谷垣委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年6月20日(火)於:金融再生委員会会見室】
  

【閣議案件等】

 今日は、閣議の前に月例経済報告があり、総括判断は景気は厳しい状況をなお脱していないが、緩やかな改善が続いている。各種の政策効果やアジア経済の回復などの影響に加えて、企業部門を中心に自立的回復に向けた動きが徐々に強まってきている。前回より若干強めの表現になっていると思います。この月例経済報告を了承して、報告の後、堺屋経済企画庁長官が作成した、これからの日本のやや長期的に見た経済の動向と今後の経済運営についての資料をもとに自由討議が行われました。それは一言で言えば、今後の経済運営において経済新生に向けて構造改革を進めていく事が必要だ。経済運営に万全を期すという観点から、公共事業等の予備費について、早期に執行等を考えて、確実強固な景気回復を得るために最大限の努力を図っていこう。こういう事になると思います。

 皇太后陛下がご崩御になりまして、閣議に先立ちまして黙祷をささげました。「明治は遠くなりにけり」という言葉がありますが、皇太后陛下がお隠れになられて、「昭和も遠くなりにけり」という感じを私も禁ずることができませんでした。

 閣議は、一般案件は、ゴラン高原の国際平和協力業務実施計画の変更、保存及び管理のための国際的な措置の公海上の漁船による遵守を促進するための協定の受諾、一般会計の予備費使用が2件を決定。皇太后陛下の大喪儀に関する件、秋篠宮殿下のモンゴル国訪問取止めを了解。国際会議等を沖縄で開催する事を推進することを了解。関連して沖縄開発庁長官及び外務大臣から発言。衆議院議員総選挙の投票日当日における便宜供与を了解。国会提出案件は、ゴラン高原の国際平和協力業務の実施状況の報告。質問主意書に対する答弁書が8件。政令は、金融再生委員会に関する4件、預金保険法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令、預金法施行令等の一部を改正する政令、保険業法及び金融機関等の更正手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令、保険業法施行令及び金融機関等の更正手続の特例等に関する法律施行令の一部を改正する政令、の他18件を決定。人事案件は、通産大臣及び経済企画庁長官がOECDに出席をされることの了解。臨時代理は、通産大臣が中曽根文部大臣・科学技術庁長官、経済企画庁長官の事務代理は私に指名が総理からありました。OECDの政府代表、社会開発国際連合特別総会等の日本代表等を決定。公正取引委員会事務総局長等の人事を了解。裁判官の任免を決定。故梶山静六先生に対する正三位、故竹下登元総理に対する正二位大勲位菊花大綬章を含む叙位叙勲を決定。通信白書と月例経済報告が配付され、通信白書に関して郵政大臣の発言。

 その他の閣僚発言は、外務大臣からアサド大統領葬儀参列のためのシリア訪問の報告。建設大臣から道路公団総裁人事に関して発言。

 閣僚懇では、外務大臣から沖縄での国際会議開催の重要性の意味等に関して発言。建設大臣からサミット中の沖縄自動車道の無料通行措置の検討に関して発言。外務大臣、農林水産大臣及び防衛庁長官から中国の情勢等に関して発言。運輸大臣及び環境庁長官から中部国際空港と環境問題に関して発言。

     

【質疑応答】

 問:管理期間が延長された東京相和銀行の譲渡交渉の進展についてお伺いしたい。
  

員長:最近の状況については、まだ報告を受けておりません。前回も申し上げたように、だいぶ作業が煮詰まっております。金融整理管財人としても、複数の候補先からの提案も大体整理がついておりますので、預金者、善意且つ健全な債務者の保護を図るために、極力早期に譲渡を完了すべく全力を尽くしていただいている段階であります。

  

 問:信金信組に対する資本注入の考え方についてお聞かせ下さい。
  
員長:これは、今日の金融再生委員会でも議論を煮詰めていくということです。今日、全部決められるというところまでは行かないと思います。

  

 問:景気についてですが、経企庁の方では、景気動向指数や月例経済でも景気の回復宣言には至っていない状況ですが、大臣ご自身の景気動向に対する考えをお聞かせ下さい。
  

員長:これは、色々な方が仰っておりますが、やはりまだら模様だと思います。随分明るくなってきているところもあるけれども、元気が出てこないところもある。産業によってもそうですし、地域によってもそうなのだろうと思います。残念ながら、私の地元の関西は、そういう意味ではあまり元気が良くない、地域によっても差がありますし、それぞれの産業構造というものが、このようなまだら模様に影響しているのだと思います。このようにまだらになっていることが、先ほど月例の中でも議論があったわけですけれども、経済構造を変えて、或る意味でなかなか元気が出てこないところは、言葉は悪いかもしれませんが、経済構造がやや老化しているので、若返りを図っていく必要があるということだと思います。全体的な基調としては、緩やかではあるが、徐々に良くなって来ていると思います。これからも一進一退があるとは思いますが、全体としてはそれほど悲観をするような状況ではないと思います。いくつか不安材料とか懸念材料とするものが当然あるわけですが、例えばアメリカの経済動向についても色々アメリカの政策当局もご努力をしておられるわけですが、ソフトランディングと言いますか、そういう風な見方が強くなってきているように思います。その他、色々な材料も心配すれば切りはありませんが、全体としては少しずつ良くなってきていると思っています。

