますと、投資家サイドからすると10%税率を廃止し、税率を20%に引き上げて損益通算を拡大することによって、同じような効果が得られるかどうかというところは、まだ十分理解されていない、というよりも、もともと効果が得られるかどうかもはっきりわからないため、10%税率維持という意見が投資家において強いのかと思われます。

次に、二重課税の調整という論点について説明いたします。利子、配当、内部留保がそれぞれ100あったとして、法人段階で40%課税され、配当についてはさらに所得税が課税されます。利子につきましては、法人段階では損金算入され非課税であるため、法人と個人の段階のトータルの税率は20%となりますが、配当につきましては個人の段階で税率を利子と同じ20%にしたとしても、法人と個人を通じたトータルの税率は52%となり、二重課税によってトータルの税負担は利子より重くなっています。

このように、総合課税の場合だけではなくて、分離課税、20%という税率の分離課税にしたとしても、依然二重課税の状態というのはあるということ、あと配当だけではなくて内部留保につきましても、その次の次のページをご覧いただきますように、内部留保分が株価に反映されるということを考えますと、その譲渡益については二重課税の状態が生じています。実際にこの譲渡益の二重課税につきましては、米国の財務省の報告でも取り上げられておりましたし、ノルウェーではかつてRISK方式という形でこの二重課税を調整していたということがございます。

その次のページは、内部留保と株価の推移を示しております。各企業3月期の決算とその45日後、決算発表が終わった段階でのTOPIXの推移を比較したものでございます。きれいに重なるとまでは言いませんけれども、内部留保と株価というのはそれなりの連動性が見られるということで、二重課税ということが実態として全くいえないということではないのかなと思われます。

これらの点を考えますと、単に表面税率を20%にそろえるだけではなくて、金融商品間でも法人・個法人を通じた実質的な負担の中立性確保が必要ではないかと思われましす。これが二重課税の調整が必要だという理由でございます。一体化との整合性を考えれば、個人の段階というよりは、法人の段階で調整する方法が本来望ましいわけですけれども、例えばそのやり方として支払配当損金算入というやり方がございますが、これは配当しか二重課税の調整ができないということと、税収への影響が結構あるのではないかと思われます。

あとACE方式というやり方が最近出てきています。自己資本の正常収益分を利子と同様に法人の所得から控除するというやり方のようです。そうすると自己資本の正常収益分についての二重課税というのは、配当のみならず譲渡益についても調整できるわけですが、正常収益の算定というのはどうやるのかということや税収への影響が問題になるかと思われます。

その他、CBIT方式という方法がございます。CBIT方式というのは、こちらの参考資料3の13ページに挙げておりますが、概要は法人段階でむしろ利子を損金不算入とし、法人税率を所得税率にそろえて、個人の段階では、利子、配当、留保所得分の譲渡益などを非課税にするというやり方で二重課税を調整します。この方法については、個人段階で非課税化ということまではなかなか難しいのかなと思われますし、利子の損金の不算入については経済界のかなりの反対ということが考えられます。

ということで、代替案といたしまして次のページにありますように2分の1課税といったような工夫が一つ考えられます。この方法では二重課税の完全な調整というのは無理なわけですけれども、一部緩和できるということと、あと20%、10%という複数税率を使うよりは、2分の1課税というやり方で二重課税を調整して、税率は20%でそろえるというやり方をしたほうが、一部ではございますが損益通算もできますし、特定口座での対応も容易である、それから個人投資家への心理的な効果というのも結構期待できるのかなというふうに思われます。仮に譲渡益も2分の1課税にするのであれば、譲渡損も半分だけ控除という形にする必要があります。でないと、ロスの控除だけ多目になってしまいます。

配当2分の1課税にした場合の問題点ですが、配当取りが起がこり得るということの他に、株式投資信託の分配金をどういうふうに扱うのかといったようなことが一つ大きな問題になるのかなと思われます。軽減税率に関しては以上でございます。

それから、飛びまして日本版ISAの位置づけでございますが、これは10%税率の代替ということで位置づけられており、例えば日本版IRAとか、そういったものとはまた別種のものであるかと思います。

個人投資家の証券投資に関する意識調査では、「利用したい」が20.7%、何か意味がよくわからない選択肢ですけれども「まあ利用したい」が22.8%という結果でございますが、この制度と若干似たような制度として緊急投資優遇措置というものが過去にございました。元本1,000万円の非課税措置でございます。

今回の日本版ISAは元本300万円ということで非課税となる元本は1,000万円よりも少なくなっています。ただし、投資期間は前回が1年ぐらいだったのに対して今回は3年と長いわけですけれども、私には前回の緊急投資優遇措置があまり使われなかったという記憶がございまして、日本版ISAという制度のコストベネフィットというのはどうなのかなというところが一つ気になるところではございます。

最後に納税システムについて述べさせていただきます、すみません、長くなって申しわけございません。金融所得一体化になった場合に、納税方法は原則は申告納税ですけれども、特定口座を活用するというのが現実的ではないかと思われます。特定口座の中でいろんな損益を入れて通算することによって申告が必要な機会というのを最小限に減らすことができます。

ただし、その次のページにありますように、現在は異なる特定口座間の損益通算は確定申告を行わないとできない。例えば、証券会社と銀行とで取り扱っている商品は違うわけですね。典型的な例は預金の利子と株式の損益の通算です。これを通算しようとした場合に現状では確定申告を行わないといけない。税務署に行って納税事務負担を負うことになります。

こちらにつきましては、次のページにありますように、税務当局が、特定口座を名寄せし、損益通算するシステムを設けて納税者の事務負担を軽減する。これによって実質的な源泉分離化というのを図る。その際には、名寄せのためには番号というものを導入するといったような対応が考えられるのではないかと思います。このような対策を実施することで、一体化に向けての納税環境面の整理を同時に進めていく必要があるのかなというふうに思います。

ちょっと長くなりましたけれども、私の説明は以上でございます。

○神崎政策課長

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして諸富委員からご説明を賜りたいと思います。

よろしくお願いします。

○諸富委員

ありがとうございます。

私は、今、吉井委員からちゃんと詳細、金融に関する税制のご意見を触れられまして、私自身はその金融関連の税制の専門家ではないので、税制全体の中で金融、あるいは資本所得課税をどう位置づけるべきかというお話をさせていただくということにしたいと思います。ちょうど前回のときに森信委員がお話をされた論点と後でオーバーラップしてくるかというふうに思います。

