久世委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年7月11日(火)於:金融再生委員会会見室】
  

【閣議案件等】

 今日の閣議は、国会提出案件は、平成11年度第4・四半期における予算使用の状況を国会及び国民に報告すること、同じく国庫の状況を国会及び国民に報告すること、及び質問主意書に対する答弁書が1件。政令が5件。人事案件は、外務大臣の海外出張について了承等。

 閣僚発言は、大蔵大臣からサミット福岡蔵相会議等について報告。総理から外務大臣の臨時代理に官房長官との報告。

 閣僚懇では、経済企画庁長官から日本新生プランの具体化のための新たな経済政策のとりまとめについて発言。関連して環境庁長官から発言。北海道開発庁長官から北海道へ行ってきた事の報告。自治大臣・国家公安委員長から沖縄の現地視察について報告。総理から沖縄の警備体制について発言。


【質疑応答】

 問:昨日、森総理がそごうの債権放棄について、再検討を指示したということですが、これについて再生委員会としてはどう対応されるのですか。
  

員長:新聞紙上で私も拝見致しましたが、別に総理から何も指示はございません。

  

 問:今のところ特に再検討ということは考えていないということですか。
  

員長:就任以来、私は何回もここで申し上げましたように、そごうの問題は非常に重要な問題でもあり、また、この新聞、報道を始めとして国民世論から色々と指摘を受けております。また、昨日は自由民主党の政調正副・関係部会長会議を開いて、そごうの問題についてそれぞれ議論があったことも承っております。その概要についても、事務局長から報告を受けましたし、事務局長も、この会議に出席をしてそごう問題は大変複雑でございますので、かなり詳しくご説明をし、ご質問に答えたと承っております。

  

 問:自民党の会合の中で、実際、再生委員会事務局の方で、見直しは可能だというような発言があったと思うのですが、それについてはどうですか。
  

員長:そういう発言は、事務局長もしてないと思います。

  

 問:見直しは実際、可能なのですか。
  

員長:仮に事務局長が言ったとすれば、ご承知の通り、この再建計画というのはあくまでも、そごうに対して、お金を貸している金融団なり、債権者が居って、そういう方々の協議に基づいて、預金保険機構にこの再建計画案というもの示して、且つ、預金保険機構も、十分審査をした上で、前委員長の段階において、それを了承したという過程でございますから、あくまで、債権者がどのようにこの問題を判断するのか、そごうの再建計画をこういうことで行うということで債権放棄になったわけでございますので、その過程を尊重したいと思っております。

  

 問:実際は、自民党の加藤元幹事長も、先週、白紙に戻して考え直すべきだと仰っていましたが、党内からも、この問題には反対論もあるかと思いますが、見直しについて、再生委員会では改めてどうなのですか。
  

員長:加藤元幹事長の考えも、私共、新聞を通じて承ったわけでありますが、それから、特に、自民党の皆さん方、これは私も、政調副会長を3期やったもので、政調会での議論の実際、或いは、それがこれからどういう過程を踏むかということも良く存じておりますので、今のところは政調の議論、更に今は、与党3党で政策を決定しているわけです。私も、大臣就任までは自民党政策責任者のうちの一人でございましたので、その政策責任者会議の重みも十分に分かっております。それは今日、2時から選挙後初めての会合だろうと思いますが、開かれることになっておりますので、新聞等によれば、森総理から亀井政調会長に、直接か代理を通じてか分かりませんが、ご指示があったやに聞いております。昨日の自民党の政調の幹部の会合、これは特に結論には達しなくて、議論の余地を残しており、また、明日、金問調、財政部会、商工部会の合同部会を朝開くと聞いておりますので、更にそこで自民党の考え方も迫られるでしょうし、今日の与党3党の政策責任者会議でも、なかなか従来の例によれば一回では決まらない問題かと思いますが、これを本題に上げて、協議が行われるでしょう。そういう過程を十分に承りまして、考えていきたいと思います。

  

 問:そごうのメインバンクの興銀の責任についてはどのようにお考えですか。
  

員長:興銀はメインバンクとして特に、再建計画というものを緻密にお作りになったと承っております。その再建計画も外部の弁護士なり公認会計士なり、そういう人を入れた監査法人に委託をしてやったと聞いております。更に、途中において修正計画を検討するとか、色々な仮定をしていると思いますので、それは非常に興銀のご努力を多としたいと思っております。更に色々とご批判もありますので、再建計画が一番大きなよりどころになっておりますので、この再建計画が全く問題がないかどうかを私なりに良く聞いて参りたいと思っております。また興銀は特に、他の金融団、また預金保険機構の970億の債権放棄外の約1000億の債権につきましても、それが優先的に回収が出来るように他の銀行は、30年かかるところを12年でこれを行うという大変な協力を示しているわけですので、このメインバンクである興銀の考えはあくまでも尊重しながら考えて参りたいと思っております。

