谷垣委員長記者会見の概要

【平成12年6月30日(金)於:金融再生委員会会見室】
  

【日債銀譲渡に係る最終合意】

谷垣 委員長:今日午前金融再生委員会を開きまして、日本債券信用銀行につきまして、ソフトバンク、オリックス、東京海上火災保険を中心とされる、いわゆるソフトバンク・グループに売却するという最終契約書を締結することを承認いたしました。委員長談話も発表させていただきましたが、それに特別付け加えることはありませんが、この後ソフトバンク・グループ主要各社の代表者と預金保険機構、日債銀の間で最終契約書が、調印・締結されることとなりました。8月1日に日債銀の普通株式がソフトバンク・グループに譲渡される予定となりまして、これで日本長期信用銀行の譲渡に続きまして、特別公的管理銀行の管理を終了する運びとなりました。私としましては、7月4日に国会が召集される見通しですので、それまでにこのような形での結論を出せましたことを大変喜んでいます。

     

【質疑応答】

 問:国有銀行を終了するということで、金融再生法の目玉が国有銀行制度だったのですが、これについての総括をお聞きしたい。
  

員長:ご承知のように長銀も新生銀行となりまして、民間銀行として運行を始めたところですし、日債銀もそういう形で現実に民間の銀行になって、それぞれが国民経済あるいは日本の金融システムの中で役割を果たしていくことになってはじめて金融再生法による特別公的管理の意味合いが十分に評価できるのだろうと思います。ただ現時点で申し上げますと、数年前、長銀が今にも破綻するぞという緊迫の中で金融国会が行われ、与野党のご協力で金融再生法ができまして、金融危機を乗切る上で大きな力を発揮したのではないかと思っています。他方、非常な危機の中で十分時間もない中で早々に作られた法でもありますので、実際に運用していくと当初想定していないような問題が出てきたことも事実です。ですから現時点で作ればまた少し違った法体系ができるかもしれませんが、例えばこの前の法改正で入れていただいたロスシェアリングのようなものがなかったことから、瑕疵担保という枠組みを考えて長銀の場合にも日債銀の場合にもその枠組みが入っています。あの法の枠組みの中では最善を考えてしたわけですが、契約締結に当ってもいろいろ議論になったことも事実です。できるだけ特別公的管理の中で透明な処理をしていこうと思いますと、手続きを重視していきますと、国民負担をできるだけ抑えなければならない原則と時によると相矛盾するようなこともなしとはしない。どちらの価値を追求すべきかという事で途中でいろいろ悩んだりいたしました。今の段階で総じて申し上げれば、金融危機を乗り越えて大きな力を発揮してくれたのではないかと思っております。

  

 問:再生法は、銀行の健全化と借り手保護の双方を求める形となっていまして、結局その矛盾が最後まで大きかったと思うのですが、その辺については矛盾とお考えですか。
  

員長:行政や政策と言うのは、ひとつの目的だけを追求できればある意味ではすっきりしたことができると思います。しかし現実の経済や人の生活は生き物ですから、ひとつの価値だけで全部綺麗に割り切るというのは、現実には難しいので、実際にはそのいくつかの追求すべき価値の中で悩みながら仕事をしていくことしかないのだろうと思います。

  

 問:今日、そごうの件で預金保険機構が会見をやっていると思いますが、そごうのような企業、これだけ社会的な影響を持つ企業が債権放棄を受けることになると、他にもこういう支援を模索する動きが広がる可能性が結構あると思いますが、その辺について経営者責任とか、あるいは株主の責任とかを念頭におきながら、どういうふうに今後対応していくのですか。
  

