谷垣委員長記者会見の概要

【平成12年6月6日(火)於:金融再生委員会会見室】
  

【日債銀譲渡に係る基本合意】

谷垣 委員長:日本債券信用銀行の譲渡交渉につきまして、先月の末に当委員会としてはソフトバンク・グループとの優先交渉期間の再延長を行わないことといたしましたが、その後のソフトバンク・グループとの交渉によりそれまでの主要な問題点について解決が図られましたことから、今日の金融再生委員会で同グループと預金保険機構との間で日債銀譲渡に係る基本合意書を締結することを承認、決定いたしました。今後は、本基本合意書に基づいて、7月9日までに最終契約を締結するべく更なる交渉が進められていくこととなります。当委員会としては、1日も早い最終契約の締結と日債銀譲渡の実現を目指しまして、引き続き預金保険機構とともに最大限の努力をしてまいる所存でございます。 

     

【質疑応答】

 問:譲渡の時期ですが、あるいは新銀行の発足の時期ですが、何時頃をイメージされていますか。
  

員長:7月9日までと基本合意書はなっていますが、私としてはできれば今月内にまとめて最終合意書を締結する、8月の始めには実際に譲渡をして、新しい銀行をスタ−トさせたいという目途で精力的に取組んでいきたいと思っています。

  

 問:5月31日の会見から6日間で、主要な問題点が解決したというお話がありましたが、引当金等主要な問題点についてどのような解決が図られたのかについて、ご説明願いたい。
  
員長:率直に申しまして、5月末に山登りに例えますと9合目くらいまできておりまして、最後の瑕疵担保と引当等の関係につきまして、なかなか我が方とソフトバンク・グループとの間で十分理解がいかない点があったわけです。あの時も森事務局長の方からは、これで話がお終いになったわけではなく、仕切り直しであるから引き続き議論をすると申し上げていたと思いますが、その後、瑕疵担保と引当の関係について基本的にソフトバンク・グループのご理解をいただいたわけですが、瑕疵担保の問題につきましては残された課題ですが、これはどちらかと言いますと長銀を売却するときに作ったスキームですので、ソフトバンクとすると必ずしも十分フィージビリティーと言いますか、使い勝手ということについて十分得心がいかない点があったと思います。しかし今後、どういうふうに運用していくかもう少し細則を詰めようということで、基本的に瑕疵担保の仕組みというものについてはソフトバンク・グループにご理解を頂いたと思っています。それから引当の問題につきましては、今後、日債銀側と預保の公認会計士にきちっと整理をしていただくわけですが、要するに金融検査マニュアルと公認会計士協会の実務指針に基づいてきちっとやっていこうという事で双方了解をしたわけでございます。ただ、最終的な貸借対照表というのは譲渡の日時でできるわけですから、少し日時が経ちますので3月末から若干の劣化がないとは言えないと思います。その辺は今申し上げたように、日債銀側と預金保険機構の公認会計士できちっと査定をしてもらうということで双方の了解ができたということです。

  

 問:引当金ですが、5月の31日時点ではどういう、要するに国側が選定した監査法人がやるという話だったと記憶していますが、どういうふうに変わったのですか。日債銀側と国側、日債銀は国が株主ですから監査法人のダブルチェックという形ですか。
  

員長:5月31日時点は、基本的に瑕疵担保の場合は売却する側が査定をして、適格かどうかを認定して、その判断が誤っていた場合で、減価をした場合には解除権を行使できるという構成になっていました。なぜ解除権が行使できるかというのは、適・不適の判定は国側が行うからという前提に立ったときで、そこの処が必ずしも当時は十分私共とソフトバンク・グループの中で理解が行き届いてないところがありました。ソフトバンク・グループ側としては、従前の、引当金を3月末で行われていることについて、少し見解を異にして、もう少し引当を積んでほしいという議論は確かにあったわけです。しかし瑕疵担保の全体の構成を見るならば、今度はそこをもっとはっきりさせまして日債銀側と預保、両方の公認会計士できちっと状況を判定してもらおうということで合意を得たということです。

  

 問:その結果については、両者、国側もソフトバンク・グループ側も意義を申し立てないという形ですか。
  
員長:そうです。そういう中立的な立場と申しますか、そこできちっと先ほど申し上げたように、金融検査マニュアルと実務指針に基づいて確定したものでお互い了解してやって行こうということです。

  

 問:今日発表した基本合意書の概要については、再生委員会側がソフトバンク側に提示した元々の考え方が、そのまま今日基本合意になったと考えてよろしいのですか。
  
員長:元々のというのとはちょっと違いまして、いろいろな話合いの中でソフトバンク側の要望を入れたところもあり、いろいろなところがあると思います。それは交渉の常でございます。

  

 問:基本的に、基本合意の内容を見る限りにおいては、長銀の時の契約内容とほぼ寸分違わぬ内容になっているわけですが、ソフトバンクの要望を入れたという部分もあるわけですか。
  