それで、まず1ページ目ですけれども、私自身も前回の発言の中でお話ししましたように、所得課税のあり方自身が非常に経済のグローバル化が引き起こす大きな変動の中で、世界的に1980年代以降改革の流れが起きているというふうに考えておりまして、その中で森信先生からもお話があったような包括的取得税というものを徐々にすることができなくなったというのは、認識はそのとおりかというふうに思います。

その中で、二元的所得税というのを恐らく位置づけられてくるのでしょうし、ただ二元的所得税の位置づけ評価というものについて、若干後でもう少し詳しく触れたいと思います。

金融所得税の資本所得課税をどういうふうに位置づけていくかという中で、グローバル化への対応というだけではなくて、恐らく戦後包括的所得税がいろいろな意味で浸食をして本来のそれがねらっていた法制課税のあり方が崩れていく中で、ある種各国が独自に所得税なんかでも再建しようとしているのではないかと、それでその中でいろんなタイプが出てきておりまして、二元的所得税をそういった所得税の公平課税のあり方としての所得税のあり方を再建する中で、二元的所得税を位置づけていくべきではないのかというのが今日のお話の論点でございます。

グローバル化の中でももちろん租税競争、それから移動性の高いものに対して軽課をする傾向、それから所得税のフラット化が進行することによる垂直的公平性の喪失、こういったあたりが今全般的に進んでいることではないかなというふうに思います。

一方で再構築がどういうふうに行われているのかという点を私は関心がございまして研究を進めているわけです。

2ページ目に入りますけれども、一体公平な税制とは何かということで、租税としては一応包括的取得税を中心とする租税体系モデルが一応理念系としてこれまではあって、包括的所得税に法人税、もちろん配当課税に関する与信が随分議論されたような調整ということを念頭に置いた法人税、キャピタルゲイン課税をなかなかストレートに行うことが難しいために、それを代替するものとしての資産課税ということでセットにしたモデル、これに対して支出税を中心とする租税体系モデルが一方であって、支出税をはめ込んでおきながらキャッシュ・フロー法人税で一方でそちらのほうにつかまえる。

ただ、将来の最後の時点で貯蓄に対しては課税なされないわけですが、一応その人生の最終段階では相続税、譲与税というところでつかまえるというようなタイプの体系、こういったものが理念系として立つのではないかというふうになります。

3枚目にいきますけれども、実際にはどちらも純粋な理念系としては実現していないというふうに思います。

1970年代以降は、特に包括的所得税の欠陥ということについて鋭くいろんな指摘が行われました。実際に徴税技術上の困難、その他の伴う問題のために、包括的所得税問題ありと言われた。ただ、支出税が実現したのかというと、これもまたスウェーデンなんかが最もその実現に近い国ではないかと言われながら、しかし実現していないのもまた現実として、他方で前回森信先生からご紹介ありましたアメリカの貯蓄支援税制というように、事実上、ある種なし崩し的に支出税化へ向かっているという見られる動きも見られるわけです。

年金基金とか、その他のものを貯蓄に対して当てられる、所得を非課税化して引き出すときに課税するというスキームになるわけですが、これはすべてそういった貯蓄に対してこういったスキームが適用されていくと、事実上支出税の所得だけが課税されて支出税になるということだというふうに思うんですけれども、そうしますとこういった動きを通じて事実上の支出税化へアメリカは進んでいるようにも見えるわけです。

ただ、ここに対するコメントとしましては、2005年以降、ブッシュ政権下で税制に関する大統領の諮問委員会というのができましたけれども、この報告書でも、現行のこういった貯蓄遺留分のスキームを含めた現行の税制の課税ベースというものが実は理論上の支出税の課税ベースよりもさらに小さなものになってきているということであります。これがもたらす問題というのは現行の問題としてある。ですから、諮問委員会は逆に支出税をかちっとつくることで、現行よりも課税ベースをちゃんと広げられるんだという、そういうメッセージも含んでいるわけですけれども、それとアメリカに非常に特有の問題としましては、スウェーデンなんかと異なって、スウェーデンの場合はきちっと付加価値税に決めて高い税率できちっと税収を上げて、支出の面で社会保障をかちっと行うという仕組みであるのに対して、アメリカの場合には、医療保険の問題も今回法案の成立に向けて非常に重みも置いていたり、基本的にその支出の面で、かちっと公的負担を入れて社会保障を構築するというスキームになっていないために、伝統的に税制優遇を使って民間資金で社会保障への備えを促していくというスキームであったために、非常にこういったものが発達をしてきて、住宅、年金、医療、こういったこの特に3政策分野で非常にこの貯蓄優遇のスキームが充実をしているという形になってきていますので、ある種の租税支出という形を使った特殊国家だという評価が与えられることぐらいのスキームがあるということで、そういう意味では体系的に実はアメリカの場合も支出税化が体系的に意図されて進められているわけではないという点は注意をするかというふうに思います。

次のページにまいりまして、グローバル化と新しい所得税類型ということについては、森信委員からもご案内があったところですけれども、こういう形で包括取得税に対して二元的な所得、それから準二元的所得税、フラット税、支出税という形での5分類がOECDの文献なんかでも話されているということ、いずれもその資本所得を労働所得と区別した上で軽課しているという点が特徴的かと思います。

しかし、こういったステップを踏んで、さらに各国が支出税に進んでいくのかといえば、私はそうではないのではないかというふうに考えております。むしろ次のページになりますけれども、いろいろな形で幾つかタイプがございますけれども、何らかの形で資本所得、それはここでこちらにあります図というのはLというのはレイバーですので、労働所得でそれ以外MとIというのは資本所得でございますけれども、これらを分離して課税する傾向にある。

ただ、Mというのはそのモバイルですので、移動性が非常に高い資本所得、Iというのは移動性の小さいインモバイルな資本所得ということで、不動産とか土地関連から得られるような資本所得というようなことで、これらを差別的に扱う資本所得を一体的に扱うというケースもあれば、より移動性の高いものだけを切り離して軽課をしていくスキームを採用しているところもあるという形で、いろんなタイプで資本所得を労働所得と切り離すはいいましても、いろいろなタイプがあり得るんだというふうに思います。二元的所得税はその中で移動性の高いものというのをあわせて労働所得から切り離して、一律分離課税をするという方向かと思います。

次のページにいきますけれども、こういった中で、グローバル化に対応した所得税の再構築の試みとして、二元的所得税を含めたこういったある種の準二元的所得税を含めて評価するべきではないかということで、例えばオランダのボックス課税、これは租税回避行動の遮断というところに非常に大きな目的が例えばあったと。