  

 問:特に興銀に対する責任追及はお考えになっていないということですか。
  

員長:貸し手責任というのは当然あるわけでございますけれど、ここ1年余りのそごう問題の推移を詳しく聞きながら、その間におけるメインバンクとしての興銀の存在、あらゆる角度から誰が、どういう責任を持っているのか、或いは責任があり得るのか、それを慎重に検討しておる最中でございます。

  

 問:先週の木曜日に金融再生委員会が開かれたと思いますが、その中ではどういったご議論があったのですか。
  

員長:就任の挨拶の時にも、委員の方々に一応挨拶をしましたが、それは何秒ないものでしたので、定例が火曜、木曜と承っておりますので、木曜にご挨拶を申し上げて、一言ずつ、そごう問題についてのお考えを承ったという短時間のものでございます。

  

 問:その再生委員会の中では、そごうの債権放棄について改めて考え直すという動きはなかったのですか。
  

員長:それはありませんでした。

  

 問:昨日の自民党の政調の中で、自民党の議員からは、再生委員会の事務局が今後長銀や日債銀が持っている瑕疵担保条項に引っかかるような、そごうに似たような案件が出てきた場合に、同じような対応を取らざるを得ないという説明が再生委員会からあったという声が出ていますが、それについて何か報告を受けておられますか。
  

員長:特に聞いておりません。今まで一貫して、申し上げておりますが、類似のケース、特に長銀との関係における企業について、同じようなケースが出たとしても、今回の場合については大変慎重な検討の末に、債権放棄を行ったわけでございますので、これからそういうものが出ても、十分に検討は致しますが、それに対して同じような取り扱いをしようと思っておりません。また、昨日もそういう質問が出たと聞いておりますが、私共事務局としては、一貫した方針に基づいてお答えしておると思います。

  

 問:これからも十分検討するけれども…その後は何と仰ったのですか。
  

員長:検討しますと言うよりも、私としては、決定の過程を単に今年の2月以降ではなく、昨年の2月ぐらいに遡って、3月決算や9月決算におけるそごうの動向とか、そういうような問題も詳しく聞くことによって、私なりの確認をしていきたいということを申し上げたのです。

  

 問:同じケース、同じような条件で出てきても、必ずしもそごうと同じ結論になるとは限らないという意味ですか。
  

員長:そうです。

  

 問:昨日の政調側の説明と、随分食い違っているのですが、まず一つは、見直しの可能性について、事務局の方からの説明を、預保が修正してきたらそれを認めるという、政調側は受け取り方をしていますが、そういったことではないのですか。
  

員長:あくまでも、預保がこの考え方をまとめるに当っては、メインバンクである興銀を始めとしてこの各債権者であるところの金融機関の意向というのを十分に確かめて、また、そういうものが盛り上がって、再建計画というものを興銀が取りまとめることになったわけです。それを十分尊重して、預保が判断をしたのが今までの考え方です。基本合意は、正確ではないかもしれませんが8月下旬くらいと今までブリーフを受けた段階でおいては聞いていますから、ご指摘にありましたような、預保が何か大変な事情変更で、預保の結論が変わったなら、それは再生委員会として、それを了承するということが考えられないわけではないわけです。あくまでも、前提がひっくり返るような事が起きたなら、という意味で事務局はお答えしたのだと思います。政調の先生方は、例えば、私が他の大臣が参議院まで回り始めたので、やはり衆参の挨拶というのは従来の大臣就任ではその週と言われているのですが、私の場合は、先週は参議院を回るだけで精一杯だったので、昨日、ちょっと時間を作って、衆議院を回ったのですが、それが4時前だったので、これから政調に出かける先生方が、私に対して、「どうなんだ」というようなことになって、お話をした先生もいました。政調のメンバーというのは政策通の人を各派閥で出しておりますので、皆様、大きな見識を持っています。しかし、この問題は大変複雑ですから、やはりそれぞれの過程を聞くと、尾身さんがいみじくも言っておりましたが、この問題はそれぞれの過程を聞くと、みんな正しい判断をしている。しかし、新聞世論が色々騒ぐのは、その出口だけを見ると、これは問題だという言い方をする。だから、この話は十分に聞いた上で、特に政調としては判断しなければいけないという意見も言っている先生があるように承ったのですが、そういう問題だと思います。そこがこの問題を正確に把握した先生が言ったことと、そうでない先生が言ったことによって、相当ニュアンスが違うと思うのです。仮の前提が「こうだとすれば」とか、或いは「こうであるとすれば」という、仮定を前提に話をしているはずですが、それがそうでないように伝えられておりましたら、問題があると思っております。ただ、明日の金問調なり、財政、商工部会合同会議においてはその辺りのところも、各先生方がまた色々な勉強もされるでしょうから、明日は平場の議論と聞いておりますが、若い先生方はそれなりに意見を持っておられますので、私共も、与党のご意見にも十分に耳を傾けてまいりたいと考えております。しかし、あくまでも再生委員会は、預金保険機構が慎重に検討した結論を承認申し上げたということが一つと、それから、行政委員会である、3条委員会のご意見も十分に聞いて最終的にはそこで決定したということ、そういう実態を重んじながら、大変国民的な関心が高い問題でありますので、私共も慎重、真剣に取り組んで参りたいと思います。

