2004年 入庁

総合政策局総合政策課
総合政策企画室長 兼
資産運用高度化室長

桑田 尚KUWATA Hisashi

金融庁全体の議論をリードし、施策のグランドデザインを描く

現在取り組んでいる仕事を教えてください。

金融庁全体のアクションプランである「金融行政方針」の策定や、政府として閣議決定される 「成長戦略」「経済対策」の取りまとめなど、金融庁全体が関係する議論をリードし、成果物へと繋げていく役割を担っています。

変化が激しく先が読めない今の世の中は「VUCA時代」と呼ばれることもありますが、金融機関を巡る環境や金融資本市場の目まぐるしい変化に対応する金融行政にとっては、今に始まった話ではなく、常に難易度の高い新たな課題への挑戦が求められます。こうした中で、各分野の政策課題や対応策を網羅的に把握した上で、優先順位をつけながら、グランドデザインを描く業務は、とても骨の折れるものですが、チーム一丸となって、組織としてのパフォーマンス最大化のために、日々奮闘しています。また、資産運用高度化室として、投資商品のコストやリターン等をデータで詳細に分析し、顧客本位の観点から資産運用会社に求められる対応や投資商品としてのあるべき姿を追求するという業務も行っています。

これまでで印象に残ったポストについて、 業務内容とやりがいを教えてください。

それぞれのポスト・業務において、「これは、一体どう解決すればいいのだろう。絶対無理。」と頭を抱える難題に直面することも多く、苦労もしましたが、その都度、上司やチームに支えられて、何とか乗り切ってきました。振り返ってみれば、その一つひとつの経験が成長機会だったと思います。ここでは、そうした経験を2つご紹介します。

国際業務

高校・大学時代に、留学経験があるわけでもなく、外国人の友人がいたわけでもない私は、どちらかと言うとドメスティックな人材として入庁したのですが、たまたま2年間の英国留学、3年間のブリュッセル勤務(EU代表部への出向)の機会を得ました。

ブリュッセル時代は、欧州債務危機の真っ只中で、マーケットが欧州の一挙手一投足に注目している重要な時期でしたので、欧州各国の財務・金融監督当局者にアプローチし、内部の状況を聞き出しながら、頻繁に議論を交わしました。外国人と議論することにも慣れてきた頃、帰国して、国際室の課長補佐として着任。バーゼル委員会の部会メンバーとして、国際会議・交渉に参加するようにもなりました。20数カ国が参加する議論の場で、日本代表として各国と立場が異なり、四面楚歌になった場面もありました。他の議題との合わせ技で、何とか日本として受け入れ可能な結論へと導くことが出来たものの、非常に緊張が走った瞬間でした。

金融分野は国際的な議論や動向と切り離せるものではなく、国際室でなくても、海外当局と英語で議論する機会は多くあります。入庁前とは大きく異なる自分が今存在するのですが、皆さんも入庁後に全く想像していない成長を遂げたご自身に出会えるかもしれません。金融庁は、そういう成長機会を与えてくれる職場だと思います。

国際金融センター

2020年12月の経済対策において、「国際金融センター」の実現に向けた政策パッケージを盛り込みました。海外の資産運用会社やスキルの高い運用人材の国内参入促進に力点を置いたものであり、運用資産の拡大・各種コストの低下や業界全体の能力向上を通じて、投資家への利益還元の増加、ひいては持続的な経済成長を実現することが狙いです。

誘致強化に当たって取り組むべき課題は、金融庁が所掌する資産運用会社の登録審査手続きだけでなく、税、ビザ、住宅、医療、教育等多岐に亘ります。政策立案に当たって最初にしたことは、まず課題の洗い出しでした。官邸より、金融庁が全ての議論をリードして取りまとめるようにとの話もあり、外国人が多く勤務する企業、行政書士事務所、海外事業者の参入を支援する企業、インターナショナルスクール等を訪ねてインタビューをしたほか、香港のファンドからも意見を聞きました。その結果を踏まえて、各省庁とも議論し、制度の見直しや情報発信の強化に協力してもらうことになり、省庁横断的な政策パッケージを作り上げることが出来ました。

金融はあらゆる分野に関わりがあり、他省庁と連携する機会も多くあります。積極的に外に出て、政府一丸となった大きな構想を打ち立てる経験を、是非皆さんにもしていただきたいと思います。

学生へのメッセージ

今、皆さんは、就職活動という人生の大きな節目において、選択の時を迎えています。最後に出来るだけ納得のいく選択となるよう、多くの人の話を聞き、大いに悩み、しっかりと考えてみてください。仕事を始めると、なかなか思い通りにいかないことも多くあります。先が見えない難題に直面する時、自分の立ち位置が定まらない時、全く異なる利害関係者間の意見調整を行わなければならない時。大事な仕事ですから、大変なことも多いわけですが、そういう時はいつも「自分が就職活動で納得して決めた道だから。」と自分自身を鼓舞し、前を向くようにしています。これが仕事への原動力となり、前向きに取り組むからこそ、やりがいや自分自身の成長に繋がるのだと思っています。皆さんと一緒のチームになれることを期待しています。

2004.4
監督局総務課金融危機対応室
2005.7
監督局銀行第一課
2006.7
公認会計士・監査審査会事務局 総務試験室総務第一係長
2007.7
英・ロンドン大学クイーンメアリー校(留学)
2008.7
英・LSE(留学)
2009.7
総務企画局政策課企画第一係長
2010.7
総務企画局企画課調査室課長補佐
2011.7
在ブリュッセル・欧州連合 日本政府代表部(出向)
2014.7
総務企画局総務課国際室課長補佐
2017.7
総務企画局政策課課長補佐(税制)
2018.7
㈱産業革新機構(出向) ※2018.9より㈱産業革新投資機構
2019.7
監督局銀行第一課銀行監督調整官
2020.7
総合政策局総合政策課 総合政策企画室長 ※2021.8より、兼 資産運用高度化室長
CAREER