Box3というのを構築したわけですけれども、事実上それまでにはキャピタルゲイン課税は存在してなかったために、配当所得をキャピタルゲイン化して租税回避をするといったことが横行していたのをこれを難しくするためにBox3というものを活用したと、もちろんBox3は完全ではないんですけれども、またスウェーデンやデンマークの二元的所得税については、前回森信先生が非常に強調されたように、一たん資本所得と労働所得を切り離した上で、租税裁定行為を労働所得間の間に想定されている行為を遮断するということが非常に大きな目的としてあって、むしろその中で税収増と高額所得者に対する課税強化がむしろ行われたという点です。

そういう意味では、グローバル化のもとで非常に増大するその資本の国境を越える移動というものに対応しながら、他方で包括的所得税の問題点をある程度克服していくという動きとして二元的所得税を評価すべきだと。

次のページにいきますけれども、ドイツがやってきた一連の過去10年にわたる税制改革というのは非常に参考になるのではないかなと。森信先生がおっしゃいましたように、ドイツについては論文を書かれておりますけれども、基本的には過去10年間にわたってベースを広げていくと、税率は下げるけれどもベースを広げるというような試みではあったと思います。社民党政権下で、シュレーダー首相のもとで法人税率が劇的に引き下げられているわけですが、同時にベースを非常に広げていったということが一方で行われたということです。2005年に成立したメルケル大連立政権のもとでは、最終的に付加価値税率を19%へ上げているということが行われたということになります。

次のページにいきますけれども、法人税率に関しては国税と、日本でいう法人事業税に相当する営業税、両方とも下げて、合わせて30%以下へと低下させたということで、課税ベースの拡大についてはこのところに書かれてあるとおりでございます。

次のところにいきますが、同時にその一方で、ある種二元的所得税とも言うべき投資所得一元課税制度というものがあって、確かに25%で利子配当と譲渡益をそろえる形で課税をし、それらの3つの所得源に関しては、損益通算を認めるというような形になったわけなんです。ただ、同じように労働所得との通算は認めないという形で、2009年1月1日からこういった税制を導入しているということになります。

次のところにいきますが、そこから日本へのアプリケーションとしてのみということになりますけれども、累進所得税のフラット化が進行していく中で、結局所得税の財源調達能力というのは非常に低下していくわけですが、その点、過去の場合はベースを広げるという形でやってきたけれども、日本の場合はそこのベースを広げる努力がなされてこなかったために、非常に所得税の、もちろん財源調達手段、しかも非常に低下したという側面がございます。それから、もちろん所得再分配手段としての能力も低下をしてきているということでございます。

その次のページにいきますと、これはアメリカの配当減税の結果ですけれども、その結果としてどの場合でも大体所得が2,500万円を超えてきますと、実効税率が累進的じゃなくて、所得が上がれば上がるほど、逆に実効税率が下がっていくという形になっているということはよく知られていることなんですけれども、その原因の一つ、いろんな控除措置ももちろんございますけれども、こういった金融所得関連の定率分離課税というものが効いて、そして実際にアメリカ政府のもとに行われた配当軽課に関しましても、その恩恵は高額所得者に集中していて一番右の列に掲げられているとおりでございます。

次の金融所得一体課税についてということですが、趣旨は基本的に損益通算をしながら資本所得を切り離して、労働所得を切り離して一体課税するということについて、方向性は望ましいと思っておりますが、ただ北欧との関係から言いましても、例えばいろんな文脈の違いがあるということには注意しないといけないだろう。つまりそれまで住宅ローンに関する、向こうでは住宅ローン減税は非常に厳格に要件が決まっておりまして、すべて高所得者の裁定行為に利用できないような形になっておりまして、そこは北欧と違っていて、二元的所得税を入れたからといって、そういった課税ベース拡大の効果は生まれないという問題点がございます。

そもそも日本では、セミデュアリー・カム・タックスという評価があるように既に分離をされている。もちろん今後その損益通算の許容ということが課題として残っているということですが、前回の発言でおっしゃいましたように法人税率との関係、二重調整のことももちろん考えなきゃいけないわけですが、そういった問題があるだろうということでございます。

次の最後の紙ですけれども、そういう意味では現行の資本所得の適用税率というのは、一応この数字10%なんですが、株式市場活性その他の理由により、現在は10%の軽減税率となっている、これは非常に低い水準だということは間違いないわけでして、そういう意味では恐らく長期的に前回申し上げましたように、法人税率が今後どうなっていくのかということにもよりますが、恐らくドイツのような税制改革の範囲をとりますと、恐らく日本でもベースが拡大されていく、その中で金融所得一体課税を進めながら税率を20%へ本則へ戻していくということで、法人税率と資本所得税率をそろえていくような目指すべき方向をこういった方向感覚をきちっと考えるといった中で、その中で現行の10%税率については、最後に定量的な検証が必要ではないかというふうに書いております。吉井委員から非常にこれにお答えいただくようなご説明がございました。この点についてはディスカッションでということで、私の報告はこれにて終わらせていただきます。

どうもありがとうございました。

○神崎政策課長

どうもありがとうございました。

それでは、自由討議に入りたいと思います。ただいまのお二人の委員のご説明に対しまして、ご質問なりを含め自由にご議論していただきたいと思います。

それでは、大崎委員から。

○大崎委員

ありがとうございます。

吉井委員からご紹介いただいたシミュレーションの話は結構おもしろいなと思って聞いていたんですが、恐らくこれに対して若干批判的に見るとすれば、これはある意味確率的に売買が起きるタイミングを決めちゃっているので、こういう結果になるのかもしれないけれども、現実の投資行動としては、投資家は、できるだけ自分がもうかるように、有利になるように売買タイミングを決めるだろうから、こう単純にはいかないでしょうみたいな批判もできるかなと思うんですが、そういう見方について、逆に諸富先生はどういうふうにお感じになったかというのを、もし教えて頂ければと思います。

それから、もう1点。諸富先生のお話の中で、北欧とか、あるいはオランダなんかでは、課税ベースを広げるという観点から二元的所得税的なものが検討されたけれども、日本はちょっと違うんじゃないかというお話があったんですが、タイムラグがあり過ぎるとは思うんですけれども、前の私のプレゼンでも申し上げたように、日本は事実上キャピタルゲイン非課税みたいな状態が長くあって、少なくともキャピタルゲインへの実額課税というのは実現していなかったわけですよね。

それが実現することとの引きかえに、金融所得の分離化が図られるんだというふうに考えると、日本についても、少なくとも10年前と比べると課税ベースが広がるという議論は十分できるんじゃないかなと思ったんですが、それについてもご意見が頂ければと思います。