  

 問:再生委員会が仮に見直すとすれば、大きな事情変更があった場合と仰いましたが、大きな事情変更とは具体的にはどういうケースが考えられるのですか。
  

員長:これは仮定ですから、昨日の議論において、そういう議論があったと、事務局がそう答えたと言うから、それはそうではなくて、それは事務局が答えたとしても、あくまでも全くの仮定の問題で、大きな事情変更があって、預金保険機構自身が結論を変えるようなことがあれば、これは別である。その前提としてはメインバンクである興銀の判断もありましょうし、その前提として金融機関その他の問題もありましょうし、そういうことで事情が非常に変わっていったという仮定の問題できっとお答えしたのだと思っております。私は今のところそういうことは全く考えておりませんから、あくまでも仮定の問題は本当はお答えできませんが、既に事務局長がそのような問いに対して、全くの仮定の問題としてそういうことがある得る、と答えているわけです。

  

 問:3条委員会の決定というのは非常に重いと思うのですが、そこで一度決定したことが覆る可能性はあるわけですね。
  

員長:あるとか、ないとか、という問題ではなく、再生委員会は、あくまでも預金保険機構の考え方を了承したわけですから、その考え方が引っくり返るように変わるなら、という意味で事務局長は言ったのだと思います。

  

 問:預金保険機構は監督官庁である再生委員会の承認を得てしまったわけですから、預金保険機構がその結論を変えることがあり得るのですか。
  

員長:一般的にはあり得ないと思います。その前提となった事情が全く変わればまた違うのだろうと思います、ということを事務局長が申し上げたと思います。ただ、私共はそういうことは全く考えておりません。

  

 問:官房長官が株主責任の追及が必要なのではないかと指摘されたわけですが、これについてはどうお考えですか。
  

員長:私も自分なりに検討する問題の一つの項目としています。なかなか株主責任と申しましても、方や、水島以下一族で持っている株はすでに無償譲渡をしておりますし、一般株主の問題になりますと、大元の会社のそごうでは52%が一般株主と聞いております。そうしますと、一般株主の責任をどういう形で追及するのか、ある新聞には、減資という案も書いてありますし、デット・エクイティ・スワップという方式というご提言も書いてありますが、株主の責任を追及することはもう少し詰めなければいけない問題ですが、まず、減資の問題になりますと、一般株主ですから、特別多数議決というか、特別決議、3分の2決議を取れる見通しがあるのかどうか、そういう問題も考えていかなければなりませんし、株主責任の問題は私は大いに検討することだと思いますが、具体的にその実現可能性というものを考えながら検討していきたいと思っております。

  

 問:先程、大臣のご説明の中で、今日の与党3党の政策責任者会合の議論の中身を見て、考えていきたいというお話がありましたが、与党3党の動き、森総理大臣の指示、大臣も所属されている加藤派の加藤紘一さんの発言、或いは国民の世論といったものは大きな事情変更に該当するのですか。
  

員長:大きな事情変更というのはそういうものではないです。あくまでも、実際上の再建計画の問題とか、いわゆる法的な手続きに移った場合における国民負担の問題との比較考量とか、或いは経営者責任の追及も、私の就任した頃にはまだそごう自身が検討するという段階でしたが、就任の記者会見以来、私は私財提供を含めて、経営責任追及の委員会等を作るべきだと申し上げましたが、これも私共が作れと命ずるわけにもいきません。まず、そごうの内部から声が起こり、そごう自身がそういうものを作り、現に弁護士、公認会計士、という集団による内部委員会が出来る、或いは出来たやに聞いておりますが、そういうふうに時々刻々、そごう側も考え、私共も声を大にしてその追及、実現を言っております。また私が、冒頭の記者会見の時には、刑事、民事の責任につきましても、なかなか違法性がないから難しいという考えを言いましたが、難しいが、刑事、民事の責任を問われるものなら、長銀自身がそうでしたように、もし追及することが出来るならば、大変難しいと思いますが、刑事責任の場合においては、構成要件の問題もあれば、色々と条件もあるでしょうし、民事の場合も違法性がないと損害賠償請求は出来ない、そういう問題も含めて考えていきたい。そういうことが大事であって、これについては内部意見でも、興銀の意見なり、或いは預金保険機構のご意見なり、それがまた新しい意見が出るならば多いに耳を傾けたいと思います。同時に与党3党なり、自民党から出た貴重なご意見は時々刻々変化していくと思いますので、十分に尊重して参りたい。一番考えなければいけないことは、国民世論がこの問題にどう注目しているかが大変大事でありまして、これに一番注目をしていきたい。それを変えていただけるのが皆さんですので、皆様方には出来るだけ正確に私の考え方を申し上げることによって、ご理解を賜りたいと思っております。