員長:そごうの債権放棄についてお触れになりましたが、今朝の再生委員会ではこの問題についても、預金保険機構の松田理事長から預金保険機構としての検討結果の報告がありました。これから先はというご質問ですが、預金保険機構なりの結論を受けて金融再生委員会でどういうことを議論したかということも紹介しながら、今後の考え方も申し上げたいと思います。預金保険機構は、長銀の売買の中で結果としてまた国に債権が戻ってきた。あそこは債権回収機関として、法に定められているようにいかに国民負担を一番少なくしていくかという検討をしたと思います。預金保険機構では4つくらいの判断基準を上げられまして、預金保険機構が債権放棄をしなければ、再建計画の合意形成が不可能になり法的処理になる。法的処理に移行することと比較して債権放棄の要請に応じるほうが回収額の増大が見込まれるかどうかということ。そういう手段の選び方による連鎖倒産等の社会的な影響をどう考えるか。旧経営陣の経営責任をどう考えるか。この4つくらいの基準を示して、検討をされたと思います。我々としては、この4つの基準を満たした場合に自動的に債権放棄に応ずべきことになるかどうか、4つの条件が債権放棄を認めるための必要十分条件だという考え方には立っておりません。今回の場合、4つの条件を満たした事が議論の出発点だろうということで、今後ともそういうふうに考えなければいけないのではないかと思っています。今回の場合は、常に再生委員会の議論の中でも手続きの透明性を重んじた場合に、単に費用の最少化、国民負担の最小化というだけではなく、手続きの透明性ということを重視すれば、多少費用はかかっても、法的整理の方を選ぶ必要性を直ちに否定すべきではないのではないか、こういう議論もありました。他方、法というものを考え、預金保険機構の回収ということを考えた場合に、そういうことが直ちに言えるのかどうか、などいろんな議論をしまして、今回の場合には債権放棄を認めない法的処理について、預金保険機構の方でいろいろシュミレーションをされたようですが、やはり直ちに追加的負担が必要になる。それに対しますと、今回債権放棄を了承いたしますと、他の金融機関は30年間かかって回収していく事になるわけですが、預金保険機構は12年間で回収をするということになりますと、再建計画が合理的なものであるかどうかということももちろん議論しなければならない点ではありますが、30年というのは長期間になりますから、30年先の回収が確実であるかどうかという事に比べると、12年間で回収していくということによってかなり債権放棄よる回収額の極大化ということだけではなく、債権回収の確実が図られていくのではないか。そのような事を議論した末に、今回は預保で検討した結果を認めるべきではないかという事になったわけです。先ほど申し上げましたように、4条件を満たしたら直ちに債権放棄を認めるというわけではなく、やはりメインバンクがメインバンクとしての責任を感じて自分の犠牲の上で預保の回収期間を12年間にされたという事も勘案して判断しているということで、こういう表現はこういう場合においては月並みかもしれませんが、やはり苦渋の結論という事で、これをもって今後どんどん道が開かれて適用すべきものではないと思っております。

  

 問:今日の閣議後の会見で砂上の楼閣には組しないと仰いましたが、再生委員会の議論の中では再建計画についての議論はしなかったのですか。
  

員長:再建計画については、預金保険機構から説明がありまして、これについても議論はありました。先ほど申しましたように30年を12年とできるだけ短い期間で回収していくということが、預保が持っている債権の回収の確実性につながるだろうということでありました。

  

 問:再建計画は達成できるであろうということから、認めたということですか。
  

員長:再建計画の合理性というものを、預保の説明を我々が了承したという事がひとつであります。もうひとつは、長期間であるとどうしても不確定要因がありますので、預保の持っている債権も30年間かけて回収するというよりも12年間で回収する方が、再建計画の安定性ということだけではなく、預保の持っている債権の回収の確実性につながるということだと思います。

  

 問:一民間企業の救済という形に結局つながるわけですが、その点には国民の間から素朴な疑問がどうしても出てくると思うのですが、その点については大臣はどの様にお考えですか。
  