○神崎政策課長

それでは、諸富委員、お願いします。

○諸富委員

最初の点については、吉井委員がされたモデルの計算の中身を深く存じ上げてないのでコメントがしにくいんですけれども、恐らく計算される際には何らかの行動を前提に置かないといけないのだ、現実の世界ではさっきおっしゃられたとおり株等、その他の見られるところも、自分たちの期待収益が最大なるような行動をされるので、資産の予定と違うのかもしれないと思いつつ、しかし参照基準としては一つの試算結果として興味深い結果なのかなという感想になります。

あと2番目の点、そうですね、もう少し、ありがとうございます、この点は私も想定してなかった点なんですが、もう10年前からすればベースを広げながら、分離課税ということで、実は経緯としてはそこはセットだったんだということについては、なるほどなというふうに思った次第です。

だから、今日の話の視点というのは、どういう税制を目指していくのか、グローバル化の中で、資本所得に対して、ある程度労働所得と分離しないといけないということはもちろんのことですが、公平課税の視点というものをきちっと入れた上で、どういう公平な税制を構築していくのかという視点を一方で持っておくと。そして、それを政策課税を実施することの効果とバランスをとっていかないと、政策課税のその視点ばかりが強調されていき、公平課税の視点が失われることは望ましくないのではないかということを強調したかったわけでして、経緯の論点については勉強になりました。

どうもありがとうございました。

○神崎政策課長

それでは、森信委員。

○森信委員

いろいろ質問があるんですが、時間の関係で手短に。

まず、吉井さんの分析ですが、私も非常におもしろく拝聴しました。

それで、結論がちょっと違うなと思ったのは、例えば資料の1-2の9ページ、ここで3つのケース、マル1マル2マル3というシミュレーションをやっておられまして、一番実効税率が低いのは、税率20%ですべて損益通算を可能にした場合ですね。

ということは、これはまさに税率よりも損益通算の一体化を進めたほうが実効税率は少なくなるということを示しているのではないか思うんのです。だから、これは今後の金融庁の税制改革の中で、軽減税率を延長するのか、そうじゃなくて税率をそろえつつ損益通算の拡大を優先させるのかという判断に当たって、非常に有益な資料になると私は思いました。

それから、もう一つ今度は資料1-1ですが、同じような話で、損益通算を完全に行い、税率を引き上げる場合の効果ということで、税率をそろえて、損益通算を進めた方がリスク資産への投資も進む、一体課税を進めることによって収益率も高まるということが言えるのではないかと思うのですが。

それから、諸富先生のほうは、私は考え方については異論がないのですが、最後のところで、公平への配慮というのは、金融税制の中では不可能なので、例えば金融貯蓄税額控除とか、給付付き税額控除とかを組み合わせています。こういった形で、全体としての累進度を高めていく、公平と効率をセットとした税制改正がが行われているということだと思います。これはまた後で申し上げます。

以上です。

○神崎政策課長

それでは、小幡委員。

○小幡委員

前回休んでしまったので、議論はあったのかもしれませんけれども、あと初回にもちょっと議論があったんですけれども、田村政務官にご質問よろしいでしょうか。

この研究会のゴールというか、目的を、最初にも議論したと思うんですけれども、はっきりもう一度させたほうがと思います。

まず、そもそもの目的が個人の金融課税に関する制度をどう整理するかということに始まっていて、この課税制度の整理の目的は、個人にとって適切な投資、あるいは資産運用行動といってもいいかもしれませんが、それを促すための税制にするのか、それとも、個人を誘導することにより、金融市場を発達させようという目的でやるのか、さらに、それには長期的な意味だけでなく、短期的にも、金融市場を活性化するためにやるのか、たとえば、取引高を増やすとか言うことですが、そして、さらに、金融市場のプレーヤーである金融業界を成長させるための戦略なのか、成長戦略の一環としてそういうことを行うのか、あるいはもっと体系的にその税体系全体の中で金融税制をきれいに位置づけようという目的、税体系というものが目的何か、など、このようにいろんな論点が入ってくるので、全部違うと思うんですね。その目的によって議論すべきことも意見も変わると思うので、そこを再確認したいなと思うんですけれども。

○田村大臣政務官

ご質問はごもっともでありますが、ただ全部切り離せない話ですよね。切り離せない話だし……

○小幡委員

すべてやるということですか。

○田村大臣政務官

別に全部すべてを同じ優先順位で実現をしたいというふうに思っているわけではありません。

例えば、並べて考えてみないとわかりませんけれども、かなり相関関係があるので、切り離すのは無理だと思いますが、例えばまさに日本の金融業界の発展のためにというのは、ある意味で二次的と言ったら業界の人に失礼ですけれども、それは例えば当然日本の個人、国民という視点から見た場合には、よりその資産運用によって、組織から投資へという昔からの言葉でいいですけれども、それがまさに豊かになるという視点は昔からあるんだろうなと。

あるいは日本の金融市場のという視点からは、本日発表する新成長戦略でもそういう発想は当然ありますけれども、世界あるいはアジアのマーケットにおいて日本の金融市場が今以上の役割を発揮することによって、それが日本経済の発展に資するとかという面もあるでしょうし、そのどれを重視するかというのは、ちょっとそういう意味でわからないなと思いますが。

○小幡委員

ただ、議論をするときに、こういう目的でこうすべきだという議論を常に忘れちゃいけないと思いまして、私自身はいろいろ今も言いましたけれども、金融庁でこの金融課税という中の枠組みの限界と、その目先の目的からすると個人にとって適切な資産運用環境をつくるという意味での金融課税の議論をしたいと思いますし、するべきだと思います。

その観点に立つと、どういうふうに個人に行動させるべきかという問題もあって、私自身は何かかつてデイトレーダーの味方みたいな見方をされていたので、違和感があるかもしれませんけれども、個人に個別の株を生で売買をさせるというのは、あまりそれを誘導するというのはどうかと思います。勝手にやるのは自由ですけれども、少なくとも誘導すべきじゃないと思いますし、理想的な形というのは個人が配当を中心に長期に保有して、成熟企業を持って、あるいは優良企業を持って、親子代々引き継いでいくというようなイギリスの貴族みたいな形というのが最も望ましい、少なくとも株式に関してはと思っていますし、そうすると個別に売買するというよりは、本来であれば、コストの低くてバランスのとれた投資信託であればそれが一番望ましいと思っています。

ただ、投資信託というのは形式上コストのかかるものですから、個人が個別の株を買ったほうが完全に割安な状態になってしまうと困るので、コストの安い投資信託の誕生を促すためにも、個人が生で個別の株を買うのもそれなりに優遇というか、同じ横並びで扱わないと、いけないとは思っています。

