第3部 金融検査・監督等
第8章 業態横断的な検査・監督をめぐる動き
第1節 金融行政方針に基づく金融モニタリング
I 経緯等
金融庁では、検査・監督両局が緊密に連携し、オンサイト・モニタリング(立入検査)とオフサイト・モニタリング(ヒアリングや資料の徴求等)を効果的・効率的に組み合わせることにより、金融機関や金融システムに対するより深度ある実態把握に努めてきている。26事務年度には、検査と監督の基本方針を統合し、「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針」を策定・公表、27事務年度は、検査局・監督局に加えて企画部門や国際部門等を含めた金融庁全体の方針として、「平成27事務年度 金融行政方針」を公表し、これに基づきモニタリングを実施した。
II 金融行政方針に基づく27事務年度のモニタリング
金融行政方針では、第1部第2章第1節で記載した通り、
景気のサイクルに大きく左右されることなく、質の高い金融仲介機能(直接金融・間接金融)が発揮されること、
こうした金融仲介機能の発揮の前提として、将来にわたり金融機関・金融システムの健全性が維持されるとともに、市場の公正性・透明性が確保されること、
を通じ、企業・経済の持続的成長と安定的な資産形成等による国民の厚生の増大がもたらされることを目指して金融行政を行うこととしている。
これを踏まえ、金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保の観点から、金融モニタリングにおいては、具体的に以下の重点施策を実施した。
(1)企業の価値向上、経済の持続的成長と地方創生に貢献する金融業の実現
○金融機関が、営業地域における顧客の期待やニーズを的確に捉えた商品・サービスを提供し、担保・保証に過度に依存せず取引先企業の事業性評価に基づく融資や本業支援等を通じて、地域産業・企業の生産性向上や円滑な新陳代謝の促進を図っているか検証。
○地域金融機関のビジネスモデルや提供されているサービスを、顧客がどのように評価しているかについて、取引先企業に対するヒアリング(企業ヒアリング)等を通じて、実態把握。
○企業ヒアリングの結果等を踏まえ、金融機関における金融仲介機能の発揮状況を客観的に評価できる多様な指標(金融仲介機能のベンチマーク)を策定。
(2)金融システムの健全性維持(景気に左右されない金融仲介機能の発揮)
○マクロプルーデンスの観点から、グローバルなマクロ経済・金融市場や金融機関の貸出・運用動向等を継続的に把握していくことを通じて、金融セクター全体に内在するリスクの状況をフォワードルッキングに分析。
○人口減少や高齢化の進展が地域銀行のビジネスモデルに与える影響及びそうした中でも比較的高い成果をあげている地域銀行について、そのビジネスモデルやガバナンス上の特徴を抽出・検証。
○3メガバンクグループが海外業務の拡大を継続する中、海外与信管理や外貨流動性管理について水平的レビューを実施。
第2節 業態横断的な金融モニタリング
I マクロプルーデンス
金融機関の経営の健全性は、内外の経済や金融・資本市場の動向により影響を受ける。他方、個々の金融機関の行動も、総体として、経済や金融・資本市場全体に大きな影響を及ぼしうる。このため、それぞれの動向を常時把握し、両者間の相互作用を分析することが重要である。
こうした観点から、市場分析部門、監督部門、検査部門等による一体的なモニタリングを通じて、金融セクター全体に内在するリスクの状況をフォワードルッキングに分析した。具体的には、グローバルなマクロ経済・金融市場や市場参加者の動向、資金の流れを把握・分析するとともに、大手金融グループを中心に、金融機関のビジネス、貸出・運用動向等のリアルタイムな把握に努めた。これらの実態把握と分析を通じて、我が国金融システムに及ぼす潜在的リスクが顕在化した場合においても金融システムの健全性が維持されるよう、金融機関や関係当局との対話を深めた。
II 金融行政上の重要テーマに関する横断的な金融モニタリング
金融行政方針に基づく金融行政上の重要テーマについて、業態横断的な目線で各金融機関の取組み状況等の実態把握を行った。
経営管理(ガバナンス)に関しては、3メガバンクグループ及び大手保険会社等を対象に、取締役会及び監査役会・監査委員会監査、内部監査、外部監査のいわゆる三様監査の機能発揮状況や連携状況等についてモニタリングを実施した。
その際、必要に応じて、各金融機関の社外取締役、監査役・監査委員、内部監査部門及び外部監査人と面談し意見交換を行うとともに、経営管理(ガバナンス)に関するグッドプラクティスを収集する観点から一般事業会社等へのヒアリングを実施し、金融機関に対するモニタリングに活用した。
統合的リスク管理に関しては、主に地域銀行を対象に、ビジネスモデルの持続可能性を支える統合的リスク管理に関するテーマとして、収益管理態勢や与信集中リスク管理態勢に着目した検証を行った。また、3メガバンクグループを対象に、戦略策定や収益・リスク管理の一体管理に資するリスクアペタイトフレームワークの構築状況について、実態把握を行った。
市場業務に関しては、日米の投資信託の比較・分析や、販売会社における販売姿勢、更には、ここ数年、販売額が顕著に伸びている貯蓄性保険商品やファンドラップについて検証を行った。
法令等遵守に関しては、犯罪による収益の移転防止に関する法律等が改正され、28年10月に施行されることとなっており、27事務年度も、26事務年度に引き続き、疑わしい取引の届出に関する取組みを中心に、業態横断的な水平的レビューを実施した。
また、金融機関における反社会的勢力との関係遮断に向けた取組みについては、26事務年度の水平的レビューの結果について、フォローアップを実施した。
システムリスクに関しては、基幹システムの将来計画と移行プロジェクトの状況をテーマに、モニタリングを実施した。
(注)上記のモニタリングの結果に関しては、平成28年9月15日に公表された「平成27事務年度金融レポート」を参照。
第3節 早期是正措置・早期警戒制度・社外流出制限措置について
I 早期是正措置の概要及び運用
-
1.早期是正措置の趣旨(資料8-3-1参照)
平成10年4月に導入された早期是正措置は、金融機関の経営の健全性を確保するため、自己資本比率という客観的な基準を用い、当該比率が一定の水準を下回った場合、予め定めた是正措置命令を発動するものである。
これにより、
金融機関の経営状況を客観的な指標で捉え、適時に是正措置を講じることにより、金融機関経営の健全性確保と経営破綻の未然防止を図ること、
是正措置の発動ルールを明確化することにより、行政の透明性確保にも資すること、
結果として、金融機関が破綻した場合の破綻処理コストの抑制につながること、
などが期待される。
-
2.発動基準
早期是正措置は、いわゆる業務改善命令、業務停止命令(銀行法第26条第1項等)の1形態として、自己資本の充実の状況によって必要があると認めるときに発動するものとして定められている(同条第2項等)。
早期是正措置の発動基準となる「自己資本の充実の状況」については、国際的にも認められた「自己資本比率」という基準を用いることとしている。
この自己資本比率は、国際的に統一的なルールとして認められた方式により算出されるものであり、株主資本(資本金、法定準備金、剰余金等)等の自己資本を分子として、また、リスクアセット(金融機関の保有資産やリスクの種類に応じて算出されたリスク資産額の合計額)を分母として算出される。
自己資本は、各金融機関の抱えるリスクを吸収するために経営の安定上必要不可欠な財務基盤であり、その充実は、各金融機関が金融市場において預金者や投資家からの十分な信認を確保する上で極めて重要である。
(注)自己資本比率 = 自己資本額(資本金等) リスクアセット額 -
3.措置区分
早期是正措置の措置区分は、自己資本比率の状況に応じて定められている。
当初は第1から第3までの3段階であったが、10年10月に成立した早期健全化法において、金融再生委員会が同法に基づき施策を講じるにあたって、早期是正措置との効果的な連携を確保するべきものとされたことを受けて見直しを行い、現在は4段階となっている。
また、同年12月の金融システム改革法の施行に伴い、早期是正措置の発動基準について、国際統一基準、国内基準に関わらず、連結ベース及び銀行単体ベースそれぞれの自己資本比率に基づくこととなった。
さらに、14年12月の事務ガイドラインの改正で、早期是正措置に係る命令を受けた金融機関の自己資本比率改善までの期間を3年から1年へ短縮するなどの厳格化を行った。
24年8月の省令等の改正で、国際統一基準行に対して25年3月31日から段階的に導入される新しい自己資本比率規制(バーゼル3)を踏まえ、早期是正措置の発動基準として、これまでの「総自己資本比率」に加え、「普通株式等Tier1比率」及び「Tier1比率」を追加した(同年3月31日施行)。
自己資本比率
措置の内容
国際統一基準行
国内基準行
第1区分
【普通株式等Tier1比率】
:4.5%未満2.25%以上
【Tier1比率】
:6%未満3%以上
【総自己資本比率】
:8%未満4%以上
4%未満2%以上
経営改善計画(原則として資本増強に係る措置を含む)の提出及びその実行
第2区分
【普通株式等Tier1比率】
:2.25%未満1.13%以上
【Tier1比率】
:3%未満1.5%以上
【総自己資本比率】
:4%未満2%以上
2%未満1%以上
資本増強に係る合理的と認められる計画の提出・実行、配当・役員賞与の禁止又はその額の抑制、総資産の圧縮又は抑制等
第2区分の2
【普通株式等Tier1比率】
:1.13%未満0%以上
【Tier1比率】
:1.5%未満0%以上
【総自己資本比率】
:2%未満0%以上
1%未満0%以上
自己資本の充実、大幅な業務の縮小、合併又は銀行業の廃止等の措置のいずれかを選択した上当該選択に係る措置を実施
第3区分
【普通株式等Tier1比率】
:0%未満
【Tier1比率】
:0%未満
【総自己資本比率】
:0%未満
0%未満
業務の全部又は一部の停止
(注)普通株式等Tier1比率及びTier1比率については25年3月31日より段階的に適用し、27年3月31日より完全実施。
保険会社については、「保険金等の支払能力の充実の状況を示す比率」という客観的な基準を用いる早期是正措置を11年4月に導入した。(資料8-3-2参照)
-
4.発動実績
27事務年度における早期是正措置に基づく是正命令の発動実績はなし。
※早期是正措置導入後の発動実績の累計
銀行等
14件
信用金庫
23件
労働金庫
0件
信用組合
69件
系統金融機関
3件
保険会社
1件
(注)労働金庫については厚生労働大臣と金融庁長官の連名で、系統金融機関については農林水産大臣と金融庁長官の連名で、命令が発出される。
II 早期警戒制度について
-
1.趣旨(資料8-3-3参照)
14年10月の「金融再生プログラム」においては、「早期警戒制度の活用」として「自己資本比率に表されない収益性や流動性等、銀行経営の劣化をモニタリングするための監督体制を整備する」こととされた。
これを受け、早期是正措置の対象とはならない段階における金融機関であっても、その健全性の維持及び一層の向上を図るため、継続的な経営改善への取組みがなされる必要があるとの観点から、行政上の予防的・総合的な措置を講ずることにより、金融機関の早め早めの経営改善を促す仕組みとして同年12月に「早期警戒制度」を整備した。
-
2.概要
基本的な収益指標、大口与信の集中状況、有価証券の価格変動等による影響、預金動向や流動性準備の水準を基準として、収益性、信用リスク、市場リスクや資金繰りについて経営改善が必要と認められる金融機関に関して、原因及び改善策等についてヒアリング等を行い、必要な場合には、銀行法第24条等に基づき報告を求めることを通じて、必要な経営改善を促すこととしている。
さらに、業務の改善を確実に実行させる必要があると認められる場合には、銀行法第26条等に基づき業務改善命令を発出することとしている。
なお、14年12月の制度の導入時に設けられた収益性改善措置、安定性改善措置、資金繰り改善措置の3つの措置に加え、15年3月の「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」を受けて、同年6月末から新たに「信用リスク改善措置」を追加した。
また、19年3月末から実施されたバーゼル2の第2の柱への対応として、18年3月には主要行等向け及び中小・地域金融機関向けの各監督指針を改正し、銀行勘定の金利リスクに係るモニタリング(19年4月より実施)を含む早期警戒制度の規定の見直しを行った。
保険会社に対しては、15年8月に早期警戒制度を導入し、早期是正措置の対象とはならない保険会社であっても、その健全性の維持及び一層の向上を図るため、早め早めの経営改善を促すこととした。
金融商品取引業者に対しては、20年4月から第一種金融商品取引業を行う者について早期警戒制度を導入。自己資本規制比率の変動や有価証券の価格変動、為替変動の影響等の観点から個々の金融商品取引業者のリスクの所在を特定、早期の経営改善への取組みを促すこととした。(資料8-3-4参照)
III 社外流出制限措置の概要及び運用
-
1.社外流出制限措置の趣旨(資料8-3-5参照)
リーマン・ショック後の世界的な金融危機の教訓を踏まえ、国際的に活動する銀行等について、最低所要自己資本に加え、ストレス期における緩衝剤としての役割を期待して「資本バッファーの積み立てを求める規制」を導入することが国際的に合意された。これを受けて導入された社外流出制限措置は、「資本バッファー比率」が一定の水準を下回った場合、利益に対する一定割合まで配当・賞与の支払い等の社外流出行為を制限するものである。
-
2.発動基準
社外流出制限措置は、早期是正措置同様、自己資本の充実の状況によって必要があると認めるときに発動するものとして定められている(銀行法第26条第2項等)。
社外流出制限措置の発動基準となる「自己資本の充実の状況」については、国際的に統一的なルールとして認められた「資本バッファー比率」という基準を用いることとしている。
この資本バッファー比率は、資本バッファーに係る普通株式等Tier1資本の額(普通株式等Tier1資本の総額から最低所要自己資本比率を充足するのに必要な普通株式等Tier1資本の額を除いた額)を分子として、リスクアセット(金融機関の保有資産やリスクの種類に応じて算出されたリスク資産額の合計額)を分母として算出される。
(注)資本バッファー比率 = 資本バッファーに係る普通株式等Tier1資本の額 リスクアセット額 -
3.措置区分
社外流出制限措置の措置区分は、資本バッファー比率の状況に応じて4段階定められている。
資本バッファーの充実の
状況に係る区分資本バッファー比率
措置の内容
社外流出
制限割合資本バッファー第1区分
2.5%未満
40%
社外流出額の制限に係る内容を含む資本バッファー比率を回復するための合理的と認められる改善計画の提出の求め・実行の命令
資本バッファー第2区分
1.875%未満
60%
資本バッファー第3区分
1.25%未満
80%
資本バッファー第4区分
0.625%未満
100%
※早期是正措置における第1区分~第3区分に該当する場合、同時に資本バッファー第4区分にも該当する。
この場合、早期是正措置と社外流出制限措置の両方の内容を含む1つの命令を発出することが想定される。
(注1)上記の数値は、資本保全バッファー2.5%分のみを勘案した例示であり、カウンター・シクリカル・バッファーおよびG-SIBs/D-SIBsバッファーは含んでいない。
(注2)28年3月31日より段階的に適用し、31年3月31日より完全実施。
-
4.発動実績
27事務年度における社外流出制限措置に基づく命令の発動実績はなし。
第4節 金融上の行政処分について
I 行政処分の趣旨(資料8-4-1参照)
当庁では、立入検査、報告徴求等により、利用者保護や市場の公正性確保に重大な問題が発生しているという事実が客観的に確認されれば、明確なルールの下、厳正かつ適切な行政処分(注1)を行っているところである。
平成19年3月には、こうした行政処分に対する基本原則や、実際に処分を行う際の勘案要素について「金融上の行政処分について」として公表を行った。20年4月には、「金融サービス業におけるプリンシプル」の公表を踏まえた一部改訂を行い、各金融機関がプリンシプルに基づき、自主的な対応を的確に行っている場合は、処分軽減事由として考慮することを明確化した。
II 行政処分の業態別発動状況(資料8-4-2参照)
27事務年度における行政処分の業態別発動件数(注2)は、以下の通り。
銀行等 | : | 0件【0件】 | (注3) | |
協同組織金融機関 | : | 0件【0件】 | ||
金融商品取引業者等 | : | 35件【17件】 | ||
保険会社等 | : | 0件【0件】 | ||
貸金業者 | : | 0件【0件】 | ||
特定目的会社 | : | 0件【0件】 | ||
前払式支払手段発行者 | : | 0件【0件】 | ||
資金移動業者 | : | 0件【0件】 |
(注1)本節でいう行政処分とは、金融庁及び財務局等から発出・公表を行った不利益処分等(勧告、業務改善命令、是正命令、戒告、計画変更命令、業務改善指示、業務停止命令、登録取消し、許可取消し、認可取消し、業務廃止命令、役員解任命令等)をいう。
(注2)本節でいう業態の内訳は、銀行等(主要行等(銀行持株会社を含む)、外国銀行支店等、その他銀行(ゆうちょ銀行を含む。)、地域銀行(銀行持株会社を含む)、信託会社、銀行代理業者)、協同組織金融機関(信用金庫、信用組合、労働金庫、農水系統)、金融商品取引業者等(第一種金融商品取引業者、第二種金融商品取引業者、投資助言・代理業者、投資運用業者、投資法人、金融商品仲介業者、証券金融会社、登録金融機関、信用格付業者)、保険会社等(生命保険会社(かんぽ生命を含む。)、損害保険会社、保険持株会社、特定保険事業者、少額短期保険業者、少額短期保険持株会社、生命保険募集人、損害保険代理店、少額短期保険募集人(特定少額短期保険募集人を除く。)、保険仲立人)、である。
