相沢委員長閣議後記者会見の概要

【平成12年8月4日(金)於:参議院議員食堂】
  

【閣議案件等】

 本日は金融関係の案件はありませんが、円借供与、日本政府とパプア・ニューギニア政府間の書簡の交換。国会報告では、行政組織の新設改廃状況の報告。常陸宮両殿下のマレーシア、シンガポールへのご訪問について及び人事案件がありました。

 閣僚の発言は、経済企画庁長官から公共料金分野における情報公開の推進について発言。

   

【質疑応答】

 問:新生銀行の件ですが、社外取締役が経営する会社に多額の報酬を支払う契約をしていましたが、そのうちの一部、21億についての支払いを取りやめたと新生銀行でも発表してますし、国会の答弁でもありましたが、これはどういう経緯で、或いは再生委員会としてはどういう働きかけを新生銀行の方にされたのですか。
  

員長:これは答弁でも申し上げましたが、新生銀行から2社に対して払った57億円の中に、成功報酬と考えられるものが約21億円含まれているという新聞報道等がありました。確かに欧米の慣行等も勘案た新生銀行の経営判断の問題ですから、私の方から本来とやかく言うべきではないと思いますが、金融再生委員会の立場としてそのまま見逃しておくのもどうかなと思いました。それで事務当局が新生銀行を呼んで事情を聞いたわけであります。その結果、一連の報道の反響等もあり、新生銀行が支出するのは適当ではないのではないかということで、成功報酬と受け取られる部分につきましては、投資家の負担にするということを新生銀行の方から申し出て参りましたのでそれを了としたということであります。

  

 問:最終的には新生銀行が自主的に申し出たということなのでしょういが、八城社長も納得はされていないような答弁だっと思うのですが。
  

員長:それはそうでしょう。一遍決めたというか、会社としてそういう方針を決定したわけですから、それを変えたのでそうでしょう。それは、私共の方から意見を申し述べたということよりも、やはりそのことの報道が世間に与える影響や反響の方が大きかったということでしょう。だからこの際、適当ではない、例えてはいけないと思いますが、そごうが民事再生手続きを取ることにしたということと同じようなことではありませんか。内容等は違いますが。それはやはり世間の人の受け止め方が色々あれば、そういう点では影響があることは当然です。逆に、そういうことを言われても、決めた事なのでやるんだと言ったら、また皆さん方何て言われますか。そごうの問題にしても、瑕疵担保条項について、別に手続き的に問題があったということではないし、また預保も金融再生委員会もそういう判断を一応しましたけれども、やはり非常に問題だと言うことであれば、そごうがその辺のことを自主的な判断としてこれ以上頑張って継続してたのでは、会社としての評判、評価、営業にも差し支えてくるという判断ですから、その辺をご理解して頂かなければならないのかなと思っております。

  

 問:今回のことについては、民間銀行のことですが、行政として口を出すべきだったということですか。
  

員長:出すべきかどうかは知りませんが、冒頭に申し上げたように、これは民間会社の経営問題ですから、本来、役所として認可をするとか許可をするとかという問題ではないのです。しかし公的資金をつぎ込んでいる銀行ですから、金融再生委員会としても黙って見過ごしていくというわけにいかないから、当方の意見として如何なものだろうかということを、伝えることは決していけないことではないと思います。

  

 問:昨日の国会答弁の中で、民主党の池田議員の質問に対してだったと思います。そごう向け債権の資産査定の際に、適資産、適と判定した背景には、景気のことを考えて大企業の倒産を避けたいという考えがあったのではないかという質問に対して、それはそうだと思うというようなご答弁があったと思うのですが。
  

員長:そういうふうに受け取られるとちょっと心外です。あれは適資産と判定をしたことについて、判断の中に、「もしそうしなければどうなったかということに対する配慮が全くなかったわけではない」という意味で言っているので、景気のことを主に考えて、今ここで潰したら大変なことになる、だから少々中身がおかしくても適としてやろうという意味では全くありません。資産判定は厳密にやっているわけですから。

  

 問:水島前会長は結局参考人としていらっしゃらなかったわけですが、今後国会の場に出てもらうなりして説明が必要だとお考えですか。
  

員長:これは国会の問題ですから、私の方から申し上げるのは如何かと思います。ただ、水島さんの欠席された理由が体調不良だと聞いております。今後、水島さんをお呼びになることについては、国会の委員会の問題ですから、私の方から申し上げることではないと思います。

  

 問:大臣ご自身、或いは当局がその辺の事情聴取をしたいという考えはお持ちではないですか。
  

員長:そういうことは考えておりません。

  

 問:昨日、異業種の銀行参入について、最終的にガイドラインを発表されましたが、以前、大臣は異業種の銀行参入については銀行法の改正の方が先だ、というご意見などもあり、ガイドライン作りについては肯定的なお立場ではなかったような気もするのですが、実際昨日のガイドラインの公表を受けて、今大臣としてどうお考えですか。
  