そういう観点、そういうのが私自身の意見としてあるべき姿だと思ってます。この観点からは、金融課税についていろいろ今日シミュレーションとかいろんな議論はありましたけれども、基本的に配当を非課税することによって、間接的に長期保有を促し、部分的に二重課税の解消を図り、法人税の税率を変えることによって、長期的にはそのほかとの金融課税とのバランス、完全ではないんですけれども、とれるようになり、制度上シンプルということで、個人的にはそれがいいとは思います。ということで、今日いろんな角度からの議論があると思いますから、まとめていきたいなというふうに思っています。

以上です。

○田村大臣政務官

ありがとうございます。

確かにそういうターゲットですね、目的というのはより明確にしながら議論したほうが今後にも生きると思いますので、集約ができるかというのは、そもそもこの研究会自体は論点整理ですので、できるものは別にしたいと思っていますけれども、そこはいろいろ意見が分かれるのは逆に明確になるという意味でいいと思います。ありがとうございます。

○神崎政策課長

土居委員、どうぞ。

○土居委員

今の小幡委員の話に関連してなんですけれども、確かに政策ベースで制度をどう考えるかという問題はあるんですけれども、今の現状のこの金融税制がスタートラインとして金融商品間で中立的でないというところに問題があって、いわゆるその資源配分のゆがみといいましょうか、はっきり言えば株式投資に対しては参入が限定的にしか認められていないという意味で、その分だけ不利になっているというような部分があるというところから出発しているということがあるので、今日は吉井委員にプレゼンしていただいて大変勉強になったんですが、一足飛びに政策税制というところまでの議論をしてしまうと、問題はそもそも金融商品間で税制が中立的でないという問題を克服するという話と、さっき小幡さんがおっしゃったような、そういうこう、どういうふうに個人が金融商品に対して志向するかというそういうところの部分とか、ごちゃまぜになっちゃうという感じがするんです。

恐らく前半の話と後半の話は、多分それぞれにそれぞれのご意見があるんだけれども、一致する、それぞれに一致される部分、特に前半の部分というかつまり金融商品間で税制が有利、不利をつくってしまっているということはやめるべきじゃないかという話は、大分その意見は一致しそうな気がするんです。そうだと私の頭の中では最終的な絵姿なんていうのはあるんだけれども、現状から理想的なところまでの中間段階として、金融商品間で税制が中立的でないという問題をどうするかというステップがあって、そこからそれはちゃんと実現したとすれば、その次にさらにその投資信託に対してだとか、株式に対してだとかどういうふうに臨むかというような部分が出てくるというような印象があります。

すみません、ちょっとマイクを頂いて何か離さないというわけじゃないんですが、二、三、あと追加でさせて、その話と関係のない部分でコメントさせていただきたいと思います。

吉井委員のご発表で、非常に勉強になりまして、先ほど森信委員からも話がありましたように、シミュレーションは大変興味深い結果で資料1-2を拝見させていただきましたけれども、損益通算をすべて可能にするというところで税率を20%上げても実効税率がむしろ微減するというメッセージのほうがより正確になるかなと。

それで、資料1-2の10ページの最後のページなんですけれども、これはちょっと後の2番目の論点と重なるんですが、やややり過ぎかなと。つまり法人税というのは、転嫁帰着という話がありまして、つまり法人税はすべて資本に帰着するというわけでもなく、労働にも帰着するという部分があるということなので、法人税というものがその配当を分配する前に、本来配当で与えられるべきだったのに法人税に取られてしまったという前提でこれ議論をしているような印象があるんですけれども、必ずしもそうじゃなくて、ひょっとしたら法人税がなければもっと賃金が手取りで増えたかもしれないけれどもという、まさに法人税の転嫁と帰着という話があって、100%資本に帰着すればそうなんですけれども、必ずしも現実はそうではなくて、むしろ長期的には労働所得には労働所得に法人税は帰着するというのが経済学の標準的な理解ですので、ちょっとやり過ぎかなという感じ。

それから、もう一つは法人税との間での配当の二重課税という問題なんですけれども、これも実は古くて新しい議論といいましょうか、経済学の中でもその議論はいまだに続いているんですけれども、配当課税に対してその配当政策がどう変化するかという議論があって、オールドビューとニュービューという2つの見方が対立して、実際法科経済学の中ではあります。ニュービューというのは、結論から言えば内部留保を使ってそういうことをするということなので、配当所得課税は資本コストには影響を与えないという意味では、別に極端に言えば配当課税をするということは、株主に対する分割固定税ないしは配当減税をするということは株主の補助金になるというような、そういうような理解もありながらトラディショナルビューといいますか、オールドビューというのはどちらかというと吉井委員がおっしゃっているような見方に近いようなものになるんですけれども、そういう見方があるので、そこがどういうふうになっているかというところは、つまり具体的には企業の配当政策と税制との関係がどうなっているかということで、配当の二重課税のこうした影響というのもかかってくるというところは少し注意深く議論する必要があるのかなというふうに思います。

それから、吉井委員の5ページ目のその軽減税率というところで、政策税制としては、コメントに関しては先ほど申し上げたように、一足飛びに政策税制という話にいくんじゃなくて、資源配のゆがみ、金融商品間の非中立性という問題を付した上で、さらに何を目指すのかというようなところで言及するというほうがいいのかなというふうに思います。

それと二重課税の調整が必要だと、これは私も全くそのとおりだと思うんですけれども、それならば、むしろ法人税をゼロにしろというふうなことを理想とするべきだと。なぜなら、実は経済学者の中には、はっきり言えば今の日本の資本実績は過剰であるから、もっと資本所得を重課せよという、例えば一橋大学のサイトウ先生とかがおっしゃっておられるんですね。

だけれども、法人税は下げると。なぜならば法人税はさっき申し上げたように労働と資本のそれぞれの所得にどういうふうに帰着するかは、企業が置かれた条件次第で、法人税では課税すれば配当の二重課税というのは起こるんですけれども、実際の負担は株主だけじゃないかもしれない。だけれども、資本所得税は確実にその資本所得を受け取った人が税負担をするということになるということなので、そういう意味では二重課税を調整するということであれば、配当所得税というところではなく、むしろ法人税のところで法人税をそもそもやめてしまえば二重課税はなくなるという話が本来理想であるべきだ。だけれども、それができないならば云々というふうな記述になったら、その後の議論はすぐ入りたいというふうに思います。

それから、その後の後ろ3ページめくったところでファイナンシャルプランナーの話があるんですが、これを見たときに一言だけコメントすると、ファイナンシャルプランナーには、さらにもう一段経済学を勉強していただきたいなという感じがします。