  

 問:選挙についてですが、新聞各紙の世論調査で、自民党が安定多数を取るという見込みが強くなってきているという結果ですが、大臣としてのご感触或いは見通しは如何ですか。
  
員長:当落線上で、今それぞれ必死に努力をしておられる方がたくさんいらっしゃいますので、見通しはそういう方が浮かんでくるのか沈んでくるのかということによってうんと違ってくると思います。まだ全体の判断としては、私自身、こうである、というのがあるわけではないです。だいぶ雰囲気が政策論争に重点が移って来ているように感じます。最初は、例えば神の国発言や、政権の枠組み論のようなものだったと思いますが、最近ではむしろ、景気回復はどこまで来ているのか、構造改革はどうするのか、或いは財政再建をどうして行くのか、というような政策論争になってきている感じが致します。そういうことに対する有権者の手応え、反応というものも、段々最初の関心とは移ってきて、そういう意味では地道な議論になって、政策議論が出来ているのではないかという印象を持っております。

  

 問:政策論争というお話ですが、各党の公約を見ますと、自民党もそうですが、金融システム問題というのは殆ど触れられなくなってきています。景気回復優先か、財政構造改革かという抽象的論議は出ているのですが、仰るような具体的政策論議というところに果たして踏み込まれているのかという感じも持つのですが、大臣はそこのところは十分政策論争に踏み込んでらっしゃるという認識ですか。
  
員長:政策論争というのは何を意味するのか、ということになってくるわけですが、我々はどういうところから反応を探るかと言いますと、個人演説会に弁士で出ました時に、どういうことをしゃべると、有権者が頷いておられるか、今まで眠そうな顔つきをしておられた方が注意を持ってこちらの話を聞いておられる、そういう所でこういう話に関心を持っておられるのかおられないのか、ということを肌で感ずるわけなのです。やはり景気の現状や、関西であれば、関西の経済構造がやや奮わない、一体どうしていったらいいのか、こういう話。それから、都市では大都市政策について、どういうことが今後必要なのか、私などは過疎地で選挙をやっていますと、農村のコミュニティをどうしていくか、やはりそのような話は非常に関心を持っておられると思います。勿論、高齢化、雇用というようなものにも関心が深いし、今、かなりの方が非常に関心を持っておられるのは教育問題であると思います。金融については、私はこのような仕事をしておりますから、金融の話をしない時はないのですが、総じて言えば、2年前、3年前の状況からすればだいぶ安定してきたという意識があるのだろうと思います。私の立場からすれば、まだまだやらなければいけないことがあるわけですが。それから個々の金融機関と付き合っておられる方は、破綻してまだ受け皿が決まってないところでは或る意味での不安を持っておられるわけですが、総じて言えば、安心して見ておられるという感じだろうと思います。

  

 問:投票率が一つのカギと見られるのですが、よく言われるのが、投票率が上がることで自民党が不利になるということも言われますが。
  

員長:そこは私も良くわかりませんが、昔は、投票率が上がれば自民党は強いと言われていて、最近は必ずしもそうでない、と言われるのです。先ほど申し上げた事とつながりますが、一種の風が吹いて、例えばスキャンダルが起るとか、何か政治的な失言があってそれで風が吹いて、国民の反感が出て投票率が高まるというような状況とは少々違うのではないか。政策問題についての関心、見た目は地味だと思いますが、そういうものは投票率を高い方向にもっていくのか、或る意味では地味な課題ですからどうなのか、その辺は良く分かりませんが、関心は割合と高いのだと思います。

  

 問:政党が銀行からお金を借りるということですが、いまの連立は金融法案でも関係がありましたが、借りるとすれば条件などは公表するべきではないかと思いますが。資本注入を受けた銀行が法律に実際に関わった政党にお金を貸すのには、どういう条件、何を担保にしているのか、どのようにして審査しているのかを明らかにする必要があるのではないですか。
  
員長:今どれぐらいどこの政党が銀行からお金を借りているのか否かということも私自身は把握していません。また、そう議論になりますと、例えば我々は国会議員として、法律を作ったりする、一方で事業を営んでいることもあるわけですから、そこをどう判断するかというのは非常に難しいと思います。

  

 問:今回は、政党は銀行に献金を要請しない、銀行は資本注入を受けた以上は献金は出来ないということになっていますが、借り入れがどうなっているか、再生委員会や自民党で分かるのであれば教えていただきたい。
  
員長:どこの党が借りるとか借りないということについて、役所が把握して、この政党には貸していけないとか、この政党には貸して良いとか、役所が判断するのは色々な問題がある気がいたします。政党に対する金融機関の融資を行政機関が把握していくかというのは相当デリケートな問題であると思います。また、党でどのようなご議論をされているか承知しておりません。

( 以 上 )


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