相沢委員長就任記者会見の概要

【平成12年7月30日(日)於:金融再生委員会会見室】
  

委員長:まさに図らずも金融再生委員長を仰せつかる事になりまして、私としては本当に突然の事で、まだ気持ちも十分に体制が整っていないという状態でありますが、一昨年に金融安定化に関する特別委員会の委員長をやりまして、金融再生法並びに早期健全化に関する法律を通したのですが、それに引続いて去年から自民党の金融問題調査会の会長を仰せつかって、商工ローンの問題とか、あるいはペイオフの問題、今年に入りましてから日賦の利下げとか、個別の問題に関して、与党の立場で色々と処理をしてまいったのであります。そういう意味ではここの仕事も金融に関する私の仕事の延長線上にあるわけです。やはり政府と党ということになると、立場が自ずから違うところがありますから、その辺のところをどのように切り替えていくかという問題もあるのではないかという気がしております。いずれにしましても、金融の安定を図る事は、かなり進んで参ったと思いますが、まだまだこれで十分という状態ではないと思いますし、それから最近における株価の低迷という事も、こういう金融問題との関連もないわけではないと思います。いずれにいたしましても、せっかくこういう仕事を頂戴しましたから、森総理にも申し上げましたが、精一杯努力をして、何とかこの職責を果たしてまいりたいと考えております。何分とも急なご下命でありますし、まだまだ政府の立場でこれから本会議あるいは委員会等で直接私が答弁をしていかなくてはならない立場に置かれてまいりますと、なお一層勉強をしていかなければならないと思う点が多いものですから、一つ精一杯努力をしていきたいなと考えています。

   

【質疑応答】

 問:再生法の見直し論議にまで発展しています、日債銀の譲渡問題と瑕疵担保特約に関する見解をお聞かせください。
  

員長:この問題については私も自民党の金融問題調査会あるいは与党3党の金融に関するプロジェクトチームで色々と検討してまいりましたが、どのようにこれを扱うかという事については、まだまだ更に慎重に検討する必要があるのではないかと、どうも抽象的な言い方ですみませんがそういうことだろうと思います。

  

 問:そうしますと金融再生委員長としてのお立場でお聞きしますが、日債銀の譲渡契約を見直すようなニュアンスに取られかねないようですが、そこのところはどうですか。
  

員長:そうは言ってはいません。そう聞こえますか。そういうつもりで聞いているからではないですか。そうではなく、日債銀の譲渡契約は6月30日に契約はできているわけです。ただ、契約に基づくところの譲渡が実行されていないので、当初予定の8月1日を9月1日に一月延長をした。その延長も金融再生委員会の要請によるものではなく、ソフトバンク・グループが諸般の情勢の判断の下に一月程度延ばしてもらいたいという希望がありましたから、それに従ったということです。ですから契約自体は、破棄しない限り生きているわけです。契約自体をどうするかについて、見直しをするとかしないとかということは今の段階で私が言うことではないと思っています。

  

 問:予定通りということですか。
  

員長:契約はできているのですが、瑕疵担保条項につきまして、色々と世間からも皆さん方からもご意見があるので、それについてどう考えるかという問題はないわけではありません。今直ちにそれでは契約自体を見直すとかどうとかということを、申し上げる段階ではないということです。

  

 問:久世前委員長がああいう問題でお辞めになったのでお聞きしますが、過去において金融機関と不透明な取引とか、政治資金とか、融資とかそういう問題はありませんか。
  

員長:私は大蔵省で長いこと飯を食っていましたが、ほとんど大部分は予算の仕事をしておりましたから、金融行政に直接タッチすところがほとんどなかった。財務局で1年ほど経験したくらいです。無論、次官も経験しましたから、そういう意味では金融行政に対してもタッチしていなかったわけではありません。これは調べていただければ分かりますが、特別な金融機関と密接な関係にあるとかということは全くありません。

  

 問:昨年、自民党をはじめ与党3党でペイオフを1年延長した立役者であるわけですけれど、一方で再生委員会はペイオフを実施すべきであるという見解をまとめて、当時与党3党の見解と意見を異にしたわけですが、この一件について再生委員会に相沢さんご自身が委員長として入られて、上手く他の委員と折り合いがつけられるのかということと、もう一つは2002年3月末でペイオフ凍結を解禁するという約束は、今度は果たされるのですか。
  