そして、最後に諸富委員に対して一つお伺いしたいところは、公平課税という話をご議論なさったんですが、金融税制という面では、効率性の面はもう少しというか、むしろ公平性と並んで同じぐらい重要視して議論をするべきではないかと思うので、その点、効率性の観点からどのようにおとらえになっておられるかというのをお伺いできればと思います。

○神崎政策課長

それでは、ほかに。

では、和泉委員。

○和泉委員

私も同じようなことなんですけれども、二重課税のご説明を伺っていると大体が配当を2分の1にしたらどうかといった話が出てきて、私はこういう政策的にどういうふうに落とすかというようなことはよくわからないのですけれども、基本的にはあるべき姿から逆算して考えていきたいと思います。実際には難しいのかもしれませんけれども、私はやはり、法人税段階での調整のほうが筋が通るような気がしていまして、それが難しいからといって、いきなり落としどころとして半分といった考え方で説明をされると非常に違和感があります。

実際には、最終的にはどんなことも現実的なところに落としていくのだと思いますが、もしこの研究会が先ほど政務官がおっしゃったように論点整理の場であるのだとすれば、そこのところは一足飛びに行かないで、いきなり部分的に解消というのではなく、段階を踏んで整理したほうがいいと思いました。

それと、私は個人の投資家の方たちに触れる機会が非常に多いのですが、先ほどの話にもありましたように、今の日本国内の個別株投資、あるいは投資信託も含めて日本国内の投資に意欲を持っていらっしゃる方というのは少なくて、現実的には海外のもの、特に新興国のものなどに関心を持たれていて、多分これからの若い方たちは、中長期的に資産形成をするときにも、海外の資産を多く取り入れて保有していくのかなと思っています。なので、為替も含めてなんですけれども、金融商品間での中立性というお話があったように、さまざまな投資成果というか、所得に対して、違う形での税金のかかり方というのは非常に違和感があると。今までの感じで日本国内の株価だけに焦点を当てるというような考え方はもう時代に合わないのかなと思いました。

もう一つ、私はファイナンシャルプランナーを名乗って仕事をしているんですけれども、先ほどのアンケートを見たときは私もびっくりしまして、今のご指摘はもっともだと思いました。ただ、私自身は損益通算を広く適用して、税率を上げたほうがいいんじゃないかと思っているので、一応全員の意見じゃないよということを申し添えておきたいと思います。

○神崎政策課長

ありがとうございます。

太田委員、どうぞ。

○太田委員

吉井委員のご説明も諸富委員のご説明も大変勉強させていただきました。

諸富委員に伺いたい事項が二点ございます。

吉井委員のご説明は、私の理解としては、金融一体課税を達成しつつ、現在の株式の譲渡益と配当についての10%の軽課を理論的に基礎付けていると言えば宜しいでしょうか、結果として、税率20%で2分の1課税にすると実質的には税率10%になっているのと同じですので、その意味ではプラグマティックに言えば、株式について20%の軽減税率を維持しつつ金融一体課税についても理論的に基礎付けるご提案として、非常に興味深く伺いました。

私は、ただ全体的には、諸富委員の示唆されたところに非常に共感する部分が多くございまして、日本の場合にはドイツを教訓とするところが非常に大きいのではないかと思っているのですが、不勉強ですので、諸富委員に一点ご教示頂ければと思います。ドイツの場合には、これは先生のプレゼンテーションのペーパーの6ページ目、所得税改革の3つの異なるタイプのうち、このいわゆる差別的資本所得課税であると理解をしているのですが、要するに、インモバイルに該当する不動産等から得られる資本所得については、一体課税の範疇から除く趣旨であるという理解で宜しいでしょうか。また、モバイルとインモバイルとを区別して取り扱う際の線引きをどのような形で行っているのかという点についても、もしご教示頂ければ大変ありがたいと思っております。

二点目は、ドイツの場合には、私の理解だと所得税については現在税率15%から45%までの累進課税だと思うのですが、ドイツにおける金融所得の一元課税について、25%という税率が採用されているのは、冒頭に金融庁の方からご説明がありましたとおり、日本では、所得税率が14、5%であるところに住民税の最低税率5%を足し合わせると概ね20%になるということで利子所得などの税率が20%となっているというのとは異なり、大体所得税率の15%から45%までの間をとって25%というような議論なのでしょうか。不勉強でよくわかってないものですから、そこをもしご教示頂ければ大変ありがたいと思っております。

○神崎政策課長

お時間の関係がありますので、まず皆様からご発言いただいた上で、最後にまた吉井委員と諸富委員にはコメントをお願いできればと思います。

それでは、湊委員。

○湊委員

お二人のご発言どうもありがとうございました。

私のほうから手短に2つほどなんですけれども、1つは吉井委員のほうのプレゼンの中で、個人投資家の証券投資に関する意識調査という形で、6月にとられたもので損益通算の範囲の拡大については47%の方がわからないという形、これを見て私なりにもどうなのかなというふうに思ったんですが、これについては調査の母集団をどのように取るかがポイントで、預貯金を主体として保有している方々から見るとかなり違う意結果が生まれてくるのかなと思っておりまして、もう少し全体的な声というのを聞いてみたいという印象がありました。

それと、諸富委員のほうのプレゼンの中で一つご質問なんですけれども、ドイツにおける投資所得の一元課税制度の導入が2009年1月1日というところのページの中で、株式の譲渡益については原則非課税だったものを投資所得の中に入れて、実質二元的な形で導入して遮断をするというのが前提なんですけれども、ただ総合課税を選択しない限りは損益通算できないというような考え方をしていると聞きまして、逆に言うと、総合課税を選択すると労働所得と通算ができるという部分については、遮断が原則なんだけれども総合課税もいいよという部分についてどういう理由づけをされたのかなというのをお聞きしたいと思います。

以上です。

○神崎政策課長

ありがとうございます。

そのほかによろしいですか。

武田委員、どうぞ。

○武田委員

まずは両委員に、今日は大変詳しいご説明を頂きましてありがとうございました。

感想とコメントですけれども、まずは吉井委員のほうからご提示いただいたさまざまなシミュレーションの中で、特に1-2の資料の9ページ目と1-1の資料の非リスク資産とリスク資産といったところの試算結果を大変興味深く拝見しました。軽減税率の話と本則に戻すという話、税を一本化するという話、さらに損益通算の効果を具体的に数字によってご説明いただいたので、大変わかりやすかったですし、今後の議論を進める上で一つのベンチマークとして活用していけるのではないかと思っております。