員長:細部に至るまで全部を把握しているわけではありませんが、例えば瑕疵担保の解除権の行使期間が、長銀の場合は3年になっていたと思いますが、今回の場合は3年2ヶ月ということになっております。これはソフトバンク側の要請によりこのようになった。これは反面、債務者に対する融資の継続もやってくださいということになっていますが、その辺は交渉の経過でこういう結論になったということです。

  

 問:ソフトバンク側は、引当金の積増し要求は全面的に取り下げたということですか。瑕疵担保の運用によって。
  
員長:瑕疵担保の構成を理解していただいたということではないかと思います。

  

 問:従来の主張を変えたところは、31日の主張ではないということですか。
  
員長:そういうことになります。

  

 問:1000億円近いという数字が報道でありましたが、そこは降りたということですか。
  
員長:数字についてはノーコメントですが、要するに先ほど申しましたような会計基準で適切に判定してやっていこうということです。

  

 問:個別の引当金の総額はどれくらいになるのですか。
  
員長:それは分りません。まだ先のことです。

  

 問:3月末時点から類推した数字というのはないですか。
  
員長:ありません。
  
務局長:3月の末の数字があるだけです。

  

 問:それでは最終契約を結んだ時に公表されるわけですか。
  
田室長:予備的基準日貸借対照表をいずれ公表しますので、長銀の場合ですと2月の中旬くらいでしたか、その時にそうした数字を含めた債務超過相当額が明らかになると思います。
  
務局長:それは長銀の最終契約が2月9日でしたから、そのちょっと後になるわけです。

  

 問:詰めた数字にはなってはいないと思いますが、最終的に日債銀処理に投じられる国民負担というのは今の段階ではどのくらいと見込んでいるのですか。
  
務局長:3.2兆円プラスアルファです。

  

 問:不良資産の買取とか一時的に投じられる公的資金はどれくらいですか。
  
務局長:一時売却は終っていますが、最終的なものはまだ残っていますから、長銀の時も3.6兆円プラスアルファと申し上げましたが、それと同様に、現時点におきましては日債銀の金銭贈与額は3.2兆円プラスアルファということです。

  

 問:今回、優先交渉権の打ち切りという措置をとったわけですが、そのやり方というのは結果的に見てどうだったですか。
  
員長:交渉というのはいつもそうだと思いますが、もうだめかなと思ったら上手くいったりというような、結果としてはそういうことだったわけです。あの時点での経済・社会的状況の中でソフトバンク・グループ側から来た要請というのは日債銀の置かれている立場としてはあったと思いますが、一方で我々としては直接には国会、間接には国民に対する説明責任というものを、法の枠内で果たさなくてはなりません。その為なかなか瑕疵担保に対する理解が得られないと交渉の妥結は難しいかもしれないという気持ちが5月31日には、率直に言ってありました。

  

 問:他のグループとの交渉というのは、実際考えていたのですか。
  
員長:現実に2、3のところからフィナンシャル・アドバイザーに対して、問い合わせなり打診というものがあったわけですが、結局先ほど申しましたようにソフトバンク・グループとの話は9合目くらいまできていましたので、そちらの方がトントンといったということだと思います。

  

 問:なぜソフトバンクなのですか。そもそもソフトバンク・グループをベストだとした理由を教えて頂きたい。
  
員長:それは優先交渉先を決めた時にいろいろご議論を頂いて、ソフトバンク・グループの持っている能力とか、あるいはプランを評価して行ったわけです。

  

 問:ソフトバンク連合に何を期待していますか。
  
員長:今までにないベンチャーをやっているところ、それから個性的な金融をやってこられたところ、あるいは伝統的な企業の3つが一緒になっているわけですが、そういうところのノウハウが、新しい風を金融界に吹き込んでくれることを期待しています。

  

 問:ソフトバンクが中心となった連合ということで、事業会社による銀行参入という形に結果的にはなるわけです。先日、再生委員会は異業種の銀行業参入ガイドラインを作ったばかりです。機関銀行化という問題についておそらく再生委員会で議論になったと思いますし、大臣ご自身にもお考えがあったと思います。それで最終的にソフトバンク連合にした経緯と考え方について説明願えますか。
  
員長:異業種の銀行に対する参入のガイドラインは、パブリックコメントにかけまして、最終的な形はどうなるせよ大きな枠組みというのは提示したわけです。そういう中で新しいものに対しては免許という形で、それから従来からあるものあるいは免許した以降については監督のあり方という形で書いてあります。我々としては機関銀行化という懸念は、出したものをきちっとやっていけば解消すると思っています。基本的には、あそこに書いてある枠組み、まだ最終的になるかどうか分りませんが、ソフトバンク・グループもこの枠組みを理解していただいていると理解しています。

  