員長:前段について言いますと、金融再生委員会として、これは合議制の機関ですから、金融再生委員会の中でも色々議論があったわけです。しかし、最終的な結論としては、ペイオフを延期するということにはなっていないのです。ただ、当時の委員長も、特に信用組合だけではなく信用金庫もそうですが、協同組織の金融機関について予定通りにペイオフを実施した場合において、問題がないだろうかという事についての懸念を持っていたようです。事実、あの時に私は金融問題調査会あるいは3党のペイオフに関するプロジェクトチームにおいて、各金融機関の代表の方々のご意見を聞きましたら、信用組合、信用金庫、第二地銀、地銀これらは皆延期をしてもらいたいと、予定通り実施すべきであるというのは、全銀協と労働金庫でした。そういうことで、当時、信用組合に関しましては、まだ金融監督庁の検査もこれからだということもありまして、これに関して延期をしたらどうかという意見もありましたが、それは信用組合自体も希望するところではないという経緯もありました。とにかくこのままペイオフを予定通り実施した場合においては、特に中小の金融機関においても大変に混乱が起きるのではないかと、こういう心配が大きかったものですから、私もペイオフ延期すべしという意見を強く言いました。党の政調会長もそういう意見でありましたし、結局3党の政策責任者会議で最終的なとりまとめをして、今も覚えていますが、昨年の12月29日の夜に1年延期ということを決定したという経緯です。このことは、形式的には金融再生委員会の結論と齟齬するところはあったかも知れませんが、私は最終的には政府としても、その方向を了として、ペイオフを延期する事になったと思っています。更に、期限がきた時になお延期するかということに関しては、今そういう考え方は全然持っておりません。

  

 問:97年と98年の2年にわたって、3つの金融機関から24万円ずつ数回、120万円くらいの献金を受けていると聞いていますが、これは特に就任に当って問題はないのですか。
  

員長:3つの金融機関ですか、どこですか。

  

 問:例えば十八銀行とか。
  

員長:私は、代議士になりましてから、後援会を募っておりまして、後援会の会費として月額2万円、年額24万円という会の会員を募って、事務所等の経費に当ててきました。その3行がどうということではなく、大体一口そういうことでやってきましたから、特別にその銀行に対してどうこうということではないと承知しております。

  

 問:今まで金融機関から献金を受け取ったことはないですか。
  

員長:今言った会費は、献金と言えば献金でしょう。ただ、それは政治資金規正法に基づいて報告もしておりますし、その制限の範囲内でやっていますので、別に問題はないと思っています。

  

 問:3行以外はありませんか。
  

員長:覚えてはおりませんが、全部報告をしていますから、大体私はそんな大口はないので、一口づつの会員がたくさんあったわけです。ただ、政治資金規正法の改正によりまして、5万円以上については献金先を明かにするという事になりましてから、ほとんどの会社が金額を減らしてきたというところがありますが、別に特別にどういう所から貰ったという意識はないのですが。

  

 問:献金以外でも、例えば今回の久世さんのように事務所を提供してもらったとか、いわゆる便宜供与を受けたことはありませんか。
  

員長:ありません。森ビルにはずっと入っていますが。

  

 問:異業種の銀行業への参入ですが、従来わりと時期尚早というようなご意見をお持ちのようですが、イトーヨーカ堂がまもなく申請という話が出ておりますが、その辺はどう対応されるのですか。
  

員長:イトーヨーカ堂、ソニー等、個々の問題は私はタッチをしておりませんが、ただ異業種の参入問題については、党の金融問題調査会におきましても3党のグループにおきましても検討していました。私が特に言っていたのは、異業種が銀行業に参入することについては、特別に法律的な制限はないのだから、それは差し支えないと思うが、ただ色々と問題がないわけではない。というのは、銀行が異業種をやることについては銀行法上あるいは独占禁止法上制限が加えられていると、それとのバランスの問題があると、言うなればワンウエイになっていると、そこは問題があるのではないかと。もう一つはアメリカは、従来異業種の参入を認めていたのが、去年の4月にそのことを禁止した。そういうこともありますし、またヨーロッパ諸国におきましても、異業種に参入したところの親元の企業について、検査なり何らかの形での監督というものはできるようになっているが、日本の場合には法令の根拠なくしてそういうことは可能だろうか、という問題もあります。そういう点について慎重に検討をする必要があるのではないかということを従来言っていたのであります。従いまして、銀行業の他業種への参入の問題については、これからどういう立法措置等を考えるかというのがこれからの検討課題だと思っております。

  

 問:先日の自民党の金問調が終った後、日債銀の譲渡契約について、瑕疵担保の削除等見直しは困難だと言われた記憶はあるのですが、今は見直しは困難と言う段階でないとなると、若干後退した印象を持ったのですが、その辺をもう少しクリアにしていただきたい。それからペイオフ問題ですが、今の説明ですと、信金でも地銀でもいいのですが、金融界が「やはり苦しいと、だからもう一度延期してくれ」と言って来たら延期する可能性があるように感じるのですが、金融界としては延期して欲しいのが当たり前なのですから、業者の方から言って来たら延期するという事になるのですか。
  