1点質問ですけれども、この非リスク資産とリスク資産という試算においては、先日土居委員のほうからありましたように、リターンだけではなくて、これはボラティリティー、要するにリスクを調整した結果として、この試算結果が出るということで間違いないかということについて確認させていただきたいと思います。

あともう一つ先ほど小幡委員とそれに対して土居委員のほうからコメントがあったこの本研究会の考え方ですけれども、私自身は最終的には経済がよくなる金融税制というところに尽きるのではないかと思っております。

漠然としていますけれども、委員がおっしゃったことは結果的にはその目標に結びついていく、つまり個人にとって望ましい金融資産形成の場が与えられれば、それが最終的にはリスクマネーの供給を促すことによって新しい産業を生み出すことができるほか、資本移動が活発に行われて資本と労働が成長産業に移ることによって成長力が高まり、効率性が高まっていくと考えられますので、多分おっしゃられたことはすべて最終的にはその目標に結びついていくのではないかと思います。

その中で何をやるべきかという具体的手段としては、1つには今ある資源配分のゆがみを直すため中立性を高めていく、2つめは投資しづらい環境ならば簡素化していく、この2つの手段があり、ともに大切だと思います。

以上です。

○神崎政策課長

ありがとうございます。

吉本委員、もし何かございましたら。

○吉本委員

さっき言おうかと思いまして、すみません。

先ほど言おうとして手を挙げたんですが、先に言われてしまったので、いいかなと思ったんですけれども、お二人の委員が話題にしていたCFPのアンケートですけれども、私自身継続教育をお手伝いしたことがあって、あとFPの資格を持っているけれども、FPさんを教育している側の方に何人か今回の話を聞いたんですけれども、皆さん上のほうのレベルの人は軽減税率よりは損益通算をしてほしいとはっきりおっしゃいます。

おわかりの方が多いと思うんですけれども、ファイナンシャルプランナーの方って別に資産運用に強い人ってあまりいなくて、これで食べている人は非常に少ない。ですから、この人たちにこのタイプの質問をすることがちょっとかわいそうであって、もうちょっと違うことでやって、自分たちがこれができると非常にさらにアドバイスができるということで勉強している方が多いということですので、むしろちゃんとわかって答えている方もいらっしゃるというのを評価してあげてほしいなと。これはちょっと多分吉井委員もよくご存じだと思いますし、あれですけれども、だと思います。

それから、後の個人投資家のところの、前回も言ったんですけれども、FXとか何とかそういうものも考えれば、こういう質問も回答が変わってくる可能性があると思いますので、そういう意味で言えば、限定した質問に対しての反応ということだと思いますので、この辺のデータは読み方を考えれば、それでも損益通算を欲しいと言っている人が結構いるという部分を評価をしたほうがいいのではないかと私は思いました。

○神崎政策課長

ありがとうございます。

それでは、吉井委員、ご質問に対する回答、その他コメントを頂ければと思います。

○吉井委員

すみません。資料1-1のほうのリスク資産のウエートですが、これは別にそんなに大層なことをやっているわけじゃなくて、単にその目標利益を5%と見た場合に、税率が上がればリスク資産の税引き後の利回りが9%から8%に下がるので、同じ目標利益を達成しようと思ったらリスク資産の比率を上げないといけないという算数の話でございまして、リスクを考慮してとか、そういった高度な計算はしておりません。

むしろそのリスクの話は上の段で説明しております。税率を上げたほうが税金の収益の分散というのは狭くなるので、計算上リスクは減っていくのかなというようなことであり、これらの効果をここでは2つに分けて説明しております。

FPのアンケートは、実施したのが2006年と大分前であり、現状はまた変わっているかもしれませんが、ここで申し上げたいのは、理屈上というか、理論上は損益通算をして税率を上げたほうがいいというところが定説となっていると思いますが、実際の投資家とか業者はどうかというと、かなり認識にギャップがあるというのが私の印象でございまして、おそらくはそれが10%税率の維持を業界が税制改正要望として出し続けるということの一つの大きな原因かと思います。したがって、このようなギャップを埋めるようなことをやっていかないと、いつまでたっても、年末ごとに同じような議論を繰り返すことが続いていくのかなという感じがいたします。

二重課税の話につきましては、確かに法人税負担の全部が全部株主に付加されているというわけではないのでしょうが、二重課税の状態が全くないというような議論にはなっていないのではないかと思います。ですから配当については実質的に10%維持という形で落としどころをつくるとしたら、二重課税の調整という理屈で2分の1課税というやり方があるのかなという形で話をさせていただいております。2分の1にする理由というのは、今述べた理由と計算が簡単だという以外にはあまりないんじゃないかなと思います。

仮に配当を2分の1課税にする場合には、投資信託をどうするんだという実務上の問題があります。株式の比率が例えば半分だったら4分の1課税にするのか、もっと少なかった場合どうするんだというところを詰めないといけないと思います。そこは何か割り切って株式と同じにするか、あるいは投資信託にはそういった調整は全く認めないとするか、といった形の判断になってくるのかなという感じはいたしております。

私のコメントは以上です。

○神崎政策課長

それでは、諸富委員、お願いいたします。

○諸富委員

ありがとうございました。

私に頂いたコメントあるいはご質問に対する答えということで、ずっと委員からは金融課税に対して公平性の観点をどう考えるのかということなんですが、もちろん私もそういう意味では、今日の議論の仕分けからいきますと、損益通算を認めて税率を本則に上げていくといった望ましく考えています。その理由はさまざまな金融資本所得関係、実質的に税の取り扱いが異なることでゆがみが生じるということを直していくという点では、効率化の観点を重視していくことが望ましいというふうに考えております。

また、そういう税制を設計する中で、金融商品間の中の視点だけで議論を進めるんでなくて、税制全体としての公平課税が他の所得も含めて相対としてどういう姿になっていくのかを常に意識をしていくということが必要かというふうに思います。

あと、太田先生からご指摘になったモバイルインカムと非モバイルインカムのどこももっとも資本所得ですけれども、これの区別ということについては、ドイツの場合でもここの不動産及び土地の関係の所得をモバイルな所得として、こちらのモバイルとされているものをここに書いてありますように利子、配当、それから株式の譲渡益ということで、そこを2つの間で仕分けて、土地とそれから不動産に関する資本所得については労働所得と同じように合算して課税をしていくという形をとっているということになります。

それで、税率ですね、これはすみません、ちゃんとしたお答えができません。なぜ二重にこだわったのかということについては、森信先生も論文をここの点でも書いていらっしゃいますので、もしご存じでしたら森信先生に助けていただきたいんですけれども、どういう形でこの経緯がこういう形になったのか。恐らく日本でも先ほどご説明がありましたように、既に住民税、所得税、あわせたその最低税率との見合いというのは、恐らく参照基準になったのではないかという想像はいたしますけれども、確定たるお答えではございません。