  

 問:経営者責任に関してですが、経営責任調査委員会をそごうの内部に作るのは良いと思いますが、現経営陣の山田社長は、水島社長時代の経営の中枢にいた人物ですが、そういった経営陣がいたままそれが出来るとお考えですか。
  

員長:この場合に限らず、会社の破綻なり、それが、刑事、民事の責任に絡むような、今までいくつか例がありますが、なかなか難しい問題だと私は思います。直接、水島氏時代の一員であって、その方針に参画をしていた、またそれを進めていたような人は絶対にいけないと思いますが、みんな排除して外部だけですとそごうの実態がさっぱり分からなくなると思います。非常に判断が難しいのですが、山田社長の責任も勿論ありますし、追及すべきものは追及しなければいけませんが、当面は内部のことが全く分からないということになりますと、本当の責任追及なり、これからの再建のあり方が分からなくなってしまいます。そこを見極めながら考えていきたいと思っております。

  

 問:山田社長も場合によったら、責任を追及される立場にあるわけですね。それでもですか。
  

員長:代わる人が十分その責任追及も含めて、実態も全部わかれば別ですが、一人一人の役員について細かく聞いているわけではありませんから、そこをお答えするわけには行きませんが、考え方の基本はそうだと思っております。

  

 問:具体的にどういう判断があれば見直しをするのですか。
  

員長:それはあくまでも仮定の問題ですから、具体的にどうだこうだとは…。それは皆さんの頭で考えられることは色々あるでしょうが、あくまでも仮定の問題ですから、具体的な問題というわけにはいきません。

  

 問:水島元会長は相変わらず何も言ってこないですか。
  

員長:山田社長から、水島さんに対して出された文書は読みました。それによるとかなり厳しいことが書いてあります。それに対して、私共は直接手を下すことが出来ませんので、出来るだけ情報は集めておりますが、今のところ確たる回答に関しては聞いていません。

  

 問:昨日、亀井政調会長が、会議の冒頭で、今回のことについて事前に全く説明がなかったと、改めて批判することを仰ったのですが、再生委が今回の決定をするに当り、与党には全く説明をしなかったのですか。
  

員長:決定したのが6月30日でございます。普通だと、その2〜3日前に、与党3党の幹部を回るわけです。一つは、この問題は一応の概略を説明するのにも30分はかかります。その30分でも、経過の説明は30分の中には入らないのです。皆さんはご理解していらっしゃいますが、瑕疵担保責任は説明するにも30分はかかる。6月27〜29日を想定しますと、ここからは私の推測ですが、谷垣前大臣は、国対が長く、国会対策副委員長を筆頭までやられ、議運の委員長までやられています。与野党の国会対策のベテランなんです。私自身も国対の副委員長を3年半やっていますので、その辺のタイミングも良く心得ています。しかし、谷垣さんが事務局に指示をされて、考え方を説明するようにということでそれぞれアポをとる、最低15分下さいと言ってもとれない状況ではなかったかなあと思うのです。それは言い訳でしかないのですが、それにもかかわらず必ず説明をすべきだったと思います。

  

 問:説明を十分しないまま、選挙前、選挙直後で時間がとれない状況であったにせよ、そういう状況の中で再生委で結論を出してしまったことについてはどう考えていますか。
  

員長:それはやはり、説明をすべきであったと思います。

  

 問:今後の展開によっては谷垣前委員長を呼ぶことも考えておられますか。
  

員長:谷垣前委員長は非常に慎重に、且つ弁護士ということもあり、そういう意味では専門家でしたから、十分慎重に考えて、預金保険機構自身が苦渋の決断だったと思いますが、それを受けて、金融再生法にたった一つだけ掲げられている国民の負担を最小にするという原則に従うなら、これしか方法がないという決断をされたと思います。

  

 問:独立行政機関の再生委員会が物事を決定するのに、与党の了解は必要なのですか。
  

員長:それは法律的あるいは制度的には必要ないと思います。問題は与党との話とか、政治の場における話でございます。

  

(以上)


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