員長:金問調の会長としての今までの発言・態度について、いささか誤解があるようなので申し上げておきたいと思います。私は、異業種が参入することについて原則的に反対はしておりません。ただ、異業種が参入することについては、アメリカは従来認めていたものを去年止めたという前例もあると、欧米において認められている場合においても、異業種が銀行に参入した場合に、その親元の会社について色々と調査をしたりする権限を持っているようだし、そして異業種と銀行との関係が色々と問題になる。つまり企業が銀行を利用するというような、自分の銀行として利用するというようなことになる心配もないではない。逆に、銀行に関していえば、銀行が他の事業をすることは銀行法上も制限をされておりますし、それから独禁法からいきましても、銀行の持ち株についての制限もありますし、ですから今の状態でやると、言うなればONE WAYになってしまいます。もし、異業種が銀行業に参入することを認めるなら、その銀行も異業種について参入することを認めるようなことを、併せて検討しなければならないのではないかと言っていました。それには法律上の改正も必要になるでしょう。また、異業種の銀行に参入した場合の色々な行為の規制に関しても、場合によっては法律的な措置も必要になるのではないかと言っていたのです。ただ、今度のガイドラインで色々な注文を付けておりますし、それはそれとしてスタートをさせることで良いのではないかと思います。ただし、私が申し上げました宿題は、出来るだけ速やかに機会を見て、法律改正なり何なりことを進めてもらいたいと思っております。それが出来なければ認めませんよ、という言い方は今までもしたことはありません。

  

 問:大臣になられて1週間ですが、自民党の方の立場から金融再生委員長という政府の立場に変わられて、相沢さんご自身の考え方が変わった部分、或いは変えなければいけないと意識されていることはありますか。
  

員長:一言で言うと窮屈になってしまったということです。今までは、党の金問調の会長ですから個人の立場ではありませんが、役所の今までの経緯にとらわれないでフリーに色々なことを考えたり言ったりすることも出来ました。再生委員長という官の立場になりますと、そこは従来からの役所の流れ、行政の一貫性ということもありますので、それを崩すわけにもいかないということもあります。我々が党にあって話を聞いていること以上に、専門的な知識についても今までとは違って勉強しなければならないこともあります。話を聞いてみれば、「なるほどもっともだ」ということもあります。やはり立場が変わったからだけではないと思っております。

  

 問:本音でないことも多少会見の場で言わざるを得ないということですか。
  

員長:個人としての考えと、再生委員長としての立場からの発言と、やはり皆さんお分かりでしょう。個人の考え方だけを持って、勝手なことを言っていいという訳にはいきません。

  

 問:新生銀行に再生委員会から支出は適当でないと仰ったのは相沢委員長のご指示でしょうか。
  

員長:私の指示ではないです。

  

 問:事務局の判断ですか。
  

員長:はい。

  

 問:支出が適当でないと仰ったのは、先程ご説明がありましたが、それはどういう根拠に基づくものですか。つまり、金融当局として仰ったのか、別の再生法に基づいて仰ったのか、銀行法に基づいて仰ったのか或いは株主としての権利で仰ったのですか。
  

員長:冒頭に申し上げたように、新生銀行の経営判断の問題であり、新生銀行のいちいちの行為に対してこちらが許可するとか、承認するとかという立場にあるわけではなです。ですけれども、皆さん方から、言うなれば世論の代表として色々ご意見が出ておりましたし、私共も考えて、公的資金を貰っている銀行が、21億円も成功報酬を出すというのは少なくとも我々の常識から言うと納得がいかない。「どうなのだろう」と言ったら会社の方も「そうですね。考えましょう」ということだったと思います。

  

 問:ご趣旨は良く分かります。確かにおかしいと思いますが、再生委員会がそういったものを言うときにどういう立場で仰っているのか。つまり、世論で出ると再生委員会から銀行に指示なりするというのは、法治国家のルールに基づく行政とは違うような気がするのですが。
  

員長:57億円の支払いに関して、前もって事務局が承知をしていながら黙っていて、世間が騒いだから何かを言ったということではないのです。そのことについての説明が全然なかったのです。会社の経理の中に入っていって、「中身はどうですよ」という説明はなかったのです。後でそういうことが分かったのです。最初から聞いていれば恐らくその時点で言ったと思います。

  

 問:最初から聞いていたときに、もしそれを仰るとしたら、どういう権限ですか。経営健全化計画のウォッチャーとしての立場ですか。
  

員長:まあそうでしょう。

  

 問:この話は取締役会の決議をしているわけですが、取締役の中には、今井さんや樋口さんが社外取締役として入っていて決裁しているわけですが、彼らに対してご意見があれば伺えませんか。今井さんや樋口さんの社外取締役としての立場と言いますか、今回の高額な報酬を取締役会で反対したかどうかは分かりませんが、認めたことについてはどうですか。
  

員長:それはどういう会合において、あの方達が意見を述べたか分かりませんし、またそういうことを一々私の方が詮索することもないと思います。

(以上)


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