金融庁2014
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証券取引等監視委員会 事務局長大森泰人【インタビュアー】島崎征夫総務企画局総務課 人事企画調整官451981年大蔵省入省。証券局証券業務課、総務課等の課長補佐を務める。1999年より2年間、理財部長として近畿財務局へ出向。出向後、金融庁総務企画局市場課長、信用制度参事官、企画課長等を経て、現在、証券取引等監視委員会事務局長。1995年大蔵省入省。1997年より英国留学(ケンブリッジ大学)。通商産業省に出向後、財務省や金融庁監督局総務課、総務企画局企業開示課等で課長補佐を務める。現在、総務企画局総務課人事企画調整官。という意味では、孤独という表現が当てはまるかもしれません。でもそれは、現世で他者との交流を積極的に求めないだけで、過去の作家や作曲家や芸術家の精神との交流を求めているとも言えるでしょう。現世でも、自分から飲みに誘ったりはしませんが、誘われれば断らない程度には普通の人ですよ。問 上司として、部下に接する際に心がけていることは何ですか?答 「部下の仕事に国民にとっての付加価値を加える能力を持つ者」を上司と呼ぶのが長年の私の用語法だから、上司の肩書きだけで無意味な指示や拘束をしないことですね。歳をとるにつれ、かつての自分がいかに無神経で我が道を行く部下だったかを認識するようになり、愛想つかさなかったかつての上司の度量を感じます。だから、人間である以上好悪の情が生じるのは避け難いけど、気に入る部下と有能な部下、気に入らない部下と無能な部下を同一視しないようには努めます。問 対外発信が多いのはなぜですか?答 自ら発信の機会を求めたことはなく、リクエストに応じているだけですが、発信すれば、自らの思考が整理され、精神の健康にも寄与するメリットはあると思います。行政官の発信だから少しは注目されるのであり、内容自体に価値があるなどと思い上がってはいませんが、そろそろ私も、行政官の立場から独立に市場価値を高めないといけないな、とは感じています。問 日本の金融のど真ん中の課題って何ですか?答 この国は圧倒的に銀行中心の金融システムなので、銀行に目利き力向上を促し、新規貸出に積極的に取り組むよう求めるのは、金融行政の使命です。ただ銀行が、元本保証の預金を原資に、貸出先の信用リスクすらカバーしにくい低金利状況で、リスクテイクするのに限界があるのも否めません。成熟経済における資金供給は、銀行の保守的な貸出担当者より、初めから事業の将来の可能性に賭ける不特定多数の投資家に委ね、証券市場が今後の成長分野を見出していく資金仲介経路が拡大しなければなりません。 証券市場の監視という現在の仕事も、不正取引の直接の摘発根拠は法律が禁じているからですが、何故法律が禁じているかといえば、証券市場に参加する投資家が不正に不公平に扱われないという信頼を守るためです。では何故投資家の信頼を守るかといえば、銀行に代わりリスクマネーを円滑に供給して、経済成長や生活向上に寄与してもらう必要があるからです。「貯蓄から投資へ」というスローガンは、人口に膾炙しすぎていささか陳腐化しているけれど、一言で表現するなら、このありふれたスローガンに帰着します。問 英語って必要ですか?答 もちろん。英語とか法律とかそれ自体知的関心を喚起しにくいツールは、人生の選択肢を広げるため、若いうちに身につけるべきです。金融行政に携わりながらも、その気になればゴールドマン・サックスでグローバルにM&Aのディールをやれる市場価値を持つほうが、行政官としても良い仕事ができます。逆に、M&Aの実務経験を踏まえて、金融制度の手直しに携わってもいいでしょう。私はグローバリゼーション不適応者の自覚があるので、この歳になっても英語力向上にたびたび挑みます。持続しないからたびたび挑むのですが。問 大森さんは、普段、ご家庭ではどんな方ですか?答 ワン(一見、亭主関白だね。でもしょせん、奥さんの手のひらの上を飛んでる孫悟空みたいなもんかも)。最後に、大森さんの愛犬コローさんにもうかがいました。

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