湊委員に、遮断がこれは実は原則なのか、総合課税が原則なのかというドイツについてのご質問ですけれども、恐らくこれは遮断していく分離がこれは原則で、万が一総合課税をわざわざ選択するというのは多分25%よりも低い所得税率を適用されて、比較的低所得の方が総合課税を選択して、むしろ恐らくカウントを受けるというようなことが恐らく想定されているんではないかという、比較的少数の方だけなのではないかと思っています。

以上です。

○神崎政策課長

ありがとうございます。

森信委員、もしあれば、ございますでしょうか。

○森信委員

ドイツの税率はどうして変わったのかというご質問ですが、彼らがずっと議論していましたのは、二元的所得税にして、ドイツの貯蓄・資本が外国に逃げないようにしたいということです。その中で法人税率と資本所得に対する税率とあわせて資本に対する実効税率として計算して、それが勤労所得との関係でバランスがとれればいい、ということで25%という水準に決まったのではないでしょうか。

吉井さんがペーパーにもありましたね、法人税率が30%だったら、1マイナス0.3の残りのところに勤労所得課税がかかり、双方を足し合わせた水準が資本にかかる税負担で、これが、個人の所得税累進税率との関係でバランスがとれているかどうか、ということでございます。

○神崎政策課長

どうもありがとうございました。

○河内金融税制室長

すみません。先ほど来、会のゴールという話で、今日何人かの委員の方からご指摘がありましたので、若干事務的に補足というか、ご説明させていただきますけれども、小幡委員から幾つかのカテゴリーで個人なのか、マーケットなのか、業界なのかというようなご指摘がありましたけれども、基本的にこちらで議論していただいて副大臣の会議体での議論を経て、その後税制調査会の議論の場にいくんですが、税制調査会の議論の場でも恐らく今言ったうちのどれがゴールなんだというのは恐らく並立していて、それぞれの観点から税制の改正の要望を議論していくということになると思われます。なので、先ほど政務官がそれぞれが切り離せない論点であると思うという言い方をしましたが、恐らく税制調査会でもそういう観点のもとで、それぞれを切り離せない観点としてパラレルに考えながら議論していくということになるだろうと思います。

そういうことも踏まえまして、近々金融庁としましては、去年もやったんですが、税制改正要望のパブリックコメントを募集するという手続に入る見込みであります。近いうちに始まると思います。

そちらについても、そういった先ほどの小幡委員の類型ではないですが、それはどういう趣旨での要望なのかというようなことを今年は明らかにして出してもらおうと思っていまして、マーケットの成長に資するための要望ですとか、制度を簡素化するという趣旨からの要望ですとか、あるいは国際的な税制との整合性を保つという観点からの要望であるとか、あるいはそれぞれを複数含むような趣旨であるとか、そういうような趣旨を類型化した形で募集して、恐らくそういった類型化された論点のもとで、税制調査会で議論されていくという、そういうような形になるのではないかと思っておりますので、先々の税制調査会の議論に向けて、我々としての整理をしていきたいというふうに考えております。

以上です。

○小幡委員

ちょっといいですか。すごい意地悪な質問をしていいですか。

結局税制改正要望に集約するということですか。集約するという言い方はよくないかもしれないけれども。

○河内金融税制室長

初回のときに若干そこは説明したんですが、短期的にはまず税制改正要望で今年の年末に向けてどういうものが必要かというのが一つファクターとしてあるわけです。その中で損益通算ですとか、軽減税率というのは恐らく今年の短期的な意味での税制改正要望の土俵に乗るだろうから、そこは我々も重要な柱だと思っていますということで特出しをされていると。

ただし、同時に長期的に見た制度的にあるべき税制とか、そういった必ずしもこの夏の要望を年末までの決着というその短期的なスパンの土俵に乗るかどうかわからないけれども、そういった視野のものも議論としては排除するものではありませんというような整理をしていると理解しています。

○小幡委員

へ理屈なんですけれども、だから課税強化するようなすごい議論が出ても、それはありと。

○河内金融税制室長

それはありですね。

○小幡委員

要望で強化するときってあるんですか。税制改正要望で金融庁から向こうに行ったときに、すごい金融課税をしてくれという要望、あり得ないような気がするので。

○河内金融税制室長

そこは予算を要求する人は必ず多い予算を要求するし、税制改正を要望する者は必ず低い税率を要望する、といった必ずしもそういうステレオタイプが前提のものなのかという点もありますし、そこはざっくばらんに話を聞いてみたいという会の趣旨であると、そういう理解でいいと思います。

○小幡委員

わかりました。すみません。

○森信委員

業界どうのこうのということじゃなくて、投資を効率的なものにして日本経済を活性化しよう、個人投資家の利回りを向上させ老後の資産形成に役立てよう、そういうことで金融税制を考えていきたいと思いますけれども。

○小幡委員

結果的に総合課税を要望するということもあり得る話。

○森信委員

それはみんながそうするとなれば、そうなるでしょう。私は反対ですが・・

○小幡委員

わかりました。先輩。ありがとうございます。

○土居委員

ちょっと、今のパブリックコメントに関してよろしいですか。

パブリックコメントに対して1点要望というと変な話なんですが、幾つかの観点から意見を募集されるというのはとてもいいことだと思うんですが、一つあえてここは焦点があってほしいと思うのは、さっき私が申し上げたことと関連するんですが、今の税制がある金融商品にとって不利になっているということを是正してほしいという要望ということに対する意見というそういう形で一つのカテゴリーとしてそういうこう、非中立性という言い方はちょっと抽象的過ぎますけれども、現行税制がある特定の金融商品に不利になっているということを是正する要望と、ないしは意見というような枠を一つつくって頂けるといいんじゃないかと思います。

○河内金融税制室長

税制は公平、中立、簡素というふうによく言われますが、そういったところはカテゴリーとして拾えるような形にしようと思っています。

○神崎政策課長

それでは、時間ももう過ぎましたので、本日の研究会のほうを終了させていただきたいと思います。

次回でございますが、週明けの6月21日、月曜日、それも遅い時間で大変恐縮でございますけれども、18時からこの金融庁の建物の13階にございます共用第1特別会議室にて開催させていただきたいと思います。皆様お忙しいところでございますが、またご参加頂ければと思います。

本日はお忙しい中ご出席いただきましてありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局政策課総合政策室(内線3182、3716)

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