(注3)【 】内の件数は業務停止命令等(本節では、業務停止命令、登録取消し、許可取消し、認可取消し等をいう)の件数。
第5節 反社会的勢力への対応について
I 経緯
「犯罪に強い社会の実現のための行動計画-「世界一安全な国、日本」の復活を目指して-」(平成15年12月犯罪対策閣僚会議)を踏まえ、公共事業からの暴力団排除、企業活動からの暴力団排除等の暴力団の資金源に打撃を与えるための総合的な対策を検討するため、18年7月21日、関係省庁の申合わせにより暴力団資金源等総合対策に関するワーキングチームが設置された。また、20年12月には、「犯罪に強い社会の実現のための行動計画2008」が策定され、暴力団対策として、暴力団及び周辺者の経済活動からの排除に取り組んでいくこととしているほか、25年12月に閣議決定された「「世界一安全な日本」創造戦略」においても「民間取引等からの暴力団排除の推進」等の取組みが盛り込まれている。金融庁としては、関係省庁と連携を図りつつ、上記の目的の具体化に向けて対応を行ってきたところである。
II これまでの対応
-
1.暴力団資金源等総合対策に関するワーキングチーム
18年6月20日、第7回犯罪対策閣僚会議において暴力団資金源等総合対策に関するワーキングチームの設置を指示され、同年7月21日、関係省庁の申し合わせにより設置された(19年7月、暴力団取締り等総合対策に関するワーキングチームに改称)。
-
2.企業活動からの暴力団排除
-
(1)暴力団資金源等総合対策に関するワーキングチームの下部組織として企業活動からの暴力団排除グループが設置された。同グループにおいて、企業における反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応に関する「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(政府指針)の策定に向けた検討を重ねた。19年6月19日、犯罪対策閣僚会議幹事会における申合わせにより同指針が策定され、同年7月3日、第9回犯罪対策閣僚会議において報告された。
-
(2)金融庁では、19年7月、政府指針の周知を図るべく、関係業界団体に対して要請文を発出し、20年3月、政府指針の内容を踏まえた各業態の監督指針の改正を行った。25年12月には反社会的勢力との関係遮断に向けた取組み策を公表し、これを踏まえ、26年6月、反社会的勢力との取引の未然防止等の取組みを推進するための監督指針等の改正を行い、金融取引等からの反社会的勢力の排除に努めている。
-
(3)金融庁、警察庁及び全国銀行協会等で構成する「反社会的勢力介入排除対策協議会」や、各都道府県単位で設置される「銀行警察連絡協議会」等を通じて、反社会的勢力の排除に向けた連携を強化している。
これらの協議会での検討結果等を踏まえ、全国銀行協会は、暴力団排除条項の参考例を制定した(融資取引:20年11月、普通預金規定等:21年9月)。全国信用金庫協会など他の業界団体においても、この取組みを参考として、順次、暴力団排除条項の参考例を提示した。その後、全国銀行協会は、23年6月に、反社会的勢力の活動実態に即して排除対象をより明確化するために、参考例の一部改正を行った。
また、全国銀行協会は、22年4月に、反社会的勢力の情報を集約した共有データベースの稼動を開始したほか、25年11月、会員各行が他社(信販会社等)との提携等により金融サービス(融資等)を提供する場合の反社会的勢力との関係遮断を徹底するため、「反社会的勢力との関係遮断に向けた対応について」を決定・公表した。
-
(4)金融庁、警察庁及び日本証券業協会等で構成する「証券保安連絡会」や、各都道府県単位で設置されている「証券警察連絡協議会」等を通じて、反社会的勢力の排除に向けた連携を強化している。
これらの連絡会や協議会での検討結果等を踏まえ、日本証券業協会は、21年3月に、国家公安委員会よりいわゆる暴力団対策法に規定する「不当要求情報管理機関」としての登録を受け、業務を開始した。また、22年5月に、暴力団排除条項の導入の義務化等を内容とする自主規制規則を制定した。
また、同年4月に、警察庁に対し、保有する暴力団情報を活用できるよう支援を求める旨要望し、警察庁は、同年5月、情報提供を行う枠組みを構築する方針を公表した。その後、25年1月に、日本証券業協会のシステムと警察庁が保有する暴力団情報に係るデータベースとが接続(同年2月より稼働)され、警察庁へのオンライン照会が可能となった。
-
(5)生命保険協会は、金融庁、警察庁及び法務省等の関係機関との協議を踏まえ、23年6月、暴力団排除条項を導入した保険約款の規定例を策定・提示し、24年1月に公表した。また、25年11月、「反社会的勢力との関係遮断に向けた今後の取組みについて」を決定・公表した。
日本少額短期保険協会、日本損害保険協会においては、金融庁、警察庁等の関係機関との協議を踏まえ、暴力団排除条項を導入した保険約款の規定例等をそれぞれ同年4月、7月に策定・公表した。また、同年11月、日本損害保険協会は、「反社会的勢力の排除に向けた取組みを強化」を決定・公表した。
-
第6節 指定紛争解決機関
金融機関とのトラブルに関し、迅速・簡便・中立・公正な苦情処理・紛争解決を行うことにより、利用者保護の充実・利用者利便の向上を図ることを目的として、金融商品取引法のほか、銀行法や保険業法等の金融関連法において、「金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)」が設けられている。
指定紛争解決機関は、金融ADR制度において中核となる機関であり、行政庁がこれを指定・監督することにより、その中立性・公正性を確保する枠組みとなっている。
指定紛争解決機関の監督に当たっては、「金融行政方針」及び「指定紛争解決機関向けの総合的な監督指針(平成25年8月2日策定)」に基づき、紛争解決等業務の運営態勢、紛争解決等業務の適切性及び紛争解決等業務の検証・評価等を評価項目とした監督を行うことで、利用者の信頼性向上や各機関の特性を踏まえた運用の整合性確保を図っている。
28年6月までに、下記の団体を指定紛争解決機関として指定している。
(28年6月30日現在) | ||
指定日 |
機関名 |
業務の種別 |
---|---|---|
22.9.15 |
一般社団法人全国銀行協会 |
|
22.9.15 |
一般社団法人信託協会 |
|
22.9.15 |
一般社団法人生命保険協会 |
|
22.9.15 |
一般社団法人日本損害保険協会 |
|
22.9.15 |
一般社団法人保険オンブズマン |
|
22.9.15 |
一般社団法人日本少額短期保険協会 |
|
22.9.15 |
日本貸金業協会 |
|
23.2.15 |
特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター |
|
第9章 預金取扱等金融機関の検査・監督をめぐる動き
第1節 監督指針等
I 主要行等向けの総合的な監督指針等
主要行等向けの総合的な監督指針の改正
本監督指針については、平成17年10月28日に策定した後、環境の変化や新たな問題に的確に対応するために、随時、改正を行ってきたところであり、27事務年度においても以下のとおり改正を行っている。
(1)資本バッファー規制に係る改正(27年11月26日)
22年12月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)により公表された「より強靭な銀行および銀行システムのための世界的な規制の枠組み」等に基づき、国際統一基準行等に係る資本バッファー規制を導入するため、国内のシステム上重要な銀行(D-SIBs)の選定方法を記載する等所要の改正を行ったもの(28年3月31日より適用)。
(2)金融庁への役員等の氏名届出等に係る改正(28年3月1日)
金融機関が金融庁に役員等の氏名届出等を行う際に、現在の戸籍上の氏名とともに、婚姻前の氏名を併記することを可能とするため、内閣府令等とともに所要の改正を行ったもの(28年3月1日より適用)。
(3)「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえた改正(28年3月31日)
27年3月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)及び証券監督者国際機構(IOSCO)により公表された「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえ、証拠金授受に係る態勢整備を促すための改正を行ったもの(28年9月1日より段階的に適用)。
(4)コーポレートガバナンス・コードの適用開始及び会社法の平成26年改正(27年5月1日施行)等に係る改正(28年6月3日)
コーポレートガバナンス・コードの各原則において求められている水準のガバナンス態勢を構築するにあたって、同コードに則って、適切に取組みを進めているか、との着眼点を追記するとともに、26年改正会社法において新設された監査等委員会設置会社の記載を追加するなどの改正を行ったもの(28年6月3日より適用)。
(5)「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」の施行に係る改正(28年6月30日)
「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」の施行に伴う所要の改正を行ったもの(28年7月1日より適用)。
(注)上記のうち、(1)及び(5)について、金融検査マニュアル等の改定を行った。
II 中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針等
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針の改正
本監督指針については、16年5月31日に策定した後、環境の変化や新たな問題に的確に対応するために、随時、改正を行ってきたところであり、27事務年度においても以下のとおり改正を行っている。
(1)金融庁への役員等の氏名届出等に係る改正(28年3月1日)
金融機関が金融庁に役員等の氏名届出等を行う際に、現在の戸籍上の氏名とともに、婚姻前の氏名を併記することを可能とするため、内閣府令等とともに所要の改正を行ったもの(28年3月1日より適用)。
(2)「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえた改正(28年3月31日)
27年3月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)及び証券監督者国際機構(IOSCO)により公表された「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえ、証拠金授受に係る態勢整備を促すための改正を行ったもの(28年9月1日より段階的に適用)。
(3)コーポレートガバナンス・コードの適用開始及び会社法の平成26年改正(27年5月1日施行)等に係る改正(28年6月3日)
コーポレートガバナンス・コードの各原則において求められている水準のガバナンス態勢を構築するにあたって、同コードに則って、適切に取組みを進めているか、との着眼点を追記するとともに、26年改正会社法において新設された監査等委員会設置会社の記載を追加するなどの改正を行ったもの(28年6月3日より適用)。
(4)「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」の施行に係る改正(28年6月30日)
「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律の一部を改正する法律」の施行に伴う所要の改正を行ったもの(28年7月1日より適用)。
(注)上記のうち、(4)について、金融検査マニュアル等の改定を行った。
第2節 預金取扱等金融機関の概況
I 主要行等の平成27年度決算概況(資料9-2-1参照)
主要行等の27年度決算の概況(グループ連結ベース)は、各行決算短信等によれば、以下のとおりである。
-
1.当期純利益は、債券等関係損益が増加したものの、預貸金利回りの悪化等により資金利益が減少したことや与信関係費用が増加したことなどにより、前期に比べ1,580億円減少の2兆7,240億円となった。
-
2.不良債権額(金融再生法開示債権)は、前期に比べ0.4兆円減少の3.1兆円、不良債権比率は前期に比べ0.13%ポイント低下の0.97%となった。
-
3.国際統一基準行の総自己資本比率は前期に比べ0.54%ポイント上昇の16.17%、Tier1比率は前期に比べ0.88%ポイント上昇の13.21%、普通株式等Tier1比率は前期に比べ0.68%ポイント上昇の11.38%となった。
国内基準行の自己資本比率は、公的資金の返済を進めたことに伴い、前期に比べ0.65%ポイント低下の13.30%となった。
II 地域銀行の平成27年度決算概況(資料9-2-2参照)
地域銀行の27年度決算の概況(銀行単体ベース)は、各行決算短信等によれば、以下のとおりである。
-
1.実質業務純益は、資金利益の減少等により、前期に比べ284億円減少の1兆5,905億円となった。
-
2.当期純利益は、与信関係費用の減少及び株式関係損益の増加等により、前期に比べ1,100億円増加の1兆1,729億円となった。
-
3.不良債権額(金融再生法開示債権)は、前期に比べ0.4兆円減少の5.2兆円、不良債権比率は前期に比べ0.25%ポイント低下の2.13%となった。
-
4.国際統一基準行の総自己資本比率は前期に比べ0.54%ポイント低下の14.10%、Tier1比率は前期に比べ0.19%ポイント上昇の13.19%、普通株式等Tier1比率は前期に比べ0.2%ポイント上昇の13.16%となった。
国内基準行の自己資本比率は、前期に比べ0.30%ポイント低下の10.20%となった。
III 再編等の状況
-
1.主要行等の再編等
27年7月以降、主要行等における再編等は、行われていない。
-
2.地域銀行の再編等(資料9-2-3~6参照)
27年7月以降に行われた地域銀行における統合・再編は、以下のとおりである。
-
肥後銀行、鹿児島銀行
(内容)27年10月1日に持株会社による経営統合
持株会社名:九州フィナンシャルグループ
-
横浜銀行、東日本銀行
(内容)28年4月1日に持株会社による経営統合
持株会社名:コンコルディア・フィナンシャルグループ
-
東京TYフィナンシャルグループ・新銀行東京
(内容)28年4月1日に東京TYフィナンシャルグループが株式交換により新銀行東京を子会社化
-
トモニホールディングス・大正銀行
(内容)28年4月1日にトモニホールディングスが株式交換により大正銀行を子会社化
-
-
3.外国銀行の参入
27年7月以降、以下のとおり、新たに銀行業の免許を付与した。(28年6月末現在、免許を付与されている外国銀行支店は53行)。
免許付与日
営業開始日
台新國際商業銀行(台)東京支店
28年6月9日
28年10月予定
-
4.外国銀行の退出
27年7月以降、以下のとおり、外国銀行支店において銀行業の廃止等があった。
営業廃止日
ハナ銀行(韓)東京支店(注)
27年9月1日
デプファ・バンク・ピーエルシー(銀行)(愛)東京支店
28年6月24日
(注)旧ハナ銀行東京支店は、27年9月1日付で旧韓国外換銀行在日支店に営業の全部譲渡を行い銀行業の免許が失効した(なお、旧韓国外換銀行在日支店はハナ銀行在日支店に商号変更)。
IV 不良債権処理等の推移
-
1.不良債権の概念(資料9-2-7~9参照)
-
(1)金融再生法開示債権
金融機関の不良債権の概念の一つに、金融再生法開示債権がある。これは、金融再生法(金融機能の再生のための緊急措置に関する法律)の規定に基づき、貸出金、支払承諾見返等の総与信を対象に、債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として、「破産更生債権及びこれらに準ずる債権」、「危険債権」、「要管理債権」及び「正常債権」の4つの区分に分けて開示するものである(主要行については11年3月期より、地域銀行については11年9月期より、協同組織金融機関については12年3月期より、開示が義務付けられた)。このうち「正常債権」以外の3つを「金融再生法開示債権」と呼んでいる。
-
(2)リスク管理債権
リスク管理債権は、金融再生法開示債権と並ぶ不良債権の概念の一つであり、貸出金を対象に、客観的形式的基準により区分(破綻先債権、延滞債権、3ヶ月以上延滞債権、貸出条件緩和債権)し、区分された債権毎に各金融機関が開示するものである。このリスク管理債権は、米国証券取引委員会(SEC)と同様の基準に基づくものであり、10年3月期より各銀行が全銀協統一開示基準等に基づき開示を開始、11年3月期からは、金融システム改革法に基づく銀行法等の改正により、全預金取扱金融機関に対し、連結ベースでの開示が罰則付きで義務付けられた。
-
-
2.金融再生法開示債権等の現状(資料9-2-10~17参照)
-
(1)金融再生法開示債権【全国銀行ベース】
(単位:%、兆円) 14年
3月期22年
3月期23年
3月期24年
3月期25年
3月期26年
3月期27年
3月期27年
9月期28年
3月期不良債権比率
8.4
2.5
2.4
2.4
2.3
1.9
1.6