員長:もちろんそういう疑問はあり得るだろうと思います。午前の記者会見でも申し上げましたが、そういう素朴な疑念というのはあると思います。しかし我々は、そういう素朴な疑問があるから、我々の預保が回収しなければならない債権の回収の確実性を落として、より国民負担を高めていく、というのも難しい判断で、税金による私企業の救済といういい方が必ずしも論理的に正しいとは思いませんが、そういう素朴な疑問に対しては、できるだけ回収額を増やしていくことで答えていくのかなと思っています。

  

 問:再建計画の合理性ですが、行政機関である預保あるいは再生委員会がご自身で判断できたのですか。
  

員長:極めて難しいところでございます。午前の記者会見でも申しましたが、行政がどこまで判断できるのか、という問題がある事も事実です。ひとつは金融機関等が練り上げたという事もありますが、それに加えて長期間というのはやはり不確実性というものが伴いますから、それをできるだけ短くしようとした努力というものは、我々としては考慮することができるのかなと思っています。

  

 問:社会的影響ですが、連鎖倒産とかが危惧されるというのは、そういった事が起こるという判断はあるのですか。あるいは社会的影響という意味で考えれば、競争相手のことも考えなければならないと思いますが、資本主義のルールとして競争というものは必ずあって、勝ち負けということはあると思いますが、ある意味で国が私企業を延命させるという事は、競争に対して阻害要因になるとは考えられないですか。
  

員長:一義的にはっきりとした答えを言うのはなかなか悩ましいところです。我々の受けております説明は、派遣店員を含めると5万人の雇用問題、それから消費者等の影響、あるいは取引先への影響、ということを預保から説明を受けているわけです。他方、多くの金融機関が協調して再建計画を認めようとしている時に国の判断で「それはだめだ」というのもなかなか難しい判断だということも事実です。そんな事を言っていたら全部認めなければいけないという事になってもいけない。実は非常に悩んだところであります。率直に言って今の質問に答えるのは非常に難しいと思いますが、いろんなことを考えて判断したということです。

  

 問:そういうことにそもそも国がかかわらなければいけなくなったのは、国有化してしまったからだと思うのですが、先ほど再生法の総括の中でもまだ途中なのでという意見がありましたが、そもそも銀行を国有化した事の是非というのは、今の時点でどのように判断されているのですか。
  

員長:率直に申しまして、今の段階で私の立場ではお答えし難い事であります。あの国会の時は、私は大蔵省で政務次官をやっていたわけですが、いろいろな与野党の議論の中で作って頂いて、目前に迫っていた長銀の倒産に備えようということでした。あの時の国会の意志として、一度整理をして長銀を再出発させようという事でしたから、我々としてはそれを受けて処理をしたとしか、現在の段階では申し上げ難いわけです。もう少し時間が経ちましてから、これも国会で答弁した事ですが、当時のいろんな考え方としてはもう少しいろんな選択肢がなかったわけではないのですが、当時の政治的議論の中ではあのような結論を出して頂いた。そのメリット、デメリット、利害得失はもう少し時間をかけて、自分の課題として今後とも考え続けたいと思いますが、もう少し時間をかけていろんな方からご議論を頂きたいと思っています。

  

 問:そごうの再建計画がもし上手くいかなかったら、どうなるのですか。国はどうされるのですか。
  

員長:今の段階で仮定の事をお答えしてもいけないと思いますが、こういう形で皆さんが衆知を集められたのですから、これが関係者のご努力で上手く行って頂きたいと思っています。

  

 問:しかし国民は不安なのですが。そごうが再建するかどうか。
  

員長:不安もあり、先ほどのようにいろいろなご疑念があるでしょうが、それぞれが衆知を集めてこういう形で再建をしていくことになったわけですから、私共としてはこれが上手く機能するようにそれぞれががんばって行くということではないかと思います。

  

 問:今日の閣議後の記者会見で、かなりの閣僚からそごうへの債権放棄については批判的な意見が出たわけですが、それについてどうお考えになるかという事と、その中で私財を投げ打つべきだという意見をいう閣僚もおられた様ですが、それについてはいかがですか。
  