 問:日債銀は、親事業会社に当るソフトバンク等に融資をするという可能性については、再生委員会にどういう説明をしたのですか。
  
員長:融資する可能性は当然あってもいいわけです。ただしそれにはいろんなルール・規制がある。その枠内でやっていただくということについては別に問題ないことだと思います。
  
務局長:ガイドラインの監督上のことは向こうは理解を示しているということです。

  

 問:31日に交渉を白紙に戻してから今日までの合意に至るまでの間に何があって、何が決め手になったのですか。
  
員長:何が決め手になったかと言われると答えに困りますが、よく交渉の過程ではもうだめかと思ったら後一転してうまくいくということはしばしばあることのように思います。先ほどから申し上げているように、瑕疵担保の枠組みというものを理解していただいたということではないかと思います。

  

 問:大臣ご自身もうだめかと思ったのですか。
  
員長:私は、既に解散になっていますが解散までにある程度方向付けておきたいなという気持ちがありました。しかし我々とすれば瑕疵担保の枠組みでやっている時に譲れることと譲れないことがありますが、そこが上手くいかないので優先交渉先を外すとあるいは上手くいかないかもしれないという気持ちが脳裏を掠めたのは、率直に言って事実でございます。

  

 問:そうしますと駆け引きとして最優先交渉先を外したというのは、戦略として上手く行ったというお考えですか。
  
員長:戦略として考えれるくらい私が腹黒いと、もう少し早くやれたかもしれませんが、そこまで賢く研鑚してやったわけではありません。

  

 問:事業会社の銀行業参入のこの前発表されたガイドラインでは、主たる出資の事業会社について、監査法人に新規参入の申請の際に存続可能性について意見を出させるとしていましたが、今回の日債銀を買収するソフトバンクの場合は枠外になるのですか。
  
員長:我々のガイドラインは、銀行法の枠内で考えたものでありますから、銀行法の枠内で免許という時には、当然、免許をどういう形で審査して行くかという権限があるわけですが、今度は必ずしもそういう形ではないわけです。金融再生法の枠内でやっていますから、我々に法的にそういう権限があるわけではありません。譲渡を認めるときは、先ほど申し上げたように、今後の監督の中でガイドラインの趣旨を理解していただくということで解決ができていることです。
  
務局長:もっと直接的に答えるなら、監督の中で仮にソフトバンクが主要な株主に当るとするならば、当然、子銀行を通じて監査報告書などを出していただく、そういうことについても向こうは理解しているということです。

  

 問:今回の日債銀の売り先が事実上決まったことで、一時国有化、特別公的管理銀行2行がなくなる目途がついたわけですが、この特別公的管理制度を振り返って、国民負担、あるいは金融システムの安定の観点から、大臣ご自身はいまどうお考えですか。
  
員長:まだ全部過去を振り返って総括するというほど気持ちの余裕ができているわけではありませんが、日債銀も最終契約にこぎつけるまでこれからでございますから、なかなか申し上げ難いのですが、大きな意味で言えば長銀、日債銀がああいう形で破綻をした後、ここまで持ってくる枠組みとして機能したと思っています。ただ、今までの経験にないものを作っていただきましたから、もし理想的なものを作るとすれば今後いろいろ議論はあるかと思いますが、ああいう危機の状況の中で十分機能は発揮したかなと思っています。

  

 問:国民コスト上はいかがですか。
  
員長:これもなかなか難しいです。つまり国民コストと言ってみれば手続きと申しますかデュープロセスという言葉で言ったらいいのか分りませんが、説明責任を果たしながらルールの中でやっていくというのは、時に相矛盾する要請でもありますので、もしそういう手続きを全部取っ払うとすれば、もう少し国民コストを減らすやり方もあり得たのかもしれませんが、しかしいずれにせよそのコストというものは、いくら今より安くできたとしても膨大なものになるはずですから、それがやはりルールに基づかないとか十分説明できない、言ってみれば掴み金のようなもので手を打とうというような交渉はなかなかやり難いのだと思います。まだその辺の評価は我々としても十分できるわけではありませんが、今後その後の両方の銀行の歩みも見ながらいろいろ批判をし判断をして頂くのかなと思っています。

  

 問:孫社長とは、お会いになられてどういう話をしたのですか。
  
員長:今日、孫さんがお見えになりまして挨拶を頂きました。今まで私は、孫さんとは官邸でやる会議で顔は合わせたことはありますが、お話をした事がなかったのですが、今日はじめてお会いをいたしまして、孫さんのソフトバンク・グループが日債銀を引受けてよい銀行にしていくという熱意と意欲を感じることができたと思っています。

  

 問:引当金の関係ですが、4月以降の状況を引当金が積み増しになるという理解でいいのですか。
  
員長:いくらになるかは分りませんが、少し時間がたって今より資産が良くなっていくということは通常考え難いことではあります。ただ、それは先ほど申し上げたように、きちっとした基準に基づいて厳正に公認会計士にやっていただくということです。

( 以 上 )


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