1.5
1.5
総与信
512.1
478.3
475.0
486.6
508.9
530.2
556.7
562.3
569.7
金融再生法開示債権
43.2
11.7
11.5
11.8
11.9
10.2
9.1
8.6
8.4
破産更生債権
7.4
2.9
2.4
2.0
1.8
1.5
1.2
1.3
1.3
危険債権
19.3
6.7
6.6
7.2
7.3
6.4
5.5
5.2
5.2
要管理債権
16.5
2.1
2.5
2.6
2.8
2.4
2.4
2.1
1.9
正常債権
468.9
466.6
463.5
474.8
497.0
520.0
547.6
553.7
561.3
-
(2)リスク管理債権残高の推移【全国銀行ベース】
(単位:兆円) 22年
3月期23年
3月期24年
3月期25年
3月期26年
3月期27年
3月期27年
9月期28年
3月期11.4
11.3
11.5
11.7
10.0
9.0
8.5
8.2
-
-
3.不良債権問題への取組み(資料9-2-18、19参照)
不良債権の最終処理は、金融機関の収益力の改善や貸出先企業の経営資源の有効活用などに寄与し、新たな成長分野への資金の供給や資源の移動を促すことにつながるものであり、他の分野の構造改革と合わせてこれを加速することは、日本経済の再生に不可欠なものであった。
これまで、13年4月の緊急経済対策以来、主要行の破綻懸念先以下債権について、いわゆる「2年・3年ルール」「5割・8割ルール」等のオフバランス化のルールを設定し、それに則って不良債権の最終処理が着実に進められてきたところである。
(注1)さらに、14年10月の「金融再生プログラム」においては、主要行の不良債権比率を16年度末までに半分程度に低下させ、不良債権問題の正常化を図るとともに、構造改革を支えるより強固な金融システムの構築に取り組むこととした。同プログラムに盛り込まれた、主要行の資産査定の厳格化、自己査定の充実、ガバナンスの強化といった目標や、産業と金融の一体再生の取組み等の諸施策を約2年半の間、強力に推進してきた結果、17年3月期には主要行の不良債権比率は2.9%へと低下し、同プログラムの最も中心的な課題であった主要行の不良債権問題の正常化という目標を達成した。
(注2)なお、17年10月に策定した「主要行等向けの総合的な監督指針」においては、「2年・3年ルール」、「5割・8割ルール」といったこれまでのオフバランス化ルールを取りやめることとする一方、不良債権の早期認知、早期対処のための銀行の不良債権管理についての総合的な着眼点を明確化することとし、不良債権問題の再発防止を図ることとしたところである。
第3節 預金取扱等金融機関に対する金融モニタリング(資料9-3-1参照)
I 主要行等に対する金融モニタリング
3メガバンクグループなどグローバルに活動する金融機関は、我が国経済の好循環の実現に向けて、産業・企業の競争力・生産性の向上や円滑な新陳代謝の促進に向けた取組みを金融面から支援することが求められるとともに、国内外の経済・市場等の変化に適時・適切に対応し、将来にわたり質の高い金融サービスを安定的に提供できるよう、経営管理・リスク管理等の向上等を進めていく必要がある。
平成27事務年度においては、こうした観点から、3メガバンクグループについて、競合する欧米主要銀行との比較・分析や取引先企業へのヒアリング等を行ったほか、海外業務の拡大を継続する3メガバンクグループに共通する経営課題として、海外与信管理、外貨流動性管理等を主な検証項目として水平的レビューを実施した。
その他の主要行等については、オフサイト・モニタリングによる定期的なビジネス動向とリスク状況の把握を行ったほか、各金融機関のリスクプロファイルに応じたターゲット検査の実施など、効果的・効率的なモニタリングを実施した。
II 地域銀行に対する金融モニタリング
27事務年度の地域銀行に対するモニタリングについては、人口減少や高齢化の進展が地域銀行の将来的な収益に及ぼす影響等を分析したほか、差別化されたビジネスモデルにより相応の収益を確保している一部の地域銀行について、インタビューを実施し、経営管理における特徴を抽出した。
取引先企業の事業の内容や成長可能性等の適切な評価に基づく融資・本業支援(事業性評価)については、25事務年度から継続してモニタリングを実施しており、27事務年度も、取引先企業の、市場、競争環境、事業特性の把握や経営改善の方策について、銀行としての関わり方等を議論した。
また、検査局・監督局・財務局が緊密に連携しつつ、継続的な情報収集と分析、定期的なヒアリングでの実態確認といったプロファイリング作業を中心として、オフサイトでのモニタリングを実施した。
こうしたプロファイリングを踏まえつつ、オンサイトで実態を確認する必要がある場合には、ターゲット検査を実施した。
III 外国銀行に対する金融モニタリング
外国銀行在日拠点は、その規模やビジネスモデルが様々であり、母国を含めた国際的な経済・規制動向、ビジネス環境の影響を強く受けるという特性がある。また、本部・本店やアジア地域本部の決定により、その経営方針や業務内容が急に変更される場合もある。
こうした特性を踏まえ、本部・本店・地域本部幹部とのコミュニケーションや監督カレッジ等への参加を通じて外国銀行グループ全体でのビジネス戦略やリスクの把握に努めつつ、25事務年度以降、オフサイト・モニタリングでの情報収集・分析を強化し、そこで把握された重要な分野に力点を置いてオンサイト・モニタリングを行うなど、オン・オフ一体での継続的なモニタリングを実施している。
27事務年度においては、年次アンケート、決算ヒアリング、監督カレッジ等への参加、本部・本店・地域本部幹部との面談などにより把握したビジネス戦略及びリスク特性を踏まえた個別行のリスクプロファイリングを行い、これに基づく年間モニタリング計画の策定及びモニタリングの実施を行った。また、オフサイト・モニタリングの過程で把握された課題を踏まえ、より焦点を絞った機動的なオンサイト・モニタリングを実施した。
IV 協同組織金融機関に対する金融モニタリング
-
1.信用金庫・信用組合に対する金融モニタリング
27事務年度の信用金庫・信用組合に対する金融モニタリングについては、26事務年度に引き続き、より早期に経営課題等を把握し、その改善を図るため、財務局の検査・監督部門が一体となった切れ目のないモニタリングを実施した。
具体的には、各財務局が、継続的なデータ収集・分析やヒアリング等により、所管する信用金庫・信用組合の経営上重要な課題やリスク等を整理しデータベースを作成するなど、オフサイト・モニタリングを充実させるとともに、リスクプロファイリングを踏まえて、ビジネスモデルや経営管理など、検証項目を絞り込んだ、効果的・効率的なオンサイト・モニタリングの実施に努めている。
-
(1)信用金庫等に対する金融モニタリング
信用金庫等は、信用金庫法に基づき金融庁が所管しており、財務 (支)局が検査を実施(信金中央金庫は、金融庁が検査を実施)している。27事務年度は、70金庫に対して検査を実施した。
-
(2)信用組合等に対する金融モニタリング
信用組合等は、中小企業等協同組合法等に基づき金融庁が所管しており、財務(支)局が検査を実施(全国信用協同組合連合会は、金融庁が実施)している。27事務年度は、43組合に対して検査を実施した。
(注)上記I~IV1.のモニタリングの結果に関しては、平成28年9月15日に公表された「平成27事務年度金融レポート」を参照。
-
-
2.労働金庫等に対する金融モニタリング
労働金庫等は、労働金庫法に基づき厚生労働省、都道府県及び金融庁の共管となっており、厚生労働省が都道府県及び財務(支)局と共同で検査を実施している(労働金庫連合会は、厚生労働省が金融庁と共同で検査を実施し、1の都道府県の区域を越えない区域を地区とする労働金庫については、都道府県も検査を行うこととされており、この場合は、原則として厚生労働省が都道府県及び財務(支)局と共同で検査を実施)。27事務年度は、1金庫に対して検査を実施した。
労働金庫の検査を行う行政庁 種類
地区
都道府県の区域を越える
都道府県の区域を越えない
労働金庫
主務大臣
主務大臣
都道府県知事
(注1)主務大臣とは、内閣総理大臣及び厚生労働大臣。内閣総理大臣の権限は金融庁長官に委任され、更に財務(支)局長に委任されている。
-
3.信用農業協同組合連合会等に対する金融モニタリング
農林中央金庫は、農林中央金庫法に基づき農林水産省と金融庁等との共管となっており、農林水産省と金融庁が共同で検査を実施している。
また、信用農業協同組合連合会等は、農業協同組合法等に基づき農林水産省と金融庁等との共管となっており、農林水産省と財務(支)局が共同で検査を実施している。27事務年度は、10連合会(内訳は、信用農業協同組合連合会5連合会、信用漁業協同組合連合会5連合会)に対して検査を実施した。
-
4.農業協同組合に対する金融モニタリング
農業協同組合は、農業協同組合法に基づき、都道府県知事(都道府県の区域を超える区域を地区とする農業協同組合を除く。)が行政庁となっているが、信用事業を営む農業協同組合に対する検査について、都道府県知事の要請があり、かつ、主務大臣(内閣総理大臣及び農林水産大臣)が必要があると認める場合の行政庁は、主務大臣及び都道府県知事となっている。
22年6月、農業協同組合に対する金融庁検査について、「金融庁検査が促進されるための実効性ある方策を採る」との閣議決定がなされたことを踏まえ、23年5月、農林水産省及び金融庁では、農業協同組合法に基づく都道府県からの要請を受けて、都道府県、農林水産省及び金融庁の3者が連携して実施する検査が促進されるよう、「農業協同組合法に定める要請検査の実施に係る基準・指針」を共同で策定・公表した。
27事務年度は、都道府県からの要請状況及び財務(支)局の検査体制の整備状況等を踏まえつつ、22組合に対して検査を実施した。
信用農業協同組合連合会等の検査を行う行政庁 種類
地区
都道府県の区域を超える
都道府県の区域と同じ
都道府県の区域の一部
信用農業協同組合連合会
主務大臣
主務大臣
都道府県知事
都道府県知事
信用漁業協同組合連合会
主務大臣
主務大臣
都道府県知事
都道府県知事
農業協同組合
主務大臣
都道府県知事(注2)
都道府県知事(注2)
漁業協同組合
主務大臣
都道府県知事(注2)
都道府県知事(注2)
(注1)主務大臣とは、内閣総理大臣及び農林水産大臣。内閣総理大臣の権限は金融庁長官に委任され、更に財務(支)局長に委任されている。
(注2)都道府県知事の要請があり、かつ、主務大臣が必要と認める場合は、主務大臣及び都道府県知事となる。
第4節 自己資本比率規制等への対応
I バーゼル2(資料9-4-1参照)
平成16年6月にバーゼル銀行監督委員会から公表された自己資本比率規制(バーゼル2)の国際的な枠組みを受け、我が国でも19年3月末よりバーゼル2が実施された。バーゼル2は、「最低所要自己資本比率」(第1の柱)、「金融機関の自己管理と監督上の検証」(第2の柱)及び「市場規律」(第3の柱)の3つの柱からなる規制上の枠組みであり、金融機関が抱えるリスクを従来の規制(バーゼル1)よりも正確に計測すること等を通じて、金融機関により適切なリスク管理を促すものである。
II バーゼル3(資料9-4-2参照)
22年12月にバーゼル銀行監督委員会から公表された「より強靭な銀行および銀行システムのための世界的な規制の枠組み」(いわゆる「バーゼル3」)を受け、24年3月に、国際統一基準行を対象とした、自己資本の質および量の向上及びリスク捕捉のさらなる強化を求める告示改正を行った。改正告示は25年3月期決算より、段階的な適用が開始されている。
III 新国内基準(資料9-4-3参照)
25年3月、バーゼル3(国際統一基準)を参考に、従来の最低自己資本比率(4%)を維持しつつ、自己資本の質の向上を図る一方、地域経済への影響や業態の特性も勘案のうえ、国内基準に係る告示改正を行った。改正告示は26年3月期決算より、段階的な適用が開始されている。
IV 要承認手法の承認実績(27事務年度)(資料9-4-4参照)
-
信用リスク(基礎的内部格付手法)…1持株会社及び2行
-
オペレーショナル・リスク(粗利益配分手法)…1持株会社及び1行
-
オペレーショナル・リスク(先進的計測手法)…1行
V レバレッジ比率(資料9-4-5参照)
26年1月にバーゼル銀行監督委員会から公表された「レバレッジ比率の枠組みと開示要件」を受け、27年3月及び6月に、国際統一基準行を対象とした、レバレッジ比率の開示に係る告示改正及びレバレッジ比率の計算方法に係る告示の策定を行った。レバレッジ比率については、国際合意上、29年までにレバレッジ比率の定義および水準についての最終調整を実施、30年からは第1の柱として運用することを予定している。
VI 流動性規制(資料9-4-6参照)
19年に始まった世界的な金融危機において、十分な資本を持ちながらも資金流動性に問題が生じた金融機関が存在したことを踏まえ、バーゼル銀行監督委員会は、22年12月、バーゼル3の見直しの一つとして、資金流動性に係る二つの最低基準(流動性カバレッジ比率(LCR)及び安定調達比率(NSFR))を導入することについて合意した。LCRは銀行の流動性リスクプロファイルの短期的強靭性を高めることを目的とし、長期的強靭性を高めることを目的とするNSFRと相まって流動性ストレス時の資金流動性を高めることを目指している。我が国では、LCR計算告示の新設やQ&Aの策定等を行い、27年3月末より、国際統一基準行(連結・単体)に対してLCRの段階的な適用が開始されている。また、同年6月末よりLCRの開示規制も導入されている。なお、NSFRは30年より適用を開始する予定である。
VII 資本バッファー規制(資料9-4-7参照)
バーゼル銀行監督委員会は、19 年に始まった世界的な金融危機への反省を背 景に、健全性規制強化の一環として、不況時に損失吸収に充てることにより、景気経済の減速期においても金融機関の金融仲介機能を維持し、景気変動増幅効果(プロシクリカリティ)を抑制することを基本的な目的として、金融機関に対して最低所要自己資本を上回る十分な量の資本バッファーの積み立てを求める規制を導入することとした。我が国では、バーゼル3等の国際合意に基づき、国際統一基準行に係る自己資本比率規制について、資本バッファー規制を導入するための告示等の改正を公布し、28年3月31日より段階的な適用が開始されている。
VIII TLAC規制(資料9-4-8参照)
金融安定理事会は、19年に始まった世界的な金融危機時に顕在化した「大きすぎて潰せない(Too big to fail)」問題に対処し、納税者の負担を回避しつつ、秩序ある破綻処理を可能とするため、グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIBs)に対して、予め十分な総損失吸収力(TLAC)の確保を求める規制を導入することとした。これを踏まえ、我が国では、今後の規制整備に向け、28年4月15日にTLACに係る枠組み整備の方針を公表した。TLAC規制については、31年より段階的な適用を開始する予定である。
第5節 資本増強制度の運用状況
I 旧金融機能安定化法、金融機能早期健全化法、預金保険法
-
1.資本増強行の経営健全化計画に係るフォローアップ
平成27年9月期の経営健全化計画の履行状況報告については同年12月25日に、28年3月期の経営健全化計画の履行状況報告については同年6月30日に、報告内容の公表が行われた。(資料9-5-1~2参照)
-
2.経営健全化計画の見直し
新生銀行において、経営健全化計画の見直しが行われ、見直し後の新しい経営健全化計画が、28年2月12日に公表された。
-
3.公的資金の返済状況
27事務年度においては、公的資金の返済は行われなかった。
そのため、26事務年度と同様、旧金融機能安定化法、金融機能早期健全化法、預金保険法に基づく資本増強額(約12.3兆円)に対して、28年6月末時点で約12.1兆円が返済されており、残額は約0.2兆円となっている(金額はいずれも額面ベース)。なお、すでに返済されている約12.1兆円に対し、約1.5兆円の利益(キャピタルゲイン)が発生している。
II 金融機能強化法
-
1.資本参加の決定
27事務年度においては、金融機能強化法の本則に基づき、以下の金融機関に対して国の資本参加を決定し、公表した。(資料9-5-3参照)
27年12月実施:全国信用協同組合連合会(106億円)
-
2.資本参加した金融機関等の経営強化計画に係るフォローアップ
金融機能強化法の本則及び震災特例に基づき国の資本参加を行った金融機関から経営強化計画の履行状況報告がなされ、27年3月期(27金融機関)については、同年8月21日に、同年9月期(26金融機関)については、28年2月26日に報告内容を公表した。(資料9-5-4~5参照)
-
3.経営強化計画等の公表
金融機能強化法の本則に基づき国の資本参加を行った、みちのく銀行、第三銀行、東和銀行、フィデアホールディングス(北都銀行)、宮崎太陽銀行、山梨県民信用組合及びぐんまみらい信用組合並びに同法の震災特例に基づき国の資本参加を行ったじもとホールディングス(仙台銀行・きらやか銀行)の新しい経営強化計画等については、27年8月21日に公表した。(資料9-5-6参照)
-
4.公的資金の返済状況
27事務年度においては、公的資金の返済は行われなかった。
そのため、金融機能強化法に基づく資本参加額(6,731億円)に対して、28年6月末時点で残額は4,926億円となっている。
第6節 地域密着型金融の推進
I 経緯
地域密着型金融の取組みについては、二度にわたるアクションプログラムを経て、平成19年8月に「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を改正し、通常の監督行政の枠組みに位置付けて推進を図ってきた。こうした中、地域金融機関においては、顧客企業の経営改善支援や事業再生支援等、様々な取組みが行われてきた。