員長:どの閣僚がどういうことを仰ったかは十分承知しておりません。先ほどから申し上げているように、素朴な疑問があるということも私は承知おりますし、行政なり政治が追求すべき価値がありますから、そのいくつかの観点から、例えば批判的なご意見があることはよく分ります。しかし我々は国有化をして、それを売ってその後の処理を巡ってどうするかということになると、出来るだけ国民負担を少なくしていくという、金融再生法のひとつの方向というものをこの際は重視しようということであるわけです。別の価値から見れば確かにいろいろな問題があり得るだろうと、私も思います。それから私財を提供すべきであるというご意見があって、経営責任の追及というのは預保もあげておりますひとつのこの問題を考える柱です。そごうの場合、旧経営者である水島氏は、千葉そごう等関連会社の株式の無償譲渡をすでに実行されているわけですが、メインバンクである興銀も、これで責任追求が終わりではないということだと思います。

  

 問:私財を投げ打つという見方についてはいかがですか。旧経営陣の私財を返上すべきだということは、これは破綻金融機関の時、日債銀、長銀の時にもそういったことがあったわけですが、そごうについてもそれはなされるべきだとお考えですか。
  

員長:これは法的な問題では必ずしもないわけですが、それぞれの経営陣がどういうふうに社会的な責任をお考えになるかという事だろうと思います。既に株を全部出すということは、その一端が出ているのかなと思います。また退職金等の支払いも行われていないと聞いておりますが、それもこういう場合には私は当然の事と思います。

  

 問:預金保険機構の4つの判断基準というのがあって、なおかつ再生委員会の苦渋の決断ながらも国民負担の極小化を最重視してこういう結論を出されたわけですが、次に同じように債権放棄要求があった場合に預金保険機構が同じような判断を迫られた場合は、それが満たされれば同じ結論になるのですか。
  

員長:先ほど申しましたように4つの条件というのは、私は土俵に上げるかどうかという判断基準にすぎないのであって、いろんな場合がありますので、あまり今一般論全部を言ってしまうのがいいかどうかは留保させて頂きます。しかしこの4つを満たしているという事は、議論の出発点なのかなという気がします。仮に債権放棄に応じなかったら再建計画がつぶれるという場合でも、安易な再建計画を出している場合に直ぐ「はいそうですか」というわけにはいかないわけです。再建計画を立てて関与される方々も、それなりのギリギリの判断をして頂かないといけないと思います。

  

 問:委員長は今回の決断は今取り得る中では最善の判断だったということですか。
  

員長:「最善」という言葉を使っていいかどうかはかなり躊躇を覚えます。せいぜい使えて「やむ得ない」ということですか。「やむを得ない」ことであろうと思っています。

  

 問:そごうの債権の中味ですが、瑕疵担保条項に基づいて資産査定をされたわけですが、その資産の価値というのが譲渡後に2割以上下落したというのは、資産の中味が劣化したということを監査法人が査定して証明書を付けたのでしょうが、その根拠となった点はどの様に預金保険機構から説明があったのですか。
  

務局長:新生銀行の監査法人の証明書はあったわけです。それを踏まえて預保の監査法人が十分根拠を精査させたわけです。その結果、会計のルールに従えば、2割減価、すなわち債務者区分の変更が生じたということは、その通りであろうという結論に達しました。従いまして、預保と国が旧日長銀を売却する際の譲渡契約にあります瑕疵担保条項に従いまして、先方が解除権の通知を今週の水曜日にしてきたわけです。その点については、ルールでありますし、契約に従っておりますのでその債権を買い戻すことはやむを得ないという判断に、これは預保もそう考え、その報告を受けた当再生委員会としてもその通りだろうと判断した次第です。

  