員長:ペイオフの問題について言うと、去年のペイオフの1年延期を決めたときにおきましても、これ以上の延期は考えていないということを、私が決めるのではありませんが、党の金融問題調査会長としてはそう言ったように記憶をしております。
 前段の日債銀の問題について、後退したように聞こえますか。

  

 問:金問調が終った後で、契約の見直しは難しいと記者団に対して言われたのですが、契約の見直しは難しいと今もお考えですか。
  

員長:契約は既にできているのですから、契約は相手方があるので、相手方が契約更改に応ずれば別ですが、応じない場合はこれはできないです。契約ですから。あとは破棄するしかない。もし仮に破棄するとしたら、それこそ次の段階において日債銀を引き受けるところが現れるかどうか分からないということを、事務当局も言っておりますし、私はその辺の情勢はまだまだ皆さんによく聞いてみなければ分からないと思いますが、そう言う状態にあるということですと、契約の見直しをする事はなかなか難しいのではないかということを確かに申し上げました。ただ、これについては法律改正を考えたらどうかという意見もありましたし、色々と問題点を指摘する向きが党側にもあったように記憶しているのですが、それらの問題についてもにわかに、それではそう言う方向でやりましょうと言える問題でもないし、そこで実行上何らかの形でその契約の内容について見直しをする事ができないかという問題もありますけれど、全てこれは契約の内容の変更になることですから、相手方がこれに応じなければできないと、そういう意味においてなかなか難しいのではないかということを申し上げた。絶対にできないとは言わなかったと思います。難しいのではなかろうかと言ったと記憶しております。

  

 問:鳥取銀行と山陰合同銀行の株はお持ちですか。
  

員長:持っています。これは地元の銀行ですから、ずっと持って今までいます。

  

 問:最近、売買はされているのですか。
  

員長:していません。持ちっぱなしです。当然、閣僚になると信託にする事になるので、前に経済企画庁長官になったときも、確か信託しました。

  

 問:88年に申告漏れが発覚して、法務委員長をお辞めになったという経緯がありますが、12年くらい前の話ですが、今又金融問題のトップになるということについてどのようにご自身お考えですか。
  

員長:あの時の事を申し上げておきますが、その時に十分説明をしておけばよかったと思うのですが、そのことでご迷惑をかけてはいけないという事で、法務委員長を辞めましたので、十分な説明をしませんでした。私の当時の記憶では、株の取引に関しては、原則としては申告をする必要はない。ただし、年間取引回数が50回以上、取引株数が20万株以上になった場合には、それを申告する必要があると、不正確かもしれませんがなっていたと思います。私は直接株の売買をやっていたわけではなく、証券会社に任せていたのですが、私も専門的なことでよく分かりませんが、伝票を出す時に、総括伝票というものを出すと、1日に何種類かの株の売買をしてもそれは1回になるのだそうです。仮に、1万株を買う時にその買い注文を総括的に出しておけば、何日に分けて買っても1回だとか、そういう規定があるそうです。ところがそういうことを、証券会社がやり忘れたらしくて、私は回数なり株数の範囲内に収まっていると了解していたのですが、それが回数が超えていたという事が、総括伝票を出し忘れたので超えていたという事が分かったので、それは証券会社の責任ですが私もそういう事で争ってもしょうがないと思って、そこで修正申告をして所得税及び付帯する税を払ったということです。それは私が、経済企画庁長官になる4,5年前の事だと思います。

  

 問:明日予定の3党の日債銀の問題のプロジェクトチームですが。
  

員長:私はプロジェクトチームの座長をしているのですが、こうなっては私が座長をやるわけにはいきません。早急に私の後の金融問題調査会長を決めていただいて、継続してやらなければいけないと思っています。

  

 問:献金と株の話は、森総理はご存知ですか。
  

員長:知っています。

  

 問:日債銀の譲渡契約の件ですが、話を聞いていますと、見直せるなら見直すにこした事はないように聞こえるのですが、契約なので相手の同意がないと覆せないけれど、相手の合意さえあれば、覆した方がいいと聞こえます。その場合に例えば、亀井政調会長がそごうを破綻させたように、相沢さんご自身がソフトバンク連合に働きかけて「折れなさい」と「契約を破棄したらどうですか」ということを仰ったりする事はないのですか。
  

員長:その様な事は考えていません。

  

 問:再生委員会の他の委員は、この契約でいいという判断を今もしているのですが、もう一つ伺いたいのは、そごうの債権放棄の問題ですが、他の再生委員は今もあの判断に間違いはなかったということで確認をしているわけですが、この件についてはどういうご見解をお持ちですか。
  