一方、中小企業をはじめとする利用者からは、そうした取組みにとどまらず、経営課題への適切な助言や販路拡大等の経営支援、ニーズに合致した多様な金融サービスの提供が強く期待されていた。また、地域密着型金融の推進については、本来、地道な企業訪問や経営相談・経営指導など中長期的な視点に立った継続的な取組みに関する姿勢や活動を評価・推進していくことが重要であるにもかかわらず、営業現場では短期的な量重視に偏りやすくなっていたほか、網羅的な実績作りに陥りがちな面が生じるなど、様々な課題も浮かび上がっていた。
このような課題認識を踏まえ、地域金融機関における地域密着型金融の取組みの一層の促進を図るため、23年5月16日に「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を改正し、地域密着型金融の目指すべき方向等を示した。
II 地域密着型金融の推進に係る取組み
-
1.基本的考え方等
地域金融機関は、経営戦略や経営計画等の中で、地域密着型金融の推進をビジネスモデルの一つとして明確に位置付け、自らの規模や特性、利用者の期待やニーズ等を踏まえて自主性・創造性を発揮しつつ、「顧客企業に対するコンサルティング機能の発揮」、「地域の面的再生への積極的な参画」、「地域や利用者に対する積極的な情報発信」の取組みを中長期的な視点に立って組織全体として継続的に推進することにより、顧客基盤の維持・拡大、収益力や財務の健全性の向上につなげていくことが重要である。
また、地域金融機関が、地域密着型金融を組織全体として継続的に推進していくためには、経営陣が主導性を十分に発揮して、推進態勢の整備・充実を図っていくことが重要である。
-
2.当局の施策
当局は、上記の考え方を踏まえながら、各種ヒアリング等の機会を通じて、各地域金融機関における地域密着型金融の取組み状況についてフォローアップを実施した。また、各地域金融機関は、取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適切に評価(事業性評価)し、融資や本業支援等を通じて、地域産業・企業の生産性向上や円滑な新陳代謝の促進を図り、地方創生に貢献していくことが求められている。このことから、各財務(支)局(沖縄総合事務局を含む。)において、地域金融機関の課題や役割等について問題提起できる有識者や専門家による講演及び、有識者や地域関係者(地元企業経営者等)によるパネルディスカッションを行う、「地域密着型金融に関する会議(シンポジウム)」を開催(28年3月)した。
第7節 中小企業金融をはじめとした企業金融等の円滑化
I 対応
中小企業等の業況は、持ち直し基調の中にも弱い動きが見られる。地域や中小企業等も含めた経済の好循環の更なる拡大を実現するために、金融機関による適切かつ積極的な金融仲介機能の発揮が一層重要となっているとの認識の下、中小企業金融をはじめとした企業金融等の円滑化に向けて、以下のとおり各種施策を積極的に講じてきた。
-
1.中小企業金融等のきめ細かな実態把握
-
(1)中小企業等へのヒアリング
平成27年10月から11月にかけて、金融庁幹部職員等が全国各地を訪問し、企業経営者等から、直接、業況・資金繰り、金融機関の融資姿勢等についてヒアリング・意見交換を行った。
-
(2)「金融円滑化ホットライン」等における情報の受付け
金融サービス利用者相談室、「中小企業等金融円滑化相談窓口」及び「金融円滑化ホットライン」により、中小企業など借り手の方々からの情報を直接受け付け、金融機関に対する検査・監督に活用している。特に、「貸し渋り・貸し剥がし」等に関する情報のうち、情報提供者が金融機関側への申出内容の提示に同意している情報については、当該金融機関に対し事実確認等のヒアリングを実施している。
-
-
2.金融機関に対する要請及び中小企業等への周知・広報
-
(1)金融機関トップへの直接の要請
金融担当大臣と金融機関トップとの意見交換の機会に、金融機関に対して、適切かつ積極的な金融仲介機能を発揮し、中小企業等に対して円滑な資金供給を図るという金融機関本来の使命を十分に発揮していくよう要請した。具体的には、27年11月30日及び28年2月23日に全銀協、地銀協、第二地銀協、全信協、全信中協、政府系金融機関等の代表を招き、金融担当大臣、経済産業大臣等から要請するとともに、融資動向等についての意見交換を行った。
-
(2)文書による要請
27年11月30日及び28年2月23日に、金融機関に対し、中小企業・小規模事業者に対する金融の円滑化に一層努めるよう要請する文書を発出した。
-
(3)中小企業等への周知・広報
円滑な資金供給の促進に向けた金融庁の取組みについてまとめたパンフレットを作成し、中小企業団体等を通じて事業者に広く配布した(27年9月)。
-
-
3.経営者保証に関するガイドラインの活用促進
経営者保証に関するガイドラインの積極的な活用により、中小企業等の経営者による思い切った事業展開や創業を志す者の起業への取組みの意欲の増進が図られることによって、中小企業等の活力が一層引き出され、ひいては、日本経済の活性化に資することが期待されている。当庁としては、金融機関等によるガイドラインの積極的な活用を通じ、ガイドラインが融資慣行として浸透・定着することが重要であるとの認識の下、以下のような取組みを実施した。
民間金融機関におけるガイドラインの活用実績の集計結果を公表。27年4月以降の実績については新規融資全体に占める無保証融資の割合も公表(27年7月、12月、28年6月)(資料9-7-1参照)
ガイドラインの活用に関して、広く実践されることが望ましい取組みを取りまとめた参考事例集について、取組事例を追加した改訂版を公表(27年7月、12月)(資料9-7-2参照)
ガイドラインの円滑な運用を図る観点から、ガイドラインのQ&Aの一部を改定(27年7月)
ガイドラインの活用状況についての地域金融機関による創意工夫ある具体的な開示を、モニタリングを通じて更に促進する旨を「平成27事務年度金融行政方針」に明記(平成27年9月)
事業者向けにガイドラインを含めた当庁の取組みについてまとめたパンフレットを作成し、中小企業団体等を通じて事業者に広く配布(27年9月)
政府広報によるガイドラインの広報の実施(27年10月、28年2月)
金融機関に、中小企業等の顧客に対し、積極的にガイドラインの周知を行うとともに、ガイドラインの更なる活用に努めること等を要請(27年11月、28年2月)(資料9-7-3参照)
地域経済活性化支援機構において、経営者保証付債権等を買取り、ガイドラインに沿った整理を行う特定支援業務について、26年10月の業務開始以降、28年6月末までに、24件の支援を実施
-
4.地域密着型金融の推進
地域密着型金融の推進については、第3部第9章第6節「地域密着型金融の推進」を参照。
II 現状
-
1.貸付条件の変更等の実施状況
中小企業金融円滑化法の施行日(21年12月4日)から28年3月末までの間に金融機関が実行した貸付条件の変更等の割合は、中小企業者向け貸付及び住宅ローンの双方で、審査中の案件等を除き、9割を超える水準となっており、全体として、金融機関の条件変更等の取組みは着実に行われていると考えている。(資料9-7-4参照)
-
2.金融機関の貸出態度や資金繰り等に関する中小企業の判断等
金融機関の貸出態度に関する中小企業の判断の指標である日銀短観の「貸出態度判断D.I.」(D.I.=「緩い」と回答した社数構成比-「厳しい」と回答した社数構成比)をみると、28年6月期では+19(対前年同月比+3)となっている。(資料9-7-5参照)
-
3.融資残高等
28年6月の民間金融機関の法人向け融資残高は、中小企業向けが対前年同月比3.5%の増加、中堅・大企業向けが同0.2%の減少となっている。(資料9-7-6参照)
また、各金融機関においては、不動産担保・個人保証に過度に依存しない融資の取組みとして、引き続き、ABL等を推進している。(資料9-7-7参照)
第8節 金融仲介機能の質の改善に向けた取組み
I 融資先企業へのヒアリング等
-
1.企業ヒアリング及びアンケート調査
金融庁は、金融機関に対し、担保・保証に依存しない企業の事業性評価に基づく融資や、企業の経営改善・生産性向上等の支援に積極的に取り組むよう促している。
他方、地域の中小企業等からは、依然として、「相変わらず担保・保証に依存している等、金融機関の対応は何も変わっていない」といった厳しい意見が多く聞かれる。
以上を踏まえ、金融機関の取組みの実態及び企業側から見た金融機関の評価等を把握するため、金融機関との日常のコミュニケーション、企業の金融機関に対する期待、金融機関が付加価値の高いサービスを提供しているか等を質問事項として、財務局及び財務事務所による企業ヒアリング及び外部委託によるアンケート調査を実施した。
企業ヒアリングは中規模・中小企業を中心に751社、アンケート調査は企業ヒアリングで補足できない小規模企業15,000社(有効回答数2,460社)に実施。対象企業については全国の企業規模別割合、業種及び債務者区分の分布に偏りが出ないよう調整を行った。
また、再生等に向けた抜本的な対応がなされた企業の意見を収集・分析するため、サービサーへ債権譲渡された企業へのアンケート調査(対象先数450社、有効回答数183社)を行った。
-
2.貸付条件の変更先の現状及び金融機関による支援状況に関する調査
中小企業金融円滑化法以降、地域金融機関による貸付条件の変更期間が長期化するとともに、抜本的な事業再生は進んでいない。こうした状況を踏まえ、貸付条件の変更先の現状や金融機関による支援状況について調査を実施した。
具体的には、地域銀行106行から、条件変更の実施状況のデータを受領し、全体的な傾向を分析するとともに、地域及び業態の分散等を総合的に勘案して選定した地域銀行6行から、長期条件変更先(平成27年9月末時点で初回条件変更から5年以上経過した企業)1,000社のデータを受領し、企業の現状を分析。更に、当該地域銀行6行からのヒアリング等に加え、事業再生の支援機関、サービサー、ファンド運営会社等からもヒアリング等を実施した。
II 金融仲介の改善に向けた検討会議
-
1.経緯等
金融行政について民間の有識者の有益な意見や批判を継続的に反映させる取組みの一環として「金融仲介の改善に向けた検討会議」を27年12月18日に設置した。
同会議においては、産業・企業の生産性向上や新陳代謝の促進への貢献、担保・保証依存の融資姿勢からの転換、金融当局に求められる役割など金融仲介のあるべき姿等を継続して議論していくこととしている。(資料9-8-1参照)
-
2.27事務年度の開催状況
-
(1)第1回(27年12月21日開催)
事務局から「企業ヒアリングの中間報告」及び「これまでの金融行政における取組み」について報告を行ったのちに、「地方創生及び一億総活躍社会の実現に向けた課題」及び「地域金融の現状と課題」について、議論を行った。
-
(2)第2回(28年2月22日開催)
地域銀行から「地域のグランドデザイン作りへの参画」について事例紹介を受けたのちに議論を行った。また、事務局から「企業ヒアリングの中間報告」を行ったのちに議論を行った。
-
(3)第3回(28年4月4日開催)
地域銀行から「地方銀行の事業戦略」について事例紹介を受けたのちに議論を行った。また、事務局から「地方銀行の収益分析」の報告を行ったのちに議論を行った。
-
(4)第4回(28年5月23日開催)
事務局から「企業ヒアリング・アンケート調査の結果」及び「企業ヒアリングを踏まえた地域銀行との対話」の結果について報告を行ったのちに議論を行った。
-
(5)第5回(28年6月27日開催)
事務局から「金融仲介機能のベンチマーク(案)」及び「抜本的な事業再生への課題」について報告を行ったのちに議論を行った。
-
III 金融仲介の取組みの評価に係る多様なベンチマークの検討
金融機関との間で、事業性評価に基づく融資やコンサルティング機能の発揮についてより深度ある対話を行うため、企業ヒアリング等の結果や「金融仲介の改善に向けた検討会議」での議論も踏まえ、金融機関が自らの金融仲介機能の発揮状況について客観的に評価できる多様なベンチマークの検討を行った。
金融庁は、今後、ベンチマークや金融機関独自の指標も活用して、金融機関との間でより定性面も含めた深度ある対話を行っていく。また、金融機関においては、自らの取組みや成果について自主的な開示を行うことが期待される。
(ベンチマークの具体例)
-
経営改善が見られた取引先数・融資額の推移
-
金融機関が貸付条件の変更を行っている中小企業の経営改善計画の進捗状況
-
事業性評価等を提示して対話を行っている取引先数
-
事業再生支援で債権放棄等を行った先数及び実施金額
-
中小企業向け融資や本業支援を専担する本部職員数の推移
等
第9節 偽造・盗難キャッシュカード問題等への対応
I 被害及び補償の状況(資料9-9-1参照)
「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」(預貯金者保護法)の施行状況等を把握するため、偽造キャッシュカード等による被害の発生状況等を四半期ごとに取りまとめ、平成19年3月(18年12月末時点)より公表している。
最近の被害発生状況及び補償状況を見ると、以下のとおりとなっている。
偽造キャッシュカードによる被害発生件数は、25年度は312件、26年度は300件、27年度は339件となっている。27年度に発生した被害に対する補償については、処理方針決定済みの被害のうち、99.3%(件数ベース)を金融機関が補償している。
盗難キャッシュカードによる被害発生件数は、25年度は3,500件、26年度は3,038件、27年度は2,680件となっている。27年度に発生した被害に対する補償については、処理方針決定済みの被害のうち、45.8%(件数ベース)を金融機関が補償している。
盗難通帳による被害発生件数は、25年度は133件、26年度は101件、27年度は89件となっている。27年度に発生した被害に対する補償については、処理方針決定済みの被害のうち、38.5%(件数ベース)を金融機関が補償している。
インターネットバンキングにおける被害発生件数は、25年度は1,954件、26年度は1,407件、27年度は1,509件となっている。27年度に発生した被害に対する補償については、処理方針決定済みの被害のうち、82.5%(件数ベース)を金融機関が補償している。
II 金融機関における対応状況(資料9-9-2参照)
預貯金者保護法の施行状況等を把握するため、偽造キャッシュカード問題等に対する金融機関の対応状況についてアンケート調査を実施し、18年2月(17年12月末時点)から、各年度に一度公表している。27年度は、各預金取扱金融機関の28年3月末時点でのATM及びインターネットバンキングにおける認証方法等の状況について、アンケート形式による調査を実施・集計した(28年8月31日に概要を公表)。
また、警察庁が公表した27年中のインターネットバンキングにおける不正な払戻し被害金額が過去最悪であったことを踏まえ、全国銀行協会は、各金融機関において、引き続きセキュリティ対策の強化・高度化の取組みを進めていくことを公表するとともに、利用者に対して、取引金融機関が導入または推奨するセキュリティ対策を積極的に利用するよう注意喚起を実施(28年6月)したほか、金融庁も、業界団体との意見交換会等を通じて、顧客保護及びセキュリティ強化の観点から、万全の対策を講じるように要請した。
第10節 口座不正利用対策
I 金融庁における取組状況
金融庁では、預金口座を利用した悪質な事例が大きな社会問題となっていることを踏まえ、預金口座の不正利用に関する情報について、情報入手先から同意を得ている場合には、明らかに信憑性を欠くと認められる場合を除き、当該口座が開設されている金融機関及び警察当局への情報提供を速やかに実施することとしており、その情報提供件数等について、四半期毎に公表を行っている。
金融庁及び全国の財務局等において、金融機関及び警察当局へ情報提供を行った件数は、平成25年度は1,643件、26年度は1,076件、27年度は695件であり、調査を開始した15年9月以降28年3月末までの累計は43,094件となっている。
なお、預金口座の不正利用防止について、金融機関との意見交換も適宜実施している。
II 金融機関における取組状況
預金口座の不正利用と思われる情報があった場合には、金融機関において、直ちに調査を行い、本人確認の徹底や、必要に応じて預金取引停止、預金口座解約といった対応を迅速にとっていくことが肝要である。
金融庁及び全国の財務局等が提供した情報のうち、金融機関において利用停止したのは、25年度は809件、26年度は466件、27年度は353件、強制解約等をしたのは、25年度は672件、26年度は364件、27年度は218件であり、調査を開始した15年9月以降28年3月末までの累計は、利用停止が23,509件、強制解約等が15,299件となっている。
第11節 振り込め詐欺等への対応
振り込め詐欺被害への注意を呼びかけるため、平成27年11月に、全国銀行協会の金融犯罪防止にかかる新聞記事広告に協力を行った。
第10章 信託会社等の検査・監督をめぐる動き
第1節 信託会社等に関する総合的な監督指針
本監督指針については、平成16年12月の信託業法の改正を踏まえ策定されたものであり、信託会社等の監督事務に関し、その基本的考え方、免許・登録審査に際しての留意事項、業務運営の状況に関して報告・改善を求める場合の留意事項等を総合的にまとめたものであり、27事務年度においては、以下のとおり本監督指針の改正を行っている。
-