 問:会計ルールに基づいてというのは、技術的なことで細かいかもしれませんが、資産の中身について時価会計の要素を厳格に適用した結果ということですか。
  

務局長:そういうことではなく、新金融検査マニュアルに債権放棄については1項目ありまして、債権放棄の要請を多くの金融機関が受けたと、その債権放棄が全て成立しないと再建計画が成り立たないという状況の中で、一部の金融機関がその債権放棄の要請を拒否することによって、全体の債権放棄計画が潰れ、その結果再建計画も潰れる状況にある場合には、当該銀行は、今の話でいうとそごう向け債権については、実質破綻と見なすことができるという条項が金融検査マニュアルにあるわけです。会計ルールに基づくと、新生銀行についてはそれが当てはまって、新生銀行のそごう向け債権の債務者区分が実質破綻だという事に法的根拠があるということです。ただ、誤解のないように申し上げますが、それは新生銀行の債務者区分についての会計ルールに基づく話で、今回債権放棄計画の全体がまとまって再建計画もまとまって、そごうが新しく出発しようとした場合の債務者区分は上がるわけでございます。

  

 問:日債銀もそごう向けの債権を持っていて、当初債権放棄を要請されていましたが、今回日債銀の譲渡が決まりましたが、その場合のそごう債権の扱いはどうなるのですか。
  

員長:特別公的管理の下での銀行については、従来私も記者会見で申し上げたことがありますが、法的な整理の場合には債権放棄の応ずることができるが、私的整理の場合は応ずることができない旨申し上げてまいりまして、その根拠はそのことで引当てを積まなければいけないことになり、そのまま公的負担に直ちにつながるということがありますので、できないと言って参りました。今後におきましてもそれはそうなんだろうと思います。ただ、この後民間金融機関になられた時にどうなるかということは別の問題ということです。

  

 問:適資産として、新しい日債銀に譲渡されるのですか。
  

員長:そうです。

  

 問:その後、同じような債権放棄が要請されていました、債権放棄を理由に預保に買戻しを請求されるということはあり得るのでしょうか。
  

務局長:仮定の議論にはなかなか答えられないとしか申し様がありません。現在において再建計画の中あるいは債権放棄計画の中には日債銀は含まれていないと承知しておりますので、今の仮定の議論にはお答し難いと思います。

  

 問:新生銀行について、適資産と思って引き継いだ資産が、結局、ライフ、第一ホテル、そごうと立て続けに問題が起ったと、そもそも適・不適の区分が適正だったかということについてどう見ているかという事と、今回の日債銀の適・不適区分が誤っている可能性があると見ているのですか。
  

員長:資産判定時にそれぞれ専門家が最善を尽くして判断をされたのだとと思います。そして我々もそれを認定したわけでありますが、善意かつ健全な債務者としたものが、短い間に債権放棄を要請する事態にたちいたった事は、これは遺憾な事と申し上げざるを得ないと思います。これを今ご質問のような事を考えまして、仮にあの時不適としていたらどうなっていただろうかということになりますと、整理回収機構に、RCCの方におそらく回るわけです。RCCに回った場合に、RCCが債権放棄の要請を受ける事になれば、また同じ問題が起ると、もうひとつの可能性はRCCに回した段階でギブアップの状況であったかもしれませんが、なかなかそこは悩ましい判断と思っているわけです。

  

 問:本来は適資産として渡すべきものでなかったものを渡したがために、結局戻ってきてしまったという見方もできるのではないですか。
  

員長:それは必ずしもそう申し上げているわけではなく、その時点では適資産として最善を尽くして判断をしたのだろうと思います。今のは私の頭の体操でして、今仰った疑問もこの間議論して感じた事で、もしこれが当時不適としていたらどうなっていただろうかと考えると、それでもやはり同じ問題が生じてたのかなと、これは私の自問自答みたいなものです。

  

 問:そごうの経営責任の追及ですが、あまりにもスマートな気がしまして、株を引き渡すといっても法的整理で潰れてしまえば、株は価値がゼロですから、やはりここは委員会なり再生委員長としてその点はどの様にお考えですか。
  