員長:私は、はっきり申しますが、契約ですから相手方があるわけですから、一方的に私の方が「こうするよ」というわけにはいかない。勿論、相手がウンと言わなければできないことです。ただ、瑕疵担保条項については、色々とご意見があるという事は皆さんご承知の通りです。全くそのままでほっといていいのかという検討は必要ではないかと私は思っています。ただ、では法律を作ってどうこうとか言っても、直ぐ日債銀の問題について間に合う問題ではないし、また実行上やると言ってもなかなか難しいも話なんです。ですから私は貴方が言われるように、相手方が応ずれば見直しをしてもいいのではないかと思っていますが、事実上は相手が乗らなければ難しいだろうと思っています。
 そごうの債権放棄の問題は、再生委員会の委員の方々が、預保が債権放棄する事について了承していた話ですが、それは政調会長の示唆があったかもしれませんが、世論に鑑みてそごうが自らそれを取り下げるという事になったわけですから、問題は解決したわけではないかもしれませんが、少なくとも解消しているわけです。ですから再生委員会の委員の中での意見がどうこうという問題は、言うなればなくなっているのではないでしょうか。

  

 問:今後、同じ様な案件で、一次国有化銀行が債権を持っている先から債権放棄要請があって、瑕疵担保特約が発効された場合は、預金保険機構は債権放棄ができるのですか。
  

員長:債権放棄の要請が、今のそごうの場合は取り下げたので、そういう意味で解消したということです。

  

 問:そごうの場合は前提がないわけですが、一体この後この契約に基づく行為は、できるのかできないのかということと、道義的にすべきなのかいけない事なのか、委員長のご見解は。
  

員長:それは出てきた段階でどういうものか判断がいるのではないですか。預保に対してまず要請があるわけで、預保の放棄するか否かに対して了承するかどうかの問題で、具体的な事案がないわけですから、今からどうこういう事にはならないと思います。

  

 問:マーケットから見ると、相沢さんという政治家は、金融問題で保守的と見られていますが、再生委員会は改革路線を期待されてできあがった組織ですから、そこの委員長として融合できるのか、あるいは他の再生委員と協調した形で政策を打ち出していけるのかどうかということについてどうお考えですか。
  

員長:どういう点で保守的というのですか。

  

 問:例えば、ペイオフ延期あるいは異業種参入に慎重な対応を求めるとか。
  

員長:つまり「ペイオフは延期すべきではない」「異業種の参入は認めるべきだ」という事に対して、私が色んな意味で異議を唱えたり変えたりしたということですか。ペイオフの問題は私が決めたということではなく、自民党の金融問題調査会長としての意見は「延期した方がよろしい」と「殊に中小企業については、このまま実施したら問題になる」と私はペイオフについてはまだまだ体制が十分できていない、特に信用組合は検査がこれからだという業態においては、やはり全体として1年延期をすると、全体として措置する方がいいというのは3党の共通した意見だった。最終的は政策責任者の会合で、1年延期を決定をし、それは大蔵大臣も金融再生委員長も了承した事なのです。ですから私がそういう意味で保守的だという風には思っていないのです。

  

 問:ここのところ金融再生委員長というポストはお騒がせなポストですが、受けるに当って躊躇する事はなかったですか。
  

員長:えらいポストだと思いましたよ、正直に言って。今まで色んなことがありましたし、なかなか難しいのですここは実際問題として、かなり専門的な分野もあるようですし、本当に私で十分やれるかなという懸念を持たないと言えば嘘になりますが、ここ3年金融問題に取り組んできましたし、今の情勢のもとにどうしてもやってくれと言われれば、私も精一杯ご期待に応えられるかどうか分かりませんが、努力しましょうということになったわけです。

  

 問:金融機関の顧問などもないですか。
  

員長:ないです。

  

 問:今回、大臣を引受けるに当って奥様からどのような話がありましたか。
  

員長:まだ直接話していません。ニュースを聞いて「大変だわね」と言っていました。

  

 問:この2月から数えて大臣が4人目になるのですが、何故このポストだけこうも変わるのかどうお考えですか。
  

員長:それを私に聞かれても困ります。何故寿命が短いか分かりません。それぞれの事情で変わったのですから、金融再生委員長のポストがそういうものだと短絡して考える事はないのではないですか。「じゃあ、お前も短いだろう」ということですか。

  

 問:最後まで全うされるのですか。
  

員長:それは努力をしますよ。職責は果たそうと思っています。

  

 問:久世委員長がこういうことで辞めた事についてはどうお考えですか。
  

員長:それは皆さんのご判断です。私から特に申し上げる事はありません。

(以上)


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