1.「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえた改正(28年3月31日)
27年3月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)及び証券監督者国際機構(IOSCO)により公表された「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえ、証拠金授受に係る態勢整備を促すための改正を行った(28年9月1日より段階的に適用)。
-
2.会社法の平成26年改正(27年5月1日施行)等に係る改正(28年6月3日)
26年改正会社法において新設された監査等委員会設置会社の記載を追加するなどの改正を行った(28年6月3日より適用)。
第2節 信託会社等の新規参入(資料10-2-1参照)
平成16年12月30日の改正信託業法の施行に伴い、信託の担い手が拡大され、28年6月30日現在、運用型信託会社7社、管理型信託会社12社及び特定信託業者6社(22件)、自己信託1社、信託契約代理店160社(注)が参入している。27年7月1日から28年6月30日までの間に免許・登録・届出を行った信託会社等は、以下のとおり。
運用型信託会社(免許制)及び管理型信託会社(登録制)
運用型信託会社については、新たな免許は行っていない。管理型信託会社の登録は1社、廃業等による登録抹消は行っていない。
信託契約代理店(登録制)
信託契約代理業の登録は5社、廃業等による登録抹消は1社となっている。
(注)信託契約代理店160社のうち131社は、信託業法の施行前に内閣総理大臣の認可を受けて設置されていた信託代理店であり、信託業法の施行時に信託契約代理店に移行したものである。
第3節 信託会社等に対する金融モニタリング
信託会社は、信託業法に基づき、財務(支)局が検査を実施しており、27事務年度は、2社に対して検査を実施した。
第4節 類似商号への対応
信託業法は、信託会社に対してその商号に「信託」という文字の使用を義務付けるとともに、一般公衆の誤認防止を図るため、銀行や証券会社などと同様、信託会社でない者に対してその商号中に信託会社であると誤認させるおそれのある文字の使用を禁じており(信託業法第14条第2項)、違反者には30万円以下の罰金が課せられる(信託業法第97条第3号)。
しかし、一方で、信託業法の改正により金融機関以外の者による信託業への参入が認められ、信託への関心が高まっている昨今、貸金業の登録を受けていない業者がその商号に「信託」という文字を使用して顧客を信用させ、貸付けを行おうとする例が見受けられるところである。
このような例をはじめ、商号に信託会社であると誤認させるおそれのある文字を使用している業者に対して、金融庁及び財務局は、主に次のような対応を取るとともに、金融庁ホームページ等において注意喚起を行っている。
文書による警告や捜査当局への連絡などを行う。
財務局登録を詐称する貸金業無登録業者については、金融庁及び財務局のホームページに当該業者の一覧表を掲載しているところであるが、このうち、商号に「信託」を使用している業者については、一覧表の「備考」欄に信託業法(商号規制)違反である旨を記載する。
また、貸金業無登録業者も含め、商号に「信託」を使用している業者の情報を一般に提供するため、金融庁及び財務局のホームページに「商号に「信託」の文字を使用している無免許・無登録業者一覧」を別途掲載する。
第11章 保険会社等の検査・監督をめぐる動き
第1節 保険会社向けの総合的な監督指針
本監督指針については、平成17年8月12日に策定した後、環境の変化や新たな問題に的確に対応するために、随時、改正を行ってきたところであり、27事務年度においても以下のとおり改正を行っている。
-
1.共同保険契約(共同取扱契約)の非幹事会社の保険商品の認可申請・届出の取扱いに係る改正(28年2月1日)
共同保険契約(共同取扱契約)の非幹事会社の保険商品に限り、所定の条件を満たす場合には、特約及び保険料計算方法等の新設・改定について、その都度の認可申請・届出を不要とする改正を行った(28年2月1日より適用)。
-
2.金融庁への役員等の氏名届出等に係る改正(28年3月1日)
金融機関が金融庁に役員等の氏名届出等を行う際に、現在の戸籍上の氏名とともに、婚姻前の氏名を併記することを可能とするため、内閣府令等とともに所要の改正を行った(28年3月1日より適用)。
-
3.「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえた改正(28年3月31日)
27年3月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)及び証券監督者国際機構(IOSCO)により公表された「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえ、証拠金授受に係る態勢整備を促すための改正を行った(28年9月1日より段階的に適用)。
-
4.コーポレートガバナンス・コードの適用開始及び会社法の平成26年改正(27年5月1日施行)等に係る改正(28年6月3日)
コーポレートガバナンス・コードの各原則において求められている水準のガバナンス態勢を構築するにあたって、同コードに則って、適切に取組みを進めているか、との着眼点を追記するとともに、26年改正会社法において新設された監査等委員会設置会社の記載を追加するなどの改正を行った(28年6月3日より適用)。
第2節 保険会社の概況
I 平成28年3月期決算状況
-
1.生命保険会社(資料11-2-1参照)
-
(1)損益の状況
生命保険会社の本業における基礎的な収益を示す基礎利益をみると、変額年金等の最低保証に係る費用が増加したことなどから、3兆3,342億円(前年は3兆8,235億円)と減少した。
上記に加え、有価証券売却損益の悪化を主因にキャピタル損益が悪化したことなどから、当期純利益(純剰余)は1兆3,438億円(前年は1兆5,327億円)と減少した。
-
(2)ソルベンシー・マージン比率の状況
ソルベンシー・マージン比率は、その他有価証券評価差額金の減少などによりマージン総額が減少したことなどから、前年と比較して低下した(全社平均990.1%(前年比▲30.3%ポイント))。
-
-
2.損害保険会社(資料11-2-2参照)
-
(1)損益の状況
正味収入保険料が火災保険の販売好調や前年度の自動車保険の料率改定等 により8兆6,366億円(前年は8兆637億円)と増加したことに伴い、経常利益は8,209億円(前年は7,276億円)と増加し、当期純利益も5,777億円(前年は3,739億円)と増加した。
-
(2)ソルベンシー・マージン比率の状況
ソルベンシー・マージン比率は、その他有価証券評価差額金の減少などによりマージン総額が減少したことなどから、前年と比較して低下した(全社平均695.6%(前年比▲13.5%ポイント))。
-
II 再編等の状況(資料11-2-3~7参照)
-
1.概要
保険業界を取り巻く環境が大きく変化する中、利用者利便の向上や経営基盤の安定化等を図るため、ここ数年、多くの生・損保会社において業務提携・統合・合併等が行われ、保険業界の再編の動きがみられる。
なお、28年6月末現在における会社数は、生命保険会社38社、外国生命保険会社3社、損害保険会社30社、外国損害保険会社21社、免許特定法人1社、保険持株会社9社である。
-
2.主要会社の再編等
27年7月以降、以下のような合併が行われた。
合併保険会社名
新保険会社名
合併日
-
オリックス生命保険株式会社
-
ハートフォード生命保険株式会社
-
オリックス生命保険株式会社
27年7月1日
※合併保険会社のうち、下線のある会社が存続会社。
-
第3節 保険会社に対する金融モニタリング(資料11-3-1参照)
27事務年度の保険会社に対するモニタリングについては、少子高齢化や人口減少の進展を背景とした保険会社を取り巻くビジネス環境の変化等を踏まえ、大手生命保険会社4社(日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命)及び大手損害保険会社3グループ(東京海上グループ、MS&ADグループ、損保ジャパン日本興亜グループ)に対して、近年相次いで実施されている国内外の保険会社等の大型買収を題材として、ガバナンスの機能発揮状況について実態を把握した。
また、保険会社の資産運用能力の向上は、自身の競争力強化にとって重要であると同時に、顧客の利益や国民の安定的な資産形成、さらには我が国資本市場の発展に寄与するものであることを踏まえ、26事務年度に引き続き、現状での対応に加え、今後求められる態勢整備について、主として大手生命保険会社4社を対象にモニタリングを行った。
このほか、26事務年度に把握した大手乗合代理店及び中堅生命保険会社における保険募集管理態勢の課題についてのフォローアップを行うとともに、新たな募集規制を義務付けた改正保険業法の施行への対応準備状況等について、実態を把握した。
また、生命保険会社1社及び損害保険会社1社に対し、それぞれのリスク特性に応じたターゲット検査を実施した。
(注)上記のモニタリングの結果に関しては、平成28年9月15日に公表された「平成27事務年度金融レポート」を参照。
第4節 統合的リスク管理態勢の整備・高度化について
保険業を取り巻くリスクが多様化・複雑化している中、保険会社においては、規制上求められる資本等の維持や財務情報の適切な開示に加え、自らの経営戦略と一体で、全てのリスクを統合的に管理し、事業全体でコントロールする統合的リスク管理(ERM:Enterprise Risk Management)態勢を整備し、高度化していくことが重要である。
金融庁では、ERMを促進する一環として、平成27年度より保険会社がリスクとソルベンシーの自己評価(ORSA:Own Risk and Solvency Assessment)に関する報告書(ORSAレポート)を作成し、金融庁へ提出する取組みを開始した。27事務年度においては、各社のORSAレポートを有効に活用し、同レポートをもとにしたERMヒアリングを実施した上で、規模特性の観点から選定した56社についてERM評価を行った。
第5節 ソルベンシー・マージン比率の見直しについて
ソルベンシー・マージン比率の計算の適正化を図るため、以下の改正を行った。
保険会社が締結する再保険契約のうち一定の要件に該当するものに係る受再保険会社から収受した手数料の一部について、ソルベンシー・マージン比率の計算から除くこととした。併せて情報開示の観点から、当該再保険契約に係る会計上の影響額を記載するよう、内閣府令及び告示改正を行った(平成27年10月8日公布、28年3月31日施行)。
現行のソルベンシー・マージン比率の計算上、その他有価証券評価差額金についてはマージン総額に算入される一方、繰延ヘッジ損益は算入されておらず、ヘッジ手段の評価損益が反映されていないことから、その他有価証券評価差額金に対応する繰延ヘッジ損益をマージン総額に算入するよう、内閣府令及び告示その他関連法令について改正を行った(28年3月28日公布、同月31日施行)。
なお、資産・負債の経済価値ベースによる評価・監督手法の検討の一環として、28年6月、全保険会社を対象にしたフィールドテストの実施を公表した。(注)(資料11-5-1参照)
(注)本テストの計算方法は、IAISで検討されているICS(国際資本基準)と基本的に整合的なものとするが、必ずしも我が国における方向性を示しているものではない。
第6節 保険商品審査態勢について
保険商品については、多様化する国民の保険ニーズに的確に応えるものであるとともに、保険契約者等にとって簡素で分かりやすい商品内容となることが重要である。
このため、商品審査に当たっては、保険会社等との間で双方向の協議を十分に行ったほか、保険会社の商品開発担当者との意見交換(平成27年8月、28年3月)、商品審査の留意点を示した「商品審査事例集」の策定・業界周知(28年2月、6月)、共同保険(共同取扱)の非幹事契約に係る認可申請・届出の簡素化(28年2月)等を実施し、審査の予見性、効率性、迅速性等の向上を図った。
第7節 少額短期保険業者の検査・監督をめぐる動き(資料11-7-1参照)
少額短期保険業者の概況
「保険業法等の一部を改正する法律」(平成17年法律第38号)が平成18年4月1日に施行され、従前、保険業法の規制の外にあった、特定の者を相手方として引受けを行う、いわゆる「根拠法のない共済」が原則として保険業法の規制対象となった。併せて、これら「根拠法のない共済」及び新規参入業者の受け皿として、保険会社と比べて取り扱う保険金額が少額であり、保険期間が短いもののみを取り扱う少額短期保険業制度が創設された。
「少額短期保険業者向けの監督指針」については、18年4月1日に策定した後、環境の変化や新たな問題に的確に対応するために、随時、改正を行ってきたところであり、27事務年度においても、保険募集の基本的ルールの創設などを目的とする「改正保険業法」が成立したことを踏まえた改正(27年7月7日改正、28年5月29日より適用)、役員等の氏名届出等に係る改正(28年3月1日改正、同日適用)及び会社法改正等に係る改正(同年6月3日改正、同日適用)を行った。
少額短期保険業者に対する検査・監督権限は、金融庁長官から各財務局長等に委任されている。27事務年度においては、事業規模、取り扱っている商品や募集形態等の特性を踏まえ、顧客保護の観点から、各業者の経営管理態勢、財務の健全性及び業務の適切性等に関し、各財務局等を通じて必要な指導・監督を行った。その際、経営管理態勢及び財務の健全性等を中心に注意深くモニタリングを行った。
また、同事務年度においては、少額短期保険業者9業者に対して検査を実施した。
なお、同事務年度においては、4業者を新規に登録したことから、28年6月末現在の業者数は、87業者となった。
第8節 認可特定保険業者の検査・監督をめぐる動き(資料11-8-1参照)
認可特定保険業者の概況
前節のとおり、「保険業法等の一部を改正する法律」(平成17年法律第38号)(以下、「改正法」という。)の成立を受け、少額短期保険業制度が創設されたが、改正法施行前から「根拠法のない共済」を行っていた者については、経過措置として特定保険業という枠組みを設け、届出を行うことで平成20年3月31日まで各財務局等の監督下で業務を継続しながら、保険業法の規制に適合するよう対応を求めた。しかしながら、改正法施行前から「根拠法のない共済」を行ってきた団体の中には、保険業法の規制に適合することが直ちに容易ではない者も存在していた。
また、これとは別に、共済事業を行っていた特例民法法人(公益法人)については、改正法において、当分の間、当該共済事業を引き続き特定保険業として実施できると規定された。しかしながら、20年の公益法人制度改革により、特例民法法人は、25年11月末までに一般社団法人等に移行することとされ、一般社団法人等への移行後は、保険業法の適用を受けることとなり、現在行っている特定保険業が継続できなくなった。
このような状況を受けて、「保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律」(平成22年法律第51号)により、改正法の公布の際現に特定保険業を行っていた者のうち、一定の要件に該当する者については、23年5月13日から当分の間、行政庁の認可を受けて、特定保険業を行うことができるようになった。
認可特定保険業者の所管行政庁は、特例民法法人であった者については特例民法法人であったときの主務官庁、それ以外の者については内閣総理大臣(権限は、内閣総理大臣から金融庁長官が委任を受け、各財務局長等に再委任されている。)と規定されている。
認可特定保険業者の認可については、25年11月に申請期限を迎え、財務局所管業者は7法人となった。27事務年度においては、認可特定保険業者の規模・特性を踏まえながら業務の適切性等に関し、丁寧な指導・監督を行った。
また、同事務年度においては、財務局所管の認可特定保険業者に対する検査は実施していない。
第12章 金融商品取引業者等の監督をめぐる動き
第1節 金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針
本監督指針については、平成19年9月30日に策定した後、環境の変化や新たな問題に的確に対応するために、随時、改正を行ってきたところであり、27事務年度においても以下のとおり改正を行っている。
-
1.資本バッファー規制に係る改正(27年11月26日)
22年12月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)により公表された「より強靭な銀行および銀行システムのための世界的な規制の枠組み」等に基づき、国際統一基準行等に係る資本バッファー規制を導入するため、国内のシステム上重要な銀行(D-SIBs)の選定方法を記載する等所要の改正を行った(28年3月31日より適用)。
-
2.ジュニアNISAの導入等に伴う改正(27年12月14日)
ジュニアNISA(未成年者向けの少額投資非課税制度)の導入(28年4月開始)に伴い、ジュニアNISAを利用する取引の勧誘に関し、監督上の留意点を追加するなどの改正を行った(27年12月14日(一部28年1月1日)より適用)。
証券会社等には、顧客のインサイダー取引の防止を図るため適切な措置を講じることが求められているところ、その措置のひとつとして、J-IRISS(日本証券業協会の内部者登録・照合システム)に照合することを明らかにする改正を行った(27年12月14日より適用)。
-
3.平成27年金融商品取引法改正を踏まえた改正(28年2月3日)