員長:今回の再建のスキームの中でも、これで経営責任の追及が完結したものではないと聞いておりますし、またそう運用して頂きたいと思っています。

  

 問:そごう向け債権放棄は、もうこれで終りなのですか。今後は債権放棄はないという事ですか。
  

務局長:今の質問は、また仮定の疑問で、この再建計画がまたうまくいかなくなると、また債権放棄をしなければいけなくなるという前提の質問でしょうが、当方としては今の再建計画に一定の合理性があると考えて、先ほど大臣が申しましたように12年で回収するという事ですので、また債権放棄があるという前提には我々は立っていません。

  

 問:前提ではなく、債権放棄はもうないわけですね。国民的に見るともうこれ以上放棄に応じたくないというのが率直な感想だと思うのですがその辺はどうですか。
  

務局長:再建計画がきちっと現在の予定されているようにすれば、そういうことはないでしょうという事は言えると思います。

  

 問:きっちり進まなければあるかもしれないということですか。
  

員長:その点は先ほどお答えしたように、30年という不確実なものより少しでも確実なものにしていくことであるということです。

  

 問:再生委員会の委員の中にも多少費用がかかっても法的整理も辞すべきではないというような発言があったという話でしたが、委員会の中では応じるべきではないと主張された方もおられたのですか。
  

員長:応ずるべきではないというよりも、一般論として、そういう可能性も否定すべきではないのではないかという感じであったと思います。最終的に今回の場合はこの結論で了承という事で終わったわけです。今の法的整理も辞すべきではない、法的整理の可能性も一般論としてこういうことも十分あり得るぞという議論もありました。それは特に最近法的な仕組みの整備も進んできています。民事再生法ができたりして、法的整備があたかもいつもコストがかかるような議論をしてしまうと、今後間違うのではないかという趣旨であったかと思います。

  

 問:あくまでも一般論であって、今回のケースについては債権放棄に応じるべきという事で一致したということですか。
  

務局長:全員一致です。

  

 問:そごうの株主責任というのは、減資という形でも果たされていないのですが、これについてはどういうお考えですか。
  

員長:先ほどのような、水島氏が設立して、同人が事実上のオーナーである千葉そごうを持ち株会社とした事業展開では、それは全部放棄をされた。それからそごうの株主というのは、グループ会社、社員持ち株会、金融機関というところともちろん一般の株主もおられるわけです。金融機関は今後の事業計画の支援者としての側面もあり、こういうことから株主責任は、直接減資という形での株主責任は今回の場合にはスキームとして入っていませんが、ある程度株主の責任を追及する形になっているということです。

  

 問:日債銀の最終契約で、奉賀帳増資の関係で、生損保の劣後ローンで、確認書の存在が明らかになったということで、クロージング前に750億円くらいの劣後ローンを繰上げ返済すると、借りていた借金を返すと言えばそれまでですが、結果的に資本増資額が2400億円から2600億円に増えたということと、処理を誤れば新しい日債銀の取引先との関係にも影響しかねなかったことだと思いますが、これについて大臣はどうお考えですか。
  

員長:いわゆる奉賀帳増資の時に劣後ローンについて、当時の日債銀の経営者がこういう契約を結んでいたということは、私は大変残念なことだと思っています。この辺のところは法的に有効で縛られるものかどうかということも検討したわけですが、法的には有効であるということで、確認書の存在について説明を行いまして、そして大半の会社から早期返済を求められたので、これに応じることになったわけです。従いまして、やむを得なかったことだとは思いますが、こういうものが存在していたということは、甚だ遺憾なことだと思っています。

  

 問:それは日本生命の経営者に対しても遺憾だと思っているのですか。
  

員長:どう申し上げていいのか分りませんが、そういうものを密かに結んでいたというのは、私は好感を持って迎えるというわけにはいきません。

( 以 上 )


メニューへ MENUへ
ホームへ HOMEへ戻る