金融庁2014
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大森さんに、金融システム以外も考えてもらう。44問 大森さんは、何のために働いているのですか?答 働くために生きるのではなく、良く生きるために働いており、行政官として国民に貢献できるなら、良く生きていると感じられるからです。ただ、地球人に生まれた以上、地球上の心惹かれる文化や自然に接する時も良く生きていると感じるし、死ぬまでに訪れたい所はまだたくさん残っています。人によっては経済的な不安もないのに、いくつになっても働いていないと生きる意味に不安を抱いたりするようですが、そういう強迫観念はありません。もちろん、いくつになっても働いて誰かの役に立てるなら、素敵なことです。問 仕事って、心に残りますか?答 トートロジーだけど、心に残るような仕事ならね。例えば前世紀末、山一証券の破綻処理の際は、足元の地面が崩れ落ちていくような感覚のなかで、後にリーマン・ショックで起きてしまったような世界の混乱を避けるには何をすべきか、自分なりに真剣に考えたのを覚えています。自分じゃなければできない仕事なんて、実はめったにないんだけど、自分が考え行動したことと成果の間に因果関係があると思えれば、自己満足して長く心に残るようです。制度改革の場合は、成果とは何か自体があまり自明ではなく、今はまだ成果が現われていないが、今後現われるはずだと待っている間は、心に残っていると言えますね。問 忘れられない人っていますか?答 私は金融行政内では相対的にインテリなのか、検査監督畑より企画畑が長いのですが、死ぬか生きるかといった経営の根幹に関わる検査や監督を通じて出会った人のほうが、忘れないようですね。破綻処理先の経営者とか、破綻後の受け皿候補者とか、こちらが人間力を動員して勝負しなければならなかった相手です。もちろん影響が大きい制度改革を構想すれば、強硬な反対者が現われ激論を闘わしたりするので、やはり記憶に残ります。仕事の性質上、相手から好かれることはあまり期待できませんが、筋の通った行政官として相手の記憶に残ればいいな、とは思います。問 仕事の際、心がけていることはなんですか?答 上司や組織のためでなく、国民に貢献したいとは心がけます。金融庁は守らねばならないしがらみがない新しい役所なので、さほど意識しなくとも、国民貢献を前提とした健全な議論が行われていると感じます。他の役所の連中と話していると、組織防衛とか上司のお守りとか、詰まらんことをやらされているな、と同情する機会が多いですね。もちろん金融庁でも、上司や組織のために働かねばならない局面もあるでしょうが、そんな時は、何をしているのかを自覚し、自らを偽って国民に貢献しているなどと思い込まないことが、精神の健康にとって大切でしょうね。問 仕事って、精神的にタフでないとだめですか?答 全然。私は引っ込み思案で人見知りし、同じ思考回路をぐるぐるさまよいます。ただ、時に内なる神の声に従って行動してしまうので、普通の人なら備えている神経が欠けていると言われることはあります。問 役所は変わるべきと言われていますが、変わらない「役所の良さ」ってありますか?答 企業は、直接には自社の顧客に貢献しようとしますが、役所の場合、論理的には全国民に貢献し得るのが変わらない良さと考える人もいるでしょうね。でも企業も役所も、自らの良さを守るのが、変われない言い訳になる副作用のほうが大きい気がします。長らくこの国にとって、変われないことが最大のリスクと感じてきました。「10年連続赤字でもテレビ事業は大事だから国内で造ります」みたいにね。金融システムも、銀行型から市場型に変わっていかないと、環境変化に適応した産業構造に変わるのは難しく、安定した経済成長の基盤が形成できません。問 大森さんは孤独ですか?答 一人で本を読んだり、音楽を聴いたり、絵を眺めたりするのが好き、就職活動を行う皆さんに代わって、大森事務局長にインタビューしてみました。

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