平成27年金融商品取引法改正により、適格機関投資家等特例業務制度が見直された(出資者の範囲の制限、行為規制の拡充及び行政処分の導入等)ことに伴い、適格機関投資家等特例業者等に係る監督上の留意点等について改正を行った(28年3月1日より適用)。
-
4.金融庁への役員等の氏名届出等に係る改正(28年3月1日)
金融機関が金融庁に役員等の氏名届出等を行う際に、現在の戸籍上の氏名とともに、婚姻前の氏名を併記することを可能とするため、内閣府令等とともに所要の改正を行った(28年3月1日より適用)。
-
5.「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえた改正(28年3月31日)
27年3月にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)及び証券監督者国際機構(IOSCO)により公表された「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」等を踏まえ、証拠金授受に係る態勢整備を促すための改正を行った(28年9月1日より適用)。
-
6.コーポレートガバナンス・コードの適用開始及び会社法の平成26年改正(27年5月1日施行)等に係る改正(28年6月3日)
コーポレートガバナンス・コードの各原則において求められている水準のガバナンス態勢を構築するにあたって、同コードに則って、適切に取組みを進めているか、との着眼点を追記するとともに、26年改正会社法において新設された監査等委員会設置会社の記載を追加するなどの改正を行った(28年6月3日より適用)。
-
7.法人顧客を相手方とする店頭FX取引に係る証拠金規制の導入に伴う改正(28年6月14日)
法人顧客を相手方とする店頭FX取引について、店頭FX業者の適切なリスク管理の観点から証拠金規制が導入されることに伴い、店頭FX業者における必要証拠金率の算出について監督上の留意点を追加する改正を行った(29年2月27日より適用)。
第2節 金融商品取引業者等に対する金融モニタリング
金融商品取引業者等は、金融仲介機能の適切な発揮に向けた不断の努力により、我が国の金融・資本市場に対する信認を高め、さらには我が国経済の発展に貢献していくこと、国民のニーズに適った金融商品・サービスを提供することにより、その安定的な資産形成を支援することが求められている。
平成27事務年度においては、証券会社の規模・特性等に応じ、ガバナンスの発揮状況やビジネスモデルについても検証に努めたほか、証券会社が私募債(レセプト債等)の販売において事実と異なる説明を行っていた事例や、金融商品取引業者が適格機関投資家等特例業務届出者の運営するファンドへ実態のない出資を行っている事例など、投資者保護上の問題についても、証券取引等監視委員会と連携しつつ、適切な行政対応を行ってきた。
第3節 第一種金融商品取引業
I 第一種金融商品取引業者の概況
-
1.第一種金融商品取引業者の数の推移(資料12-3-1参照)
-
(1)第一種金融商品取引業者
第一種金融商品取引業者は、平成27年7月以降、7社が新規に登録を受けている。
また、第一種金融商品取引業者以外の金融商品取引業者5社が、第一種金融商品取引業を行うため、変更登録を受けている。
一方、金融商品取引業の廃止等に伴い、第一種金融商品取引業者10社が金融商品取引法第29条の登録を抹消されている。
これらの結果、28年6月末現在における第一種金融商品取引業者数は279社となっている。
なお、第一種金融商品取引業のうち有価証券関連業を行う者(金融商品取引法第28条第1項第1号に掲げる行為に係る業務の登録を受けた者に限る)については、248社となっている。
-
新規参入第一種金融商品取引業者
第一種金融商品取引業者名
有価証券関連業
登録の状況
登録年月日
ごうぎん証券株式会社
○
新規登録
27年8月5日
Clear Markets Japan株式会社
-
新規登録
27年9月29日
株式会社フジトミ
○
変更登録
27年11月24日
株式会社お金のデザイン
―
変更登録
27年12月1日
株式会社One Tap BUY
○
新規登録
27年12月17日
ウェルスナビ株式会社
○
新規登録
27年12月17日
WisdomTree Japan株式会社
―
新規登録
28年1月22日
とうほう証券株式会社
○
新規登録
28年1月22日
ブラックストーン・グループ・ジャパン株式会社
○
変更登録
28年3月1日
アムンディ・ジャパン株式会社
○
変更登録
28年3月9日
アライアンス・バーンスタイン株式会社
-
変更登録
28年3月9日
スタンダードチャータード証券株式会社
○
新規登録
28年5月20日
-
金融商品取引業の廃止等(金融商品取引法第29条の登録の抹消を伴うもの)又は変更登録(第一種金融商品取引業の廃止)した第一種金融商品取引業者
第一種金融商品取引業者名
有価証券関連業
廃止等の状況
廃止等年月日
三栄証券株式会社
○
合併消滅
27年7月21日
FXCMジャパン証券株式会社
○
合併消滅
27年8月1日
株式会社よじげん証券
○
廃止
27年9月24日
大宇証券株式会社
○
廃止
27年11月5日
アーツ証券株式会社
○
登録取消し
28年1月29日
八幡証券株式会社
○
合併消滅
28年2月1日
第一商品株式会社
―
廃止
28年3月18日
アライアンス・バーンスタイン・ルクセンブルグ・エス・エイ・アール・エル
○
事業譲渡
28年3月31日
アムンディ・ジャパン証券株式会社
○
合併消滅
28年4月1日
ソシエテジェネラルセキュリティーズノースパシフィックリミテッド
○
事業譲渡
28年5月1日
-
-
(2)特別金融商品取引業者
28年6月末現在、金融商品取引法第57条の2第1項に基づく特別金融商品取引業者に該当する旨の届出を行っている第一種金融商品取引業者は、20社となっている。
特別金融商品取引業者 SMBC日興証券(株)
クレディ・スイス証券(株)
ゴールドマン・サックス証券(株)
JPモルガン証券(株)
シティグループ証券(株)
大和証券(株)
ドイツ証券(株)
日本相互証券(株)
野村證券(株)
バークレイズ証券(株)
BNPパリバ証券(株)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券(株)
みずほ証券(株)
モルガン・スタンレーMUFG証券(株)
メリルリンチ日本証券(株)
UBS証券(株)
(株)SBI証券
野村ファイナンシャル・プロダクツ・サービシズ
ナティクシス日本証券(株)
ソシエテ・ジェネラル証券(株)
-
(3)指定親会社
28年6月末現在、特別金融商品取引業者の親会社のうち、金融商品取引法第57条の12第1項に基づく指定を受けている指定親会社は、野村ホールディングス(株)及び(株)大和証券グループ本社の2社となっている。
-
-
2.国内証券会社の27年度決算概要(資料12-3-2~3参照)
国内証券会社233社の27 年度決算(単体)は、株式市場が概ね好調であった前年度に比べると、それをやや下回る水準ではあるものの、受入手数料が前年度と同程度であったことなどから、良好な決算を確保した。
営業収益は、前期比1,274億円減の3兆9,655億円(同3%減)、販売費・一般管理費は、同102億円減の2兆7,622億円(同0%減)、経常損益は、同1,330億円減の8,771億円(同13%減)、当期損益は、同1,087億円減の6,085億円(同15%減)となった。
なお、投資信託関連手数料をみると、販売手数料を重視した営業から、預り資産残高重視の営業へ移行している証券会社の増加などから、投資信託販売手数料は、前期比1,207億円減の3,302億円(同27%減)と減収となったものの、投資信託代行手数料(信託報酬)は、同2億円増の2,467億円(同0%増)と同水準を維持した。
II 第一種金融商品取引業者に対する行政処分
第一種金融商品取引業者に対する行政処分については、金融商品取引の公正性の確保や投資者保護等の観点から、検査等を通じて法令違反等が認められた場合には、法令に則り厳正に対処してきている。
27年7月以降の第一種金融商品取引業者に対する行政処分の状況については、証券取引等監視委員会の検査結果等に基づき、18社(21件)に対し行政処分を行っており、その内訳は次のとおりとなっている。
登録の取消及び業務改善命令 | 1件 | ||
業務停止命令及び業務改善命令 | 3件 | ||
業務改善命令 | 17件 | ||
資産の国内保有命令及び業務改善命令 | 0件 | ||
資産の国内保有命令 | 0件 |
なお、行政処分に至った法令違反等の内容は、「分別管理を適切に行っていない状況」「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、虚偽の表示をし、又は重要な事項につき誤解を生ぜしめるべき表示をする行為」「適格機関投資家出資と評価し得ない出資」「法人関係情報の管理に不備がある状況等」等となっている。
III 投資者保護基金について
金融システム改革に伴う証券取引法の改正(10年12月1日施行)において、顧客資産の分別保管の義務化とともに、証券会社の破綻の際のセーフティネットとして、投資者保護基金制度を創設し、全ての証券会社(金融商品取引法施行後は、有価証券関連業を行う第一種金融商品取引業者)に投資者保護基金への加入を義務付けた。
基金制度創設当初より、国内系証券会社(235社)を中心に設立された日本投資者保護基金と外資系証券会社(46社)を中心に設立された証券投資者保護基金が存在していたが、14年7月1日に統合し、日本投資者保護基金に一本化され今日に至っている(28年6月末時点251社、同年3月末時点基金規模約569億円)。(資料12-3-4参照)
第4節 第二種金融商品取引業
I 第二種金融商品取引業者の概況(資料12-4-1参照)
第二種金融商品取引業者は、いわゆる集団投資スキーム(ファンド)持分の販売、信託受益権の販売、投資信託の直接販売等を業として行う者であり、金融庁及び財務局が監督している。
平成28年6月末現在における第二種金融商品取引業者は1,155社となっている。
II 第二種金融商品取引業者に対する行政処分
27年7月以降、証券取引等監視委員会の検査結果等に基づき、9社に対して行政処分を行っており、その内訳は登録取消しが8件(うち4件は業務改善命令を含む。)、業務改善命令が1件となっている。
なお、行政処分に至った違法行為等の内容は、「出資金の流用を知りながらファンドの私募の取扱いを行っている状況」、「事業の実態について事実と異なる内容を表示しファンドの私募の取扱いを行っている状況」等となっている。
第5節 投資助言・代理業
I 投資助言・代理業者の概況(資料12-5-1参照)
投資助言・代理業者は、投資顧問契約に基づく助言や、投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理又は媒介を業として行う者であり、金融庁及び財務局が監督している。
平成28年6月末時点では、投資助言・代理業者数は994社となっている。
II 投資助言・代理業者に対する行政処分
27年7月以降、証券取引等監視委員会の検査結果等に基づき、5社に対して行政処分を行っており、その内訳は登録取消しが2件、業務停止命令(業務改善命令を含む。)が3件となっている。
なお、行政処分に至った違法行為の内容は、「金融商品取引業を適確に遂行するに足りる人的構成を有しない状況」等となっている。
第6節 投資運用業
投資運用業者の概況
I 投資運用業者の推移
投資運用業者は、投資信託委託業者、投資法人資産運用業者、投資一任業者及び自己運用業者の4類型に分類される。
平成28年6月末現在の投資運用業者数は352社(投資信託委託業者98社、投資法人資産運用業者81社、投資一任業者273社、自己運用業者30社)となっている。(資料12-6-1参照)
(注)重複して業務を行っている投資運用業者がいるため、その内訳である投資信託委託業者数、投資法人資産運用業者数、投資一任業者数及び自己運用業者数を合計した数値は、投資運用業者数と同一にはならない。
II 投資法人の推移
28年6月末現在の登録投資法人は84社(不動産系81社、インフラ系1社、証券系2社)となっている。
このうち、上場不動産投資法人(いわゆるJ-REIT)54社の運用資産残高の合計は、28年5月末で15兆1,802億円(前年比9.9%増)となっている。
27年7月以降、6件のIPOを伴う新規上場があった。(資料12-6-2参照)
III 運用資産の推移
27年度の投資信託については、資金流入により純資産残高は増加している。
投資信託については、純資産残高は28年6月末で公募投信86兆631億円(前年比14.7%減)(株式投信74兆1,406億円(同10.8%減)、公社債投信11兆9,225億円(同32.8%減))、私募投信66兆1,772億円(同22.8%増)(株式投信62兆7,127億円(同21.4%増)、公社債投信3兆4,645億円(同54.7%増))となっている。(資料12-6-3参照)投資一任契約資産残高については、28年3月末で199兆2,821億円(同0.05%増、一般社団法人日本投資顧問業協会員合計)となっている。
自己運用業者が運用するファンドの総資産額は、4,278億円となっている(27事務年度に提出された事業報告書を基に集計)。
第7節 登録金融機関、取引所取引許可業者、金融商品仲介業者
I 登録金融機関の概況
平成28年6月末現在における登録金融機関数は、1,067社となっている。(資料12-7-1参照)
登録金融機関に対する行政処分については、金融商品取引の公正性の確保や投資者保護等の観点から、検査等を通じて法令違反等が認められた場合には、法令に則り厳正に対処している。
なお、27年7月以降の登録金融機関に対する行政処分の実績はない。
II 取引所取引許可業者の概況
取引所取引許可業者は、国内に拠点を有しない外国証券業者で、金融商品取引法第60条第1項に基づく許可を受けて、国内の金融商品取引所における取引を業として行うことができる者であり、金融庁が監督している。
28年6月末現在における取引所取引許可業者は1社となっている。(資料12-7-2参照)
III 金融商品仲介業者の概況
28年6月末現在における金融商品仲介業者数は、832業者となっている。(資料12-7-1参照)
27年7月以降の金融商品仲介業者に対する行政処分の状況については、関東財務局による検査の結果、法令違反等が認められたため、1社に対して行政処分(業務停止命令及び業務改善命令)を行っており、行政処分に至った法令違反等の内容は、「法人関係情報を利用した勧誘行為及び法人関係情報の管理不備」等である。
第8節 信用格付業者
I 信用格付業者の概況(資料12-8-1参照)
信用格付業者は、信用格付を付与し、かつ、提供し又は閲覧に供する行為を業として行う者であり、金融庁が監督している。
平成28年6月末現在における信用格付業者は7社となっている。
II 信用格付業者の特定関係法人
28年6月末現在、金融商品取引業等に関する内閣府令第116条の3第2項に基づき金融庁長官による指定を受けた信用格付業者の関係法人(特定関係法人)は、43法人となっている。
(28年6月末現在) | |
信用格付業者名 |
対象となる関係法人 |
---|---|
ムーディーズ・ジャパン株式会社 |
17法人 |
スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社 |
13法人 |
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社 |
13法人 |
第9節 適格機関投資家等特例業務届出者
I 適格機関投資家等特例業務届出者の概況
適格機関投資家等特例業務届出者は、集団投資スキーム持分の自己募集やその財産の自己運用のうち、適格機関投資家(いわゆるプロ投資家)が1名以上及びそれ以外の者49名以下の投資家を相手に業務を行う者であり、金融庁及び財務(支)局に届出をしている。また、特例投資運用業者は、金融商品取引法施行前に募集が完了した集団投資スキームの財産の自己運用を行う者であり、金融庁及び財務(支)局に届出をしている。
平成28年6月末現在、これらの届出業者は3,215者(うち、適格機関投資家等特例業務届出者は2,882者、特例投資運用業者は415者)である。
(注)重複して届出を行っている業者がいるため、その内訳である適格機関投資家等特例業務届出者数及び特例投資運用業者数を合計した数値は、届出業者数と同一にはならない。
II 適格機関投資家等特例業務届出者に対する警告について
27年7月以降、金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針に基づき、29者の適格機関投資家等特例業務届出者に対して警告を行っており、その内訳は無登録で金融商品取引業を行う者19者、虚偽の告知等を行った者が25者となっている。
(注)重複して警告を行っている業者がいるため、その内訳である無登録で金融商品取引業を行う者数及び虚偽の告知等を行った者数を合計した数値は、警告を行った業者数と同一にはならない。
第10節 認定投資者保護団体
認定投資者保護団体制度とは、苦情解決・あっせん業務の業態横断的な取組みを更に促進するため、金融商品取引法上の自主規制機関以外の民間団体が行う苦情解決・あっせん業務について、行政がこれを認定すること等により民間団体の業務の信頼性を確保する制度である。
金融商品取引法第79条の7の規定に基づき、平成28年6月30日現在、下記の団体を認定投資者保護団体として認定している。
(28年6月30日現在) | ||
認定日 |
団体名 |
所在地 |
---|---|---|
22年1月19日 |
特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター |
東京都中央区日本橋茅場町2-1-13 |
第11節 詐欺的投資勧誘等の問題に対する対応状況について
I 相談件数の状況等
平成27事務年度において、金融庁金融サービス利用者相談室では、詐欺的投資勧誘等に関する相談件数は、1,579件となっており、その年齢別内訳は60代以上が半数以上(約60%)を占める傾向は変わらないが、20代から40代の相談が増加しており、その半数以上が被害後の相談となっている。これらの相談には、インターネットを通じた海外の無登録FX業者との取引などが多く含まれる。
商品別では、最近は集団投資スキーム(ファンド)の取引に関する相談件数が減少してきている(25事務年度1,202件→26事務年度654件→27事務年度514件)。一方、FX取引に関する相談件数が多く認められており(27事務年度838件)、海外所在の無登録業者のインターネット広告を見て取引を開始したが、返金に応じてもらえない、といった相談が目立つ。
なお、相談内容には、無登録業者が関与する詐欺的なものが多く、金融庁や証券取引等監視委員会の職員を装った投資勧誘等も発生している。
II 対応
金融庁は、詐欺的な投資勧誘の問題について、従来から、証券取引等監視委員会等とも連携しつつ、以下のような対応に取り組んできた。
金融庁ウェブサイト等を通じた注意喚起
登録業者に関する問題事例について、検査・監督を通じた厳正な対応
無登録業者及び届出業者に関する問題事例について、当該業者への警告書の発出及びその旨のウェブサイト上での公表、警察当局との連携
(注)このほか、証券取引等監視委員会においては、金融商品取引法違反行為を行う無登録業者等に対して、金融商品取引法第192条に基づく裁判所への禁止命令等の申立てを行っている。
「集団投資スキーム(ファンド)連絡協議会」等を通じた関係行政機関等との連携の強化
第13章 その他の金融業の検査・監督をめぐる動き
第1節 事務ガイドライン第三分冊
事務ガイドライン第三分冊においては、前払式支払手段発行者、不動産特定共同事業者、特定目的会社・特定目的信託、電子債権記録機関、指定信用情報機関、資金移動業者、登録講習機関等について、行政の統一的な監督業務の運営を図るための法令解釈や事務手続き等について記載している。
第2節 貸金業者等の検査・監督をめぐる動き
I 貸金業者向けの総合的な監督指針
本監督指針については、平成19年11月7日に策定した後、環境の変化や新たな問題に的確に対応するために、随時改正を行ってきたところであり、27事務年度においては、「金融庁への役員等の氏名届出等に係る改正」(28年3月1日より適用)及び「コーポレートガバナンス・コードの適用開始等に係る改正」(28年6月3日より適用)を行った。
II 貸金業者の数の推移
貸金業者の登録数は、28年3月末現在、1,926業者(うち財務(支)局長登録292業者、都道府県知事登録1,634業者)となり、27年3月末から85業者減少した。
III 貸金業者に対する金融モニタリング
財務(支)局長登録の貸金業者は、貸金業法に基づき、財務(支)局が検査を実施しており、27事務年度は、44業者に対して検査を実施した。
(注)上記のモニタリングの結果に関しては、平成28年9月15日に公表された「平成27事務年度金融レポート」を参照。
IV 貸金業務取扱主任者資格試験の実施状況(資料13-2-1参照)
貸金業務取扱主任者資格試験事務を行う指定試験機関として、21年6月18日に日本貸金業協会を指定している。同資格試験は、毎年少なくとも1回行うこととされ(貸金業法施行規則第26条の34第1項)、27事務年度においては、27年11月15日に実施した。
V 貸金業務取扱主任者の登録状況
貸金業務取扱主任者の登録に関する事務については、日本貸金業協会に委任しており、21年10月5日より登録申請の受付を開始している。
なお、28年6月末現在、26,841人に対して貸金業務取扱主任者の登録を行っている。
VI 登録講習機関の講習実施状況
貸金業務取扱主任者の登録講習については、22年9月30日に日本貸金業協会を登録講習機関として登録し、当協会は、23年1月から登録講習を実施している。
同講習は毎年1回以上行うこととされ(貸金業法施行規則第26条の63第1号)、27事務年度は、計36回実施している。
VII 指定信用情報機関の概況
指定信用情報機関制度については、貸金業法の第3段階施行(21年6月18日)により、多重債務問題解決の重要な柱の一つである過剰貸付規制を実効性あるものとするため、貸金業者が個々の借り手の総借入残高を把握できる仕組みとして創設された。
なお、貸金業法に基づく信用情報提供等業務を行う者として、28年6月末時点で次の事業者を指定している。
指定日 |
商号 |
主たる営業所の所在地 |
---|---|---|
22年3月11日 |
株式会社シー・アイ・シー |
東京都新宿区西新宿一丁目23番7号 |
株式会社日本信用情報機構 |
東京都千代田区神田東松下町41-1 |
第3節 前払式支払手段発行者・資金移動業者の検査・監督をめぐる動き
I 前払式支払手段発行者の概況
平成22年4月1日に施行された「資金決済に関する法律」(以下、「資金決済法」という。)においては、「前払式証票の規制等に関する法律」(資金決済法の施行に伴い廃止。以下、「旧法」という。)において規制対象としていた紙型・磁気型・IC型の商品券やプリペイドカード等に加え、旧法において規制の対象としていなかった、いわゆるサーバ型の前払式支払手段(発行者がコンピュータのサーバ等に金額等を記録する前払式支払手段をいう。)についても規制の対象とされている。
前払式支払手段の種類は、前払式支払手段発行者及び発行者の密接関係者に対してのみ使用することができる自家型前払式支払手段と、それ以外の第三者型前払式支払手段に区分される。また、前払式支払手段の発行者は、自家型前払式支払手段のみを発行する法人又は個人である自家型発行者(届出制)と、第三者型前払式支払手段を発行する法人である第三者型発行者(登録制)に区分される。
「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 5 前払式支払手段発行者関係」については、判例を踏まえた行政手続法の運用の明確化等に係る改正を行った(28年6月3日より適用)。
|
26年3月末 |
27年3月末 |
28年3月末 |
---|---|---|---|
自家型発行者 |
765 |
805 |
828 |
第三者型発行者 |
1,050 |
1,024 |
1,002 |
合計 |
1,815 |
1,829 |
1,830 |
II 前払式支払手段発行者に対する金融モニタリング
前払式支払手段発行者は、資金決済法に基づき、財務(支)局が検査を実施しており、27事務年度は、126業者に対して検査を実施した。
III 前払式支払手段の払戻手続
資金決済法においては、前払式支払手段発行者が、前払式支払手段の発行の業務の全部又は一部を廃止した場合には、前払式支払手段の保有者に対して払戻しを実施することが義務付けられている。
前払式支払手段発行者が、この払戻しを行おうとするときは、当該払戻しをする旨や60日を下らない一定の期間内に申出すべきこと等の事項について、日刊新聞紙による公告及び営業所・加盟店等への掲示により、前払式支払手段の利用者への周知を行わなければならないとされている。
金融庁及び財務(支)局は、利用者の一層の保護を図る観点から、金融庁ウェブサイトに払戻しに関する情報として「商品券(プリペイドカード)の払戻しについて」(資金決済法に基づく払戻手続実施中の商品券の発行者等一覧を含む。)を掲載している。また、事務ガイドラインにおいては、利用者保護の観点から前払式支払手段発行者が講じることが望ましい措置として、60日よりも可能な限り長い払戻申出期間を設定すること等を着眼点としている。
払戻手続については、資金決済法施行日から28年6月末までに900件実施されている。
IV 前払式支払手段の発行保証金の還付手続
資金決済法においては、旧法と同様に、発行された前払式支払手段の基準日(3月末と9月末)における未使用残高が1,000万円を超える前払式支払手段発行者については、未使用残高の2分の1以上の発行保証金の供託等が義務付けられている。
前払式支払手段発行者について破産手続開始の申立て等が行われた場合であって、前払式支払手段の保有者の利益の保護を図るために必要があると認められるときは、財務(支)局によって発行保証金の還付手続が実施されることとなる。
発行保証金の還付手続については、旧法施行日(2年10月1日)から28年6月末までに50件実施されている。
発行者の名称 |
所管財務局 |
配当を実施した事務年度 |
---|---|---|
(有)パル・サービス |
中国財務局 |
27事務年度 |
発行者の名称 |
所管財務局 |
当該事務年度中の配当の実施 |
---|---|---|
(株)フラワーカードビューロー |
近畿財務局 |
27事務年度 |
(有)万作石油 |
東北財務局 |
未実施 |
(協)やよいデパート |
中国財務局 |
未実施 |
V 資金移動業者の概況
金融審議会金融分科会第二部会決済に関するワーキング・グループ報告(21年1月14日)において、「為替取引には安全性、信頼性が求められるが、情報通信技術の発達により銀行以外の者が為替取引を適切に提供できる環境が生じているとも考えられる。また、インターネット取引の普及等により、主として個人が利用する少額の決済について、より安価で、便利な為替取引の提供を求めるニーズが高まっているとも考えられる。預金の受入れや融資等の運用を行わない為替取引については、銀行以外の者が行うこと(為替取引に関する制度の柔軟化)を認めることとし、このための制度設計を行うことが適当と考えられる。」とされている。
この報告を受けて、資金決済法においては、従来銀行等のみに認められてきた為替取引を少額の取引に限定して銀行等以外の者でも行えるように資金移動業が創設されている。
資金移動業者が営むことができる為替取引(少額の取引)については、政令において100万円に相当する額以下の資金の移動に係る為替取引と定められている。
「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 14 資金移動業者関係」については、判例を踏まえた行政手続法の運用の明確化等に係る改正を行った(28年6月3日より適用)。
28年6月末現在の資金移動業者数は46業者となっている。
VI 資金移動業者に対する金融モニタリング
資金移動業者は、資金決済法に基づき、財務(支)局が検査を実施しており、27事務年度は、4業者に対して検査を実施した。
第4節 SPC等の監督をめぐる動き
I SPC等の概況
「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」(以下、「旧法」という。)は、金融制度調査会答申(平成9年6月)において、資金調達手段の多様化を図る上での環境整備を行う必要性が提言されたことを受けて、10年6月に成立し、同年9月に施行された。旧法の目的は、特定目的会社(以下、「SPC」という。)が業として特定資産の流動化を行う制度を確立し、特定資産の流動化に係る業務の適正な運営を確保すること、特定資産の流動化の一環として発行される各種の証券の購入者等の保護を図ることにより、一般投資家による投資を容易にすること等である。その後、金融審議会での21世紀を展望した金融サービスに関する基盤整備の観点からの検討を踏まえ、12年5月に改正が行われ、「資産の流動化に関する法律」(以下、「新法」という。)が同年11月から施行された。18年5月には会社法の施行に伴い、旧法に基づく特定目的会社(特例旧特定目的会社)にも、原則として新法が適用されることとなった。23年5月には資産流動化計画の変更届出義務の緩和等の措置を講じるための改正が行われ、同年11月に施行された。
「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 9A 特定目的会社、特定目的信託(SPC、SPT)関係」及び「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 9B 特例旧特定目的会社関係」については、判例を踏まえた行政手続法の運用の明確化等に係る改正を行った(28年6月3日より適用)。
|
26年3月末 |
27年3月末 |
28年3月末 |
28年6月末 |
---|---|---|---|---|
新法SPC |
759社 |
774社 |
722社 |
710社 |
旧法SPC |
2社 |
2社 |
1社 |
1社 |
(注1)業務開始届出書及び廃業届出書の受理日を基準として集計。
(注2)新法SPCとは、12年11月以降、新法に基づき設立されたSPCをいい、旧法SPCとは、特例旧特定目的会社をいう。
II 資産の流動化の状況
(億円) | ||||
|
25年9月末 |
26年9月末 |
27年9月末 |
|
---|---|---|---|---|
|
資産対応証券の発行残高等 |
98,640 |
87,061 |
82,195 |
|
(1) 新法SPC |
98,478 |
86,899 |
82,135 |
(2) 旧法SPC |
162 |
162 |
61 |
|
不動産 |
50,257 |
41,991 |
34,117 |
|
不動産の信託受益権 |
38,164 |
35,119 |
34,119 |
|
指名金銭債権 |
6,943 |
6,461 |
7,237 |
|
指名金銭債権の信託受益権 |
2,445 |
3,077 |
3,412 |
|
その他 |
832 |
413 |
3,310 |
(注1)毎年9月末を基準として、それ以前に終了した事業年度に係る事業報告書を集計。数値については、一千万円の位を四捨五入。
(注2)~は、流動化対象資産別に見た内訳。
第5節 不動産特定共同事業者の監督をめぐる動き
不動産特定共同事業者の概況
「不動産特定共同事業法」は、平成3年頃を中心に、経営基盤の脆弱な業者が不動産特定共同事業を行い倒産して、深刻な投資家被害を招いた事例が発生したため、こうした被害を未然に防ぎ、投資家保護を図りつつ不動産特定共同事業の健全な発達を促すことを目的として制定された。
25年12月には倒産隔離が図られたSPCスキームを活用した不動産特定共同事業の実施を可能とするための改正法が施行された。
「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 7 不動産特定共同事業関係」については、判例を踏まえた行政手続法の運用の明確化等に係る改正を行った(28年6月3日より適用)。
不動産特定共同事業者の数は、28年6月30日現在91社であり、このうち金融庁長官・国土交通大臣許可業者が39社、国土交通大臣許可業者が1社、都道府県知事許可業者が51社であるほか、みなし業者の届出を行っている業者は5社ある。また、倒産隔離型の不動産特定共同事業(特例事業)を行う特例事業者の届出数は28年6月30日現在25件である。
第6節 確定拠出年金運営管理機関の監督をめぐる動き
確定拠出年金運営管理機関の概況
確定拠出年金制度は、少子高齢化の進展、雇用の流動化等社会経済情勢の変化に鑑み、厚生年金基金、国民年金基金等の年金制度に加えて、本人若しくは事業主が拠出した掛金を加入者等(当該本人又は当該事業主の従業員等)が自己の責任において運用の指図を行い、高齢期においてその結果に基づいた給付を受けることができる公的年金に上乗せする年金制度として、平成13年6月に確定拠出年金法が成立し、同年10月施行された。
確定拠出年金法において、個人に関する記録の保存、運用の方法の選定及び提示等の業務を行う者は、確定拠出年金運営管理機関として厚生労働大臣及び内閣総理大臣の登録を受けなければならないとともに、両大臣が必要な監督を行うこととされている。内閣総理大臣の権限は金融庁長官に委任され、更に、金融庁長官の権限の一部は財務局長等に委任されている。
なお、28年6月末現在の確定拠出年金運営管理機関の登録数は198法人となっている。(資料13-6-1参照)
第7節 電子債権記録機関の監督をめぐる動き
電子債権記録機関の概況
「電子記録債権法」は、電子記録債権の安全を確保することによって事業者の資金調達の円滑化等を図る観点から、電子債権記録機関が調製する記録原簿への電子記録の発生、譲渡等を要件とする電子記録債権について定めるとともに、電子債権記録機関の業務、監督等について必要な事項を定めている。
この法律が、平成19年6月20日に成立し、20年12月1日に施行されたことに併せて、同日付で「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 12 電子債権記録機関関係」を作成し、電子債権記録機関の監督上の評価項目や監督に係る事務処理上の留意点について定めた。
「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係 12 電子債権記録機関関係」については、判例を踏まえた行政手続法の運用の明確化等に係る改正を行った(28年6月3日より適用)。
電子債権記録機関は、28年6月末現在4社となっている。
電子債権記録機関名 |
指定日 |
---|---|
日本電子債権機構株式会社 |
21年6月24日 |
SMBC電子債権記録株式会社 |
22年6月30日 |
みずほ電子債権記録株式会社 |
22年9月30日 |
株式会社全銀電子債権ネットワーク |
25年1月25日 |
第8節 金融コングロマリットの監督をめぐる動き
「金融コングロマリット」とは、銀行、保険会社、金融商品取引業者(第一種金融商品取引業(有価証券関連業に限る。)又は投資運用業を行う者)のうち、2以上の異なる業態の金融機関を含むグループをいう。
平成28年3月末時点において、「金融コングロマリット」に該当するグループは、国内系、外国系合わせて、125グループ存在する。金融庁では、「金融コングロマリット」に該当するこれらのグループについて、コングロマリット化に伴って生じる新たなリスクが、グループ内の個々の金融機関の健全性に問題を生じさせていないか、17年6月24日に策定・公表した「金融コングロマリット監督指針」に基づき、ヒアリング等を通じて十分な実態把握を行うとともに、適時適切に監督上の措置を講じているところである。
なお、「金融コングロマリット」に対する実効性のあるモニタリングや、業態横断的な取引等に係る監督事務の企画・立案及び必要な調整を行う体制を一層整備する観点から、監督局内にコングロマリット室を設置し、コングロマリット監督の充実・強化に努めている。
第9節 その他の金融機関等に対する金融モニタリング
I 信用保証協会に対する金融モニタリング
信用保証協会は、信用保証協会法に基づき、経済産業局、都道府県・市町村及び財務(支)局が検査を実施しており、27事務年度は、7協会に対して検査を実施した。
種類 |
区域 |
|
---|---|---|
市町村の区域を越える |
市町村の区域を越えない |
|
信用保証協会 |
主務大臣・都道府県知事 |
主務大臣・市町村長 |
(注1)主務大臣とは、内閣総理大臣及び経済産業大臣。内閣総理大臣の権限は金融庁長官に委任され、更に財務(支)局長に委任されている。
(注2)都道府県の区域を越える信用保証協会は存在しない(28年3月末現在)。
II 政策金融機関等に対する金融モニタリング(資料13-9-1参照)
金融庁は、各主務大臣からリスク管理分野の検査権限を委任されている政策金融機関等に対し、15事務年度から検査を実施している。27年10月には、福祉医療機構、農林漁業信用基金、中小企業基盤整備機構及び奄美群島振興開発基金に対するリスク管理分野の検査権限が、各主務大臣から金融庁長官に委任された。
政策金融機関等に対しては、金融庁が入手している経営情報等を分析するほか、各機関の特性を踏まえ、特定の検証項目について、オンサイト・オフサイトの手法を効率的に組み合わせた金融モニタリングを実施することとしている。
27事務年度は、2機関に対して検査を実施した。
第14章 法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)
I 本制度導入の経緯
政府は、平成13年3月27日に閣議決定された「行政機関による法令適用事前確認手続の導入について」において、「平成13年度から、IT・金融等新規産業や新商品・サービスの創出が活発に行われる分野について、民間企業等がある行為を行うに際し、法令に抵触するかどうかについての予見可能性を高めるため、当該行為について特定の法令の規定との関係を事前に照会できるようにするとともに、行政の公正性を確保し、透明性の向上を図るため、当該照会内容と行政機関の回答を公表する」こととした。
金融庁では、当該閣議決定を受けて、「金融庁における法令適用事前確認手続に関する細則」を策定し、13年7月16日より、金融庁の所管する法令について、「法令適用事前確認手続」制度(ノーアクションレター制度)の運用を開始し、その後、数度に渡る細則の改正を通じて、本制度の改善を図っている。
本制度は、民間企業等が、実現しようとする自己の事業活動に係る具体的行為に関して、金融庁所管法令の適用対象となるかどうかを、あらかじめ確認できる制度である。民間企業等は照会案件に係る法令を所管する担当課室長に対して書面で照会し、照会を受けた担当課室の長は原則30日以内に書面で回答することとなっている。
II 回答実績
金融庁では、27事務年度において、対象となる照会に対して2件の回答を行っており、制度導入からの累計は61件となっている。
III 利用上の留意点
本制度に基づく照会に対する金融庁の回答は、照会書に記載された事実を所与の前提として、対象法令との関係のみについて、照会された時点における見解を示すものである。
したがって、前提事実が異なる場合や、関係法令が変更されるような場合には、異なる見解が示される場合もありうるし、また、当然のことながら、当該回答が、捜査機関の判断や司法判断を拘束するものではない。
第15章 一般的な法令解釈に係る書面照会手続
I 本照会手続導入の経緯
金融庁では、金融改革プログラムにおいて、金融行政の透明性・予測可能性の向上に関する取組みの一つとして、「外部からの照会に対する一般的な法令解釈についての考え方の公表」を掲げ、ノーアクションレター制度(法令適用事前確認手続)を補完するものとして、平成17年3月31日に、各業態の事務ガイドライン及び監督指針を改正して、金融庁が法令解釈等に係る一般的な照会を受けた場合において、書面による回答を行い、照会及び回答内容を公表する際の手続等を明確化し、同年4月1日より運用を開始した。
本手続きは、金融庁所管法令の直接の適用を受ける事業者等が、金融庁所管法令に係る一般的な法令解釈について照会できる制度である。事業者等は法令を所管する担当課室長に対して書面で照会し、照会を受けた担当課室長は原則2ヶ月以内に書面で回答することとなっている。
II 回答実績
制度導入からの累計は6件(27事務年度における照会は2件)。
III 利用上の留意点
-
1.ノーアクションレター制度との関係
ノーアクションレター制度の利用が可能な個別具体的な事案に関する照会については、本照会手続の対象としていない。
-
2.回答の効力
本照会手続に基づく回答は、あくまでも照会時点における照会対象法令に関する一般的な解釈を示すものであり、個別事案に関する法令適用の有無を回答するものではない。また、もとより、捜査機関の判断や司法判断を拘束しうるものではない。
第16章 疑わしい取引の届出制度
I 疑わしい取引の届出制度
「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、「犯罪収益移転防止法」という。)の規定により、金融機関等は、顧客から収受した財産が犯罪収益若しくは、テロ資金である疑いがある場合又は顧客がその取引でマネー・ローンダリングを行っているのではないかと疑われる場合には、速やかに行政庁に届出を行わなければならない義務が課されている。
疑わしい取引に関する情報は、主務大臣を通じて国家公安委員会に集約されたのち、整理・分析が行われ、犯罪捜査等に資すると判断された情報については捜査機関等に提供されている。
このような仕組みは「疑わしい取引の届出制度」と呼ばれており、マネー・ローンダリング対策の柱として、我が国のみならず諸外国でも同種の制度が設けられている。(資料16-1参照)
II 疑わしい取引の届出に関する概況
-
1.届出の状況
平成27年1月から12月までの1年間に、金融機関等から385,639件(前年比18,860件増)※の疑わしい取引の届出が行われた。
※「平成27年 警察庁 犯罪収益移転防止対策室 犯罪収益移転防止に関する年次報告書」より
-
2.研修会の開催
警察庁との共催により、27年10月から11月にかけて、各財務(支)局等において、金融機関等の疑わしい取引の届出担当者を対象に、疑わしい取引の届出制度についての理解を深めるため研修会を開催した。
-
3.疑わしい取引の届出等の徹底の要請
FATF声明の公表など様々な機会を捉え、関係省庁と連携のうえ、金融機関等に対し、犯罪収益移転防止法に基づく顧客等の取引時確認義務、疑わしい取引の届出義務の履行を徹底するよう繰り返し要請を行っている。
第17章 課徴金納付命令
I 課徴金制度について
-
1.経緯等
証券市場への信頼を害する違法行為又は公認会計士・監査法人による虚偽証明に対して、行政として適切な対応を行う観点から、規制の実効性確保のための新たな手段として、平成17年4月(公認会計士法については20年4月)から、行政上の措置として違反者に対して金銭的負担を課す課徴金制度を導入した。
(注)制度の対象とする違反行為
-
(1)金融商品取引法
不公正取引
(インサイダー取引、相場操縦(仮装・馴合売買、違法な安定操作取引等)、風説の流布・偽計)
情報伝達・取引推奨行為
有価証券届出書等の不提出・虚偽記載等(発行開示義務違反)
有価証券報告書等の不提出・虚偽記載等(継続開示義務違反)
公開買付開始公告の不実施、公開買付届出書等の虚偽記載等
大量保有報告書等の不提出・虚偽記載等
プロ向け市場等における特定証券等情報の不提供等、虚偽等及び発行者等情報の虚偽等
虚偽開示書類等の提出等を容易にすべき行為等
-
(2)公認会計士法
-
ア.公認会計士
公認会計士が、故意に、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽錯誤及び脱漏のないものとして証明
公認会計士が、相当の注意を怠り、重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明
-
イ.監査法人
監査法人の社員が、故意に、虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明
監査法人の社員が、相当の注意を怠り、重大な虚偽、錯誤又は脱漏のある財務書類を重大な虚偽、錯誤及び脱漏のないものとして証明
-
金融庁では、これら課徴金制度の運用を行うための体制整備として、17年4月1日付で、審判官を発令するとともに、総務企画局総務課に審判手続室を設置した。
-
-
2.課徴金納付命令までの手続(資料17-1参照)
-
(1)金融商品取引法
証券取引等監視委員会が調査を行い、課徴金の対象となる法令違反行為があると認める場合には、内閣総理大臣及び金融庁長官に対し勧告を行う。
これを受け、金融庁長官(内閣総理大臣から委任。以下同じ。)は審判手続開始決定を行い、審判官が審判手続を経たうえで課徴金納付命令決定案を作成し、金融庁長官に提出する。
金融庁長官は、決定案に基づき、課徴金納付命令の決定を行う。
-
(2)公認会計士法
金融庁長官が調査を行い、課徴金の対象となる虚偽証明の事実があると認める場合には、審判手続開始決定を行い、審判官が審判手続を経たうえで課徴金納付命令決定案を作成し、金融庁長官に提出する。
金融庁長官は、決定案に基づき、課徴金納付命令の決定を行う。
-
II 課徴金納付命令等の状況(資料17-2参照)
-
1.課徴金納付命令の実績
27事務年度においては、不公正取引事件32件及び開示書類の虚偽記載等事件6件並びに公認会計士法違反事件1件について課徴金納付命令の決定を行い、金融庁ウェブサイトにて、その概要を公表した。
-
(1)金融商品取引法
事務年度
不公正取引
開示書類の虚偽記載等
合計
17事務年度~22事務年度
116件
57件
173件
23事務年度
25件
14件
39件
24事務年度
29件
9件
38件
25事務年度
40件
8件
48件
26事務年度
40件
8件
48件
27事務年度
32件
6件
38件
-
(2)公認会計士法
事務年度
公認会計士
監査法人
合計
27事務年度
0件
1件
1件
-
-
2.審判期日等の実績
-
(1)海外に居住する個人投資家による内部者取引(平成27(判)17)
27年10月29日 開始決定 28年2月29日 審判期日 28年3月17日 課徴金納付命令 -
(2)(株)オプトロムに係る四半期報告書等の虚偽記載(平成27(判)13)
27年9月18日 開始決定 28年6月30日 審判期日
(注)これまでに審判期日が開催され、27事務年度中に審判手続(審判期日)が終結したもの。
-
第18章 金融モニタリングの透明性・実効性の向上等のための方策
第1節 検査モニター制度(資料18-1-1参照)
立入検査中又は立入検査終了後に、金融庁や財務(支)局等(沖縄総合事務局を含む)のバックオフィスの幹部が被検査金融機関に赴き、検査班を同席させずに、経営陣から検査に関する意見を直接聴取する「オンサイト検査モニター」、及びこれを補完する手段として、アンケート方式により検査に関する意見を受け付ける「オフサイト検査モニター」を実施し、適正な検査の確保に努めているところである。
検査モニターの結果、検査実施上の問題点等が確認された場合においては、主任担当検査官に伝達して早期に改善を図ることとしているほか、その状況については、財務(支)局等の検査モニターも含め、速やかに金融庁検査局長まで報告を行う体制としている。
27事務年度においては、26事務年度に実施した立入検査に関するオフサイト検査モニター(アンケート方式)の集計結果を27年10月2日に公表した。
また、28年1月より、オンサイト検査モニターをヒアリング式検査モニターに、オフサイト検査モニターをアンケート式検査モニターに名称を変更するとともに、検査の質的向上を図るため、検査の品質評価に係る項目をアンケート式検査モニターの様式に追加するなどの改正を踏まえた新しい検査モニター制度を試行し、28年7月から本格施行予定としている。
(参考)新しい検査モニター制度の概要
-
1.ヒアリング式検査モニター
金融庁・財務(支)局等のバックオフィスの幹部が被検査金融機関に赴き、立入検査中又は立入検査終了後に、経営陣や検査担当者から直接意見聴取を行う。
また、金融庁主担検査に財務(支)局等幹部が赴き、反対に財務(支)局等主担検査に金融庁幹部が赴いて、経営陣等から意見を伺う、クロスモニターも実施している。
ヒアリング式検査モニターの実施時期については、被検査金融機関の希望を聴取し、調整を行う。
聴取した意見については、必要に応じて担当主任検査官に伝達する等の対応をとるとともに、今後の検査運営等の参考とする。
-
2.アンケート式検査モニター
ヒアリング式検査モニターを補完するものとして、アンケート方式により意見を受け付ける。
アンケート式検査モニターの提出期間は、検査結果通知等の交付から10日目までの間を目安とする。
寄せられた意見については、必要に応じ、補足ヒアリングを行うとともに、把握した課題等については改善を図り、今後の検査運営等の参考とする。
第2節 意見申出制度(資料18-2-1参照)
本制度は、検査官と被検査金融機関とが十分な議論を尽くした上でも、認識が相違した項目がある場合に、被検査金融機関が当該相違項目について意見を申し出る制度であり、検査の質的水準及び判断の適切性の更なる向上を図り、もって金融検査に対する信頼を確保することを目的として、平成12年1月から実施されている。
17年7月からは、本制度の中立性・公平性・透明性の向上の観点から、意見申出の審理を行う意見申出審理会の外部委員として、専門家4名を招聘し、その後21年1月には、外部委員を6名増員し、10名体制とした(28年6月末時点では9名体制)。
なお、意見申出の実績については、本制度導入以降、27事務年度末までに42機関より380事案の申出があり、機関数の内訳は、銀行22件、協同組織金融機関11件、保険会社2件、貸金業者5件、その他(証券会社)2件となっている。
また、申出内容については、380事案のうち、資産査定に関するものが全体の約8割を占めている。また、被検査金融機関の意見が妥当と認められた事案は161事案であり、全体の約42%となっている。
(参考)意見申出制度について
対象検査
金融庁検査局、財務(支)局等(沖縄総合事務局を含む)の実施する全ての金融検査。
対象項目
当該立入検査における検証項目のうち、検査官と被検査金融機関とが十分な議論を尽くした上でも認識が相違した項目を意見申出の対象とし、新たな論点及び主張は対象としない。
提出期限
立入検査終了手続(エグジット・ミーティング)実施日から2週間後(期限が土休日に当たる場合、その翌営業日)を期限とする。
(注)郵送の場合は、提出期限内の消印日付のあるものを有効とする。
提出方法
立入検査終了の際に確認された意見相違項目について、必要に応じ疎明資料等を添付の上、提出する。
提出先
被検査金融機関の代表者名において、金融庁検査局長宛に提出する。ただし、担当主任検査官又は本店所在地を管轄する財務(支)局等経由での提出もできる。
審理方法
意見申出が行われた事項は、検査局意見申出審理会(立入検査を行った検査官以外の検査局幹部及び外部の専門家により構成)において、申出書に基づき、書面による審査を行う。
審理結果の回答方法
申出項目の審理結果は、検査結果通知書に別紙として添付する方法で回答する。
第3節 金融モニタリング情報の収集について
I 概要(資料18-3-1参照)
金融庁及び財務局等では、金融機関の業務の健全かつ適切な運営の確保に関して、より一層深度あるモニタリングを行う観点から、ウェブサイト(ホームページ)上の入力フォーム、ファックス、郵送を通じて、金融機関に関する情報を広く一般から収集する「金融モニタリング情報収集窓口」を設置している。
II 情報の収集状況
-
1.収集件数
平成27事務年度の総収集件数は、474件となっており、そのうち、預金取扱等金融機関に関する情報が210件(44%)、保険会社に関する情報が241件(51%)、金融機関名や情報内容が不明なもの等が23件(5%)となっている。
-
2.業態別の主な情報
-
(1)預金取扱等金融機関については、苦情対応等に関するもの、法令等の遵守等に関するもの、預金・投資信託及び保険等の説明等に関するもの、経営管理に関するもの、リスク管理に関するもの、融資の申込みや貸付条件の相談等に関するものなど、多様な情報が寄せられている。
-
(2)保険会社については、保険金や給付金の支払い等に関するもの、法令等の遵守等に関するもの、苦情対応等に関するもの、契約の変更や解約処理等に関するもの、保険商品の説明及び告知の取扱い等に関するもの、経営管理に関するもの、顧客情報の漏洩等に関するもの、リスク管理に関するものなど、保険募集代理店での対応を含めた情報が寄せられている。
-